JP4126741B2 - 燃料電池装置の排気方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は燃料電池装置に関する。更に詳しくは燃料排気ガスの排気の仕方の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常の燃料電池は電解質膜を燃料極と空気極で挟持した構成であり、水素ガスを燃料ガスとして燃料極へ供給し、一方、空気を空気極へ供給して電解質膜を介して両者を反応させ、電気化学反応の進行に伴い電力を得ている。
【0003】
燃料極へ供給された燃料ガスはこれが燃料極において完全に消費されることが好ましい。しかし、実際には燃料ガスとして水素ボンベから純水素を供給しても電池反応が進むにつれて、空気極より透過するN2、O2あるいは生成水により、電池の出力が不安定になってくる。
そこで従来では、燃料ガスを燃料電池の系外へ連続して、若しくは一定の間隔で排出していた。
【0004】
しかしながら、水素ガスは活性が高いので、このように水素ガスを垂れ流すと、燃料電池の系外で水素ガスが好ましくない反応を引き起こすおそれがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明はかかる課題を解決すべくなされた。請求項1に記載の発明は次の通りである。即ち、
燃料電池本体の燃料極から直接排気される燃料排気ガスを、排気口から排気すると同時にファンにより機械的に発生された空気流に巻き込ませる、ことを特徴とする燃料電池装置の排気方法である。
【0006】
【発明の作用・効果】
請求項1に記載の発明によると、燃料極から直接排気される燃料排気ガスが排気口から排気されると同時にファンにより機械的に発生された空気流に巻き込まれる。そこで、燃料排気ガスに含まれる水素ガスは空気流に沿って拡散され、排気口付近の水素濃度は限りなくゼロに近くなる。従って、燃料排気ガスに含まれる水素ガスが原因となる異常反応は発生しなくなる。
【0007】
【構成の詳細な説明】
上記において、燃料ガス成分を含んだ排気ガスには燃料極から直接排気される燃料排気ガスと空気極から排気される空気排気ガスとがある。後者は燃料排気ガスを一旦空気極に導入するタイプの燃料電池装置の場合である。
【0008】
空気流はファンなどによって機械的に発生される。この機械的空気流発生手段は排気口に対する空気流を発生させるために専用に設けることもできるが、冷却系のラジエータファンを利用することが装置の部品点数削減の見地から好ましい。その他、空気排気ガスから水分を分離する凝縮器のファンを利用すること、回転する車輪等を利用することができる。
【0009】
空気流は温度差によっても空気の対流として発生する。従って、加湿器などの大気と温度差がある部品に向けて、若しくはその近傍に排気口を配置すれば、当該排気口より排出される空気は対流する空気に巻き込まれて拡散されることとなる。
【0010】
【実施例】
次ぎに、この発明の参考例および実施例を図面を参照にして説明する。
参考例)
図1は参考例の燃料電池装置1の概略構成を示す。図2は燃料電池本体10の基本ユニットを示す。
【0011】
図1に示すように、この装置1は燃料電池本体10、燃料ガスとしての水素ガス供給系20、空気供給系30、水供給系40から概略構成される。
【0012】
燃料電池本体10の単位ユニットは空気極11と燃料極13とで固体高分子電解質膜12を挟持した構成である。実際の装置ではこの単位ユニットが複数枚積層されている(燃料電池スタック)。空気極11の上方及び下方には空気マニホールド14、15が形成されている。上方のマニホールド14にはノズル41を取り付けるための取付孔が形成されている。一方、下側の空気マニホールド15は滴下した水を効率よく排出できるものとする。
【0013】
図2に示すように、上記空気極11−固体高分子電解質膜12−燃料極13の単位ユニットは一対のカーボン製コネクタ板16、17で挟持されている。空気極11に対向するコネクタ板16の面には空気を流通させるための溝18が複数条形成されている。各溝18は上下方向に形成されてマニホールド14、15を連通している。その結果、ノズル41より供給される霧状の水は当該溝18に沿って空気極11の下側部分まで達する。
