JP4133161B2 - 乳房用画像読取方法および乳房用画像撮像装置 - Google Patents
乳房用画像読取方法および乳房用画像撮像装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体検出器もしくは輝尽性蛍光体パネルを使用して、乳房の放射線画像を撮影する乳房用画像撮像方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、医療用X線撮影等において、被験者の受ける被爆線量の減少、診断性能の向上等のために、X線等の放射線に感応する例えばa−Se(アモルファスセレン)から成るセレン板等の光導電体を固体検出器として用い、この固体検出器に放射線画像情報を担持するX線等の記録用の放射線(記録光)を照射して、放射線画像情報を担持する潜像電荷を固体検出器の蓄電部に蓄積させ、その後レーザービーム等の読取用の電磁波(読取光)で固体検出器を走査することにより固体検出器内に生じる電流を固体検出器両側の平板電極あるいはストライプ電極を介して検出することにより、潜像電荷が担持する静電潜像、すなわち放射線画像情報を読み取るシステムが知られている(特許文献1、特許文献2等)。
【0003】
また、医療用X線撮影等においては、放射線を照射するとこの放射線エネルギの一部が蓄積され、その後可視光等の励起光を照射すると蓄積されたエネルギに応じて輝尽発光を示す輝尽性蛍光体を利用して、人体等の被写体の放射線画像情報を一旦、輝尽性蛍光体パネルに撮影記録し、このパネルをレーザー光等の励起光で走査して輝尽発光光を生ぜしめ、得られた輝尽発光光をセンサで光電的に読み取って放射線画像情報を担持する画像信号を得るシステムも知られている(特許文献3、特許文献4等)。
【0004】
また、現在、上記の固体検出器もしくは輝尽性蛍光体パネル等の撮像デバイスを用いた、乳房の放射線画像を撮像する乳房用画像撮像装置が考えられている。
【0005】
この乳房用画像撮像装置は、筐体の内部に固体検出器と読取光光源もしくは輝尽性蛍光体パネルと励起光光源およびセンサが配置された撮影台上に被検者の乳房を固定し、乳房の上部から放射線を照射して、乳房の放射線画像を得るものであるが、この装置においては、できるだけ被検者の胸壁近傍までの画像情報を取得可能であることが要求されている。
【0006】
そのため、この乳房用画像撮像装置では、筐体内の撮影台部分において固体検出器もしくは輝尽性蛍光体パネル等の撮像デバイスを胸壁側に可能な限り近接させて配置し、この撮影台部分を被検者の胸壁に押圧するようにして撮像が行われる。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−105297号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2000−284056号公報
【0009】
【特許文献3】
特開昭55−012429号公報
【0010】
【特許文献4】
特開昭56−011395号公報
【0011】
【特許文献5】
特開2001−245100号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の撮像デバイスから放射線画像情報の読取りを行う際は、読取光光源もしくは励起光光源およびセンサ等の走査部の走査速度を均一にしないと、画素密度が一定にならず正確に画像を読み取ることができないため、走査部の加減速区間では正確に画像情報を取得することができない。しかしながら、上記のような乳房用画像撮像装置では、筐体の被験者側の内壁と撮像デバイスの被験者側の端部との間に殆ど間隔が無いので、主走査方向に線状光を照射する線状光源を用いて、この線状光源により胸壁と直交する方向に副走査を行う場合では、撮像デバイスの胸壁側の端部において走査部の走査速度を均一にすることができないため、胸壁近傍付近では正確に画像情報を取得することができない。
【0013】
