JP2004090150A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Shinya Imamura
今村 晋也
Haruyo Fukui
福井 治世
Tatsuro Fukuda
福田 辰郎
Kazuo Yamagata
山縣 一夫
Hideki Moriguchi
森口 秀樹
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Abstract

【課題】本発明は、特に集積回路や各種電子部品を実装するプリント回路用基板などの溝加工、切抜き加工や穴開け加工などに用いられる表面被覆切削工具を提供することを主要な目的とする。
【解決手段】基材と、基材上に形成された被覆膜とで表面被覆切削工具を構成し、被覆膜は(TiaSib)(CxNy)で表される化合物の層からなる。ここでa+b=1、0.01≦b≦0.6、x+y=1、0≦x≦0.6である。上記被覆膜は、上記基材側に設けられる第1被覆膜と、第1被覆膜に対し、上記基材とは反対側に設けられ、上記第1被覆膜よりもC量が多い第2被覆膜とで構成してもよい。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般に、表面被覆切削工具に関するものであり、より特定的には、集積回路や各種電子部品を実装するプリント回路用基板(PCB:PrintCircuit Board)などの溝加工、切抜き加工や穴開け加工などに用いられる表面被覆切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器においては、小型化、軽量化が必須課題であり、その動作の中枢となるプリント回路基板には、実装密度の高密度化や高精度化などが要求される。そのためドリル加工やルータ加工などの切削加工によって形成する穴の直径や、溝の幅は、ますます小寸法化されており、それに応じてたとえばドリルやルータでも、小径のものが使用されている。
【0003】
たとえばルータでは、その直径が3.175mm以下のものが、また、ドリルでは、その直径が0.3mm以下のものが使用されはじめた。
【0004】
また、作業能力向上と製造コスト低減などのために、一度に加工するプリント回路基板の重ね枚数を増やしたり、加工速度を上げたりすることによって、ドリルやルータなどの切削工具の強度が不足して加工中に折損したり、プリント回路基板にバリなどを発生させて製品不良となることが問題となってきた。
【0005】
この課題に対して、たとえば特許第3065547号に示されたルータでは、ルータの刃部のすくい面側に補強のリブを設けて刃部の剛性を高め、ルータカッターの強度を向上させ、切削加工中の折損事故に対する改善を図っている。
【0006】
また、たとえば特開平10−138027号に示されたドリルでは、超硬合金からなる基材の表面に、硬質炭素膜被覆して、耐折損性の向上を図っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ますますユーザから実装の高密度化や高精度化の要求が厳しくなり、溝加工や切り抜き加工を行なうルータの直径は、従来の約半分の1.6mm以下となってきており、上述の工具形状の改良だけでは加工時の折損不良を防ぐことが難しくなってきた。
【0008】
一方、実装の高密度化や高精度化の要求が厳しくなるにともない、穴開け加工を行なう、PCB加工用小径ドリルは、0.2mm以下のものが用いられており、特開平10−138027号に記載されたドリルでは、その硬質炭素膜の密着強度が低く、切削時に膜剥離が発生し短寿命となることが問題となっていた。
【0009】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、特に、集積回路や各種電子部品を実装するプリント回路用基板などの加工に用いられる切削工具において、刃部の剛性を高め、かつ切り屑の排出性を良くすることで、耐欠損性および耐久性を高めた表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明のある局面に従う表面被覆切削工具は、基材と、上記基材上に形成された被覆膜とを備え、上記被覆膜は(TiaSib)(CxNy)層からなり、ここでa+b=1、0.01≦b≦0.6、x+y=1、0≦x≦0.6である。
【0011】
上記表面被覆切削工具によれば、この被覆膜が極めて硬く、耐酸化温度が高いため、耐摩耗性が向上し、切削工具寿命の延長を図ることができる。また、被削材との熱的・化学的な反応が抑えられるので、切り屑の排出性が良くなることに加え、被削材の溶着が抑えられることから、切削抵抗が下がるとともに、切れ刃の欠け、折損が抑えられる。
【0012】
この発明の好ましい実施態様によれば、上記被覆膜は、上記基材側に設けられる第1被覆膜と、上記第1被覆膜に対し、上記基材とは反対側に設けられ、上記第1被覆膜よりもC量が多い第2被覆膜とを有して構成されている。
