JP2003059498A - 燃料電池 - Google Patents

燃料電池

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JP2003059498A
JP2003059498A JP2001245103A JP2001245103A JP2003059498A JP 2003059498 A JP2003059498 A JP 2003059498A JP 2001245103 A JP2001245103 A JP 2001245103A JP 2001245103 A JP2001245103 A JP 2001245103A JP 2003059498 A JP2003059498 A JP 2003059498A
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JP2001245103A
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Shigenobu Tsutazumi
重伸 傳住
Chikayuki Takada
慎之 高田
Taizo Yamamoto
泰三 山本
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Equos Research Co Ltd
Original Assignee
Equos Research Co Ltd
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 燃料電池において生成水調整層(撥水層)の
表面に水膜が形成されることを防止し、燃料電池の出力
を安定させる。 【解決手段】 燃料電池の空気極13において、生成水
調整層(撥水層)17と反応層15との間に中間層16
を設ける。この中間層は撥水性材料と親水性材料とを有
し、生成水調整層側から反応層にむけて撥水性材料の濃
度が小さくなるよう該撥水性材料濃度に勾配が設けられ
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は燃料電池に関し、
詳しくは、空気極の改良に関する。特に高分子固体電解
質膜を有するいわゆるPEM型の燃料電池として好適で
ある。
【0002】
【従来の技術】燃料電池は、燃料極(アノード、水素を
燃料極とする場合は水素極とも言う)と空気極(カソー
ド、酸素が反応ガスであるので酸素極とも言う。また酸
化極ともいう)との間に電解質が挟持された構成であ
る。ところで、上記電解質は、プロトンを透過させるた
めに水分を含んでいる必要がある。そのため、特開平9
−245800号公報においては、図1に示すように、
反応層2とガス拡散層3との間に撥水層5(生成水調整
層)が設けられている。この撥水層5により、電池反応
により生じた生成水の一部が撥水されて反応層2側(電
解質側)に押戻され、電解質膜の乾燥が防止される。生
成水の一部は撥水層5を透過してガス拡散層3に吸収さ
れ、空気室へと蒸発する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記構成の燃料電池に
よれば、特に本出願人が提案するいわゆる水直噴システ
ム(特開平11−242962号公報参照)と組合せる
ことにより、電解質の乾燥を防ぎその湿潤状態を常に維
持できる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、
燃料電池を厳しい環境(高負荷等)で運転したとき、撥
水層5の表面において水分がフラッディングを起こす惧
れのあることがわかった。即ち、撥水層5と反応層2と
の界面に水膜が生じ、酸素ガスが充分に反応層へ供給さ
れなくなり、燃料電池の出力が低下ないし不安定にな
る。このフラッディングについては特開平5−2510
86号公報を参照されたい。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は撥水層、即ち
生成水調整層の表面においてフラッディングが発生する
ことを確実に防止できる燃料電池の提供を目的とする。
この発明の燃料電池は上記目的を達成するものであり、
その構成は次のとおりである。固体高分子型電解質膜
と、該電解質膜を挟持するように配設された燃料極及び
空気極とを備え、前記空気極は前記電解質膜側の反応層
