以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
コンバインの油圧作用として、走行系を作用させる走行系回路Tと、作業系を作用させる作業系回路Wとによって構成される油圧制御回路Hにおいて、作業系回路Wの刈取昇降,オーガ昇降,車体水平等を作動させる各油圧シリンダ5の作動速度を、比例流量制御弁3によって制御される制御流aにより制御可能に作用させると共に、刈取昇降用の刈取昇降電磁弁4aとオーガ昇降用のオーガ昇降電磁弁4bとにシート型弁sを採用し、圧油のリークを阻止して昇降時における自然降下又は上昇を抑止させ、刈取昇降電磁弁4aについては操作席6のステップ7下面側に配設してオペレータの操作範囲内に位置させる。
図1はコンバインの全体構成を示すもので、車台8の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ10を張設した走行装置11を配設すると共に、該車台8上に、フィードチェン12に挟持して搬送供給される穀稈を脱穀処理した穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク13と、このタンク13に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ14を備えた脱穀装置15を載置配設し、この脱穀装置15の後端部に排藁処理装置16を装架構成させる。
該脱穀装置15の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体17と、分草した穀稈を引き起こす引起部18と、引き起こした穀稈を刈り取る刈刃部19と、刈り取った穀稈を掻き込むと共に搬送途上において扱深さを調節して該フィードチェン12へ引き継ぎを行う供給調節搬送部20等を有する刈取装置21を、作業部油圧シリンダ5としての刈取昇降シリンダ5aにより土壌面に対して昇降自在なるよう該車台8の前端部へ懸架配設して構成させる。
該刈取装置21の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置22と、操作のための操作席6を設け、この操作席6の下方側にエンジン23を搭載し、後方側に前記グレンタンク13を配置すると共に、該操作装置22と操作席6を覆うキャビン24を設け、これら走行装置11,脱穀装置15,刈取装置21,操作装置22,エンジン23,キャビン24等によってコンバインの車体2を構成させる。
該操作席6において、オペレータによる前後操作により車体2の前後進の切替え及び主変速伝動を行う主変速レバー25と、左右側への傾倒操作により直進時の左右操向作用及び各種旋回モードによる旋回作用を行わせるパワステレバー26とを各々操作装置22の一側に配設すると共に、このパワステレバー26には、図2に示す如く、該レバー26の左右側への傾倒操作量を検出するポテンショメータ等によるポジションセンサ26aを設けて構成させる。
該走行装置11は、車台8の前部側に走行用ミッションケース28を装架しており、このミッションケース28の伝動機構として、図3,図4に示す如く、該エンジン23から油圧式無段変速装置の可変ポンプ29に軸止した入力プーリ30を駆動可能に伝動ベルトを張設すると共に、この可変ポンプ29によって一体的に駆動する油圧モータ31から第1軸としての入力軸32に入力連動し、この入力軸32に入力ギヤ33を軸回転して構成させる。
該入力ギヤ33と、第2軸としての変速駆動軸34に軸回転する変速伝動ギヤ35とを噛合連動させると共に、この変速駆動軸34に軸遊転する高速ギヤ36と低速ギヤ37に対し常時噛合連動する高速駆動ギヤ38と低速駆動ギヤ39を第3軸としての変速伝動軸40に軸回転して構成させる。
