JP4833528B2 - 難燃性スチレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は特定の難燃性スチレン系樹脂組成物に関する。更に詳しくは耐環境応力亀裂性、耐衝撃性、燃焼時の抗ドリップ性等の物性バランスに優れると共に、コンタミが少ない難燃性スチレン系樹脂組成物に関する。
電気機器、OA機器、自動車部品、家庭用品などの用途に広く用いられているスチレン系樹脂は、一般に非常に燃えやすく、成型品の一部に近づけられた炎で燃焼が始まると、その後炎を遠ざけても自然に燃え続ける欠点を有している。
近年、火災に対する安全性の必要性から難燃に対する要求が厳しくなってきており、特に電気機器、OA機器については米国UL(アンダーライターズ・ラボラトリー)のUL−94V0規格に合格することを要求する分野が広まってきている。UL−94V0規格に合格するためには燃焼時の火垂れ(ドリッピング)の無い事が要求される。
従来スチレン系樹脂を難燃化する方法として、スチレン系樹脂に有機臭素化合物、リン系化合物等の難燃剤、あるいはこれに三酸化アンチモン等の難燃助剤を併用混入することが知られているが(例えば、特許文献1及び特許文献2)、これではドリッピングを防止することができないためUL−94V0規格に合格するには到らず、さらに、多量の難燃剤を混入するためスチレン系樹脂の有する優れた耐衝撃性を著しく低下させる欠点を有していた。
また、従来の難燃性樹脂では耐環境応力亀裂性が充分でなくその改良が求められていた。難燃性のABS樹脂では、その改良方法としてABS樹脂中のシアン化ビニル含量を高くする方法が一般に用いられているが、この方法で耐環境応力亀裂性が多少は改善されるものの未だ十分ではなかった。
特開平10−120863号公報 特開2000−129071号公報
本発明の課題は耐環境応力亀裂性、耐衝撃性、燃焼時の抗ドリップ性等の物性バランスに優れると共に、コンタミが少ない難燃性スチレン系樹脂組成物を提供することである。
本発明は、(i-1)スチレン系単量体50〜90重量部、(i-2)シアン化ビニル系単量体10〜50重量部及び(i-3)他の共重合可能なビニル系単量体0〜22重量部(これらの合計は100重量部)と、前記(i-1)、(i-2) 及び (i-3)の合計100重量部に対して0.0005〜1.0重量部の多官能性マレイミド系単量体とを共重合してなるスチレン系共重合体(A)を連続相とし、ジエン系ゴムからなるゴム粒子(B)を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂(I)100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤とリン系難燃剤から選ばれる難燃剤(II)1〜40重量部を含有する難燃性スチレン系樹脂組成物であって、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(I)におけるゴム含有量が1〜40重量%で、下記測定法により測定されるスチレン系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量が1.25重量%以下で、且つ、
前記スチレン系共重合体(A)の下記式から求められるMIRが21.5〜30.0であることを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物に関する。
MIR=HMI/MI
HMI:ASTM D-1238法により測定した200℃における10kg荷重でのMFR(g/10分)
MI :ASTM D-1238法により測定した200℃における1kg荷重でのMFR(g/10分)
スチレン系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量の測定法:ゴム変性スチレン系樹脂(I)をアセトンに溶かし、フレームイオン検出器(FID)を付けてあるガスクロマトグラフィーを用いて樹脂溶液を分析する。
本発明によれば、耐環境応力亀裂性、耐衝撃性、燃焼時の抗ドリップ性等の物性バランスに優れると共に、コンタミが少ない難燃性スチレン系樹脂組成物を提供することができる。
本発明において用いられる(i-1)スチレン系単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-第三ブチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン及びブロモスチレンなどが挙げられるが、中でもスチレン又はα-メチルスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は単独で、或いは組み合わせて用いることができる。この(i-1)スチレン系単量体の使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部において、通常50〜90重量部、好ましくは55〜85重量部、更に好ましくは58〜80重量部である。
本発明において用いられる(i-2)シアン化ビニル系単量体としては、例えばアクリロニトリル、α-メチルアクリロニトリルなどが挙げられ、中でもアクリロニトリルが好ましい。(i-2)シアン化ビニル系単量体の使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部において、通常10〜50重量部で、好ましくは15〜45重量部、更に好ましくは20〜42重量部である。
本発明において用いられる(i-3)他の共重合可能なビニル系単量体としてはビニル基を有し、且つ本発明における、(i-1)スチレン系単量体、(i-2)シアン化ビニル系単量体と共重合できる単量体を指し、例えばアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、単官能性マレイミド系単量体等が挙げられる。
ここでアクリル酸エステル系単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、ポリエチレングリコールジアクリレートなどが挙げられ、中でもアクリル酸ブチルが好ましい。
またメタクリル酸エステル系単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、エチレンジメタクリレート、ネオペンチルジメタクリレートなどが挙げられ、中でもメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルが好ましい。
また単官能性マレイミド系単量体は一個のマレイミド官能基を含む単量体で、具体例としては、例えばマレイミド、N-メチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-2-メチルマレイミド、N-2,3-ジメチルフェニルマレイミド、N-2,4-ジメチルフェニルマレイミド、N-2,3-ジエチルフェニルマレイミド、N-2,4-ジエチルフェニルマレイミド、N-2,3-ジブチルフェニルマレイミド、N-2,4-ジブチルフェニルマレイミド、N-2,6-ジメチルフェニルマレイミド、N-2,3-ジクロロフェニルマレイミド、N-2,4-ジクロロフェニルマレイミド、N-2,3-ジブロモフェニルマレイミド、N-2,4-ジブロモフェニルマレイミド等が挙げられるが、中でもN-フェニルマレイミドが好ましい。
更に他の共重合可能なビニル系単量体としては、例えばアクリル酸系単量体(例えばアクリル酸、メタクリル酸)の他、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸系化合物及びそのエステル系単量体(例えばジメチルフマレート、ジブチルイタコネート等)、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、塩化エチレン、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ブタジエン、プロペニルアミン、イソブチレニルアミン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、トリアリルイソシアヌレートなども挙げられる。
かかる(i-3)他の共重合可能なビニル系単量体の使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部において、通常0〜40重量部で、好ましくは1〜34重量部、更に好ましくは3〜30重量部であり、最も好ましい使用量は、0〜30重量部、特に好ましくは0〜22重量部である。
本発明における多官能性マレイミド系単量体は、マレイミド官能基を2個以上持つ化合物を指し、例えば2個、3個又は4個のマレイミド官能基を有する化合物であり、中でもビスマレイミド単量体(2個のマレイミド基を持つ単量体)が好ましく、その構造式の例を化学式(1)及び化学式(1')に示す。
Figure 0004833528
上記式(1)及び(1')中、Xは炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、-SO2-、-SO-、-O-、-O-R-O-(Rは炭素数2〜10のアルキレン基又はアリーレン基である)である。また化学式(1')中、Y及びY’は相互に同一でも異なっていても良い炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基である。
多官能性マレイミド系単量体の具体例としては、例えばN,N'-4,4'-(3,3'-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N'-4,4'-(3,3'-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N'-4,4'-2,2-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N'-3,3'-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジフェニルスルホキシドビスマレイミド、N,N'-4,4'-ベンゾフェノンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニルオキシフェニル)2,2−プロパン、N,N'-1,3-フェニレンビスマレイミド等が挙げられるが、中でもN,N'-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニルオキシフェニル)2,2−プロパン、N,N'-1,3-フェニレンビスマレイミドが好ましい。
本発明において、かかる多官能性マレイミド系単量体の使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部に対して、通常0.0005〜1.0重量部で、好ましくは0.001〜0.3重量部、更に好ましくは0.003重量部以上0.1重量部未満である。
その多官能性マレイミド系単量体の使用量が、前記(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計100重量部に対して、1.0重量部を超えるとスチレン系共重合体(A)の重合において重合物の粘度が急激に上昇し架橋異物とコンタミが生じ易い。
