JP4138088B2 - 粉粒体状油脂およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、加工食品の材料として使用される粉粒体状油脂およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、菓子類やパン類、麺類、乳製品、練り製品、飲料などの加工食品が大量に生産されているが、特にインスタント麺や粉末飲料、即席スープなどの即席食品の分野において、消費者の高級志向や本物志向の要求が高まり、より複雑な風味の調味料、シーズニングオイル、油性香料または精油などを添加するための技術が要求されている。
【0003】
風味を改良する際に用いる油脂類を即席食品に配合する際には、その添加を容易にする等の理由でこれを粉末化する技術が求められるが、従来、香味成分を含む油脂類をその香味成分を保持した状態で粉末化することは容易ではなく、通常は粉末化せずに小容器に収容して喫食時に混ぜ合わせたり、その他の調味料と混ぜてペースト状にしたり、粉末状の基材に少量の油脂類を保持させるようにしていた。
【0004】
従来の粉末状油脂の代表的な製造方法としては、以下の(1)〜(4)の方法が挙げられる。
(1) 油脂類と水に溶かした乳化剤、タンパク質、澱粉などを配合してエマルジョンを作成し、これを噴霧乾燥する方法(いわゆるスプレードライ法)。
(2) 油脂類を澱粉加工品などに吸着させる方法。
(3) 高融点の固型油脂を低温で粉砕して粉末化する凍結粉砕法。
(4) 溶融した油脂を低温室内で噴霧して粉末化する方法(いわゆるスプレークーリング法)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の方法で粉末状油脂を製造すると、以下のような問題が起こる。すなわち、上記(3)の凍結粉砕法や(4)のスプレークーリング法では常温で流動性を有する粉末を製造するために高融点の油脂を使用する必要がある。このような粉末状油脂は口溶け性の点でスープなどの用途には用い難いものであった。
【0006】
また、加熱乾燥工程を要する粉末状油脂の製造方法(1)では、低沸点である香味成分が揮散し易く、また香味成分がスプレー時の加熱により変質し易くなって本来の香り、味、色を損じる場合もあり、またその配合特性上スープを乳化させるため、透明性を求めるようなものには用い難い。
【0007】
上記(2)油脂類を澱粉加工品などに吸着させる方法では、製造設備その他の製造上のコストが低く、また過度の高温の熱処理工程を要しないので、香味成分を保存しやすい点で好ましい粉末状油脂の製造方法ではあるが、単に吸着させるのみでは油脂吸着量が多くても全体の40〜50重量%に止まり、それ以上に油脂を吸着させればブロッキング(塊状化)を起こしたり、油脂が滲みだすという欠点を有していた。
【0008】
また、保存条件や保存期間の長さにおける香気成分の変化や保香性の悪さ、香気成分を溶解している油脂自身の安定性の問題等のいくつかの問題を有しており、その改善が望まれていた。
【0009】
そこで、本願の発明の第1の課題は、前記(2)の吸着法の問題点を解決し、粉または粒状の油脂の保存安定性が優れており、かつ粉粒体での流動性にも優れていると共に、油脂保持量が60重量%を越えてもブロッキング(塊状化)を起こさず、油脂が滲みだすことがない粉粒体状油脂およびその製造方法を提供することである。また、他の粉末材料との混合が良好であり、温湯で速やかに融解し、かつ清澄な溶解液を得ることができる粉粒体状の油脂およびその製造方法を提供することをも課題としている。
【0010】
