JP4132273B2 - 充填されたブラインドビアホールを有するビルドアッププリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部が充填されたブラインドビアホールを有するビルドアッププリント配線板を短時間で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータをはじめとする最近の電子機器の高性能化、小型化に対応するため、プリント配線板の高密度化、薄型化が強く求められている。そのような要求に対応する手法の一つとして、一層ごとにパターンを形成し、逐次積層を行なうビルドアップ工法を用いて製造される多層プリント配線板が最近使用されるようになった。
このようなビルドアッププリント配線板では、隣接する層間の電気的接続を行なうため、ブラインドビアホールと呼ばれる、直径100μm、深さ100μm程度の穴を開け、その内壁面に銅めっきを行なうことが一般的である。
しかしながら、ブラインドビアホールの内壁面のみを銅めっきする従来工法では、ブラインドビアホール内部の空間は絶縁樹脂の充填によって埋められるが、粘性のある樹脂を直径が小さく、一端が閉じている貫通していない穴に完全に充填することは困難である。樹脂の充填に際し、閉塞端側で空間が残り易く、プリント配線板をはんだ付けする際の加熱で残された空間内の気体が急激に膨張し、プリント配線板を変形させたり、破壊する恐れがある。従って、従来工法では樹脂の充填が比較的容易な直径の大きいブラインドビアホールを採用せざるをえず、そのため、ビルドアッププリント配線板の小型化に対する大きな障害となっていた。
【0003】
また、従来方法では、ブラインドビアホールの開口端側では、絶縁樹脂が充填されているため、ブラインドビアホール上にブラインドビアホールを重ねて上層と接続する形式(Via on Via)を採用することが出来ない。このため、ビルドアッププリント配線板の面積効率が減少するとともに、設計自由度も低下する。
この問題点を解消する方法として考案されたのが、ビアフィリング(Via-filling)と呼ばれる、ブラインドビアホール全体を導電体で充填し、ビルドアッププリント配線板の隣接する層間の電気的接続を行なう方法である。
ビアフィリングを用いると、プリント配線板の有効面積が増加するとともに、従来工法によるブラインドビアホール内壁面のみのめっきと比べてより直径の小さいブラインドビアホールで充分な電気的接続を得られるため、プリント配線板の小型、高密度化に有効である。
【0004】
現在考案され、発表されているビアフィリング方法としては、以下の方法が知られている。
1.導電性ペーストを、印刷法によりブラインドビアホールに充填する方法。
2.ブラインドビアホールの閉塞端側の導体層のみを活性化して、無電解銅めっきを選択的に積み上げる方法。
しかしながら、導電性ペーストは、銅と有機物との混合体であるため、金属銅と比較して導電率が低く、小径のブラインドビアホールでは充分な電気的接続が困難であり、そのため、プリント配線板の小型、高密度化に対して有効な方法ではない。また、印刷法による充填では、粘性のあるペーストを直径が小さい貫通していない穴に充填することが必要となるが、空間を残さず完全に充填することは困難である。
【0005】
一方、無電解銅めっきを用いる方法では、ブラインドビアホール充填物が導電性の高い金属銅析出物である点で導電性ペースト法より優れているが、めっき皮膜の析出速度が遅いため、生産性に大きな問題があった。
一般的な高速型無電解銅めっき浴の場合、めっき皮膜の析出速度は、3μm/hr程度がであるが、これを用いて直径100μm、深さ100μmの典型的なブラインドビアホールの内部を銅めっきで充填する場合、30時間以上を要し、非常に生産性が悪い。
これに対して、電気銅めっきはめっき皮膜の析出速度は、10〜50μm/hrと速いため、無電解銅めっきに対して、大幅な時間短縮が可能となるので、ブラインドビアホールへの電気銅めっきの応用が期待されている。
【0006】