【0013】
上記表面被覆切削工具によれば、C量が多い第2の被覆膜により摩擦係数を低下させることができ、これにより切削工具寿命が長くなる。一方、比較的C量が少ない基材側の被覆膜により、被覆膜の密着性を確保することができる。
【0014】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記被覆膜は、基材側から表面側へ向けて連続的にC量が増加する。
【0015】
上記表面被覆切削工具によれば、上記被覆膜の最表面のC量が多くなり、これにより摩擦係数を低下させることができ、切削工具寿命の延長を図ることができる。一方、基材側は比較的C量が少ないので、被覆膜の密着性を確保することができる。
【0016】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記基材は、炭化タングステンとコバルトとを含有し、コバルト含有量が1質量%以上12質量%以下の超硬合金からなる。
【0017】
上記表面被覆切削工具によれば、靭性の低下による刃先こぼれの発生を防止しながら、被覆膜の密着性低下を防止することができる。
【0018】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記基材は、コバルト含有量が1質量%以上5質量%以下の超硬合金からなる。
【0019】
上記表面被覆切削工具によれば、靭性の確保と、耐摩耗性の確保を両立させることができる。
【0020】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記基材は、TaまたはCrの少なくともいずれか一方を含み、その含有量は合算で0.3質量%以上3.0質量%以下である。
【0021】
上記表面被覆切削工具によれば、炭化タングステンの結晶粒の成長を抑制し、刃先強度を向上させることができる。
【0022】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記被覆膜と上記基材との間に、厚みが0.2μm以下の金属Cr層を有する。
【0023】
上記表面被覆切削工具によれば、基材と被覆膜の密着性を向上させることができる。
【0024】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記被覆膜の厚みが、0.05μm以上3μm以下である。
【0025】
上記表面被覆切削工具によれば、耐摩耗性を確保すると共に、被覆膜の剥離や欠けを抑制することができる。
【0026】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記表面被覆切削工具は、プリント回路基板加工用であって、上記基材は炭化タングステンを含有し、その炭化タングステンの結晶粒径が、0.1μm以上2μm以下であり、上記基材の焼結後の飽和磁気量(4πσ)が10Tm/kg以上220Tm/kg以下であり、抗磁力(Hc)が25kA/m以上40kA/m以下であり、ビッカース硬度(Hv)が15GPa以上25GPa以下であり、抗折力が1.5GPa以上である。
【0027】
上記表面被覆切削工具によれば、炭化タングステンの結晶粒子が脱落しても大欠損が生じることを防止することができ、また、プリント回路基板加工用表面被覆切削工具として必要とされる耐摩耗性と靭性とを両立することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下この発明に基づいた各実施の形態における表面被覆切削工具について説明する。
【0029】
本発明の実施の形態の表面被覆切削工具は、超硬合金からなる基材の表面に、被覆膜を被覆して構成される。本実施の形態で示す表面被覆切削工具は、プリント回路基板の切削加工を主な用途とするものである。プリント回路基板は、ガラス繊維を含有したエポキシ樹脂を銅箔で挟んだ特異な材質および構造を有しているので、その切削加工に用いる切削工具も通常の切削工具とは要求される特性が異なる。なお、本実施の形態で示す表面被覆切削工具は、プリント回路基板加工用であるが、本発明は他の用途の切削工具にも適用できるものである。
【0030】
本実施の形態の、表面被覆切削工具の基材は、超硬合金で構成されている。この基材を構成する超硬合金は、炭化タングステンとコバルトを含有しており、その炭化タングステン結晶粒子の平均粒径は、0.1μm以上2.0μm以下である。また、このコバルトの含有量は、1質量%以上12質量%以下である。
【0031】