また、撮像デバイスに照射する照射光(読取光もしくは励起光)の強度も均一にする必要があるため、通常、上記の様な線状光源により走査を行う場合は、光源端部では照射光の強度が均一とならないために撮像デバイスの主走査方向の幅よりも若干長めの線状光源を用いる。しかしながら、上記のような乳房用画像撮像装置では、胸壁と撮像デバイスとの間に間隔がないため、線状光源により胸壁と平行する方向に副走査を行う場合では、撮像デバイスの胸壁側の端部において線状光源の長さを端部よりも長くすることができず照射光量を均一とすることができないため、胸壁近傍付近では正確に画像情報を取得することができない。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みて、固体検出器もしくは輝尽性蛍光体パネルを用いた乳房用画像撮像方法および装置において、より胸壁近傍の画像を正確に取得可能な乳房用画像撮像方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の乳房用画像撮像方法は、画像情報を担持する放射線が照射されることにより画像情報を静電潜像として記録し、読取光で走査することにより静電潜像に応じた電流を発生する、筐体内に収容された固体検出器を用いて、乳房を透過した放射線を固体検出器に照射して撮像を行い、固体検出器を読取光で機械的に走査することにより電流を発生させて読取りを行う乳房用画像撮像方法において、固体検出器を筐体内において胸壁に近接する方向に移動させた位置で撮像を行い、固体検出器を筐体内において胸壁から離間する方向に移動させた位置で読取りを行うことを特徴とするものである。
【0016】
上記第1の乳房用画像撮像方法において「固体検出器」とは、光や放射線等の記録光が照射されることにより、この記録光が担持する画像情報を静電潜像として記録し、読取光で走査されることにより、静電潜像に応じた電流を発生するものであればどのようなものでもよく、例えば上述の特許文献1に記載された静電記録体などを用いることができる。
【0017】
また、本発明による第2の乳房用画像撮像方法は、画像情報を担持する放射線が照射されることにより画像情報を蓄積し、励起光で走査することにより画像情報に応じた輝尽発光光を発生する、筐体内に収容された輝尽性蛍光体パネルを用いて、乳房を透過した放射線を輝尽性蛍光体パネルに照射して撮像を行い、輝尽性蛍光体パネルを励起光で機械的に走査し、走査により発生した輝尽発光光を検出して読取りを行う乳房用画像撮像方法において、輝尽性蛍光体パネルを筐体内において胸壁に近接する方向に移動させた位置で撮像を行い、輝尽性蛍光体パネルを筐体内において胸壁から離間する方向に移動させた位置で読取りを行うことを特徴とするものである。
【0018】
上記第1および第2の乳房用画像撮像方法において「機械的に走査」とは、固体検出器もしくは輝尽性蛍光体パネル等の撮像デバイスの一部分に照射光(読取光もしくは励起光)を照射する光源を、撮像デバイスに対して相対的に移動させることによって照射光を走査することを意味する。
【0019】
本発明による第1の乳房用画像撮像装置は、上記第1の乳房用画像撮像方法を実施するための装置であり、画像情報を担持する放射線が照射されることにより画像情報を静電潜像として記録し、読取光で走査することにより静電潜像に応じた電流を発生する固体検出器と、読取光で固体検出器を機械的に走査する読取光走査手段と、固体検出器および読取光走査手段を収容する筐体とを備えた乳房用画像撮像装置において、固体検出器を筐体内において胸壁に近接させる方向および胸壁から離間させる方向に移動させる移動手段を備え、固体検出器を胸壁に近接する方向に移動させた位置で乳房を透過した放射線を固体検出器に照射させて撮像を行い、固体検出器を胸壁から離間する方向に移動させた位置で読取光走査手段により固体検出器を読取光で機械的に走査し電流を発生させて読取りを行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明による第2の乳房用画像撮像装置は、上記第2の乳房用画像撮像方法を実施するための装置であり、画像情報を担持する放射線が照射されることにより画像情報を蓄積し、励起光で走査することにより画像情報に応じた輝尽発光光を発生する輝尽性蛍光体パネルと、励起光で輝尽性蛍光体パネルを機械的に走査する励起光走査手段と、輝尽発光光を検出するセンサと、輝尽性蛍光体パネル、励起光走査手段およびセンサを収容する筐体とを備えた乳房撮影用画像撮像装置において、輝尽性蛍光体パネルを筐体内において胸壁に近接させる方向および胸壁から離間させる方向に移動させる移動手段を備え、輝尽性蛍光体パネルを胸壁に近接する方向に移動させた位置で乳房を透過した放射線を前記輝尽性蛍光体パネルに照射させて撮像を行い、輝尽性蛍光体パネルを胸壁から離間する方向に移動させた位置で励起光走査手段により輝尽性蛍光体パネルを励起光で機械的に走査してこの走査により発生した輝尽発光光をセンサで検出して読取りを行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