同じく、該変速駆動軸34にスプライン等により軸回転摺動する中速ギヤ41を、図示しないシフタの切り替えにより該変速伝動軸40に軸回転する中速駆動ギヤ42に噛合連動させると共に、更に左右側に位置する低速駆動ギヤ39と高速駆動ギヤ38とに各々クラッチ爪を噛合接続させることにより、高速,中速,低速に変速する副変速部SDを構成させる。
該変速伝動軸40の中速駆動ギヤ42と、第4軸としての操向クラッチ軸43のセンターに軸回転する操向センタギヤ44とを噛合連動させ、この操向センタギヤ44の両側に各々左右の操向ギヤ45を軸遊転し、前記パワステレバー26の傾倒操作時に、油圧作用の摩擦多板と圧縮バネとによる左右の操向クラッチ46を接続状態と非接続状態とに制御を行い、車体2の直進時には操向クラッチ46を接続状態とし操向ギヤ45を軸回転させる構成とする。
該操向クラッチ軸43の操向センタギヤ44と、第5軸としての差動クラッチ軸47に軸回転する差動センタギヤ48とを噛合連動させると共に、この差動センタギヤ48の両側に、左右対称の遊星ギヤ機構PGを配置して構成させる。49は、該差動クラッチ軸47の一端部に配置した駐車ブレーキを示す。
該遊星ギヤ機構PGは、図5に示す如く(左右対称であり片側についてのみ説明する)、該操向クラッチ軸43の操向ギヤ45と差動クラッチ軸47に軸遊転する短円筒形状のキャリア50の外周ギヤ50aとを噛合連動させると共に、キャリア50の内周面側に、外径の異なるギヤ51a及びギヤ51bからなる2連遊星ギヤ51と別の遊星ギヤ52とを、キャリア50に固定した支持軸51cと支持軸52aとによって各3個宛交互に軸遊転配置して構成させる。
該差動クラッチ軸47の両端部に左右のサンギヤ53を各々軸回転配置し、このサンギヤ53と該各2連遊星ギヤ51のギヤ51aとを各々噛合連動させ、各2連遊星ギヤ51のギヤ51bと各遊星ギヤ52とを各々噛合連動させると共に、各遊星ギヤ52と差動クラッチ軸47に軸遊転する二連出力ギヤ54の出力小径ギヤ54aとを噛合連動して構成させる。
該キャリア50の一端部に、油圧作用の摩擦多板による走行ブレーキ55を制動状態と非制動状態とに制御可能に接続させると共に、該二連出力ギヤ54の出力大径ギヤ54bの左右側と、第6軸としての走行中間軸56に軸遊転する左右の二連走行中間ギヤ57の中間大径ギヤ57aとを噛合連動して構成させる。
該左右の二連走行中間ギヤ57の中間小径ギヤ57bと、第7軸としての左右の走行減速軸58の各一端部に軸回転させる左右の減速大径ギヤ59とを噛合連動させると共に、この走行減速軸58の各他端部に軸回転させる左右の減速小径ギヤ60と、第8軸としての左右の車軸61の各一端部に軸回転させる左右の車軸ギヤ62とを噛合連動し、左右の車軸61の各他端部に前記走行クローラ10を駆動する左右の走行駆動輪63を軸回転配置して構成させる。
コンバインの油圧作用として、前記走行用ミッションケース28を作用させる走行系回路Tと、刈取装置21の昇降,脱穀装置15の排穀オーガ14の昇降,車体2に対する走行クローラ10のローリング及びピッチング等を作用させる作業系回路Wとを各々油圧駆動させる油圧制御回路Hによって実行可能に接続構成させる。
該油圧制御回路Hは、図6に示す如く、油タンク64から単一の油圧ポンプ1により供給される圧油を、走行系回路Tの各種の油圧制御弁等として、減圧弁65を介し設定圧力(二次圧)を保持させ、この圧油を二方向に分岐し、一方の圧油を、固定絞り66から左又は右のクラッチ切替電磁弁67を経て、前記左又は右の操向クラッチ46の入り作用側へ各々送油可能に接続して構成させる。