本発明におけるスチレン系共重合体(A)は連続塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合により、これらの重合に使用される反応装置によって製造することができる。その中でも連続式塊状重合又は溶液重合が好ましい。前記反応装置としてはプラグフロー反応装置(以下「PFR」と略称する)、完全混合式反応装置(以下「CSTR」と略称する)、及び静止型混合式反応装置などが挙げられる。反応装置の数量は1個、2個又は3個以上を併用することができ、好ましくは3個以上を併用する。3個以上の反応装置を併用する場合には、その内の第一反応装置は完全混合式反応装置で、最終反応装置はプラグフロー反応装置であることが好ましい。
本発明において、スチレン系共重合体(A)の製造方法は、原料溶液を連続的に反応装置に仕込んで反応を行うことができる。その際、重合開始剤を加えるのが好ましく、その使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部に対して、通常0〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部である。かかる重合開始剤には単官能性重合開始剤又は多官能性重合開始剤がある。
本発明に使用できる単官能性重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クミルヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(以下「BPIC」と略称する)、シクロヘキサノンパーオキサイド、2,2'−アゾービスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビスー(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾービス-2-メチルブチロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2-メチルプロピオネート)などが挙げられる。これらの中でベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
本発明に使用できる多官能性重合開始剤としては、例えば1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)―3,3,5―トリメチルシクロヘキサン(以下「TX-29A」と略称する)、2,5−ジメチル−2,5−ビス−(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、4−(t−ブチルパーオキシカルボニル)−3−ヘキシル−6−[7−(t−ブチルパーオキシカルボニル)へプチル]シクロヘキサン、ジ−t−ブチル−ジパーオキシアゼレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロ−テレフタレート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシルプロパン(以下「PX-12」と略称する)、多官能モノパーオキシカーボネート(例えば米国ATOFINA社の商品名Luperox JWE)等が挙げられる。これらの中でTX-29A、PX-12が好ましい。
上記反応装置を用いる場合の反応温度は、通常20〜300℃、好ましくは60〜250℃、更に好ましくは80〜240℃である。反応装置を用いる場合の反応圧力は1〜10kg/cm2の間に制御する。重合体の分子量をコントロールするために連鎖移動剤を使用することができる。かかる連鎖移動剤の使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部に対して、通常0〜2重量部、好ましくは0.001〜1重量部である。本発明に使用できる連鎖移動剤としては単官能性連鎖移動剤及び多官能性連鎖移動剤がある。
本発明に使用できる単官能性連鎖移動剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
(1)メルカプタン類:メチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン(以下「TDM」と略称する)、n−プロピルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、5−t−ブチル−2−メチル−チオフェノールなど。
(2)アルキルアミン類:モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミンなど。
(3)その他:ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー、テルピノレンなど。
これらの単官能性連鎖移動剤の中で、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが好ましい。
また多官能性連鎖移動剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピネート)(以下「TMPT」と略称する)、トリメチロールプロパントリス(6-メルカプトヘキサネート)、1,8-ジメルカプトオクタン等が挙げられる。これらの中でTMPTが好ましい。
上記のスチレン系共重合体(A)は、原料溶液を連続的に反応装置に仕込んで反応を行い、原料溶液に含まれる全単量体の転化率が所定の値に達した後、反応装置からこの重合体溶液を連続的に取り出し、揮発装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去し、その後造粒して得られる。上記の全単量体の転化率は通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上にすることができる。揮発装置としては減圧脱揮装置又は押出脱揮装置を使用することができ、そしてコンデンサーで未反応の単量体及び揮発成分を回収し、必要に応じて回収液中の水分を除いてから原料溶液として再び使うことができる。
本発明におけるスチレン系共重合体(A)の製造に際しては、必要に応じて溶媒を添加することができる。かかる溶媒の使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部に対して、通常0〜100重量部、好ましくは0〜60重量部、更に好ましくは1〜50重量部である。
本発明に使用できる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
本発明におけるスチレン系共重合体(A)のMIRは、通常21.5〜30.0、好ましくは21.8〜29.0、更に好ましくは22.0〜28.0である。このMIRはHMIとMIとの比(HMI/MI) であって、HMIは200℃における10kg荷重でのMFR(g/10分)で、MIは200℃における1kg荷重でのMFR(g/10分)である。またMFRは、溶融流動指数を指し、ASTM D-1238法により、その指数を測定することができる。
上記スチレン系共重合体(A)のMIRは、多官能性マレイミド系単量体の使用量及び添加のタイミング、多官能性重合開始剤の選択及びその使用量、反応装置の選択、全単量体の最終転化率(例えば、上記(i−1)のスチレン系単量体、多官能性マレイミド系単量体或いは多官能性重合開始剤の使用量の一部を第2反応装置又は第2以後の反応装置に追加すること)により制御することができる。上記のMIRの制御方法は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては下記(1)、(2)の条件を同時に満足すると難燃性スチレン系樹脂組成物の耐環境応力亀裂性、耐衝撃性、燃焼時の抗ドリップ性等の物性が向上し、コンタミが少なくなる。
(1) スチレン系共重合体(A)の重合に際して、多官能性マレイミド系単量体の使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部に対して、0.0005〜1.0重量部である。
(2) スチレン系共重合体(A)のMIRは21.5〜30.0である。
本発明におけるゴム変性スチレン系樹脂は、上記スチレン系共重合体(A)を連続相とし、ゴム粒子(B)を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂(I)であって、ゴム含有量が通常1〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。ゴム含有量が1〜40重量%であると難燃性スチレン系樹脂組成物の耐衝撃性及び難燃性に優れる。
このようなゴム変性スチレン系樹脂(I)の製法としては、スチレン系共重合体(A)の製造の際にゴム成分を添加して反応させる方法が挙げられる(以下、同時グラフト法と呼ぶ)。或いはゴム成分(例えば一般ゴム又はゴム状グラフト共重合体、好ましくはゴム状グラフト共重合体である)を直接にスチレン系共重合体(A)と混合する方法(以下、グラフトブレンド法と呼ぶ)が挙げられる。同時グラフト法においては一般の塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、又は懸濁重合法などを採用することができる。前記ゴム状グラフト共重合体を製造する方法としては、乳化重合法、乳化塊状重合法などがあり、乳化重合法が特に好ましい。
以下、本発明における、ゴム変性スチレン系樹脂(I)を得るための製法として、上記二種類の方法について説明する。
〔方法1:同時グラフト法〕
方法1では連続塊状重合、溶液重合に使用される反応装置を用いることにより、前記ゴム変性スチレン系樹脂(I)を製造することができる。かかる反応装置としてはプラグフロー反応装置(PFR)、完全混合式反応装置(CSTR)及び静止型混合式反応装置などが挙げられる。反応装置の数量は1個、2個又は3個以上を併用することができ、好ましくは3個以上を併用する。3個以上の反応装置を併用する場合には、その内の第一反応装置は完全混合式反応装置で、最終反応装置はプラグフロー反応装置であることが好ましい。
方法1では原料溶液(ゴム成分を含む)を連続的に反応装置に仕込んで反応を行う。上記反応装置を用いる場合の反応温度は通常30〜300℃、好ましくは60〜250℃、更に好ましくは80〜240℃である。反応装置を用いる場合の反応圧力は1〜10kg/cm2の間に制御するのが好ましい。重合体の分子量をコントロールするために、必要に応じて重合開始剤又は連鎖移動剤を使用することができる。
その後、原料溶液に含まれる全単量体の転化率が所定の値に達した後、反応装置からこの重合体溶液を連続的に取り出し、揮発装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去し、その後造粒して、本発明における、スチレン系共重合体(A)を連続相としゴム粒子(B)を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂(I)を得ることができる。上記の全単量体の転化率は通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上にすることができる。揮発装置としては減圧脱揮装置又は押出脱揮装置を使用することができ、そしてコンデンサーで未反応の単量体及び揮発成分を回収し、必要に応じて回収液中の水分を除いてから原料溶液として再び使うことができる。
