本発明は、車両用のステアリングシステムに配備されるアクチュエータに関し、詳しくは、操舵に応じて作動するアクチュエータに関する。
車両用ステアリングシステムは、ステアリングホイール等のステアリング操作部材(以下、単に「操作部材」と略す場合がある)の操作に応じて転舵車輪を転舵させることによって、車両を操舵するシステムであり、システムに何らかの機能を付加するために、各種のアクチュエータが配備されている。例えば、操舵量に応じた移動量だけ移動する移動体を備えたアクチュエータ(本明細書において、「移動体具備アクチュエータ」と呼ぶことにする)として、下記特許文献に記載されているようなアクチュエータが存在する。それらの文献に記載されたステアリングシステムは、操作部転舵部分離型システム(操作部材の操作力によらず、電気的な制御の下、転舵部が備える動力源の動力によって車輪が操作部材の操作量に応じて転舵されるシステムである。「ステアバイワイヤシステム」とも呼ばれる。)であり、そのシステムにおいて、移動体具備アクチュエータは、操作部材に操作反力を付与する操作反力付与装置として機能するものとされている。
特許2814375号公報
特開2001−106111号公報
特開2001−114123号公報
特開2001−130426号公報
上記文献に記載された移動体具備アクチュエータは、自身が有する移動体が操作部材の操作に連係して移動するようにされ、その移動に抗うような付勢力を付与することで、操作部材に反力を付与している。ところが、付勢力を発生させる手段に、通常の圧縮コイルスプリングあるいは斥力を発生させる磁石対を用いているため、それらのアクチュエータは、単調な操作反力しか付与することができず、それらのアクチュエータが配備されたステアリングシステムは実用的なものとはなっていない。また、一方、移動体具備アクチュエータに別の機能を発揮させ、操作反力付与装置以外の用途に利用することにより、そのアクチュエータを配備したステアリングシステムの実用性を高めることが可能である。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ステアリングシステムの実用性を向上させ得る移動体具備アクチュエータを提供することを課題とする。
本発明のアクチュエータは、(A)定められた軌道に沿って操舵量に応じた移動量だけ移動する移動体と、(B)その移動体を、それの移動方向とは反対の方向に、それの移動量に応じて増加する付勢力で付勢する移動体付勢機構とを備え、ステアリングシステムに配備されることを前提する。そして、その前提において、上記課題を解決するために、移動体が、ステアリング操作部材に連係して操舵量としてのステアリング操作部材の操作量に応じた移動量だけ移動するものものとされることで、当該アクチュエータが、操作反力付与装置として機能するものとされ、かつ、移動体付勢機構が、移動体の移動量が設定移動量を超えた場合に、前記付勢力の増加勾配を大きくするものであることを特徴とする。さらに詳しく言えば、移動体付勢機構が、(a)上記軌道上に設けられて自身の位置が固定された固定体と、(b)それぞれが、移動体とその固定体との間に介在させられ、上記軌道に沿った方向における自身の両端の距離である両端間距離の変動に応じた反力を発生させる2つの反力発生手段とを有し、それら2つの反力発生手段が発生させる反力に依拠した前記付勢力を付与するように構成され、かつ、移動体の移動量が設定移動量を超えた場合に、2つの反力発生手段のうちの少なくとも一方の反力の発生状態を変更することにより、前記付勢力の増加勾配が大きくなるように構成される。
発明の作用および効果
上記本発明のアクチュエータは、操作部材と連係する移動体に付勢力を与えることで操作反力付与装置として機能するものであり、前述の操作部転舵部分離型ステアリングシステムに好適なアクチュエータである。このアクチュエータでは、操作部材の操作量が大きくなるつれて操作反力が大きくなることに加え、移動体が設定移動位置を超えた場合、つまり、操作量が設定された操作量を超えた場合に、操作反力の増加の割合を大きくできることから、操作フィーリングを特徴的なものとすることが可能である。その特徴を利用することで、本アクチュエータは、実用的なステアリングシステムを構築可能なものとなる。具体的には、ステアリング操作ストロークにおけるストロークエンドに近づく場合に、急激に操作反力を増加させるといった態様で使用すれば、運転者に、ストロークエンドの接近を感知させることが可能である。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。本願発明を含む概念である。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項,(2)項,(14)項,(15)項を合わせたものが請求項1に相当し、請求項1に(19)項の特徴を付加したものが請求項2に、請求項2に(21)項の特徴を付加したものが請求項3に、請求項3に(22)項の特徴を付加したものが請求項4に、請求項1または請求項2に(20)項の特徴を付加したものが請求項5に、請求項1ないし請求項5のいずれかに(25)項の特徴を付加したものが請求項6に、請求項6に(27)項の特徴を付加したものが請求項7に、請求項1ないし請求項7のいずれかに(5)項および(23)項の特徴を付加したものが請求項8に、請求項8に(6)項の特徴を付加したものが請求項9に、請求項9に(7)項および(8)項の特徴を付加したものが請求項10に、それぞれ相当する。
(1)定められた軌道に沿って操舵量に応じた移動量だけ移動する移動体と、
その移動体を、それの移動方向とは反対の方向に、それの移動量に応じて増加する付勢力で付勢する移動体付勢機構と
を備え、ステアリングシステムに配備されるアクチュエータ。
本項に記載の態様は、前述の移動体具備アクチュエータにおいて、移動体を付勢する機構を設けた態様である。移動体付勢力機構が付与する付勢力は、後に説明するように、操作部材の操作に対する操作反力、操舵量を表す指標等、種々の目的に利用できる。その付勢力の利用目的に応じてアクチュエータに種々の機能を持たせることができ、その種々の機能を有するアクチュエータをステアリングシステムに配備することにより、そのシステムの実用性を向上させることができるのである。
移動体が移動する「軌道」は、実体的なものを意味する概念ではなく、例えば、移動経路、移動した場合の軌跡といった抽象的な概念である。所定の軌道に沿った移動を許容する機構、例えば、アクチュエータのハウジング等に軌道形成部材(いわゆるガイドに相当するもの)が設けられ、あるいは、ハウジング等が軌道形成部材として機能し、その部材に沿って移動体が移動するような構成とすることにより、上記軌道を定めることが可能となる。また、軌道は、直線的なものに限定されず、曲線的なものであってもよい。具体的には、移動体が回動する場合、移動体が自転する場合等も、軌道に沿った移動に該当する。
本項における「操舵量」は、ステアリング操作部材の操作量、例えば、操作部材がステアリングホイール等である場合における操作角のみならず、転舵車輪の転舵角,転舵ロッドの変位量等である転舵量等、操舵の程度を示す指標となるものを広く含む概念である。本項に記載のアクチュエータでは、移動体の「移動量」は操舵量に応じたものとされている。平たく言えば、例えば、操舵量が多くなればその移動量が増加するようにされた場合が該当する。「移動体付勢機構」の具体的構成は、後にいくつかの態様を示すが、本項の態様においては特に限定されるものではない。「付勢力」は、移動体に対してそれの移動方向とは反対の方向に作用する力の成分を有すものであればよい。平たく言えば、移動を阻止する方向に作用する力であればよい。
(2)前記移動体が、ステアリング操作部材に連係し、前記操舵量としてのステアリング操作部材の操作量に応じた移動量だけ移動するものものとされることで、当該アクチュエータが、操作反力付与装置として機能する(1)項に記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、移動体を操作部材の操作に応じて移動させるように構成し、それに付勢力を加えることで、その付勢力をステアリング操作の操作反力として利用する態様である。前述した操作部転舵部分離型のステアリングシステムにおいて、特に有効な態様である。
(3)当該アクチュエータが、(i)前記ステアリング操作部材の操作に応じて回転する回転軸と、(ii)その回転軸に設けられたピニオンと前記移動体に設けられて前記ピニオンと噛合するラックとを含んで構成され、前記回転軸の回転運動を前記移動体の前記軌道に沿った直線運動に変換するラックアンドピニオン機構とを備えた(2)項に記載のアクチュエータ。
(4)当該アクチュエータが、(i)前記ステアリング操作部材の操作に応じて回転する回転軸と、(ii)その回転軸に設けられたボールねじと前記移動体に設けられて前記ボールねじと噛合するボールナットとを含んで構成され、前記回転体の回転運動を前記移動体の前記軌道に沿った直線運動に変換するボールねじ機構とを備えた(2)項に記載のアクチュエータ。
上記2つの項は、当該アクチュエータを操作反力付与装置として機能させる場合において、操作部材の操作に応じた移動体の移動を実現するための機構、すなわち、前述の移動体移動許容機構の具体的な構成に関する態様である。移動体移動許容機構として上記ラックアンドピニオン機構,ボールねじ機構を採用すれば、ステアリングホイールを操作部材とする場合等において、操作部材の回転操作に応じた移動体の直線的な移動が、容易に実現される。なお、回転軸自体にピニオン,ボールねじが形成されている場合や、移動体自体がラック,ボールナットとして機能する場合も、上記態様に該当する。
(5)前記移動体が、互いに反対となる操舵方向に対して互いに反対となる移動方向に移動するものとされ、その互いに反対となる移動方向の各々に対して前記移動体付勢機構が設けられたことで、当該アクチュエータが2つの前記移動体付勢機構を備えた(1)項ないし(4)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
通常の車両用ステアリングシステムは、車両が左右双方向に操舵される。したがって、本項に記載の態様のように、移動体がその双方向の操舵に対応した双方向に移動できるようにし、その双方向における各々の方向の移動に対して付勢力を付与すれば、例えば、アクチュエータを操作反力付与装置として機能させる場合において、双方向の操舵に対して操作反力を付与することが可能となる。
