JP4132327B2 - フェニレンビス(ホスホン酸)化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はジアルコキシカルボニルフェニレン(ビス)ホスホン酸テトラアルキル及びジカルボキシフェニレン(ビス)ホスホン酸、並びにその高収率で安価な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジアルコキシカルボニルフェニルホスホン酸ジアルキルとしては、式(VI)
【0003】
【化7】
【0004】
で表される2,3−ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸ジメチルのみが知られている。この製造方法は、1−(1,3−ブタジエニル)ホスホン酸とアセチレンジカルボン酸ジメチルとのディールス−アルダー(Diels-Alder) 反応にて、中間体として1,2−ジメトキシカルボニル−3−ジメトキシホスホノシクロヘキサ−1,4−ジエンを得た後、次にニトロベンゼンと活性炭担持パラジウム触媒を用いて、得られた中間体を目的とする2,3−ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸ジメチルへと芳香族化する方法である。反応としては、興味深いものがあるが、ディールス−アルダー反応の反応収率が低く、2,3−ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸ジメチルの工業的生産方法としては、好ましくはなく、採用できない。〔ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリイ (J. Org. Chem.)、35巻、1691頁、1970年〕。
【0005】
そして、ジアルコキシカルボニルフェニレン(ビス)ホスホン酸テトラアルキルとジカルボキシフェニレン(ビス)ホスホン酸に関する記載はない。
【0006】
また、アルブゾブ(Arbuzov) 反応により得られるモノアルコキシカルボニルフェニルホスホン酸ジアルキル類は知られている。その製造方法は、反応温度150〜160℃下、触媒として塩化ニッケルを用いて、亜リン酸トリアルキルとハロゲノフェニルカルボン酸アルキルとを反応させる方法である。〔ヘミシェ・ベリヒテ(Chem. Ber.)、103巻、2428頁、1970年。またアルブゾブ(Arbuzov) 反応の総説としては、ケミカル・レビューズ(Chem. Rev.)、81巻、415頁、1981年が挙げられる。〕。しかし、ジハロゲノフェニレンジカルボン酸ジアルキルを用いたアルブゾブ反応によるジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造は知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、樹脂用改質剤として有用なよりリン含有量の大きいジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)化合物に着目し、そのジアルコキシカルボニルフェニレン(ビス)ホスホン酸テトラアルキル及びジカルボキシフェニレン(ビス)ホスホン酸並びにそれらの製造方法について、鋭意努力検討した結果、高収率で、安価にジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキル類とジカルボキシフェニレン(ビス)ホスホン酸とを製造する方法を見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
また、本発明では触媒として担持触媒が収率及び回収再利用の点で優れていることを見出した。
【0009】
本発明の目的は、樹脂用改質剤として、有用なジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキル及びその高収率で安価な製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式(I)
【0011】
【化8】
【0012】
(式中、R1 R2 R3 及びR4 は、それぞれ水素原子及び炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。)で表されるジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)化合物とその製造方法に関する。
【0013】
一般式(IV)
【0014】
【化9】
【0015】
(式中、R8 及びR9 は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。R10は炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。)で表されるジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造方法は、周期律表第VIII族元素触媒の存在下、一般式(II)
【0016】
【化10】
【0017】
(式中、R5 及びR6 は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。Xはハロゲノ基を表す。)で表されるジハロゲノフェニレンジカルボン酸ジアルキルと、一般式(III)
【0018】
【化11】
【0019】
(式中、R7 は炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。)で表される亜リン酸トリアルキルとを、加熱して反応させることを特徴とする。
【0020】
次に 一般式(V)
【0021】
【化12】
【0022】
で表されるジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)の製造方法は、
一般式(IV)
【0023】
【化13】
【0024】