本発明におけるゴム変性スチレン系樹脂(I)を製造する塊状又は溶液重合反応に使われる原料溶液は、(i-1)スチレン系単量体50〜90重量部、(i-2)シアン化ビニル系単量体10〜50重量部及び(i-3)他の共重合可能なビニル系単量体0〜40重量部(以上合計100重量部)、並びにこれら(i-1)、(i-2) 及び (i-3)の合計100重量部に対して多官能性マレイミド系単量体0.0005〜1.0重量部、溶媒0〜100重量部及びゴム成分0.5〜25重量部を含む。ここでスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体、他の共重合可能なビニル系単量体、多官能性マレイミド系単量体、溶媒及び必要に応じて添加する重合開始剤、連鎖移動剤に関する使用量及びそれぞれの具体例は、スチレン系共重合体(A)の製造に用いる原料溶液で述べたものと同じものが挙げられる。
また、ゴム変性スチレン系樹脂(I)は乳化重合法によっても製造することができる。乳化重合法の内容については、後述のゴム状グラフト共重合体(B')の製法と同様の方法であるが、スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体、他の共重合可能なビニル系単量体と共に本発明に合致する量の多官能性マレイミド系単量体を共重合させる点が異なる。
本発明におけるゴム変性スチレン系樹脂(I)を製造するための塊状又は溶液重合反応において、ゴム成分とスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体等の単量体との混合溶液は重合の初期段階においては、ゴム相は連続相の状態で存在しているが、ゴム成分のグラフト重合反応によりスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体等の単量体の転化率が次第に増加し、且つ反応系も攪拌されるに伴って、遂にゴム成分が逆にスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体等の単量体及びその重合体に囲まれて分散粒子の状態(分散相)になり、他方スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体等の単量体及びその重合体が連続相になる。最後にゴム変性スチレン系樹脂(I)においてゴム粒子相を形成するが、そのゴム粒子の重量平均粒径は通常0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは0.1〜2μmとすることができる。
本発明におけるゴムとは、ガラス転移温度が0℃以下の軟質高分子を意味する。
方法1に用いられるゴム成分の具体例としては、例えばジエン系ゴム、ポリオレフィン系ゴム(例えばエチレン−プロピレンゴム)、ポリアクリレート系ゴム、ポリシロキサン系ゴム等が挙げられる。ジエン系ゴムとはジエン系単量体成分を重合させて得られる重合体を言う。
かかるジエン系ゴムとしては、例えばブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム、スチレン−ジエン系ゴム、アクリロニトリル−ジエン系ゴム等が挙げられる。この中で、ブタジエンゴムとしてはハイシス(Hi-Cis)とローシス(Low-Cis)の2種のポリブタジエンゴムが好ましい。ハイシスゴムはそのシス及びビニル基の代表的な重量比がそれぞれ94〜99%及び0〜5%であり、その他の組成成分はトランスの構造であって、ムーニ粘度は20〜120の範囲にあり、重量平均分子量の範囲は100,000〜800,000が好ましい。ローシスゴムはそのシス及びビニル基の代表的な重量比がそれぞれ20〜40%及び6〜20%であり、その他の組成成分はトランスの構造であって、ムーニ粘度は20〜120の範囲にあり、重量平均分子量の範囲は100,000〜800,000が好ましい。
スチレン−ジエン系ゴムの具体例としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム等が挙げられ、それはブロック共重合体、ランダム共重合体又はテーパー共重合体よりなる組成物の何れでも良い。スチレン−ブタジエンゴム中のスチレンの重量比は50重量%以下の範囲が好ましく、その重量平均分子量は50,000〜600,000が好ましい。上記のゴムに於いてブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
〔方法2:グラフトブレンド法〕
方法2はスチレン系共重合体(A)とゴム状グラフト共重合体(B')との混合物を混練、押出して、本発明におけるゴム変性スチレン系樹脂(I)を製造する方法である。
方法2では、通常スチレン系共重合体(A)とゴム状グラフト共重合体(B')との混合物を、一般に使用されているヘンシェルミキサーでドライブレンドした後に、例えば押出機、ニーダー、又はバンバリーミキサー等の混合機により溶融混練して、前記ゴム変性スチレン系樹脂(I)を製造することができる。
ゴム状グラフト共重合体(B')の製法には、一般の連続式塊状反応、溶液重合反応、乳化重合反応又は懸濁重合反応を用いることができる。
連続式塊状反応又は溶液重合反応に関し、当該連続式塊状反応又は溶液重合反応によって原料溶液をグラフト重合反応させて、ゴム状グラフト共重合体(B')を得ることができる。その原料溶液は(i-1)スチレン系単量体50〜90重量部、(i-2)シアン化ビニル系単量体10〜50重量部及び(i-3)他の共重合可能なビニル系単量体0〜40重量部(以上合計100重量部)、並びにこれら(i-1)、(i-2) 及び (i-3)の合計100重量部に対して、溶媒0〜100重量部及びゴム成分0.25〜25重量部を含む。必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を添加することができる。この原料溶液には多官能性マレイミド系単量体は通常使用せず、使用する場合には本発明の使用量の下限未満に限られる。ここで上記スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体、他の共重合可能なビニル系単量体、溶媒、重合開始剤及び連鎖移動剤に関する使用量及びそれぞれの具体例は、スチレン系共重合体(A)の製造に用いる原料溶液で述べたものと同じものが挙げられ、またゴム成分の組成に関する説明は方法1で述べたのと同様である。
本発明では、ゴム状グラフト共重合体(B')の連続塊状又は溶液重合反応において、ゴム成分とスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体等の単量体との混合溶液は、重合の初期段階においてゴム相は連続相の状態で存在しているが、ゴム成分のグラフト重合反応によりスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体等の単量体の転化率が次第に増加し、且つ反応系も攪拌されるに伴って、ゴム成分が逆にスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体等の単量体及びその重合体に囲まれて分散粒子の状態(分散相)になり、他方スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体等の単量体及びその重合体が連続相になる。最後にゴム状グラフト共重合体(B')においてゴム粒子相を形成するが、そのゴム粒子の重量平均粒径は0.05〜10μmで、好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは0.1〜2μmである。
乳化重合反応に関し、当該乳化重合反応によってゴム状グラフト共重合体(B')を製造できる。その製法としては、ゴムラテックス40〜90重量部(固形分として)をスチレン系単量体15〜95重量%、シアン化ビニル系単量体5〜50重量%、その他の共重合可能な単量体0〜35重量%の割合からなる単量体混合物60〜10重量部と混合し、適切な乳化剤及び開始剤と必要に応じ連鎖移動剤を用いてグラフト重合させ、ゴム状グラフト共重合体ラテックスを生成させ、凝固、脱水、乾燥処理などを施し、目的とするゴム状グラフト共重合体(B')を得ることができる。
ゴムラテックスのゴム成分は、方法1で示したゴム成分と同様であり、特に好ましいのはジエン系ゴムである。
ジエン系ゴムラテックスの製造方法としては、例えば乳化重合法によりジエン系単量体(例えばブタジエン)、又はジエン系単量体100〜50重量%とその他の共重合可能な単量体、例えばスチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルなどの単量体0〜50重量%とを重合させて、重量平均粒径0.05〜0.6μmのジエン系ゴムラテックスを形成させる方法が挙げられる。
また、乳化重合法により前記のジエン系単量体を重合させて、重量平均粒径0.05〜0.20μmとなる小粒径のジエン系ゴムラテックスを得た後、次に冷凍法、ホモジナイザー処理法及び添加剤凝集法等により、この小粒径のジエン系ゴムラテックスを凝集肥大化し、重量平均粒径0.22〜0.6μmの大粒子径のジエン系ゴムラテックスを製造する方法が挙げられる。上記添加剤凝集法により用いられる添加剤としては、酢酸無水物、塩化水素、硫酸などの酸性物質、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の塩類、(メタ)アクリル酸系−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(例えば、メタアクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体、メタアクリル酸−アクリル酸エチル共重合体)などのカルボキシル基含有高分子凝集剤が挙げられる。
本発明では、ゴム変性スチレン系樹脂(I)において、スチレン系単量体及び/又はアクリロニトリル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量が通常1.25重量%以下、好ましくは1.10重量%以下、更に好ましくは0.95重量%以下である。
本発明において下記(1)〜(3)の条件を同時に満足すると難燃性スチレン系樹脂組成物の燃焼時の抗ドリップ性が良くなる。
(1) スチレン系共重合体(A)の重合に際して、多官能性マレイミド系単量体の使用量は、上記の(i-1) 、(i-2) 及び (i-3)からなる共重合用単量体の合計量100重量部に対して、0.0005〜1.0重量部である。
(2) スチレン系共重合体(A)のMIRは21.5〜30.0である。
(3) ゴム変性スチレン系樹脂(I)において、スチレン系単量体及び/又はアクリロニトリル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量が1.25重量%以下である。