しかしながら、電気銅めっきの場合、ブラインドビアホールの閉塞端面のみにめっきを析出させて積み上げる方法では、電気的に独立して閉塞端部のみへのめっきは非常に困難であり、それあえて実施しようとすると、非常に煩雑で付加的な工程が必要となる。従って、ブラインドビアホール内面の全てを薄い無電解銅皮膜又はダイレクトプレーティング法で導電化し、ブラインドビアホール内面の全てに銅めっきを析出させる方法が選択されることになるが、従来硫酸銅めっきでは、ブラインドビアホール内部のめっき析出速度は非常に遅く、硫酸銅めっきによるブラインドビアホール充填は不可能と考えられていた。
ブラインドビアホール内面の全てに銅めっきを析出させる場合、空隙を残すことなくブラインドビアホール内部を銅めっきで充填するためには、ブラインドビアホール内の閉塞端面付近での析出速度が、開口端部での析出速度より速くなることが必要である。開口端部での析出速度が、閉塞端面の析出速度を上回る場合には、ブラインドビアホール内部の銅めっき充填が完了する以前に開口端部側が閉塞されてしまい、内部に空隙を残すことになる。このような銅析出物中の空隙は、プリント配線板に搭載部品をはんだ付けする際、高温に曝されると、空隙に閉じ込められた内容物(めっき液または水素ガス)が急激に膨張し、プリント配線板を変形させたり、破壊する恐れがある。従って、ブラインドビアホール内部を充填する場合には、内部に空隙を残さないようにする必要がある。
【0007】
通常、プリント配線板の製造には硫酸銅めっき浴が用いられ、電解条件としては直流電解が一般的である。しかしながら、直流電解法でめっきした場合、ブラインドビアホール閉塞端面付近には電流が集中しにくく、またブラインドビアホールの開口端部に比べて閉塞端面付近の方が銅イオンの供給が不充分になりやすい。従って、めっきの析出速度は、開口端部の方が速くなる。そのため、ブラインドビアホール内部の銅めっき充填が、完了する以前に開口端部が閉塞されてしまい、内部に空隙を残すことになるため、電気めっき法で良好な品質の金属銅充填ブラインドビアホールを得ることが不可能とされていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、ブラインドビアホール内部に空隙を残すことなく、導電性に優れた金属銅を短時間で充填するための方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の成分を含有する硫酸銅めっき浴を使用し、かつ特定の電解条件で電気銅めっきを行なうことにより、上記目的が達成出来ることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、充填されたブラインドビアホールを有するビルドアッププリント配線板の製造方法又はブラインドビアホールを充填する方法であって、前記ブラインドビアホールに対して、下記成分(イ)及び(ロ)を含有する硫酸銅めっき浴を使用し、かつ、正電解時間1〜50msec及び逆電解時間0.2〜5msecの周期で電流の方向を逆転させながら、電気銅めっきを行なうことを特徴とする方法に関するものである。
(イ)1分子当たり少なくとも5個のエーテル酸素原子を含むポリエーテル。
(ロ)分子内に、以下の式で示される化合物。
【0010】
R1 −S−(CH2 O)n −R2 −SO3 M
(式中、R1 は、水素原子、−(S)n −(CH2 O)n −R2 −SO3 M、又は−CS−(S)n −(CH2 O)n −R2 −SO3 Mを示し、
R2 は、炭素原子3〜8個を含むアルキレン基を示し、
Mは、水素原子又はアルカリ金属を示し、そして
nは、0又は1を示す)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
ビルドアッププリント配線板は、回路配線をエポキシ樹脂のような絶縁材料によって積層状態に組み上げた回路板である。ビルドアッププリント配線板を製造するのに使用されるプリント基板としては、通常、例えば、ガラスエポキシ積層板が使用されており、樹脂を塗布することにより絶縁層が形成され、銅めっきにより導体層が逐次積層される。ビルドアッププリント配線板に設けられるブラインドビアホールは、下層との電気的接続を行うために形成されるものであり、プリント基板上の樹脂層又はその上に積層される導電性層に開けられる。ブラインドビアホールは、一般に、一端が閉塞端面となっている微小径(例えば、50〜200 μm )のホールであり、ここを通して、信号層間の電気的接続がなされる。
