JP4135314B2 - ドリル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被削材を穿孔するのに用いられるドリルに関し、例えば、プリント基板や、微少な金属部品、プラスティック等の被削材に小径深穴の孔部を穿孔するのに用いられる小型ドリルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に小型ドリルは、穿孔すべき穴がきわめて小径であり、ドリル本体の先端側に例えば直径0.05〜3.175mm程度の小径棒状の刃先部が設けられ、後端側にドリル本体を工作機械の回転軸に把持するための比較的大径のシャンク部が刃先部と一体にまたはろう付けや締まり嵌め等で接続されて設けられている。刃先部の材質は、通常、超硬合金が採用され、シャンク部は超硬合金やスチール等の鋼材等が採用されている。
【0003】
従来の小型ドリルでは、回転軸線周りに回転される小型ドリルの刃先部の周面に、刃先部の先端から基端側に向けて回転軸線周りにねじれる2条の切屑排出溝が対向して形成されているが、このような2条の切屑排出溝が設けられた従来の小型ドリルでは、2条の切屑排出溝によって芯厚が薄くなりドリルの剛性が低くなるという問題があり、これを解決するために特許第2879238号に記載されたような小型ドリルが提案されている。この小型ドリルは、刃先部の周面に形成された2条の切屑排出溝の溝深さが刃先部の基端側に向かうにしたがい小さくされることで、刃先部の芯厚を基端側に向かうにしたがい厚くしてドリルの剛性を高く保つことが狙われている。
【0004】
しかしながら、このような小型ドリルを用いても、刃先部に2条の切屑排出溝が設けられているために、刃先部の先端部分ではその芯厚を十分に大きく確保することができず、ドリルの剛性が不十分であり、しかも、切屑排出溝の溝深さが刃先部の基端側に向かうにしたがい小さくなっているために、刃先部の基端側部分で切り屑を逃がすためのスペースを十分に確保することができず、とくに深穴の孔部を穿孔する場合に、切り屑つまりが発生しやすく、切屑排出性が不十分であるという問題があった。
【0005】
また、ドリルの剛性についての問題を解決するために、USP5584617に開示されているような図6に示す小型ドリル1がある。この小型ドリル1は、刃先部2とシャンク部とを備えており、その刃先部2は先端から基端側に向けて回転軸線O周りにねじれて、ほぼ全長にわたって所定の溝深さをもつ1条の切屑排出溝3が設けられており、なおかつ切屑排出溝3のねじれ角αを刃先部2の先端から基端側に向かうにしたがい連続的に大きくさせて、切り屑の排出処理を向上させる点に特徴がある。このような小型ドリル1では、切屑排出溝3が1条のみであるため、刃先部2の芯厚dを薄くすることがなく、剛性を高く保つことができ、前記のような剛性についての問題はある程度解決される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6において芯厚の割合d/D(刃先部2の芯厚dが刃先部2の外径Dに対してなす割合d/D)で示すように、刃先部2の芯厚dがほぼ全長に亘って一定とされているために、特に穿孔する穴の穴径と穴深さとの比が10以上となるような深穴加工になると、穴曲がりが発生しやすく穴加工精度が悪化するという問題が残ってしまう。
【0007】
