JP4131905B2 - 電力取引システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、送配電業者から需要家へ電力を供給する電力取引システムおよびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、送配電業者から需要家へは、最大需要電力を想定して電力が供給されているものの、実際には最大需要電力を連続して消費するわけではなく、平均消費電力を最大需要電力である契約電力で除算した負荷率が50%を下回る需要家が多い。電力は他の工業製品と異なり、生産量である発電量と流通量である送配電電力量、消費量である需要電力とが同時に等しくなければならない。送配電業者が、全ての需要家における契約電力の和である総契約電力量に対応することの可能な発電設備を保有することは、設備使用効率および投資効率の面から著しく非合理的である。
【0003】
また、発電設備が大型であればあるほど発電電力量を急速に調整することが困難であり、起動に際し数日の日数を要する設備すらある。そのため、送配電業者は実際の需要を予想して発電設備を起動し、水力発電などの小型発電設備を運転調整することにより発電電力量を調整している。
【0004】
需要電力が送配電業者の予想より少ない場合には、汽力ボイラの蒸気をタービンに導くことなく廃棄したり、ボイラに注水して機関を停止するなどして発電電力量を低下させるか、あるいは送配電業者内で電力を廃棄したりする必要がある。一方、需要電力が送配電業者の予想より多い場合には、発電機を過負荷で運転したり、他の送配電業者から電力を融通してもらう必要がある。
【0005】
一般に、需要家は遅れ力率の電力を消費し、送配電業者は無効電力を需要家に無料で供給している。送配電業者が独立系発電事業者(以下、IPPという)などの卸電力会社であって、この卸電力会社から電力を購入する場合には、電力卸料金は有効電力[kW]に基づいて算定される。そして、発電機の定格は、皮相電力で規定されることが多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、需要電力が送配電業者の予想より少ない場合には、汽力ボイラの蒸気を廃棄したりボイラに注水したりする必要があるが、蒸気を廃棄すると、それまで投入した燃料が無駄になり、汽カボイラに注水すると蒸気が湿ってタービンなどの汽力機関に悪影響を及ぼしたりする。そして、電力を廃棄する場合も、電力販売原価を上昇させることになる。
【0007】
一方、需要電力が送配電業者の予想より多い場合、発電設備を過負荷で運転すると、汽力機関の圧力過大や蒸気の除湿不足などを招き、汽力機関を損傷させる一因となる。また、他の送配電業者から融通してもらうにも、これは他の送配電業者が余剰電力を生産可能であることが前提条件であり、異常気象などの場合には、他の送配電業者でも同様の電力需要傾向にあることから、不都合な場合が多い。
【0008】
一般に、送配電業者がIPPなどの卸電力会社から電力を購入する場合には、発電機の定格は皮相電力で規定されるものの、卸電力料金は有効電力[kW]に基づいて算定されることが多い。同一の皮相電力を発電しても、無効電力が増えると、その分有効電力が減り、卸電力料金が減少するため、卸電力会社は無効電力を供給したがらない。
【0009】
しかしながら、電力を送電するためには無効電力が必要であり、需要家も無効電力が必要である。その結果、無効電力の供給は送配電業者が行い、電力料金の大部分が需要家から卸電力会社へと渡ることになり、送配電業者は卸電力会社から電力を購入するのを控えてしまうため、電力市場の自由化が阻害される。
【0010】
電力料金は、発電に必要なコストと、送配電に必要なコストなどから算定されるべきであり、電力の蓄積が不可能であること、発電コストの低い大型汽力の出力変化に長時間必要なことから、需要電力の予測が外れた場合のリスクをコストとして計上している。
【0011】
さらに、送配電業者の理由により、一方的に需要家の電力消費機器を制御することは不合理である。そのため、需要家での電力消費を制限したことに対する報奨を、電気料金の割引として行っているが、その金額が必ずしも妥当でなかった。