また、本願の発明の第2の課題は、上記問題点を解決すると共に、保香性が優れた粉粒体状の油脂およびその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の第1の課題を解決するため、常温で固体状の油脂類を吸着した多孔質食品素材からなる含油粉粒体の表面に、前記油脂類より固体脂指数が高い油脂類の被覆層を設けた粉粒体状油脂としたのである。
【0012】
この発明でいう常温とは、10〜35℃であり、固体脂指数とは、固体含有率係数またはSolid Fat Index (SFI) とも称される油脂中の固体含量を示す数値であり、油脂1kg中の固体部分が所定の測定温度(例えば35℃、40℃)において、完全に溶解するまでに膨張した体積をmlで表したものである。また、固体脂指数は、近似的には固体脂肪の%を示す。固体脂指数の測定方法は、A.O.S.C.に記載のディラメトリー法による。
【0013】
前記粉粒体状油脂における多孔質食品素材は、比容積5〜20cm3 /gのものを採用することができ、例えば澱粉またはデキストリンを主成分とする澱粉加工品を採用することができる。
【0014】
前記粉粒体状油脂における含油粉粒体は、常温で固体状の油脂類を吸油限度量まで吸着した多孔質食品素材からなる含油粉粒体を採用できる。
【0015】
また、粉粒体状の油脂の製造方法に係る発明では、上記の第1の課題を解決するため、吸油性のある多孔質食品素材からなる粉粒体に、常温で固体状の油脂類の加熱溶融液を吸着させ、次いで前記油脂類を冷却固化し、得られた含油粉粒体の表面に前記油脂類より固体脂指数が高い油脂類の加熱溶融液を被覆し、この被覆の油脂類を冷却固化する粉粒体状油脂の製造方法としたのである。
【0016】
上記粉粒体状油脂またはその製造方法に係る発明では、含油粉粒体の表面に被覆する油脂類として、多孔質食品素材に吸着される油脂類に比べて35℃での固体脂指数が5以上大きくかつ40℃での固体脂指数が5以上大きい油脂類を採用することができる。
【0017】
また、粉粒体状油脂またはその製造方法に係る発明における多孔質食品素材に吸着させる油脂類は、シーズニングオイル、油性香料および精油類から選ばれる一種以上の香味成分を含む油脂類を採用することができ、また、そのような油脂類として35℃での固体脂指数が20以上でありかつ40℃での固体脂指数が10以上の油脂類を採用することができる。
【0018】
また、粉粒体状油脂の製造方法に係る発明においても、粉粒体に油脂類の加熱溶融液を吸着させる際、多孔質食品素材の吸油限度量まで吸着させることができ、材料その他の条件として、前記の粉粒体状油脂に係る発明における条件を採用できるのは勿論である。
【0019】
また、前記第2の課題を解決するため、前記粉粒体状油脂およびその製造方法に係る発明において、多孔質食品素材に吸着された油脂類が、シーズニングオイル、油性香料および精油類から選ばれる一種以上の香味成分を含む油脂類としたのである。
【0020】
上記したように構成される本願の各発明では、固体状油脂を加熱溶解した液状の油脂を多孔質食品素材に吸着させた後、固化して含油粉粒体を作製し、この含油粉粒体の表面に前記油脂よりも固体脂指数が高い油脂類の溶融液を被覆し、これを冷却固化するという2段階の油脂保持工程または複数の油保持構造を複合したことによって、多孔質食品素材にその空隙内に充填可能な限界量まで油脂を吸着保持させることができ、油脂保持量が50重量%を越えても粉末状油脂がブロッキングを起こしたり、油脂の滲みだしがなく、安定して良好な品質の粉粒体状の油脂を提供できる。
【0021】
また、含油粉粒体の表面に吸着された油脂よりも固体脂指数が高い油脂類の溶融液を被覆し、この油脂を冷却固化したことにより、製造された粉粒体状油脂の表面にべたつき(粘着性)がなくなり、さらさらとした流動性のよい粉粒体になり、従来製品の粉粒体状油脂よりも流動性が改善される。
【0022】