本発明は、上述のような課題に鑑みて、ドリルの剛性を高く保ち、良好な切り屑排出性を得ることができ、穴位置精度の高い小径深穴加工に用いられるドリルを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる小型ドリルは、刃先部の周面に該刃先部の先端から基端側に向けて回転軸線周りにねじれる切屑排出溝が形成され、該切屑排出溝の回転方向を向く壁面を構成する平坦面の先端側領域をすくい面とし、該すくい面と先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成されたドリルにおいて、前記刃先部の周面に形成される切屑排出溝が1条のみであり、前記刃先部の先端部では、該刃先部の軸直交断面で前記回転軸線を通り、かつ前記平坦面に直交する直線上において、前記刃先部の外周面を円弧とする仮想の円から前記平坦面までの距離が前記切屑排出溝の溝深さM1とされて、この溝深さM1と前記刃先部の最大外径Dとの関係がM1>D/2とされることにより、前記刃先部の先端から所定長さだけ前記切屑排出溝が回転軸線を含むように形成され、前記所定長さは刃先部の最大外径より小さいとともに、前記刃先部の先端から基端側に向かうにしたがい、前記切屑排出溝の溝深さM1が小さくなるとともに、前記切屑排出溝の溝幅が大きくなることを特徴とする。
【0009】
このような構成とすると、刃先部に設けられる切屑排出溝が1条のみであるため、刃先部に2条の切屑排出溝が設けられた従来のドリルに比べて芯厚が厚くなるのに加え、切屑排出溝の溝深さが刃先部の基端側に向かうにしたがい小さくされていることで、これに伴って芯厚がさらに厚くなってドリルの剛性を高く保つことができる。しかも刃先部の基端側に向かうにしたがい切屑排出溝の溝深さが小さくなるとともに、溝幅が大きくなることから、切り屑を逃がすのに十分な空間を確保できて切屑排出性を損なうことがない。
【0011】
さらに、切屑排出溝の溝深さM1と前記刃先部の最大外径Dとの関係がM1>D/2とされることにより、前記刃先部の先端から所定長さだけ前記切屑排出溝が回転軸線を含むように形成されていて、周速が小さく大きな切削抵抗がかかる回転軸線付近に位置する切刃が存在しないので、良好な切れ味が得られる。
また、切屑排出溝が回転軸線を含むように形成されている所定長さは、刃先部の最大外径よりも小さく設定されていることから、必要以上に刃先部の剛性を低めることもない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付した図面を用いて説明する。
図1は本発明の第一実施形態による小型ドリルの刃先部の側面図及び芯厚の割合を示す説明図、図2は同小型ドリルの刃先部の先端面図、図3は同小型ドリルの刃先部の先端部分を切屑排出溝に沿って見た仮想的な断面概略図、図4は図1に示す小型ドリルの刃先部のA地点における断面図、図5は図1に示す小型ドリルの刃先部のB地点における断面図である。
【0013】
本発明の第一実施形態による小型ドリル10は刃先部11とシャンク部とから構成され、刃先部11は図1に示すように、例えば直径0.05〜1mmの小径で略円柱状とされており、その先端から基端まで同一の外径Dをもつようなストレートタイプとされている。すなわち、刃先部11の外径Dは最大外径Dとされる。
【0014】
また、刃先部11にはその先端から基端側に向けて、回転軸線Oを中心に螺旋状に一定のねじれ角βでねじれて、外周面に開口する1条の切屑排出溝12が設けられており、この切屑排出溝12の壁面13は、図2、図4及び図5に示すように、平坦面13aと凹曲面13bとで構成される。
【0015】
さらに、切屑排出溝12の溝深さMは、刃先部11の先端から基端側に向かうにしたがい次第に小さくなるように形成されている。ここで、本実施形態における切屑排出溝12の溝深さMとは、刃先部11の軸直交断面で、回転軸線Oを通り、かつ切屑排出溝12の壁面13を構成する平坦面13aに直交する直線上において、刃先部11の外周面を円弧とする仮想の円から平坦面13aまでの距離とした。
【0016】
このとき、刃先部11の先端部では、図2の先端面図で示すように切屑排出溝12の溝深さMはM1とされ、刃先部11の長手方向の略中心部よりやや先端側よりのA地点では、図4の断面図で示すように切屑排出溝12の溝深さMがM2とされ、刃先部11の長手方向の略中心部よりもやや基端側よりのB地点では、図5の断面図で示すように切屑排出溝12の溝深さMがM3とされており、それぞれの溝深さM1〜M3の相互関係はM1>M2>M3とされている。なお、刃先部11の先端部では、後述するように、溝深さM1と刃先部11の最大外径Dとの関係がM1>D/2となっている。