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、送配電業者の設備費や無駄な燃料消費を抑え、安価に電力を供給することができるとともに、電力系統の安定化を図り、設備の負荷率を機器の最大効率近傍に設定可能な電力取引システムおよびその方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項記載の発明は、送配電業者から複数の需要家に電力を送配電する電力線と、この電力線の受電端で前記需要家が電力を消費する電力消費機器と、この電力消費機器に対する消費電力を前記需要家が制御する消費電力制御装置と、前記送配電業者と前記需要家とを双方向に通信可能な双方向通信装置と、前記送配電業者から前記双方向通信装置を介して前記需要家に電力消費要求を提案する手段と、前記需要家の状況により前記電力消費要求の受入可能電力を前記双方向通信装置を介して前記送配電業者に応札する手段と、前記送配電業者から前記需要家に余剰電力を消費するように依頼する手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項記載の電力取引システムにおいて、事前に余剰電力が発生すると予見される場合、前記送配電業者から前記需要家に余剰電力、消費時刻および消費時間を提案する一方、前記需要家が余剰電力受入の可否を前記送配電業者に応札することを特徴とする。
【0022】
請求項および記載の発明によれば、余剰電力を有効に消費することができるので、発電設備を発電効率が最大となる定格出力近傍で運転することが可能となり、運転費を削減することができる。
【0023】
請求項記載の発明は、請求項記載の電力取引システムにおいて、前記送配電業者から前記需要家に電力消費要求が提案され、この需要家が消費電力とそれに対する電力料金割引率を前記送配電業者に応札し、この送配電業者が複数の需要家からの応札により前記需要家毎に消費電力とそれに対する電力料金割引率を需要家に提案することにより、その需要家が余剰電力を消費することを特徴とする。
【0024】
請求項記載の発明は、請求項記載の電力取引システムにおいて、前記需要家が前記送配電業者に提案する余剰電力買取電力とそれに対する電力料金割引率を前記双方向通信装置上で公開し、前記需要家がその情報を参照して自分が提案した買取電力とそれに対する割引率を変更して再提案することを特徴とする。
【0025】
一般に、不要な余剰電力を購入することになれば、市場原理により購入する余剰電力は安価であるべきである。しかしながら、消費電力を計測する電力計を調整することは不可能である。
【0026】
請求項および記載の発明では、双方向通信装置を介して余剰電力購入量を確認することができるため、月極の清算時点で電力料金の割り戻しが行え、余剰電力の分を安価にすることが可能となる。
【0027】
また、請求項および記載の発明では、通信装置が双方向であるため、ある需要家が送配電業者に提示した余剰電力買取料金を他の需要家に通達することが可能である。他の需要家が提示した余剰電力買取料金を参照して自身の買取料金を提示することが可能となるため、市場原理による適正価格を構成することが可能となる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
[第1実施形態]
図1は本発明に係る電力取引システムの第1実施形態を示す構成図である。なお、図1では、説明を簡素化するために需要家A,Bのみを代表的に示したが、それ以上の多数の需要家が存在するのは勿論である。その他の実施形態も同様である。
【0038】
図1に示すように、送配電業者および需要家A,Bは、それぞれ通信装置1aを有し、これらの通信装置1aは広域通信回線1bにより双方向通信が可能であり、各通信装置1aおよび広域通信回線1bにより双方向通信装置1が構成され、送配電業者と需要家A,Bとの間で双方向通信を可能としている。
【0039】
また、電線路としての電力線2は、送配電業者から需要家A,Bに電力を送配電するものであり、送配電業者における電力線2には、潮流監視装置3が接続され、この潮流監視装置3は送配電業者が電力線2に送出する総電力を監視する電力計であり、送配電業者は、この総電力の監視信号に基づいて供給計画制御装置4により需要家A,Bに対して消費電力の抑制などの各種制御を行う。
【0040】