また、多孔質食品素材に香味成分を含む油脂を吸着させ、その含油粉粒体の表面に前記吸着させた油脂よりも固体脂指数の高い油脂類で被覆固化して粉粒体状油脂を製造することにより、保存状態で芳香が揮散し難く保香性に優れた粉粒体状の香味性油脂を製造できる。
【0023】
このようにして製造された粉末状油脂を温湯に投入すると、速やかに分散して油脂を分離し、澱粉またはデキストリンからなる多孔質食品素材は温湯に溶け、水層および油層共に透明な液になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本願の発明に用いる多孔質食品素材は、例えば澱粉加工品のように、その内部または表面に多数の小孔を有して空隙率の高い、比容積の大きい不定形の粉粒体(粉体または顆粒体を含む)であり、好ましくはその比容積が約5〜20cm3 /g、粒度が10〜300メッシュのものである。このような多孔質食品素材は、無味無臭にちかいもの、水または温湯に容易に溶解するものが好ましい。
【0025】
上記した条件を満たす多孔質食品素材としては、各種の植物由来の澱粉分解物を水に溶かした液を乾燥粉末化したもの、エクストルーダー、パフガンなどの装置で多孔質化した澱粉加工品などが適当である。
【0026】
澱粉加工品の製造例としては、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、モチトウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉などの天然澱粉、アミロースやアミロペクチン分画物などを酸、アルカリまたは酵素により加水分解した液体をドラム式乾燥機(ドラムドライヤー)などを用いて乾燥して粉末化したもの、エクストルーダー、パフガンなどの装置を使用することにより多孔質化したもの、または前記澱粉類をデキストリン化し、これをアルカリ触媒の存在下に無水アルケニルコハク酸エステルと反応させ、または前記澱粉に無水アルケニルコハク酸を反応させた後、デキストリン化し、これを含有する水分散液を常法に従ってドラムドライヤーなどで乾燥粉末化したもの(特開平5−301906号公報)などがある。これらの処方によって得られる澱粉加工品は、多孔質であり、油吸着能が極めて優れたものである。
【0027】
多孔質食品素材に吸着させる常温で固体状の油脂類は、常温(10〜35℃)で固体または半固体である周知の食用油脂を採用できるが、特に香味成分を含む香味性油脂類を採用できる。ここでいう香味性油脂類は、たとえば野菜類、魚介類、畜肉類などの香味性素材を動植物性油脂で加熱抽出法などで抽出したシーズニングオイル、前記したような香味性素材をヘキサンやアセトン等の溶剤を用いて香味成分を抽出したオレオレジン、または油性香料などを油脂中に配合した食用油脂類である。
【0028】
香味成分を配合する油脂(基材)としては、パーム油、菜種油、大豆油、コーン油、米油、オリーブ油、ごま油などの植物性油脂、その硬化油もしくは分別油、またはラード、牛脂などの動物性油脂、その硬化油もしくは分別油を採用することができる。これら例示した油脂の一種、または二種以上の混合油を採用してもよい。
【0029】
このような多孔質食品素材に吸着させる油脂類の硬さは、固体脂指数(SFI)が35℃で20以上かつ40℃で10以上、好ましくは35℃で25以上、40℃で15以上であるものが好ましい。前記所定温度でのSFI値未満の軟らかい油脂を採用すると、外部温度で油脂の一部が溶解し、粉粒体外部に滲み出したり、調製された粉粒体状油脂の流動性が好ましくなくなり、粉粒体状油脂の輸送時や使用時にブロッキングを起こす可能性が生じるからである。
【0030】
なお、本願の発明における香味成分を溶解した油脂として、比較的硬い油脂を採用することは、加工された粉粒体状油脂の香味成分の揮発を抑制するために好ましい。
【0031】
