JP4280307B2 - ビニルホスホン酸化合物の製造方法 - Google Patents

ビニルホスホン酸化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特定の触媒を使用してビニルホスホン酸化合物を製造する方法並びにこのような触媒の該製造方法のための使用に関する。
ビニルホスホン酸化合物、特にビニルホスホン酸ジアルキルエステルは、ビニルホスホン酸化合物を製造するための前駆物質として並びに接着剤又は耐燃性プラスチックを製造するための共重合のためのモノマーとして重要である。
その製造のためには、種々の異なった方法が公知である。ドイツ国特許第21 32 962号明細書に記載された方法おいては、エチレンオキシドを三酸化燐と反応させて2−クロルエタンホスホン酸ジクロリドを形成しかつこの化合物を2−クロルエタンホスホン酸−ビス−2−クロルエチルエステルにする。こうして得られた化合物を、次いで触媒の存在下にホスゲンと反応させる。触媒としては、アミン、複素環式窒素化合物、例えばまた第三ホスフィンが使用される。
ドイツ国特許出願公開第30 01 894号明細書には、ビニルホスホン酸誘導体の製造方法が記載されており、該方法では2−アセトキシエタンホスホン酸ジアルキルエステルを酸性又は塩基性触媒の存在下に分離させる。塩基性触媒としては、第三アミン及びホスフィン、例えばまたアンモニウム塩又はホスホニウム塩が複素環式化合物及び酸アミドの他に提案される。該方法の欠点は、ビニルホスホン酸誘導体の混合物の形成である。ビニルホスホン酸ジアルキルエステルの割合は、最高23%である。
この方法のドイツ国特許出願公開第31 20 437号明細書に基づく改良された変法は、蒸留後に蒸留塔底液内に生成する生成物混合物をカルボン酸オルトエステルと反応させてビニルホスホン酸ジアルキルエステルを形成する工程を含む。
欧州特許出願公開第0 722 948号明細書によれば、2−アセトキシエタンホスホン酸ジメチルエステルを気相内で熱的に酢酸とビニルホスホン酸ジメチルエステルに分離する。この際には、触媒は使用されない。
前記方法の欠点は、生成物混合物の形成、費用のかかる多段式合成方法、高い反応温度の必要な使用及び塩素化出発物質の使用である。特に高い副生成物割合は、プロセス経済性を著しく劣化する。
ビニルホスホン酸化合物を合成するためには、高い収率で所望の生成物を生じる簡単な付加反応が有利である。このような反応の一例は、アセチレンに対するジアルキルホスフィットの付加である。米国特許第3,673,285号明細書には、ニッケル−ホスフィン錯体の存在下で130〜200℃の温度でジエチルホスフィットに対してアルキンを付加させる方法が記載されている。アセチレンの付加では、相応するビニルホスホン酸ジエチルエステルが30%の収率で得られる。この方法の欠点は、低い収率の他に既に130℃程度の温度での激しい発熱反応における亜燐酸エステルの分解傾向である。
本発明の課題は、公知方法の欠点を回避しかつ所望の生成物をアセチレン及び亜燐酸化合物から温和な条件下で高い選択性及び収率で入手することができる、ビニルホスホン酸化合物の製造方法を提供することである。
前記課題は、一般式(I):
Figure 0004280307
[式中、R1及びR2は、互いに無関係にH、C1〜16−アルキル基、C6〜12−アリール基、C7〜12−アルカリール基又はC7〜12−アラルキル基であり、その際有機基は1つ以上のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基又はアセトキシ基により置換されていてもよい]で示されるビニルホスホン酸化合物の製造方法により解決され、該方法は、一般式(II):
Figure 0004280307
[式中、R1及びR2は前記に定義したものを表す]の亜燐酸化合物とアセチレンとを触媒としてのPd(II)錯体及び/又はPd(0)錯体又は相応するPt錯体の存在下に反応させることを特徴とする。
本発明によれば、アセチレンと亜燐酸化合物、特にジアルキルホスフィットとからビニルホスホン酸化合物、特にビニルホスホン酸ジアルキルエステルを形成する反応は、特に均一相で、触媒量のパラジウム錯体又は白金錯体、好ましくはパラジウム錯体を使用することにより高い選択性及び収率で可能であることが判明した。類似したパラジウム錯体は、既に末端の高級アルキン、例えば1−オクチンのヒドロホスホリル化のために使用された(J.Am.Chem.Soc.,1996,118,p.1571〜1572参照)。しかしながら、アセチレンとの反応は言及もしくは提案されていない。
本発明によれば、アセチレンをパラジウム触媒を使用して極めて温和な条件下で極めて高い選択性で直接ビニルホスホン酸化合物、特にビニルホスホン酸ジアルキルエステルに変換することでき、しかもその際アセチレンの二量体化、オリゴマー化又は重合は生じないか又はテトラアルキルエチレンジホスホネートへの二重の反応は起こらないことが判明した。
