JP4137384B2 - 放電加工機の加工状態良否判定装置 - Google Patents

放電加工機の加工状態良否判定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
この発明は、放電加工機の加工状態良否判定装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
放電加工機において、放電電圧、放電電流や放電電流ピーク値など、放電加工機の放電状態を示すパラメータをヒストグラム表示する放電状態表示装置は、日本国公開特許公報(特開平3−35930号)により、また、放電加工状態を示す平均加工電圧、平均ギャップ電圧、加工速度等の物理量を画面表示する放電加工モニタ装置は、日本国公開特許公報(特開平6−8054号)により公知になっている。
【0003】
この種の放電状態表示装置、放電加工モニタ装置は、放電状態や加工状態を示す物理量を表示するだけであり、加工状態の良否判定を行うためには、それら表示値より作業員が経験則などにより判断しなければらず、ばらつきが生じる。
【0004】
的確な良否判定のために、加工状態を示す複数個の物理量の組合せから良否判定を行うことを要求されるが、これを作業員が行うことは相当むずかしいものになる。
【0005】
他の従来技術として、加工速度、加工電圧、加工電流、電極に印加する電圧のオフタイム、オンタイム、総放電回数、異常放電回数、異常放電率、放電周波数等の加工状態を示す物理量を表示し、それらの物理量と設定値との比較によって良否判定を行う放電加工機の監視装置は、日本国公開特許公報(特開平7−204942号)により公知になっている。
【0006】
この監視装置では、加工状態の良否判定は自動的に行われるが、しかし、加工速度、加工電圧など単一の物理量毎に加工状態の良否判定を行うため、必ずしも的確な良否判定は行われず、的確な良否判定のために、加工状態を示す複数個の物理量の組合せから良否判定を行うためには、作業員が物理量毎に得られた良否判定結果より推定しなければならない。
【0007】
従って、本発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたもので、的確な良否判定を行うことができる放電加工機の加工状態良否判定装置を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の開示】
この発明は、電極と被加工物との加工間隔にパルス状の電圧を印加し、パルス放電によって輪郭加工を行う放電加工機の加工状態良否判定装置において、それぞれ互いに異なる個別の加工状態を示す物理量を前記輪郭加工時に検出する複数個の加工状態検出手段と、少なくとも二種類の物理量のそれぞれの基準値に対する比率に対応した加工状態の良・不良の度合いを物理量毎に予め設定してなる、少なくとも一つのデータテーブルと、前記加工状態検出手段により検出された少なくとも二種類の物理量のそれぞれの基準値に対する比率に対応した、前記データテーブルの加工状態の良・不良の度合いから、前記輪郭加工時の実際の加工状態の良否を総合的に判定する加工状態良否判定手段と、を有し、前記物理量は加工速度、加工電圧、加工電流、電極に印加する電圧のオフタイム、オンタイム、総放電回数、異常放電回数、異常放電率、放電周波数であり、前記加工状態良否判定手段は、それら物理量の少なくとも2種類の比較結果の組合せによって総合的な加工状態を評価し、加工状態の良否を判定する放電加工機の加工状態良否判定装置を提供することができる。
【0009】
したがって、複数個の加工状態検出手段のそれぞれによって互いに異なる個別の加工状態を示す物理量が検出され、加工状態良否判定手段によって加工速度、加工電圧、加工電流、電極に印加する電圧のオフタイム、オンタイム、総放電回数、異常放電回数、異常放電率、放電周波数のうちの少なくとも2種類の物理量毎に設定された基準値と加工状態検出手段により検出される物理量との各物理量毎の比較結果の組合せ、たとえば、加工速度と加工速度基準値との比較結果と、加工電圧と加工電圧基準値との比較結果の組合せから、総合的な加工状態が評価され、これに基づいて加工状態の良否判定が的確に行われる。
【0012】
また、この発明は、前記加工状態良否判定手段が、基準値に対する物理量の割合あるいは偏差量の大小を各物理量毎に段階的に分け、その階級の組合せにより、加工状態の良否を段階的に判定する放電加工機の加工状態良否判定装置を提供することができる。