含油粉粒体の表面を被覆する油脂としては、先述したように、吸着用油脂よりも固体脂指数の高い油脂を用いるが、具体的には固体脂指数が吸着用油脂に比べて35℃で5以上、40℃で5以上大きな油脂を用いることが好ましい。使用される油脂の種類としては、パーム油、菜種油、大豆油、コーン油、米油、オリーブ油、ごま油等の植物性油脂、それらの硬化油(極度硬化油でもよい)、またはラード、牛脂などの動物性油脂、それらの硬化油(極度硬化油でもよい)またはこれらの油脂を2種以上混合したものを採用できる。また、吸着用油脂よりも固体脂指数が大きなものであれば吸着用油脂と同様に香味成分を含む油脂類も使用可能である。
【0032】
なお、使用される油脂の固体脂指数としては、吸着用油脂よりも固体脂指数が高い条件以外に被覆用油脂自体としては、固体脂指数が35℃で25以上、40℃で15以上、好ましくは35℃で30以上、40℃で20以上のものを採用することが好ましい。
【0033】
また、従来の粉粒体状油脂では、油脂吸着量が40〜50重量%に止まり、それ以上に油脂を吸着させればブロッキング(塊状化)を起こしたり、油脂が滲みだすという欠点があったが、本願の発明における粉粒体状油脂では、吸着および被覆により総油脂含量は、50重量%以上、好ましくは60〜90重量%とすることができる。
【0034】
このように、粉粒体中の油脂含量を高めることができた理由としては、第1に従来技術ではブロッキングなどが起こり、流動性が極めて悪くなるため、吸油能のある澱粉加工品などの多孔質食品素材に多量の油脂類を吸着させることができなかったのに対して、本願の発明では、多孔質食品素材の表面を所定の油脂で被覆して固めることにより、多孔質食品素材に吸油能の限界量まで油脂類を吸着させることができるようになったことが挙げられる。
【0035】
また、多孔質食品素材に吸着させる油脂類として、常温で固体状の油脂を採用したことにより、多孔質食品素材に吸着されそのまま固化した油脂類が、外部に溶出することがないため、多孔質食品素材に吸油能の限界量まで油脂類を吸着させても粉粒体の表面はべた付きがない。
【0036】
なお、吸着させる油脂類として、常温で液状の油脂を採用すると、少量しか吸着できず、粉粒体から油脂が不適当に滲み出しやすくなる。
【0037】
また、第2に多孔質食品素材の表面を所定の油脂で被覆して固めたものは、油脂含量が増加するばかりでなく、被覆表面の潤滑性が単に油脂を多孔質食品素材に吸着させたものよりはるかに向上する。
【0038】
ところで、多孔質食品素材に吸着させる油脂(以下、吸着用油脂と略記する。)と、多孔質食品素材の表面を被覆する油脂(以下、被覆用油脂と略記する。)の違いとしては、吸着用油脂よりも固体脂指数の高い油脂を被覆用油脂として採用する。すなわち、比較的硬い被覆用油脂の内部に香料やシーズニングオイルを含有して比較的柔らかい吸着用油脂を採用することにより、粉末状油脂の内部から香料やシーズニングオイルの揮発性香味成分などが抜け出たり、香味成分を含む油脂が不適当に滲みだすことが防止され、また空気中での酸化が抑制され、製造直後と同様の風味を持続する粉末状油脂になる。
【0039】
さらに、これらの香味成分を含む風味油は、製造工程上、比較的柔らかい油脂の方が製造しやすく、取り扱いも容易であることは勿論であり、一方、固体脂指数が高くてより硬い油脂で含油粉粒体の表面を被覆することは、粉末油脂の流動性を高めるためにも好ましい。
【0040】
また、極度硬化油は、常温で非常に固体脂指数が高くて硬くかつそのトリグリセリド組成における不飽和の二重結合が殆どないものであるから、これを多孔質食品素材の表面を被覆する油脂として採用すると、酸化による風味劣化や変色が少なくて長期保存に適した粉粒体状の油脂を製造できる。
【0041】