ここで、炭化タングステンの結晶粒子の平均粒径を0.1μm以上としたのは、結晶粒径が0.1μm未満であると、現状の評価方法ではその結晶粒径の判別が困難であり、評価できないためである。一方、2.0μm以下としたのは、結晶粒径の平均粒径が、2.0μmを超えると、基材の表面に形成した被覆膜が摩耗して、基材中の炭化タングステン粒子が脱落した場合に大欠損となり好ましくないからである。また、炭化タングステンの結晶粒径は、基材の靭性にも大きな影響を与えるが、被覆膜の密着性の評価結果からも平均粒径が上記の範囲にあることが好ましい。
【0032】
また、コバルトは主に結合層形成のために含有させている。コバルトの含有量を1質量%以上12質量%以下とした理由は以下のとおりである。コバルトの含有量が1質量%未満であると、靭性が低下して刃先こぼれが発生するので好ましくない。逆にコバルトの含有量が12質量%を超えると基材の硬度が低下して、高速切断時の耐摩耗性が低下する。また、コバルトと被覆膜との親和性が低いために密着性が著しく低下する。さらに、刃先に強い外力が加わった場合に、基材の変形に高硬度な被覆膜が追随できず、被覆膜が基材との界面で剥離してしまうためである。なお、コバルトの含有量が、1質量%以上5質量%以下であれば、靭性と耐摩耗性を両立させる上でさらに好ましい。
【0033】
また、基材には、刃先強度を高める効果があるTaまたはCrの一方または両方を、合計0.3質量%以上3.0質量%以下の範囲で含有させてもよい。これらの含有量が、0.3質量%未満であると、炭化タングステンの粒成長抑制効果がなく、3.0質量%を超えると、炭化物や固溶体が粗大化し、靭性が低下するので好ましくない。特に、基材がTaとCrの少なくとも一方を含み、かつ被覆膜と基材との間に0.2μm以下の金属Cr層が存在する場合には、基材と被覆膜との密着性がさらに向上する。
【0034】
また、プリント回路基板加工時に要求される特性を考慮すると、基材は次の特性を有することが好ましい。焼結後の飽和磁気量(4πσ)が10Tm/kg以上220Tm/kg以下、抗磁力(Hc)が25kA/m以上40kA/m以下、ビッカース硬度(Hv)が15GPa以上25GPa以下、抗折力が1.5GPa以上4GPa以下。
【0035】
ここで、焼結後の飽和磁気量(4πσ)が、上記範囲内であると、必要とされる耐摩耗性と靭性を両立することができる点で好ましく、10Tm/kg未満であると、脆化層(η層)が発生し、耐欠損性が低下し、220Tm/kgを超えるとフリーカーボンが析出して好ましくない。
【0036】
また、抗磁力(Hc)が、上記範囲内であると、必要とされる耐摩耗性と靭性を両立することができる点で好ましく、25kA/m未満であると、耐摩耗性が低下し、40kA/mを超えると耐欠損性が低下するため好ましくない。
【0037】
また、ビッカース硬度(Hv)が、上記範囲内であると、必要とされる耐摩耗性と靭性を両立することができる点で好ましく、15GPa未満であると、耐摩耗性が低下し、25GPaを超えると、耐欠損性が低下するため好ましくない。
【0038】
また、抗折力が、上記範囲内であると、耐折損性が優れる点で好ましく、1.5GPa未満であると、突発的な折損が発生しやすくなるため好ましくない。
【0039】
上記基材には、前述のように被覆膜が被覆される。被覆膜は(TiaSib)(CxNy)で表される化合物からなる層で構成され、ここでa+b=1、0.01≦b≦0.6、x+y=1、0≦x≦0.6である。ここで、a、b、x、yはそれぞれ原子比を表している。この被覆膜は、極めて硬く、耐酸化温度が高いため、耐摩耗性が向上し、切削工具寿命を長くすることができる。また、被削材との熱的・化学的な反応が抑えられるので、切り屑の排出性が良くなることに加え、被削材の溶着が抑えられることから、切削抵抗が下がるとともに、切れ刃の欠け、折損が抑えられる。
【0040】
ここで、Siの原子比bが0.01未満であると、被覆膜硬度の向上はほとんど期待できず、また、0.6を超えると、被覆膜が脆くなり、逆に摩耗が促進されるので好ましくない。また、Cの原子比xが0.6を超えると、結晶性が悪くなり、被覆膜の硬度が低下するので好ましくない。なお、本発明においてCは、全く含有しなくてもよい任意成分である。
【0041】
この被覆膜は、金属蒸発原料と、窒素ガスまたはメタンガスの一方または両方を用いた公知のアークイオンプレーティング法により、基材の表面に被覆する。被覆膜の形成は、他の方法によっても可能であり、これに限定されるものではない。
【0042】
被覆膜は1層であっても良いが、基材に直接被覆された基材側の第1被覆膜の上に、この第1被覆膜よりC量の多い第2被覆膜を形成すると、さらにその性能の向上を図ることができる。要因を解明した訳ではないが、発明者らがピンオンディスク試験で評価したところ、C量が多いTiSiCNは、焼きつきが少なく、摩擦係数が小さくなることがわかった。そこで、このC量が多い第2被覆膜を第1被覆膜に対し基材とは反対側の最表面側に設けることにより、切削抵抗を小さくし、切削工具寿命の延長を図ることができる。一方、被覆膜の基材との密着性を考慮すると、基材側の第1被覆膜のC量は、一定以下にすることが好ましい。これらの観点より、基材側の第1被覆膜は、C量が少なく、最表面側の第2被覆膜は、C量が多いのが理想的である。具体的には、基材側の第1被覆膜のCの原子比x1は、0以上0.3以下が好ましく、最表面側の第2被覆膜のCの原子比x2は、0.3以上、0.6以下が好ましい。