上記のゴム変性スチレン系樹脂(I)において、スチレン系単量体及び/又はアクリロニトリル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量は、スチレン系共重合体(A)の重合に際して、重合開始剤の選択及びその使用量、重合温度、重合時間、又は脱揮発装置及び脱揮発方法の選択等の方法により制御することができる。例えば低温重合の場合に重合開始剤を使用すること、脱揮発処理の場合に脱揮発助剤を添加すること等の方法が挙げられる。 上記の制御方法は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物は、ゴム変性スチレン系樹脂(I)と難燃剤(II)を含有する。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物は、通常、ゴム変性スチレン系樹脂(I)と難燃剤(II)との混合物を、一般に使用されているヘンシェルミキサーでドライブレンドした後に、例えば押出機、ニーダー又はバンバリーミキサー等の混合機により溶融混練することができる。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物は、難燃剤(II)の使用量が、上記のゴム変性スチレン系樹脂(I)100重量部に対して、通常1〜40重量部、好ましくは2〜38重量部、更に好ましくは3〜35重量部である。かかる難燃剤(II)の使用量が1重量部未満であると難燃性スチレン系樹脂組成物の難燃性が悪くなる。一方、難燃剤(II)の使用量が40重量部を超えると難燃性スチレン系樹脂組成物の耐衝撃性が悪くなる。本発明に使用される難燃剤(II)としては、例えばハロゲン系難燃剤及びリン系難燃剤が挙げられる。
本発明に使用できるハロゲン系難燃剤としては、例えばテトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロム化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などのテトラブロモビスフェノールA誘導体、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタンなどの臭素系芳香族化合物、塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロシクロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環状化合物、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。この中で、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロム化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などが好ましく用いられる。これらの化合物は、目的を達成するために、単独または二種以上を用いることができる。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物に、上記ハロゲン系難燃剤を使用する場合には、必要に応じて難燃助剤を添加することができる。使用される難燃助剤としては、例えば三酸化アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモンなどの酸化物やアンチモン酸ソーダなどのアンチモン酸塩などがあるが、難燃性効果の面から三酸化アンチモンが好ましい。難燃助剤の使用量は、上記のゴム変性スチレン系樹脂(I)100重量部に対して、通常0〜20重量部、好ましくは1〜18重量部、更に好ましくは3〜15重量部である。
本発明に使用されるリン系難燃剤としては、例えばトリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス・イソプロピルビフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、オルトフェニルフェノール系燐酸エステル、ペンタエリスリトール系リン酸エステル、ネオペチルグリコール系リン酸エステル、置換ネオペチルグリコールホスホネート、含窒素系リン酸エステル、および下記化学式(2)で表される芳香族燐酸エステルなどが挙げられ、とくに下記化学式(2)で表される芳香族燐酸エステルが好ましく用いられる。
Figure 0004833528
(上記式(2)において、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または異なるハロゲンを含有しない芳香族基を表す。また化学式(2)のnは0以上の整数である。また化学式(2)のk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつ(k+m)は0以上2以下の整数である。そして化学式(2)におけるXは下記の化学式(3)〜(5)から選択される構造を示している。)なお、かかる芳香族燐酸エステルは異なるnや、異なる構造を有する芳香族燐酸エステルの混合物であってもよい。
Figure 0004833528
Figure 0004833528
Figure 0004833528
(上記化学式(3)〜(5)中、R1〜R8は同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Yは直接結合している基で、O、S、SO2、C(CH32、CH2、CHPhを表す。ここで、Phはフェニル基を表す。)
前記化学式(2)の式中、nは0以上の整数であるが、難燃性の点から40以下が好ましく、更に好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。
またk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
また前記化学式(3)〜(5)の式中、R1〜R8は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
また化学式(2)において、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または異なるハロゲンを含有しない芳香族基を表しており、かかる芳香族基としてはベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としてはフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
市販の燐酸エステルとしては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上を使用することができ、好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができる。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物に上記リン系難燃剤を使用する場合は、必要に応じて難燃助剤を添加することができる。使用される難燃助剤としてはポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。それらの難燃助剤の使用量は上記ゴム変性スチレン系樹脂(I)100重量部に対して、通常0〜20重量部、好ましくは0.02〜10重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部である。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物には、必要に応じて各種の添加剤、例えば酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、着色剤などを添加でき、添加の時期は、スチレン系共重合体(A)又はゴム変性スチレン系樹脂(I) 又は難燃性スチレン系樹脂組成物各組成物の各重合段階又は混練押出段階等を適宜選択すれば良い。添加剤の使用量は、難燃性スチレン系樹脂組成100重量部に対して、通常6重量部以下である。その他の添加剤、例えば衝撃改質剤なども必要に応じて添加することができ、その使用量は難燃性スチレン系樹脂組成100重量部に対して通常30重量部以下である。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物には、必要に応じてスチレン系共重合体(A)以外の各種の重合体を混合して使用できる。すなわち難燃性スチレン系樹脂組成物の場合、連続相がスチレン系共重合体(A)以外の各種の重合体を含むことができる。これらの重合体としてはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-アルファメチルスチレン系共重合体、アクリロニトリル-スチレン-メタアクリル酸メチル系共重合体、アクリロニトリル-スチレン-N-フェニルマレイミド系共重合体、スチレン-無水マレイン酸系共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド系共重合体、メタクリル酸メチル系共重合体、ポリカーボネート、スチレン-アクリル酸メチル系共重合体、アクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-N-フェニルマレイミド-スチレン系共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル-アクリレートゴム-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-(エチレン-プロピレン系ゴム)-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-シリコーンゴム-スチレン系共重合体及びその他の重合体が挙げられる。これらの重合体は単独で或いは組み合わせて用いることができる。これら、その他の重合体の使用量は、難燃性スチレン系樹脂組成物100重量部に対して通常500重量部以下である。
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂として、広範な成形法により、種々の成型品として使用される。特に、射出成形の場合、多官能性マレイミドを使用しないか、或いは使用量が不足する時と比べて、実際の流動性と成型物の耐クラック性のバランスが非常に良好であり、その為、たとえ成型物が複雑な構造で射出しにくい大型の成型物であっても、耐クラック性の優れた成型物を容易に成形できる大きな利点を有する。
以下に実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
以下の実施例及び比較例で行った分析方法及び評価方法を示す。
(1)MIR
MIRはHMIとMIとの比(HMI/MI) であって、HMIは200℃における10kg荷重でのMFR(g/10分)で、MIは200℃における1kg荷重でのMFR(g/10分)である。(MFRは溶融流動指数を指し、ASTM D-1238法によりその指数を測定することができる。)
(2) ゴム含有量
Nicolet社製(シリーズ番号:Nexus 470)のフーリエ変換赤外分光計を用いて測定する。(単位:重量%)
(3)スチレン系単量体及び/又はアクリロニトリル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量
