JP4137256B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性、透明性、耐衝撃性、耐光性、成形性、及び熱安定性に優れたスチレン系難燃性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂は、透明性、成形性、剛性に優れた樹脂であるところから、家庭用品、電気製品、包装等の成形材料として広く用いられてきた。利用分野が拡大するに従い、様々な特性が要求されてきた。
これらの用途で、電気製品に用いられる樹脂には耐衝撃性等の機械的強度以外にUL(米国)、CSA(カナダ)、電気用品取締法(日本)、IEC等の規格に定められた難燃性が要求される。スチレン系樹脂の難燃化の手法としては難燃剤等の添加が最も一般的であるが、必要な難燃性を確保するには、多量に難燃剤を添加する必要があり衝撃強度の低下が著しい。このためベースとなる樹脂は衝撃強度に優れるHIPSやABS樹脂が用いられる。
HIPSやABS樹脂は一般に不透明であり、また添加する難燃剤も透明性を維持できるものとは限らないため、スチレン系樹脂を難燃化する場合、スチレン系樹脂の特徴の一つである透明性については犠牲とされる場合が多かった。
【0003】
スチレン系樹脂で透明難燃性樹脂の従来の技術としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体にテトラブロモビスフェノールAを添加するとこにより透明性を維持したまま難燃性を付与できることが知られているが、この樹脂は耐衝撃性、熱安定性、耐光性に劣るため適用される用途に制限があった。またスチレン系樹脂以外の透明難燃樹脂の従来の技術としてはポリメチルメタクリレートの透明難燃化技術が知られているが、やはり耐衝撃性が低いという欠点がある。また耐衝撃性に優れた透明難燃樹脂としてはポリカーボネート系難燃性樹脂が知られているが、成形性が非常に劣るため大型成形物への適用が困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を解決し難燃性、透明性、耐衝撃性、耐光性、成形性、及び熱安定性に優れた難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる目的を果たすべく鋭意研究を重ねた結果、特定のゴム変性スチレ系樹脂と特定のハロゲン含有リン酸エステルとリン系安定剤を組み合わせる事により、透明性と耐衝撃性に優れた難燃性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)スチレン系単量体35〜75重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体65〜25重量%、及びこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%からなるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体99〜85重量部とゴム状弾性体1〜15重量部(但し,合計量は100重量部とする。)とからなり、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる連続相中にゴム状弾性体を主成分とする軟質成分の分散粒子が分散相としてなるゴム変性スチレン系樹脂100重量部に対して、(B)ハロゲン含有リン酸エステル3〜13重量部、及び(C)リン系安定剤0.5〜7重量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物である。
更に、好ましくは、(A)成分がゴム状弾性体の存在下でスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体とからなる単量体混合物を重合してなるゴム変性スチレン系樹脂であって、ゴム状弾性体1〜15重量部、並びにスチレン系単量体35〜75重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体65〜25重量%、及びこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%からなるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体99〜85重量部とからなり、かつスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる連続相中にゴム状弾性体を主成分とする軟質成分の分散粒子が分散相としてなるゴム変性スチレン系樹脂である。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の難燃性樹脂組成物を構成するゴム変性スチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位、及びこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体単位とからなるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体の連続相中にゴム状弾性体を主成分とする軟質成分の分散粒子が分散相を形成しているゴム変性スチレン系樹脂である。
【0007】
使用されるゴム状弾性体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体があげられる。
スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びスチレン−ブタジエンランダム共重合体のスチレン単量体単位とブタジエン単量体単位の重量比は、15〜60:85〜40であることがゴム変性スチレン系樹脂の透明性を得るために好ましい。さらには、スチレン単量体単位とブタジエン単量体単位の重量比が、20〜60:80〜40であることがゴム変性スチレン系樹脂の良好な透明性を得るために好ましい。
【0008】