【発明の効果】
本発明による乳房用画像撮像方法および装置は、筐体の撮影台内部において、撮影時には撮像デバイス(固体検出器もしくは輝尽性蛍光体パネル)を胸壁に近接する方向に移動させて胸壁近傍までの領域の撮像を行い、読取時には撮像デバイスを胸壁から離間する方向に移動させて、筐体の被検者側の内壁と撮像デバイスの被検者側の端部との間に間隔を生じさせることにより、例えば、主走査方向に線状光を照射する線状光源を用いて、この線状光源により胸壁と直交する方向に副走査を行う場合では、読取光光源もしくは励起光光源およびセンサ等の走査部の加減速をこの間隔で行わせて、撮像デバイスの全域において走査部の走査速度を一定にすることが可能となり、また、線状光源により胸壁と直交する方向に副走査を行う場合では、撮像デバイスの胸壁側の端部において線状光源の長さを端部よりも上記間隔分長くして、撮像デバイスの胸壁側の端部においても走査光の照射強度を一定にさせることが可能となり、撮像デバイスの全域から正確に画像情報を取得できるため、より胸壁近傍の正確な画像を取得することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明による乳房用画像撮像装置の第1の実施の形態を示す概略図、図2はこの装置の撮影台内部の概略図、図3はこの装置に用いる固体検出器の概略図である。
【0023】
この乳房用画像撮像装置1は、内部に放射線源2を収納する放射線源収納部3と、筐体4の内部に固体検出器10等を収容してなる撮影台とが対向するようアーム5によって連結され、このアーム5が基台6に取り付けられて構成されているものである。さらに、アーム5には、筐体4上に上から乳房8を押さえつけて保持する保持板7が設けられている。
【0024】
筐体4の内部には、撮像デバイスである固体検出器10と、固体検出器10に記録された放射線画像情報の読取時に使用される読取用露光光源部20と、読取用露光光源部20を副走査方向に移動させる読取用露光光源部移動手段75と、読取用露光光源部20による固体検出器10への走査露光時に固体検出器10から流れ出す電流を検出して画像信号を得る電流検出手段30と、固体検出器10に所定の電圧を印加する高電圧電源部45と、撮影開始前に固体検出器10に前露光光を照射する前露光光源部60と、固体検出器10を撮影台(筐体)4内部において被検者の胸壁80に近接させる方向および胸壁80から離間させる方向(上述の副走査方向)に移動させる固体検出器移動手段70と、読取用露光光源部20、電流検出手段30、高電圧電源部45、前露光光源部60、移動手段70および75を制御する制御手段80とが配置されている。
【0025】
固体検出器10は、放射線画像情報を静電潜像として記録し、読取光で走査されることにより、前記静電潜像に応じた電流を発生するものであり、具体的には図3に示すように、ガラス基板16上に形成されており、乳房8を透過した放射線(以下記録光という)に対して透過性を有する第一導電層11、記録光の照射を受けることにより電荷を発生して導電性を呈する記録用光導電層12、第一導電層11に帯電される潜像極性電荷に対しては略絶縁体として作用し、かつ、該潜像極性電荷と逆極性の輸送極性電荷に対しては略導電体として作用する電荷輸送層13、読取光の照射を受けることにより電荷を発生して導電性を呈する読取用光導電層14、読取光に対して透過性を有する第二導電層15をこの順に積層してなるものである。記録用光導電層12と電荷輸送層13との界面に蓄電部17が形成される。
【0026】
第一導電層11および第二導電層15はそれぞれ電極をなすものであり、第一導電層11の電極は2次元状に平坦な平板電極とされ、第二導電層15の電極は図中斜線で示すように多数のエレメント(線状電極)15aが画素ピッチでストライプ状に配されたストライプ電極とされている(例えば特許公報1記載の静電記録体を参照)。エレメント15aの配列方向が主走査方向、エレメント15aの長手方向が副走査方向に対応する。
【0027】