ゴム変性スチレン系樹脂(I)をアセトンに溶かし、フレームイオン検出器(FID)を付けてあるガスクロマトグラフィー(Hewlett Packard社製、シリーズナンバー5890A)を用いて樹脂溶液を分析する。(単位:重量%)
(4) 耐衝撃性
ASTM D-256により測定する。(ノッチ付き、厚さ1/4インチ、単位:kg-cm/cm)
(5) 抗ドリップ性
難燃性UL−94試験法に準拠し、厚み1/16インチの試験片を使用して評価した。燃焼テストの繰り返し回数は10回とし、10回すべてUL94 V−0基準にてドリップの回数を測定する。
○:ドリップがない。
△:ドリップの回数が1〜2回である。
×:ドリップの回数が3回以上である。
(6) 耐環境応力亀裂性
100mm×12.7mm×3mmの試験片を曲率半径165mmの1/4楕円治具上に固定して、30%のアルコール溶液に漬け込み、試験片を漬けた後に亀裂が発生するまでの時間を測定し、以下の基準により評価する。
○:48時間以上。
△:24以上48時間未満。
×:24時間未満。
(7)コンタミ
難燃性スチレン系樹脂組成物を10g取り、熱プレス機を用いて直径200mm、厚さ0.3mmの円形フイルムを製造し、フイルムのコンタミの数を観察し、以下の基準で評価する。ここで、本発明におけるコンタミとは、本発明の樹脂組成物をつくろうとする過程で生じる、通常、変色した溶融困難なもので、その主成分はスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体の重合したものであって、小塊状を呈している。
○:0〜1点
△:2〜4点
×:5点以上
<スチレン系共重合体(A)の合成例>
「合成例a:スチレン系共重合体(A-1)の合成」
スチレン単量体(以下「SM」と略称する)64.5重量部、アクリロニトリル単量体(以下「AN」と略称する)35.5重量部、N,N'-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド単量体(以下「BMI」と略称する)0.025重量部、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(以下「BPO」と略称する)0.02重量部、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン(以下「TDM」と略称する)0.2重量部及び溶媒としてエチルベンゼン(以下「EB」と略称する)25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を三槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を36 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、BMI 0.22重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し、更にSM 100重量部、BMI 0.04重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第三反応装置に仕込んで重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置は完全混合式反応装置(以下「CSTR」と略称する)で、第三反応装置はプラグフロー反応装置(以下「PFR」と略称する)であった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ95℃、105℃、135℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpm、35 rpmに保持した。
第三反応装置の転化率が72重量%に達した時、第三反応装置から得られる重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、減圧脱揮装置又は押出脱揮装置等の揮発装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去し、その後、造粒してスチレン系共重合体(A-1)を得た。スチレン系共重合体(A-1)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「合成例a−1:スチレン系共重合体(A-1-1)の合成」
SM 64.5重量部、AN 35.5重量部、N,N'-4,4'-2,2-ジフェニルプロパンビスマレイミド単量体 0.025重量部、重合開始剤としてBPO 0.02重量部、連鎖移動剤としてTDM 0.2重量部及び溶媒としてEB 25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を三槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を36 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、N,N'-4,4'-2,2-ジフェニルプロパンビスマレイミド単量体 0.22重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し、更にSM 100重量部、N,N'-4,4'-2,2-ジフェニルプロパンビスマレイミド単量体 0.04重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第三反応装置に仕込んで重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置は完全混合式反応装置(以下「CSTR」と略称する)で、第三反応装置はプラグフロー反応装置(以下「PFR」と略称する)であった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ95℃、105℃、135℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpm、35 rpmに保持した。
第三反応装置の転化率が72重量%に達した時、第三反応装置から得られる重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、減圧脱揮装置又は押出脱揮装置等の揮発装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去し、その後、造粒してスチレン系共重合体(A-1-1)を得た。その溶融流動指数を測定した結果、MIR値は24.2であった。
「合成例a−2:スチレン系共重合体(A-1-2)の合成」
SM 64.5重量部、AN 35.5重量部、N,N'-4,4'-ジフェニルエーテルビスマレイミド単量体 0.025重量部、重合開始剤としてBPO 0.02重量部、連鎖移動剤としてTDM 0.2重量部及び溶媒としてEB 25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を三槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を36 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、N,N'-4,4'-ジフェニルエーテルビスマレイミド単量体 0.22重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し、更にSM 100重量部、N,N'-4,4'-ジフェニルエーテルビスマレイミド単量体 0.04重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第三反応装置に仕込んで重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置は完全混合式反応装置(以下「CSTR」と略称する)で、第三反応装置はプラグフロー反応装置(以下「PFR」と略称する)であった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ95℃、105℃、135℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpm、35 rpmに保持した。
第三反応装置の転化率が72重量%に達した時、第三反応装置から得られる重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、減圧脱揮装置又は押出脱揮装置等の揮発装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去し、その後、造粒してスチレン系共重合体(A-1-1)を得た。その溶融流動指数を測定した結果、MIR値は24.3であった。
「合成例b:スチレン系共重合体(A-2)の合成」
SM 65.5重量部、AN 34.5重量部、BMI 0.022重量部、重合開始剤として1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下「TX-29A」と略称する)0.01重量部、TDM 0.2重量部及びEB 25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を三槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を37 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、BMI 0.15重量部からなる追加の混合溶液を3 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置はCSTRで、第三反応装置はPFRであった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ95℃、105℃、135℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpm、35 rpmに保持した。
第三反応装置の転化率が74重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第三反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってスチレン系共重合体(A-2)を得た。スチレン系共重合体(A-2)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「合成例c:スチレン系共重合体(A-3)の合成」
