JP4122937B2 - 分割型リング状流電陽極 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、コンクリ−トやアスファルト等の土木・建築・機械装置等の基盤床面に敷設される鋼製構造物支柱地際部分の腐食の抑制又は防止に関する。詳しくは、各種の道路標識,ガ−ドレ−ル,桟橋.橋梁手摺或いは街灯等の施設の支柱は、鋼製の管柱が多く使用され、コンクリ−ト或いはアスファルト製の土木基盤床面に埋め込み固定されている。本発明は、該管柱と該基盤床面との境界部すなわち地際部の鋼材に生ずる腐食の抑制或いは防止に使用するリング状流電陽極に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場建物,工場機械設備,道路標識,ガ−ドレ−ル,街路灯,橋梁手摺,フェンス或いは各種の鉄塔等の施設は、コンクリ−トやアスファルト等の土木基盤床面に埋め込み固定された鋼製支柱管によって支えられている。
【0003】
これらの鋼製支柱管は、外的衝撃に遭っても破損しないように設計されている。しかし、年月の経過に伴い設計寿命以前に、外的衝撃で破損することが現実にしばしば起こっている。その最大の理由は、該支柱管の地際部分の局部腐食による強度の低下にある。管厚が5%消耗すると強度は50%低下すると言われている。
【0004】
該鋼製支柱管の腐食を抑制或いは防止する手段として、溶融亜鉛メッキ被覆や各種の塗覆装等が施されている。これらの対策は、それ自体有効な手段であるが、基本的に該鋼製支柱管の腐食環境(水分や大気汚染物質等)からの遮断にあるので、該被覆や塗覆装が疵ついたり破損或いは劣化して剥離すると、その部分の防錆或いは防食機能が喪失し腐食が進行する。
【0005】
該鋼製支柱管の腐食は、多くの場合、常時大気に暴らされている部分に比して該鋼製支柱管と基盤コンクリ−トやアスファルトとの境界すなわち地際部分に図1の腐食現象の概念図に示す如く、該支柱管(2)の地際部(21)の外周に沿って優先して局部的に進行するのが特徴である。
【0006】
該地際部分(21)は、いわゆる隅部を形成し塵埃や水分が溜まりやすく大気汚染物質や海塩粒子が集積し、露点を下げさらに水を呼び、該地際部分(21)の大気側近傍の鋼材が陽極(23)となり、コンクリ−ト側の鋼材が陰極(24)となって電池を形成し陽極部(23)の鋼材が消耗,浸食する。
【0007】
加えて、塵埃や水分を保有した地際部分(21)の鋼材の面積は、コンクリ−ト中の鋼材の面積に比して小さく該部分の鋼材は局部的に浸食され、さらに該部分(21)を支点として繰返し応力が集中し易く鋼製支柱管の破損にも繋がる。
【0008】
該地際部分(21)は、二重管や肉厚管或いはより耐食性の材料で補強したり、塗覆装等による腐食防止対策が採られているが、製作や現場施工が繁雑でコスト的に難があり、もっぱら塗覆装で腐食環境との遮断を図っているのが実情である。しかし、この対策は、恒久的ではなく、数年毎に定期或いは不定期に補修や新支柱(2)との取換えを余儀無くされている。対象が固定構造物であるため、補修や取換え工事は該構造物を使用或いは利用する経済活動を阻害することにもなり兼ねず簡単,容易な工事ではない。
【0009】
本来,腐食は水分の存在下での電池作用による電気化学反応であるから、電気防食(陰極防食)が考えられるが、防食電流を供給するのに不可欠な電解質水溶液が薄膜状又は乾湿繰返し状況であるため通常の電気防食手段では、防食効果は殆ど期待できない。従って、現状では、該鋼製支柱管の腐食防止は溶融亜鉛メッキ,樹脂ライニング或いは各種の塗装が主体とならざるを得ない状況にある。
【0010】
溶融亜鉛メッキ被覆や各種の塗覆装は、該被覆層が健全であれば有効な手段であるが、該被覆層の厚さは数100μm程度であり、運搬や施工時に何等かの外的衝撃にあうと疵付き易く、直接強い太陽光線に当られたり乾湿が繰返される環境にあっては、劣化が避けられず短期間(数年位)に素地の鉄鋼素材が外気に暴らされる。特に、地際部分(21)は、上部構造の該鋼管支柱(2)表面よりも過酷な腐食条件下にあるので、該被覆層の劣化が促進され易い。該被覆層の補修工事は、対象が固定構造物であるため一時的処置はともかく,長期的に健全な処理手段や経済活動に弊害のない施工手段は実用的に期待薄である。頻繁に亘る補修工事は、安全,経済的見地からも極力抑制する事が肝要である。
【0011】
金属の腐食は、基本的に電解質水溶液の存在下での電池作用による電気化学反応であるから、この腐食反応を逆利用して、腐食電解質水溶液内で対象金属部分を陰極的に保持することによって該金属の腐食を抑制或いは防止する方法がある。電気防食法或いは陰極防食法と呼ばれている。
【0012】
電気防食法には、外部の直流電源を利用する外部電源方式と異種金属の電位の差を利用する流電陽極方式とがある。電気防食法は、腐食の原理の逆利用であり、保守管理が行き届くならば最も有効な防食手段である。しかし、腐食の直接原因である電気を導く電解質溶液の存在が不可欠である。
【0013】