【0017】
以上のように、切屑排出溝12の溝深さMが刃先部11の先端から基端側に向かうにしたがい次第に小さくなっているために、刃先部11の芯厚d(本実施形態において、刃先部11の断面に内接する最大の円の直径を示す)が、刃先部11の基端側に向かうにしたがい次第に大きくなっている。換言すれば、芯厚の割合d/D(刃先部11の芯厚dが刃先部11の最大外径Dに対してなす割合d/D)が、図1に示すように、刃先部11の先端から基端側に向かうにしたがい次第に大きくなっている。
【0018】
また、切屑排出溝12の溝幅Nは、図2、図4及び図5に示すように、刃先部11の先端から基端側に向かうにしたがい次第に大きくなるように形成されている。ここで、本実施形態における切屑排出溝12の溝幅Nとは、刃先部11の軸直交断面において、切屑排出溝12の壁面13を構成する平坦面13aに直交する方向から見たときに、壁面13と刃先部11の外周面とが交差する2点間の距離とした。
【0019】
このとき、刃先部11の先端部では、図2に示すように切屑排出溝12の溝幅NはN1とされ、刃先部11の長手方向の略中心部よりやや先端側よりのA地点では、図4に示すように切屑排出溝12の溝幅NがN2とされ、刃先部11の長手方向の略中心部よりもやや基端側よりのB地点では、図5に示すように切屑排出溝12の溝幅NがN3とされており、溝幅N1〜N3の相互関係はN1<N2<N3とされている。
【0020】
また、図2に示すように、切屑排出溝12の小型ドリル10の回転方向Tを向く壁面13(平坦面13a)の先端側領域をすくい面14とし、該すくい面14と刃先部11の先端逃げ面15との交差稜線部には切刃16が形成されている。先端逃げ面15は、切刃16の回転方向Tのすぐ後方に位置する第一逃げ面15aと、第一逃げ面15aに連なって回転方向T後方側に位置する第二逃げ面15bと、さらに、第二逃げ面15bに連なって回転方向T後方側に位置する第三逃げ面15cとで構成されている。
【0021】
刃先部11の先端部において、切屑排出溝12を除く外周面は、図2に示すようにマージン17と2番取り面18とで構成され、マージン17は切刃16の回転方向Tのすぐ後方に位置する第一逃げ面15aに連なる外周面に形成されており、2番取り面18は一定の2番取り深さaをもち、マージン17の回転方向T後方側に連続して、第二逃げ面15b及び第三逃げ面15cに連なる外周面に形成されている。さらに、マージン17及び二番取り面18は、切屑排出溝12と同様に刃先部11の先端から基端側に向けて小型ドリル10の回転方向Tの後方側にねじれて螺旋状に形成されている。
【0022】
また、ここで、刃先部11の先端部分において、図2及び図3に示すように、切屑排出溝12が回転軸線Oを含むように形成されている。
すなわち、図3に示すように刃先部11の先端から回転軸線Oに沿って所定長さ、例えば距離Xの地点まで、切屑排出溝12が回転軸線Oを含んでいる、換言すれば、刃先部11の先端から距離X(=0.9D)の地点まで、芯厚の割合d/D(芯厚dが刃先部11の最大外径Dに対してなす割合d/D)が50%より小さくなっており、先端逃げ面15が形成されている刃先部11を除く部分X′の芯厚の割合は例えば48%程度に設定されている。
【0023】
なお、回転軸線O付近に位置する切刃16が存在しないことから、その部分では被削材の切削が行われず、切削されない被削材が残ってしまうことになるが、残った被削材は極わずかの径をもつ円柱状をなすためその強度が弱く、刃先部11によって押しつぶされたり、曲げられて折れたりするので問題にはならない。
【0024】