同様に、燃料極13に対向するコネクタ板17の面には水素ガスを流通させるための溝19が形成されている。参考例ではこの溝19を水平方向に複数条形成した。
【0014】
空気極11には水が供給されるのでこれは耐水性のある材料で形成される。また、そこに水の膜ができると空気極11の実効面積が減少するので空気極11の材料には高い撥水性も要求される。かかる材料として、カーボンクロスを基材として(C+PTFE)を塗りこんだガス拡散層を使用した。
固体高分子電解質膜12には汎用的なナフィオン(商品名:デュポン社)の薄膜を使用した。
尚、膜の厚さは空気極側から生成水の逆浸透が可能であればその数値は特に問わない。
燃料極13は空気極11と同じ材料で形成されている。部品の共通化の為である。
空気極11、及び燃料極13において電解質膜12と接触する方の面には、ある程度の厚さでもって酸素と水素の反応を促進するために用いられる周知の白金系触媒がそれぞれ均一に分散されていて、空気極11及び燃料極13における触媒層として形成される。
【0015】
水素ガス供給系20の水素源21として、この参考例では水素吸蔵合金からなる水素ボンベを利用した。その他、水/メタノール混合液等の改質原料を改質器にて改質反応させて水素リッチな改質ガスを生成させ、この改質ガスをタンクに貯留しておいてこれを水素源とすることもできる。勿論、燃料電池装置1を室内で固定して使用する場合には、水素配管を水素源とすることができる。
水素源21と燃料極13とは水素供給調圧弁23を介して水素ガス供給路22により接続されている。調圧弁23は燃料極13に供給する水素ガスの圧力を調整するものであり、汎用的な構成のものを利用できる。
【0016】
燃料極13からの排気ガスは燃料排気ガス路24を通じて空気導入路31に供給されここで空気と混合される。空気導入路31に導入された燃料排気ガスは空気排気ガス循環路35が空気導入路31と合流する部分で更に混合される。燃料排気ガス路24にはこれを開閉するための水素排気弁25が配設されている。図中の符号27は燃料排気ガス中の水素ガス成分の濃度を検出するセンサであり、符号29は燃料排気ガスの流量を検出する流量計である。
なお、燃料排気ガス路24の吹き出し口を、ノズル41の噴出口若しくは空気導入路31の吹き出し口に向ければ、そこで撹拌・混合が行われるので、この場合、燃料排気ガスを空気マニホールド14に直接導入することが可能となる。
【0017】
燃料極13に供給された水素ガスは発電反応に利用されてその大部分が消費されるが、なお残存する余剰水素ガスは排気ガス路24を流れ、排気弁25を介して空気導入路31へ導入される。そしてここで予混合され分散の高い状態で空気極11に到達する。
このようにして空気極11に供給された余剰水素ガスは触媒上で燃焼して水に転化する。この水は電解質膜12に供給される。このようにして、通常の電池反応による生成水と余剰水素ガスの燃焼による回収水が利用できる燃料電池装置1では、水素ガス系20及び空気系30の各ガス路に従来型の加湿器が何ら必要とされない。
【0018】
空気極11にはブロア37によって大気中より空気が供給される。このブロア37はモータ38によって駆動制御される。図の符号31は空気の導入路であり空気極11のマニホールド14に連結されている。下側のマニホールド15には空気極11を通過した空気を排気するための空気排気ガス路32が連結され、水を分離するセパレータ33を介して空気排気ガスは循環路35及び排気口36へ送られる。空気排気調圧弁34の開度により循環路35と排気口36とへ分配される空気排気ガスの割合が調節される。空気排気ガスを循環させるのは、空気極11へ導入された余剰水素ガスを完全に燃焼させるためである。
循環路35及び弁34を省略し、空気排気ガスをそのまま大気へ排出する構成とすることもできる。
【0019】
この空気排気ガスはラジエータファン39へ向けて排気し、これを大気中へ拡散させる。これにより、空気排気ガスはラジエータファン39の発生する空気流に巻き込まれ、この空気流に沿って拡散する。従って、空気排気ガスが一カ所に滞留することがなく、もってその中に含まれる水素ガス成分の濃度が可及的に小さくなり、これが好ましくない反応を引き起こすことは殆どなくなる。
【0020】
凝集器33で分離された水はタンク42へ送られる。タンク42には水位センサ43が付設される。この水位センサ43により、タンク42の水位が所定の値以下となると、アラーム44が点滅してオペレータに水不足を知らせる。