【0043】
被覆膜は、基材側の第1被覆膜と、最表面側の第2被覆膜の2層形成しても良いし、基材側の第1被覆膜と最表面側の第2被覆膜との間に、1層または複数層の被覆膜を形成して、被覆膜を3層以上とし、各層の被覆膜のC量を基材側から表面側に向かって順に増加させるようにしても良い。
【0044】
また、同様の観点から、被覆膜のC量を、基材側から表面側に向かって被覆膜内で連続的に増加させるようにしてもよい。この場合には、最表面側のC量が多くなる一方、基材側のC量は比較的少なくなるので、上記の場合と同様、基材との密着性を確保しながら、切削抵抗を小さくして、切削工具寿命の延長を図ることができる。
【0045】
この被覆膜の厚み内でC量が連続的に増加する被覆膜は、コーティング中にメタンの流量または分圧を連続的に増加させることにより形成することができる。
【0046】
さらに、すでに述べたように、基材がTaまたはCrの少なくとも一方を含む場合に、被覆膜と基材との間に厚さ0.2μm以下の金属Cr層を形成することも、密着性を向上する観点から好ましい。
【0047】
被覆膜の厚み(2層以上の場合は全ての層の合計)は、0.05μm以上3.0μmの範囲となるように調整されている。0.05μm未満の場合には、耐摩耗性に問題があり、3.0μmを超えると、被覆膜に蓄積される内部応力が大きくなって、剥離しやすくなったり、被覆膜の欠けを生ずるなどの問題がある。
【0048】
被覆膜の厚みは0.1μm以上1.5μm以下に調整することがさらに好ましい。被覆膜の厚みがこの範囲内であれば、耐摩耗性と靭性の両方を向上させることができる。
【0049】
上述したような基材に、上記のような被覆膜を設けることにより、超硬基材と被覆膜との硬度を高くし、かつプリント回路基板切削時の、切削工具表面の滑らかさを確保して、エポキシ樹脂の溶着を防ぐことができる。
【0050】
次に、表面被覆切削工具として、PCB加工用の小径ドリルおよびルーターを構成した実施例について、具体的に説明する。
(実施例1〜8)
本実施例の表面被覆切削工具は、PCB加工用小径ドリル(以下、単に小径ドリルと称す)を構成している。刃部の直径が0.2mm、刃長が3.5mmである。その構造を図1および図2に示す。図1に示すように、小径ドリル1は、加工機のチャックに把持されるシャンク部11と刃部12を有している。図2は図1のA部拡大図であり、刃部12の先端部は、図2に示すような形状に構成されている。
【0051】
そして、この小径ドリル1の基材は、JIS規格Z01に相当する切削工具用の超硬合金で構成しているが、実施例1〜8では、その基材の特性の変化による影響を見るため、その特性を種々変化させている。
【0052】
【表1】
Figure 2004090150
【0053】
実施例1〜8に示す小径ドリル1には、それぞれ表1に示す被覆膜13を、金属蒸発原料と、窒素ガスまたはメタンガスの一方または両方を用いた公知のアークイオンプレーティング法により形成した。
【0054】
表1および表2において、「C増加」の欄で、「傾斜」とあるのは、C量を基材側から表面側に向かって連続的に増加させたことを示し、「3段階」または「5段階」とあるのは、被覆膜13を3層または5層形成し、各被覆膜のC量を、基材側から表面側に向かって、順に増加させたことを示している。
【0055】
また、実施例1〜8と同一形状の小径ドリルを、比較例1〜7として用意した。ここで、比較例1は全く被覆膜を有しないノンコート小径ドリルであり、比較例2は、被覆膜の膜厚の影響確認用であり、比較例3〜7は、基材の超硬合金の特性(WC結晶粒径、Co含有量、飽和磁気量(4πσ)、抗磁力(Hc)、ビッカース硬度(Hv)、抗折力)の影響確認用である。
【0056】
次に、上記の小径ドリル1を用いて、被削材として厚さ1.6mmのエポキシ樹脂板FR−4(両面Cu貼り付き)を3枚重ねたものの上に、厚さ0.15mmのアルミニウム板のあて板を重ねて、穴開け加工による切削試験を行なった。このときの加工条件は、回転数60,000rpm、送り速度3m/minとした。その切削試験の結果を表1に示す。
【0057】
表1の結果から、比較例1のノンコート小径ドリルは50,000穴で折損、比較例2〜7の被覆膜の膜厚、基材の超硬合金の特性が不適切な小径ドリルは、70,000穴以下で寿命となったのに対し、実施例1〜8の小径ドリル1は、300,000穴以上の切削が可能であった。
(実施例9〜16)