と空気室側のガス拡散層とを有し、該ガス拡散層におい
て前記反応層側の表面に生成水調整層が備えられる燃料
電池において、該生成水調整層と前記反応層との間に中
間層が備えられ、該中間層は撥水性材料と親水性材料と
を有し、前記生成水調整層側から前記反応層にむけて前
記撥水性材料の濃度が小さくなるよう該撥水性材料濃度
に勾配が設けられている、ことを特徴とする燃料電池。
【0005】このように構成された燃料電池によれば、
中間層において撥水材料の濃度分布に傾斜が設けられて
いる。これにより、中間層において反応層側から撥水性
材料が次第に増大し生成水調整層において最大になる。
その結果、生成水が中間層及び生成水調整層にかけて順
次はじかれることとなり、界面をまたぐ水の移動がスム
ーズになりその滞留が防止できるためと考えられる。即
ち、フラッディングの発生が未然にかつ確実に予防され
る。他方、従来例においては、撥水性材料からなる生成
水調整層に接して全体が親水性材料からなる反応層が設
けられていた。この場合、生成水調整層と反応層との間
に際立った親水性変化が生じるのでその界面でフラッデ
ィングの生じる可能性がある。反応層を浸透してくる生
成水と生成水調整層ではじき返された生成水とが当該界
面でぶつかりあい滞留するためと考えられる。
【0006】上記において、電解質膜はフッ素系樹脂に
より形成されたプロトン導電性のイオン交換樹脂からな
り、例えばナフィオン膜(デュポン社製)を用いること
ができる。
【0007】空気極は反応層、中間層、生成水調整層
(撥水層)及びガス拡散層を順次設けた構成である。反
応層は親水性材料に触媒を分散させた構造であり、触媒
としては周知の白金又は白金と他の金属からなる合金が
用いられる。この反応層は、この触媒を分散させたナフ
ィオンのペーストを電解質膜の表面若しくは生成水調整
層に積層して得られる。後述する実施例では、電解質膜
と反応層とが一体となったPRIMEA(GoreTe
x社)を用いている。ガス拡散層はカーボン基材(カー
ボンクロス、カーボンペーパー)からなり親水処理が施
されている。ガス拡散層において空気室側(生成水調整
層と反対側)に撥水層を設けることが好ましい。空気室
に水が供給される場合、その表面に水膜が形成され、空
気供給が阻害されることを防止するためである。撥水層
は撥水カーボン粉末(C+PTFE)を塗布することに
より得られる。生成水調整層も上記撥水層と同様に撥水
性カーボン粉末をガス拡散層に塗布することにより得ら
れる。この生成水調整層は電池反応により生成した生成
水の一部を反応層側へはじき返して電解質膜の乾燥を防
ぎ、余剰の生成水はガス拡散層側へ透過させて空気室側
へ放出させる。上記の機能を達成できるように撥水性カ
ーボンの材質及びその膜厚が適宜選択される。
【0008】中間層は撥水性材料と親水性材料とを有す
る。その結果、生成水調整層側から反応層にむけて撥水
性材料の濃度が小さくなるよう該撥水性材料濃度に勾配
が生じることとなる。撥水性材料としては撥水処理され
たカーボン基材を用いることができ、親水性材料として
はナフィオンを用いることができる。また、親水性材料
として親水処理されたカーボン基材を用いることがで
き、撥水性材料として撥水性カーボンを用いることがで
きる。この撥水性カーボン粉末は生成水調整層を形成す
る撥水性カーボン粉末と同一又は同種のものとすること
が好ましい。
【0009】以下、当該撥水性材料の濃度傾斜パターン
について図面を参照しながら説明する。図2(A)にお
いて、参照番号11は電解質膜、12は燃料極、13は
空気極である。空気極13は、電解質膜11側から反応
層15、中間層16、生成水調整層17及びガス拡散層
18が順次積層された構成である。なお、燃料極12は
空気極13から中間層を省略した構造である。図2
(B)は空気極13における撥水性材料の濃度分布を示
している。この例では、中間層16の撥水性材料の濃度
を生成水調整層17のそれの約半分として生成水調整層
17側から反応層15側へ撥水性材料濃度に傾斜を設け
ている。反応層15及びガス拡散層18は親水性材料の
カーボン基材のみからなる。
【0010】図3は他の濃度傾斜パターンを示してい
る。図3において図2と同一の要素には同一の符号を付
してその説明を省略する(図4、5においても同じ)。
図3の中間層26はその撥水性材料濃度が生成水調整層
17から反応層15側にむけて漸減している。これによ