参考例の水供給系40では、タンク42から水供給路45がポンプ46、水圧センサ47及び調圧弁48を介して、ノズル41まで連結されている。調圧弁48により所望の水圧に調節された水はノズル41から吹き出して空気マニホールド14内では霧状になる。そして、吹き出し時の運動量(初速)、霧の自重および空気流等によって空気極11の実質的な全面に霧状の水が供給される。
【0021】
このようにして空気極11の表面に供給された水はそこで周囲の空気から潜熱を奪って蒸発する。これにより、電解質膜12の水分の蒸発が防止される。
また、空気極11へ供給された水は空気極11からも潜熱を奪うので、これを冷却する作用もある。特に、始動時に水を供給すると、異常反応により発生するかもしれない冷却器(図示せず)の定格を超えた熱を冷却し、燃料電池本体がダメージを受けることを予防できる。
【0022】
図中の符号50は電圧計であり、空気極11と燃料極13との間の電圧を計測する。
【0023】
次ぎに、図3及び以降の図面を参照にして、参考例の燃料電池装置1の動作を説明する。
制御装置70及びメモリ73は燃料電池装置1のコントロールボックス(図1に示されていない)に収納されている。メモリ73にはコンピュータからなる制御装置70の動作を規定するコントロールプログラム及び各種制御を実行するときのパラメータやルックアップテーブルが収納されている。
【0024】
まず、水素ガス供給系20の動作について説明する。
起動時には、水素排気弁25を閉に保持しておいて、爆発限界以下の所定の濃度で水素ガスが燃料極13に供給されように水素供給調圧弁23を調整する。
排気弁25を閉じた状態で燃料電池装置1を運転すると、空気極より透過するN2、O2あるいは生成水の影響で、燃料極13で消費される水素の分圧は反対に徐々に低下するため、これに伴って出力電圧も低下し、安定した電圧が得られなくなる。
【0025】
そこで、予め定めれた規則に基づいて弁25を解放して水素分圧の低下したガスを排気し、燃料極13の雰囲気ガスをリフレッシュする。
予め定めれた規則はメモリ73に保存されており、排気弁25の開閉及び調圧弁23の調整は、制御装置70が当該規則をメモり73から読み出して、実行する。
【0026】
この参考例では、電圧計50で出力電圧をモニタし、出力電圧が所定の閾値を超えて低下したら所定の時間(例えば1秒間)弁25を解放する。
あるいは、弁25を閉とした状態で燃料電池装置1を運転したときに出力電圧が低下し始める時間間隔を予め計測しておき、その時間間隔と実質的に同一又は若干短い周期で排気弁25を解放するように、排気弁25を間欠的に開閉制御する。
【0027】
次ぎに、空気供給系30の動作について説明する。
モータ38は通常一定の出力で回転し、ブロア37により外気が一定の圧力で空気マニホールド14へ供給される。一方、空気排気ガスの一部は空気排気調圧弁34の開度に応じて系外へ排出され、残部は循環路35を通って循環される。即ち、空気排気ガスには水素が含まれるのでこの水素を燃焼させることにより生成される水分が電解質膜12を湿潤状態を維持するのに適当な量となるよう、換言すれば燃料電池本体の水分バランスが最適となるように調圧弁34の開度が調節される。
【0028】
空気排気調圧弁34の開度の調節も予め定められた規則に基づき制御装置70により制御される。予め定められた規則はメモリ73に保存されている。
この参考例では、燃料電池本体10の水分バランスは主として後述する水供給系40により調整されるので、調圧弁34の開度は固定しておいても良い。
【0029】
水素排気弁25が開かれたとき、空気供給系30は図4に示すように動作する。先ず、ステップ1で燃料排気ガス中の水素ガス成分の濃度を水素濃度センサ27により検出する。次ぎにステップ3で燃料排気ガスの流量を流量計29により検出する。これらのステップ1及び3で得られた検出結果に基づいて最適な空気導入量を演算する(ステップ5)。即ち、水素ガス濃度が高かったり若しくは燃料排気ガスの流量が多く、結果として多量の水素ガスが空気に混合され得るときにはモータ38の出力を上げて空気の導入量を増やし、もって空気導入路31における空気の流量を速める。これにより空気と水素ガスとの予混合が促進される(ステップ7)。
【0030】