【0013】
したがって、加工状態良否判定手段によって、基準値に対する物理量の割合あるいは偏差量の大小を各物理量毎に段階的に分けることが行われ、その階級の組合せにより、加工状態の良否判定が段階的に行われる。
【0014】
また、この発明は、各物理量毎に設定された基準値が、加工軌跡形状、加工モードに応じて設定される放電加工機の加工状態良否判定装置を提供することができる。
【0015】
したがって、加工軌跡形状、加工モードに応じて基準値が適正に設定され、加工状態の良否判定がより的確に行われる。
【0016】
また、この発明は、前記加工状態良否判定手段が、所定時間毎の平均値より物理量を評価し、加工状態の良否を判定する放電加工機の加工状態良否判定装置を提供することができる。
【0017】
したがって、加工状態良否判定手段によって所定時間毎の平均値より物理量が評価され、これに基づいて加工状態の良否判定が的確に行われる。
【0018】
また、この発明は、前記加工状態良否判定手段が、加工軌跡の所定区間毎あるいは線分毎の平均値より物理量を評価し、加工状態の良否を判定する放電加工機の加工状態良否判定装置を提供することができる。
【0019】
したがって、加工状態良否判定手段によって加工軌跡の所定区間毎あるいは線分毎の平均値により物理量が評価され、これに基づいて加工状態の良否判定が的確に行われる。
【0020】
また、この発明は、前記加工状態良否判定手段が、加工状態の良否判定結果を表示装置、プリンタ等の出力装置に出力する放電加工機の加工状態良否判定装置を提供することができる。
【0021】
したがって、加工状態良否判定手段によって加工状態の良否判定結果が表示装置、プリンタ等の出力装置に出力され、良否判定結果の表示、プリントアウト等により加工状態の良否判定結果が分かる。
【0022】
また、この発明は、前記加工状態良否判定手段が、表示装置に表示された輪郭加工の加工軌跡線を複数個の領域に区分して加工状態の良否判定結果に応じて加工軌跡線の表示色を区分領域毎に変化させる放電加工機の加工状態良否判定装置を提供することができる。
【0023】
したがって、表示装置に表示された輪郭加工の加工軌跡線が加工状態良否判定手段によって複数個の領域に区分されて加工状態の良否判定結果に応じて加工軌跡線の表示色が区分領域毎に変化し、この表示色より各区分領域毎に加工状態の良否判定結果が分かる。
【0024】
【発明を実施するための最良の形態】
本発明をより詳細に説述するために、添付の図面に従ってこれを説明する。
第1図は、この発明による加工状態良否判定装置が組み込まれるワイヤ放電加工機を示している。ワイヤ放電加工機は被加工物Wが載置されるテーブル定盤1を有しており、テーブル定盤1は、X軸サーボモータ3によってX軸方向に駆動され、Y軸サーボモータ5によってY軸方向に駆動される。テーブル定盤1の位置、換言すれば加工位置はX軸座標値とY軸座標値により決まる。
【0025】
ワイヤ電極7は、ワイヤボビン9より繰り出され、ガイドプーリ11、13、テンション15、ガイドプーリ17、19、テーパ付与器21を経て加工液噴射ノズル付きの上部ガイド23に至り、これにより更に、テーブル定盤1上の被加工物Wを上下に貫通して加工液噴射ノズル付きの下部ガイド25、ガイドプーリ27を経てワイヤ送り回収ローラ29に至り、ワイヤ送り回収モータ31によってワイヤ送り回収ローラ29が回転駆動されることにより、上述の経路を走行する。
【0026】
テーパ付与器21は、U−V軸装置を内蔵し、テーパ加工や上下任意形状の加工を行う時にワーク上方でのワイヤ電極7の位置を上部ガイド23と共に下部ガイド25に対して変位させるものであり、テーパ付与器21には、テーパ付与器21および上部カイド23をZ軸方向に移動させるためのZ軸サーボモータ33と、テーパ付与器21および上部カイド23をU軸方向に移動させるためのU軸サーボモータ35と、テーパ付与器21および上部カイド23をV軸方向に移動させるためのV軸サーボモータ37とが接続されている。
【0027】
下部ガイド25はワイヤ電極7に対する給電体を兼ねており、給電体としての下部ガイド25とテーブル定盤1に電源装置39が導通接続されている。電源装置39はパルス電圧を下部ガイド25とテーブル定盤1との間、換言すれば、ワイヤ電極7とテーブル定盤1上の被加工物Wとの間にパルス電圧を印加する。
【0028】