(式中、R8 及びR9 は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。R10は炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。)で表されるジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルを、酸又は塩基の存在下で加水分解することを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の、アルブゾブ反応によるジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造方法について、詳しく説明する。
【0026】
本発明の製造方法に用いることができるジハロゲノフェニレンジカルボン酸ジアルキルは、一般式(II)
【0027】
【化14】
【0028】
(式中、R5 及びR6 は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。Xはハロゲノ基を表す。)で表される。
【0029】
具体的には、4,5−ジクロロイソフタル酸ジメチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジメチル、4,5−ジヨードイソフタル酸ジメチル、4,5−ジクロロイソフタル酸ジエチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジエチル、4,5−ジヨードイソフタル酸ジエチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−n−プロピル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−i−プロピル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ブチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−s−ブチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−t−ブチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ペンチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−t−ペンチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ヘキシル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ヘキシル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ヘプチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−n−オクチル、4,5−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ノニル、2,5−ジクロロテレフタル酸ジメチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジメチル、2,5−ジヨードテレフタル酸ジメチル、2,5−ジクロロテレフタル酸ジエチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジエチル、2,5−ジヨードテレフタル酸ジエチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−n−プロピル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−i−プロピル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ブチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−s−ブチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−t−ブチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ペンチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−t−ペンチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ヘキシル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ヘキシル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ヘプチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−n−オクチル、2,5−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ノニル、3,5−ジブロモフタル酸ジメチル、3,5−ジブロモフタル酸ジエチル、3,5−ジブロモフタル酸ジ−n−プロピル、3,5−ジブロモフタル酸ジ−i−プロピル、3,5−ジブロモフタル酸ジ−n−ブチル、3,5−ジブロモフタル酸ジ−s−ブチル、3,5−ジブロモフタル酸ジ−t−ブチル、4,5−ジブロモフタル酸ジメチル、4,5−ジブロモフタル酸ジエチル、4,5−ジブロモフタル酸ジ−n−プロピル、4,5−ジブロモフタル酸ジ−i−プロピル、4,5−ジブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4,5−ジブロモフタル酸ジ−s−ブチル、4,5−ジブロモフタル酸ジ−t−ブチル、4,6−ジクロロイソフタル酸ジメチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジメチル、4,6−ジヨードイソフタル酸ジメチル、4,6−ジクロロイソフタル酸ジエチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジエチル、4,6−ジヨードイソフタル酸ジエチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−n−プロピル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−i−プロピル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ブチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−s−ブチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−t−ブチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ペンチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−t−ペンチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ヘキシル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ヘキシル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ヘプチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−n−オクチル、4,6−ジブロモイソフタル酸ジ−n−ノニル、2,6−ジクロロテレフタル酸ジメチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジメチル、2,6−ジヨードテレフタル酸ジメチル、2,6−ジクロロテレフタル酸ジエチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジエチル、2,6−ジヨードテレフタル酸ジエチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−n−プロピル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−i−プロピル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ブチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−s−ブチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−t−ブチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ペンチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−t−ペンチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ヘキシル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ヘキシル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ヘプチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−n−オクチル、2,6−ジブロモテレフタル酸ジ−n−ノニル、3,6−ジブロモフタル酸ジメチル、3,6−ジブロモフタル酸ジエチル、3,6−ジブロモフタル酸ジ−n−プロピル、3,6−ジブロモフタル酸ジ−i−プロピル、3,6−ジブロモフタル酸ジ−n−ブチル、3,6−ジブロモフタル酸ジ−s−ブチル、3,6−ジブロモフタル酸ジ−t−ブチルなどが挙げられる。これらの中で、反応性を比較すると序列は、ヨウ化物>臭化物>塩化物となり、ヨウ化物が最も反応速度が速い。一方、ハロゲン化物の製造コストから検討すると、フタル酸テトラアルキル類のハロゲン化方法には好ましい方法が少なく、概略コストの高い序列は、ヨウ化物>臭化物>塩化物となる。反応性とコストでは、相矛盾することとなるが、臭化物が好ましく、ジブロモフェニレンジカルボン酸ジアルキルが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法に用いることができる亜リン酸トリアルキルは一般式(III)
【0031】
【化15】
【0032】
(式中、R7 は炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。)具体的には、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリ−n−プロピル、亜リン酸トリ−i−プロピル、亜リン酸トリ−n−ブチル、亜リン酸トリ−s−ブチル、亜リン酸トリ−t−ブチル、亜リン酸トリ−n−ペンチル、亜リン酸トリ−i−ペンチル、亜リン酸トリ−t−ペンチル、亜リン酸トリ−n−ヘキシル、亜リン酸トリ−n−ヘプチル、亜リン酸トリ−n−オクチル、亜リン酸トリ−n−ノニル、亜リン酸トリ−n−デシルなどが挙げられる。
【0033】
これらの中で亜リン酸トリメチルの沸点は、温度120℃以下と他の亜リン酸化合物と比較すると低い。そのため、常圧下では反応に必要な温度120℃まで加熱することができないため、加圧下で行う必要がある。他の亜リン酸化合物では常圧下では温度120℃まで加熱することでき、ジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルを高収率で得ることができる。
【0034】
本発明の製造方法に用いることができる触媒は周期律表第VIII族元素触媒である。好ましいのは周期律表第VIII族元素のパラジウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒である。より好ましいのはパラジウム触媒及びニッケル触媒である。最も好ましいのはパラジウム触媒である。なお、銅触媒も用いることはできるが、周期律表第VIII族元素触媒より触媒性能は劣る。
【0035】
ジハロゲノフェニレンジカルボン酸ジアルキルの種類により、好ましい触媒を選定することができる。原料が4,5−ジハロゲノイソフタル酸ジアルキルの場合、目的のジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキル収率の序列は、パラジウム触媒≒ニッケル触媒>>コバルト触媒であった。パラジウム触媒とニッケル触媒が好ましいことを見出した。一方、原料が2,5−ジハロゲノテレフタル酸テトラアルキルの場合、目的のジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキル収率の序列は、パラジウム触媒>ニッケル触媒>コバルト触媒であった。パラジウム触媒が好ましいことを見出した。
