JP4141812B2 - 逆入力遮断クラッチ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力側からの入力トルクは出力側に伝達する一方、出力側からの逆入力トルクはロックして入力側に還流させない機能を有する逆入力遮断クラッチに関する。
【0002】
【従来技術】
例えば、駆動源からの入力トルクを出力側機構に伝達して所要の動作を行う装置では、駆動源の停止時に出力側機構をその位置が変動しないように保持しておく機能が求められる場合があり、その一例として、各種の被昇降体を上下動させる昇降装置が一般に知られている。
【0003】
この昇降装置においては、駆動モータや手動による正方向又は逆方向の入力トルクを出力側の昇降機構に入力して、被昇降体を上下動させることが行われるが、その上下動の途中で駆動モータや手動によるトルクの入力を停止させた場合には、被昇降体の自重による下降を阻止して、該被昇降体をその高さ位置に保持しておくことが必要になる。
【0004】
また、例えば電動シャッター装置は、駆動モータからの正方向または逆方向の入力トルクを出力側の開閉機構に入力して、シャッターの開閉動作を行うものであるが、その開閉動作の途中で停電等の何らかの事情により駆動源が停止した場合にも、シャッターの自重による下降を阻止して、該シャッターをその高さ位置に保持しておく必要性が生じる。
【0005】
これらの装置に上述のような機能をもたせることを目的としたクラッチの一例として、下記の特許文献1によれば、入力側部材からの入力トルクは出力側部材に伝達させるが、出力側部材から入力側部材に還流する逆入力トルクに対しては、出力側部材をロックさせて、入力側部材に伝達させないようにした逆入力遮断クラッチが開示されている。
【0006】
この逆入力遮断クラッチの具体的構成は、回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、静止側部材と出力側部材との間に設けられて出力側部材からの逆入力トルクに対して出力側部材と静止側部材とをロックするロック手段と、入力側部材に設けられて入力側部材からの入力トルクに対してロック手段によるロック状態を解除するロック解除手段と、入力側部材と出力側部材との間に設けられてロック手段によるロック状態が解除された状態のときに入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備えたものである。
【0007】
そして、入力側部材からの入力トルクによって、入力側部材が出力側部材に対して正逆何れかの回転方向に所定角度だけ回転したときに、ロック手段によるロック状態が解除され、この状態から入力側部材が出力側部材に対して更に同方向に回転した時点で、入力側部材からの入力トルクがトルク伝達手段を介して出力側部材に伝達され、この後においては入力側部材と出力側部材とが一体となって同方向に回転するように構成されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−266902号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の逆入力遮断クラッチは、入力側部材に半径方向に延びた入力側フランジ部を形成し、この入力側フランジ部の半径方向中間部に円周方向等間隔おきに複数の穴部を形成すると共に、出力側部材にも半径方向に延びた出力側フランジ部を出力軸部の軸方向一方側に連続して形成し、この出力側フランジ部の外周縁部に円周方向等間隔おきに複数の突起部を形成したものである。そして、入力側フランジ部と出力側フランジ部とを接近させて配置した状態で、前記複数の突起部を複数の穴部に所定量だけ円周方向移動可能に挿入したものであり、これらの突起部と穴部とから上述のトルク伝達手段が構成されている。
【0010】
したがって、この逆入力遮断クラッチによれば、トルク伝達手段を設けるに際して、入力側部材と出力側部材とに複数の突起部や複数の穴部を形成するための部位が必要となり、設計上或いは製作上の制約を受ける要因となるばかりでなく、それらの加工が面倒且つ煩雑になる要因ともなっていた。
【0011】