一方、需要家A,Bは、それぞれ消費電力制御装置としてのデマンド制御装置5および電力消費機器6を備え、このデマンド制御装置5は、電力線2の受電端で需要家A,Bが電力を消費する複数の電力消費機器6に対して通電を制御するとともに、通信装置1aと応札装置7を構成する。この応札装置7は、デマンド制御装置5が送配電業者の要求に応じるか否かを判断し、その判断内容を通信装置1aおよび広域通信回線1bを介して送配電業者に知らせるものである。
【0041】
また、送配電業者と需要家A,Bとの間には、計量法に基づく積算電力計8が設置され、送配電業者は積算電力計8の指示値から需要家A,Bの使用電力量を求め、需要家A,Bに電力料金を請求する。
【0042】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0043】
まず、送配電業者の供給電力が逼迫した場合について説明する。
【0044】
図2に示すように、送配電業者は、供給計画制御装置4により需要家A,Bに対する供給電力を入力しており、送配電業者の供給電力が逼迫して電力抑制が必要な場合には、通信装置1aおよび広域通信回線1bからなる双方向通信装置1を介して需要家に電力消費抑制を提案する(ステップS1,S2)。
【0045】
一方、需要家A,Bは、自己が所有する各電力消費機器6の消費電力(デマンド)を調査して停止することが可能な電力消費機器6があれば、その使用電力および停止可能時間をデマンド制御装置5により求め、これら停止可能な電力消費機器6の使用電力および停止可能設定時間を提示して双方向通信装置1により送配電業者に通知(応札)する(ステップS3)。
【0046】
すると、送配電業者は、上記通知から必要な電力抑制量となるように停止可能な電力消費機器6および停止可能設定時間を選択し、それぞれの需要家A,Bに対して電力消費を所定時間抑制するように双方向通信装置1を介して該当需要家に依頼する(ステップS4)。
【0047】
この依頼を受けた需要家A,Bは、通達された所要量の電力を抑制するようにデマンド制御装置3により該当する電力消費機器6に対して通電を制限する(ステップS5)。また、需要家A,Bは、消費電力抑制中あるいは抑制期間終了後、抑制電力量および抑制時間をデマンド制御装置3から双方向通信装置1を介して送配電業者に通知する(ステップS6)。
【0048】
送配電業者は、上記依頼による抑制電力量を記録し積算する(ステップS7)。なお、送配電業者は、前記積算電力計8の指示値から需要家A,Bの使用電力量を求め、電力料金を請求しており、その請求の際に上記電力抑制量および抑制時間に対する報奨金を上記電力料金から減額あるいは相殺する(ステップS8)。つまり、このステップS8では、送配電業者から需要家A,Bに上記応札に応じた電力消費の抑制に基づいて課金する。
【0049】
ここで、各需要家A,Bが提案した割引率と抑制電力を受信した送配電業者がその内容を他の需要家に双方向通信装置1上で公開すれば、他の需要家はその提案を見て自分の提案を変更することも可能である。
【0050】
すなわち、需要家A,Bが送配電業者に提案した電力抑制量とそれに対する報奨金の額を双方向通信装置1上で公開し、需要家A,Bが他の需要家が提案した報奨金の額の情報を入手するとともに、自分が提案した電力抑制量とそれに対する報奨金の額を変更して再提案することも可能である。
【0051】
また、需要家A,Bが電力抑制量とそれに対する報奨金の額を送配電業者に提案し、この送配電業者は電力抑制量とそれに対する報奨金の額により電力抑制する需要家を決定するようにしてもよい。
【0052】
次いで、事前に電力が不足すると予見される場合について説明する。
【0053】
図3に示すように、送配電業者は、事前に電力が不足すると予見される場合、供給計画制御装置4から双方向通信装置1を介して抑制電力、抑制時刻および抑制時間を需要家A,Bに提案する(ステップS11)。
【0054】
一方、需要家A,Bは、提案された電力抑制が可能であるか否かをデマンド制御装置5により検討し、電力抑制の可否を双方向通信装置1により送配電業者に通知(応札)する(ステップS12)。
【0055】
送配電業者は、各需要家A,Bからの通知を選択し、必要な電力抑制量を確保して選択した需要家に双方向通信装置1を介して電力抑制を依頼する(ステップS13)。
【0056】