【0036】
これら触媒の元素の形態としては、金属、金属酸化物、無機酸塩、有機酸塩、0価錯体、これら元素の合金及びこれらの担持触媒が好まし形態として挙げられる。
【0037】
パラジウム触媒の具体例として、金属としてはパラジウム黒が挙げられる。無機酸塩としては、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウムなどが挙げられる。有機酸塩としては、ギ酸パラジウム、酢酸パラジウムなどが挙げられる。0価錯体としては、テトラキストリフェニレンホスフィンパラジウム、パラジウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。担持触媒、特に担持金属触媒として、活性炭担持パラジウム触媒、アルミナ担持パラジウム触媒、ゼオライト担持パラジウム触媒、珪藻土担持パラジウム触媒、イオン交換樹脂担持パラジウム触媒などが挙げられる。
【0038】
ニッケル触媒の具体例として、金属としてはニッケル粉末、ラネー・ニッケル、ニッケル・アルミニウム合金が挙げられる。無機酸塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルが挙げられる。有機酸塩としては、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルなどが挙げられる。0価錯体としては、テトラキストリフェニレンホスフィンニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどが挙げられる。担持触媒、特に担持金属触媒として、活性炭担持ニッケル触媒、アルミナ担持ニッケル触媒、ゼオライト担持ニッケル触媒、珪藻土担持ニッケル触媒、イオン交換樹脂担持ニッケル触媒などが挙げられる。
【0039】
コバルト触媒の具体例として、無機酸塩としては、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルトなどが挙げられる。有機酸塩としては、ギ酸コバルト、酢酸コバルトなどが挙げられる。0価錯体としては、コバルトアセチルアセトナートなどが挙げられる。担持触媒、特に担持金属触媒として、アルミナ担持コバルト触媒、珪藻土担持コバルト触媒などが挙げられる。
【0040】
従来、アルブゾブ反応において、触媒として従来公知の方法で製造された担持触媒は使用されていなかった。本発明者らは、実用上重要な触媒の回収と再使用を目的として、担持触媒(特に担持金属触媒)を検討した結果、アルブゾブ反応において従来触媒として使用されていた無機塩と同様に高収率でジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルが得られる担持触媒を見出した。更に担持触媒の再使用については、触媒の再使用可能なことを確認した。
【0041】
担持触媒の担体としては、一般的な珪藻土、ベントナイト、ボーキサイト、アランダム、コランダム、軽石、レンガ、セライト、酸性白土、活性炭、マグネシア、アルミナ、シリカゲル、シリカ・アルミナ、チタニア、クロミナ、酸化亜鉛、トリア、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリコンカーバイト、ゼオライト、モレキュラーシーブ、イオン交換樹脂などが挙げられる。これらの中で、好ましいものは活性炭、アルミナ、シリカゲル、シリカ・アルミナ、ゼオライトなどが挙げられる。より好ましいものはアルミナ、シリカゲル、シリカ・アルミナ、ゼオライトなどが挙げられる。最も好ましいのはアルミナである。
【0042】
本発明の製造方法における触媒の使用量は、原料であるジハロゲノフェニレンジカルボン酸ジアルキル1モルに対して、触媒の周期律表第VIII族元素成分を原子換算として0.01〜30モル%が好ましく、0.2〜20モル%がより好ましい。最も好ましいのは0.5〜5モル%である。
【0043】
従来アルブゾブ反応では、原料であるハロゲン化物1モルに対して触媒の使用量は触媒の周期律表第VIII族元素又は銅元素成分を原子換算として10モル%を使用する例が多かった。一方、本発明では、担持金属触媒の採用により、触媒の使用量はハロゲン化物1モルに対して触媒の周期律表第VIII族元素成分を原子換算として1モル%以下とすることに成功した。特にアルミナ担持5%パラジウム触媒では、ハロゲン化物1モルに対して触媒のパラジウム成分を原子換算として0.5モル%でも定量的にジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルを得ることができた。そしてハロゲン化物1モルに対して触媒のパラジウム成分を原子換算として0.2モル%でも50%以上の原料の転化率が得られることを確認した。
【0044】
以上、本発明では、担持金属触媒、特にアルミナ担持パラジウム触媒を採用することにより、触媒の使用量の削減と再使用を可能にし、工業的に有利なジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造方法を提供することができた。
【0045】
更に本発明の製造方法において無溶媒でアルブゾブ反応を行うことができるが、原料である反応基質が固体の場合、反応の進行を穏和に制御したい場合、又は副生成物を抑制し、ジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの選択性を向上させる場合に溶媒の使用が有効であることを見出した。
【0046】
溶媒としては、アルブゾブ反応に直接関与しないものであれば、広く使用することができる。好ましいものは、芳香族炭化水素類及びエーテル類である。
【0047】
具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、t−ブチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンゼン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2−メトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサンなどが挙げられる。