本実施例の表面被覆切削工具は、PCB加工用ルータ(以下、単にルータと称す)を構成している。刃部の直径が0.8mm、刃長が6mmである。そして、このルータの基材は、JIS規格Z01に相当する切削工具用の超硬合金で構成しているが、実施例9〜16では、その基材の特性の変化による影響を見るため、その特性を種々変化させている。
【0058】
【表2】
Figure 2004090150
【0059】
実施例9〜16に示すルータには、それぞれ表2に示す被覆膜を、上記実施例と同様の方法により形成した。
【0060】
また、実施例9〜16と同一形状のルータを、比較例8〜14として用意した。ここで、比較例8は全く被覆膜を有しないノンコートルータであり、比較例9は、被覆膜の膜厚の影響確認用であり、比較例10〜14は、基材の超硬合金の特性(WC結晶粒径、Co含有量、飽和磁気量(4πσ)、抗磁力(Hc)、ビッカース硬度(Hv)、抗折力)の影響確認用である。
【0061】
次に、上記のルータを用いて、被削材として厚さ1.6mmのエポキシ樹脂板FR−4(両面Cu貼り付き)を3枚重ねたもので、切削加工による切削試験をおこなった。このときの切削条件は、回転数50,000rpm、送り速度1.5m/minとした。その切削試験の結果を表2に示す。
【0062】
表2の結果から、比較例8のノンコートルータは2mで折損、比較例9〜14の被覆膜の膜厚、基材の超硬合金の特性が不適切なルータは、10m以下で寿命となったのに対して、実施例9〜16のルータは、30m以上の切削が可能であった。
【0063】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるのではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明に係る表面被覆切削工具によると、刃部の剛性を高め、かつ切り屑の排出性を良くすることで耐欠損性および耐久性を高めることができる。ひいては、その切削・耐摩耗寿命を著しく延長させるとともに加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に基づいた実施の形態における表面被覆切削工具(小径ドリル)の構造を示す正面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【符号の説明】
1 表面被覆切削工具(小径ドリル)、13 被覆膜。

Claims (9)

  1. 基材と、前記基材上に形成された被覆膜と、を備え、
    前記被覆膜は(TiaSib)(CxNy)層からなり、ここでa+b=1、0.01≦b≦0.6、x+y=1、0≦x≦0.6である表面被覆切削工具。
  2. 前記被覆膜は、前記基材側に設けられる第1被覆膜と、前記第1被覆膜に対し、前記基材とは反対側に設けられ、前記第1被覆膜よりもC量が多い第2被覆膜とを有する、請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記被覆膜は、基材側から表面側へ向けて連続的にC量が増加する、請求項1記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記基材は、炭化タングステンとコバルトとを含有し、コバルト含有量が1質量%以上12質量%以下の超硬合金からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記基材は、コバルト含有量が1質量%以上5質量%以下の超硬合金からなる、請求項4記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記基材は、TaまたはCrの少なくともいずれか一方を含み、その含有量は合算で0.3質量%以上3.0質量%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記被覆膜と前記基材との間に、厚みが0.2μm以下の金属Cr層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記被覆膜の厚みが、0.05μm以上3μm以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  9. 前記表面被覆切削工具は、プリント回路基板加工用であって、前記基材は炭化タングステンを含有し、その炭化タングステンの結晶粒径が、0.1μm以上2μm以下であり、前記基材の焼結後の飽和磁気量が10Tm/kg以上220Tm/kg以下であり、前記基材の抗磁力が25kA/m以上40kA/m以下であり、前記基材のビッカース硬度が15GPa以上25GPa以下であり、前記基材の抗折力が1.5GPa以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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