JP4141541B2 - 環状回転部材のスプリング保持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状回転部材のスプリング保持構造に関し、スプリングを安定して保持可能とする技術である。
【0002】
【従来の技術】
図3は自動車等に用いられる従来の自動変速機の動力接続部(クラッチ部)100の要部を示す断面構成説明図である。
【0003】
図において、スリーブ101は、内燃機関側からの駆動力が伝達される入力側軸(不図示)に装着される。
【0004】
スリーブ101には、有底円筒形状を呈したハウジング102の径方向部102aの内端が固定されている。ハウジング102の軸方向部102bの内周には径方向部102a側より、ピストン部材となる圧力プレート103、キャンセルプレート104、多板クラッチ105が配置されている。
【0005】
圧力プレート103は、スリーブ101の外周とハウジング102の軸方向部102bの内周との間に嵌め込まれ、その環状領域KRを密封分割しながら軸方向に摺動自在となる構成となっている。
【0006】
従って、圧力プレート103には、内径端部103aの内側にスリーブ101の外周に当接し摺動するシールリップ103bを、外径端部103cの外側にハウジング102の軸方向部102bの内周に当接し摺動するシールリップ103dをそれぞれ一体的に備えている。
【0007】
キャンセルプレート104は、圧力プレート103と対向して配置され、スリーブ101に係止されるストッパ部材106により、軸方向の移動(図において右方向)が規制されている。
【0008】
圧力プレート103とキャンセルプレート104との間には、スプリング107が介在し、圧力プレート103を多板クラッチ105とは反対方向に押し戻すように付勢している。
【0009】
多板クラッチ105は、複数枚数のクラッチ板により構成され、圧力室PRに導入される制御油圧により圧力プレート103が移動(図において右方向)することにより、圧力プレート103の外径端部103cに押圧されてクラッチ板が圧着し、駆動力の伝達がなされる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
図4は、図3の2点破線で囲った領域D101の拡大図であり、スプリング107端部のキャンセルプレート104との当接状態を説明する図である。
【0011】
キャンセルプレート104にはスプリング7を保持する環状のリテーナ部104aが形成されており、リテーナ部104a内側にスプリング107の端面部107aが当接している。
【0012】
キャンセルプレート104はプレス板金部材で形成されているもので、しぼり形状となっているリテーナ部104aの角部104b,104cにアール形状となっている。
【0013】
そして、動力接続部100の作動状態では、キャンセルプレート104はスリーブ101と共回りしており、スプリング107にも遠心力(矢印A101の方向)が働き、キャンセルプレート104の筒部内周面104dにガイドされる状態となる。
【0014】
このように作動状態において、遠心力を受けて筒部内周面104dにガイドされると、スプリング107の端面部107aが角部104bのアールに乗り上げ、端面部107aとリテーナ部104aとの接触状態が図示されたように2点接触となり、不安定な状態となる。
【0015】
また、スプリング107の端面部107aが角部104bのアールに乗り上げることによってスプリング長が変化し、僅かではあるがスプリング107の付勢力の大きさを変えてしまうことも考えられる。
【0016】
尚、この遠心力は、動力接続部100が接続される内燃機関の回転数の変動を常に受け、それにともない発生する遠心力も変化するので、遠心力の発生の少ない低速回転時は端面部107aの角部104bのアールの乗り上げ量が少なく、遠心力の発生の大きい高速回転時は端面部107aの角部104bのアールの乗り上げ量も増加することになるので、スプリング107のラジアル方向のガタの要因となる虞もある。