また、この切屑排出溝12が回転軸線Oを含むように形成されている部分において、先端逃げ面15が形成されている刃先部11を除く部分X′の芯厚の割合d/Dは、40%≦d/D<50%の範囲に設定されるのが好ましい。この刃先部11の先端部の芯厚の割合d/Dが40%より小さいと、回転軸線O付近に残る円柱状の被削材の径が大きくなり、刃先部11によって残存する被削材を押しつぶしたり、曲げたりすることが困難になって、穴曲がりが発生するおそれが生じる。
【0025】
また、切屑排出溝12が回転軸線Oを含むように形成された刃先部11の先端からの距離Xは、刃先部の最大外径Dよりも小さく設定されており、本実施形態では例えばX=0.9Dとされているが、これより小さくても構わない。
【0026】
また、本実施形態による小型ドリル10は、刃先部11の最大外径Dが1mm以下、なおかつ、刃先部11の有効刃長Lと最大外径Dとの比L/Dは5以上となるように刃先部11が形成されている。換言すれば、本実施形態による小型ドリル10は、穿孔する穴の穴径が1mm以下、かつ穴深さと穴径との比が5以上となるような小径深穴加工に用いられる。
【0027】
上述のような構成とされた小型ドリル10は、その刃先部11の周面に形成された切屑排出溝が1条のみであるため、従来の2条の切屑排出溝が設けられた小型ドリルよりも刃先部11の芯厚を厚くできることに加え、刃先部11の先端から基端側に向けて切屑排出溝12の溝深さMが小さくなるように形成されているために、刃先部11の芯厚dを基端側に向かうにしたがいさらに厚くすることができる。換言すれば、刃先部11の芯厚dが刃先部11の最大外径Dに対してなす割合d/D(図1における芯厚の割合d/D)が、刃先部11の先端部分では50%近い値をもち、なおかつ刃先部11の先端から基端側に向けて次第に大きくなっていく。これにより、ドリルの剛性を高く保って穴曲がりを防ぎ、穴位置精度の低下やドリルそのものの折損を防止することができる。
【0028】
さらに、刃先部11の基端側に向かって切屑排出溝12の溝深さMが小さくされるとともに、同じく刃先部11の基端側に向かって切屑排出溝12の溝幅Nが大きくされていることにより、切り屑を逃がすための空間を従来のように狭めることがないので、深穴の孔部を穿孔する際でも、切り屑詰まりを防いで、良好な切屑排出性を得ることができる。
【0029】
また、刃先部11の先端から距離Xだけ、切屑排出溝12が回転軸線Oを含むように形成されていることにより、周速が小さいために切削抵抗が大きくて欠損しやすくなっている回転軸線O付近に位置する切刃が存在しない。これにより、切刃16の切れ味を良好に保つことができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、刃先部11はその先端から基端まで一定の外径Dをもつストレートタイプの小型ドリルについて説明したが、刃先部11が、その先端部分に位置する第一刃先部と、第一刃先部の後端側に位置し、第一刃先部の外径Dより小さい外径をもつ第二刃先部とから構成されるようなアンダーカットタイプのドリルでもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、刃先部11の外径Dがその先端から基端まで一定とされたストレートタイプの小型ドリルについて説明したが、これに限定されることなく、刃先部11の外径が先端から基端側に向かうにしたがい、徐々に小さくなるようなバックテーパを有する小型ドリルでもよい。この場合、刃先部11の先端側部分の外径が最大外径Dとなる。
【0033】
また、本実施形態においては、回転軸線O周りにねじれる切屑排出溝12のねじれ角βを刃先部11の先端から基端まで一定としたが、そのねじれ角βを先端から基端側に向かうにしたがい連続的に変化させてもよい。
【0034】
なお、本実施形態においては、刃先部の最大外径Dが1mm以下、かつ有効刃長Lと最大外径Dとの比L/Dが5以上となるような小型ドリルについて説明したが、この範囲に限定されることなく、これより大きい最大外径Dをもつドリルや、L/Dが5より小さいドリルでも構わない。