【0012】
ブラインドビアホールの形成方法は公知であり、例えば、ドリルや、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー等の物理的な形成手段や、フォト法等の光学的な形成方法等によって好適に行うことができる。
このように形成されたブラインドビアホールを充填するのに使用される電気銅めっきには、硫酸銅めっき浴が使用される。
この硫酸銅めっき浴は、必須成分として、成分(イ)及び(ロ)を含有することを除いては、従来より採用されている硫酸銅めっき浴の条件が、特に制限なく使用することが出来る。
具体的には、硫酸銅めっき浴は、基本組成として、硫酸、硫酸銅及び水溶性塩素化合物を含有する。
【0013】
本発明においては、硫酸濃度は、例えば、30〜400g/L、好ましくは、170〜210g/Lであることが適当である。硫酸濃度が、例えば30g/L未満であると、めっき浴の導電性が低下するため、めっき浴に通電することが困難になり易い。一方、硫酸濃度が、400g/Lを越えると、めっき浴中の硫酸銅の溶解を妨げ、甚だしくは硫酸銅が沈澱し易い。
本発明においては、硫酸銅濃度は、例えば、20〜250g/L、好ましくは、60〜180g/Lであることが適当である。硫酸銅濃度が、例えば20g/L未満であると、被めっき物への銅イオン供給が不充分となり、正常なめっき皮膜を析出させることが困難となり易い。一方、硫酸銅は、250g/Lを越えて溶解させることは困難である。
【0014】
水溶性塩素化合物は、従来より硫酸銅めっきに用いられているものであれば特に制限なく使用することが出来る。これらの化合物としては、例えば、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム等を挙げることが出来る。水溶性塩素化合物は1種類のみを使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。水溶性塩素化合物の濃度は、塩素イオン濃度として、例えば、10〜200mg/L、好ましくは、30〜80mg/Lであることが適当である。塩素イオン濃度が、例えば10mg/L未満であると、水溶性塩素化合物としての作用である析出物の平滑化が充分に行なわれず析出物が樹状又は粉末状になりやすい。一方、この濃度が、200mg/Lを越えると、陽極の不働態化を招来し易く、通電が困難となり易い。
【0015】
本発明で使用される成分(イ)は、めっき浴中で湿潤剤として作用する物質であり、1分子当たり、少なくとも5個、好ましくは、少なくとも20個のエーテル酸素を含む。本発明で使用される成分(イ)は、1種類のみを使用しても、2種類以上を混合物を使用してもよい。
好ましくは、成分(イ)は、少なくとも5個、好ましくは、50〜60個のエーテル酸素を有するポリアルキレングリコールが好適に挙げられる。
本発明で使用される成分(イ)としては、好ましくは、以下(1)〜(3)の構造を有する化合物が挙げられる。
(1) HO -(CH2 - CH2 - O)a - H (但し、式中、a=5〜500)
(2) HO -(CH2 - CH(CH3)- O) b - H (但し、式中、b=5〜200)
(3) HO -(CH2 - CH2 - O)a (CH2 - CH(CH3)- O) b (CH2 - CH2 - O) a -H
(但し、a+c=5〜250、b=1〜100)
本発明で使用される成分(イ)は、例えば、0.05〜10g/L、好ましくは、0.1〜2g/Lの範囲で使用することが適当である。めっき浴中の濃度が、0.05g/L未満では、湿潤効果が不充分なため、めっき皮膜に多数のピンホールを生じ易く、正常なめっき皮膜を析出させることが困難になる。一方、成分(イ)の濃度が、10g/Lを越えると、それに見合う効果の向上はほとんど得られないので、経済的面から好ましくない。
【0016】