【0017】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、回転部材のリテーナ部において保持するスプリングに対し安定した保持を行なうことにより、スプリングの安定した付勢力を発生させ装置の作動安定性を向上させることにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にあっては、円筒状部と、該円筒状部から内向きに延出した径方向部とを有し、前記円筒状部の内周面のスプリングに対向する領域内のうち最も内側の面のみにより、ラジアル方向に移動してきたスプリングがさらにラジアル方向に移動しないようにガイドすると共に、前記径方向部によりスプリングの一端を支持する、プレス板金部材でしぼり形成されている環状回転部材のスプリング保持構造であって、前記環状回転部材の径方向部に、前記環状回転部材の円筒状部の内側から離間した台座部を備え、前記環状回転部材の円筒状部の前記スプリングをガイドする前記面と径方向部との接続部位にアール部を有し、前記スプリングがラジアル方向に移動してきたときに前記スプリングのスプリング長が変化するのを抑制すべく、前記アール部を、前記台座部のスプリング配置側の表面からスプリング配置側とは反対方向に退いた位置に設けることを特徴とする。
【0019】
これによって、スプリングの端部は台座部に支持され、安定した保持動作がなされる。
【0021】
また、スプリングとアール部との干渉を防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1に本発明を適用した実施の形態における、自動車等に用いられる自動変速機の動力接続部(クラッチ部)CLの要部を示す断面構成説明図を説明する。
【0023】
図において、スリーブ1は、内燃機関側からの駆動力が伝達される入力側軸(不図示)に装着される。
【0024】
スリーブ1には、有底円筒形状を呈したハウジング2の径方向部2aの内端が固定されている。ハウジング2の軸方向部2bの内周には径方向部2a側より、ピストン部材となる圧力プレート3、キャンセルプレート4、多板クラッチ5が配置されている。
【0025】
圧力プレート3は、スリーブ1の外周とハウジング2の軸方向部2bの内周との間に嵌め込まれ、その環状領域KRを密封分割しながら軸方向に摺動自在となる構成となっている。
【0026】
従って、圧力プレート3には、内径端部3aの内側にはスリーブ1の外周に当接し摺動するシールリップ3bを、外径端部3cの外側にはハウジング2の軸方向部2bの内周に当接し摺動するシールリップ3dをそれぞれ一体的に備えている。
【0027】
環状回転部材としてのキャンセルプレート4は、圧力プレート3と対向して配置され、スリーブ1に係止されるストッパ部材6により、軸方向の移動(図において右方向)が規制されている。
【0028】
圧力プレート3とキャンセルプレート4との間には、スプリング7が介在し、圧力プレート3を多板クラッチ5とは反対側に押し戻すように付勢している。
【0029】
多板クラッチ5は、複数枚数のクラッチ板により構成され、圧力室PRに導入される制御油圧により圧力プレート3が移動(図において右方向)することにより、圧力プレート3の外径端部3cに押圧されてクラッチ板が圧着し、駆動力の伝達がなされる。
【0030】
図2は、図1の2点破線で囲った領域D2の拡大図であり、スプリング7端部のキャンセルプレート4との当接状態を説明する図である。
【0031】
キャンセルプレート4は、円筒状部4aとこの円筒状部4aから内向きに延出した径方向部4bとを備え、径方向部4bをスプリング7の一方の端部としての当接面部7aを当接保持するリテーナ部として機能させている。
【0032】
キャンセルプレート4は、この実施の形態ではプレス板金部材でしぼり形成されているもので、各角部はアール形状となっている。
【0033】
また、径方向部4bには、円筒状部4aの筒部内周面4dから隙間G1だけ離間した台座部4cを備え、この台座部4cのスプリング側表面にスプリング7の当接面部7aが当接している。
【0034】
従って、台座部4cを周方向外側に延長した部位において、円筒状部4aの内周面以外にスプリング7と当接するものは存在せず、安定してスプリング7を保持することができる。
【0035】
そして、動力接続部CLの作動状態では、キャンセルプレート4はスリーブ1と共回りしており、スプリング7にも遠心力(矢印A2の方向)が働き、キャンセルプレート4の筒部内周面4dにガイドされる状態となる。
【0036】