【0035】
【実施例】
本発明の一例による小型ドリルを実施例1〜3とし、これに加えて各種の構成を有する小型ドリル(比較例1,2及び従来例1〜4)を用いて被削材の穴明け試験を行った。
【0036】
ここで、実施例1〜3は、刃先部11の先端部における芯厚の割合d/Dが、本発明における好ましい範囲(40%≦d/D<50%)に設定されたものであり、また、比較例1は、刃先部11の先端部における芯厚の割合d/Dが、本発明における好ましい範囲よりも小さく設定された小型ドリルであり、さらに、比較例2は、刃先部11の先端部において、切屑排出溝12が回転軸線Oを含まないように形成されたものである、すなわち、刃先部11の先端部における芯厚の割合d/Dが、本発明における好ましい範囲よりも大きく設定された小型ドリルである。
【0037】
また、従来例1は、その刃先部11に2条の切屑排出溝12,12が形成されており、その切屑排出溝12,12の溝深さMが刃先部11の先端から基端側に向かうにしたがい漸次小さくなっている(溝幅Nは一定)小型ドリルであり、従来例2〜4は、刃先部2に1条の切屑排出溝3が形成され、切屑排出溝3の溝深さ及び溝幅が刃先部2の先端から基端まで一定とされている小型ドリルである。
【0038】
なお、実施例1〜3、比較例1,2及び従来例1は、その切屑排出溝12のねじれ角βが刃先部11の先端から基端まで一定の35゜とされており、これに対し、従来例2〜4は、その切屑排出溝3のねじれ角αが刃先部2の先端で30゜とされ、基端側に向かうにしたがい、ねじれ角αが連続的に大きくなり基端側部分で60゜とされている。
以上のような小型ドリル(実施例1〜3、比較例1,2及び従来例1〜4)を用いて行った穴明け試験の試験条件と結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
本実施例1〜3、比較例1,2及び従来例1〜4は共通して、刃先部11の外径Dが該刃先部11の先端から基端まで一定の0.3mmであるストレートタイプで、有効刃長Lが6mm、先端角が135゜である。なお、実施例1〜3において、切屑排出溝12が回転軸線Oを含むように形成されている刃先部11の先端からの距離Xは0.27mm(=0.9D)とされている。
【0041】
このような小型ドリル(実施例1〜3、比較例1,2及び従来例1〜4)を用いて、被削材(厚み0.2mmのBTレジンの両面板を4枚重ねたもの)にあて板(厚み0.2mmのLE400)と敷板(厚み1.6mmのベークライト樹脂板)をつけて、穴明け試験を行った。ドリルの回転数は100000min-1(rpm)、送り速度は0.020mm/rev.としてステップ送りはせずに被削材の穴明け加工を行い、100穴ずつの平均穴位置精度を±50μmより小さい値に維持しながら穿孔できた穴数を測定した。ここで表1における寿命とは、平均穴位置精度が±50μmを越える直前までに穿孔した穴数を示す。
【0042】
表1に示すように、本発明の一例である実施例1〜3では穿孔した穴数がどれも6700以上まで安定した穴位置精度を保つことができ、他の小型ドリル(比較例1,2及び従来例1〜4)と比較して、顕著な効果がみられた。
【0043】
また、刃先部11の先端部における芯厚の割合d/Dが35%とされ、本発明における好ましい範囲よりも小さく設定されている比較例1では、回転軸線O付近に残存する被削材の径が大きすぎて、穴曲がりが発生し、穿孔した穴数が2100までしか穴位置精度が安定しなかった。また、先端部における芯厚の割合d/Dが55%とされ、切屑排出溝12が回転軸線Oを含まないように形成されている比較例2は、穿孔した穴数が3800の時点において、平均穴位置精度は±50μm以下に保つことができていたものの、切削抵抗が大きくなりすぎてバリが発生したので、この時点で寿命とした。
【0044】