り、生成水調整層17表面における撥水−親水の環境変
化がより緩和され、フラッディングの発生がより確実に
防止できる。図4の例では、中間層36のみならず生成
水調整層37にも撥水性材料濃度傾斜をもたせた。
【0011】図5の例では、中間層として2つの層(第
1中間層44、第2中間層45)を用いて、生成水調整
層17側からその撥水性材料濃度を漸次低減させてい
る。図5の例では2つの中間層を用いているが、3つ以
上の中間層を用いることも可能である。図3及び図4の
例のように各層の撥水性材料濃度に傾斜を持たせること
もできる。
【0012】このような中間層は生成水調整層と協働し
て生成水の撥水及び透過を調整し、燃料電池の湿潤状態
を維持しかつ生成水調整層の表面に水のフラッディング
が生じることを効率良く防止できるものであればよく、
その膜厚や中間層における親水性材料の占める割合は任
意に選択できるものである。本発明者らの検討によれ
ば、中間層における親水性材料の占める割合は0.1w
t%〜30wt%とすることが好ましく、更に好ましく
は1wt%〜10wt%である。また、中間層の厚さは
1μm〜100μmとすることが好ましく、更に好まし
くは10μm〜50μmである。
【0013】
【実施例】次にこの発明の実施例について説明する。図
6(A)に実施例の燃料電池を示した。実施例の燃料電
池50は転写電極51の両側にガス拡散層55とガス拡
散層60を積層した構成である。転写電極51にはPR
IMEA(GoreTex社)を用いた。この転写電極
51は電解質膜52の両側に反応層53、54を積層し
た構成である。反応層53、54は白金系触媒を分散さ
せたものをホットプレスなどの方法により電解質膜52
に積層して得られる。
【0014】ガス拡散層55は親水性カーボンクロス
(P7、日本カーボン社)の両面に形成された撥水層
(生成水調整層)56及び撥水層57並びに中間層58
を備えてなる。撥水層56、57はカーボンクロスの両
面に撥水性カーボン粉末懸濁溶液を塗布し、分散剤を除
去して得られる。この実施例では撥水層56及び撥水層
57は同一の条件で形成されたものとした。なお、この
状態のもの(即ち中間層58を形成する前のもの)をガ
ス拡散層60及び比較例(図6B参照)のガス拡散層7
5として用いる。
【0015】中間層58は次のように調製した。Ald
rich社製の5%Nafion溶液を50倍に希釈し
た。希釈液には水20%、イソプロパノール80%の混
合溶液を用いた。このようにして得られた希釈液をスク
リーン印刷により撥水層56の表面に塗布し、130℃
で熱風乾燥した。Nafion塗布量(乾燥重量)は
0.014mg/cmであった。Nafion溶液は
撥水層56にしみ込むため、撥水層56の表面に親水性
が付与され、これが中間層58となる。そのとき、Na
fion濃度は表面で最大であり、深くなるにしたがっ
てその濃度は小さくなる。このことを撥水性材料の濃度
からみれば、Nafion溶液がしみ込んでいない撥水
層56から表面側にむけてその濃度が小さくなるように
濃度傾斜(濃度勾配)が形成されたこととなる。このと
き、撥水性材料の濃度変化は、図3に示されるように、
連続的なものと考えられる。換言すれば、中間層58の
部分で親水性と撥水性の交絡構造が形成されている。
【0016】このようにして得られたガス拡散層55及
び60とを転写電極51へ貼り合わせ、ホットプレスに
より接合し、実施例の燃料電池50とする。比較例の燃
料電池70は、実施例の燃料電池50から中間層58を
省略したものであり、他の構成は実施例のそれと同一で
ある。
【0017】実施例の燃料電池50及び比較例の燃料電
池70の特性を次に説明する。なお、各燃料電池とも4
5mm×45mmの単セル状態で特性試験を行った。 (通常条件試験)セルの温度を50℃とし、水素ガス
(流量:0.14L/分)及び空気(3.3L/分(s
t=20))をともに50℃加湿した。この状態で両電
極にポテンシオガルバノスタットをつなぎ、I−V特性
を測定した。当該通常条件においては、空気も充分加湿
されているのでセルは適正な湿潤状態に維持されてい
る。その結果を図7に示す。図7の結果からわかるよう
に、電流密度が大きくなるにつれ実施例の燃料電池に比
べて比較例の燃料電池では電圧降下が激しくなる。特に
電流密度が0.7A/cmの付近から両者の差が明ら
かになる。電流密度が大きくなると生成水の生成量も増