本発明で使用される成分(ロ)は、めっき浴中でプラスに帯電する物質であり、電解中に被めっき物表面に吸着し、逆電解を行なうと、被めっき物表面から離脱する。被めっき物表面に吸着した場合、銅めっき皮膜の成長を助ける作用をもつ物質である。
本発明で使用される成分(ロ)は、次式で示される化合物である。
R1 −S−(CH2 O)n −R2 −SO3 M
(式中、
R1 は、水素原子、−(S)n −(CH2 O)n −R2 −SO3 M、又は−CS−(S)n −(CH2 O)n −R2 −SO3 Mを示し、
R2 は、炭素原子3〜8個を含むアルキレン基を示し、
Mは、水素原子又はアルカリ金属を示し、そして
nは、0又は1を示す)
R1 としては、例えば、水素原子や、−S−(CH2 O)−R2 −SO3 M、−CH2 O−R2 −SO3 M、−S−R2 −SO3 M、−R2 −SO3 M、−CS−S−(CH2 O)−R2 −SO3 M、−CS−CH2 O−R2 −SO3 M、−CS−S−R2 −SO3 M、−CS−R2 −SO3 M等が挙げられる。
【0017】
ここで、R2 としては、プロピレンや、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン等の直鎖又は分岐鎖からなるアルキレン基が挙げられる。
Mとしては、例えば、水素原子又は、ナトリウムや、カリウム等が挙げられる。
このような成分(ロ)としては、好ましくは、以下の化合物(4)〜(9)が挙げられる。
(4)M-SO3-(CH2)a -S-(CH2)b -SO3- M
(ここで、a及びb=3〜8、Mは、水素又はアルカリ金属元素)
(5)M-SO3-(CH2)a -O-CH2-S-CH2-O-(CH2)b -SO3- M
(ここで、a及びb=3〜8、Mは、水素又はアルカリ金属元素)
(6)M-SO3-(CH2)a -S-S-(CH2)b -SO3- M
(ここで、a及びb=3〜8、Mは、水素又はアルカリ金属元素)
(7)M-SO3-(CH2)a -O-CH2-S-S-CH2-O-(CH2)b -SO3- M
(ここで、a及びb=3〜8、Mは水素又はアルカリ金属元素)
(8)M-SO3-(CH2)a -S-CS-S-(CH2) b -SO3- M
(ここで、a及びb=3〜8、Mは、水素又はアルカリ金属元素)
(9)M-SO3-(CH2)a -O-CH2-S-CS-S-CH2-O-(CH2) b -SO3- M
(ここで、a及びb=3〜8、Mは水素又はアルカリ金属元素)
成分(ロ)として、特に好ましい化合物としては、以下の化合物が好適に挙げられる。
【0018】
Na-SO3-(CH2)3-S-S-(CH2)3-SO3-Na
H-S-(CH2)3-SO3-Na
本発明で使用される成分(ロ)は、1種類のみを単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
本発明で使用される成分(ロ)は、例えば、0.1〜100mg/L、好ましくは、0.5〜10mg/Lの範囲で使用することが適当である。めっき浴中の濃度が、0.1mg/L未満では、銅めっき皮膜の成長を助ける効果が充分には得られない。一方、この濃度が、100mg/Lを越えると、それに見合う効果の向上はほとんど得られない。
本発明では、電気銅めっきは、短い周期で電流の方向を逆転しながら行なう。このような電気銅めっき方法は、例えば、PPR(Pulse Periodic Reverse) 電解法としてそれ自身は知られているが、本発明のようなブラインドビアホールを充填するために使用することについては全く知られていない。
【0019】
短周期で、電流方向を逆転することにより、成分(ロ)は、電解によって被めっき物のブラインドビアホール内面に吸着し、次の逆電解の間に、電流の集中しやすいブラインドビアホール開口端部付近に限って成分(ロ)が離脱する。従って、電流の方向の逆転を繰り返すことにより、ブラインドビアホール閉塞端面付近では、成分(ロ)の吸着量が多く、開口端部付近では成分(ロ)の吸着量が少なくなる。その結果、成分(ロ)の銅めっき皮膜の成長を助ける作用は、ブラインドビアホール閉塞端面付近で強く作用することになり、ブラインドビアホール閉塞端面付近での銅めっき皮膜の析出速度が、開口端部での析出速度より速くなり、その結果、ブラインドビアホール内部に空隙を残さず銅析出物で充填することが可能となる。
