JP4375841B2 - 小径ドリル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板の穴明け加工に使用される小径ドリルに関し、その断面形状を改良することにより、切削性能を向上させたものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の発展はめざましく、プリント配線板は量的に拡大し、質的に向上した。このプリント配線板の小径穴加工においては、ドリルの性能上重要視される主な項目として、ドリルが折れにくいこと、穴位置精度が良いこと、穴内壁面あらさが滑らかであること、樹脂の軟化が少ないことなどがあげられている。この加工は、相対的に穴のアスペクト比(穴深さ/穴径)が大きい加工となるため、特に、ドリルの折損は最も大きな問題とされている。これらの問題の本質的解決を図るためには、工具だけでなく機械、要素技術などを含めて総合的に検討しなければならない。しかしここでは、工具の断面形状と工具剛性及び切りくず排出溝との関係を明らかにし、工具の実用的な改良・発展を図ることを目的としている。
【0003】
この種の小径ドリルとしては、例えば図5に示すようなものが知られている。この小径ドリルは、超硬合金製の丸棒状体をなし、その先端部には切れ刃12が形成され、工具本体の外周には、所定のねじれ角を有する切りくず排出溝13が備わっている。切りくず排出溝13は、軸直角断面視、半径方向に真っ直ぐに延びる平面状の壁面14により形成されている。この小径ドリルは、工具本体の剛性が高く、切りくず排出性も概ね良好であり、プリント配線板の加工に適した工具であるが、次に記す課題を有し、改良が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、以下に従来技術の問題点を記述する。
【0005】
この種のドリルの構成材料である超硬合金は、高硬度のため耐摩耗性が高く、熱的性質に優れる工具材料であるが、強度や靱性が低いという欠点を有している。また、プリント配線板の穴明け加工は、アスペクト比が大きいため、工具本体の折損を生じやすい加工である。したがって、超硬合金を構成材料とする小径ドリルにおいては、特に、折損が問題とされている。そこで、工具剛性を高めるために、芯厚を厚くした場合には、溝容積や溝幅比が小さくなり、切りくず排出性が悪くなるという問題を生じる。このようなことから、工具本体の断面形状を芯厚と溝幅比とにより特定する従来の技術常識では、工具剛性と切りくず排出性の両特性を同時に向上させることは困難であった。
【0006】
また、すくい面の半径方向すくい角が負角であるため、切れ味が悪く、切削抵抗が高いという問題がある。このすくい角を負角に形成したのは、切れ刃強度を向上させるためである。しかし、加工品質の面からは、切りくず排出性や切れ味といった切削性能も重要な要素となっており、逆に、切削抵抗の低い工具が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、工具剛性及び切りくず排出性、また、切れ味といった切削性能を向上させることを目的として、従来の小径ドリルに実用的な改良を加えたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の如き課題に鑑みなされたもので、[請求項1] 丸棒状体をなす工具本体の刃部先端には、2枚刃形式の切れ刃が回転軸対称の位置に形成され、工具本体の刃部外周には、切りくず排出溝が所定のねじれ角を有して形成されたプリント配線板の加工に使用される超硬合金製の小径ドリルにおいて、前記小径ドリルのドリル直径は0.6mm以下にあり、前記切りくず排出溝を画設する壁面は、軸直角の断面視、曲率半径r1の円弧状凹部と曲率半径r2の円弧状凸部とからなる波形状に形成され、当該凹部は切れ刃に隣接して配置され、その凹曲面は半径方向すくい角が0°〜45°のすくい面を構成しており、他方、当該凸部は前記凹部に隣接して、切れ刃と反対側の半径方向に延設されており、その凸曲面は工具本体中心部分の芯厚tを規定するように形成され、これら凹部と凸部の曲率半径r1、r2の関係がr1<r2の関係にあり、さらに、前記凸曲面によって形成された工具本体の中心部分の肉厚が最も厚く、外周部分の肉厚より厚く形成されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明による小径ドリルの工具本体1を示したものである。工具本体1は、炭化タングステン基超硬合金から構成される段付きの丸棒状体をなし、シャンク部2と刃部3とにより構成されている。シャンク部2はスピンドルに把持される部分であり、そのシャンク径は標準仕様でφ3.175mmとなっている。刃部3は、切削作用を行う切れ刃4を備える部分であり、切れ刃4は刃部3先端の回転軸対称の位置に所定の先端角、所定の芯厚tをなして形成されている。ドリル直径は、切れ刃4の最外径を示しており、本発明では、φ0.6mm以下が採用されている。φ0.6mm以下としたのは、アスペクト比が大きくなり、殊に、工具剛性の向上が望まれていたからである。なお、φ0.6mmを越える小径ドリルに本発明の構成を適用しても問題はない。
【0011】
先端角は、小さい程喰い付き性が良い反面、小さすぎると銅箔の切りくず長さが長くなり、ドリル本体の切りくずの巻き付きを起こしてしまう。したがって、一般的な角度である130°を採用している。芯厚tについては、本発明による断面形状の改良に係わる部分であり、詳細は後述するが、一般的には、芯厚tが厚くなると、工具剛性は向上し、切りくず排出性は低下するものである。これは、芯厚tが厚くなることにより、溝容積が減少するためである。したがって、従来は、工具剛性と切りくず排出性を同時に向上させることは困難であった。
【0012】