上述の条件で製造されるこの発明に係る粉粒体状油脂は、温湯に投入すると速やかに融解するとほぼ同時に油脂を分離し、水層および油層共に透明な液になり、溶解した油脂から変質のない香味成分本来の成分が放出される。
【0042】
本願の発明における粉粒体状の油脂の製造工程を以下に説明する。
まず、吸着用油脂類として、好ましくは香味成分を含有する油脂類を採用し、これを適当な加熱装置を用いて溶融する。その際の加熱温度は、採用する油脂の融点により異なるが、好ましくは油脂類の融点より10℃以上高く、しかも溶融した油脂液の温度が100℃以下になるようにする。
【0043】
油脂液の温度が100℃を越えると、澱粉加工品等からなる多孔質食品素材に混合して含浸させる際にこれを変性して凝固させ、また油脂中の香味成分が揮発したり、変性する可能性もあって好ましくない。また、油脂類の融点より10℃未満の低温では油脂の粘度が大きいため澱粉加工品などの多孔質食品素材と油脂を均一に分散させ難くなり、このため油脂含量(吸着量)が不均一な粉粒体状油脂が製造される。
【0044】
油脂類は、通常、多孔質食品素材の吸油能(液状の油脂を吸着する能力)の限界量まで吸着させるが、その量は使用する多孔質食品素材の種類によって異なる。吸着させる油脂類の硬さは、そのSFIや融点、結晶化速度(測定値)によって示される。これらの量や硬さを調整する場合の目安は、多孔質食品素材と油脂類を混合し均一化して、固化させた後の状態が容易に粉体になるか否かである。
【0045】
吸油性のある多孔質食品素材からなる粉粒体に、常温で固体状の油脂類の溶融液を吸着させる際には粉粒体と油脂類とを混合する。使用する混合機の型式は特に限定されるものではなく、ニーダー、ブレンダー、エアーミックスなどの均一に混合できるものを適宜に採用するが、混合機の内部を一定温度に保てるジャケットや恒温装置を具備したものが好ましい。
【0046】
混合時の攪拌速度は、均一に混合できる状態であれば良く、なるべく低速であることが好ましい。なぜなら、澱粉加工品からなる多孔質食品素材からなる粉粒体は、その内部およびまたは表面に空隙を有しており、この空隙は攪拌の際に破壊されやすいからである。空隙が破壊されると空隙内に吸着されている油脂類が流出するので、流動性が悪く粘着性のある粉粒体油脂が製造されることになる。そして、上記同様の理由によって、混合機の攪拌羽の形態も被攪拌物に負荷の少ない形態であるものが好ましい。
【0047】
油脂類と澱粉加工品等からなる多孔質食品素材を均一に混合した後は、混合物を冷却して固化させる。冷却法としては、攪拌しながら混合物に冷風を吹き込むか、混合機のジャケットに冷媒を通すか、混合物を別容器に移して放冷するか、または低温室に放置する。固化した粉末は、必要であればシフターにかけ粉砕して粒度を揃える。
【0048】
その後、油脂類の融点よりも10℃以上低い温度に設定された場所に12時間以上放置して吸着された油脂成分を安定させ、すなわち熟成させる。
【0049】
このような熟成操作を行なうと、多孔質食品素材に吸着された油脂のトリグリセリドの結晶転移が起こるためか、油脂の状態が安定化する。そして、次工程で含油粉粒体に加熱溶融した油脂を被覆するときに、吸着された油脂が溶出せず、また吸着された油脂の表面状態が改善され、製造工程が容易になって安定した品質の粉粒体状油脂を製造できる。
【0050】
また、澱粉加工品等からなる多孔質食品素材に揮発しやすい香味成分を含む油脂を吸着させ、粉粒体の外側に比較的硬い油脂で被覆を設けると、前記熟成操作によって香味成分の被覆油脂への染みだしをある程度抑制でき、また空気との接触を遮断することができ、香味物質が変質することなく保香性を維持できる粉粒体状油脂を製造できる。
【0051】