他方の圧油を固定絞り66から、該左又は右のクラッチ切替電磁弁67の切替えによるパイロット圧を受けて切替え作用する左又は右のパイロット圧切替電磁弁68を経て、左又は右の操向クラッチ46の切り作用側及び左又は右のブレーキ圧力調整用の電磁比例減圧弁69を介して、前記左又は右の走行ブレーキ55へ各々送油可能に接続して構成させる。
次に、該油圧ポンプ1により供給される圧油を、作業系回路Wとしてシーケンス弁70を介し主リリーフ弁71により設定圧力(一次圧)を保持させ、この圧油を、上昇用切替弁3a,下降用切替弁3b,リリーフ弁3eと、これら各切替弁3a,3bをパイロット圧によって可変調整する各調整弁3c,3dとにより組合せ制御する比例流量制御弁3へ送油し、この比例流量制御弁3によって制御された制御流aを各切替電磁弁4を経て、各油圧シリンダ5へ各々送油可能に構成させる。
該制御流aを、まず、前記刈取装置21の昇降作用を行うシート型弁sを昇降両側に採用した刈取昇降電磁弁4aを経て、チェック弁付き絞り弁72a(スローリターン)を介して前記刈取昇降シリンダ5aへ送油可能に接続すると共に、前記脱穀装置15の排穀オーガ14の昇降作用を行うシート型弁sを昇降両側に採用したオーガ昇降電磁弁4bを経て、チェック弁付き絞り弁72bを介してオーガ昇降シリンダ5bへ送油可能に接続して構成させる。
更に、該制御流aを、車体2の水平制御作用を行う左及び右の4ポート3位置切替えのローリング切替電磁弁4c,4dを経て、各々パイロットチェック弁73c,73d及びチェック弁付き絞り弁72c,72dを介して左及び右のローリングシリンダ5c,5dへ送油可能に接続すると共に、4ポート3位置切替えのピッチング切替電磁弁4eを経て、パイロットチェック弁73e及びチェック弁付き絞り弁72eを介してピッチングシリンダ5eへ送油可能に接続して構成させる。
エンジン23からの動力を、油圧式無段変速装置の可変ポンプ29へ入力し、この可変ポンプ29によって駆動される油圧モータ31による主変速動力を入力軸32に入力連動し、この入力軸32の入力ギヤ33から変速駆動軸34の変速伝動ギヤ35へ連動させる。
この連動による変速駆動軸34の中速ギヤ41の左右摺動により低速ギヤ37及び高速ギヤ36へ各別に接続させると共に、変速伝動軸40の高速駆動ギヤ38,低速駆動ギヤ39,中速駆動ギヤ42への連動により副変速駆動を行わせ、この副変速動力を中速駆動ギヤ42から操向クラッチ軸43の操向センタギヤ44へ連動させる。
左右の操向クラッチ46は、常時、左右のクラッチ切替電磁弁67により入り作用(接続状態)となっているが、車体2を旋回させるときは、パワステレバー26の左(又は右)側への傾倒操作をポジションセンサ26aによって検出し、左(又は右)の操向クラッチ46をクラッチ切替電磁弁67の切替えにより切り作用(非接続状態)させ、この切り作用により発生するパイロット圧によって左(又は右)のパイロット圧切替電磁弁68を切替えさせる。
この左(又は右)のパイロット圧切替電磁弁68の切替えにより、左(又は右)の操向クラッチ46の切り作用に対する、左(又は右)の走行ブレーキ55の入り作用の先行を規制することができるから、メカロック状態による機器類の破損防止を行うことができると共に、左(又は右)の走行ブレーキ55に対し、該パワステレバー26のポジションセンサ26aにより検出した操作量に応じた制動圧力を左(又は右)の電磁比例減圧弁69の作用により立ち上げる。
この左(又は右)の電磁比例減圧弁69の作用による左(又は右)の走行ブレーキ55の制動圧力の立ち上げにより、左(又は右)のサンギヤ53及びキャリア50とその二連遊星ギヤ51,遊星ギヤ52のギヤ減速比によって、二連出力ギヤ54の回転数が減速する。