そこで、本発明は、上記構成からなる逆入力遮断クラッチのトルク伝達手段を最適位置に形成することにより、設計上や製作上における不当な制約をなくすと共に、その構成要素の加工の簡略化、ひいてはトルク伝達手段の製作容易化を図ることを技術的課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、前記静止側部材と前記出力側部材との間に設けられ、前記出力側部材からの逆入力トルクに対して前記出力側部材と前記静止側部材とをロックするロック手段と、前記入力側部材に設けられ、前記入力側部材からの入力トルクに対して前記ロック手段によるロック状態を解除するロック解除手段と、前記入力側部材と前記出力側部材との間に設けられ、前記ロック手段によるロック状態が解除された状態のときに、前記入力側部材からの入力トルクを前記出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備えた逆入力遮断クラッチであって、前記トルク伝達手段は、前記入力側部材及び出力側部材のうち一方の部材の中心軸上に形成され且つクラッチ外部側から中心軸に沿って延びる軸体のクラッチ内部側に存する軸部と、他方の部材の中心軸上に形成され且つ前記軸部が回転方向すき間を介在させて挿入される孔部とから構成され、前記一方の部材は、中心軸と直交して配置された円環状の基板部の内周から前記クラッチ外部側に延びる筒状部を有し、且つ、該筒状部の内孔に、前記軸体の前記軸部よりも前記クラッチ外部側の部位が相対回転不能に嵌合されていることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成によれば、トルク伝達手段が、入力側部材及び出力側部材の中心軸上に配置された軸部と孔部とから構成されることから、トルク伝達手段としては、この両部材の中心軸上に軸部と孔部とを設けるだけで済むことになる。したがって、トルク伝達手段の構成要素の設置スペース上の問題が生じ難くなり、設計上や製作上における不当な制約を受けなくなる。しかも、トルク伝達手段の加工の簡略化、ひいては製作容易化を図ることができ、コストの低廉化にも寄与できることになる。
【0014】
上記の構成において、前記軸部及び前記孔部には、それぞれ平行二平面を有する二面幅または四面幅が形成されると共に、前記軸部の二面幅または四面幅は、前記軸体の前記クラッチ外部側に連続して延出され、且つ、その延出部は、前記筒状部の内孔と密に平面嵌合するように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、上記の構成において、ロック手段及びロック解除手段は、トルク伝達手段が存する軸方向位置の外周側に配設されていることが好ましい。
【0016】
更に、上記の構成において、入力側部材が前記出力側部材に対して中立位置から正逆両回転方向に第1所定角度だけ回転したときに、前記ロック手段によるロック状態が解除され、前記入力側部材が前記出力側部材に対して中立位置から正逆両回転方向に前記第1所定角度よりも大きな第2所定角度だけ回転したときに、前記入力側部材からの入力トルクが前記トルク伝達手段を介して前記出力側部材に伝達されることが好ましい。
【0017】
このように構成すれば、入力側部材が正逆何れかの方向に回転していく過程においては、先ず入力側部材が中立位置から第1所定角度だけ回転してロック状態が解除された後、更に入力側部材が同方向に回転して中立位置からの回転角度が第2所定角度に達した時点で、入力側部材からの入力トルクが出力側部材に伝達される。したがって、ロック手段によるロック状態が確実に解除された後でなければ、入力側部材から出力側部材にトルク伝達がなされないことになり、これにより入力側部材から出力側部材への回転伝達が適切且つ円滑に行われ得ることになる。
【0018】
この場合、前記トルク伝達手段の軸部と孔部との中心軸廻りの相対回転は、中立位置から正逆両回転方向に前記第2所定角度の範囲内に規制されていることが好ましい。
【0019】
ここで、「軸部と孔部との中心軸廻りの相対回転」とは、入力側部材に軸部が形成され且つ出力側部材に孔部が形成される場合には、軸部が孔部に対して回転することをいい、また逆に出力側部材に軸部が形成され且つ入力側部材に孔部が形成される場合には、孔部が軸部に対して回転することをいう。このような構成によれば、トルク伝達及び回転伝達が円滑且つ確実に行われると共に、トルク伝達手段の構成要素として、単一の軸部と単一の孔部とを形成するだけで済むことになり、トルク伝達手段の配置の最適化のみならず、その構成の簡素化も図られる。