反応のために使用される一般式(II)の亜燐酸化合物において、R1及びR2は、互いに無関係にH、C1〜16−アルキル基、C6〜12−アリール基、C7〜12−アルカリール基又はC7〜12−アラルキル基であり、その際有機基は1つ以上のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基又はアセトキシ基により置換されていてもよい。好ましくは、R1及びR2は、互いに無関係に線状C1〜12−アルキル基、フェニル基、(C1〜6−アルキル)フェニル基又はフェニル(C1〜6−アルキル)基である。特に好ましくは、R1及びR2は、互いに無関係に線状C1〜6−アルキル基である。好ましくは、これらの基は置換されていない。
基R1及びR2が水素と異なる場合には、使用される化合物は燐酸ジエステルである。その反応は、一般式(II)のビニルホスホン酸ジエステルを生じる。この反応によれば、エステル基を分離することができ、その際ビニルホスホン酸、R1OH及びR2OHが得られる。
亜燐酸化合物のビニルホスホン酸化合物への変換は、触媒としてのPd(II)錯体及び/又はPd(0)錯体又は相応するPt錯体、しかし好ましくはPd錯体の存在下で行う。この場合、触媒は一般に均一相で存在する。
使用されるPd(0)錯体は、好ましくはホスフィンリガンド又はホスフィットリガンドを有する。ホスフィンリガンド又はホスフィットリガンドとしては、多数のリガンドが適する。例えば、リガンドは一般式PXYZを有し、この場合X,Y及びZは互いに無関係に18個までの炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基である。この場合好ましくは、アルキル基又はアリール基、特にアリール基である。相応するリガンドは、例えばドイツ国特許出願公開第15 93 277号明細書に記載されている。この場合、問題になるのは好ましくは、アリール基が場合により置換されたトリアリールホスフィン又はトリアリールホスフィットである。適当な置換基は、C1〜6−アルキル基、アシル基又はアセトキシ基である。好ましくは、トリアリールホスフィンは置換されていない。特に、トリフェニルホスフィンがホスフィンリガンドとして使用される。本発明では、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)を使用するのが特に好ましい。
錯体は、例えば単座又は二座リガンドから構成されていてもよい。適当な錯体構造の例は、以下のものである:
Figure 0004280307
[式中、
Mは、Pd,Pt、好ましくはPd、
Rは、互いに無関係にあらゆる位置で、O及び/又はC原子を介して燐原子に結合された有機基、特に2つの結合できる位置を有するアリール基又はアリールオキシ基、
R’,R”は、互いに無関係にあらゆる位置で1価の有機基、特にアリール基及び/又はアリールオキシ基、
X,Yは、互いに無関係に1価のアニオンリガンドを表す]。
この場合、電荷は釣り合っており、しかも場合により同座結合されていないカチオン又はアニオンが電荷平衡のために利用される。
好ましくは、1価の基はベンゼン又はフェノールから、かつ2価の基はビフェニル基、1,1’−ビナフチル基、1,1’−ビフェニルオキシ基及び/又は1,1’−ビナフチルオキシ基から誘導される。この場合、全ての芳香族基は、例えば1個以上のC1〜6−アルキル基又は相応するアルコキシ基により置換されていてもよい。ビフェニル基及びビナフチル基並びにそれらから誘導される基は、2つの分子位置で燐原子に結合されている。この場合、両者の位置は同一の燐原子に結合されていてもよい。また、それらが異なる燐原子に結合されかつそうして、例えば2個の燐原子及び前記の基の3個を有する橋かけされた構造が生じることも可能である。相応する適当な二座のホスフィットリガンドは、米国特許第5,512,695号明細書に記載されている。そこに記載されたホスフィットリガンドは、ホスフィンリガンドと類似した形で使用することもできる。別の適当な単座又は二座芳香族リガンドは、国際公開第95/29153号パンフレットに記載されている。この場合、記載されたリガンドは、ホスフィンリガンド又はホスフィットリガンドと同様に使用することもできる。
本発明に基づき使用可能なPd(II)錯体は、好ましくはPd(0)錯体のために記載されたホスフィンリガンド、ホスフィットリガンド、アリールシアニド又はアルキルシアニドをリガンドとして有する。この場合、アリールシアニドは、前記のように構成されていてもよい。ベンゾニトリル又はアセトニトリルを使用するのが好ましい。特に好ましいPd(II)錯体は、Pd(C65CN)2Cl2,Pd(CH3CN)4(BF42及びPd((C653P)2Cl2である。
この場合、触媒は反応の際に現場で形成することができる。
本発明に基づき使用される触媒は、通常ビニル化すべき亜燐酸化合物、特にジアルキルホスフィットの量に対して、0.01〜10wt%の量、好ましくは0.5〜3wt%の量、特に好ましくは1〜2wt%の量で使用する。
反応の際の反応温度は、一般に20〜120℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは60〜80℃である。