(6)前記2つの移動体付勢機構の各々の付勢力が、操舵の中立状態において互いに釣り合うものとされた(5)項に記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、平たく言えば、双方向の各々の方向に作用する付勢力の釣合いにより、操舵されていない状態である中立状態において、移動体を中立位置に位置させる態様である。本態様のアクチュエータを操作反力付与装置として機能させる場合においては、操作部材を中立位置に保持する機構、すなわち、操作部材中立位置保持機構を備えた態様を実現することが可能である。つまり、操作部材が操作の中立位置に位置する場合に移動体が中立位置に位置するように構成すれば、上記付勢力の釣合いによって、操作部材を中立位置に位置させることが可能となるのである。
(7)当該アクチュエータが、前記移動体の移動を禁止する移動体移動禁止機構を備えた(1)項ないし(6)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様によれば、例えば、当該アクチュエータを、操舵を禁止するステアリングロック装置として機能させることが可能である。より詳しく言えば、当該アクチュエータが操作反力付与装置として機能するものである場合には、操作部材の操作を禁止するステアリングロック装置として機能させることが可能である。例えば、移動体の位置を固定することにより、移動体に連係する操作部材の操作位置(操舵位置の一種である)を固定させるといった態様が、本項に記載の態様に含まれる。移動体移動禁止機構の具体的な構成は特に限定されないが、当該アクチュエータのハウジングに設けたストッパとしての係止部により移動体の被係止部を係止するような構成とすることができる。その場合、係止部が被係止部を係止可能な状態と係止不能な状態とに切換る切換手段を設けることにより、ステアリングロック機構が実現する。
(8)前記移動体移動禁止機構が、前記軌道上の任意の位置において前記移動体の移動を禁止することが可能な(7)項に記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、移動体移動禁止機構の機能の限定に関する一態様である。移動体の移動を任意の移動位置おいて禁止することができれば、任意の操舵位置、例えば、操作部材の任意の操作位置においてロック可能なステアリングロック装置が実現する。例えば、上記操作部材中立位置保持機構を備えて操作反力付与装置として機能するアクチュエータが配備された操作部転舵部分離型のステアリングシステムでは、車輪を中立位置から転舵させた状態でイグニッションスイッチをOFF状態とした場合でも、その中立位置保持機能により操作部材だけが中立位置に位置することになり、車輪の転舵量と操作部材の操作量との不一致が発生する。かかる場合において、本項に記載の移動体禁止機構を採用し、イグニッションスイッチをOFFとした時点で、移動体をその時点における位置に固定させれば、上記転舵量と操作量との不一致を発生させないようにすることが可能である。具体的な構成としては、移動体に連続的に設けられた複数の被係止部のいずれかが、ハウジングに設けられた係止部に係止されるような構造、ハウジングに複数設けられた係止部のいずれかに、移動体に設けられた被係止部が係止されるような構造とすることができる。なお、「任意の位置において移動を禁止することが可能」という概念には、例えば、軌道に沿った方向に細かいピッチで設定された禁止点のいずれかの任意の点において移動が禁止される場合が含まれる。つまり、完全に連続した位置のみならず、小さな距離を隔てて設定された複数の位置において移動が禁止される場合、すなわち、実質的に任意の位置とみなせる位置において移動が禁止される場合も含まれるのである。
(9)前記移動体移動禁止機構が、操舵の中立状態に相応する移動位置においてのみ移動を禁止することが可能な(7)項に記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、移動体移動禁止機構の機能の限定に関する一態様、詳しくは、移動体を、軌道上の所定の一箇所においてそれの移動を禁止する態様における一態様である。例えば、上記操作部材中立位置保持機構を備えて操作反力付与装置として機能するアクチュエータが配備された操作部転舵部分離型のステアリングシステムにおいて、そのアクチュエータを本項に記載の態様のものとした場合を考える。その場合において、車輪を中立位置から転舵させた状態でイグニッションスイッチをOFF状態としたときに、その後、操作部材が中立位置に復帰した時点でロックさせるようにステアリングシステムを構成することが可能である。そのような構成のシステムでは、次に、イグニッションスイッチをON状態としたときおいて、転舵した車輪を転舵部の動力によって一旦中立位置に復帰させる動作(いわゆるキャリブレーション動作)を行わせ、その後にそのロックを解除するような機能を具備させれば、操作部材の操作量と車輪の転舵量とを確実に一致させることが可能となる。具体的には、例えば、移動体に設けられた被係止部が移動体の中立位置においてのみハウジングに設けられた係止部に係止されるような構造とすればよい。
(10)前記移動体付勢機構が、(a)前記軌道上に設けられて自身の位置が固定された固定体と、(b)前記移動体と前記固定体との間に介在させられ、前記軌道に沿った方向における自身の両端の距離である両端間距離の変動に応じた反力を発生させる反力発生手段とを有し、その反力発生手段が発生させる反力に依拠した前記付勢力を付与するものである(1)項ないし(9)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、平たく言えば、「反力発生手段」として伸縮可能なものであってその伸縮に応じた反力をを発生するようなものを利用して、移動体を付勢する態様である。本項に言う「両端間距離」とは、軌道方向における長さを含む概念である。
(11)前記反力発生手段が、弾性体を含んで構成された(10)項に記載のアクチュエータ。
(12)前記反発力発生手段が、前記弾性体としてのばねを含んで構成された(11)項に記載のアクチュエータ。
(13)前記反力発生手段が、斥力を発生させるべく前記軌道の沿った方向において対向して並設された2つの磁石からなる磁石対を含んで構成された(10)項に記載のアクチュエータ。
上記3つの項は、「反力発生手段」の限定に関する項である。「弾性体」は、いわゆる長さの伸縮に応じて反力を発生させるものであって、長さの変化が大きくなるにつれて反力が増加するようなものを採用することができる。いわゆるばね、ゴム等である。なお、反力は、圧縮によって生じるものであってもよく、引張によって生じるものであってもよい。「ばね」は、弾性体の一態様であり、実用的な反力発生手段である。コイルスプリングを始めとして、各種のばねを採用することができる。空気ばね等も上記項のばねに該当する。「磁石対」は、1つの物体で反力発生手段が構成されるものではないが、2つの磁石を斥力が発生するように並べることによって、弾性体と同様に反力を発生させるものとなる。2つの磁石が接近するにつれて反力が大きくなる。弾性体における「両端間距離」は、軌道に沿った方向における自身の長さと考えることができ、また、磁石対における「両端間距離」は、磁石の間隔と考えることができる。なお、反力発生手段は、後に説明する反力変動勾配が一定のもの、つまり、リニアな特性のものであってもよく、反力変動勾配が一定でないものであってもよい。
(14)前記移動体付勢機構が、前記移動体の移動量が設定移動量を超えた場合に、前記付勢力の増加勾配が大きくなるものとされた(1)項ないし(13)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様によれば、例えば、設定移動量に対応する操舵量を超えた場合に、急激に付勢力が大きくなるようなアクチュエータを実現することができる。例えば、本アクチュエータを操作反力付与装置として機能させる場合は、操作部材の操作量が設定量を超える場合に、操作反力を急激に大きくするようなアクチュエータが実現する。これにより、ステアリング操作における操作フィーリングを特徴的なものとすることが可能である。その特徴を利用することで、本アクチュエータは、実用的なステアリングシステムを構築可能なものとなる。具体的には、本アクチュエータを、ステアリング操作ストロークにおけるストロークエンドに近づく場合に急激に操作反力を増加させるといった態様で使用すれば、運転者に、ストロークエンドの接近を感知させることが可能である。なお、本項にいう「増加勾配」は、移動量の増加に対する付勢力の増加量の微分値と考えることもできる。
(15)前記移動体付勢機構が、(a)前記軌道上に設けられて自身の位置が固定された固定体と、(b)それぞれが、前記移動体と前記固定体との間に介在させられ、前記軌道に沿った方向における自身の両端の距離である両端間距離の変動に応じた反力を発生させる2つの反力発生手段とを有し、それら2つの反力発生手段が発生させる反力に依拠した前記付勢力を付与するものであるとともに、前記移動体が前記設定移動量を超える場合に、前記2つの反力発生手段のうちの少なくとも一方の反力の発生状態を変更することにより、前記付勢力の増加勾配が大きくなるものとされた(14)項に記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、平たく言えば、上記反力発生手段を2つ用い、その2つの反力発生手段による反力の発生の態様を変えることによって前記増加勾配を変化させる態様である。なお、「反力の発生状態を変更する」とは、例えば、反力を発生する状態と発生しない状態とを選択的に実現することや、反力の発生の程度を大きくあるいは小さくすること等を含む概念である。
(16)前記2つの反力発生手段のうちの少なくとも一方が、弾性体を含んで構成された(15)項に記載のアクチュエータ。
(17)前記2つの反力発生手段のうちの少なくとも一方が、前記弾性体としてのばねを含んで構成された(16)項に記載のアクチュエータ。
(18)前記2つの反力発生手段のうちの少なくとも一方が、斥力を発生させるべく前記軌道の沿った方向において対向して並設された2つの磁石からなる磁石対を含んで構成された(15)項ないし(17)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
上記3つの項は、反力発生手段を限定する項である。前述の説明と重複するため、ここでの説明は省略する。なお、2つの反力発生手段の両者がばね等の弾性体を含むものである態様,両者が磁石対を含むものである態様であってもよく、2つの反力発生手段の一方が弾性体を含むものであり、他方が磁石対を含むものである態様であってもよい。
(19)前記2つの反力発生手段が、前記両端間距離の変動量に対する前記反力の大きさの変動量の変動勾配である反力変動勾配が互いに異なるものである(15)項ないし(18)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