【0020】
本発明に使用される電気銅めっき条件は、正電解(めっきを析出させる電解)と、逆電解を短い周期で繰り返す方法であり、電解の周期は、正電解時間1〜50msec、好ましくは、10〜20msec、逆電解時間0.2〜5msec、好ましくは、0.5〜1msecの範囲を使用することが適当である。正電解時間が1msecより短い場合、正常な銅めっきの析出が開始する前に電解を中止してしまうことになるので好ましくない。一方、正電解時間が50msecより長い場合は、ブラインドビアホールの開口端部付近に成分(ロ)の吸着が増え、ブラインドビアホール閉塞端面付近での銅めっき皮膜の析出速度を、開口端部での析出速度より速くすることが出来なくなる。
一方、逆電解時間が0.2msecより短い場合、ブラインドビアホールの開口端部付近に吸着した成分(ロ)を離脱させることが出来なくなるため、ブラインドビアホール閉塞端面付近での銅めっき皮膜の析出速度を、開口端部での析出速度より速くすることが出来なくなる。また、逆電解時間が5msecより長い場合、一度析出した銅めっき皮膜を溶解させてしまうため、銅めっきによるブラインドビアホールの充填に要する時間が長くなり、効果的でない。
【0021】
なお、正電解と、逆電解との途中に電気を流さない休止時間があっても構わない。
正電解電流密度は、好ましくは、0.1〜20A/dm2 、更に好ましくは、0.5〜5A/dm2 であることが適当である。また、逆電解電流密度は、好ましくは、0.1〜200A/dm2 、更に好ましくは、1〜25A/dm2 であることが適当である。
正電解時間の方が逆電解時間より長いことが好ましい。
電解時の電流密度比率は、正電解1に対して、逆電解1〜10、好ましくは、2〜5であることが好ましい。電解時の電流密度比率が、正電解1に対し、逆電解が1より小さいと、ブラインドビアホールの開口端部付近に吸着した成分(ロ)を充分に離脱させることが出来なくなるため、ブラインドビアホール閉塞端面付近での銅めっき皮膜の析出速度を、開口端部での析出速度より速くすることが出来なくなり易い。一方、電解時の電流密度比率が、正電解1に対し、逆電解が10越えると、一度析出した銅めっき皮膜を溶解させてしまうため、銅めっきによるブラインドビアホールの充填に要する時間が長くなり過ぎる傾向がある。
【0022】
なお、本発明において電気めっきを行なうためには、電気めっきに先立ってブラインドビアホール内面を導電化する必要があるが、この導電化処理には、無電解めっきや、導電性微粒子吸着処理、気相めっき法等の各種の方法を特に制限されることなく、各種用いることが出来る。
本発明では、電気銅めっきは、めっき温度(液温)として、例えば、10〜40℃、好ましくは、20〜30℃で行なうことが適当である。めっき温度が10℃より低い場合、めっき浴の導電性が低下するため、電解時の電流密度を高くすることが出来ず、めっき皮膜の成長速度が遅くなり、生産性が低下する。一方、めっき温度が40℃より高い場合、成分(イ)及び(ロ)が分解する恐れがある。
【0023】
本発明で使用される電気銅めっきでは、陽極は、従来より硫酸銅めっきに用いられているものが特に制限なく使用される。このような陽極としては、例えば、、溶解性陽極や、不溶性陽極等が挙げられる。
本発明で使用される電気銅めっきでは、撹拌を行なうことは差し支えなく、被めっき物表面への銅イオン及び添加剤の供給を均一化するために撹拌を行なうことが好ましい。更に、あけ替え濾過、循環濾過を行なうことも出来、特に濾過器でめっき液を循環濾過することが好ましく、これによりめっき液の温度を均一化し、且つめっき液中のゴミ、沈澱物等を除去することが出来る。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、特定の成分(イ)及び(ロ)を配合した電気銅めっき浴を使用して、短周期で正電解及び逆電解の電流の方向を逆転しながら、電気銅めっきを行なうため、短時間に、内部に空隙を残すことなくブラインドビアホール内部を導電性とすることができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例を参照しながら、更に、具体的に説明する。但し、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