読取用露光光源部20としては、LEDチップが一列に複数並べられて構成されたライン光源と、該光源から出力された光を固体検出器10上で線状に照射させる光学系とからなるものを用いる。なお、光源部20を固体検出器10と必要な距離を保ったままリニアモータからなる移動手段75により、固体検出器10のストライプ電極15a長手方向、即ち副走査方向に走査することにより固体検出器10の全面の露光を行う。なお、読取用露光光源部20および移動手段75により読取光走査手段が構成される。
【0028】
図4は撮影台の筐体4内に設けられた電流検出手段30および高電圧電源部45の詳細、並びにこれらと固体検出器10との接続態様を示したブロック図である。
【0029】
高電圧電源部45は、高電圧電源40とバイアス切換手段42とが一体化された回路であり、高電圧電源40は、一旦、固体検出器10へのバイアス印加/短絡など切換えのためバイアス切換手段42を介して固体検出器10に接続されている。なお、この回路は、切換え時に流れる電流の尖頭値を制限して装置の電流が集中する箇所の破壊を防ぐために、充放電過大電流を防止するように設計されている。
【0030】
電流検出手段30は、メモリ31と、A/D変換部32と、マルチプレクサ33と、チャージアンプIC34とから構成される。なお、本実施の形態では全てのエレメント15aを1つのチャージアンプIC34に接続するのではなく、全体として数個〜数10個のチャージアンプIC34を設け、順次隣接する数本のエレメント15aごとに各チャージアンプIC34に接続するようにしている。
【0031】
チャージアンプIC34は、固体検出器10の各エレメント15aごとに接続された多数のチャージアンプ34aおよびサンプルホールド(S/H)34b、各サンプルホールド34bからの信号をマルチプレクスするマルチプレクサ34cを備えている。固体検出器10から流れ出す電流は各チャージアンプ34aにより電圧に変換され、該電圧がサンプルホールド34bにより所定のタイミングでサンプルホールドされ、サンプルホールドされた各エレメント15aに対応する電圧がエレメント15aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ34cから順次出力される(主走査の一部に相当する)。マルチプレクサ34cから順次出力された信号はマルチプレクサ33に入力され、さらに各エレメント15aに対応する電圧がエレメント15aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ33から順次出力され主走査が完了する。マルチプレクサ33から順次出力された信号はA/D変換部32によりデジタル信号に変換され、デジタル信号がメモリ31に格納される。
【0032】
前露光光源部60としては、短時間で発光/消光し、残光の非常に小さい光源が必要であり、本実施の形態においては外部電極型希ガス蛍光ランプを利用する。詳細には前露光光源部60は、図2に示すように、図中紙面奥方向に延びる複数の外部電極型希ガス蛍光ランプ61と、該蛍光ランプ61と固体検出器10との間に挿入された波長選択フィルタ62と、蛍光ランプ61の後方に配され、蛍光ランプ61から出力された光を効率よく固体検出器10側へ反射するための反射板63とを備えてなる。なお、前露光光は固体検出器10の第二電極層15全体に照射すればよく特に集光手段は必要ないが、照度分布は小さい方がよい。なお、光源としては蛍光ランプの代わりに、例えばLEDチップを面的に並べたものを利用するもことできる。
【0033】
固体検出器10から静電潜像を読み取る際、基本的には蓄積されている潜像電荷を全て読み出すことができるが、場合によっては潜像電荷を完全に読み出すことができず固体検出器10に残留電荷として読み残すことがある。また、固体検出器10に静電潜像を記録するとき、記録光の照射の前に固体検出器10に高圧を印加するが、この印加の際に暗電流が発生し、それによる電荷(暗電流電荷)も固体検出器10に蓄積される。さらに、これら以外の原因によっても固体検出器10に種々な電荷が記録光の照射の前に蓄積されることが知られている。記録光の照射の前に蓄積されるこれら残留電荷,暗電流電荷などの不要電荷は、記録光を照射することにより蓄積される画像情報を担持する電荷に加算されることになるから、結局固体検出器10から静電潜像を読み取ったとき、出力される信号には画像情報を担持する電荷に基づく信号以外に不要電荷による信号成分が含まれることになり、残像現象やS/N劣化などの問題を生じる。