大する。従って、フラッディングが生じ易くなるところ
であるが、実施例の燃料電池では中間層58の存在によ
り生成水の排水がスムーズになり、フラッディングが確
実に防止されたためであると考えられる。
【0018】(乾燥条件試験)この試験条件においては
既述の通常条件から空気に対する加湿を省略した。その
結果、セルから空気中への水分放出が促進されてセルは
乾燥状態になり易い。結果を図8に示す。低電流密度領
域では実施例よりも比較例の燃料電池の出力電圧が高
く、0.5A/cmを境に実施例の燃料電池の出力電
圧が高くなっている。これは、生成水の発生量の少ない
低電流密度領域では中間層58を有するため排水効率の
高くなった実施例の燃料電池の乾燥が比較例の燃料電池
よりも進行し、その結果実施例の電圧降下が比較例のそ
れより大きくなっていると考えられる。他方、高電流密
度領域では生成水が充分に生成されるので中間層58に
よる排水特性(フラッディング防止機能)が作用して実
施例の電圧降下が比較例のそれよりも抑制されていると
考えられる。
【0019】(フラッディング条件試験)この試験条件
においては既述の通常条件から水素及び空気に対する加
湿温度をそれぞれ90℃及び70℃にまであげ、燃料電
池に対する過剰加湿状態をつくった。即ち、燃料電池の
運転温度が50℃であるため、それより高い温度で加湿
された水素及び空気が燃料電池に達すると冷却されて各
電極の雰囲気は水分過剰となる。その結果、燃料電池に
おいてフラッディングが発生し易い状況となる。結果を
図9に示す。なお、図9には既述の通常条件における試
験結果も併記されている。図9において、実施例の燃料
電池においては、フラッディング条件の結果と通常条件
の結果が全電流密度においてほぼ一致している。これ
は、中間層58によりフラッディングが効率良く防止さ
れているためである。他方比較例においては電流密度が
大きくなるにつれ、電圧降下も大きくなっている。通常
条件においての比較例の結果と比較しても、電圧降下の
度合いが大きい。これは、生成水が滞留しフラッディン
グがより強く影響しているためと考えられる。
【0020】次ぎに、この発明の燃料電池を用いた燃料
電池装置の一例について説明をする。図10は実施例の
燃料電池装置100の概略構成を示す。図11は燃料電
池本体110の基本ユニットを示す。図10に示すよう
に、この装置100は燃料電池本体110、燃料ガスと
しての水素ガス供給系120、空気供給系130、水供
給系140から概略構成される。
【0021】燃料電池本体110の単位セルユニットは
空気極111と燃料極113とで固体高分子電解質膜1
12を挟持した構成であり、図6に示した構成のものを
使用する。実際の装置ではこの単位ユニットが複数枚積
層されている(燃料電池スタック)。空気極111の上
方及び下方にはそれぞれ空気を吸入、排気するための空
気マニホールド114、115が形成されている。上方
のマニホールド114にはノズル141を取り付けるた
めの取付孔が形成されている。ノズル141から噴出さ
れる水の噴出角度には制限があり、かつ水を霧状にして
これを空気極111の全面に行き渡らせるには、ノズル
と空気極111との間に所定の間隔が必要になる。従っ
て、このマニホールド114は比較的背の高いものとな
る。一方、下側の空気マニホールド115は滴下した水
を効率よく排出できるものとする。なお、ノズルはマニ
ホールド114の側面に設けることもできる。かかるノ
ズルより噴出される水はマニホールド114内の全域に
行き渡り、よって空気極111の全面に行き渡ることと
なる。ノズルをマニホールド114の側面に設けること
により、低いマニホールドが採用できる。よって燃料電
池本体の小型化を図ることができる。
【0022】ノズルは空気極表面へ向けて直接水を噴射
することが好ましい。これにより空気供給量の如何に拘
わらず、所望の量の水を空気極表面に供給することが出
来る。即ち、空気の供給量と水の供給量とを独立して制
御可能となる(独立供給タイプ)。かかる独立供給タイ
プによれば、起動時など大きな空気供給量(風量)の状
態においても所望量の水を確実に空気極表面に供給でき
る。よって、起動時間の短縮が図れる。空気流中に水滴
を放出して、これを空気流にのせて空気極へ供給するタ
イプでは空気供給量と水供給量とを独立して制御できな
い(非独立供給タイプ)。空気供給量の変更と水供給量