【0048】
これらの中で、沸点が150℃以下の溶媒は、加圧下で使用でき、150℃以上のものは常圧下で使用することができる。当然、沸点が150℃以上のものを加圧下で使用することも可能である。これらの中で、より好ましい常圧下で使用することができる溶媒としては、クメン、t−ブチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0049】
これら溶媒の使用量は、原料であるジアルコキシカルボニルフェニレンハライド1重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
【0050】
本発明の製造方法においては加熱によりアルブゾブ反応させる。その反応温度は、温度120℃以下では反応が極めて遅いために、120℃以上が必要である。すなわち、反応温度は、温度120〜250℃が好ましく、温度140〜220℃がより好ましく、温度155〜220℃が最も好ましい。
【0051】
本発明の製造方法におけるアルブゾブ反応時間は、反応液をガスクロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーで分析することにより、反応の進行状況を追跡することができる。よって、ガスクロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーの分析により、目的とする反応終点を見出すことができる。
【0052】
反応時間は、通常1〜20時間であり、工業的には1〜10時間が好ましい。
【0053】
本発明の製造方法における反応は、常圧下又は加圧下で行うことができる。また回分式又は連続式で行うことができる。
【0054】
反応終了後の処理方法は、溶媒、過剰又は未反応のジハロゲノフェニレンジカルボン酸ジアルキル、及び過剰又は未反応の亜リン酸トリアルキルは蒸留にて回収後、常法に従って、反応生成物であるジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルは蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどによって精製・単離することができる。
【0055】
次に、ジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの加水分解により得られる一般式(V)
【0056】
【化16】
【0057】
で表されるジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)の製造方法について、詳しく説明する。
【0058】
原料としては、既に述べたアルブゾブ反応で得た一般式(IV)
【0059】
【化17】
【0060】
(式中、R8 及びR9 は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。R10は炭素数1〜10のアルキル基からなる群から任意に選ばれる。)で表されるジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキル類の全てを用いることができる。
【0061】
酸又は塩基の存在下にジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルを加水分解反応させる。
【0062】
酸としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸類、及びメタンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸類が挙げられる。特に好ましいのは、塩酸と臭化水素酸である。
【0063】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基類、及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン、トリエチルアミンなどの有機塩基類が挙げられる。特に好ましいのは、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムである。
【0064】
酸又は塩基の使用量は、原料ジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルに対して2〜40当量を使用する。好まし使用量は、4〜20当量である。
【0065】
加水分解反応において、溶媒を使用することができる。その溶媒は、水及び有機溶媒類である。有機溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンなどに代表されるエーテル類、エタノール、n−ブタノールなどに代表されるアルコール類、又は1,2−ジクロロエタン、1,2,3−トリクロロプロパンなどに代表される脂肪族ハロゲン化炭化水素類が挙げられる。また、これら有機溶媒は、それぞれその1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0066】
その加水分解反応における溶媒の使用量は、原料ジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルに対して0〜100重量倍を使用でき、好ましくは0〜20重量倍を使用する。
【0067】
加水分解反応は、溶媒の沸点付近で行ってよいが、密閉し加圧下に行ってもよい。よって、反応温度は、0〜200℃で行い、好ましくは50〜150℃で行う。反応時間は1〜24時間であり、好ましくは1〜15時間である。
【0068】
加水分解反応は常圧下でも加圧下でも可能であり、また回分式でも連続式でも実施することができる。
【0069】
加水分解反応後の処理方法として、酸の存在下で処理した場合、反応終了液もしくはその濃縮液を冷却して結晶を析出させる。析出した結晶を濾過し、乾燥することにより目的とするジカルボキシフェニレン(ビス)ホスホン酸が得られる。塩基の存在下で処理した場合、塩基の当量以上の酸を添加後、酸の存在下で処理した場合と同様に反応終了液もしくはその濃縮液を処理することにより目的とするジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)が得られる。
【0070】
更にジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)の精製が必要な場合は、メタノール、ジオキサンなどの溶媒を用いて、再結晶法により純度を向上させることができる。
【0071】
【実施例】
以下、実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
以下実施例にて採用した実験・分析手法を説明する。
【0073】
〔シリカゲルクロマトグラフィー(SGCG)〕
実施例1〜2では、反応生成物であるジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの精製方法としてシリカゲルクロマトグラフィー(展開液:ヘプタン/酢酸エチル混合溶媒)を使用した。
【0074】
〔ガスクロマトグラフィー(GC)〕
実施例1〜2では、ガスクロマトグラフィーを反応生成物であるジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの純度の確認のため使用した。
【0075】
ガスクロマトグラフィー条件:
装置 Shimadzu GC−17A、カラム キャピラリーカラム CBP1−W25−100(25mm×0.53mmφ×1μm)、カラム温度 カラム温度は昇温プログラムを用いて制御した。開始温度100℃から10℃/分で昇温して到達温度260℃とした。インジェクション温度 290℃、検出器温度 290℃、キャリヤーガス ヘリウム、検出方法 FID法
〔高速液体クロマトグラフィー(HPLC)〕
実施例3〜6では、反応生成物を混合物のまま高速液体クロマトグラフィーで分析した。
【0076】
高速液体クロマトグラフィー条件:
装置 Hitachi L−400、カラム YMC社製 Pack ODS−AM(4.6mmφ×250mm)、オーブン温度 40.0℃、キャリヤー溶媒 アセトニトリル/水(2/1(V/V))混合溶媒、検出方法 UV検出法(254nm)
〔質量分析法(MASS)〕
実施例1では、反応生成物の同定としてFAB法を採用し、実施例3〜5では、反応生成物の同定としてFD法を採用した。
【0077】
FAB法装置はJEOL社製LX−1000を用いた。FD法装置はJEOL社製SX−102を用いた。
【0078】
〔プロトン核磁気共鳴法(1H−NMR)〕
実施例1、3〜6では、反応生成物の同定としてプロトン核磁気共鳴法(1H−NMR)を採用した。
【0079】
プロトン核磁気共鳴法(1H−NMR)条件:装置 VARIAN社製 INOVA400、測定溶媒 CDCl3又はD6−DMSO、基準物質 テトラメチルシラン(TMS)
〔13C核磁気共鳴法(13C−NMR)〕
実施例3〜6では、反応生成物の同定として13C核磁気共鳴法(13C−NMR)を採用した。
【0080】
13C核磁気共鳴法(13C−NMR)条件:装置 VARIAN社製 INOVA400、測定溶媒 CDCl3及び/又はD6−DMSO、基準物質 CDCl3(δ:77.1ppm)
以下実施例について説明する。
【0081】
実施例1
内容量50mLの冷却管付ガラス製反応フラスコに磁気攪拌子を入れ、次に4,5−ジブロモイソフタル酸ジメチル3.52g(10ミリモル)、亜リン酸トリエチル6.64g(40ミリモル)、5%Pd−アルミナ担持触媒1.45g(パラジウム成分を原子換算として0.68ミリモル)及び1,2−ジメトキシエタン10gを入れ、加熱により反応温度150〜155℃で6時間攪拌して反応させた。
【0082】
反応終了後、冷却して得られた反応混合物に水及び1,2−ジクロロエタン(EDC)を加えて、反応生成物をEDC相に抽出した。そのEDC相を分液して水洗後、減圧濃縮すると油状物質4.31gが得られた。
【0083】
次にこの油状物質をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製すると、油状物質として3.17g(収率68%)が得られた。
【0084】
(油状物質の同定結果)
MASS(FAB法) m/e(%):467(M++1、100)、305(48)、185(57)
1H−NMR(400MHz、溶媒 CD3Cl、基準物質 TMS) δppm:1.33〜1.43(m、8H)、3.95〜3.98(m、6H)、4.16〜4.30(m、12H)、8.28〜8.30(m、1H)、8.74〜8.79(m、1H)
以上の結果より、油状物質は目的とする3,5−ジメトキシカルボニル−1,2−フェニレンビス(ホスホン酸)テトラエチル(DMPE)であることを確認した。
【0085】
実施例2
実施例1において、触媒を塩化ニッケル65mg(ニッケル成分を原子換算として0.5ミリモル)、溶媒をトルエン10gに変えた他は、実施例1と同様に反応させた。反応終了後の処理及び精製を同様に行った。得られたDMPEは、2.78g(収率60%)であった。
【0086】
実施例3
内容量50mLの冷却管付ガラス製反応フラスコに磁気攪拌子を入れ、次に3,5−ジメトキシカルボニルフェニレン−1,2−フェニレンビス(ホスホン酸)テトラエチル(DMPE)4.66g(10ミリモル)と、35重量%塩酸38g(0.36モル)を入れ、加熱により還流下12時間攪拌して加水分解させた。
【0087】
反応終了後、室温で一夜静置すると白色結晶が析出した。その結晶析出液を濾過して、白色結晶を減圧乾燥すると、白色結晶として2.48g(収率76%)が得られた。
【0088】
(結晶の同定結果)
MASS(FD法) m/e(%):309(M+−18+1、23)
1H−NMR(400MHz、溶媒 D6−DMSO、基準物質 TMS) δppm:7.05(brs、6H)、8.39(d、J=13.0Hz、1H)、8.65(d、J=4.2Hz、1H)
13C−NMR(100MHz、溶媒 CD3Cl+D6−DMSO、基準物質 CD3Cl) δppm:130.16(d、J=10.7Hz)、132.37(dd、J=14.7、8.2Hz)、135.39(dd、J=13.7、2.70Hz)、136.51(dd、J=170.7、14.3Hz)、137.51(dd、J=170.0、12.8Hz)、141.04(dd、J=14.3、8.20Hz)、165.89(s)、170.24(dd、J=4.20、2.30Hz)
融点:>290℃