【0034】
前露光は、この記録光を固体検出器に照射する前に固体検出器に蓄積されている不要電荷を消去し、残像現象やS/N劣化などの問題を解消するためのものである。
【0035】
移動手段70は、図示しないリニアモータにより構成され、固体検出器10を撮影位置と読取位置との間で平行往復移動させる。ここで、撮影位置とは筐体4内において固体検出器10を被検者の胸壁80側の側壁内面4aに近接する方向に移動させた位置(図5(A)中で固体検出器が存在する位置)を意味し、読取位置とは筐体4内において固体検出器10を被検者の胸壁80側の側壁内面4aから離間する方向に移動させた位置(図5(B)中で固体検出器が存在する位置)を意味する。
【0036】
次いで、このように構成される乳房用画像撮像装置1の動作について説明する。
【0037】
図5は撮影時および読取時の筐体4内部における固体検出器の位置を示す図である。
【0038】
図5(A)に示すように、撮影時には、固体検出器10は予め移動手段70により撮影位置に移動されるとともに、前露光光が照射されて、固体検出器10に蓄積されている不要電荷が消去される。なお、前露光処理は、固体検出器10への電圧印加前に行ってもよいし、該電圧印加後に行ってもよい。さらには、電圧印加前に前露光点灯し、電圧印加後に消灯する態様であってもよい。
【0039】
次に、バイアス切換手段42により電源40の負極を第1の導電体層11に接続して第一導電層11と各エレメント15aとの間に直流電圧を印加し両導電層11、15を帯電させる。これにより固体検出器10内の第一導電層11とエレメント15aとの間に、エレメント15aをU字の凹部とするU字状の電界が形成される。
【0040】
その後、撮影者がタイミングを見計らって図示しない照射ボタンを押すと、放射線源2より放射線が乳房8に照射される。乳房8を透過した放射線、すなわち乳房8の放射線画像情報を担持する記録光を固体検出器10に照射すると、固体検出器10の記録用光導電層12内で正負の電荷対が発生し、その内の負電荷が上述の電界分布に沿ってエレメント15aに集中せしめられ、記録用光導電層12と電荷輸送層13との界面に形成された蓄電部17に負電荷が蓄積される。この蓄積された負電荷すなわち潜像極性電荷の量は被写体を透過した放射線量に略比例するので、この潜像極性電荷が静電潜像を担持することとなる。このようにして静電潜像が固体検出器10に記録される。一方、記録用光導電層12内で発生する正電荷は第一導電層11に引き寄せられて、高電圧電源40から注入された負電荷と電荷再結合し消滅する。
【0041】
放射線を照射し画像記録を行った後、固体検出器10から静電潜像を読み取る際には、図5(B)に示すように、固体検出器10は移動手段70により読取位置に移動されるとともに、固体検出器10の両導電層11、15間はバイアス切換手段42により短絡される。
【0042】
読取用露光光源部20を作動させて読取光を出力させるとともに、この光源部20をエレメント15aの長手方向すなわち副走査方向に移動手段75により移動させ、固体検出器10の全面を走査する。
【0043】
このとき、固体検出器10は筐体内において読取位置、すなわち胸壁80から離間する方向に移動されているため、筐体の被検者側の側壁内面4aと固体検出器10の被検者側の端部10aとの間に光源部20のオーバーラン領域Aを確保することができるため、この領域において光源部20の加減速を行わせることにより、固体検出器10の全域において光源部20の走査速度を一定にできるため、固体検出器10の全域から正確に画像情報を取得することができる。
【0044】
上記の走査を行うと、読取用光導電層14内に正負の電荷対が発生し、その内の正電荷が蓄電部17に蓄積された負電荷(潜像極性電荷)に引きつけられるように電荷輸送層13内を急速に移動し、蓄電部19で潜像極性電荷と電荷再結合し消滅する。一方、読取用光導電層14に生じた負電荷は第二導電層15に注入される正電荷と電荷再結合し消滅する。このようにして、固体検出器10に蓄積されていた負電荷が電荷再結合により消滅し、この電荷再結合の際の電荷の移動による電流が固体検出器10内に生じる。
【0045】