このワイヤ放電加工機は数値制御式のみものであり、X軸サーボモータ3、Y軸サーボモータ5、ワイヤ送り回収モータ31、Z軸サーボモータ33、U軸サーボモータ35、V軸サーボモータ37、電源装置39はCNC装置41により従来のもの同様に制御され、パルス放電によって数値制御用の加工プログラムが定めた形状寸法の輪郭加工が行われる。
【0029】
加工状態良否判定装置は、加工状態情報取得部43と、RAM等による加工状態情報記憶部45および評価データ記憶部47と、加工状態良否判定手段49とを有しており、加工状態良否判定手段49には、CRT、LCD等による表示装置51とプリンタ53とが接続されている。
【0030】
加工状態情報取得部43は、加工モード情報、放電加工の加工位置、加工時間と共に、加工状態を示す物理量として、加工速度、加工電圧、加工電流、ワイヤ電極7に印加する電圧のオフタイム、オンタイム、総放電回数、異常放電回数、放電周波数を取り込み、総放電回数と異常放電回数より異常放電率を算出し、これらを加工状態情報記憶部45に書き込む。
【0031】
加工速度は、X軸サーボモータ3およびY軸サーボモータ5が通常のロータリエンコーダ付きのもので、このエンコーダ出力の微分値をCNC装置41より入力することにより、加工電圧は電源回路中に組み込まれた電圧検出器55による電圧計測値を入力することにより、加工電流は電源回路中に組み込まれた電流検出器57による電流計測値を入力することにより、印加電圧のオフタイムおよびオンタイムは電源回路中に組み込まれた放電時間検出器より、総放電回数および異常放電回数は電源回路中に組み込まれた放電検出器より、放電周波数は電源回路中に組み込まれた放電周波数検出器よりそれぞれ取得することができる。
【0032】
加工状態情報記憶部45は、加工工程における上述の各データ(物理量)をサンプリング時間等の所定時間毎に記憶するものであり、ある一つの加工工程あるいは複数個の形状の加工工程におけるデータを記憶することができる。
【0033】
評価データ記憶部47は、各物理量毎に設定された基準値や、加工状態の良否判定マトリックスデータテーブル等を格納している。各物理量毎に設定される基準値は加工軌跡形状、加工モードに応じて設定され、また良否判定マトリックスデータテーブルは、ワイヤ電極の種類、被加工物の種類、板厚に応じて持つことができる。
【0034】
加工状態良否判定手段49は、加工状態情報記憶部45より物理量を入力し、評価データ記憶部47より基準値や良否判定マトリックスデータテーブル等を入力し、加工状態情報記憶部45に記憶された上述のような物理量と各物理量毎に設定されている基準値とを各物理量毎に比較し、それら物理量の少なくとも2種類の比較結果の組合せによって総合的な加工状態を評価し、加工状態の良否を判定する。
【0035】
加工状態良否判定手段49による基準値と物理量との比較は、基準値に対する物理量の割合あるいは偏差量の大小を各物理量毎に段階的に分けるように行うことができ、加工状態の良否判定は、その階級の組合せにより段階的に行うことができる。
【0036】
また、加工状態良否判定手段49は、所定時間毎あるいは加工軌跡の所定区間毎の平均値より物理量を評価し、加工状態の良否を判定するができる。
【0037】
加工状態良否判定手段49は、加工状態の良否判定結果を、表示装置51、プリンタ53等の出力装置に出力する。加工状態良否判定手段49はこのデータ出力において、表示装置51に表示された輪郭加工の加工軌跡線を複数個の領域に区分して加工状態の良否判定結果に応じて加工軌跡線の表示色を区分領域毎に変化させることができる。
【0038】
つぎに、上述の構成による加工状態良否判定装置の動作を第2図および第3図に示されているフローチャートを用いて説明する。
【0039】
第2図は、全体動作を示しており、加工が開始されると、加工状態を示す上述のような各種の物理量を加工状態情報記憶部45に記憶し(ステップS10)、つぎに、加工状態情報記憶部45に記憶された物理量と評価データ記憶部47に格納されている基準値や良否判定マトリックスデータテーブルを用いて、加工状態良否判定手段49が複数種類の物理量について基準値と物理量との比較し、それの比較結果の組合せに基づいて加工状態の良否判定を行い(ステップS20)、その結果をオペレータに知らせるために表示装置51に表示する(ステップS30)。
【0040】
この後に、加工が終了したか否かの判定を行い(ステップS40)、終了していなければ、ステップS10に戻り、加工状態を示す物理量の記憶から再び行う。これに対し終了と判定されれば、そのまま終了になる。
【0041】