この回転数の減速により、該左(又は右)のキャリア50の回転数とサンギヤ53の回転数とのギヤ比によって、徐々に回転数が減速していく左(又は右)の2連出力ギヤ54と、該右(又は左)の操向クラッチ46の入り作用による通常回転数の右(又は左)の二連出力ギヤ54とによって、この左右の二連出力ギヤ54の出力大径ギヤ54bから左右の二連走行中間ギヤ57の中間大径ギヤ57aへ連動させる。
この左右の二連走行中間ギヤ57の中間小径ギヤ57bから左右の走行減速軸58の減速大径ギヤ59を経て減速小径ギヤ60を駆動させ、この減速小径ギヤ60から左右の車軸61の車軸ギヤ62へ連動し、この車軸ギヤ62による通常回転数の右(又は左)の走行駆動輪63に対し、左(又は右)の走行駆動輪63を減速させて旋回作用を行わせる。
この旋回作用により、緩速旋回モードを経てブレーキ旋回モードへと移行し、更に、旋回内側の走行駆動輪63が外側に対して逆方向に回転するスピン旋回モードに至る無段の連続旋回を実行させることができる。
前記刈取装置21の昇降作用,脱穀装置15の排穀オーガ14の昇降作用,車体2の水平制御作用を、油圧制御回路Hの作業系回路Wにおける比例流量制御弁3によって制御される制御流a側に並列に接続することにより作動速度を制御可能に作用させることができるから、各作業部が必要とする作動速度を設定して昇降及び位置決め等の作業を行うことにより、従来の如き一定速度による難易度の高い昇降及び位置決め等の作業を緩和して、的確且つ容易に作業を行わせることができる。
なお、このような作業系回路Wとすることにより、従来においては、図7に示す如く、比例流量制御弁3は刈取装置21の昇降作用のみに使用し、排穀オーガ14の昇降作用,車体2の水平制御作用については、一次圧側をそのまま切替電磁弁と組合せたアンロード弁uを介して接続しているものであったが、上記の如く、比例流量制御弁3のアンロードにより特別なアンロード弁uを用いる必要がないため、構成が簡素化され且つコスト低減も可能となる。
該作業系回路Wにおいて、刈取装置21の昇降作用及び排穀オーガ14の昇降作用を切替え作用させる刈取昇降電磁弁4a及びオーガ昇降電磁弁4bを、図8に示す如く、従来のスプール型弁に代えてポペット弁等のP及びAポートによるシート型弁sを昇降両側に採用することにより、圧油のリークを阻止して、刈取昇降及びオーガ昇降作用時における自然降下を抑止できると共に、車体水平作用時の作動圧によって発生する自然上昇についても抑止させることができる。なお、従来のチェック弁を使用するより安価である。
該作業系回路Wにおいて、刈取装置21の昇降作用を切替え作用させる刈取昇降電磁弁4aを、従来では、刈取装置21の昇降作用を行う比例流量制御弁3を刈取装置21の後方側に配設していることにより前記操作席6から遠く該制御弁3の下降速度調整用スローリターンの操作性が悪かった。
このため、該走行系回路Tのクラッチ切替電磁弁67,パイロット圧切替電磁弁68,電磁比例減圧弁69等のブロックに、比例流量制御弁3及び刈取昇降電磁弁4aを統合して操作席6のステップ7下面側に配設することにより、刈取昇降電磁弁4aをオペレータの操作範囲内に位置させることができるから、下降速度調整用スローリターンの操作性を向上させることができる。
該作業系回路Wにおいて、図9に示す如く、刈取装置21の昇降作用を切替え作用させるノーマルクローズ型の刈取昇降電磁弁4aの代わりに、ノーマルオープン型の刈取昇降電磁弁4fを採用することにより、この刈取昇降電磁弁4fを作用させることなく圧油を前記刈取昇降シリンダ5aへ送油することができるから、刈取装置21の昇降作用の際の微調整操作時の応答性を向上させることができる。
該作業系回路Wにおいて、図10に示す如く、刈取装置21の昇降作用を切替え作用させるノーマルオープン型の刈取昇降電磁弁4fと、前記チェック弁付き絞り弁72aとの間にパイロットチェック弁73aを介して接続すると共に、比例流量制御弁3のアンロード回路bに、該チェック弁73aのパイロット圧を切替えるパイロット切替電磁弁74を接続して構成させる。
