JP4138336B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外観を向上しうる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤは、通常、カーボンブラックなどの補強材が配合された黒色のゴムによって形成される。ところが、時間の経過とともにゴムに添加されたワックス等の油分や老化防止剤などの添加剤がタイヤの外表面に移行して滲み出し、反射光等によっては外表面がぎらついて見えることがあり外観を損ねやすい。特にこのような傾向は、外部から視認されやすいサイドウォール部において顕著となる。
【0003】
従来、このような問題を解決するために、ワックスや老化防止剤などの配合量などを減じ前記滲みだし自体を少なくする試みがなされてはいる。しかしながら、ワックスや老化防止剤の配合量が低下すると、タイヤの耐久性や耐候性などが低下するといった不具合を伴う。
【0004】
発明者らは、このような実状に鑑み鋭意研究を重ねたところ、タイヤの外表面に一定の範囲に限定された表面粗さを付与することによって、タイヤに当たる光を乱反射し、タイヤの外表面をしっとりと黒っぽく見せ、前記添加剤の滲みだし等が生じてもこれを目立ち難くして外観の悪化を抑制しうることを見出した。以上のように、本発明は、タイヤの外表面の表面粗さを規制することを基本として、外観を向上しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、外表面の少なくとも一部に、基準長さLを0.8 mm 、評価長さを4 mm として、十点平均粗さRzが5〜100μmでありかつ局部山頂の平均間隔Sが20〜150μmの表面粗さを有する粗面部を具えることを特徴とする空気入りタイヤである。
【0006】
ここで、「十点平均粗さRz」は、JIS−B−0601の規定に準拠して測定される。すなわち、タイヤの外表面を針触式の表面粗さ測定器で測定し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートルで表したものを十点平均粗さRzとする。なお基準長さLを0.8mm、評価長さを4mmの条件とする。
【0007】
また「局部山頂の平均間隔」は、JISには規定がないがISO等で定められており、図2に示すように、タイヤの外表面の粗さ曲線Nからその平均線mの方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分において隣り合う局部山頂間に対する平均線の長さ(局部山頂の間隔)S1、…Si、…Snを求め、この多数の局部山頂の間隔の算術平均値で表される。なお基準長さLを0.8mm、評価長さを4mmの条件とする。
【0008】
また前記粗面部は、サイドウォール部の外表面の少なくとも一部をなすことが望ましく、また粗面部が形成されたゴム部は、老化防止剤又はワックスの配合量を0.5〜5PHRとし耐久性、耐候性などを向上させることが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤの部分斜視図を示している。空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、この両端からタイヤ半径方向外側にのびるサイドウォール部3と、このサイドウォール部3の外端に連なりかつリムに着座するビード部4とを具えるトロイド状で構成され、本例ではラジアル構造カーカス6と、このカーカス6をタガ締めするベルト層7とを有する乗用車用ラジアルタイヤが例示される。
【0010】
本発明の空気入りタイヤ1は、その外表面の少なくとも一部に、十点平均粗さRzが5〜100μmでありかつ局部山頂の平均間隔Sが20〜150μmの表面粗さを有する粗面部5を含むことを特徴事項の一つとしている。本実施形態の粗面部5は、外部から視認されやすいサイドウォール部3の外表面3aに形成したものを示している。またサイドウォール部3の外表面3aに標章等の模様9が形成される場合があるが、本例ではこの模様9についても粗面部5で形成している。
【0011】
発明者らの種々の実験の結果、このような粗面部5は外部からの光を好ましい加減で乱反射できタイヤ1をしっとりとした色調で黒々と見せることが判明した。そして、曝露実験等を繰り返しタイヤ外表面に添加剤を滲み出させても、この粗面部5では滲みだしが殆ど目立たず、長期に亘ってタイヤの外観を向上維持しうることを見出した。
【0012】
前記粗面部5において、十点平均粗さRzが5μm未満であると、光が良い加減に乱反射せず、逆にタイヤが白っぽく見えてしまう傾向が強く、しかもタイヤ外表面に滲みだした油分などのぎらつきなどが目立ちやすくなる。なお従来のタイヤでは、この十点平均粗さRzが2μm程度のものが多く、このように滲みだしが目立っていたと考えられる。逆に粗面部5の十点平均粗さRzが100μmよりも大きくなると、タイヤの外表面がヤスリのようにザラザラとした質感となり、商品価値を損ね易いため好ましくない。より好ましくは、粗面部5の十点平均粗さRzを8〜80μm、さらに好ましくは10〜50μm、特に好ましくは15〜35μmとするのが望ましい。
【0013】