この依頼を受けた需要家は、通達された所要量電力を抑制するようにデマンド制御装置5により該当する電力消費機器6に対する通電を制限する(ステップS14)。また、需要家A,Bは、消費電力抑制中あるいは抑制期間終了後、抑制電力量および抑制時間をデマンド制御装置3から双方向通信装置1を介して送配電業者に通知する(ステップS15)。
【0057】
一方、送配電業者は、前記依頼による抑制電力量を記録し積算する(ステップS16)。なお、送配電業者は、前記積算電力計8の指示値から需要家A,Bの使用電力量を求め、電力料金を請求しており、その請求の際に上記抑制電力量に対する報奨金を上記電力料金から減額あるいは相殺する(ステップS17)。
【0058】
また、電力が不足するほど切迫していなくても、昼休みなど電力が余剰となることが予見される場合、送配電業者は、その時間帯に電力を消費し、午後の消費電力を抑制するように需要家A,Bに提案することも可能である。
【0059】
次に、送配電業者が有する供給電力が需要電力を上回る場合について説明する。
【0060】
図4に示すように、送配電業者が有する供給電力が需要電力を上回る場合、供給計画制御装置4により双方向通信装置1を介して送配電業者から需要家A,Bに電力消費が提案される(ステップS21)。
【0061】
一方、需要家A,Bは、デマンド制御装置5により通電可能な機器を調査し、受入可能電力を双方向通信装置1を介して送配電業者に通知(応札)する(ステップS22)。
【0062】
送配電業者は、必要な余剰電力消費を選択し、双方向通信装置1により該当する需要家に電力消費を依頼する(ステップS23)。
【0063】
この依頼を受けた需要家は、電力消費機器6に通電して余剰電力を消費する(ステップS24)。一方、送配電業者は、需要家に依頼した余剰電力消費量を記録し、需要家に余剰電力消費量に応じた報奨金を決定する(ステップS25)。この報奨金は、送配電業者と需要家との間に設けられている積算電力計8の指示値から決定される電力料金から減額、相殺、別リベートとして支給される(ステップS26)。
【0064】
ここで、送配電業者から需要家A,Bに電力消費要求が提案され、この需要家A,Bが消費電力とそれに対する電力料金割引率を送配電業者に応札し、この送配電業者が複数の需要家からの応札により需要家毎に消費電力とそれに対する電力料金割引率を需要家に提案することにより、その需要家が余剰電力を消費するようにしてもよい。
【0065】
また、各需要家A,Bが提案した割引率と抑制電力を受信した送配電業者がその内容を他の需要家に公開すれば、他の需要家はその提案を見て自分の提案を変更することも可能である。
【0066】
すなわち、需要家A,Bが送配電業者に提案する余剰電力買取電力とそれに対する電力料金割引率を双方向通信装置1上で公開し、需要家がその情報を参照して自分が提案した買取電力とそれに対する割引率を変更して再提案することも可能である。また、報奨額は、送配電業者からの提示でもよいし、需要家A,Bからの応札でもよい。
【0067】
さらに、事前に余剰電力が発生すると予見される場合について説明する。
【0068】
図5に示すように、事前に余剰電力が発生すると予見される場合、送配電業者は、供給計画制御装置4により双方向通信装置1を介して余剰電力、消費時刻および消費時間を需要家A,Bに提案する(ステップS31)。
【0069】
一方、需要家A,Bは提案された余剰電力を消費可能であるかをデマンド制御装置3により検討し、余剰電力受入の可否および条件を双方向通信装置1により送配電業者に通知(応札)する(ステップS32)。
【0070】
送配電業者は、各需要家A,Bからの通知を選択し、必要な電力消費量を確保して選択した需要家に双方向通信装置1を介して電力制御を依頼する(ステップS33)。
【0071】
この依頼を受けた需要家は、依頼された電力を消費するようデマンド制御装置3により該当する電力消費機器6に対する通電を制御する(ステップS34)。
【0072】
また、送配電業者は、上記依頼による抑制電力量を記録し報奨金を累計する(ステップS35)。さらに、送配電業者は、積算電力計8の指示値から需要家の使用電力量による電力料金請求時に報奨金を減額、相殺あるいはリベートとして支給する(ステップS36)。
【0073】