の変更とは常に同時に要求されるわけではなく、独立し
てそれらの変更が必要となる場合がある。例えば、空気
の供給量のみの変更が必要な場合に水の供給量までもが
変更されてしまうと、燃料電池本体の制御のレスポンス
が遅くなり、ひいては燃料電池装置の出力低下を招くお
それがある。これに対し、本実施例で採用する独立供給
タイプでは、必要なタイミングで必要な量の水及び/又
は空気を供給できるので、燃料電池本体を効率良く制御
できる。また、水と空気の供給を独立して制御すること
により、無駄な空気及び無駄な水の供給を避けられる。
この点においても、燃料電池本体の稼動が効率的にな
る。更には、無駄な水や無駄な空気の供給を避けること
により、凝縮器の容量も小さくすることが出来る。
【0023】図11に示すように、上記空気極111−
固体高分子電解質膜112−燃料極113の単位セルユ
ニットは薄い膜状であり、一対のカーボン製コネクタ板
116、117により挟持されている。空気極111に
対向するコネクタ板116の面には空気を流通させるた
めの溝118が複数条形成されている。各溝118は上
下方向に形成されてマニホールド114、115を連通
している。その結果、ノズル141より供給される霧状
の水は当該溝118に沿って空気極111の下側部分ま
で達する。この溝118の周面及び空気極111の表出
面により空気室が構成される。空気室の図示上側開口部
が送風の入口(上流側開口部)であり、図示下側の開口
部が送風の出口(下流側開口部)である。この出口の排
気温度を検出するように温度計を設けることが好まし
い。実施例では水などの液体を上流側開口部に対して直
接噴出させて供給する構成であるが、水などの液体は下
流側開口部から供給することも可能である。更には、コ
ネクタ板に図示左右方向の貫通孔を形成し、ここから空
気室へ水などの液体を供給することも出来る。このよう
にして供給された水は空気室を構成する面(溝118の
周面及び空気極111の表出面:これらは比較的高温に
なり易い)において専ら蒸発する。同様に、燃料極11
3に対向するコネクタ板117の面には水素ガスを流通
させるための溝119が形成されている。実施例ではこ
の溝119を水平方向に複数条形成した。この溝119
の周面とコネクタ板117の表出面とで燃料室が形成さ
れる。この燃料室に対して、既述の空気室と同様な方法
で水を供給することも出来る。
【0024】水素ガス供給系120の水素供給装置12
1として、この実施例では水素吸蔵合金からなる水素ボ
ンベを利用した。その他、液体水素の水素ボンベ、水/
メタノール混合液等の改質原料を改質器にて改質反応さ
せて水素リッチな改質ガスを生成させ、この改質ガスを
タンクに貯留しておいてこれを水素源とすることもでき
る。燃料電池装置100を室内で固定して使用する場合
には、水素配管を水素源とすることができる。水素供給
装置121と燃料極113とは水素供給調圧弁123を
介して水素ガス供給路122により接続されている。調
圧弁123は燃料極113に供給する水素ガスの流量を
調整するものであり、汎用的な構成のものを利用でき
る。
【0025】燃料極113からの排気ガスは外気へ排出
される。なお、この排気ガスを空気マニホールドへ供給
し、ここで空気と混合することもできる。
【0026】空気極111にはファン138によって大
気中より空気が供給される。図の符号131は空気の供
給路であり空気極111のマニホールド114に連結さ
れている。下側のマニホールド115には空気極111
を通過した空気を循環若しくは排気するための空気路1
32が連結され、水を分離する凝縮器133を介して排
気ガスは排気路136へ送られる。空気排気調圧弁13
4の開度により排気路136から排気される量が調節さ
れる。また、排気調圧弁134を省略し、排気ガスをそ
のまま大気へ排出する構成とすることもできる。かかる
空気供給系130においては、空気圧縮機は特に備えら
れておらず、系全体に渡って実質的に大気圧が維持され
る。符号139は排出された空気の温度を検出するため
の温度計である。
【0027】凝縮器133で分離された水はタンク14
2へ送られる。タンク142には水位センサ143が付
設される。この水位センサ143により、タンク142
の水位が所定の値以下となると、アラーム144が点滅
してオペレータに水不足を知らせる。それとともに、凝
縮器133の能力を変化させて水の回収量を調整するこ