SM 64.5重量部、AN 35.5重量部、BMI 0.007重量部、重合開始剤として2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシルプロパン(以下「PX-12」と略称する)0.005重量部、TDM 0.2重量部及びEB 25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を四槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を36 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、BMI 0.066重量部、TX-29A 0.054重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し、更にSM 100重量部、TX-29A 0.013重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第三反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第三反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第四反応装置に導入し重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置はCSTRで、第三、四反応装置はPFRであった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ95℃、105℃、130℃、135℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpm、38 rpm、35 rpmに保持した。
第四反応装置の転化率が76重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第四反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってスチレン系共重合体(A-3)を得た。スチレン系共重合体(A-3)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「合成例d:スチレン系共重合体(A-4)の合成」
SM 64.5重量部、AN 35.5重量部、BMI 0.028重量部、PX-12 0.006重量部、TDM 0.2重量部及びEB 25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を三槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を36 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、TX-29A 0.033重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し、更にSM 100重量部を2 kg/時間の流量で連続に第三反応装置に仕込んで重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置はCSTRで、第三反応装置はPFRであった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ95℃、105℃、135℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpm、35 rpmに保持した。
第三反応装置の転化率が71重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第三反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってスチレン系共重合体(A-4)を得た。スチレン系共重合体(A-4)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「合成例e:スチレン系共重合体(A-5)の合成」
SM 64.5重量部、AN 35.5重量部、BMI 0.022重量部、BPO 0.02重量部、TDM 0.2重量部及びEB 25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を三槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を36 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、BMI 0.2重量部、TX-29A 0.08重量部からなる追加の混合溶液を2 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し、更にSM 100重量部を2 kg/時間の流量で連続に第三反応装置に仕込んで重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置はCSTRで、第三反応装置はPFRであった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ95℃、105℃、135℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpm、35 rpmに保持した。
第三反応装置の転化率が72重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第三反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってスチレン系共重合体(A-5)を得た。スチレン系共重合体(A-5)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「合成例f:スチレン系共重合体(A-6)の合成」
原料溶液において、単量体の組成としてSM 60重量部、AN 34重量部、メタクリル酸メチル(MMAと略称す)6重量部、BMI 0.022重量部を使った以外は、合成例bと同様の操作方法にて製造した。最終の第三反応装置の転化率は74重量%であった。スチレン系共重合体(A-6)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「合成例g:スチレン系共重合体(A-7)の合成」
原料溶液において、単量体の組成としてSM 61重量部、AN 39重量部、BMI 0.022重量部を使った以外は、合成例bと同様の操作方法にて製造した。最終の第三反応装置の転化率は72重量%であった。スチレン系共重合体(A-7)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「合成例h:スチレン系共重合体(A-8)の合成」
原料溶液において、単量体の組成としてSM 73重量部、AN 27重量部、BMI 0.066重量部を使い、第二反応装置への追加の混合溶液において、単量体の組成としてBMI 0.45重量部を使った以外は、合成例bと同様の操作方法にて製造した。最終の第三反応装置の転化率は73重量%であった。スチレン系共重合体(A-8)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「比較合成例i:スチレン系共重合体(A-9)の合成」
SM 68重量部、AN 32重量部、BPO 0.02重量部、TDM 0.2重量部及びEB 25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を二槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を40 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置はCSTRであった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットルで、反応入口の温度をそれぞれ100℃、120℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpmに保持した。
第二反応装置の転化率が52重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってスチレン系共重合体(A-9)を得た。スチレン系共重合体(A-9)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「比較合成例j:スチレン系共重合体(A-10)の合成」
原料溶液において、単量体の組成としてBMI 0.01重量部を添加した以外は、合成例iと同様の操作方法にて製造した。最終の第二反応装置の転化率は53重量%であった。スチレン系共重合体(A-10)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「比較合成例k:スチレン系共重合体(A-11)の合成」
原料溶液において、単量体の組成としてジビニルベンゼン (以下「DVB」と略称する)0.035重量部を添加して、且つTDMの使用量を0.3重量部に変えた以外は、合成例iと同様の操作方法にて製造した。最終の第二反応装置の転化率は54重量%であった。スチレン系共重合体(A-11)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「比較合成例l:スチレン系共重合体(A-12)の合成」
SM 65.5重量部、AN 34.5重量部、BMI 0.022重量部、TDM 0.2重量部及びEB 25重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を二槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を37 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、BMI 0.15重量部からなる追加の混合溶液を3 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置はCSTRであった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットルで、反応入口の温度をそれぞれ140℃、150℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ120 rpm、90 rpmに保持した。
第二反応装置の転化率が50重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってスチレン系共重合体(A-12)を得た。スチレン系共重合体(A-12)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「比較合成例m:スチレン系共重合体(A-13)の合成」
第一反応装置への原料溶液と第二反応装置への追加の混合溶液において、単量体の組成としてBMIを使わないで、反応入口の温度をそれぞれ130℃、140℃に変えた以外は、合成例lと同様の操作方法にて製造した。最終の第二反応装置の転化率は49重量%であった。スチレン系共重合体(A-13)製造の際の反応条件及び分析結果を表1に示す。
「比較合成例n:スチレン系共重合体(A-14)の合成」
原料溶液において、単量体の組成としてBMIを1.5重量部に変えた以外は合成例iと同様の操作を行ったが、反応系の粘度が過度に上昇し、反応生成物の色相が悪くなると共にコンタミと架橋異物が増大し、結局、重合継続が不能となった。且つ第二反応装置から得られる重合物を取り出し、溶融流動指数を測定した結果、そのMIR値は32.5であった。
Figure 0004833528

R1,R2: 完全混合式反応装置(CSTR)
R3,R4:プラグフロー反応装置(PFR)
SM:スチレン単量体
AN:アクリロニトリル単量体