また発明者らは、このような好ましい範囲の十点平均粗さRzに従い複数本のタイヤを試作したところ、意外にも上述の十点平均粗さRzの範囲を満たすタイヤでありながら外観の向上がさほど向上されていないタイヤが含まれていることに気付いた。そして、これらの全てのタイヤから荒さ曲線を採取して鋭意検討したところ、その主たる原因は、表面粗さの偏りにあるあることを突き止めた。表面粗さの偏りとは、図3に示す如く、基準長さLの粗さ曲線Nの中に、上述の十点平均粗さRzを満たしうる振幅の山や谷が含まれてはいるものの、これらの大部分が基準長さLの一方側に偏って存在する現象を指す。このような粗さ曲線mの外表面を持つタイヤでは、部分的に反射ムラ等が生じてしまい、粗面部5において、しっとりとした黒さを醸し出すことが困難となることが判明した。
【0014】
そこで、本発明者らは、このような表面粗さの偏りのないタイヤについて種々実験を繰り返したところ、前記十点平均粗さのパラメータに加え、局部山頂の平均間隔Sを20〜150μmに限定することが非常に有効であることを見出した。すなわち、前記粗面部5において、局部山頂の平均間隔Sが20μmよりも小であると、表面粗さの偏りが生じ易く、その結果、タイヤを効果的に黒々と見せることできないことが分かった。逆に、粗面部5の局部山頂の平均間隔Sが150μmよりも大きくなると、表面粗さの偏りは防止できるが、適度な粗さを維持するために、十分平均粗さRを大きくする必要があり表面がザラザラし商品価値を損ねるという傾向があり好ましくない。このような観点より、特に好ましくは局部山頂の平均間隔Sを25〜120μm、より好ましくは30〜100μm、さらに好ましくは40〜70μmとするのが望ましい。
【0015】
なお前記十点平均粗さRz、局部山頂の平均間隔Sは、いずれも粗さ曲線から抜き取る基準長さLを0.8mm、評価長さを4mmとすることが前提となる。標準長さLが0.8mmよりも小さいと、十点平均粗さRzを大きく見積もってしまい、平滑で色っぽい表面になる傾向があり、逆に0.8mmよりも大きいと、十点平均粗さRzを小さく見積もってしまい、荒れた表面になり易いなど商品価値を損ねるという傾向がある。
【0016】
本実施形態では、前記粗面部5が、サイドウォール部3の外表面3aをなすものを示しているが、特にこの位置には限定されるわけではない。従って、サイドウォール部3の外表面3a以外にも、トレッド部2やビード部4などの各外表面を粗面部5とすることもできる。また、特に好適にはタイヤ1の外表面全体をこのような粗面部5で形成することが望ましい。
【0017】
前記粗面部5が形成されるゴム部(本例ではサイドウォールゴム)には、老化防止剤及び/又はワックスを0.5〜5PHR含ませることが可能である。老化防止剤、ワックスなどの添加剤をこのような配合量で含むことにより、該ゴム部の耐久性、耐候性などを向上させることができる。またワックス又は老化防止剤がタイヤの外表面に滲みだしても、粗面部5によって光を効果的に乱反射させ、該添加剤の滲みだしを目立たなくする。従って、タイヤの耐久性を高めつつ外観の悪化が抑制される。
【0018】
また、このような粗面部5は、図4に示す如く、該粗面部5と実質的に等しい表面粗さを具えた粗面部成形面12を有するタイヤ加硫金型10によって形成することができる。即ち、金型10の表面粗さが加硫成形によりタイヤ1の外表面に実質的に同一の表面粗さで転写される。
【0019】
本実施形態のタイヤ加硫金型10は、タイヤを加硫成形する成形面11を有する。該成形面11は、例えばトレッド部2の外表面を成形するトレッド成形面11a、サイドウォール部3の外表面3aを成形するサイドウォール成形面11b、及びビード部4の外表面を成形するビード成形面11cを含み、例えばアルミニウムで形成されている。本例では、前記サイドウォール成形面11bに、前記粗面部成形面12を設けた態様を例示する。そして、該粗面部成形面12は、前記粗面部5と同一の表面粗さ、即ち十点平均粗さRzが5〜100μmでありかつ局部山頂の平均間隔Sが20〜150μmの表面粗さを有する。
【0020】
このような粗面成形部12は、例えば前記成形面11に特定形状の砥粒を噴射しかつ衝突させる砥粒噴射工程により形成しうる。砥粒噴射工程において、砥粒は高圧空気、高圧液体又は遠心力などあらゆる手段を用いて加速させて噴射させることができ、その方法は問わない。また砥粒の材料は特に限定されないが、例えば鉄、鋳鋼、セラミックス等が好適である。
【0021】
図5(A)には、このようなタイヤ加硫金型を製造するのに適した砥粒Tの一例を拡大して示す。該砥粒Tは、鉄を原料とし、例えば平均粒子径が10μm以上かつ1mm以下、より好ましくは20μm〜0.7mm、さらに好ましくは30μm〜0.5mmで、しかも表面に比較的鋭の稜線を多数有する砕石状かつ非球形状のものが好ましい。
【0022】
前記砥粒Tの平均粒子径が10μm未満であると、高圧空気を用いて加速、噴射させる際に周囲に飛散して作業環境が悪化しやすく、しかも粗面部成形面12が上述のような表面粗さになり難い。逆に砥粒Tの平均粒子径が1mmを超える場合、砥粒Tの表面が持つ鋭の稜線を転写しづらくなり、しかも金型表面を早期に摩耗させるという傾向があるため好ましくない。
【0023】
また砥粒Tに、図5(B)に示すビーズショットのような略球状のものを用いると、粒子径を種々違えても上述の粗面部成形面5の表面粗さを得ることが難しい。このように、本実施形態では、表面に鋭の稜線が多数形成された無秩序な形態を有する砕石状の砥粒Tを用いるのが望ましい。