なお、ステップ5における演算はメモリ73に予め保存されている規則に基づき演算装置70が実行する。この規則の一例として水素ガス濃度及び燃料排気ガスの流量をパラメータとして空気導入量が規定される方程式がある。又はこれらパラメータのルックアップテーブルより空気導入量を求めることもできる。
【0031】
この参考例では燃料排気ガス中の水素ガス成分の濃度及び燃料排気ガスの流量に基づいて空気導入量を演算したが、どちらか一方の値のみを検出しその検出結果から空気導入量を演算しても良い。
【0032】
次ぎに、水供給系40の動作について説明する。
タンク42の水がポンプ46で圧送される。そして、噴射圧力調整弁48でその圧力が調整されてノズル41から噴霧される。これにより、水が液体の状態(霧の状態)で空気極11に供給されることとなる。
【0033】
水の供給量は予め定められた規則に基づき制御装置70により制御される。予め定められた規則はメモリ73に保存されている。
この参考例では、図5に示すとおり、まず空気極11−燃料極13間の出力電圧がモニタされる(ステップ11)。そして、出力電圧に基づき最適水噴射量が演算される(ステップ13)。この演算は所定の方程式を用いるか、若しくは所定のルックアップテーブルを準備しておいて(メモリ73に保存しておく)、これより求めることができる。通常は、出力電圧が所定の閾値電圧を超えて小さくなったとき、若しくは出力電圧の変動幅が所定の閾値を超えたときに、水供給系40はその作動を開始する。
【0034】
次ぎに、ステップ15において最適水噴射量に対応する最適水圧力を演算する。例えば、水噴射量と水圧力とは図6に示す関係があるので、この関係が方程式若しくはルックアップテーブルのかたちでメモり73に予め保存されている。
この参考例では、ポンプ46を一定のパワーで運転しておいて循環路49の調圧弁48の開度によりノズル41の水圧力を調節している。即ち、調圧弁48の開度が大きく(小さく)なればノズル41の水圧力は小さく(大きく)なる。
【0035】
従って、ステップ17では水圧センサ47によりノズル41にかかる水圧力を検出し、フィードバック制御によりその水圧力が所望の値(最適水圧力)となるように調圧弁48を調節する(ステップ19)。
【0036】
その他、所定の時間経過(例えば5〜10秒)ごとに、一定の水圧で水供給系40を稼働させても良い。
【0037】
(実施例)
この実施例の燃料電池装置101を図7に示す。この装置101では燃料排気ガス路24は空気導入路31に合流せず、そのまま装置101の系外へ排出されている。そして排出口103がラジエータファン39に対向している。このように構成された燃料電池装置101によれば、排出口103から排出された燃料排気ガスはラジエータファン39の発生する空気流に巻き込まれ、この空気流に沿って拡散する。従って、空気排気ガスが一カ所に滞留することがなく、もってその中に含まれる水素ガス成分の濃度が可及的に小さくなり、これが好ましくない反応を引き起こすことは殆どなくなる。
【0038】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の参考例の燃料電池装置の構成を示す模式図である。
【図2】同じく燃料電池本体の基本構成を示す断面図である。
【図3】同じく燃料電池装置の制御系を示す模式図である。
【図4】同じく空気供給系の動作を示すフローチャートである。
【図5】同じく水供給系の動作を示すフローチャートである。
【図6】同じく水噴射量と水圧力の関係を示すグラフ図である。
【図7】この発明の実施例の燃料電池装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1、101 燃料電池装置
10 燃料電池本体
11 空気極
12 電解質膜
13 燃料極
20 水素供給系
25 水素排気ガス路
30 空気供給系
35 空気排気ガス循環路
36、103 排気口
39 ラジエータファン
40 水供給系

Claims (1)

  1. 燃料電池本体の燃料極から直接排気される燃料排気ガスを、排気口から排気すると同時にファンにより機械的に発生された空気流に巻き込ませる、ことを特徴とする燃料電池装置の排気方法。
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