MMA:メタクリル酸メチル単量体
BMI:N,N'-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド単量体
DVB:ジビニルベンゼン
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
TX-29A:1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン
PX-12:2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシルプロパン
TDM:t-ドデシルメルカプタン
EB:エチルベンゼン
<ゴム状グラフト共重合体(B’)の合成例>
「ゴム状グラフト共重合体(B’-1)の合成例」
SM 68重量部、AN 32重量部、ブタジエンゴム7重量部(BDと略称す)、BPO 0.03重量部、TDM 0.3重量部及びEB 35重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を四槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を40 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第二反応装置に導入し、重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し重合反応を行った。そして第三反応装置から得られる重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第四反応装置に導入し重合反応を行った。
上記の第一〜四反応装置はCSTRであった。反応装置の体積は全て40リットルで、反応入口の温度をそれぞれ100℃、105℃、115℃、130℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ300 rpm、200 rpm、150 rpm、90 rpmに保持した。
第四反応装置の転化率が65重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第四反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってゴム状グラフト共重合体(B’-1)を得た。そのゴム含有量は10重量%であった。
「ゴム状グラフト共重合体(B’-2)の合成例」
表2の各成分の配合処方により、65℃の温度で14時間反応させ、転化率が94%、固形分の含有量が約36%、並びに重量平均粒径が約0.1μmの合成ゴムラテックスを得た。
Figure 0004833528
一方、表3に示す成分によりカルボキシル基含有高分子凝集剤を製造した。すなわち、表3の各成分の配合処方により75℃の温度で5時間反応させ、転化率が約95%、pHが6.0のカルボキシル基を含有する高分子凝集剤のラテックスを得た。
Figure 0004833528
次いで、上記カルボキシル基を含有する高分子凝集剤3重量部(固形分として)を上記合成ゴムラテックス100重量部(固形分として)に添加し、pHが8.5、ゴム粒径が0.31μmの肥大化ゴムラテックスを得た。次いで表4の各成分の配合処方により、前記肥大化ゴムラテックスにスチレンアクリロニトリル単量体をグラフト重合させ、ゴム状グラフト共重合体を製造した。

上記の配合により得られたゴム状グラフト共重合体ラテックスを、塩化カルシウムを用いて凝固し、脱水後、更に水分含有量が2重量%以下になるまで乾燥し、ゴム含有量が50重量%、ゴム重量平均粒径が0.31μmのゴム状グラフト共重合体(B’-2)を得た。
<ゴム変性スチレン系樹脂の製造例>
〔同時グラフト法〕
「製造例a’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−1)の製造」
SM 65.5重量部、AN 34.5重量部、BD 8.0重量部、BMI 0.022重量部、TX-29A 0.04重量部、TDM 0.3重量部及びEB 35重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を四槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を37 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら第二反応装置に導入し、更にSM 100重量部、BMI 0.15重量部からなる追加の混合溶液を3 kg/時間の流量で連続に第二反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し重合反応を行った。そして第三反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第四反応装置に導入し重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置はCSTRで、第三、四反応装置はPFRであった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ100℃、105℃、115℃、130℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ300 rpm、200 rpm、150 rpm、90 rpmに保持した。
第四反応装置の転化率が75重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第四反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってゴム変性スチレン系樹脂(I−1)を得た。そのゴム含有量は10重量%であった。得られたゴム変性スチレン系樹脂(I−1)をテトラヒドロフラン溶液に溶かしてスチレン系共重合体(A)の連続相を取り出して、溶融流動指数を測定した結果、その連続相のMIRは24.2値であった。ゴム変性スチレン系樹脂(I−1)製造の際の反応条件及び分析結果を表5に示す。
「製造例b’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−2)の製造」
SM 68重量部、AN 32重量部、BD 8.0重量部、BMI 0.0002重量部、TX-29A 0.04重量部、TDM 0.3重量部及びEB 35重量部の混合液を完全に溶解させて原料溶液とした。
上記の原料溶液を四槽直列の反応装置ヘ連続的に仕込んだ。即ち該原料溶液を40 kg/時間の流量で連続に第一反応装置に仕込んで重合反応を行った。そして、第一反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第二反応装置に導入し重合反応を行った。そして第二反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第三反応装置に導入し重合反応を行った。そして第三反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出しながら、第四反応装置に導入し重合反応を行った。
上記の第一、二反応装置はCSTRで、第三、四反応装置はPFRであった。反応装置の体積がそれぞれ40リットル、40リットル、75リットル、75リットルで、反応入口の温度をそれぞれ100℃、105℃、115℃、130℃に保持し、反応攪拌の速度をそれぞれ300 rpm、200 rpm、150 rpm、90 rpmに保持した。
第四反応装置の転化率が74重量%に達した時、合成例aと同様の操作方法にて、第四反応装置から得られた重合物の溶液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、脱揮、押出、造粒等の処理を行ってゴム変性スチレン系樹脂(I−2)を得た。そのゴム含有量は10.3重量%であった。得られたゴム変性スチレン系樹脂(I−2)をテトラヒドロフラン溶液に溶かしてスチレン系共重合体(A)の連続相を取り出して、溶融流動指数を測定した結果、その連続相のMIRは21.1値であった。ゴム変性スチレン系樹脂(I−2)製造の際の反応条件及び分析結果を表5に示す。
Figure 0004833528

R1,R2: 完全混合式反応装置(CSTR)
R3,R4:プラグフロー反応装置(PFR)
SM:スチレン単量体
AN:アクリロニトリル単量体
BD:ブタジエンゴム
BMI:N,N'-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド単量体
TX-29A:1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン
TDM:t-ドデシルメルカプタン
EB:エチルベンゼン
〔グラフトブレンド法〕
「製造例c’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−3)の製造」
ゴム状グラフト共重合体(B’-1)20重量部、ゴム状グラフト共重合体(B’-2)36重量部、スチレン系共重合体(A-1)44重量部及びN,N'−エチレンビス(ステアリルアミド)(以下「EBS」と略称する)0.3重量部をヘンシェルミキサーでドライブレンドし、更に、シリンダー温度(押出し機の原料槽温度)を200〜220℃、ダイアダプタ温度を220℃に設定した排気口付きの二軸押出機を用いて溶融混練してペレット状ゴム変性スチレン系樹脂(I−3)を得た。そのゴム含有量は20重量%であった。ゴム変性スチレン系樹脂(I−3)の組成、押出し条件及び物性分析結果を表6に示す。
「製造例c’−1:ゴム変性スチレン系樹脂(I−3−1)の製造」
スチレン系共重合体(A-1)の代わりに、スチレン系共重合体(A-1-1)44重量部を使用した以外は、製造例c’と同様の押出し条件にて処理して、ペレット状ゴム変性スチレン系樹脂(I−3−1)を得た。そのゴム含有量は20重量%で、スチレン系単量体及び/又はアクリロニトリル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量は0.64重量%であった。
「製造例c’−2:ゴム変性スチレン系樹脂(I−3−2)の製造」
スチレン系共重合体(A-1)の代わりに、スチレン系共重合体(A-1-2)44重量部を使用した以外は、製造例c’と同様の押出し条件にて処理して、ペレット状ゴム変性スチレン系樹脂(I−3−1)を得た。そのゴム含有量は20重量%で、スチレン系単量体及び/又はアクリロニトリル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量は0.63重量%であった。
「製造例d’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−4)の製造」
ゴム状グラフト共重合体(B’-2)36重量部、ゴム変性スチレン系樹脂(I−1)20重量部、スチレン系共重合体(A-1)44重量部及びEBS 0.3重量部を製造例c’と同様の押出し条件にて処理して、ペレット状ゴム変性スチレン系樹脂(I−4)を得た。そのゴム含有量は20重量%であった。ゴム変性スチレン系樹脂(I−4)の組成、押出し条件及び物性分析結果を表6に示す。