以上の結果より、結晶は3,5−ジカルボキシ−1,2−フェニレンビス(ホスホン酸)・脱水物であり、1H−NMR溶媒中では、4,6−ジカルボキシ−1,2−フェニレンビス(ホスホン酸)であることが判明した。
【0089】
実施例4
内容量1000mLの冷却管付ガラス製反応フラスコに磁気攪拌子を入れ、次に2,5−ジブロモテレフタル酸ジメチル185.3g(0.53モル)、亜リン酸トリエチル430g(2.59モル)及び塩化パラジウム4.67g(パラジウム成分を原子換算として26.3ミリモル)を入れ、加熱により還流温度下で14時間攪拌して反応させた。原料の消失を高速液体クロマトグラフィーで確認した。
【0090】
反応終了後、減圧蒸留にて過剰の亜リン酸トリエチルなどの低沸点物質を留去した。残留物に溶媒として1,2−ジクロロエタン400g及び水を加え、溶媒抽出し、分液操作をした。得られた有機相から溶媒を減圧蒸留し得られた黒色油状物を室温下放置すると、結晶が析出した。この結晶の析出した油状物を濾過し、少量のトルエンで洗浄した後に減圧乾燥した。白色結晶として171.8g(収率69.5%)が得られた。
【0091】
(結晶の同定結果)
MASS(FD法) m/e(%):467(M++1、100)、421(15)、378(13)、225(16)
1H−NMR(400MHz、溶媒 CDCl3、基準物質 TMS) δppm:1.36(t、J=7.0Hz、12H)、3.97(s、6H)、4.13〜4.26(m、8H)、8.25〜8.27(m、2H)
13C−NMR(100MHz、溶媒 CD3Cl、基準物質 CD3Cl) δppm:16.31、53.08、63.09、131.98(d、J=186.2Hz)、134.20、137.80、167.00
融点:95.2℃
以上の結果より、白色結晶は目的とする2,5−ジメトキシカルボニル−1,4−フェニレンビス(ホスホン酸)テトラエチルであることを確認した。
【0092】
実施例5
内容量500mLの冷却管付ガラス製反応フラスコに磁気攪拌子を入れ、次に2,5−ジブロモテレフタル酸ジエチル115.0g(0.30モル)、亜リン酸トリエチル300g(1.80モル)及び塩化パラジウム2.66g(パラジウム成分を原子換算として15.0ミリモル)を入れ、加熱により還流温度下で21時間攪拌して反応させた。原料の消失を高速液体クロマトグラフィーで確認した。
【0093】
反応終了後、減圧蒸留にて過剰の亜リン酸トリエチルなどの低沸点物質を留去した。黒褐色の残留物に1,2−ジクロロエタン130g及び活性炭を加え、攪拌した。溶媒抽出液を濾過して、活性炭を除去した。得られた濾液を減圧蒸留すると、結晶が析出した。この結晶の析出した濃縮液を濾過し、少量のトルエンで洗浄した後に減圧乾燥した。白色結晶として111.4g(収率75.1%)が得られた。
【0094】
(結晶の同定結果)
MASS(FD法) m/e(%):495(M++1、80)、375(23)、239(100)、183(13)
1H−NMR(400MHz、溶媒 CDCl3、基準物質 TMS) δppm:1.35(t、J=7.1Hz、12H)、1.42(t、J=7.1Hz、6H)、4.12〜4.25(m、8H)、4.40〜4.46(m、4H)、8.25〜8.30(m、2H)
13C−NMR(100MHz、溶媒 CD3Cl、基準物質 CD3Cl) δppm:14.04、16.30、62.71、63.03、131.77(d、Jcp=185.8Hz)、134.30、138.03、166.64
以上の結果より、白色結晶は目的とする2,5−エトキシカルボニル−1,4−フェニレンビス(ホスホン酸)テトラエチルであることを確認した。
【0095】
実施例6
内容量1500mLの冷却管付ガラス製反応フラスコに磁気攪拌子を入れ、次に2,5−ジメトキシカルボニル−1,4−フェニレンビス(ホスホン酸)テトラエチル131.0g(0.28モル)及び35重量%塩酸850g(8.15モル)を入れ、加熱により100℃迄加熱し、反応液温度100〜105℃で16時間攪拌して加水分解させた。原料の消失を高速液体クロマトグラフィーで確認した。
【0096】
反応終了後、放冷により均一な溶液から白色結晶が析出して白色スラリーとなった。室温まで冷却して、白色スラリーを濾過し、得られた結晶を少量のエタノールで洗浄した。その後、結晶を減圧乾燥した。白色結晶として78.2g(収率85.6%)が得られた。その白色結晶は210〜270℃で2分子の水を放出して白色結晶・脱水物となった。
【0097】
(白色結晶の同定結果)
MASS(FD法) m/e(%):291(M+−36+1、100)
1H−NMR(400MHz、溶媒 D6−DMSO、基準物質 TMS) δppm:8.14〜8.18(m、2H)11.66(brs、6H)
13C−NMR(100MHz、溶媒 D6−DMSO、基準物質 CD3Cl) δppm:132.69、134.78(d、J=177.0Hz)、137.40、168.59
融点:>290℃
以上の結果より、白色結晶・脱水物は式(VII)
【0098】
【化18】
【0099】
で表される2,5−ジカルボキシ−1,4−フェニレンビス(ホスホン酸)・2脱水物であることを確認した。また、白色結晶は2,5−ジカルボキシ−1,4−フェニレンビス(ホスホン酸)であることを確認した。
【0100】
実施例7
ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート203.4g(0.80モル)と、テレフタル酸66.45g(0.40モル)と、エチレングリコール37.22g(0.60モル)とを、500mLのガラス製反応容器に仕込み、次いで当該反応器内の混合物を窒素雰囲気及び常圧で攪拌下、260℃で3時間加熱して、エステル化反応生成物を得た。
【0101】
そして、当該反応器内に、当該エステル化反応生成物と、2,5−ジカルボキシ−1,4−フェニレンビス(ホスホン酸)12.39g(生成ポリエステル樹脂に対してリン原子として1.0重量%)と、三酸化アンチモン0.14g(0.5ミリモル)と、酢酸コバルト四水塩0.015g(0.06ミリモル)とを仕込み、次いで、常圧で攪拌下、270℃で3時間加熱した。次に攪拌下、徐々に減圧して最終的に圧力40mmHg、280℃で1時間加熱して、重縮合を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0102】