本項における「反力変動勾配」とは、平たく言えば、反力発生手段の硬さ(柔らかさ)といった概念である。反力変動勾配が大きい場合に硬い反力発生手段となり、逆に、反力変動勾配が小さい場合に柔らかい反力発生手段となる。反力発生手段がばねである場合は、ばね定数が反力変動勾配に該当する。つまり、本項に記載の態様は、互いに硬さの異なる反力発生手段を2つ用いて、それらの少なくとも一方の反力発生状態を変化させる態様であり、それらの硬さを種々に変更することによって、付勢力の付与の状態を種々に変更させることが可能である。なお、反力変動勾配とは、両端間距離の変動量に対する反力の大きさの変動量に対する微分値と考えることもできる。反力変動勾配が一定している反力発生手段は、リニアな特性の反力発生手段となる。
(20)前記移動体付勢機構が、前記2つの反力発生手段が前記軌道の方向に対して並列に配置された構造とされ、かつ、それら2つの反力発生手段のうちの一方の反力を、前記移動体の移動量が前記設定移動量を超えた場合にのみ発生させる構造とされた(15)項ないし(19)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、2つの反力発生手段を採用した場合における反力の発生状態を変更する態様の一態様である。平たく言えば、例えば、移動体の移動量が設定移動量を超えるまでは1つの反力発生手段しか機能させず、設定移動量を超えた場合において、2つの反力発生手段を機能させるような場合が該当する。設定移動量を超えて移動体が移動する場合に、2つの反力発生手段の反力が移動体に作用することにより、付勢力の増加勾配を大きくすることが可能となる。
(21)前記2つの反力発生手段が、前記両端間距離の変動量に対する前記反力の大きさの変動量の変動勾配である反力変動勾配が互いに異なるものであり、
前記移動体付勢機構が、前記2つの反力発生手段が直列的に配置された構造とされ、かつ、前記移動体の移動量が前記設定移動量を超える場合に、それら2つの反力発生手段のうち反力変動勾配が小さい方のものが剛体化される構造とされた(15)項ないし(18)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、上記反力変動勾配が互いに異なる反力発生手段を直列に配置した場合において、付勢力の増加勾配を大きくする一態様である。本項にいう「剛体化」とは、反力変動勾配を略無限大化することを意味する。平たく言えば、両端間距離を殆ど変化させることなく反力を増加させることができる状態とすることを意味する。具体的言えば、例えば、反力発生手段が、圧縮コイルスプリングである場合において、ばねを構成する線材が密着する等して線材間のピッチが変化しない状態となることを意味する。反力変動勾配の異なる反力発生手段を直列に配置した場合、2つの反力発生手段を一体的に考えた場合の反力変動勾配(全体の反力変動勾配)は、小さい方の反力変動勾配より小さくなる。反力変動勾配の小さい方を剛体化する場合、全体の反力変動勾配は、大きい方の反力変動勾配と略等しくなる。本項に記載の態様は、このような原理を利用して付勢力の増加勾配を大きくしているのである。
(22)前記移動体付勢機構が、前記2つの反力発生手段として、ばね定数が互いに異なるばねを含むものが直列的に2つ配置された構造とされ、かつ、前記移動体の移動量が前記設定移動量を超える場合に、それら2つのばねのうちのばね定数の小さい方をふくむものが剛体化される構造とされた(21)項に記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、互いに反力変動勾配の異なる2つの反力発生手段として、ばね定数の異なる2つのばねを採用した態様である。なお、圧縮コイルスプリングを採用する場合、線材のピッチが互いに異なる2つの部分からなるスプリング,コイル径が互いに異なる2つの部分からなるスプリング等を採用することにより、反力変動勾配を変化させることが可能である。そのような態様は、2つのばねが一体化したものとして、本項の態様に含まれるものとする。
(23)前記移動体が、互いに反対となる操舵方向に対して互いに反対となる移動方向に移動するものとされ、その互いに反対となる移動方向の各々に対して前記移動体付勢機構が設けられたことで、当該アクチュエータが2つの前記移動体付勢機構を備え、
それら2つの移動体付勢機構の各々が、前記移動体の移動量が前記設定移動量を超えた場合に、前記付勢力の増加勾配が大きくなるものとされた(14)項ないし(22)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、平たく言えば、操舵方向の両側のそれぞれに移動体付勢機構を設けたものである。本態様のアクチュエータを反力付与装置として機能させる場合、例えば、ステアリング操作の両方向において、ストロークエンドに近づく場合に急激に操作反力を増加させるといった態様とすることができ、運転者に、両方向において、ストロークエンドの接近を感知させることが可能である。
(24)前記移動体付勢機構が、前記移動体の移動量の増加に伴って前記付勢力の増加勾配が大きくなるものとされた(1)項ないし(13)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、平たく言えば、移動量が大きくなるにつれて付勢力の増加勾配も大きくなるようにされた態様である。本項に記載の態様によれば、付勢力の増加がリニアなものとはならず、本項記載の態様のアクチュエータを操作反力付与装置として機能させれば、独特の操作フィーリングを運転者に与えることが可能となる。本項における移動体付勢機構を、上述のように反力発生手段を含んで構成することが可能であり、その場合には、反力変動勾配が両端間距離の変動に応じて変化するような反力発生手段を採用することにより、本項に記載の態様を実現させることが可能である。具体的には、反力発生手段として上記磁石対を含んで構成されるものを反力発生手段とすることで、本項に記載の態様が実現する。また、線材のピッチが長さ方向において徐々に大きくなっているような圧縮コイルスプリング、コイル径が長さ方向において徐々に大きくなっているような圧縮コイルスプリング(円すいコイルスプリング)等、非線形特性の圧縮コイルスプリングを採用することにより、本項に記載の態様を実現させることが可能である。それら例示した圧縮コイルスプリングでは、縮むにつれて線材どうしが徐々に密着して徐々にばね定数が大きくなり、その現象を利用することで、付勢力の増加勾配が増加するのである。なお、本項に記載の態様は、先に説明したように、両操舵方向の各々に対して移動体付勢機構をそれぞれ設けることも可能である。
(25)当該アクチュエータが、前記付勢力の大きさを検出する付勢力検出器を備え、前記操舵量を検出する操舵量検出装置のセンサとして機能する(1)項ないし(24)項のいずれかに記載のアクチュエータ。
移動体付勢機構は、操舵量に応じた付勢力を発生することから、その付勢力の大きさを測定すれば、容易に、操舵量を検出することが可能である。本項に記載の態様は、それを利用して、アクチュエータを操舵量検出のためのセンシングデバイスとして機能させる態様である。電気的に制御されるステアリングシステムが搭載された車両、走行姿勢の電子制御が行われる車両等では、ステアリングの操舵量は、有益な制御情報となる。操舵量を検出する場合、操作部材の操作角、転舵ロッドの位置を、エンコーダ,レゾルバといった位置や回転角を直に検出するセンサを用いることが一般的であるが、本項に記載のアクチュエータを採用すれば、そのようなセンサを用いずに操舵量の検出でき、ステアリングシステムの実用性が向上する。本項における「付勢力検出器」は、特に限定されるものではなく、各種の荷重センサ,圧力センサ等を用いることができる。具体的に言えば、例えば、ロードセル,磁歪式力センサ,圧電式力センサ,力平行式圧力センサ,静電容量式圧力センサ,半道体式圧力センサ,圧電式圧力センサ等、種々のセンサが利用可能である。なお、「操舵装置検出装置」は、ステアリングシステムの構成要素の1つであり、本アクチュエータからの検出信号に基づき、演算処理等を行って、操舵量を取得する装置である。電子制御式のステアリングシステムの場合、コンピュータ等を主体とする制御装置の一部分が、操舵装置検出装置としての機能を果たすものであってもよい。
(26)前記移動体付勢機構が、(a)前記軌道上に設けられて自身の位置が固定された固定体と、(b)前記移動体と前記固定体との間に介在させられ、前記軌道に沿った方向における自身の両端の距離である両端間距離の変動に応じた反力を発生させる反力発生手段とを有し、その反力発生手段が発生させる反力に依拠した前記付勢力を付与するものであり、
前記付勢力検出器が、前記移動体あるいは前記固定体と前記反力発生手段との間に介在させられて、それらの一方が他方から受ける荷重あるいは圧力を検出するものである(25)項に記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、平たく言えば、移動体付勢機構を前述の反力発生手段を採用したものに限定した態様において、その付勢力を検出する際に、反力発生手段による反力を検出する態様である。簡便に、付勢力を検出することが可能である。なお、前述のように、反力発生手段は、ばね等の弾性体,磁石対等を含んで構成することが可能である。
(27)前記移動体が、互いに反対となる操舵方向に対して互いに反対となる移動方向に移動するものとされ、その互いに反対となる移動方向の各々に対して前記移動体付勢機構が設けられたことで、当該アクチュエータが2つの前記移動体付勢機構を備え、
それら2つの移動体付勢機構の各々の付勢力を検出すべく、前記付勢力検出器を2つ備えた(25)項または(26)項に記載のアクチュエータ。
本項に記載の態様は、前述したような2つの移動体付勢機構を備える態様において、それぞれの移動体付勢機構による付勢力を検出する態様である。双方向における操舵量を検出するために2つの付勢力検出器を設けることは必須ではないが、2つの付勢力検出器を設ける場合は、より正確に操舵量を検出できることになる。
(28)当該アクチュエータが、前記ステアリングシステムとしての、ステアリング操作部材に加えられる操作力によらずに自身が備える動力源の動力によって車輪が転舵されるステアリングシステムに配備される(1)項ないし(27)項のいずれかに記載のステアリング装置。