このように本実施形態によれば、広域の1対多通信が可能な双方向通信装置1を介して送配電業者が複数の需要家A,Bに電力抑制を提案する一方、その電力を抑制可能な需要家が双方向通信装置1を介して送配電業者に抑制可能な電力およびその時間を応札することにより、送配電業者が必要な電力抑制量を確保することができる。
【0074】
また、通信システム1が双方向であるため、需要家A,Bが電力を抑制することが可能である場合、送配電業者に電力抑制を逆提案することも可能となる。
【0075】
ところで、送配電業者の理由により、一方的に需要家A,Bの電力消費機器6を制御することは不合理である。そのため、需要家A,Bでの電力消費を制限したことに対する報奨を、電気料金の割引として行っているものの、その割引金額が必ずしも妥当ではない。
【0076】
そこで、本実施形態では、送配電業者が双方向通信装置1を介して電力消費抑制に対する報奨を提示することが可能であるため、報奨により電力消費機器6を選択したり、生産計画を変更するなどして合理的な選択が可能となる。
【0077】
また、本実施形態によれば、余剰電力を有効に消費することができるので、発電設備を発電効率が最大となる定格出力近傍で運転することが可能となり、運転費を削減することができる。
【0078】
また、不要な余剰電力を購入すれば、市場原理により購入する余剰電力は安価であるべきである。しかしながら、消費電力を計測する電力計を調整することは不可能である。本実施形態では、双方向通信装置1を介して余剰電力購入量を確認することができるため、月極の清算時点で電力料金の割り戻しが行え、余剰電力の分を安価にすることが可能となる。
【0079】
さらに、本実施形態では、通信システム1が双方向であるため、ある需要家が送配電業者に提示した余剰電力買取料金を他の需要家に通達することが可能となる。そして、他の需要家が提示した余剰電力買取料金を参照して自身の買取料金を提示することが可能となるため、市場原理による適正価格を構成することが可能となる。
【0080】
このように本実施形態によれば、送配電業者が1対多通信が可能な双方向通信装置1を介して複数の需要家に電力抑制を提案し、電力を抑制可能な需要家が双方向通信装置1を介して送配電業者に削減可能な電力とその時間を応札することにより、電力不足による送配電系統の不安定を回避することができる上、送配電業者は余剰の発電設備または送配電業者との買電契約を抑制することができるので、設備費や無駄な燃料消費が抑えられ、安価に電力を供給することが可能となる。
【0081】
また、余剰電力を有効に消費できるので、発電設備を発電効率が最大となる定格出力近傍で運転することが可能であり、運転費を低下させることができる。
【0082】
ところで、一般の電力取引システムでは、必ずしも送配電業者に有益な個別契約ではなかったが、本実施形態によれば、電力系統の安定化が図れ、設備の負荷率を機器の最大効率近傍に設定することができるため、送配電業者に有用である一方、需要家A,Bも余剰電力を把握することができるため、市場原理に基づいた電力料金で受電可能となる。
【0083】
[第2実施形態]
図6は本発明に係る電力取引システムの第2実施形態を示す構成図である。なお、前記第1実施形態と同一の部分には、図1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0084】
図6に示すように、需要家A,Bには、それぞれ蓄熱層などのエネルギー蓄積装置9が設置され、需要家Aには需要家Aの発電装置10aに出力上昇を指令する潮流制御装置11aが設けられ、この潮流制御装置11aはデマンド制御装置5からの指令信号により動作する。
【0085】
一方、需要家Bには、発電装置10bから自家消費分を減じて電力線2に送電するための潮流制御装置11bが設けられ、この潮流制御装置11bもまたデマンド制御装置5からの指令信号により動作する。したがって、潮流制御装置11a,11bは、送配電業者と需要家A,Bとの間の電力通過量を制御する。
【0086】
また、需要家Aに設置された積算電力計8は、逆潮流用の積算電力計を受電用の積算電力計と兼用する一方、需要家Bには、逆潮流用の積算電力計8aと受電用の積算電力計8bとが別個に設置されている。
【0087】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0088】