さらに、刃先部11に2条の切屑排出溝12,12が形成され、その切屑排出溝12,12の溝深さMが刃先部11の先端から基端側に向けて小さくなっているように形成された従来例1では、切り屑詰まりが発生して、穿孔した穴数が900までしか穴位置精度が安定しなかった。
また、刃先部2に1条の切屑排出溝3が形成されるが溝深さ及び溝幅が刃先部2の先端から基端まで一定の従来例2〜4では、穴曲がりが発生し、穿孔した穴数がどれも2600以下までしか穴位置精度が安定しなかった。
【0045】
以上のように、本発明による実施例1〜3は、刃先部11の先端部における芯厚の割合d/Dが、本発明における好ましい範囲よりも外れている比較例1,2や従来例1〜4と比較して、穴位置精度が安定したまま数多くの穴を穿孔できた。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の小型ドリルによれば、刃先部に設けられる切屑排出溝が1条のみであるため、芯厚を厚くすることができ、さらに刃先部の先端から基端側に向かうにしたがい切屑排出溝の溝深さが小さくされているために、芯厚をより厚くすることができるので、高いドリル剛性を有し、刃先部の折損や穴曲がりを防いで、安定した穴位置精度が得られる。
また、刃先部の基端側に向かうにしたがい切屑排出溝の溝深さが小さくなるとともに、溝幅が大きくされていることから、切り屑を逃がすのに十分な空間が確保されて、切り屑詰まりを起こすことなく、良好な切屑排出性が得られる。
【0047】
また、刃先部の先端から所定長さだけ切屑排出溝が回転軸線を含むように形成されているから、周速が小さくて切削抵抗が大きくなる回転軸線付近に位置する切刃が存在せず、良好な切れ味が得られる。また、切屑排出溝が回転軸線を含むように形成されている刃先部の先端からの所定長さは刃先部の最大外径よりも小さく設定されているから、必要以上に芯厚の薄い部分をつくることなく、ドリルの剛性を低めることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態による小型ドリルの刃先部を示す側面図及び刃先部の芯厚を示す説明図である。
【図2】 図1における小型ドリルの刃先部の先端面図である。
【図3】 図1における小型ドリルの刃先部の断面を切屑排出溝に沿って見た仮想的な断面概略図である。
【図4】 図1における小型ドリルの刃先部のA地点の断面図である。
【図5】 図1における小型ドリルの刃先部のB地点の断面図である。
【図6】 従来の小型ドリルの刃先部を示す側面図及び刃先部の芯厚を示す説明図である。
【符号の説明】
10 小型ドリル
11 刃先部
12 切屑排出溝
13 壁面
14 すくい面
15 先端逃げ面
16 切刃
d 芯厚
D 最大外径
L 有効刃長
M 溝深さ
N 溝幅
O 回転軸線
T 回転方向
X 距離
Claims (1)
- 刃先部の周面に該刃先部の先端から基端側に向けて回転軸線周りにねじれる切屑排出溝が形成され、該切屑排出溝の回転方向を向く壁面を構成する平坦面の先端側領域をすくい面とし、該すくい面と先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成されたドリルにおいて、
前記刃先部の周面に形成される切屑排出溝が1条のみであり、
前記刃先部の先端部では、該刃先部の軸直交断面で前記回転軸線を通り、かつ前記平坦面に直交する直線上において、前記刃先部の外周面を円弧とする仮想の円から前記平坦面までの距離が前記切屑排出溝の溝深さM1とされて、この溝深さM1と前記刃先部の最大外径Dとの関係がM1>D/2とされることにより、前記刃先部の先端から所定長さだけ前記切屑排出溝が回転軸線を含むように形成され、前記所定長さは刃先部の最大外径より小さいとともに、
前記刃先部の先端から基端側に向かうにしたがい、前記切屑排出溝の溝深さM1が小さくなるとともに、前記切屑排出溝の溝幅が大きくなることを特徴とするドリル。
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