各エレメント15aごとに接続された電流検出用のチャージアンプ34aにより、この電流を各エレメント15aごとに並列的(同時)に検出する。チャージアンプ34aにより検出された信号は、サンプルホールド34bによりサンプルホールドされ、サンプルホールドされた各エレメント15aに対応する電圧がエレメント15aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ34cから順次出力され、マルチプレクサ33によりさらに順次出力され、A/D変換部32でA/D変換され、デジタルの画像信号としてメモリ31に格納される。
【0046】
読取光の走査露光に伴い固体検出器10内を流れる電流は潜像電荷すなわち静電潜像に応じたものであり、この電流を検出して得た画像信号は静電潜像を表すので静電潜像を読取ることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態においては固体検出器として、特許文献1記載の静電記録体を使用したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、読取用の電磁波で走査されることにより、画像情報を坦持する静電電荷に応じた電流を発生するものであれば、どのような固体検出器でも適用することができる。
【0048】
次に、本発明による乳房用画像撮像装置の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は上記第1の実施の形態と比較して、撮像デバイスの種類を変更し、それに伴い一部の構成を変更したものである。図6は本実施の形態の乳房用画像撮像装置の撮影台内部の概略図、図7はこの装置に用いる輝尽性蛍光体パネルの概略図である。
【0049】
本実施の形態の装置の撮影台を構成する筐体4´の内部には、撮像デバイスである輝尽性蛍光体パネル110と、輝尽性蛍光体パネル110に記録された放射線画像情報の読取時に使用される励起光光源部120と、励起光光源部120による輝尽性蛍光体パネル110への励起光走査時に輝尽性蛍光体パネル110から発生する輝尽発光光を検出するラインセンサ121と、ラインセンサ121から出力される電流を検出して画像信号を得る電流検出手段130と、輝尽性蛍光体パネル110を筐体4´内部において被検者の胸壁に近接させる方向および胸壁から離間させる方向(後述する副走査方向)に移動させるパネル移動手段170と、励起光光源部120およびラインセンサ121を副走査方向に移動させる読取部移動手段175と、励起光光源部120、ラインセンサ121、電流検出手段130、移動手段170および175を制御する制御手段180とが配置されている。
【0050】
蓄積性蛍光体パネル110は、励起光の照射を受けることにより蓄積された放射線エネルギに応じた量の輝尽発光光を生ぜしめる蓄積性蛍光体層111をベース(支持体)112上に積層して成るものである。
【0051】
蓄積性蛍光体層111は、例えば600nm以上の波長の赤色の励起光で励起され、且つ500nm以下(好ましくは400nm〜450nm)の青色の輝尽発光光を生ぜしめるものであって、周知の蓄積性蛍光体シートを利用することができる。なお、図示していないが、蓄積性蛍光体層111以外に、例えば、保護層や増感層などが設けられる。
【0052】
励起光光源部120としては、例えば600nm以上の波長の赤色に発光するLEDチップが一列に複数並べられて構成されたライン光源と、該光源から出力された光を蓄積性蛍光体パネル110上で線状に照射させる光学系とからなるものを用いる。
【0053】
また、ラインセンサ121は、上記励起光光源部120の長手方向と略平行に配された1次元センサであって、例えば上記特許文献5に記載されているようなラインセンサを用いる。なお、このラインセンサ121には、図示しない励起光カットフィルタが設けられており、励起光の照射により発生した輝尽発光光のみを検出するように構成されている。
【0054】
励起光光源部120およびラインセンサ121を蓄積性蛍光体パネル110と必要な距離を保ったままリニアモータからなる移動手段175により、蓄積性蛍光体パネル110上を光源部120の長手方向と直交する方向(副走査方向)に走査することにより蓄積性蛍光体パネル110の全面の露光を行う。なお、励起光光源部120およびリニアモータにより励起光走査手段が構成される。
【0055】
移動手段170は、図示しないリニアモータにより構成され、輝尽性蛍光体パネル110を被検者の胸壁80に近接した撮影位置と胸壁80から離間した読取位置との間で移動させる。