とが好ましい。即ち、水が不足しているときは凝縮器1
33のファンの回転数を高めて水をより多く回収し、他
方水が過剰になると凝縮器133のファンの回転数を低
下若しくは停止して水の回収量を少なくする。
【0028】実施例の水供給系140では、タンク14
2から水供給路145がポンプ146、水圧センサ14
7及び調圧弁148を介して、ノズル141まで連結さ
れている。調圧弁148により所望の水圧に調節され、
もって水量の調節された水はノズル141から吹き出し
て空気マニホールド114内では霧状になる。そして、
吹き出し時の運動量(初速)、霧の自重および空気流等
によって空気極111の実質的な全面に霧状の水が供給
される。水量及び水の供給は、調圧弁とノズルとの組み
合わせに限定されるものではない。
【0029】このようにして空気極111の表面に供給
された水はそこで周囲の空気、電極表面、さらにはセパ
レータ表面から潜熱を奪って蒸発する。これにより、電
解質膜112の水分の蒸発が防止される。また、空気極
111へ供給された水は空気極111からも潜熱を奪う
ので、これを冷却する作用もある。特に、始動時に水を
供給したとき、水素と空気の燃焼により膜、触媒がダメ
ージを受けることを予防できる。
【0030】図中の符号150は電流計であり、空気極
111と燃料極113との間の電流を計測する。燃料電
池装置を車輌用に使用するときには両極間の電流と電圧
を共に測定し、もって燃料電池本体に掛かっている負荷
(燃料電池本体が現在出力してるパワー)を得ることが
好ましい。車輌用の場合には、アクセルの開度から燃料
電池本体に要求されるパワーを予測してその値を用いる
こともできる。
【0031】次ぎに、実施例の燃料電池装置100の動
作を説明する。図12は燃料電池装置100の動作を制
御するときに関与する要素を示したブロック図である。
図12において、制御装置170及びメモリ173は燃
料電池装置100のコントロールボックスに収納されて
いる。メモリ173にはコンピュータからなる制御装置
170の動作を規定するコントロールプログラム及び各
種制御を実行するときのパラメータやルックアップテー
ブルが収納されている。
【0032】まず、水素ガス供給系120の動作につい
て説明する。起動時には、水素排気弁125を閉に保持
しておいて、爆発限界以下の所定の濃度で水素ガスが燃
料極113に供給されるように水素供給調圧弁123を
調整する。排気弁125を閉じた状態で燃料電池装置1
00を運転すると、空気極より透過するN、Oある
いは生成水の影響で燃料極113で消費される水素の分
圧が徐々に低下するためこれに伴って出力電圧も低下
し、安定した電圧が得られなくなる。
【0033】そこで、予め定められた規則に基づいて弁
125を解放して水素分圧の低下したガスを排気し、燃
料極113の雰囲気ガスをリフレッシュする。予め定め
られた規則はメモリ173に保存されており、弁125
の開閉及び調圧弁123の調整は制御装置170が当該
規則をメモり173から読み出して実行する。
【0034】この実施例では、電流計150で出力電流
をモニタし、出力電流が所定の閾値を超えて低下したら
所定の時間(例えば1秒間)弁125を解放する。ある
いは、弁125を閉とした状態で燃料電池装置100を
運転したときに出力電圧が低下し始める時間間隔を予め
計測しておき、その時間間隔と実質的に同一又は若干短
い周期で弁125を解放するように、弁125を間欠的
に開閉制御する。
【0035】次ぎに、空気供給系130の動作について
説明する。燃料電池本体110から排出された直後の排
気空気の温度を温度計139により検出する。その温度
が80℃を超えていると、燃料電池本体110が焼きつ
くおそれがあるので、ファン138の回転数を増して風
量を増大し、もって熱発生源である空気極111の温度
を下げる。このとき、当然ながら空気極111には80
℃を超えた燃料電池本体110を冷却するのに必要な量
の水が供給されているものとする。燃料電池本体110
からの排出温度が80℃以下の場合は、定速運転とす
る。
【0036】次ぎに、水供給系140の動作について説
明する。タンク142の水がポンプ146で圧送され
る。そして、噴射圧力調整弁148でその圧力が調整さ
れてノズル141から噴霧される。これにより、水が液
体の状態(霧の状態)で空気極111に供給されること
となる。勿論、調圧弁148を省略して、ポンプ146