なお、ゴム状弾性体が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体である場合には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体のスチレン単量体単位とブタジエン単量体単位の重量比が30〜50:70〜50であることがゴム変性スチレン系樹脂の良好な透明性を得るために更に好ましい。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体はポリスチレン部分の重量平均分子量(Mw)が45,000〜75,000の範囲にあることも良好な透明性を得るために好ましい。Mwが45,000未満であるか75,000を越えると、ゴム変性スチレン系樹脂の透明性が劣る傾向になる。さらに、Mwの数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は1.20〜1.80であることが好ましい。この範囲を外れるとやはりゴム変性スチレン系樹脂の特に優れた透明性を得ることができ難くなる。
なお、ポリスチレン部分の分子量は、スチレン−ブタジエンブロック共重合体を文献「RUBBERCHEMISTRY AND TECHNOLOGY」、Vol.58、P.16(Y.Tanaka,et.al.,1985)に記載の方法でオゾン分解して得たポリスチレンのGPCを測定し、各ピークに対応する分子量を標準ポリスチレンを用いて作成した検量線から求めて算出した。
【0009】
本発明で使用されるスチレン−ブタジエン共重合体は、有機溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤としてスチレン単量体とブタジエン単量体を特定の条件下に重合するこよによって得られる。有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等公知の有機溶媒が使用できる。また、有機リチウム化合物は分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等が使用できる。
【0010】
また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の場合、ポリスチレン部分の重量平均分子量(Mw)は、スチレン単量体とブタジエン単量体の添加量に対する開始剤の添加量割合を調整することにより制御される。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体のポリスチレン部分の重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は、酢酸、ステアリン酸のような有機酸、エタノール、ブタノールのようなアルコールあるいは水等の失活剤を、重合途中に使用量あるいは添加時期を調整して添加することにより制御される。
【0011】
本発明で得られるゴム変性スチレン系樹脂に含まれるゴム状弾性体は1〜15重量部である。ゴム状弾性体が1重量部未満では優れた衝撃強度を得ることができず、15重量部を越えると透明性、成形性が低下し好ましくない。
【0012】
本発明のゴム状弾性体は、実質的にスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体がゴム状弾性体にグラフトし、かつ該グラフトしたゴム状弾性体がスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体を内包し、ゴム変性スチレン系樹脂に分散粒子として存在するものであるので、これらを総称してゴム状弾性を主成分とする軟質成分の分散粒子という。
【0013】
つぎに、本発明で使用されるゴム変性スチレン系樹脂の連続相を形成する重合体の単量体について説明する。本発明において、ゴム変性スチレン系樹脂中の連続相はスチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位、及び必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体単位からなる。
【0014】
本発明で使用されるスチレン系単量体とは、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等をあげることができるが、好ましくはスチレンである。これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいが2種類以上を併用してもよい。
【0015】
また、本発明で使用される(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等のアクリル酸エステルがあげられるが、好ましくはメチルメタクリレート、又はn−ブチルアクリレートである。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体は単独で用いてもよいが2種類以上を併用してもよい。
【0016】
更に、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等があげられる。
【0017】
本発明で使用されるゴム変性スチレン系樹脂を形成するスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の重量比は35〜75:65〜25であり、好ましくは42〜59:58〜41である。スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の重量比が35〜75:65〜25の範囲外では、ゴム変性スチレン系樹脂の透明性が低下する。
またこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体は、単量体混合物中0〜10重量%存在するものであるが、10重量%を越えるとゴム変性スチレン系樹脂の透明性が低下するので好ましくない。
【0018】
本発明で使用するゴム変性スチレン系樹脂の製造は、常用されている塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が用いられる。また、回分式重合法、あるいは連続式重合法のいずれの方法も用いることができる。
【0019】
これらの重合法は、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物や、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等の有機過酸化物を用いることができる。また、分子量調節剤としてt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、4−メチル−2,4−ジフェニルペンテン−1を、また、可塑剤としてジイソブチルアジペートやブチルベンジルフタレート等を必要に応じて添加してもよい。