本項に記載の態様は、先に説明した操作部転舵部分離型のステアリングシステムに配備される態様のアクチュエータに関する。操作部転舵部分離型システムでは、転舵部からの反力が操作部材に入力されないため、本アクチュエータは、そのようなシステムにおける操作反力付与装置として、特に好適である。また、操作部転舵部分離型システムでは、操作部材の操作量に応じた転舵量の転舵を行うように電子制御されるため、操作部材の操作量を検出することが必須とされる場合がある。したがって、本アクチュエータは、そのようなシステムにおける操舵量検出器として、特に好適である。
(31)(1)項ないし(28)項のいずれかに記載のアクチュエータを備えた車両用ステアリングシステム。
本発明は、上記各アクチュエータとして具現化されるだけでなく、本項に記載の態様のように、それらのアクチュエータを備えたステアリングシステムとして具現化することも可能である。
以下、本発明のいくつかの実施例およびそれらの変形例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<第1実施例>
図1に、本発明のアクチュエータが配備されたステアリングシステムを模式的に示す。本システムは、操作部10と、転舵部12とが機械的に分離され、ステアリング操作部材であるステアリングホイール14に加えられる操作力によらずに、転舵部12に設けられた動力源の動力によって転舵車輪16(以下、単に「車輪16」という場合がある)を転舵するステアリングシステムである。後に詳しく説明するが、本発明のアクチュエータは、操作部10,転舵部20のそれぞれに備わっており、それらを、それぞれ操作部アクチュエータ,転舵部アクチュエータと呼ぶことにする。
操作部10は、操作装置20を主体として構成されている。操作装置20は、運転者によって回転操作されるステアリングホイール14を備え、車体に固定されている。後に詳しく説明するが、操作装置20は、ステアリングホイール14の操作角(操舵量の一種である)を検出するためのセンサとしての機能と、ステアリングホイール14の回転操作に対する反力、つまり、操作反力を付与する機能とを有している。なお、操作反力は、主として操作部アクチュエータによって付与され、操作装置20が備える反力調整モータによって調整される。
転舵部12は、車体に固定されて転舵ロッド22を軸方向に往復移動させる転舵装置24を主体として構成されている。内部の図示は省略するが、転舵装置24は、動力源としての転舵モータを備えてており、転舵ロッド22に形成されたボールねじに噛合するボールナットを、その転舵モータによって回転駆動することにより、転舵ロッド22が軸方向に移動させられる構造とされている。転舵ロッド22の両端の各々は、ボールジョイント26を介して、タイロッド28に連結され、タイロッド28の他端部は、もう一種のボールジョイント30を介して、車輪16を回転可能に保持するステアリングナックル32の一部分であるナックルアーム34に連結されている。このような連結構造により、転舵ロッド22が軸方向に移動させられることで、車輪16が転舵されるのである。
本ステアリングシステムは、自身が備えるステアリング電子制御ユニット40(ステアリングECU、以下、単に「ECU40」という場合がある)によって制御される。後に詳しく説明するが、ECU40は、操作装置20によって検出されたステアリングホイール14の操作角の指標となる因子量(操作角パラメータ)を、電気信号として入手し、また、転舵装置24によって検出された転舵ロッド22の移動量すなわち車輪16の転舵角(操舵量の一種である)の指標となる因子量(転舵角パラメータ)を、電気信号として入手する。ECU40は、それらのパラメータに基づいて、操作角および転舵角を演算処理によって求め、操作角に応じた転舵角となるように、転舵装置24が備える転舵モータを制御駆動するのである。
本ステアリングシステムは、車速感応式ステアリングシステムであり、車体速度が速い場合には、ステアリング操作を重くするために、車体速度に応じて操作反力を増加するような機能を有しており、ECU40は、そのための制御をも行う。車両には、転舵車輪16を含む各車輪に対して、車輪回転速度を検出する車輪速センサ42が設けられており(図では、1つの車輪に対するもののみを示しており、他の車輪に対するものは省略されている)、ECU40は、各車輪速センサ42によって検出された各車輪の車輪回転速度を,電気信号として入手し、それらから車体速度を求めることができるようになっている。ECU40は、その車体速度に基づいて、操作装置20が備える反力調整モータを制御駆動する。それにより、ステアリングホイール14には、車体速度に依拠した操作反力の増加分が付与されることになる。
図2に、操作装置20を拡大して示す。操作装置20は、ステアリングホイール14と、ステアリングホイール14が一端部に相対回転不能に取付られたシャフト50と、シャフト50を回転可能に保持するシャフト保持装置52と、本発明のアクチュエータである前述の操作部アクチュエータ54と、前述の反力調整モータ56とを含んで構成されている。操作装置20は、締結穴58を利用して、シャフト保持装置52の下部が、車体に、詳しくは、インストゥルメントパネルのリインフォースメントに取り付けられる。
図3に、シャフト保持装置52および反力調整モータ56の断面を示す。この図は、上方からの視点における断面図であり、図の右側が車両後方側、つまり運転者側である。なお、以下の説明において、車両前方側を「前」,車両後方側を「後」と呼び分けることとする。
シャフト50は、後方端部を除き中空とされており、後端部である小径部70の外周にセレーションが形成されており、その小径部70が、ステアリングホイール14のボス部72と嵌合するようにされている(図2参照)。シャフト保持装置52は、一体として形成されたシャフト保持装置本体74(以下、単に「本体」74という場合がある)を有しており、シャフト50は、その本体74に回転可能に保持される。詳しく言えば、本体74に形成された保持穴76の内周面の後端部および前端部付近のそれぞれに軸受78が保持されており、シャフト50の前端部および中間部が、それぞれ、軸受78を介して保持されているのである。
反力調整モータ56は、ディスク状の電機子をロータとするいわゆるプリントモータと呼ばれるモータであり、扁平な形状をなしている。反力調整モータ56は、ハウジング86を有し、出力軸としての概ね円筒形状をなす短いモータ軸88が、ハウジング86の中央に形成された軸保持穴90において、軸受92を介して、ハウジング86に回転可能に保持されている。本反力調整モータ56では、2枚のロータ94が、互いに離間する状態で、モータ軸88の外周部に相対回転不能に固定して設けられている。ロータ94は、一般的なプリントモータが備えるものと同様のものであるため説明は簡単なものに留めるが、コイル線を形成するように打ち抜かれた銅薄板が絶縁板を介して積層され、形成されたコイル線のいくつかのものどうしが電気な導通を確保されることで、平板に形成されたコイルを有する構造とされている。2枚のロータ94の間には、ステータとしての比較的薄い環状をなす永久磁石96が、2つのロータ94のそれぞれと小さい隙間を有する状態で、自身の外周がハウジング86に固定されて保持されている。この永久磁石も、通常のプリントモータが備えるものと同様のものである。2枚のロータ94の各々への通電は、各々のロータ94の表面に形成されたコイル線の一部分をコミュテータとして、各々2つのブラシ98によって行われる。
反力調整モータ56は、シャフト保持装置52に固定されている。詳しく言えば、自身のハウジング86とシャフト保持装置52の前端部の外面とが固定部材100によって接続されることで、シャフト保持装置52に固定されている(図2参照)。一方、モータ軸88には、シャフト50が、相対回転不能な状態で嵌入させられている。このような構造により、反力調整モータ56が回転することで、厳密に言えば、ロータ94が回転することで、シャフト50が回転するようにされている。つまり、反力調整モータ56の回転力は、シャフト50に接続されたステアリングホイール14の回転力として伝達される。運転者のステアリングホイール14の回転操作とは反対の方向に回転力を与えることで、操作反力が付与され、運転者の回転操作と同方向に回転力を与えることで、運転者の操作が助勢されるのである。
本反力調整モータ56は、ロータ94がコアを有していないため、比較的イナーシャが小さく、また、ロータ94への非通電時において永久磁石94の磁力がロータ94に作用することがなく、ステアリング操作におけるフィーリングに殆ど悪影響を与えない。また、2つのロータ94は、互いのトルクリップルが打ち消されるように位相をずらして設けられているため、円滑な回転が担保されている。つまり、本反力調整モータ56を用いることにより、操作フィーリングが良好な操作装置が実現するのである。さらに、本反力調整モータ56は、2つのロータ94が冗長化された状態にあり、一方の失陥によっても、モータの機能を喪失することがなく、信頼性が高いモータとされている。
シャフト50の前端部には、比較的小径のギヤ102を相対回転不能に保持するギヤ軸104が、相対回転不能に嵌入されて固定されている。また、シャフト保持装置52の前端部には、後に説明する操作部アクチュエータ54の入出力軸であるピニオン軸106の一端部が、保持穴76の下方に設けられた軸受(図示を省略)を介して回転可能に保持されている。ピニオン軸106には、比較的大径のギヤ108が相対回転不能に設けられており、そのギヤ108は、上記小径のギヤ102と噛合させられている。このような構造により、シャフト50の回転は、減速されつつ、ピニオン軸106の回転として伝達される。
図4に、操作部アクチュエータ54の断面を示す。操作部アクチュエータ54は、ハウジング120を有する。ハウジング120は、大きくは、概ね円筒形状に形成されたハウジング円筒部122と、その円筒部122と一体的に形成されてシャフト保持装置52の本体74に取り付けられる部分である被取付部124とに区分できる。操作部アクチュエータ54は、ハウジング円筒部122が車両の左右方向に延びて位置する状態で、シャフト保持装置52に固定されている(図2,図3参照)。
ハウジング円筒部122の両端部には、各々の端部を閉塞する端部閉塞部材126が固定して設けられている。ハウジング円筒部122の内部には、両端の各々が端部閉塞部材126に支持されることで、断面が菱形をなすガイドロッド128が挿通させられている。外形断面形状が矩形をなして、長手方向に設けられた貫通穴130を有して移動体として機能するスライド部材132が、ガイドロッド128を貫通穴130に挿通させることで、ガイドロッド128によって支持されている。スライド部材132の貫通穴130は、その断面が菱形をなし、その内面の表面には、低摩擦係数材料からなる減摩パッド134がライニングされている。減摩パッド134の表面とガイドロッド128の外表面とが摺接する構造とされることで、スライド部材132は、ガイドロッド128によって自身の回転が禁止されるとともに、ガイドロッド128に沿った左右方向への直線的な移動、すなわち、軌道形成部材としてのガイドロッド128によって定められた軌道上の移動が許容されている。