このような作動状態においてもスプリング7はラジアル方向に移動するだけてあり、当接面部7aの当接保持状態が変化することはない。スプリング7のスプリング長は変化せず、安定した付勢力が得られる。
【0037】
また、一旦外側に移動したスプリング7は内側へは移動しにくく(従来技術においてはアール部に乗り上げるので、アール部の傾斜面を滑り内側に移動することがある)、ラジアル方向のガタを抑制することも効果として得られる。
【0038】
尚、この実施の形態のスプリング7は小径の円筒状スプリングであり、キャンセルプレート4の周方向に沿って複数個配置されているものであるが、キャンセルプレート4の筒部内周面4dの径寸法よりも若干小さい径寸法(大径の円筒状スプリング)のスプリング1個を備える構成に対しても、本発明を適用することが可能である。スプリング7の他方の端部は別体構成のリテーナ8によって支持されている。
【0039】
また、台座部4cの高さ(軸方向)は、キャンセルプレート4の円筒状部4aと径方向部4bとの接続部位に形成されたアール部4eの大きさよりも大きくすることによって、スプリング7とアール部4eとの干渉を完全に防止することができる。
【0040】
このアール部4e等を形成することは、プレス板金部材や鋳造部材における角部のひずみやクラックを防止する上で必要なものであり、本発明の解決課題であるスプリングの安定した保持を行なうために、単にアール部を除去すれば良いわけであるが、部材の加工上の問題によりアール部のみを除去することは不可能であり、本発明を適用することで従来と同じ加工工程によって、あるいは二次的な追加工なしに、上記解決課題を達成することができる。
【0041】
【発明の効果】
上記発明の実施の形態に説明されたように、環状回転部材のリテーナ部において保持するスプリングに対し安定した保持を行なうことにより、スプリングの安定した付勢力を発生させて装置の作動安定性を向上させることが可能となる。
【0042】
台座部の高さを前記アール部の大きさよりも大きくすることによって、スプリングとアール部との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施の形態の環状回転部材を備えた動力接続部の断面構成説明図。
【図2】図2は図1のD2部を拡大した図であり、スプリング保持部の構成を説明する図。
【図3】図3は従来の環状回転部材を備えた動力接続部の断面構成説明図。
【図4】図4は図3のD101部を拡大した図であり、従来のスプリング保持部の構成を説明する図。
【符号の説明】
1 スリーブ
2 ハウジング
2a 径方向部
2b 軸方向部
3 圧力プレート
3a 内径端部
3b シールリップ
3c 外径端部
3d シールリップ
4 キャンセルプレート(環状回転部材)
4a 円筒状部
4b 径方向部
4c 台座部
4d 筒部内周面
4e アール部
5 多板クラッチ
6 ストッパ部材
7 スプリング
7a 当接面部
8 リテーナ
CL 動力接続部
G1 隙間
KR 環状領域
PR 圧力室
Claims (1)
- 円筒状部と、
該円筒状部から内向きに延出した径方向部と
を有し、
前記円筒状部の内周面のスプリングに対向する領域内のうち最も内側の面のみにより、ラジアル方向に移動してきたスプリングがさらにラジアル方向に移動しないようにガイドすると共に、
前記径方向部によりスプリングの一端を支持する、プレス板金部材でしぼり形成されている環状回転部材のスプリング保持構造であって、
前記環状回転部材の径方向部に、前記環状回転部材の円筒状部の内側から離間した台座部を備え、
前記環状回転部材の円筒状部の前記スプリングをガイドする前記面と径方向部との接続部位にアール部を有し、
前記スプリングがラジアル方向に移動してきたときに前記スプリングのスプリング長が変化するのを抑制すべく、前記アール部を、前記台座部のスプリング配置側の表面からスプリング配置側とは反対方向に退いた位置に設ける
ことを特徴とする環状回転部材のスプリング保持構造。
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JP22233698A JP4141541B2 (ja) | 1998-07-22 | 1998-07-22 | 環状回転部材のスプリング保持構造 |
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