【0026】
銅めっきによるブラインドビアホールの充填状態は、以下のようにして、評価した。
銅箔を表面に有するプリント配線基板上に、公知のビルドアップ工法用エポキシ樹脂を厚さ80μmで塗布して硬化させ、表面に厚さ10μmの銅箔を接着し、これに炭酸ガスレーザーを用いて銅箔及びエポキシ樹脂層に穴を開け、直径約80μm、深さ約80μmのブラインドビアホールを形成し、これに公知の方法により無電解銅めっき皮膜を2μm形成したものを評価用試料とした。これに、実施例及び比較例の電気めっき方法を用いてめっきを行なった後、評価用試料を切断し、ブラインドビアホールの断面観察を行なった。
実施例1では、直径80μm、深さ80μmのブラインドビアホールが空隙を残すことなく、完全に銅めっき析出物で充填されていることが確認された(図1)。
【0027】
直流電解を用いた比較例1では、ブラインドビアホールの開口端部は銅めっきで塞がれていたが、ブラインドビアホール内部の銅めっき膜厚は薄く、ブラインドビアホール内の大部分は空洞であった(図2)。
成分(ロ)を使用しない電気銅めっき浴を使用して、実施例1と同様にして行なった比較例2では、電気銅めっき処理を長時間行なったにもかかわらず、ブラインドビアホール内部の銅析出は不充分であった(図3)。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、ブラインドビアホールの全体を極めて短期間に銅金属によって充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られたブラインドビアホールの断面状態の顕微鏡写真。
【図2】 比較例1で得られたブラインドビアホールの断面状態の顕微鏡写真。
【図3】 比較例2で得られたブラインドビアホールの断面状態の顕微鏡写真。
Claims (2)
- 充填されたブラインドビアホールを有するビルドアッププリント配線板の製造方法であって、前記ブラインドビアホールに対して、下記成分(イ)及び(ロ)を含有する硫酸銅めっき浴を使用し、かつ、正電解時間1〜50msec及び逆電解時間0.2〜5msecの周期で電流の方向を逆転させながら、電気銅めっきを行なうことを特徴とする方法。
(イ)1分子当たり少なくとも5個のエーテル酸素原子を含むポリエーテル。
(ロ)分子内に、以下の式で示される化合物。
R1 −S−(CH2 O)n −R2 −SO3 M
(式中、R1 は、水素原子、−(S)n −(CH2 O)n −R2 −SO3 M、又は−CS−(S)n −(CH2 O)n −R2 −SO3 Mを示し、
R2 は、炭素原子3〜8個を含むアルキレン基を示し、
Mは、水素原子又はアルカリ金属を示し、そして
nは、0又は1を示す) - ビルドアッププリント配線板におけるブラインドビアホールを充填する方法であって、前記ブラインドビアホールに対して、下記成分(イ)及び(ロ)を含有する硫酸銅めっき浴を使用し、かつ、正電解時間1〜50msec及び逆電解時間0.2〜5msecの周期で電流の方向を逆転させながら、電気銅めっきを行なうことを特徴とする方法。
(イ)1分子当たり少なくとも5個のエーテル酸素原子を含むポリエーテル。
(ロ)分子内に、以下の式で示される化合物。
R1 −S−(CH2 O)n −R2 −SO3 M
(式中、R1 は、水素原子、−(S)n −(CH2 O)n −R2 −SO3 M、又は−CS−(S)n −(CH2 O)n −R2 −SO3 Mを示し、
R2 は、炭素原子3〜8個を含むアルキレン基を示し、
Mは、水素原子又はアルカリ金属を示し、そして
nは、0又は1を示す)
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