「製造例e’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−5)の製造」
ゴム状グラフト共重合体(B’-2)40重量部、スチレン系共重合体(A-1)60重量部及びEBS 0.3重量部を製造例c’と同様の押出し条件にて処理して、ペレット状ゴム変性スチレン系樹脂(I−5)を得た。そのゴム含有量は20重量%であった。ゴム変性スチレン系樹脂(I−5)の組成、押出し条件及び物性分析結果を表6に示す。
「製造例f’〜l’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−6)〜(I−12)の製造」
スチレン系共重合体(A)の種類と使用量を調整した以外は、製造例e’と同様の操作方法にて製造した。ゴム変性スチレン系樹脂(I−6)〜(I−12)の組成、押出し条件及び物性分析結果を表6に示す。
「比較製造例m’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−13)の製造」
スチレン系共重合体(A)の種類を調整した以外は、製造例c’と同様の操作方法にて製造した。ゴム変性スチレン系樹脂(I−13)の組成、押出し条件及び物性分析結果を表6に示す。
「比較製造例n’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−14)の製造」
ゴム変性スチレン系樹脂(I)とスチレン系共重合体(A)の種類を調整した以外は、製造例d’と同様の操作方法にて製造した。ゴム変性スチレン系樹脂(I−14)の組成、押出し条件及び物性分析結果を表6に示す。
「比較製造例o’〜s’:ゴム変性スチレン系樹脂(I−15)〜(I−19)の製造」
スチレン系共重合体(A)の種類を調整した以外は、製造例e’と同様の操作方法にて製造した。ゴム変性スチレン系樹脂(I−15)〜(I−19) の組成、押出し条件及び物性分析結果を表6に示す。
Figure 0004833528
<難燃性スチレン系樹脂組成物の実施例及び比較例>
「実施例1」
ゴム変性スチレン系樹脂(I−3)100重量部、難燃剤(II−1)としてテトラブロモビスフェノールA(Great Lakes社製、商品名はBA-59P)18重量部、難燃助剤として三酸化アンチモン(以下「Sb2O3」と略称する)8重量部、及びEBS 0.3重量部をヘンシェルミキサーでドライブレンドし、更に、シリンダー温度(押出し機の原料槽温度)を180〜200℃、ダイアダプタ温度を200℃に設定した排気口付きの二軸押出機を用いて溶融混練してペレット状難燃性スチレン系樹脂組成物を得た。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「実施例1-1」
ゴム変性スチレン系樹脂(I−3)の代わりに、ゴム変性スチレン系樹脂(I−3−1)100重量部を使用した以外は、実施例1と同様の操作方法にて製造した。製造した難燃性スチレン系樹脂組成物は、耐衝撃性が17kg-cm/cmで、抗ドリップ性、耐環境応力亀裂性、コンタミの評価は全て○であった。
「実施例1-2」
ゴム変性スチレン系樹脂(I−3)の代わりに、ゴム変性スチレン系樹脂(I−3−2)100重量部を使用した以外は、実施例1と同様の操作方法にて製造した。製造した難燃性スチレン系樹脂組成物は、耐衝撃性が17kg-cm/cmで、抗ドリップ性、耐環境応力亀裂性、コンタミの評価は全て○であった。
「実施例2」
ゴム変性スチレン系樹脂(I−4)100重量部、難燃剤(II−2)としてテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物(DIC社製、商品名はEC−20)18重量部、Sb2O3 8重量部、及びEBS 0.3重量部を実施例1と同様の操作方法にて溶融混練してペレットを製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「実施例3〜4」
ゴム変性スチレン系樹脂(I)の種類を調整した以外は、実施例2と同様の操作方法にて製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「実施例5」
ゴム変性スチレン系樹脂(I−7)100重量部、ポリカーボネート(台湾奇美社製、商品名はPC-110)300重量部、及び難燃剤(II−3)としてビスフェノールAビス(ジフェニルリン酸エステル)(大八化学社製、商品名はCR-741)20重量部をヘンシェルミキサーでドライブレンドし、更に、シリンダー温度(押出し機の原料槽温度)を230〜250℃、ダイアダプタ温度を250℃に設定した排気口付きの二軸押出機を用いて溶融混練してペレット状難燃性スチレン系樹脂組成物を得た。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「実施例6」
ゴム変性スチレン系樹脂(I)の種類を調整した以外は、実施例5と同様の操作方法にて製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「実施例7〜11」
ゴム変性スチレン系樹脂(I)の種類、難燃剤(II)及び難燃助剤の使用量を調整した以外は、実施例1と同様の操作方法にて製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「比較例1」
ゴム変性スチレン系樹脂(I)の種類を調整した以外は、実施例1と同様の操作方法にて製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「比較例2〜3」
ゴム変性スチレン系樹脂(I)の種類を調整した以外は、実施例2と同様の操作方法にて製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「比較例4〜5」
ゴム変性スチレン系樹脂(I)の種類を調整した以外は、実施例5と同様の操作方法にて製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「比較例6〜9」
ゴム変性スチレン系樹脂(I)の種類を調整した以外は、実施例1と同様の操作方法にて製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
「比較例10〜11」
難燃剤(II)及び難燃助剤の使用量を調整した以外は、実施例3と同様の操作方法にて製造した。その難燃性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合処方及びその物性分析測定結果を表7に示す。
Figure 0004833528

PC-110:ポリカーボネート樹脂(台湾奇美社製)
II-1:テトラブロモビスフェノールA(Great Lakes社製、商品名はBA-59P)
II-2:テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物(DIC社製、商品名はEC−20)
II-3:ビスフェノールAビス(ジフェニルリン酸エステル)(大八化学社製、商品名はCR-741)
Sb2O3:三酸化アンチモン

Claims (6)

  1. (i-1)スチレン系単量体50〜90重量部、(i-2)シアン化ビニル系単量体10〜50重量部及び(i-3)他の共重合可能なビニル系単量体0〜22重量部(これらの合計は100重量部)と、前記(i-1)、(i-2) 及び (i-3)の合計100重量部に対して0.0005〜1.0重量部の多官能性マレイミド系単量体とを共重合してなるスチレン系共重合体(A)を連続相とし、ジエン系ゴムからなるゴム粒子(B)を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂(I)100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤とリン系難燃剤から選ばれる難燃剤(II)1〜40重量部を含有する難燃性スチレン系樹脂組成物であって、
    前記ゴム変性スチレン系樹脂(I)におけるゴム含有量が1〜40重量%で、下記測定法により測定されるスチレン系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量が1.25重量%以下で、且つ、
    前記スチレン系共重合体(A)の下記式から求められるMIRが21.5〜30.0であることを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物。
    MIR=HMI/MI
    HMI:ASTM D-1238法により測定した200℃における10kg荷重でのMFR(g/10分)
    MI :ASTM D-1238法により測定した200℃における1kg荷重でのMFR(g/10分)
    スチレン系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体からなる二量体及び三量体の総含有量の測定法:ゴム変性スチレン系樹脂(I)をアセトンに溶かし、フレームイオン検出器(FID)を付けてあるガスクロマトグラフィーを用いて樹脂溶液を分析する。
  2. 前記多官能性マレイミド系単量体が、N,N'-4,4'-(3,3'-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N'-4,4'-(3,3'-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N'-4,4'-2,2-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N'-3,3'-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジフェニルスルホキシドビスマレイミド、N,N'-4,4'-ベンゾフェノンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニルオキシフェニル)2,2−プロパン、N,N'-1,3-フェニレンビスマレイミドから選ばれるものである請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  3. 前記ジエン系ゴムが、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム、スチレン−ジエン系ゴム、アクリロニトリル−ジエン系ゴムから選ばれるものである請求項1又は2記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  4. 前記多官能性マレイミド系単量体の使用量が0.001〜0.3重量部である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  5. 前記(i-2)シアン化ビニル系単量体の使用量が15〜45重量部である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  6. 前記(i-2)シアン化ビニル系単量体の使用量が20〜42重量部である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
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