詳しい図示は省略するが、上記ピニオン軸106のシャフト保持装置52に保持されていない側の一端部は、ハウジング120の取付部124の後方端部の下部において、回転可能に保持されており(図2参照)、そのピニオン軸106には、ピニオン150が相対回転不能に設けられている。スライド部材132の下部には、ラック152が形成されており、ピニオン150は、そのラック152と噛合するものとされている。ピニオン軸106は、ステアリングホイール14の操作に応じて回転する回転軸として機能し、ステアリングホイール14の操作によって、スライド部材132が、それの操作角に応じた位置まで、ガイドロッド128によって規定された軌道に沿って移動させられる。このラックアンドピニオン機構は、移動体の所定の軌道に沿った移動を許容する機構、つまり、移動体移動許容機構としての役割を果たしている。なお、図は、ステアリングホイール14が操作の中立位置に位置する場合であり、スライド部材132は、ハウジング円筒部122の中央に位置しているが、車両が左旋回するようにステアリングホイール14が操作された場合は、スライド部材132は、図における位置から左方向に移動し(車両の右側へ向かう方向であるが、操作部アクチュエータの説明においては、特に断りのない限り、スライド部材132の移動方向、各種構成要素の位置等は図における左右で表現するものとする)、逆に、右旋回するように操作された場合は、右方向に移動する。
ハウジング円筒部122内には、スライド部材132と左側の端部閉塞部材126との間と、スライド部材132と右側の端部閉塞部材126との間との各々に、スプリング支持部材156,158,160と、2つの圧縮コイルスプリング(以下、単に「スプリング」と略す場合がある)162,164と、1つの荷重センサ166が配設されている。なお、スライド部材132の両側は、同じ構成(左右対称)とされているため、以下の構成についての説明は、片側のみについて行うことにする。
スプリング支持部材(以下、単に「支持部材」と略す場合がある)156,158,160は、いずれも外形が円筒形状をなし、自身の外周面がハウジング円筒部122の内周面び摺接する状態で、左右方向に移動可能とされている。両側に位置する支持部材156,160は、底壁を有する円筒形状をなして一方の端部側に開口する形状とされて、それらの開口が互いに向かい合うように配置されている。それら支持部材156,160の中間に位置する支持部材158は、内部を区画する区画壁を有する円筒形状をなして両方の端部側に開口する形状とされている。なお、支持部材156,158,160の底壁,区画壁の中央部には穴が形成されており、また、荷重センサ166はドーナツ形状とされたことで、それらをガイドロッド128が挿通するような構造とされている。なお、荷重センサ166は、支持部材160と端部閉塞部材126との間に配設されている。
スプリング162,164は、互いに巻数,線径,スプリング長が異なり、ばね定数は、スプリング164のほうが、スプリング162よりも大きな値とされている(このことから、スプリング162を「軟スプリング162」,スプリング164を「硬スプリング164」と呼び分ける場合がある)。軟スプリング162は、支持部材156と支持部材158との向かい合う開口に両端のそれぞれを挿入する状態で支持され、硬スプリング164は、支持部材158と支持部材160の向かい合う開口に両端のそれぞれを挿入する状態で支持されている。つまり、軟スプリング162と硬スプリング164とは直列に配置されているのである。
2つのスプリング162,164は、ともに、配設された状態において縮められており、圧縮による反力を発生するものとされている。したがって、それらの圧縮反力は、スライド部材132を付勢する付勢力として作用することになる。つまり、軟スプリング162と、支持部材156と、支持部材158の区画壁を含む軟スプリング162側の部分とを含んで、第1の反力発生手段170が構成され、硬スプリング164と、支持部材158の区画壁を含む硬スプリング164側の部分と、支持部材160とを含んで、第2の反力発生手段172が構成されており、直列に配置されたそれらの反力発生手段170,172と、固定体として機能する端部閉塞部材126とを含んで、移動体であるスライド部材を付勢する移動体付勢機構174が構成されているのである。
操作部アクチュエータ54は、スライド部材132を挟む両側のそれぞれに、構成を同じくする上記移動体付勢機構174が設けられ、それらは互いに反対方向にスライド部材132を付勢する構造となっている。ステアリングホイール14を回転操作した場合にその操作角に応じて、スライド部材132が移動させられるため、移動方向側の移動体付勢機構174による付勢力が反対側の移動体付勢機構174による付勢力より大きくなる。この付勢力の差が、スライド部材132の移動を阻止しようとする力となり、ひいては、ステアリングホイール14の操作に対する反力、すなわち操作反力となるのである。つまり、操作部アクチュエータ54は、操作反力付与装置として機能するものとなっている。
また、上記2つの移動体付勢機構174の構成が同じものとされていることで、スライド部材132が、図における軌道上の位置、つまり中立位置に位置する状態において、2つの移動体付勢機構174の各々の付勢力は釣り合うものとなっている。換言すれば、2つの移動体付勢機構174の付勢力の釣り合う位置でスライド部材132の中立位置が規定され、また、スライド部材132が中立位置に位置する場合に、ステアリングホイール14の操作位置(操作角度位置)が中立位置とされる。つまり、操作部アクチュエータ54は、ステアリングホイール14が操作されていない状態において、ステアリングホイール14を中立位置に保持させる機構、すなわち、操作部材中立位置保持機構を備えているのである。
図5に、ステアリング操作に応じたスライド部材132の移動およびスプリング162,164の伸縮の様子を示す。ステアリングホイール14を中立位置から左旋回操作を開始すれば、スライド部材132は、左方に移動を開始し、スライド部材132の左方に配置された軟スプリング162,硬スプリング164は、ともに、さらに縮まされ始め、右方に配置された軟スプリング162,硬スプリング164は、ともに、縮みが減少させられ始める。スライド部材132が、ある位置まで達すると、左方に位置する軟スプリング162を支持している支持部材156,158は、互いの開口端どうしが当接する状態となる。この状態が、図5(a)に示す状態である。この状態では、左方に位置する軟スプリング162がそれ以上縮まされることがなく、支持部材156と支持部材158とが直接的に力を伝達する状態となる。つまり、第1反力発生手段170が剛体化した状態である。この状態から、さらに、左旋回操作を続けると、スライド部材132はさらに左方に移動し、右方側においては、軟スプリング162,硬スプリング164は、ともに、さらに縮みが減少させられゆくが、左方側においては、硬スプリング164のみが縮まされることになる。そして、左方に位置する硬スプリング164を支持する支持部材158,160は、互いの開口端どうしが当接する状態となる。この状態が図5(b)に示す状態である。この状態では、スライド部材132は、左方側への移動限界位置に位置してそれ以上の左方への移動が禁止され、その位置において、ステアリングホイール14の左操作における限度、つまり、操作ストロークのストロークエンドが規定されることになる。なお、移動限界位置に位置する状態において、反対側に存在するスプリング162,164は、ともに、少しだけ圧縮された状態となっている。以上が、左旋回操作の場合であるが、右旋回操作の場合は、上記説明した状態とは逆の状態が進行することになる。
図6に、反力発生手段170,172の特性、スライド部材132の移動位置とスライド部材132に作用する移動体付勢機構174による付勢力との関係を、グラフにして示す。軟スプリング162、硬スプリング164は、それぞのばね定数が、k1,k2(k1<k2)とされており、それぞれ、図6(a),(b)のグラフに示すような特性を有している。グラフにおける横軸Δlは、スプリング長の自然長からの変化量つまり縮み代であり、縦軸fは、圧縮による反力である。上記構成から、反力発生手段170,172の特性は、スプリング162,164の特性に依存し、両端間距離(自身の軌道方向長)の変動量に対する反力の大きさの変動量の変動勾配を反力変動勾配とすれば、反力発生手段170,172は、それぞれ、ばね定数k1,k2に相応するの反力変動勾配を有するものとなっている。
上記特性を有する反力発生手段170,172が直列に配置された2つの移動体付勢機構174は、図6(c)のグラフに示すような付勢力でスライド部材を付勢することになる。グラフにおける横軸は、移動体の移動量xを示しており、中立位置を0として右方向に移動する場合を+,左方向に移動する場合を−としている。また、縦軸は、付勢力Fであり、スライド部材132を右方向に付勢する場合を+,左方向に付勢する場合を−としている。FLが、スライド部材132左側に配設された移動体付勢機構174による付勢力であり、FRが、右側に配設された移動体付勢機構174による付勢力である。
グラフから判るように、スライド部材132が中立位置から移動して設定移動量xR1,xL1となる位置(設定移動位置、図5(a)に相当する位置である)に至るまでの間、つまり、スライド部材132の移動量が設定移動量を超えない範囲においては、付勢力FR,FLは、ともに、付勢力増加勾配が小さいものとなっている。ちなみに、その範囲における付勢力増加勾配は、k1・k2/(k1+k2)で表される値に相応する勾配となっている。スライド部材132の移動量が設定移動量を超えた場合は、反力発生手段170は剛体化されるため、その場合の付勢力増加勾配は、k2となって、設定移動量を超えない場合に比較して大きくなり、その大きな増加勾配を維持して、移動限界量xRE,xLEとなる位置(移動限界位置)にまで至る。つまり、移動体付勢機構174は、一方の反力発生手段である反力発生手段170の反力の発生状態を変更することで、付勢力の増加勾配を大きくしているのである。ちなみに、操作していない場合、つまりステアリングホイール14が中立位置に位置する場合は、2つの移動体付勢機構174による付勢力が釣合うものとされている。