本実施形態では、需要家A,Bが送配電業者の余剰電力を買い取り、需要家A,Bに設けられた蓄熱層などのエネルギー蓄積装置9で消費し、送配電業者が双方向通信装置1を通して発した電力抑制要求を需要家A,Bが受信したとき、それぞれエネルギー蓄積装置9に貯えられたエネルギーを用いて発電装置10a,10bで発電して送配電業者に逆送電可能な電力を双方向通信装置1を介して送配電業者に通知し、送配電業者が需要家A,Bに逆潮流を依頼することにより電力不足を補う。
【0089】
また、事前に電力不足が予想される場合には、送配電業者は双方向通信装置1を介して需要家A,Bに蓄積エネルギー量とその放出時刻を提案し、需要家A,Bは電力蓄積が可能な場合、双方向通信装置1を介して送配電業者に応札する。
【0090】
送配電業者は、必要な電力蓄積量を選択して、需要家A,Bにエネルギー蓄積量とその放出時刻を依頼する。需要家A,Bは、エネルギー蓄積装置9にエネルギーを蓄積し、所定時刻に蓄積エネルギーを電力として送配電業者に逆潮流させる。
【0091】
なお、逆潮流のエネルギー源は、送配電業者からのエネルギーを蓄積するだけではなく、需要家A,B自身が所有する発電装置10a,10bでもよい。
【0092】
また、本実施形態では、送配電業者の電力が不足し、その送配電業者から受電している事業所に電力抑制余力がない場合、他の送配電業者あるいは同一の送配電業者の他系統に接続されている同一需要家の他事業所から電力を逆潮流させ、電力が不足している送配電業者の回線を含め少なくとも1つ以上の送配電回線、またはその送配電業者を含む複数の送配電業者を介して不足している送配電系統に電力を逆潮流させ、この逆潮流させた電力を不足している送配電系統の抑制電力と見倣すことにより、不足系統を安定させることができる。
【0093】
ここで、逆潮流の電力を供給するには、他事業所の発電設備でもエネルギー蓄積装置9でも、あるいは消費電力抑制でもよい。逆潮流電力や消費抑制電力は、双方向通信装置1により他事業所から少なくとも1つの送配電業者に通知され、電力が不足している送配電業者は、他事業所の系統から融通された電力を、その事業所の抑制電力と見倣し、他事業所に接続されている送配電業者は、その電力に応ずる委託手数料を他事業所の電力料金に上乗せする。
【0094】
すなわち、発電設備を備えた電力需要に余裕のある系統から電力需要が逼迫している系統の事業所に電力を送り、または融通する場合、余裕のある系統から逼迫している系統への送電は送配電業者が行う。
【0095】
ここで、電力は損失なしで送れるものではなく、余裕のある系統で抑制し、または発電した電力と逼迫した系統が受け取る電力とが等しくないので、抑制した電力料金であると、実益となる電力量以上の割引となる。
【0096】
また、余裕のある系統から逼迫した系統までの送電にかかる費用が送配電業者の負担となってしまう。そのため、送電にかかる費用と送電途中で損失する電力量の費用を委託手数料として需要家から徴収することにより、正しい割引料金となるように調整する。
【0097】
ところで、需要電力が予想より少ない場合、汽カシステムの蒸気を廃棄する必要があり、発電量に対する燃料費が上昇する。蒸気を有効に利用するためには、発電した電力を貯えればよい。電力を電力として貯えるのは困難であるが、温水器や油圧ポンプ、ヒートポンプのコンプレッサなど、余分に通電させても動作に支障が少ない機器もある。需要電力が急減した場合や送電線の事故系統切り離しなどで余剰電力が生じた場合、前記機器に通電することにより系統の安定化を図ることができる。
【0098】
このように本実施形態によれば、需要家A,Bは余剰電力を買い取り、蓄熱槽などに貯えるが、この時のエネルギー形態は必ずしも熱や電力である必要はないし、不可逆的である必要もない。熱エネルギーとして貯えた電力を、送配電業者の電力が不足となった場合、熱電素子や低温媒体によるタービンにより電力に逆変換し、送配電業者に逆送電することが可能である。
【0099】
また、本実施形態によれば、双方向通信装置1が広域であれば、複数の受電点を有する需要家A,Bは、ある受電点で電力抑制することができなくても他の受電点で需要家から送配電業者に逆送電可能であれば、他の受電点から送配電業者に逆潮流し、その分を他の受電点での電力抑制量として換算することも可能である。