次に、前記のように油脂吸着後に熟成させた含油粉粒体に対して、吸着用油脂よりも固体脂指数の高い溶融した液状の被覆用油脂を混合して被覆する。すなわち、前述したシフターおよび粉砕機で粒度調整(分級)した含油粉粒体を混合機に入れ、この混合機に溶融した油脂類を供給して攪拌混合し含油粉粒体の表面を溶融液状油脂で被覆する。
【0052】
混合時に配合する油脂類の量は、含油粉粒体100重量部に対して10〜150重量部であり、好ましくは20〜120重量部である。前記所定量より油脂類を多く配合すると、粒子同士が結着造粒して粉体にならず、ぺーストまたはルウ状のように半固体状になり、前記所定量未満に油脂類を少なく配合すると、被覆が完全でなく均一な油脂含量の粉粒体を製造できない。
【0053】
被覆工程では、予め、含油粉粒体温度を被覆用の油脂類の温度より10〜30℃低い温度に調整(加温)しておくことが好ましい。このように温度調整すると、被覆する油脂類の含油粉粒体表面での固化所要時間を調節することができ、被覆する油脂類が含油粉粒体表面に均等な厚さで付着し、攪拌時間を可及的に短くすることができる。
【0054】
その後は、前工程と同様に放冷などによって冷却し、油脂類を固化させ、次いでシフターおよび粉砕機で粒度を揃える。
【0055】
ここで、前記工程と同様に、油脂の融点より10℃以上低い所定温度に調整した場所で12時間以上熟成(テンパリング)して、油脂の表面状態を安定させることが好ましい。
【0056】
以上のようにして製造した粉粒体状油脂は、澱粉加工品などの多孔質食品素材と油脂以外の原料を使用しない製法で得られ、かつ乾燥などの高温処理工程を経ることなく製造するので、含有する香味性成分などの風味が劣化せず、油脂の酸化安定性、長期保香性に優れ、前記した従来例(2)の吸着型の粉末状油脂に比べて油脂含有量が高く、粒子表面の硬質油脂によって流動性にも優れたものになる。
【0057】
【実施例】
以下の配合割合で油脂Aおよび油脂Bをそれぞれ混合調製し、吸油性澱粉加工品を用いて顆粒状油脂を製造した。
【0058】
〔実施例1〕
吸油性澱粉加工品(日澱化学社製:オイルQS、比容積12.5±2.5cm3/g で粒径16メッシュ98%以上の粉末) 30重量部
油脂A: ごま油 10重量部
菜種白絞油 20重量部
牛脂極度硬化油 40重量部
油脂B: ラード 5重量部
牛脂極度硬化油 15重量部
上記油脂Aを70℃まで加温して溶解後、予め澱粉加工品であるオイルQSを入れたミキサーに投入し、数分間攪拌した。低温(15℃)で固化した後、シフター(8メッシュ)及び粉砕機にかけて顆粒状の含油粉体を得た。
【0059】
この含油粉体を庫内温度35℃のインキュベータ内で24時間保温して熟成させ、その後、釜温度40℃に保温したミキサーに加熱溶融した80℃の油脂Bと共に投入し、数分間攪拌した。次いで、混合物を15℃で固化し、シフター(8メッシュ)および粉砕機にかけて粒度を揃え、さらに庫内温度35℃のインキュベータ内で24時間保温してテンパリングし、顆粒状油脂を製造した。
【0060】
〔参考例〕
澱粉加工品(松谷化学社製:パインフロー、比容積8.5±2.5cm3/gで粒径16メッシュ98%以上の粉末) 40重量部
油脂A:オニオンフレーバー 0.5重量部
なたね油 20重量部
牛脂極度硬化油 40重量部
油脂B:牛脂 5重量部
牛脂極度硬化油 20重量部
上記油脂Aを70℃まで加温して溶解後、予め澱粉加工品であるデキストリンを入れたミキサーに投入し、数分間攪拌した。低温(15℃)で固化した後、シフター(8メッシュ)及び粉砕機にかけて顆粒状の含油粉体を得た。
【0061】
それを釜温度40℃に保温したミキサーに加熱溶融した80℃の油脂Bと共に投入し、数分間攪拌した。次いで、混合物を15℃で固化し、シフター(8メッシュ)および粉砕機にかけて粒度を揃え、さらに庫内温度35℃のインキュベータ内で24時間保温してテンパリングし、顆粒状油脂を製造した。
【0062】