上記2つの移動体付勢機構174による付勢力FR,FLの差である付勢力差FSが、ステアリングホイール14に与えられる操作反力に相当し、グラフから判るように、スライド部材の設定移動量xR1,xL1に相当する設定操作角を超えるステアリングホイール14の操作が行われる場合に、操作反力の増加勾配も大きくされるのである。運転者にしてみれば、設定操作角を超えた場合に、急に操作が重くなるような操作感が得られることになり、ステアリング操作のストロークエンドをしっかりと感知することができる。なお、移動体付勢機構174による付勢力FR,FLは、設定移動位置xR1,xL1においてギャップなく変化するため、運転者に違和感を与えることもない。
以上が、移動体付勢機構174による付勢力の説明であるが、本操作部アクチュエータ54では、それぞれの移動体付勢機構174による付勢力FR,FLを検出する機能を備えている。支持部材160と固定体である端部閉塞部材126との間に配設されてる荷重センサ166は、圧電素子を利用したセンサであり、左右のそれぞれの荷重センサ166は、付勢力FR,FLのそれぞれに応じた電圧信号を出力する。付勢力FR,FLの値は、上述したように、ステアリングホイール14の操作角に応じた値となるため、出力される信号は、その操作角に応じた値となる。出力信号は、前述のECU40が受信し、ECU40は、自身に記憶された操作角と付勢力との関連付けのためのマップデータに基づき、操作角を演算処理によって求める。つまり、荷重センサ166は、付勢力検出器として機能するものであり、操作部アクチュエータ54は、ステアリングホイール14の操作角を検出する操舵量検出装置のセンサとしての役割を果たすものとされている。
図4に戻って説明すれば、操作部アクチュエータ54は、さらに、スライド部材132の軌道上の移動を禁止する移動体移動禁止機構178を備えている。スライド部材132には、それの上部に複数の歯山を有する被係止部としての被係止歯180が形成されており、ハウジング円筒部122の中央上方には、係止ピン進退装置182が固定して設けられている(図2参照)。係止ピン進退装置182は、ソレノイド装置であり。ケーシング184に固定的に設けられた電磁コイル186と、電磁コイル186が励磁されることによって上方に移動する係止部としての係止ピン188と、係止ピン188を下方に向かって付勢する圧縮コイルスプリング190とを含んで構成されている。電磁コイル186は、車両のイグニッションスイッチがON状態とされた場合に励磁され、OFF状態とされた場合に消磁されるようになっている。ちなみに、図に示す状態は係止ピン188が後退させられている励磁状態であり、消磁状態においては、係止ピン188は、スプリング190により前進させられる。係止ピン188は、前進させられた状態において、それの先端が、被係止歯180と係合し、スライド部材132の軌道に沿った移動が禁止されることになる。つまり、係止ピン進退装置182は、係止部と被係止部との係止可能状態と係止不能状態とを切り換える切換手段として機能し、係止可能状態とされることで、ステアリング操作がロックされることになる。被係止歯180は、歯山が細かいピッチで連続して形成されたものであり、スライド部材132の移動範囲における任意の位置において、いずれかの歯山と噛合し、その位置でのスライド部材132の移動が禁止可能とされている(図5参照)。つまり、ステアリングホイール14が操作された場合において、任意の操作位置においてもステアリングロックが可能とされているのである。
次に、転舵部12に設けられている本発明のアクチュエータ、詳しくは、転舵装置24の構成要素として機能する転舵部アクチュエータについて説明する。図7に、転舵アクチュエータの断面を示す。転舵部アクチュエータ200は、上記操作部アクチュエータ54と類似する構造とされている。簡単に言えば、操作部アクチュエータ54において2つの移動体付勢機構174の各々が2つの反力発生手段170,172を有していたのに対して、反力発生手段を1つのみ有する移動体付勢機構を採用するとともに、上記移動体移動禁止機構を排除した構造とされている。構造の類似性に鑑み、転舵部アクチュエータ200の説明は、同じあるいは同種の構成要素については、操作部アクチュエータ54について用いた符合と同じ符号を使用するものとし、簡略に行うものとする。
転舵部アクチュエータ200は、自身のハウジング120が転舵装置24のハウジング202と一体化される状態で、転舵装置24に付設されている(図1参照)。ピニオン軸106は転舵ロッド22の左右方向の移動、つまり、転舵車輪16の転舵によって回転する構造となっている。詳しく言えば、操舵装置24には、図示を省略するところの、転舵ロッド22に形成されたラック204と噛合するピニオンとを含んで構成されたラックアンドピニオン機構を有しており、そのピニオンに同軸的に設けられたギヤが、ピニオン軸106に設けられたギヤ(図3参照)と噛合する構造とされており、転舵ロッド22の移動に応じて回転するのである。そのような構造から、スライド部材132は、転舵量に応じた量だけ、ガイドロッド128によって規定される軌道に沿って移動するようにされている。
転舵部アクチュエータ200が備える2つの移動体付勢機構208の各々は、1つの反力発生手段210を有している。その反力発生手段210は、圧縮コイルスプリング212とそれの両端を支持するスプリング支持部材214,216とを含んで構成され、端部閉塞部材126とスライド部材132との間に配設され、両端間距離である自身の軌道方向長がスライド部材132の移動に伴って変化するようにされている。なお、図は、転舵車輪が中立状態にある(左右いずれにも転舵されていない)場合を示しており、スライド部材は、ハウジング円筒部122の中央である中立位置に位置している。また、車輪16の転舵限界においても、支持部材214と支持部材216とが当接しないように、スライド部材132の移動範囲が設定されている。つまり、スライド部材132の移動量が移動限界量xRE,xLEとならないようにされている。
上記構造から、2つの移動体付勢機構208は、図8にグラフで示すような付勢力で、スライド部材132を付勢する。移動体付勢機構208の各々の付勢力FR,FLは、支持部材216と端部閉塞部材126との間に介在させられて付勢力検出器として機能する荷重センサ166によって検出され、操舵量としての車輪16の転舵角が、ECU40によって取得されることになる。つまり、転舵部アクチュエータ200も、操舵量検出装置のセンサとしての役割を果たすものとされているのである。
以上、第1実施例のアクチュエータである操作部アクチュエータ54,転舵部アクチュエータを配備したステアリングシステムを説明した。操作部アクチュエータ54が配備された操作装置20は、操作反力付与装置,操作部材中立位置保持機構,移動体移動禁止機構178、付勢力検出器等を備えるにも拘わらず、図2から解るようにコンパクトなものとされている。特に、ステアリングホイール14の回転軸線方向における長さが短くされている。このことは、車両衝突時のステアリングホイール14への運転者の二次衝突の衝撃吸収を行う際、当該操作装置20の移動距離を長くすることができることになり、本操作装置20を装備した車両は、効果的な衝撃吸収を行うことが可能となる。また、転舵部アクチュエータ200が配備された転舵装置24は、エンコーダ等の機器を備えることなく、しかも、車輪16の転舵位置を検出できるものとされていることで、簡便な転舵装置となっている。
次に、第1実施例のアクチュエータの変形例として、前述の操作部アクチュエータ54の構成要素等を変更したいくつかのアクチュエータを説明する。以下の操作部アクチュエータは、操作部アクチュエータ54とその構造が類似する部分があり、そのことに鑑み、以下の操作部アクチュエータの説明は、同じあるいは同種の構成要素については、操作部アクチュエータ54について用いた符合と同じ符号を使用するものとし、簡略に行うものとする。
上記操作部アクチュエータ54では、移動体移動禁止機構178は、軌道上の任意の位置でスライド部材132の移動を禁止できるようにされていた。この移動体移動禁止機構178に代えて、図9に示すような移動体移動禁止機構228を採用したアクチュエータとすることが可能である。図に示す操作部アクチュエータ230は、スライド部材132の上部に、係止ピン進退装置182の有する係止ピン232が係合する被係止穴234が、1つだけ設けられている。係止ピン232と被係止穴234とが係合する状態におけるスライド部材132の位置は中立位置であり、その位置でのみスライド部材132の移動が禁止されるようにされている。したがって、ステアリングホイール14の操作における中立状態でのみ、ステアリングロックが働くようにされているのである。ステアリングホイール14が回転操作されている状態でイグニッションスイッチをOFF状態とし、その操作を終了させた場合、スライド部材132は、移動体付勢機構174によって中立位置にまで戻され、その位置において、係止ピン232と被係止穴234とが係合する。係止ピン232は、OFF状態の直後に下降して、スライド部材132をそれの上部に当接して付勢するが、係止ピン232の先端形状が丸くされており、スライド部材132は、係止ピン232と摺動して容易に移動できるようになっている。本操作部アクチュエータ230を採用すれば、次の車両の始動時において、車輪16の転舵量とステアリングホイール14の操作量が一致しない場合があるが、転舵装置24を起動させて、車輪16を中立状態まで戻した後、係止ピン進退装置182に通電して、係止ピン232による係止を解除すれば、転舵量と操作量とを容易に一致させることができる。
また、上記操作部アクチュエータ54では、移動体付勢機構174は、2つの反力発生手段170,172のいずれもが、圧縮コイルスプリング162,164を採用している。このような構成に代えて、図10に示すような構成の操作部アクチュエータ250とすることができる。図に示す操作部アクチュエータ250は、操作部アクチュエータ54における硬スプリング164に代え、スプリング支持部材158,160の各々に、永久磁石252,254を付設した態様のものである。2つの永久磁石は252、254は、両者の間に斥力が働くように対向して設けられた磁石対256を構成し、その磁石対256を含んで第2反力発生手段258が構成されている。そして、反力発生手段170および反力発生手段258とを含んで、本操作部アクチュエータ250における移動体付勢機構260が構成されているのである。