に印加される電圧を調整しポンプ146の吐出圧力自体
を制御し、もっと所望の水量を得ることもできる。
【0037】水の供給量は燃料電池本体の温度に応じて
予め定められている。即ち、燃料電池本体をその温度に
維持するために必要な最小量の水が供給される。ポンプ
146による動力損をできる限り少なくするためであ
る。なお、燃料電池本体が所定の温度(例えば30℃)
以下になれば、水の供給を止めることもできる。また、
他の所定温度(例えば50℃)以下30℃を越えると
き、水の供給を間欠的にすることもできる。燃料電池本
体110の温度とそのときに供給すべき水量との関係は
メモリ173に保存されている。その他、所定の時間経
過(例えば5〜10秒)ごとに、一定の水圧で水供給系
140を稼働させても良い。
【0038】次ぎに、実施例の燃料電池装置100の起
動時の動作について説明する。スイッチ(図示せず)が
オンとなると、ポンプ146をオンとする。そして、燃
料電池本体110の運転状況(運転温度)に無関係に、
所定の水噴射量となるように調圧弁148が調節されて
ノズル141より水が噴射される。異常反応から燃料電
池本体110を守るために空気極111へ噴射される水
量は最大量とする。
【0039】その後、空気供給系130をオンにする。
このときファン138の風量も最大として燃料電池本体
110を冷却し、異常反応の防止を図る。引き続いて水
素供給系120をオンにする。空気極111と燃料極1
15との間に所望の出力が確認されたら、電力を外部に
出力する。
【0040】上記において、空気供給系130の稼動は
水供給系140の稼動前であっても良い。また、水素供
給系120の稼動の後に空気供給系130を稼動させて
も良い。ただし、水素供給系120を稼動させる前に水
供給系140を稼動させる必要がある。空気供給系13
0の稼動の有無にかかわらず燃料電池本体110には空
気が存在しているので、電解質膜112が乾燥した状態
で水素を供給すると、異常燃焼の発生する可能性があ
る。つまり、この異常熱が発生したとき、燃料電池本体
110がダメージを被らないように、水素を供給する前
に水を噴射して予め空気極111を濡らしておく。こう
することで、異常熱を水の蒸発熱に換え、更には電解質
膜112の湿潤を促進して、燃料電池本体110のダメ
ージを未然に防止する。
【0041】この発明は、上記発明の実施の形態及び実
施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の
範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲
で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は空気極における撥水層(生成水調整層)
の作用を示す概念図である。
【図2】図2Aはこの発明の燃料電池の空気極の実施形
態を示す断面図であり、図2Bは撥水性材料濃度のプロ
ファイルを示す。
【図3】図3Aはこの発明の燃料電池の空気極の他の実
施形態を示す断面図であり、図3Bは撥水性材料濃度の
プロファイルを示す。
【図4】図4Aはこの発明の燃料電池の空気極の他の実
施形態を示す断面図であり、図4Bは撥水性材料濃度の
プロファイルを示す。
【図5】図5Aはこの発明の燃料電池の空気極の他の実
施形態を示す断面図であり、図5Bは撥水性材料濃度の
プロファイルを示す。
【図6】図6Aはこの発明の実施例の燃料電池の構成を
示し、図6Bは同じく比較例を示す。
【図7】図7は実施例の燃料電池と比較例の燃料電池の
通常条件での動作特性を示すグラフである。
【図8】図8は実施例の燃料電池と比較例の燃料電池の
乾燥条件での動作特性を示すグラフである。
【図9】図9は実施例の燃料電池と比較例の燃料電池の
フラッディング条件での動作特性を示すグラフである。
【図10】図10はこの発明の実施例の燃料電池装置の
構成を示す模式図である。
【図11】図11は同じく燃料電池本体の基本構成を示
す断面図である。
【図12】図12は同じく燃料電池装置の制御系を示す
模式図である。
【符号の説明】