このように構成させることにより、アンロード回路bの圧油によってパイロットチェック弁73aを作用させることにより、従来、チェック弁付き絞り弁72aでは中立時における圧油リークによる自然降下が大であった不具合を、パイロットチェック弁73aによってリークを阻止し不具合を改善することができる。
該作業系回路Wにおいて、図11に示す如く、刈取装置21の昇降作用と前記排穀オーガ14の昇降作用とを各々切替え作用させる4ポート3位置切替えの作業切替電磁弁75と、各チェック弁付き絞り弁72a,72bとの間に各々パイロットチェック弁73a,73bを介して接続すると共に、比例流量制御弁3のアンロード回路bに、該チェック弁73a,73bのパイロット圧を該作業切替電磁弁75の作用に同期して各別に切替える4ポート3位置切替えのパイロット切替電磁弁76を接続して構成させる。
このように構成させることにより、アンロード回路bの圧油によってパイロットチェック弁73a,73bを各別に作用させることにより、従来、チェック弁付き絞り弁72a,72bでは中立時における圧油リークによる自然降下が大であった不具合を、パイロットチェック弁73a,73bによって各々リークを阻止し不具合を改善することができる。
該作業系回路Wにおいて、図12に示す如く、車体2の水平制御作用を行う左右のローリング切替電磁弁4c,4d及びピッチング切替電磁弁4eと、各々パイロットチェック弁73c,73d,73e及びチェック弁付き絞り弁72c,72d,72eを介して左右のローリングシリンダ5c,5d及びピッチングシリンダ5eとを接続する回路において、チェック弁付き絞り弁72c,72d,72eに代えて各々カウンタバランス弁77c,77d,77eを接続して構成させる。
このように構成させることにより、従来、車体2の水平制御作用を行う複動作用の左右のローリングシリンダ5c,5d及びピッチングシリンダ5eにおいて発生していた、降下時に自重によって発生するハンチング現象を防止することが可能となり、安定した降下作用を行うことができる。
また、図13に示す如く、前記走行系回路Tにおいてパイロット圧切替電磁弁68を用いないシンプルな回路として(参考文献1参照)、減圧弁65を介し設定圧力(二次圧)を保持させ、この圧油を二方向に分岐し、一方の圧油を、スプリングの抵抗圧により減圧させるチェック弁78を介して左又は右のクラッチ切替電磁弁67を経て、前記左又は右の操向クラッチ46の入り作用側へ各々送油可能に接続すると共に、他方の圧油を、左又は右のブレーキ圧力調整用の電磁比例減圧弁69を介して前記左又は右の走行ブレーキ55へ各々送油可能に接続して構成させる。
このように構成させることにより、走行ブレーキ55のブレーキ圧制御時に必要とする圧力が、操向クラッチ46の入り作用の際に使用されることがないから該クラッチ46の寿命が低下する恐れがない。なお、走行ブレーキ55で必要とする最大圧力によって操向クラッチ46を作用させるようにするためには仕様をアップしなければならず、結果的にコストアップとなる。
また、前記の如く、パイロット圧切替電磁弁68を用いないシンプルな回路では、油圧部のベースとなるマニホールド79にクラッチ切替電磁弁67を油路の連通により脱着可能に組付けを行っているが、図14に示す如く、パイロット圧切替電磁弁68を追加している回路では、マニホールド79とクラッチ切替電磁弁67との間に、パイロット圧切替電磁弁68を油路の連通により脱着可能に挟持組付けを行うことにより、各機種型式へ対応して容易に組替えることができるから、一体構成のものに比し利便性が高く低コストとなる。