第1反力発生手段170および第2反力発生手段258は、図11(a),(b)に示すような特性を示す(図11(b)においては、永久磁石間の間隔量wを横軸にとっている)。圧縮コイルスプリングの場合と異なり、磁石対256では、反力変動勾配は、リニアなものとはならない。しかし、図10に示す状態での永久磁石252,254の間隔においては、第2反力発生手段258が、第1反力発生手段170に比べ、かなり大きいものとされていることから、左右に配置された移動体付勢機構260の各々のスライド部材132に作用する付勢力FR,FLとスライド部材132の移動量xとの関係は、図11(c)に示すようなものとなる。つまり、この関係は、図6(c)に示す操作部アクチュエータ54における関係と類似するものとなっており、本操作部アクチュエータ250は、操作部アクチュエータ54による場合の操作反力と類似した操作反力を付与するものとなっている。なお、荷重センサ166は、上記操作部アクチュエータ54における場合と同様に付勢力FR,FLを検出可能である。
さらに、上記操作部アクチュエータ54では、反力発生手段170,172を直列に配置する移動体付勢機構174を採用していたが、この配置を変更し、図12のようなアクチュエータとすることもできる。図に示す操作部アクチュエータ280は、同じ構成の2つの移動体付勢機構282を備え、それぞれの移動体付勢機構282は、それの構成要素である2つの反力発生手段284,286が並列に配置されている。反力発生手段284,286の各々は、線材の巻数つまりスプリング長およびコイル径が互いに異なる2つの圧縮コイルスプリング290,292である。反力発生手段284としてのスプリング290(長い方であり、以下、「長スプリング290」という場合がある)と、反力発生手段286であるスプリング292(短い方であり、以下、「短スプリング292」という場合がある)とは、同軸的に配設され、短スプリング292は、長スプリング290の内部に位置するように配設されている。長スプリング290は、両端部がスプリング支持部材294,296に支持されている。短スプリング292は、一端部が、当該操作部アクチュエータ280の端部側の支持部材296に固定されて支持されているが、他端部は、スライド部材132が中央付近に位置する場合には、もう一方の支持部材296の底壁には当接しない状態とされている。ステアリングホイール14の操作角が設定された角度を超えて大きくなる場合、つまり、スライド部材132が設定移動量を超える場合において、短スプリング292は、上記他端部が支持部材296の底壁に当接し、反力を発生させる状態となる。
スプリング290,292の特性は、それぞれ図13(a),(b)に示すようであり、短スプリング292のばね定数k2は、長スプリングばね定数k1より大きくされている。図13(c)に示すように、スライド部材132の移動量が設定移動量xR1,xL1を超えない場合は、移動体付勢機構282の付勢力増加勾配は、反力発生手段284の反力変動勾配である長スプリング290のばね定数k1に相応するものとなり、設定移動量xR1,xL1を超えた場合には、2つの反力発生手段284,286の反力変動勾配の和、すなわち、2つのスプリング290,292のばね定数の和(k1+k2)に相応するものとなる。したがって、2つの移動体付勢機構282の付勢力FR,FLは、グラフに示すようになり、その増加勾配は、スライド部材132の移動量が設定移動量xR1,xL1を超えた場合大きくされるのである。本操作部アクチュエータ280を採用する場合も、上記操作部アクチュエータ54を採用する場合と同様、付勢力差FSに相当する操作反力がステアリングホイール14に付与され、設定操作角を超えるステアリング操作が行われる場合に、急に操作が重くなるような操作感が運転者に与えられることになる。なお、操作部アクチュエータ54の場合と同様、2つの移動体付勢機構282の付勢力FR,FLは、荷重センサ166によって検出される。
<第2実施例>
図14に、本発明のアクチュエータである操作部アクチュエータを備えた操作装置の斜視図を示す。この図は、車両左前方の上方から見た斜視図である、操作装置310は、図1に示すステアリングシステムにおいて、操作装置20に代えて採用することができる。ステアリングシステム内における当該操作装置310の機能については、操作装置20と同様であるため、説明は省略する。なお、先に説明した構成要素と同じまたは類似する構成要素については、以下の説明において、同じ符号を用いる場合があり、また、説明を省略する場合がある。
操作装置310は、ステアリングホイール14と、ステアリングホイール14が一端部に相対回転不能に取付られたシャフト312と、シャフト312を回転可能に保持するとともにシャフト312の一部分を自身の構成要素として含んで構成される操作部アクチュエータ314と、先に説明した反力調整モータ56とを含んで構成される。なお、操作装置310は、操作部アクチュエータ314のハウジング316と一体的に形成された取付ブラケット318において、インストゥルメントパネルのリインフォースメントに取り付けられる。
図15に、操作部アクチュエータ314および反力調整モータ56の断面を示す。この図は、上方からの視点における断面図であり、図の右側が車両後方側、つまり運転者側である。なお、以下の説明において、車両前方側を「前」,車両後方側を「後」と呼び分けることとする。
シャフト312は、後方端部を除き中空とされており、後端部である小径部326の外周には、セレーションが形成され、その小径部326が、ステアリングホイール14のボス部72と嵌合するようにされている(図14参照)。操作部アクチュエータ314のハウジング316は、円筒形状をなしており、両端部の各々に端部部材328が、固定的に付設されている。シャフト312は、それら両端の端部部材328の各々に、軸受330を介して相対回転可能に保持されている。なお、シャフト312は、ハウジング316内の部分にベアリングボールが嵌り込む雄ねじ332が形成され、ボールねじとして機能するものとなっている。
ハウジング316内には、シャフト312を挿通させる状態で前後に移動する移動体としてのスライド部材334が設けられている。スライド部材334の外周部にはキー336が付設されており、そのキー336は、ハウジング312の内周面に形成されたキー溝338と緩やかに嵌合している。このキー336およびキー溝338により、スライド部材334は、ハウジング316との相対回転を禁止される。また、スライド部材334の内周部には、ねじ溝に沿って周回するベアリングホールが保持されており、スライド部材334は、ボールナットとして機能するものとされている。このスライド部材334の内周部は、シャフト312の雄ねじ332と噛合しており、シャフト312とスライド部材334とでボールねじ機構が構成されている。ステアリングホイール14の回転操作に応じて回転軸としてのシャフト312が回転させられれば、その回転に応じてスライド部材334は、シャフト312に規定される軌道に沿って前後方向に移動する。つまり、操作部アクチュエータ314は、ボールねじ機構を採用する移動体移動許容機構を含むものとされているのである。ちなみに、車両が左旋回するようにステアリングホイール14を操作すれば、スライド部材334は、図に示す中立位置から前方へ移動し、右旋回するように操作すれば、後方に移動する。なお、スライド部材334の移動量は、ステアリングホイール14の操作量に応じたものとなる。
ハウジング316内部の両端部の各々には、圧縮コイルスプリング340を支持する支持部材342が配設されている、支持部材342は、円筒部344とシャフト312を挿通させる挿通穴が形成された底部346とからなる有底円筒形状をなし、底部346の外面を端部部材328に当接する状態で配設されている。一方、スライド部材334は、両端部の各々に、比較的短い長さの円筒部348が形成されている。スライド部材334の前後方向の移動は、自身の円筒部348の端部が支持部材342の円筒部344の開口端部に当接することによって規制され、図に示す中立状態からその当接する状態までのスライド部材334の移動量が、移動限界量とされている。
操作部アクチュエータ314のハウジング316の内部に配設されている圧縮コイルスプリング340は、コイル径が大きな大径部350と、コイル径の小さな小径部352とからなり、それらが一体化されたものである。大径部350は、支持部材342の底部346の内側と自身の端部との間に荷重センサ354および支持環356を介在させる状態で、かつ、支持部材342の円筒部344の内面に自身の外周部が保持された状態で、支持部材342に支持されている。また、小径部352は、スライド部材334の円筒部348に保持環358を介して自身の外周部が保持される状態で、スライド部材334の端部に支持されている。
2つのスプリング340の各々は、図に示す中立位置において、ともに縮められており、圧縮による反力を発生するものとされている。したがって、それらの圧縮反力は、スライド部材334を付勢する付勢力として作用することになる。つまり、スプリング340、支持部材342、固定体としての端部部材328等を含んで、移動体付勢機構360が構成され、操作部アクチュエータ314は、そのスライド部材334を挟む前後方向の両側の各々に、移動体付勢機構360を備えるものとされているのである。ステアリングホイール14を回転操作した場合にその操作角に応じて、スライド部材334が移動させられるため、移動方向側の移動体付勢機構360による付勢力が反対側の移動体付勢機構360による付勢力より大きくなる。この付勢力の差が、ステアリング操作における操作反力として作用することで、操作部アクチュエータ314は、操作反力付与装置として機能するものとなっている。また、上記2つの移動体付勢機構360の構成が同じものとされていることで、スライド部材334が図に示す中立位置に位置する状態において、2つの移動体付勢機構360の各々の付勢力は釣り合うものとなっている。ステアリングホイール14が操作されていない状態において、それら付勢力の釣合いによりステアリングホイール14は中立位置に保持される。すなわち、操作部アクチュエータ314は、操作部材中立位置保持機構を備えているのである。
本実施例の操作部アクチュエータ314の備える圧縮コイルスプリング340は、先に述べたように、大径部350と小径部352とが一体化されたものである。大径部350と小径部352とでは、ばね特性が異なるものとなっている。具体的に言えば、大径部350のばね定数k1は、小径部352のばね定数k2より小さくなっている。したがって、スライド部材334が移動して、その移動先にあるスプリング340がさらに圧縮される場合に、大径部350の方が小径部352より長さの変動が大きくなる。そのため、スライド部材334がある移動量だけ移動した場合、大径部350が線材が密着した状態、つまり、剛体化した状態となり、それ以後は小径部352だけが圧縮によって長さを変化させることになる。この状態を図示することは省略するが、スプリング340の発生させる圧縮反力により、それぞれの移動体付勢機構360は、先に説明した図6のような付勢力でスライド部材334を付勢するものとなる。具体的に言えば、スライド部材334が中立位置から移動してその移動量が設定移動量xR1,xL1となる位置までの間は、大径部350および小径部352ともにスプリング長を変化させる状態であり、付勢力FR,FLの増加勾配は小さく、設定移動量xR1,xL1において大径部350が剛体化し、設定移動量xR1,xL1を超えてからは、小径部352のみがスプリング長を変化させる状態となって、付勢力FR,FLの増加勾配が大きくなるのである。2つの移動体付勢機構360による付勢力FR,FLの差である付勢力差FSが、ステアリングホイール14に与えられる操作反力に相当し、グラフから判るように、スライド部材の設定移動量xR1,xL1に相当する設定操作角を超えるステアリングホイール14の操作が行われる場合に、操作反力の増加勾配も大きくされるのである。