刃部3の外周部分には、所定のねじれ角を有する切りくず排出溝5が回転軸対称の位置に、刃部3後端側に延在して形成されている。ねじれ角は切れ味、切りくず排出性に影響を与える切削諸元であり、ねじれ角が大きいほど切削抵抗は小さくなり、ねじれ角が小さいほど切りくず排出性は良好となる。一般的には、30°〜35°が採用されているが、本実施形態では、切削抵抗を低減することを優先して40°に設定している。
【0013】
図2及び図3は、本発明の実施形態を示す。図2は刃部の軸直角断面を、図3は先端視正面図を示す。工具本体1中心部分の肉厚が最も厚く、中心から外周側へいくにしたがい肉厚は薄くなっている。工具本体1の剛性を向上させるためには、芯厚tは厚いほどよいが、切りくず排出性を考慮して、本実施形態では0.30D〜0.50Dに設定されている。従来は、芯厚tを厚くすると切りくず排出溝5が浅くなって溝容積が減少し、切りくず詰まりを発生する場合があったが、本発明では、後述するように、溝容積が確保されるためかかる弊害を回避することができる。
【0014】
本実施形態は、軸直角断面視、切りくず排出溝5の壁面を凹部6と凸部7とからなる波形状に形成している。凹部6は、曲率半径r1の円弧状からなり、切れ刃4に隣接して配置されている。その凹曲面8は、すくい面を構成し、半径方向すくい角θが0°〜45°に設定されている。すくい角を0°以上としたのは、切削抵抗を低減し、切れ味を良くするためである。すくい角を45°以下としたのは、すくい角が45°を越えると切れ刃強度が低下して、切れ刃欠損を生じやすくなるからである。
【0015】
他方、凸部7は、曲率半径r2の円弧状に形成され、凹部6に隣接して、切れ刃と反対側の半径方向に延設されている。ここで、曲率半径r2はr1より大きい値に形成されている。工具本体1中心部分では芯厚tを厚くし、工具本体1外周部分では切りくず排出溝5の容積を確保するためである。
【0016】
図4は、上側の当て板9と下側の捨て板10との間にプリント配線板11を挟み、穴明け加工している状態を示す図である。当て板9には、主に、配線板の銅箔の保護、穴入口のバリの発生防止、切れ刃4の喰い付き性向上等を目的として、アルミ箔やベーク材等が使用される。捨て板10には、配線板貫通時における穴あけ機テーブルからのドリル刃先保護を目的としており、ベーク材等が使用される。挟まれるプリント配線板11の枚数が多くなるほど、生産能率を高めることができるが、アスペクト比が大きくなると、前述した不都合な問題を生ずるため、現状ではアスペクト比6〜7に制限されている。本発明品によれば、切りくず排出溝5の容積が大きく形成されており、従来品に比べ円滑に切りくずを排出することができるとともに、従来より深穴の加工を行うことができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、工具剛性と切りくず排出性の向上を図ることができ、アスペクト比の大きい多層板の深穴加工において、工具本体の折損を生ずることなく、円滑に切りくずを排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる小径ドリルの工具本体全体を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す小径ドリルの軸直角断面図である。
【図3】図2に示す小径ドリルの先端視正面図である。
【図4】小径ドリルによる穴明け加工の状態を説明する図である。
【図5】従来の一例を示す小径ドリルの軸直角断面図である。
【符号の説明】
1 工具本体
2 シャンク部
3 刃部
4 切れ刃
5 切りくず排出溝
6 凹部
7 凸部
t 芯厚
Claims (1)
- 丸棒状体をなす工具本体の刃部先端には、2枚刃形式の切れ刃が回転軸対称の位置に形成され、工具本体の刃部外周には、切りくず排出溝が所定のねじれ角を有して形成されたプリント配線板の加工に使用される超硬合金製の小径ドリルにおいて、前記小径ドリルのドリル直径は0.6mm以下にあり、前記切りくず排出溝を画設する壁面は、軸直角の断面視、曲率半径r1の円弧状凹部と曲率半径r2の円弧状凸部とからなる波形状に形成され、当該凹部は切れ刃に隣接して配置され、その凹曲面は半径方向すくい角が0°〜45°のすくい面を構成しており、他方、当該凸部は前記凹部に隣接して、切れ刃と反対側の半径方向に延設されており、その凸曲面は工具本体中心部分の芯厚tを規定するように形成され、これら凹部と凸部の曲率半径r1、r2の関係がr1<r2の関係にあり、さらに、前記凸曲面によって形成された工具本体の中心部分の肉厚が最も厚く、外周部分の肉厚より厚く形成されていることを特徴とする小径ドリル。
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Family
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Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP18017599A Expired - Lifetime JP4375841B2 (ja) | 1999-06-25 | 1999-06-25 | 小径ドリル |
Country Status (1)
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JP (1) | JP4375841B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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1999
- 1999-06-25 JP JP18017599A patent/JP4375841B2/ja not_active Expired - Lifetime
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