【0020】
また、上記の構成において、前記軸部及び孔部は両者共に、平行二平面と二つの円周面とから形成される二面幅であって、且つ該二面幅の寸法は、前記軸部よりも孔部が大きく設定されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、軸部及び孔部に、幅寸法が相違する二面幅をそれぞれ形成するだけで、トルク伝達手段を構成できるため、加工或いは設計製作の更なる簡略化ひいては低コスト化を図ることが可能となる。
【0022】
また、上記の構成において、前記ロック手段は、前記静止側部材に設けられた円周面と、前記出力側部材に設けられ、前記円周面との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成するカム面と、前記カム面と前記円周面との間に介在する一対の係合子と、前記一対の係合子をそれぞれ前記楔隙間の向きに押圧する弾性部材とを備えると共に、前記ロック解除手段は、前記入力側部材に設けられ、前記一対の係合子の何れか一方と択一的に係合して、これを前記楔隙間の向きと反対方向に押圧する係合要素であることが好ましい。
【0023】
このように構成すれば、出力側部材に一方向の逆入力トルクが入力された場合には、一対の係合子のうち一方がその方向の楔隙間と楔係合して、出力側部材を静止側部材に対して一方向にロックし、出力側部材に他方向の逆入力トルクが入力された場合には、一対の係合子のうち他方がその方向の楔隙間と楔係合して、出力側部材を静止側部材に対して他方向にロックする。したがって、出力側部材は一対の係合子を介して静止側部材に対して正逆両回転方向にロックされる。これに対して、入力側部材に入力トルクが入力された場合には、先ず、入力側部材に設けられたロック解除手段としての係合要素が一対の係合子のうち、その入力トルクの方向に楔隙間と楔係合する係合子を該楔隙間の向きと反対方向に押圧して、該楔隙間から離脱させる。これにより、出力側部材のロック状態がその入力トルクの方向に解除される。以上の事項を勘案すれば、出力側部材に逆入力トルクが入力された場合のロック動作と、入力側部材に入力トルクが入力された場合のロック解除動作とが、支障を生じることなく円滑且つ確実に行われる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチの全体構成を示し、図2は、図1(a)のA−A線にしたがって切断した要部縦断正面図である。この実施形態に係るクラッチは、トルクが入力される入力側部材1と、トルクが出力される出力側部材2と、回転が拘束される静止側部材3と、静止側部材3に固定された固定側板4と、後述するロック手段、ロック解除手段、及びトルク伝達手段とを主たる要素として構成される。
【0028】
入力側部材1は、円環板状の基板部1aと、該基板部1aの外周から軸方向の一方側(クラッチ内部側)に連続して延びた複数(例えば6つ)の柱部1bと、該基板部1aの内周から軸方向の他方側(クラッチ外部側)に連続して延びた筒状部1cとを主体として構成される。前記柱部1bは、基板部1aの外周に円周方向等間隔に配列されると共に、円周方向に隣接する柱部1bの相互間には、軸方向の一方側に向かって開口した空間であるポケット7が構成され、各ポケット7にそれぞれ一対のローラ6が配設されている(詳細は後述する)。
【0029】
この入力側部材1における筒状部1cの内孔1dには、平行な二平面1eからなる二面幅が形成されている。また、図1(b)に示すように、この入力側部材1の内孔1dに嵌合固定される軸体としての入力軸5の一端部(クラッチ内部側の端部)にも、平行な二平面5aからなる二面幅が形成されている。そして、入力側部材1の内孔1dの両平面1eと、入力軸5の両平面5aとが密に平面嵌合することにより、入力側部材1と入力軸5とが相対回転不能に連結されている。なお、入力軸5の一端には、二面幅形成部位5xよりも小径の円柱軸部5bが、該二面幅形成部位5xから突出して形成されている。
【0030】
前記出力側部材2は、軸方向に延びた出力軸部2aと、該出力軸部2aの軸方向の一方側(クラッチ内部側)に連続して形成されたフランジ部2bとを主体として構成される。そして、出力軸部2aの軸端部分には、例えば1つの平面部(図示略)が形成され、この軸端部分に出力側の機構又は装置の回動部材が相対回転不能に連結される。