以上のような作用から、操作部アクチュエータ314の備える移動体付勢機構360は、互いに反力変動勾配の異なる2つの反力発生手段362,364を有し、それらが直列的に配置されたものといえる。つまり、第1実施例の操作部アクチュエータ54の場合と同様、スプリング340の大径部350が第1反力発生手段362として、小径部352が第2反力発生手段364として機能するものとなっており、大径部350を剛体化させることで、つまり、第1反力発生手段364の反力発生状態を変更させることで、付勢力の増加勾配を大きくしているのである。
なお、第1実施例の操作部アクチュエータ54と同様、2つの移動体付勢機構36の各々の付勢力は、荷重センサ354によって検出され、その検出された付勢力を利用して、ステアリングホイール14の操作角つまり操作量を取得することが可能である。すなわち、本操作部アクチュエータ314も、操舵量検出装置のセンサとしての機能をも備えているのである。
また、先に説明したように、操作装置310は、反力調整モータ56を備えている。反力調整モータ56の構造は、第1実施例において説明したものの構造と同様であるため、ここでの説明は省略する。反力調整モータ56は、自身のハウジング86に付設された固定部材368によって、操作部アクチュエータ314のステアリングホイール14側の端部部材328に固定されるととともに、モータ軸88が、シャフト312を挿通させる状態でそのシャフト312と相対回転不能とされている。反力調整モータ56は、制御駆動されてシャフト312に所定の回転力を付与することで、操作反力の調整を行う。
以上、第2実施例のアクチュエータである操作部アクチュエータ314を配備した操作装置310を説明した。本操作装置310は、第1実施例の操作部アクチュエータ54を装備した操作装置20と同様、操作反力付与装置,操作部材中立位置保持機構、付勢力検出器等を備えるにも拘わらず、図14から解るようにコンパクトなものとされている。操作装置20とは異なり、特に、ステアリングホイール14の径方向の寸法が小さくされており、その点において、配置スペースからの制約を受け難いものとされている。
次に、第2実施例の操作部アクチュエータ314の変形例として、いくつかの操作部アクチュエータを、場合によっては図を参照しつつ説明する。以下の操作部アクチュエータは、操作部アクチュエータ314とその構造が類似する部分があり、そのことに鑑み、以下の操作部アクチュエータの説明は、同じあるいは同種の構成要素については、操作部アクチュエータ314について用いた符合と同じ符号を使用するものとし、簡略に行うものとする。
上記操作部アクチュエータ314では、移動体付勢機構360において、大径部350と小径部352とが一体化された圧縮コイルスプリング340を採用している。これに代え、図示は省略するが、線材のピッチを細かくした細ピッチ部と、線材のピッチを粗くした粗ピッチ部とが一体化されたような圧縮コイルスプリングを採用することも可能である。スライド部材334の移動量の増加に伴い、細ピッチ部が先に剛体化し、以後の圧縮では、粗ピッチ部のみが、それのスプリング長を変化させる状態となる。そのため、その府プリングは、先のスプリング340と同様に、スライド部材334が設定移動量を超える場合に反力変動勾配が大きくなる。したがって、細ピッチ部と粗ピッチ部とが一体化されたスプリングを採用した場合も、付勢力の特性が、図6に示すような特性となる移動体付勢機構が実現する。
また、移動体付勢機構におけるスプリングを別の態様のものに変更して、図16に示すような操作部アクチュエータ380とすることができる。本操作部アクチュエータ380において反力発生手段382として採用する圧縮コイルスプリング384は、コイル径が漸変するようなスプリングである。スライド部材334の移動量の増加に伴い、その移動量が設定移動量を超えた場合に、コイル径の大きな部分から漸次剛体化する。それに応じて、反力変動勾配であるばね定数が漸増し、本操作部アクチュエータ380の備える移動体付勢機構386は、図17に示すような特性の付勢力でスライド部材334を付勢することになる。つまり、スライド部材334の移動量が設定移動量xR1,xL1を超えるまでは、付勢力FR,FLは小さい値でリニアに増加し、設定移動量xR1,xL1を超えた後には、スプリング384の剛体化が開始されて、増加勾配が漸次大きくなるような特性の付勢力である。なお、図示を省略するが、コイル径が漸変するスプリング384に代えて、巻線のピッチが漸変するような圧縮コイルスプリングを採用することによっても、図17に示すような特性の付勢力を得ることが可能である。そのようなスプリングでは、スライド部材334の移動量が設定移動量を超えた場合、ピッチの細かな部分から漸次剛体化し、反力変動勾配であるばね定数が漸増するようなばね特性を示し、そのような特性を利用することで、設定移動量を超えた場合に、付勢力の増加勾配を漸次大きくさせることができるのである。
また、圧縮コイルスプリングに代えて、図18に示すように、互いに斥力を発生させるように対向させられた2つの磁石390,392からなる磁石対394を、反力発生手段396として採用することもできる。磁石対394を採用する移動力付勢機構398を備えた操作部アクチュエータ400では、磁石対394の反力特性がリニアでないことから、図19に示すように、中立位置から付勢力の増加勾配が漸次大きくなるような特性の移動力付勢機構、つまり、先の設定移動量といった概念の存在しない移動力付勢機構が実現する。
上記第2実施例の操作部アクチュエータ314およびその変形例である操作部アクチュエータ380,400等は、第1実施例の操作部アクチュエータ54が備えるところの移動体移動禁止機構を備えていないが、図4,図9に示すように、ソレノイド機構等を用いることで、スライド部材334を、軌道上の任意の位置において、あるいは、中立位置においてのみ移動を禁止するような機構を設けることも可能である。第1実施例の操作部アクチュエータ54を備えた操作装置20と同様のステアリングロック機能を有する操作装置とすることもできるのである。
本発明の第1実施例である操作部アクチュエータおよび転舵部アクチュエータが配備されたステアリングシステムを示す模式図である。
第1実施例の操作部アクチュエータを備えた操作装置を示す斜視図である。
図2の操作装置を構成するシャフト保持装置および反力付与モータを示す断面図である。
図2の操作装置を構成する第1実施例の操作部アクチュエータを示す断面図である。
第1実施例の操作部アクチュエータが備える移動体および移動体付勢機構のステアリング操作に応じた動作を示す図である。
第1実施例の操作部アクチュエータにおける移動体の位置と移動体付勢機構によって移動体が付勢される付勢力との関係を説明するためのグラフである。
図1における転舵装置を構成する第1実施例の転舵部アクチュエータを示す断面図である。
第1実施例の転舵部アクチュエータにおける移動体の位置と移動体付勢機構によって移動体が付勢される付勢力との関係示すグラフである。
第1実施例の操作部アクチュエータの変形例としての操作部アクチュエータの一部分を示す断面図である。
第1実施例の操作部アクチュエータの別の変形例としての操作部アクチュエータを示す断面図である。
図10に示す操作部アクチュエータにおける移動体の位置と移動体付勢機構によって移動体が付勢される付勢力との関係を説明するためのグラフである。
第1実施例の操作部アクチュエータのさらに別の変形例としての操作部アクチュエータを示す断面図である。
図12に示す操作部アクチュエータにおける移動体の位置と移動体付勢機構によって移動体が付勢される付勢力との関係を説明するためのグラフである。
本発明の第2実施例である操作部アクチュエータを備えた操作装置を示す斜視図である。
図14の操作装置の断面図である。
第2実施例の操作部アクチュエータの変形例としての操作部アクチュエータを示す断面図である。
図16の操作部アクチュエータにおける移動体の位置と移動体付勢機構によって移動体が付勢される付勢力との関係示すグラフである。
第2実施例の操作部アクチュエータの別の変形例としての操作部アクチュエータを示す断面図である。
図18の操作部アクチュエータにおける移動体の位置と移動体付勢機構によって移動体が付勢される付勢力との関係示すグラフである。
符号の説明
10:操作部 12:転舵部 14:ステアリングホイール(操作部材) 16:転舵車輪 20:操作装置 24:転舵装置 50:シャフト 52:シャフト保持装置 54:操作部アクチュエータ 56:反力調整モータ 106:ピニオン軸(回転軸) 126:端部閉塞部材(固定体) 132:スライド部材(移動体) 150:ピニオン 152:ラック 162,164:圧縮コイルスプリング 166:荷重センサ(付勢力検出器) 170:第1反力発生手段 172:第2反力発生手段 174:移動体付勢機構 178:移動体移動禁止機構 200:転舵部アクチュエータ 208:移動体付勢機構 210:反力発生手段 212:圧縮コイルスプリング 228:移動体移動禁止機構 230:操作部アクチュエータ 250:操作部アクチュエータ 252,254:永久磁石 256:磁石対 258:第2反力発生手段 260:移動体付勢機構 280:操作部アクチュエータ 282:移動体付勢機構 284,286:反力発生手段 290,292:圧縮コイルスプリング 310:操作装置 312:シャフト(ボールねじ) 314:操作部アクチュエータ 328:端部部材(固定体) 332:雄ねじ 334:スライド部材(移動体,ボールナット) 340:圧縮コイルスプリング 350:大径部 352:小径部 354:荷重センサ(付勢力検出器) 360:移動体付勢機構 362:第1反力発生手段 364:第2反力発生手段 380:操作部アクチュエータ 382:反力発生手段 384:圧縮コイルスプリング 386:移動体付勢機構 390,392:磁石 394:磁石対 396:反力発生手段 398:移動体付勢機構 400:操作部アクチュエータ