得られた樹脂の極限粘度[η]は、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの等重量混合物を溶媒として、温度25℃にて測定した。極限粘度[η]は、0.67dL/gであった。
【0103】
また、得られた樹脂の難燃性は、難燃試験方法(JIS D1201)に従って、樹脂を試験片に成型し、その試験片の難燃指数(酸素指数:OI)を測定することにより評価した。自己消炎性を示す酸素指数は、22〜23以上を必要とし、更に高い難燃性を要求される場合には、27〜28以上が要求される。得られた樹脂の酸素指数は、28.3であり、高い難燃性を示した。
【0104】
実施例8
500mLのガラス製反応容器にビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート305.1g(1.20モル)及び2,5−ジエトキシカルボニル−1,4−フェニルビス(ホスホン酸)テトラエチル18.40g(生成ポリエステル樹脂に対してリン原子として1.0重量%)を仕込み、窒素雰囲気下で加熱撹拌した。常圧下、生成するエタノール等を留去しながら200℃で2時間反応させ、ついで徐々に減圧にして最終的に1mmHg、280℃にて1時間重縮合を行なった。
【0105】
得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]は0.69dL/gであり、酸素指数は28.1であった。
【0106】
【発明の効果】
ポリエステル重合、ポリアミド重合及びポリウレタン重合時において、本発明のジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルを、共重合第三成分として添加すると、ジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルのアルコキシカルボニル基からアルコールが脱離してカルボン酸基となり共重合することとなる。同じく、ジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)も共重合第三成分として添加すると、共重合することとなる。よって、上記重合体にジアルコキシホスホノ基又はホスホノ基を導入することとなる。その際導入したジアルコキシホスホノ基が共重合時安定であれば、そのままジアルコキシホスホノ基として残存する。一方共重合条件によっては、更にジアルコキシホスホノ基からアルコールが脱離してホスホノ基となり重合体の架橋剤となる。そして、ホスホノ基は重合体の架橋剤となる。
【0107】
上記共重合体を繊維と加工すると、ジアルコキシホスホノ基が残存する繊維は、この官能基がカチオン交換能を有するため、カチオン染色性が向上する。またジアルコキシホスホノ基が架橋剤として機能した繊維では、繊維の複合繊維化の際、熱処理に伴う収縮を防止し、繊維の風合い維持に役立つ。
【0108】
そして、上記共重合体より得られる繊維及び樹脂は含リン物質の特性である難燃性を有する。
【0109】
また、本発明のジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキル又はジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)を難燃剤として、樹脂に練り込み使用することができる。樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などに使用される。また最近、スチレン樹脂の非ハロゲン難燃化方法として、フェニルホスホン酸などの非ハロゲン系含リン化合物とメラミンシアヌレートなどのトリアジン誘導体との併用が採用されている。
【0110】
本発明のジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造方法では、従来、アルブゾブ反応において、触媒として使用されていなかった担持金属触媒を使用し、従来公知触媒と同様に高収率であることを見出した。更に担持金属触媒の再使用については、その触媒の再使用が可能なことを確認した。 特にアルミナ担持パラジウム触媒を採用することにより、工業的に有利なジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造方法を提供することができた。
【0111】
そして、ジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの加水分解反応により、ジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)の製造方法を提供することができた。
Claims (8)
- 周期律表第VIII族元素触媒の存在下、一般式(II)
- 周期律表第VIII族元素触媒がパラジウム触媒及びニッケル触媒からなる群から任意に選ばれる少なくとも1種の触媒である請求項2記載のジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造方法。
- 触媒が担持金属触媒である請求項2又は請求項3記載のジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造方法。
- 芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる溶媒群から任意に選ばれる少なくとも1種の溶媒を用いる請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のジアルコキシカルボニルフェニレンビス(ホスホン酸)テトラアルキルの製造方法。
- 酸が、塩酸及び臭化水素酸からなる群から任意に選ばれる少なくとも1種の無機酸である請求項6記載のジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)の製造方法。
- 塩基が、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から任意に選ばれる少なくとも1種の無機塩基である請求項6記載のジカルボキシフェニレンビス(ホスホン酸)の製造方法。
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