【0100】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、双方向通信装置1は、送配電業者と需要家のみを接続するものではなく、他の通信者と共用しても十分であり、インターネットなどの広域通信網を利用すれば通信回線の負担が少なくなる。
【0101】
また、この場合には、如何なる者でもこのシステムに参加することができるので、小電力しか消費しない一般家庭でも参加可能である。この一般家庭での電力抑制可能機器としては、エアコンディショナや温水器などが適当であり、送配電業者から電力抑制依頼を受けて外出時間を決めるなど、電力抑制に十分な効果を奏する。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、送配電業者が1対多通信が可能な双方向通信装置を介して複数の需要家に電力抑制を提案し、電力を抑制可能な需要家が双方向通信装置を介して送配電業者に削減可能な電力とその時間を応札することにより、電力不足による送配電系統の不安定を回避することができる上、送配電業者は余剰の発電設備または発電業者との買電契約を抑制することができるので、設備費や無駄な燃料消費が抑えられ、安価に電力を供給することが可能となる。
【0103】
また、余剰電力を有効に消費できるので、発電設備を発電効率が最大となる定格出力近傍で運転することが可能であり、運転費を低下させることができる。
【0104】
さらに、本発明によれば、電力系統の安定化が図れ、設備の負荷率を機器の最大効率近傍に設定することができるため、送配電業者に有用である一方、需要家も余剰電力を把握することができるため市場原理に基づいた電力料金で受電可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電力取引システムの第1実施形態を示す構成図。
【図2】第1実施形態の作用を示すフローチャート。
【図3】第1実施形態の作用を示すフローチャート。
【図4】第1実施形態の作用を示すフローチャート。
【図5】第1実施形態の作用を示すフローチャート。
【図6】本発明に係る電力取引システムの第2実施形態を示す構成図。
【符号の説明】
1 双方向通信装置
1a 通信装置
1b 広域通信回線
2 電力線
3 潮流監視装置
4 供給計画制御装置
5 デマンド制御装置(消費電力制御装置)
6 電力消費機器
7 応札装置
8 積算電力計
9 エネルギー蓄積装置
10a,10b 発電装置
11a,11b 潮流制御装置

Claims (4)

  1. 送配電業者から複数の需要家に電力を送配電する電力線と、この電力線の受電端で前記需要家が電力を消費する電力消費機器と、この電力消費機器に対する消費電力を前記需要家が制御する消費電力制御装置と、前記送配電業者と前記需要家とを双方向に通信可能な双方向通信装置と、前記送配電業者から前記双方向通信装置を介して前記需要家に電力消費要求を提案する手段と、前記需要家の状況により前記電力消費要求の受入可能電力を前記双方向通信装置を介して前記送配電業者に応札する手段と、前記送配電業者から前記需要家に余剰電力を消費するように依頼する手段とを備えたことを特徴とする電力取引システム。
  2. 事前に余剰電力が発生すると予見される場合、前記送配電業者から前記需要家に余剰電力、消費時刻および消費時間を提案する一方、前記需要家が余剰電力受入の可否を前記送配電業者に応札することを特徴とする請求項記載の電力取引システム。
  3. 前記送配電業者から前記需要家に電力消費要求が提案され、この需要家が消費電力とそれに対する電力料金割引率を前記送配電業者に応札し、この送配電業者が複数の需要家からの応札により前記需要家毎に消費電力とそれに対する電力料金割引率を需要家に提案することにより、その需要家が余剰電力を消費することを特徴とする請求項記載の電力取引システム。
  4. 前記需要家が前記送配電業者に提案する余剰電力買取電力とそれに対する電力料金割引率を前記双方向通信装置上で公開し、前記需要家がその情報を参照して自分が提案した買取電力とそれに対する割引率を変更して再提案することを特徴とする請求項記載の電力取引システム。
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