実施例1および参考例で得られたそれぞれの顆粒状油脂は、さらさらとした非常に流動性がよいものであり、90℃の温湯に投入すると、速やかに分散して溶解し、ゴマ油またはオニオンフレーバーの香ばしい香りを溶出拡散させた。また、実施例1および参考例で得られたそれぞれの顆粒状油脂は、常温で5カ月間保存し、上記同じ試験をしたところ、香りや分散・溶解性が良好で製造直後のものと変化がなく、保香性に優れたものであった。
【0063】
【発明の効果】
本願の粉粒体状油脂およびその製造方法に係る発明は、以上説明したように、多孔質食品素材に加熱溶融した液状の油脂を吸着固化させると共に、その表面に固体脂指数の高い油脂類を被覆固化した粉粒体状油脂とすることによって、粉粒体状油脂の保存安定性が優れており、かつ流動性にも優れていると共に、油脂保持量が50重量%を越えてもブロッキング(塊状化)を起こさず、油脂が滲みだすこともなく他の粉末材料との混合が良好であり、清澄な溶解液を得ることができる粉粒体状油脂を提供できるという利点がある。
【0064】
また、吸油性のある多孔質食品素材が、澱粉またはデキストリンを主成分とする澱粉加工品などからなり、また比容積5〜20cm3 /gで粉粒体状の多孔質食品素材であるという条件を採用すると、油脂吸着力が極めて高く、油脂保持量の特に多い粉粒体状油脂を提供できるという利点もある。
【0065】
また、常温で固体状の被覆用油脂類が、吸着用油脂に比べてその固体脂指数が35℃で5以上かつ40℃で5以上大きい油脂類であるという条件を採用した粉粒体状油脂およびその製造方法に係る発明では、温湯によって速やかに溶解し、しかも油脂が多孔質食品素材から滲みだしにくいという特性が顕著であるという利点もある。
【0066】
また、多孔質食品素材に香味成分を含む油脂を吸着させ、その含油粉粒体の表面を油脂類で被覆固化した粉粒体状油脂の発明、またはこれを製造する方法の発明では、保存状態で油脂から芳香が揮散し難く保香性に優れた粉粒体状の香味性油脂を提供できるという利点がある。
Claims (8)
- 水溶性の多孔質食品素材の内部または表面の空隙に常温で固体状の油脂類を吸着させかつテンパリングした含油粉粒体を設け、その表面に、前記油脂類よりも常温で固体脂指数が高い油脂類の被覆層を設けてなる粉粒体状油脂。
- テンパリングの条件が、油脂の融点より10℃以上低い所定温度に調整した場所で12時間以上の保温である請求項1記載の粉粒体状油脂。
- 含油粉粒体が、常温で固体状の油脂類を吸油限度量まで吸着した多孔質食品素材からなる含油粉粒体である請求項1記載の粉粒体状油脂。
- 多孔質食品素材に吸着した油脂類が、シーズニングオイル、油性香料および精油類から選ばれる一種以上の香味成分を含む油脂類である請求項1記載の粉粒体状油脂。
- 多孔質食品素材に吸着した油脂類が、35℃での固体脂指数が20以上でありかつ40℃での固体脂指数が10以上の油脂類である請求項1または4に記載の粉粒体状油脂。
- 被覆層を形成する油脂類が、多孔質食品素材に吸着した油脂類に比べて35℃での固体脂指数が5以上大きくかつ40℃での固体脂指数が5以上大きい油脂類である請求項1または5に記載の粉粒体状油脂。
- 吸油性のある水溶性の多孔質食品素材からなる粉粒体の内部または表面の空隙に、常温で固体状の油脂類の加熱溶融液を吸着させ、次いで前記油脂類を冷却固化し、さらにテンパリングした後、得られた含油粉粒体の表面に前記油脂類より常温での固体脂指数が高い油脂類の加熱溶融液を被覆し、この被覆の油脂類を冷却固化することからなる粉粒体状油脂の製造方法。
- 粉粒体に油脂類の加熱溶融液を吸着させる際、多孔質食品素材の吸油限度量まで吸着させる請求項7記載の粉粒体状油脂の製造方法。
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