【0031】
この出力側部材2のフランジ部2bは、図2に示す例では多角形状(例えば正6角形状)をなし、その各辺の外周がそれぞれカム面2cになっていると共に、計6つのカム面2cがフランジ2bの外周に円周方向等間隔に配列されている。
【0032】
この出力側部材2におけるフランジ部2bの中心軸上には、入力側部材1との対向端側が開口する複合孔部2dが形成され、この複合孔部2dには、平行な二平面2eからなる二面幅が形成されている。この複合孔部2dにおける二面幅形成部位2xの奥には、その部位2xよりも小径の円孔2gが形成されている。
【0033】
この場合、出力側部材2の複合孔部2dには、入力軸5の軸端部が挿入され、詳しくは、複合孔部2dの二面幅形成部位2xの内部に、入力軸5の二面幅形成部位5xが挿入されている。したがって、入力軸5の二面幅(二平面5a)の軸方向長さは、入力側部材1の内孔1dから出力側部材2の複合孔部2dの二面幅形成部位2xに至る長さとされている。そして、出力側部材2における複合孔部2dの二面幅寸法t2は、入力軸5の二面幅寸法t1よりも長尺とされている。なお、入力軸5の円柱軸部5bは、複合孔部2dの円孔2gの内部に遊びをもって挿入されている。
【0034】
前記静止側部材3は、軸方向の一方側(出力軸2aの軸端側)に延びた円筒部3aを内周に有する円環板状の側板部3bと、該側板部3bの外周から軸方向の他方側(出力側部材2のフランジ部2b側)に延びた大径覆設部3cと、該大径覆設部3cの一端から外径方向に突出した鍔部3eとを主体として構成される。
【0035】
この静止側部材3における円筒部3aの内周面と、前記出力側部材2における出力軸部2aの軸方向中間部(平面部の非形成部)の外周面との間には、ラジアル軸受部材8が介設されている。
【0036】
更に、この静止側部材3における大径覆設部3cの内周には、出力側部材2のカム面2cと半径方向に対向して正逆両回転方向に楔隙間を形成する円周面3fが設けられている。また、この静止側部材3における鍔部3eには、複数の矩形状の切欠き部3gが円周方向等間隔おきに形成され、これらの切欠き部3gは、後述する固定側板4の加締部4cと適合している。
【0037】
前記固定側板4は、円環状の基側板部4aの内周から軸方向の一方側(クラッチ外部側)に延びた外筒部4bを有してなり、この外筒部4bの内孔に入力側部材1の筒状部1cが挿通されている。そして、入力側部材1は固定側板4に対して回転可能とされている。
【0038】
この固定側板4は、外周の円周方向等間隔おきに複数の加締部4cを有し、この各加締部4c(爪部)を静止側部材3の切欠き部3gにそれぞれ嵌めて折り返すことにより、静止側部材3と固定側板4とが、軸方向及び回転方向に相対移動不能に結合されている。
【0039】
図2に示すように、出力側部材2の各カム面2cと静止側部材3の円周面3fとの間には、それぞれ、係合子としての一対(例えば総数6対)のローラ6が配列され、入力側部材1の柱部1b間に形成されるポケット7に収容される。また、一対のローラ6間には、この両ローラ6を相互に離反させる弾性部材(ばね)9が介設されている。この弾性部材9は、例えば薄肉のばね板を複数箇所(図例では3箇所)で屈曲状に波形状に折り曲げ成形したものであって、この弾性部材9の一端が一方のローラ6に当接し、他端が他方のローラ6に当接している。
【0040】
この場合において、上述のカム面2c、円周面3f、一対のローラ6、および弾性部材9によってロック手段が構成されると共に、一対のローラ6の円周方向両側に位置する入力側部材1の柱部1b(係合要素)によってロック解除手段が構成され、且つ、入力側部材1における入力軸5の二面幅形成部位5xと、出力側部材2における複合孔部2dの二面幅形成部位2xとによってトルク伝達手段が構成されている。なお、出力側部材2の外周と静止側部材3の内周との間の空間部、特にカム面2cと円周面3fとの間には例えばグリースが封入される。
【0041】
詳述すると、トルク伝達手段は、入力側部材1及び出力側部材2の中心軸上に配設されるものであって、入力軸5の二面幅形成部位5xが、トルク伝達手段の一方の構成要素としての入力側部材1の軸部に該当し、複合孔部2dの二面幅形成部位2xが、トルク伝達手段の他方の構成要素としての出力側部材2の孔部に該当する。したがって、以下の説明では、トルク伝達手段の一方の構成要素を単に入力側部材1の軸部5xと呼称し、他方の構成要素を単に出力側部材2の孔部2xと呼称する。