【0056】
輝尽性蛍光体パネル110から効率よく輝尽発光光を検出するためには、輝尽性蛍光体パネル110の放射線の入射面に励起光を照射し、同面側に発生する輝尽発光光を検出する態様が好ましい。この様な態様にするためには、読取時において、筐体4´の上壁(放射線入射側の壁)内面4b´と輝尽性蛍光体パネル110との間に励起光光源部120およびラインセンサ121を走査するスペースを確保する必要がある。しかしながら、放射線画像の鮮鋭度を高くするためには、記録時において、輝尽性蛍光体パネル110を筐体4´内部のなるべく上壁内面4b´に近接させて、乳房8からの距離を短くすることが好ましい。
【0057】
そのため、本実施の形態において、撮影位置とは筐体4´内において輝尽性蛍光体パネル110を被検者の胸壁80側の側壁内面4a´に近接した方向、および上壁内面4b´に近接した方向に移動させた位置(図8(A)中で輝尽性蛍光体パネル110が存在する位置)を意味し、読取位置とは筐体4´内において輝尽性蛍光体パネル110を被検者の胸壁80側の側壁内面4a´から離間する方向、および上壁内面4b´から離間した方向に移動させた位置(図8(B)中で輝尽性蛍光体パネル110が存在する位置)を意味する。また、そのため、パネル移動手段170は、輝尽性蛍光体パネル110を筐体4´内において副走査方向および上下方向(図8参照)に移動可能に構成されている。
【0058】
次いで、このように構成される乳房用画像撮像装置1の動作について説明する。
【0059】
図8は撮影時および読取時の筐体内における輝尽性蛍光体パネルの位置を示す図である。
【0060】
図8(A)に示すように、撮影時には、輝尽性蛍光体パネル110は予め移動手段170により撮影位置に移動される。その後、撮影者がタイミングを見計らって図示しない照射ボタンを押すと、放射線源2より放射線が乳房8に照射される。乳房8を透過した放射線、すなわち乳房8の放射線画像情報を担持する放射線は輝尽性蛍光体パネル110に蓄積される。
【0061】
放射線を照射し画像記録を行った後、輝尽性蛍光体パネル110から画像情報を読み取る際には、図8(B)に示すように、輝尽性蛍光体パネル110は移動手段170により読取位置に移動される。
【0062】
励起光光源部120を作動させて励起光を出力させるとともに、励起光光源部120およびラインセンサ121を輝尽性蛍光体パネル110の副走査方向に移動手段175により移動させ、輝尽性蛍光体パネル110の全面を走査する。
【0063】
このとき、輝尽性蛍光体パネル110は筐体内において読取位置、すなわち胸壁80側の側壁内面4a´から離間する方向、および上壁内面4b´から離間した方向に移動されているため、励起光光源部120およびラインセンサ121を輝尽性蛍光体パネル110の上面、すなわち放射線の入射面から走査させることが可能であり、また、筐体の被検者側の側壁内面4a´と輝尽性蛍光体パネル110の被検者側の端部110a´との間に励起光光源部120およびラインセンサ121のオーバーラン領域Aを確保することができるため、この領域において励起光光源部120およびラインセンサ121の加減速を行わせることにより、輝尽性蛍光体パネル110の全域において励起光光源部120およびラインセンサ121の走査速度を一定にできるため、輝尽性蛍光体パネル110の全域から正確に画像情報を取得することができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記のような放射線源と撮影台とが一体的に構成された乳房用画像撮像装置だけでなく、乳房用の撮像に用いるカセッテに応用してもよい。
【0065】
また、撮像デバイスの移動の形態は、上記第1および第2の実施の形態で説明した態様に限定されるものではなく、読取時において筐体内の被検者側の側壁内面と撮像デバイスの被検者側の端部との間に間隔を設けられるものであれば、どのような態様としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の乳房用画像撮像装置の概略図
【図2】上記乳房用画像撮像装置の撮影台内部の概略図
【図3】上記乳房用画像撮像装置に用いる固体検出器の概略図
【図4】上記乳房用画像撮像装置の電流検出手段および高電圧電源部の詳細およびこれらと固体検出器の接続態様を示したブロック図