また、上記と異なる走行用ミッションケース80と油圧制御回路Kについて、該走行用ミッションケース80の伝動機構は、図15に示す如く、油圧式無段変速装置81を第1軸としての入力軸82に連動連結し、この入力軸82に軸止した入力ギヤ83と、第2軸としての変速駆動軸84に摺動可能に軸回転させる三連の変速駆動ギヤ85の大径ギヤとを噛合連動させ、該変速駆動軸84に摺動する変速駆動ギヤ85と、第3軸としての変速伝動軸86に軸止する高速駆動ギヤ87a,中速駆動ギヤ87b,低速駆動ギヤ87cとを各々噛合連動して副変速部を構成させる。
該変速伝動軸86に軸止する変速伝動ギヤ88と、第4軸としてカウンタ軸89に軸止するカウンタギヤ90とを噛合連動させると共に、このカウンタ軸89に軸止するカウンタ駆動ギヤ91と、第5軸としての操向クラッチ軸92のセンターに軸止するクラッチ爪を有した二連の操向センタギヤ93の大径ギヤとを噛合連動させ、該操向センタギヤ93の両側に各々左右の操向クラッチ94を左右摺動可能に遊転軸承して構成させる。
該左右の操向クラッチ94のクラッチギヤを、操向センタギヤ93のクラッチ爪に各々噛合接続して入・切させ、この切りにより操向及び旋回作用を行わせることができると共に、前記操向センタギヤ93の大径ギヤと、第6軸としての旋回クラッチ軸95に遊転軸承する長円筒メタル96の一端部に軸止した直進ギヤ97とを噛合連動させると共に、この長円筒メタル96の他端部に連動クラッチとしての直進用クラッチ98を固定して構成させる。
前記操向センタギヤ93の小径ギヤと、長円筒メタル96の外周に重設して遊転軸承させる短円筒メタル99の一端部に軸止した旋回ギヤ100とを噛合連動させ、この短円筒メタル99の他端部に連動クラッチとしての旋回用クラッチ101を固定すると共に、該直進用クラッチ98と旋回用クラッチ101との間に直進用クラッチ98を常時作動可能に押圧するバネ102を配設し、該両クラッチ98,101の外枠リング103を旋回クラッチ軸95の一方の軸端部に軸止して構成させる。
該旋回クラッチ軸95の他方の軸端部に軸止した旋回駆動ギヤ104と、差動ギヤ装置105においてデファレンシャルギヤxを内装したデフケースyを回転駆動するデフケースギヤzとを噛合連動させ、左右方向のデファレンシャルギヤxを、第7軸としてのデフ支軸106に遊転軸承すると共に、該左右方向のデファレンシャルギヤxのボス部に各々軸止した左右のデフ出力ギヤ107と、第8軸としての左右の車軸108の一端部に各々軸止した車軸ギヤ109とを噛合連動させ、この左右の車軸ギヤ109に前記左右の操向クラッチ94のクラッチギヤを各々噛合連動して構成させる。
このような伝動機構におけるミッションケース80において、油圧制御回路Kの油圧作用により、図16に示す如く、油タンク110から油圧ポンプ111により供給される圧油を、減圧弁112とシーケンス弁113及び比例減圧弁114とを一体型に構成したユニット弁v(図17参照)の減圧弁112を介し設定圧力(二次圧)を保持させ、この圧油を直進用クラッチ98と連動の旋回用クラッチ101へ送油可能に接続して構成させる。
次に、ユニット弁vのシーケンス弁113を介し主リリーフ弁115により設定圧力(一次圧)を保持させ、この圧油を優先分流弁116により分岐し、一方の圧油を、アンロード弁117を介して掻込み電磁弁118から左右の操向クラッチ94を入り切り作用させる方向切替電磁弁119を経て左右のプッシュシリンダ120へ送油可能に接続して構成させる。
該左右のプッシュシリンダ120の出口側圧油を、前記パワステレバー26によって作用させるパワステリリーフ弁121を経て油タンク110へ返油すると共に、他方の圧油を、アンロード弁117を介して刈取昇降,オーガ昇降,車体水平等による複数の作業部を各別に切替え作用可能に前記作業系回路Wへ送油して構成させる。