この場合、反応は溶剤不在で又は不活性溶剤の存在下に実施することができる。使用可能な不活性溶剤の例は、環式エーテル、例えばTHF、長鎖状エーテル、例えばトリエチレングリコールジメチルエーテル又はテトラエチレングリコールジメチルエーテルである。
反応は、常圧又は高圧下で、好ましくは1〜20バール、特に好ましくは1.5〜6バール(絶対)で行う。この場合、好ましくは一般式(II)の亜燐酸化合物及び触媒を先に装入しかつアセチレンを導入する。反応の終了後に、生成物を蒸留により分離することができる。
本発明による方法は、連続的に又は不連続的に実施することができる。
本発明はまた、前記の触媒をビニルホスホン酸化合物、特にビニルホスホン酸エステル、殊にビニルホスホン酸ジアルキルエステルを製造する際に使用することに関する。
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
実施例1
内部温度計、ドライアイス冷却器及びガス導入管を備えた容積500mlの4つ首フラスコ内で、撹拌下にジメチルホスフィット6gにテトラヒドロフラン20mlを加えかつアルゴン下にガス抜きした。テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)2mol%の添加後に、反応溶液に60℃でアセチレン6l/hを24時間導入した。蒸留後処理後に、ビニルホスホン酸ジメチルエステルが90%の収率で単離された。
実施例2
内部温度計、ドライアイス冷却器及びガス導入管を備えた容積500mlの4つ首フラスコ内で、撹拌下にジエチルホスフィット25gをアルゴン下にガス抜きした。テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)1mol%の添加後に、反応溶液に60℃でアセチレン6l/hを24時間導入した。蒸留後処理後に、ビニルホスホン酸ジエチルエステルが95%の収率で単離された。
実施例3
容積300mlのオートクレーブ内で、撹拌下にジメチルホスフィット65gにテトラヒドロフラン110mlを加えた。テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)0.7mol%の添加後に、まず窒素5バール及びアセチレン10バールを圧入した。オートクレーブを65℃に加熱した後に、アセチレンを20バールに再圧入した。20時間以内で、吸収されたアセチレン量を、この温度で1時間毎に補充し、その後冷却し、反応排出物を窒素で洗浄しかつ蒸留した。ビニルホスホン酸ジメチルエステルが95%の収率で単離された。

Claims (6)

  1. 一般式(I):
    Figure 0004280307
    [式中、R1及びR2は、互いに無関係にH、C1〜16−アルキル基、C6〜12−アリール基、C7〜12−アルカリール基又はC7〜12−アラルキル基であり、その際有機基は1つ以上のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基又はアセトキシ基により置換されていてもよい]で示されるビニルホスホン酸化合物の製造方法において、一般式(II):
    Figure 0004280307
    [式中、R1及びR2は前記に定義したものを表す]の亜燐酸化合物とアセチレンとを触媒としてのトリアリールホスフィンリガンド又はトリアリールホスフィットリガンドを有するPd(0)錯体、又はリガンドとしてトリアリールホスフィン、トリアリールホスフィット、アリールシアニド及び/又はアルキルシアニドを有するPd(II)錯体の存在下に20〜80℃の温度で反応させ、その際、一般式(II)の亜燐酸化合物及び前記触媒を先に装入しかつアセチレンを導入することを特徴とする、ビニルホスホン酸化合物の製造方法。
  2. 1及びR2が互いに無関係に線状C1〜16−アルキル基であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 反応後にエステル基を分離し、その際ビニルホスホン酸、R1OH及びR2OHを得ることを特徴とする、請求項2記載の方法。
  4. 錯体がテトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. 触媒としてPd(C65CN)2Cl2,Pd(CH3CN)4(BF42及び/又はPd((C653P)2Cl2を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  6. 以下の特徴:
    不活性溶剤の存在、
    圧力1〜20バール、
    温度6080℃、
    使用亜燐酸化合物の量に対する、使用触媒量0.01〜10wt%
    の1つ以上を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
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