【0042】
入力側部材1の軸部5xは、その外周が平行な二つの平面5aと二つの円周面5cとから形成され、出力側部材2の孔部2xは、その内周が平行な二つの平面2eと二つの円周面2hとから形成されている。そして、軸部5xの各平面5aと孔部2xの各平面2eとは相互に離反して回転方向すき間が存在しているのに対して、軸部5xの各円周面5cは孔部2xの各円周面2hに摺動可能に嵌合されている。
【0043】
図2に示す中立位置においては、入力側部材1の各柱部1bと各ローラ6との間に、それぞれクラッチの中心軸を基準とする第1所定角度αに対応した回転方向隙間が存在する。すなわち、出力側部材2に対して入力側部材1が中立位置から正逆両方向に第1所定角度αだけ回転したときに、各柱部1bが各ローラ6に当接するように設定がなされている。
【0044】
また、トルク伝達手段を構成する出力側部材2の孔部2xに対する入力側部材1の軸部5xの回転は、中立位置から正逆両回転方向に第2所定角度βの範囲内に規制されるように、両者の二面幅寸法t1、t2が設定されている。すなわち、出力側部材2に対して入力側部材1が中立位置から正逆両方向に第2所定角度βだけ回転したときに、入力側部材1からの入力トルクが出力側部材2に伝達されるように設定がなされている。そして、第1所定角度αと第2所定角度βとは、α<βの関係を有している。
【0045】
次に、以上のような構成を備えた逆入力遮断クラッチの主たる動作を、図2〜図4に基づいて説明する。
【0046】
図2に示すように、中立位置においては、一対のローラ6は弾性部材9によって互いに離反する方向に押圧され、それぞれ、カム面2cと円周面3fとの間に形成される正逆両回転方向の楔隙間と係合する。このような状態の下で、例えば、出力側部材2に時計方向の逆入力トルクが入力されると、反時計方向(回転方向後方)のローラ6がその方向の楔隙間と楔係合して、出力側部材2が静止側部材3に対して時計方向にロックされる。出力側部材2に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、時計方向(回転方向後方)のローラ6がその方向の楔隙間と楔係合して、出力側部材2が静止側部材3に対して反時計方向にロックされる。したがって、出力側部材2からの逆入力トルクは、ローラ6によって正逆両回転方向にロックされる。
【0047】
図3は、入力側部材1に入力トルク(同図で時計方向)が入力され、入力側部材1が同図で時計方向に回動を始めた初期状態を示している。この場合、各柱部1bと各ローラ6との回転方向隙間に対応する第1所定角度αは、トルク伝達手段における第2所定角度βよりも小さく設定されている。したがって、先ず、入力側部材1の反時計方向(回転方向後方)の柱部1bがその方向(回転方向後方)のローラ6と係合して、これを弾性部材9の弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。
【0048】
これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ6がその方向の楔隙間から離脱して、出力側部材2のロック状態が解除される。この時点において、時計方向(回転方向前方)のローラ6は、その方向の楔隙間とは楔係合しない。したがって、出力側部材2は時計方向に回動可能となる。また、この時点において、トルク伝達手段の構成要素である入力側部材1の軸部5xは、出力側部材2の孔部2xに対して、時計方向への相対回転を許容された状態にある。
【0049】
入力側部材1がさらに時計方向に回動すると、図4に示すように、軸部5xの二平面5aの相対称となる端部(軸部5xの二平面5aと円周部5cとの相対称となる境界部)が、孔部2xの二平面2eの相対称となる端部(孔部2xの二平面2eと円周部2hとの相対称となる境界部)に合致して、入力側部材1の出力側部材2に対する相対回転が規制される。これにより、入力側部材1からの時計方向の入力トルクが、軸部5x及び孔部2xを介して出力側部材2に伝達され、出力側部材2が時計方向に回動する。入力側部材1に反時計方向の入力トルクが入力された場合は、上記とは逆の動作で出力側部材2が反時計方向に回動する。
【0050】