【0020】
次に、本発明の難燃性樹脂組成物に用いるハロゲン含有リン酸エステルについて説明する。本発明に用いるハロゲン含有リン酸エステルとしては、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス−β−クロロプロピルホスフェート、クロロアルキルホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等があげられる。
これらのハロゲン含有リン酸エステルを単独もしくは併用使用することもできる。これらのうち、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートが特に好ましい。
【0021】
ハロゲン含有リン酸エステルの添加量は3〜13重量部が好ましく、更に3.5〜11重量部が好ましい。ハロゲン含有リン酸エステルの添加量が3重量部より少ないと難燃性の確保、向上が期待できない。また、13重量部を越えると難燃樹脂組成物の耐衝撃性、耐光性、熱安定性の低下が著しい。
【0022】
次に、本発明の難燃性樹脂組成物に用いるリン系安定剤について説明する。本発明で用いるリン系安定剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスフェート、トリアリルホスフェート、芳香族リン酸エステル、ジエチル−N,Nビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスフェート、トリス(2,6ジメチルフェニル)ホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル等のリン酸エステルがあげられる。これらのリン系安定剤は単独もしくは併用使用することもできる。これらのうち、トリフェニルホスフェートが特に好ましい。
【0023】
リン系安定剤の添加量は0.5〜7重量部が好ましく、更に1〜6重量部が好ましい。リン系安定剤の添加量が0.5重量部より少ないと難燃性の確保、向上が期待できない。また、7重量部を越えると難燃樹脂組成物の耐熱性の低下が著しい。
【0024】
また、ハロゲン含有リン酸エステルとリン系安定剤との総添加量は、4〜15重量部が好ましく、更に5〜14重量部が好ましい。総添加量が4重量部未満では必要な難燃性が確保できず、15重量部を越えると衝撃強度の低下が著しい。
【0025】
上記ゴム変性スチレン系樹脂に、ハロゲン含有リン酸エステル及びリン系安定剤の混合方法には特に制約が無いが、たとえば、タンブラー、ヘンシェルミキサー等の公知のブレンダーであらかじめゴム変性スチレン系樹脂とハロゲン含有リン酸エステル及びリン系安定剤を予備混合し、押出機にて溶融混練後ペレット化して難燃性樹脂組成物を得ることができる。
【0026】
また、必要に応じて酸化防止剤、耐候剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、鉱油、難燃剤等の添加剤を重合開始前、重合反応途中、重合体の後処理、重合体の造粒、成形、加工等の任意の段階で配合してもよい。
【0027】
【実施例】
次に実施例をもって本発明を更に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0028】
次に、本発明で用いた原料樹脂、難燃剤、及び添加剤等について説明する。
(1)ゴム変性スチレン系樹脂(A)の製造
A1:オートクレーブ中で、スチレン42.5重量部及びメチルメタクリレート57.5重量部のモノマー混合物にスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含量25%、旭化成社製商品名タフデン2000)5.0重量部を溶解し、重合開始剤としてt−ドデシルメルカプタン0.2重量部を添加し、オートクレーブを撹拌下で温度90℃に加熱した。重合転化率が30%に達した時に冷却して塊状重合を停止した。
次いで該反応混合液に新たに重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.2重量部を添加した。純水200重量部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.001重量部、第三リン酸カリウム0.5重量部を懸濁安定剤として添加し、撹拌下に混合液を分散させた。分散後、温度100℃で2時間、115℃で3.5時間、130℃で2.5時間重合反応させた。
反応終了後、洗浄、脱水後乾燥しビーズ状のゴム変性スチレン系樹脂A1を得た。
【0029】
A2及びA3:A1の製造過程で、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含量25%、旭化成社製商品名タフデン2000)の溶解量を10重量部(A2)、20重量部(A3)に変更した以外はゴム変性スチレン系樹脂A1と同様に製造し、それぞれゴム変性スチレン系樹脂A2、A3を得た。
【0030】
A4:オートクレーブ中で、スチレン58.5重量部、メチルメタクリレート36.0重量部及びn−ブチルアクリレート5.5重量部のモノマー混合物にスチレン−ブタジエンブロック共重合体(スチレン含量40%、ポリスチレン部分の重量平均分子量46,500、重量平均分子量/数平均分子量=1.27)を6.0重量部溶解し、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.04重量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.2重量部を添加し、撹拌下で温度90℃にした。重合転化率が30%に達したとき冷却して塊状重合を停止した。それ以降はゴム変性スチレン系樹脂A1と同様に製造し、A4を得た。
なお、ゴム変性スチレン系樹脂A1〜A4の単量体単位及びゴム状弾性体の量を表1に示した。
【0031】
【表1】
Figure 0004137256
【0032】