第3図は、上述のステップS10における物理量記憶ルーチンを示している。なお、この物理量記憶には、加工状態を示す物理量の記憶を加工工程の所定時間毎に行う場合と、加工状態の記憶を加工軌跡形状の線分毎あるいは線分毎に設定可能な任意の長さ毎に行う場合とがある。
【0042】
加工を開始すると、そのときの時間(加工開始時間)とそのときの座標値(加工開始座標値)を記憶する(ステップS11,ステップS12)。
【0043】
つぎに、加工開始後における現時間と座標値を読み込み(ステップS13,ステップS14)、これに同期して加工状態を示す物理量として加工速度、加工電圧を読み込む(ステップS15)。
【0044】
これらデータの読み込みが完了すれば(ステップS16)、つぎに、ステップS13からステップS15の間に記憶された加工速度および加工電圧の平均値を算出する(ステップS17)。
【0045】
なお、加工状態を示す物理量の記憶を所定時間毎に行う場合には、ステップS11で記憶した時間からステップS13で読み込んだ時間の差分を算出し、その値が任意に設定された時間よりも短い場合にはステップS13に戻り、任意に設定された時間よりも同じか長い場合にはステップS17に進む。加工状態を示す物理量を記憶するために設定する所定時間の他に、ステップS13からステップS15までの時間は、加工状態を示す物理量の記憶するために設定する所定時間よりも短い時間で、任意に設定することができる。
【0046】
加工状態を示す物理量の記憶を加工軌跡形状の線分毎に行う場合には、ステップS14で読み込む座標値が形状の変わる部分、例えば直線から円弧、または円弧から半径の違う円弧か否かを判別し、違う場合にはステップS13に戻り、変わる部分であればステップS17に進む。
【0047】
また、加工状態の記憶を加工軌跡形状の線分毎に設定可能な任意の長さ毎に行う場合には、ステップS12で記憶した座標値とステップS14にて読み込んだ座標値から線分の長さを算出し、その値が任意に設定された長さよりも短い場合にはステップSS13に戻り、任意に設定された長さよりも同じか長い場合にはステップS17に進む。
【0048】
ステップS17にて加工速度および加工電圧の平均値の算出が行われると、計算結果を記憶し(ステップS18)、終了となる。
【0049】
つぎに、第4図〜第11図を参照して実例を詳細に説明する。
第4図は、輪郭加工における加工軌跡形状(パンチ形状あるいはダイ形状)を示しており、第5図〜第7図は、それぞれ第4図に示されている加工軌跡形状のA領域(直線区間)、B領域(直線区間)、C領域(インコーナ部)における加工速度および加工電圧を示している。なお、第5図〜第7図において、縦軸は加工速度および加工電圧を、横軸は時間を示す。横軸については、加工形状の周長または加工した加工距離でもよい。第5図〜第7図において、符号Sは加工速度を、符号Ssetは加工速度基準値を、符号Vは加工電圧を、符号Vsetは加工電圧基準値をそれぞれ示している。
【0050】
加工速度基準値Sset、加工電圧基準値Vsetは、被加工物Wの板厚に応じて設定でき、またメーカ供給の加工条件を使用している場合には、その加工条件中のデータより設定することも、ユーザが蓄積していたデータより設定することもできる。
【0051】
通常加工を実施している時に、加工結果である加工精度を予想するのに最適なのは加工の最終ステップの加工時の加工速度や加工電圧等の加工状態である。このデータに基づい加工状態良否判定手段49にて加工状態良否の判定をする。なお、良否判定は加工の最終ステップのみであるが、途中のステップデータについてもデータの収集と判定は実施している。
【0052】
第8図は、加工状態良否判定手段49が良否を判定するための良否判定マトリックスデータテーブルの一例を示している。このデータテーブルにおいて、横欄は加工速度基準値Ssetに対する加工速度の比率、縦欄は加工電圧基準値Vsetに対する加工電圧の比率を示し、枠の中の数字は良・不良の度合いを段階的に分けて示す数字であり、この例では5段階評価とし、“1”が良状態、“5”が不良状態を示し、“1”に近づくほど良状態を示し、“5”に近づくほど不良の状態を示す。
【0053】
この例では、各欄の階級設定を基準値に対する比率としたが、基準値に一定の値を増減させた値でも使用することができ、また階級設定の分割数を5としたが、これは状況に応じて任意の分割数に設定できる。また、良・不良の度合いを示す数字についてはこの例では5段階としたが、これについても任意の段階に設定することができる。このデータテーブルは使用するワイヤ電極7の種類、被加工物Wの種類、板厚に応じて持つことができる。