【0024】
より好適には、砥粒Tの比重は0.5〜20、さらに好ましくは0.8〜18、特に好ましくは1.2〜15であるのが望ましい。砥粒Tの比重が5未満であると、タイヤ加硫金型10の成形面11に微細な凹凸を付与するためには衝突速度を大幅に高めたり或いは砥粒Tを長時間噴射し続ける必要があるため作業性に難があり、逆に20を超えると、砥粒Tを加速するのに多くのエネルギーが必要となるため生産コストを増大させる他、金型の摩耗を早める。
【0025】
また、より好適には、砥粒のモース硬度は2〜10、さらに好ましくは2.5〜8、特に好ましくは3〜7であるのが望ましい。砥粒のモース硬度が2未満であると、金型表面を荒らす能力が低くなるという不具合があり、逆に8を超えると、早期に金型を痛め易いという傾向がある。
【0026】
本実施形態では、このような砥粒Tを100〜1000kPaの高圧空気によって前記成形面に30秒以上かつ10分以下の時間で前記噴射して粗面成形部12を形成している。砥粒Tを噴射するための高圧空気が100kPa未満又は噴射、衝突時間が30秒未満であると、成形面11に満遍なく粗面部成形面12を形成するのが困難な傾向があり、逆に高圧空気が1000kPaを超える場合又は砥粒の噴射衝突時間が10分を超える場合には、砥粒Tが衝突によって成形面に突き刺さったり、あるいは成形面を損傷させるおそれがある。なお砥粒Tの比重、前記高圧空気の圧力などを調節し、砥粒の噴射速度(砥粒が噴射装置から噴射されるときの速度)が0.3〜10(m/s)、より好適には0.5〜7(m/s)であることが望ましい。
【0027】
図6(A)には、このような砥粒を噴射した粗面形成部12の表面拡大写真を示し、同図(B)には、ビーズショット(平均粒子径200μm)を衝突させた成形面を示す。図6(A)の粗面形成部12では、表面が非常に細かくかつランダムな凹凸がきめ細かく形成されているのに対して、図6(B)のものは、表面が非常に滑らかでかつ鱗状のような周期的模様となっており、形状の相違が明瞭に生じていることが確認できる。
【0028】
【実施例】
粗面部を有するサイズ235/45ZR17の乗用車用ラジアルタイヤ(実施例)を表1の仕様に基づき試作しタイヤの外観を評価した。また比較のために、粗面部を有しない同サイズのタイヤ(比較例)についても併せて試作した。実施例については、サイドウォール部の外表面に粗面部を設けた。またタイヤの外観は、新品状態及び曝露(夏期の晴天時10日間の曝露)を行った後の状態の双方で行い、5点法により評価した。数値が大きいほど良好である。テストの結果などを表1に示すが、実施例のものは、比較例に比べて外観を大幅に向上していることが確認できる。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】
上述したように、本発明の空気入りタイヤは、粗面部によって外部からの光を好ましい加減で乱反射できタイヤを黒々と見せることができる。これにより、添加剤の滲みだし等が目立ちにくくなり、長期に亘りタイヤの外観を向上しうる。とりわけ、請求項2記載の発明のように、外部から視認されやすいサイドウォール部にこの粗面部を形成することにより、より効果的にタイヤの外観が向上できる。
【0031】
また、請求項3ないし4記載の発明のように、前記粗面部が形成されたゴム部が、ワックス又は老化防止剤を0.5〜5PHR含むときには、通常のタイヤと同様に耐久性などを高めることができる。またワックス又は老化防止剤がタイヤ外表面に滲み出しても外観を損ねることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す部分斜視図である。
【図2】局部山頂の平均間隔Sを説明するための粗さ曲線を示す線図である。
【図3】表面粗さの偏りを説明するための粗さ曲線を示す線図である。
【図4】タイヤ加硫金型の部分斜視図である。
【図5】 (A)は本実施形態で用いた砥粒の拡大図、(B)は従来のビーズショットの拡大図である。
【図6】(A)はタイヤ加硫金型の粗面成形部の拡大図、(B)は球状の砥粒を衝突させた金型の表面拡大図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
3a サイドウォール部の外面
4 ビード部
5 粗面部
10 タイヤ加硫金型
11 成形面
12 粗面部成形面
Claims (4)
- 外表面の少なくとも一部に、基準長さLを0.8 mm 、評価長さを4 mm として、十点平均粗さRzが5〜100μmでありかつ局部山頂の平均間隔Sが20〜150μmの表面粗さを有する粗面部を具えることを特徴とする空気入りタイヤ。
- 前記粗面部は、サイドウォール部の外表面の少なくとも一部をなすことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記粗面部が形成されたゴム部は、老化防止剤を0.5〜5PHR含むことを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
- 前記粗面部が形成されたゴム部は、ワックスを0.5〜5PHR含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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