【図5】上記乳房用画像撮像装置の撮影時および読取時の撮影台(筐体)内部における固体検出器の位置を示す図
【図6】本発明の第2の実施の形態の乳房用画像撮像装置の撮影台内部の概略図
【図7】上記乳房用画像撮像装置に用いる蓄積性蛍光体パネルの概略図
【図8】上記乳房用画像撮像装置の撮影時および読取時の撮影台(筐体)内部における蓄積性蛍光体パネルの位置を示す図
【符号の説明】
1 胸部撮影装置
2 放射線源
3 放射線源収納部
4 撮影台
5 アーム
6 基台
7 保持板
8 乳房
10 固体検出器
20 読取用露光光源部
30 電流検出手段
40 高電圧電源
45 高電圧電源部
60 前露光光源部
70 移動手段
80 制御手段
110 蓄積性蛍光体パネル
120 励起光光源
121 ラインセンサ
130 電流検出手段
170 移動手段
180 制御手段
Claims (4)
- 画像情報を担持する放射線が照射されることにより前記画像情報を静電潜像として記録し、自走式の読取光光源から出射された読取光で走査することにより前記静電潜像に応じた電流を発生する、筐体内に収容された固体検出器を用いて、
乳房の画像情報が記録された前記固体検出器から前記画像情報の読取りを行う乳房用画像読取方法において、
前記固体検出器を前記筐体内において胸壁から前記固体検出器に対する前記読取光の走査速度または照射強度を均一にさせることが可能な距離分離間する方向に移動させた位置で前記読取りを行うことを特徴とする乳房用画像読取方法。 - 画像情報を担持する放射線が照射されることにより前記画像情報を蓄積し、自走式の励起光光源から出射された励起光で走査することにより前記画像情報に応じた輝尽発光光を発生する、筐体内に収容された輝尽性蛍光体パネルを用いて、
乳房の画像情報が記録された前記輝尽性蛍光体パネルから前記画像情報の読取りを行う乳房用画像読取方法において、
前記輝尽性蛍光体パネルを前記筐体内において胸壁から前記輝尽性蛍光体パネルに対する前記励起光の走査速度または照射強度を均一にさせることが可能な距離分離間する方向に移動させた位置で前記読取りを行うことを特徴とする乳房用画像読取方法。 - 画像情報を担持する放射線が照射されることにより前記画像情報を静電潜像として記録し、読取光で走査することにより前記静電潜像に応じた電流を発生する固体検出器と、自走式の読取光光源から出射された前記読取光で前記固体検出器を機械的に走査する読取光走査手段と、前記固体検出器および前記読取光走査手段を収容する筐体とを備えた乳房用画像撮像装置において、
前記固体検出器を前記筐体内において胸壁に近接させる方向および前記胸壁から離間させる方向に移動させる移動手段を備え、
前記固体検出器を前記胸壁に近接する方向に移動させた位置で乳房を透過した放射線を前記固体検出器に照射させて撮像を行い、該固体検出器を前記胸壁から前記固体検出器に対する前記読取光の走査速度または照射強度を均一にさせることが可能な距離分離間する方向に移動させた位置で前記読取光走査手段により前記固体検出器を読取光で機械的に走査し電流を発生させて読取りを行うように構成されていることを特徴とする乳房用画像撮像装置。 - 画像情報を担持する放射線が照射されることにより前記画像情報を蓄積し、励起光で走査することにより前記画像情報に応じた輝尽発光光を発生する輝尽性蛍光体パネルと、自走式の励起光光源から出射された前記励起光で前記輝尽性蛍光体パネルを機械的に走査する励起光走査手段と、前記輝尽発光光を検出するセンサと、前記輝尽性蛍光体パネル、前記励起光走査手段および前記センサを収容する筐体とを備えた乳房用画像撮像装置において、
前記輝尽性蛍光体パネルを前記筐体内において胸壁に近接させる方向および前記胸壁から離間させる方向に移動させる移動手段を備え、
前記輝尽性蛍光体パネルを前記胸壁に近接する方向に移動させた位置で乳房を透過した放射線を前記輝尽性蛍光体パネルに照射させて撮像を行い、該輝尽性蛍光体パネルを前記胸壁から前記輝尽性蛍光体パネルに対する前記励起光の走査速度または照射強度を均一にさせることが可能な距離分離間する方向に移動させた位置で前記励起光走査手段により前記輝尽性蛍光体パネルを励起光で機械的に走査し該走査により発生した輝尽発光光を前記センサで検出して読取りを行うように構成されていることを特徴とする乳房用画像撮像装置。
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