【0054】
第5図に示されているように、A領域の加工では、加工速度S、加工電圧Vがそれぞれ、加工速度基準値Sset、加工電圧基準値Vsetにほぼ一致していることから、第8図に示されているデータテーブルでは、良否判定は“1”となり、A領域の加工は基準となる加工とほぼ同じ状態で加工ができたことになる。
【0055】
第6図に示されているように、B領域の加工では、加工速度Sは加工速度基準値Ssetに対して18%程度速く、加工電圧Vが加工電圧基準値Vsetに対して25%程度高い。これは、加工が全体的にオープン状態であり、最終仕上げ加工の放電が良好に被加工物を加工している状態ではないことを指す。この状態は、第8図に示されているデータテーブルでは、良否判定は“4”となり、加工結果は不良に近い状態であることが判定できる。
【0056】
第7図に示されているように、C領域の加工では、加工速度Sはほぼ0となり、加工電圧Vはほぼ0となったのちに加工電圧基準値Vsetに対して20%程度低くなる。これは、一時的に短絡状態であり、放電加工自体が正常に行われていない状態にあることを指す。0は倍数で表すことができないので、便宜上、加工速度、加工電圧ともに最低値と考え、両方とも21%以下の範囲とする。この状態は、第8図に示されているデータテーブルでは、良否判定は“5”となり、加工結果は不良であることが判定できる。
【0057】
上述のように、加工状態の良否判定をオンラインで実施することが可能となり、加工終了後の寸法精度の測定は不良〜不良に近いと云う判定を受けた領域に特定して行うことができ、必要最小限の測定によってアウトプロセスでの測定時間の短縮が可能となる。
【0058】
また、良否判定結果を表示装置51に表示することで、加工終了時にはオペレータに知らせることが可能となり、後工程の測定を効率的に行うことができ、良否判定結果をプリンタ53でプリントアウトすることで、放電加工機以外の場所でも良否判定結果を活用することが可能となる。
【0059】
第9図に示されているような加工軌跡の場合、この加工軌跡をa−bの直線区間、b−cの半径の大きなインコーナ区間、c−dの半径の小さなインコーナ区間、d−eの半径の大きなインコーナ区間、e−fの直線区間、f−gのアウトコーナ区間に区分し、第10図に示されているように、各区間毎に加工速度の基準値Ssetや加工電圧の基準値Vsetを個別に設定することができる。
【0060】
直線部分の加工速度、加工電圧の基準値に対して、インコーナでは両方とも低い値となり、アウトコーナでは高い値となる。又、コーナの半径によりその基準値は変化する。これは、直線部分の基準値をベースにCNC内部で演算を行った結果の値である。
【0061】
第11図は、良否判定結果の表示例を示している。表示装置51の画面に加工形状(輪郭加工の加工軌跡線)を表示し、その形状を示す加工軌跡線を、加工の良否判定に用いた段階数別に定めた表示色(青色系〜赤色系)で塗り分ける。そのときの間隔は加工工程のサンプリング時間等の所定時間毎、形状の線分毎、等適宜設定できる。
【0062】
また、加工結果として、良否判定に用いた段階数別に表示する機能を持ち、例えば棒グラフのようなもので割合や数を表示する。オペレータはその結果を見て、加工結果の状況判断を行うことができる。
【0063】
これらの良否の判定結果のデータの出力方法については、プリンタ53を接続することで画面をそのまま出力することができる。また、放電加工機内蔵あるいは外部にもつRAM等のメモリに出力することも可能である。また、通信ケーブルを接続することにより、機械から離れた場所にあるパソコンや測定器等にデータを転送することもできる。
【0064】
なお、良否判定を行う物理量の組合せは、加工速度と加工電圧との組合せに限られることなく、他の組合せとしては、電圧オンタイムと放電周波数、総放電回数と異常放電回数等があり、また、組合せ個数は2個に限定されることもなく、それ以上の複数個の物理量の組合せでもく、組合せ個数が多いほど良否判定の確実性、信頼性が向上する。
【0065】
なお、参考例として、電圧オンタイムと放電周波数の場合の良否判定マトリックスデータテーブルを第12図、総放電回数と異常放電回数の場合の良否判定マトリックスデータテーブルを第13図に示してある。
【0066】
【産業上の利用の可能性】