2、15、53 反応層 3、18、55、60、75 ガス拡散層 5、17、37、56 生成水調整層(撥水層) 11、52、112 電解質膜 12、113 燃料極 13、23、33、43、111 空気極 50、70 燃料電池 110 燃料電池本体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 泰三 東京都千代田区外神田2丁目19番12号 株 式会社エクォス・リサーチ内 Fターム(参考) 5H018 AA06 AS03 CC06 DD06 DD10 EE05 EE18 HH00 HH03 HH05 5H026 AA06 CX03 CX04 EE05 EE19 HH03 HH05

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固体高分子型電解質膜と、該電解質膜を
    挟持するように配設された燃料極及び空気極とを備え、
    前記空気極は前記電解質膜側から反応層とガス拡散層と
    を有し、該ガス拡散層において前記反応層側の表面に撥
    水性材料を含んだ生成水調整層が備えられる燃料電池に
    おいて、 該生成水調整層と前記反応層との間に中間層が備えら
    れ、該中間層は撥水性材料と親水性材料とを有し、前記
    生成水調整層側から前記反応層にむけて前記撥水性材料
    の濃度が小さくなるよう該撥水性材料濃度に勾配が設け
    られている、ことを特徴とする燃料電池。
  2. 【請求項2】 前記生成水調整層は撥水性カーボンから
    なる、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  3. 【請求項3】 前記中間層は撥水性のカーボン基材に親
    水性材料が担持されたものである、ことを特徴とする請
    求項1又は2に記載の燃料電池。
  4. 【請求項4】 前記中間層に占める前記親水性材料の割
    合が0.1wt%〜30wt%である、ことを特徴とす
    る請求項1〜3の何れかに記載の燃料電池。
  5. 【請求項5】 前記中間層に占める前記親水性材料の割
    合が1wt%〜10wt%である、ことを特徴とする請
    求項1〜3の何れかに記載の燃料電池。
  6. 【請求項6】 前記中間層の厚さが1μm〜100μm
    である、ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載
    の燃料電池。
  7. 【請求項7】 前記中間層の厚さが10μm〜50μm
    である、ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載
    の燃料電池。
  8. 【請求項8】 固体高分子電解質膜側から反応層とガス
    拡散層とを有し、該ガス拡散層において前記反応層側の
    表面に撥水性材料を含んだ生成水調整層が備えられる燃
    料電池用空気極において、 該生成水調整層と前記反応層との間に中間層が備えら
    れ、該中間層は撥水性材料と親水性材料とを有し、前記
    生成水調整層側から前記反応層にむけて前記撥水性材料
    の濃度が小さくなるよう該撥水性材料濃度に勾配が設け
    られている、ことを特徴とする燃料電池用空気極。
  9. 【請求項9】 前記生成水調整層は撥水性カーボンから
    なる、ことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用の
    空気極。
  10. 【請求項10】 前記中間層は撥水性のカーボン基材に
    親水性材料が担持されたものである、ことを特徴とする
    請求項8又は9に記載の燃料電池用空気極。
  11. 【請求項11】 前記中間層に占める前記親水性材料の
    割合が0.1wt%〜30wt%である、ことを特徴と
    する請求項8〜10の何れかに記載の燃料電池用空気
    極。
  12. 【請求項12】 前記中間層に占める前記親水性材料の
    割合が1wt%〜10wt%である、ことを特徴とする
    請求項8〜10の何れかに記載の燃料電池用空気極。
  13. 【請求項13】 前記中間層の厚さが1μm〜100μ
    mである、ことを特徴とする請求項8〜12の何れかに
    記載の燃料電池用空気極。
  14. 【請求項14】 前記中間層の厚さが10μm〜50μ
    mである、ことを特徴とする請求項8〜12の何れかに
    記載の燃料電池用空気極。
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