したがって、入力側部材1からの正逆両回転方向の入力トルクは、トルク伝達手段としての軸部5xおよび孔部2xを介して出力側部材2に伝達され、出力側部材2が正逆両回転方向に回動する。なお、入力側部材1からの入力トルクがなくなると、弾性部材9の弾性復元力によって図2に示す中立位置に復帰する。
【0051】
なお、上記実施形態では、トルク伝達手段の構成要素である軸部5x及び孔部2xに平行二平面からなる二面幅を形成したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、四面幅やスプラインを形成してもよく、これらによっても同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
また、上記実施形態では、入力側部材1に軸部5xを形成し且つ出力側部材2に孔部2xを形成したが、これとは逆に、出力側部材2に上記の軸部5xと同様の構造を有する軸部を形成し且つ入力側部材2に上記の孔部2xと同様の構造を有する孔部を形成するようにしてもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る逆入力遮断クラッチによれば、入力側部材と出力側部材との間に設けられてロック手段によるロック状態が解除された状態のときに入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段を、入力側部材及び出力側部材の中心軸上に配設された軸部と孔部とで構成したから、この両部材について、トルク伝達手段の構成要素としての軸部と孔部とを設けるだけで済むことになる。これにより、その構成要素の設置スペース上の問題が生じ難くなると共に、設計上や製作上における不当な制約を受けなくなり、更には、トルク伝達手段の加工の簡略化、ひいては製作容易化が実現すると共に、コストの低廉化にも寄与できることになる。
【0054】
そして、入力側部材が出力側部材に対して中立位置から正逆両回転方向に第1所定角度だけ回転したときに、ロック手段によるロック状態が解除され、入力側部材が出力側部材に対して中立位置から正逆両回転方向に第1所定角度よりも大きな第2所定角度だけ回転したときに、入力側部材からの入力トルクがトルク伝達手段を介して出力側部材に伝達されるように構成すれば、ロック手段によるロック状態が解除された後でなければ、入力側部材から出力側部材にトルク伝達がなされないことになり、これにより入力側部材から出力側部材への回転伝達が確実且つ円滑に行われ得ることになる。
【0055】
また、トルク伝達手段を構成している前記軸部と孔部との中心軸廻りの相対回転を、中立位置から正逆両回転方向に前記第2所定角度の範囲内に規制すれば、トルク伝達及び回転伝達が円滑且つ確実に行われると共に、トルク伝達手段の構成要素として、単一の軸部と単一の孔部とを形成するだけで済むことになり、トルク伝達手段の最適配置化のみならず、その構成の簡素化も図られる。
【0056】
また、ロック手段を、静止側部材に設けられた円周面と、出力側部材に設けられて円周面との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成するカム面と、このカム面と円周面との間に介在する一対の係合子と、この一対の係合子をそれぞれ前記楔隙間の向きに押圧する弾性部材とから構成し、ロック解除手段を、入力側部材に設けられて一対の係合子の何れか一方と択一的に係合してこれを楔隙間の向きと反対方向に押圧する係合要素で構成すれば、出力側部材に逆入力トルクが入力された場合のロック動作と、入力側部材に入力トルクが入力された場合のロック解除動作とが、支障を生じることなく円滑且つ確実に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチの縦断側面図、図1(b)は、本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチの構成要素である入力軸を示す側面図。図1(c)は、その入力軸を軸端側より見た正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチを示す要部拡大縦断正面図であって、図1(a)のA−A線にしたがって切断した断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチの作用を説明するための要部拡大縦断正面図である(ロック解除時)。