以上のように、本発明にかかる放電加工機の加工状態良否判定装置は、パンチやダイ等をワイヤ放電加工する場合の加工状態の良否判定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1図は、この発明による加工状態良否判定装置が組み込まれるワイヤ放電加工機を示す構成図である。
【図2】 第2図は、この発明による加工状態良否判定装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図3】 第3図は、この発明による加工状態良否判定装置における物理量記憶ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】 第4図は、輪郭加工における加工軌跡形状例を示す平面図である。
【図5】 第4図に示されている加工軌跡形状の各領域における加工速度および加工電圧を示すグラフである。
【図6】 第4図に示されている加工軌跡形状の各領域における加工速度および加工電圧を示す他のグラフである。
【図7】 第4図に示されている加工軌跡形状の各領域における加工速度および加工電圧を示す更に他のグラフである。
【図8】 第8図は、加工速度と加工電圧との組合せによる良否判定マトリックスデータテーブルの一例を示す説明図である。
【図9】 第9図は、輪郭加工における加工軌跡形状例を示す平面図である。
【図10】 第10図は、各区間毎に基準値を個別設定した場合の基準値特性を示すグラフである。
【図11】 第11図は、良否判定結果の表示例を示す説明図である。
【図12】 第12図は、電圧オンタイムと放電周波数との組合せによる良否判定マトリックスデータテーブルの一例を示す説明図である。
【図13】 第13図は、総放電回数と異常放電回数との組合せによる良否判定マトリックスデータテーブルの一例を示す説明図である。

Claims (7)

  1. 電極と被加工物との加工間隔にパルス状の電圧を印加し、パルス放電によって輪郭加工を行う放電加工機の加工状態良否判定装置において、
    それぞれ互いに異なる個別の加工状態を示す物理量を前記輪郭加工時に検出する複数個の加工状態検出手段と、
    少なくとも二種類の物理量のそれぞれの基準値に対する比率に対応した加工状態の良・不良の度合いを物理量毎に予め設定してなる、少なくとも一つのデータテーブルと、
    前記加工状態検出手段により検出された少なくとも二種類の物理量のそれぞれの基準値に対する比率に対応した、前記データテーブルの加工状態の良・不良の度合いから、前記輪郭加工時の実際の加工状態の良否を総合的に判定する加工状態良否判定手段と、
    を有し、
    前記物理量は加工速度、加工電圧、加工電流、電極に印加する電圧のオフタイム、オンタイム、総放電回数、異常放電回数、異常放電率、放電周波数であり、
    前記加工状態良否判定手段は、それら物理量の少なくとも2種類の比較結果の組合せによって総合的な加工状態を評価し、加工状態の良否を判定する、
    ことを特徴とする放電加工機の加工状態良否判定装置。
  2. 前記加工状態良否判定手段は、基準値に対する物理量の割合あるいは偏差量の大小を各物理量毎に段階的に分け、その階級の組合せにより、加工状態の良否を段階的に判定することを特徴とする請求項1に記載の放電加工機の加工状態良否判定装置。
  3. 各物理量毎に設定された基準値は加工軌跡形状、加工モードに応じて設定されることを特徴とする請求項1に記載の放電加工機の加工状態良否判定装置。
  4. 前記加工状態良否判定手段は、所定時間毎の平均値より物理量を評価し、加工状態の良否を判定することを特徴とする請求項1に記載の放電加工機の加工状態良否判定装置。
  5. 前記加工状態良否判定手段は、加工軌跡の所定区間毎あるいは線分毎の平均値より物理量を評価し、加工状態の良否を判定することを特徴とする請求項1に記載の放電加工機の加工状態良否判定装置。
  6. 前記加工状態良否判定手段は、加工状態の良否判定結果を表示装置、プリンタ等の出力装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の放電加工機の加工状態良否判定装置。
  7. 前記加工状態良否判定手段は、表示装置に表示された輪郭加工の加工軌跡線を複数個の領域に区分して加工状態の良否判定結果に応じて加工軌跡線の表示色を区分領域毎に変化させることを特徴とする請求項1に記載の放電加工機の加工状態良否判定装置。
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