このように構成させることにより、車体2の旋回作用を行わせるときは、該左又は右のプッシュシリンダ120の作用により、左又は右の操向クラッチ94を切り作用させると共に、ユニット弁vの比例減圧弁114により、常時入り作用の直進用クラッチ98を切り作用すると同時に旋回用クラッチ101を入り作用させ、差動ギヤ装置105を介して旋回作用を行い、緩速旋回モードを経てブレーキ旋回モードへと移行し、更に、スピン旋回モードに至る無段の連続旋回作用を実行させる。
次に、掻込み作業を行わせるときは、前記操作席6に設けた掻込みペダル(図示なし)の踏込み時に、該方向切替電磁弁119の上流側に配置した掻込み電磁弁118を切替え、パワステリリーフ弁121と共にアンロード弁117を作用させることにより、方向切替電磁弁119は中立位置のままで左右のプッシュシリンダ120を同時に作用させることができるから、畦際等において走行のみを停止し刈取駆動による掻込み作業を容易に安定して行わせることができる。
(通常では走行停止と同時に刈取も停止する)
なお、従来では、該方向切替電磁弁119の下流側に掻込み電磁弁118を配置していたことにより、掻込み電磁弁118と方向切替電磁弁119及びアンロード弁117を同時に作用させる必要が生じるため、作用時に各々タイムラグを生じブレーキフィーリングが悪いものとなっていた。
前記油圧制御回路Kの回路において、掻込み電磁弁118を省略し同様の機能を有するものとして、図18に示す如く、該方向切替電磁弁119と左右のプッシュシリンダ120との間に各々逆流防止用のチェック弁122を配置して構成させる。
該ユニット弁vのシーケンス弁113を介し主リリーフ弁115により設定圧力(一次圧)を保持させた圧油を分岐し、該掻込みペダルの踏込み時に作用する掻込み切替弁123を介して左右のプッシュシリンダ120の入口側へ送油可能に接続すると共に、該左右のプッシュシリンダ120の出口側圧油を掻込み切替弁123に連接したパワステリリーフ弁121を経て油タンク110へ返油可能に接続して構成させる。
このように構成させることにより、該掻込みペダルの踏込み時に、掻込み切替弁123が切替わると共に、パワステリリーフ弁121と共にアンロード弁117を作用させることにより、方向切替電磁弁119は中立位置のままでチェック弁122により逆流を防止し、左右のプッシュシリンダ120を同時に作用させることができるから、畦際等において走行のみを停止し刈取駆動による掻込み作業を容易に安定して行わせることができる。
なお、該掻込み切替弁123とパワステリリーフ弁121とを連接していることにより、従来の如く、掻込みペダルとパワステリリーフ弁121とをリンクや配管等により連結する複雑な連結部を必要としないため、コスト低減を図ることができると共に、掻込み作業時には、掻込みペダルの踏込みによるアンロード弁117の作用のみによって作業を容易に安定して行わせることができる。
また、通常、油圧回路に用いられる前記チェック弁122について、従来では、図19に示す如く、シート122a,アダプタ122b,ボール押え用プラグ122c,速度調整用オリフィスネジ122dを別部品として構成しているが、これらの構成では、部品点数や加工工数の面でコストアップの要因になると共にシート122aの交換に専用工具を必要とする。
このため、図20に示す如く、まず、シート122aを本体にネジ結合すると共に、ボール押え用プラグ122cと速度調整用オリフィスネジ122dを一体部品としてアダプタ122bに組込み、且つ、このアダプタ122bをシート122aにネジ込んだ構成とすることにより、シート122a取外し用の専用工具が不要となり、部品の一体化と構成の簡素化によりコスト低減を図ることができる。