【図4】本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチの作用を説明するための要部拡大縦断正面図である(トルク伝達時)。
【符号の説明】
1 入力側部材
2 出力側部材
2x 孔部(トルク伝達手段)
3 静止側部材
4 固定側板
5 入力軸
5x 軸部(トルク伝達手段)
6 ローラ
7 弾性部材

Claims (7)

  1. 回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、前記静止側部材と前記出力側部材との間に設けられ、前記出力側部材からの逆入力トルクに対して前記出力側部材と前記静止側部材とをロックするロック手段と、前記入力側部材に設けられ、前記入力側部材からの入力トルクに対して前記ロック手段によるロック状態を解除するロック解除手段と、前記入力側部材と前記出力側部材との間に設けられ、前記ロック手段によるロック状態が解除された状態のときに、前記入力側部材からの入力トルクを前記出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備えた逆入力遮断クラッチであって、
    前記トルク伝達手段は、前記入力側部材及び出力側部材のうち一方の部材の中心軸上に形成され且つクラッチ外部側から中心軸に沿って延びる軸体のクラッチ内部側に存する軸部と、他方の部材の中心軸上に形成され且つ前記軸部が回転方向すき間を介在させて挿入される孔部とから構成され、
    前記一方の部材は、中心軸と直交して配置された円環状の基板部の内周から前記クラッチ外部側に延びる筒状部を有し、且つ、該筒状部の内孔に、前記軸体の前記軸部よりも前記クラッチ外部側の部位が相対回転不能に嵌合されていることを特徴とする逆入力遮断クラッチ。
  2. 前記軸部及び前記孔部には、それぞれ平行二平面を有する二面幅または四面幅が形成されると共に、前記軸部の二面幅または四面幅は、前記軸体の前記クラッチ外部側に連続して延出され、且つ、その延出部は、前記筒状部の内孔と密に平面嵌合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  3. 前記ロック手段及びロック解除手段は、前記トルク伝達手段が存する軸方向位置の外周側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  4. 前記入力側部材が前記出力側部材に対して中立位置から正逆両回転方向に第1所定角度だけ回転したときに、前記ロック手段によるロック状態が解除され、前記入力側部材が前記出力側部材に対して中立位置から正逆両回転方向に前記第1所定角度よりも大きな第2所定角度だけ回転したときに、前記入力側部材からの入力トルクが前記トルク伝達手段を介して前記出力側部材に伝達されることを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  5. 前記トルク伝達手段の軸部と孔部との中心軸廻りの相対回転が、中立位置から正逆両回転方向に前記第2所定角度の範囲内に規制されていることを特徴とする請求項に記載の逆入力遮断クラッチ。
  6. 前記軸部及び孔部は両者共に、平行二平面と二つの円周面とから形成される二面幅であって、且つ該二面幅の寸法は、前記軸部よりも孔部が大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  7. 前記ロック手段は、前記静止側部材に設けられた円周面と、前記出力側部材に設けられ、前記円周面との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成するカム面と、前記カム面と前記円周面との間に介在する一対の係合子と、前記一対の係合子をそれぞれ前記楔隙間の向きに押圧する弾性部材とを備えると共に、前記ロック解除手段は、前記入力側部材に設けられ、前記一対の係合子の何れか一方と択一的に係合して、これを前記楔隙間の向きと反対方向に押圧する係合要素であることを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
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