なお、表1のゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状弾性体の量の測定は、赤外吸収スペクトル法によりあらかじめ求めたゴム状弾性体のスチレンとブタジエンの重量比と、赤外吸収スペクトル法により求めたゴム変性スチレン系樹脂中のブタジエンの重量比から、ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状弾性体量を求めた。赤外吸収スペクトルは、日本バイオラッドラボラトリーズ社製 FTS−575C型を用いて測定した。
【0033】
また、ゴム変性スチレン系樹脂中の連続相の構成単量体単位は、ゴム変性スチレン系樹脂をトルエンに溶解後、遠心分離を行い、上澄み液を分取しメタノールを加え、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体を沈澱させる。この沈澱物を乾燥し、これを重クロロホルムに溶解して2%溶液に調製して測定試料とし、FT−NMR(日本電子社製FX−90Q型)を用いて、13Cを測定し、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体のピーク面積から連続相の構成単位を求めた。
【0034】
(2)ハロゲン含有リン酸エステル
ハロゲン含有リン酸エステルとして下記の(B1)を用いた。
(B1):トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学社製CR900)
(3)リン系安定剤
リン系安定剤として下記の(C1)を用いた。
(C1):トリフェニルフォスフェート(大八化学社製TPP)
(4)その他の難燃剤
また比較例に以下のハロゲン系難燃剤を用いた
(D1):テトラブロモビスフェノールA(GLC社製BA−59)
(D2):テトラブロモビスフェノールA系エポキシオリゴマー(東都化成社製TB60)
【0035】
(5)その他の添加剤として以下の3種類を用いた。
(E1)錫系安定剤(三共有機合成社製STANN BN(N))
(E2)滑剤:エチレンビスマレイミド(花王社製EP−P)
(6)その他の比較例樹脂と以下の樹脂を用いた。
PMMA:ポリメチルメタアクリレート(住友化学社製スミペックLG6)
GPPS:一般ポリスチレン(電気化学工業社製デンカスチロールGP−1)
【0036】
次に、本発明の難燃性樹脂組成物の製造について説明する。
表2、及び表3に示す原料配合比(重量部)で、タンブラーを用い予備混練後、単軸押出機により下記の条件にて溶融混練して難燃樹脂組成物を得た。得られた難燃性樹脂組成物の難燃性及び各種評価結果を表2及び表3の下段に示す。
Figure 0004137256
【0037】
【表2】
Figure 0004137256
【0038】
【表3】
Figure 0004137256
【0039】
実施例、比較例に示された各種測定は以下の方法で実施した。
1)難燃性:UL−94垂直燃焼性試験に準拠し、1.5mm及び3.0mmの厚さのテストピースにつき、燃焼性を評価した。
2)アイゾット衝撃強度:ASTM D−256に準拠し、幅1/4”のVノッチ付きテストピースを使用し温度23℃で測定した。
3)落錘衝撃強度:JIS K−7211に従い、90mm×90mm×2mmの射出成形角板を使用し、温度23℃、湿度90%RHの条件で50%破壊高さを測定した。錘重量は500gである。
4)メルトフローレート(MFR):ASTM D−1238に準拠し、温度220℃、10kg荷重下で測定した。
5)全線透過率:2mm厚のサンプルを用いてASTM D−1003に準じて測定した。
6)透明性:2mm厚の射出成形プレートを目視にて以下のように4段階によりランク分けした。
◎:曇りなく透明性良好
○:若干曇るが透明性良好
△:曇りあり透明性に劣る
×:透明性が無い
7)耐光性:アトラス社製キセノンウエザーメータを用い、照射強度0.35W/m2 、ブラックパネル温度63℃、湿度50%で300時間照射後のテストプレートの色相差△Eを、日本電色工業社製Σ80で測定した。
8)熱安定性:小型射出成形機(IS50EP/東芝機械製)で、樹脂をシリンダー設定温度240℃で20分滞留後、2mm厚プレートを成形し、滞留前のテストプレートとの色相差を日本電色工業社製Σ80で測定した。
【0040】
【発明の効果】
本発明により、難燃性、透明性、耐衝撃性、成形性、耐光性、及び熱安定性に優れた難燃性樹脂組成物を得ることができる。このようにして得られたゴム変性スチレン系樹脂の難燃性樹脂組成物は、家電、OA機器部品等の幅広い用途に適用できる。

Claims (1)

  1. (A)ゴム状弾性体の存在下でスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体とからなる単量体混合物を重合してなるゴム変性スチレン系樹脂であって、ゴム状弾性体(スチレン単量体30〜50重量%とブタジエン単量体70〜50重量%からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体であって、該スチレン−ブタジエンブロック共重合体のポリスチレン部分の重量平均分子量が45,000〜75,000であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分 子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.20〜1.80である)1〜15重量部、並びにスチレン系単量体35〜75重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体65〜25重量%、及びこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%からなるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体 99〜85重量部とからなり、かつスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる連続相中にゴム状弾性体を主成分とする軟質成分の分散粒子が分散相としてなるゴム変性スチレン系樹脂100重量部に対して、(B)ハロゲン含有リン酸エステルとしてトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート3〜13重量部、及び(C)リン系安定剤としてトリフェニルホスフェート0.5〜7重量部を含有することを特徴とする透明難燃性樹脂組成物。
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