前記油圧制御回路Kの回路において、図21に示す如く、該ユニット弁vからシーケンス弁113を省略し、該油圧ポンプ111からの圧油を優先分流弁116に直接供給すると共に、該左右のプッシュシリンダ120の出口側から油タンク110へ返油する回路に、シーケンス弁113の代わりに圧力を確保する固定絞り124を配置接続して構成させる。
このように構成させることにより、該左右のプッシュシリンダ120の出口側に配置した固定絞り124によって、該ユニット弁vからシーケンス弁113を省略することができるから、コスト低減を図ることができる。
また、油圧制御回路Mとして、図22に示す如く、前記油タンク110から油圧ポンプ111により供給される圧油を、ユニット弁vの比例減圧弁114からパイロット圧切替弁125を介して、直進用クラッチ98と連動の旋回用クラッチ101へ送油可能に接続すると共に、ユニット弁vのシーケンス弁113を介して刈取昇降部r及び刈取横移動部h並びに該左右のプッシュシリンダ120へ各々送油可能に接続し、このプッシュシリンダ120へ送油される圧油をパイロット圧切替弁125のパイロット圧として作用可能に接続して構成させる。
このように構成させることにより、該パイロット圧切替弁125を、常時は、旋回用クラッチ101の圧力を油タンク110へ返油する位置へスプリングによって規制し、プッシュシリンダ120が作動したときは、その作動圧をパイロットとしてパイロット圧切替弁125の切替えを行い、旋回用クラッチ101への送油により作用を行わせる。
このように、プッシュシリンダ120が作動したとき、この作動圧によってパイロット圧切替弁125を切替えて旋回用クラッチ101を作用させる牽制回路を設けることにより、従来、旋回作用の応答性向上のため旋回用クラッチ101とプッシュシリンダ120を同時に出力させていたことにより発生するメカロック状態を回避させることができる。
また、前記油圧制御回路K及び油圧制御回路Mに示す如く、ユニット弁vを、油圧ポンプ111と旋回用クラッチ101,メイン回路としての優先分流弁116との間に配置接続することにより、従来の如く、前記マニホールド79に各種作用弁を個々に組付けているもののように回路構成等が複雑となり他機種への展開に制約を受けるということがなく、簡単且つ容易に回路構成を行うことが可能となる。
また、図23は、上記と異なる普通型コンバインを示すもので、リール126a方式の刈取装置126を有し、この刈取装置126は先端の分草体126b後方側に通常の低刈りを行う第一刈刃126cを配設すると共に、図24に示す如く、刈取バケット126dの後端部に高刈りを行う第二刈刃126eを配設して構成させる。
該リール126aの昇降作用と第二刈刃126eの昇降作用を行う油圧回路として、従来の、作業系回路Wの比例流量制御弁3の下流側に、刈取昇降,オーガ昇降,車体水平等による複数の作業部と並列に、図25に示す如く、4ポート3位置切替えのリール昇降電磁弁127aと第二刈刃昇降電磁弁127bから、各パイロットチェック弁128a,128bを介してリール昇降シリンダ129aと第二刈刃昇降シリンダ129bとを各々接続して構成させる。
このように構成するリール昇降電磁弁127aや第二刈刃昇降電磁弁127bと、他仕様の各切替電磁弁(図面なし)等とにより一連や二連構成の電磁弁とするときは、従来の如く、マニホールド等により型式ごとにユニット設定しているものでは対応が困難となり新規設定が必要であったが、これを、図26に示す如く、一連毎の弁構成を可能とすることにより、一連〜三連レベルでの積み重ねユニットによる共用化が可能となる。なお、少数の台数でも一連目,二連目の加工を共用加工とすることが可能でありコスト低減を図ることができる。