本発明の対象である鋼製支柱(2)の地際部(21)は、局部的溜水箇所であり、加えて季節や気候に左右される乾湿繰返し環境でもある。外部の直流電源と不溶性陽極を用いる外部電源方式による電気防食法は設備や維持管理の点で効果に見合わず実用的でない。一方、鉄鋼よりも卑な電位を有する金属(例えば、亜鉛,アルミニウム,マグネシウム及びこれらの金属を基とした合金等)との電池作用で防食電流を供給する流電陽極方式は、船体外板,熱交換器,鋼管杭或いは鋼矢板といった常時海水等の電解質水溶液中にある鋼構造物の防食に広く使用され、その効果は良く知られている。
【0014】
しかしながら、本発明の対象である溜水或いは乾湿繰返し環境中で常用の亜鉛,アルミニウム或いはこれらの金属を基とした合金からなるブロックやスラブ状の流電陽極による電気防食が、実用に供された例を見聞した事はない。
【0015】
その理由は、水分は存在しても、流電陽極と鋼製支柱(2)の地際部(21)との接続が薄膜状に近い溜水を介しての接触であるため、通常のブロック状或いはスラブ状の流電陽極では効果的に作用しない。しかも、乾湿繰返環境であるから水分が存在しないか,水滴状でしか存在しない期間があるので、さらに防食効果は期待に乏しい。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述の情況を勘案して、恒久的な土木基盤床面に敷設された鋼製構造物(主として鋼管支柱)の地際部の腐食を抑制或いは防止するに当たって、長期に亘って防食効果を保持し且つ該鋼製構造物が支える施設や設備の経済的活動を阻害することなく取替工事が簡単で容易な流電陽極を提供するのが本発明の目的である。
【0017】
先に、本願特許発明者は、かかる鋼製構造物(主として鋼管支柱)の地際部を効率良く流電陽極で電気防食するためのリング状複合流電陽極を開発し、特許出願した(特願2001−153937号)。
【0018】
すなわち、先行技術である特願2001−153937号の主体は、図4及び図5の如く鋼製構造物支柱地際部(21)の電気防食(陰極防食)用流電陽極 (1)が、該支柱地際部(21)の形状或いは大きさを内径とした半割りド−ナッ型リング状(11)であって、該リング状流電陽極(11)の該支柱地際部 (21)と対向する面及び床(4)と接する面に金属亜鉛粉粒を導電材とした導電性ペ−スト(3)を貼賦或いは充填した半割りリング状複合流電陽極(1)である。該リング状複合流電陽極(1)は、既存の支柱地際部(21)に容易に取付けられるように該リングは半割りにする。また、床面(4)に該リング状複合流電陽極(1)をより堅牢・確実に支持固定するため固定孔(13)を複数設けアンカ−ボルト(プラグレスボルト)(14)で締結する。
【0019】
しかし、対象支柱の床面(4)は、一見平滑に見えても段差が千差万別であり該半割りリング状複合流電陽極(1)の取付け固定に当たって、グラインダ−等による床面研掃が必要である。また、床面(4)に該リング状複合流電陽極(1)をより堅牢・確実に支持固定するためのアンカ−ボルト(14)による締結は、該リング状複合流電陽極(1)や固定床面(4)への孔(13)開け加工が避けられず、締結固定位置によっては、締め付け作業が容易でない場所がある。該リング状複合流電陽極(1)の固定用アンカ−ボルト(14)による締結をなくすることができれば、アンカ−ボルト(14)使用にもとずく材料,加工及び作業工数の大幅な削減が可能である。
【0020】
【課題を解決するための手段と実施態様】
そこで、本発明者は、本課題を解決するため本発明者が先に出願した先行技術(特願2001−153937号)のリング状複合流電陽極(1)の構造に注目し、種々検討の結果アンカ−ボルト(14)不要の分割型リング状流電陽極(111)を完成した。
【0021】
すなわち、図2及び図3の如く金属製(主として鉄鋼)支柱(2)の地際部(21)の電気防食(陰極防食)用リング状流電陽極(111)の外形が、円形或いは多角形(四角形,六角形等)で、表面が略平滑な同心円状の中空体からなり、該中空体は複数の中心に向かって対象支柱(2)の外面に接触するサイズ・形状の張り出し部分(115)を有する分割リング(112)であって、該リング状流電陽極(111)の外周の一部分が対象支柱の外形が通る大きさ(内角180度以下)で中空部に向かって扇状に広がりのある形状の扇状分割リング(113)と噛み合わせた構造からなる分割型リング状流電陽極(111)である。
【0022】
具体的な本発明の分割型リング状流電陽極(111)の実施例の斜視図を図2に、該陽極の構造の一例を第3図に示す。但し、本実施例を持って本発明の分割型リング状流電陽極(111)は、限定されるものでない。
【0023】
図4は、先の発明(特願2001−153937号)の円形半割りリング状複合流電陽極(1)の斜視図の一例である。いずれのリング状流電陽極(1), (111)も、新設鋼製支柱管(2)或いは既設鋼製支柱管(2)の地際部(21)の腐食を抑制または防止に適用できるように、二分割構造になっている。
【0024】
図5は先の発明である円形半割りリング状複合流電陽極(1)の陽極の構造を示す。構造は、略リングの直径で切断した半割り形状(11)である。該半割り陽極(11)は、先端には雌雄の切り込み部(切断箇所)(12)を設け、対象支柱(2)を挟み込むようにして、該陽極(11)を2個噛み合わせて設置する。
【0025】
支柱(2)とリング状陽極(11)の内径との空間及び該リング状陽極(11)の基盤床面(4)と接する部分には、亜鉛粉粒を導電材とした導電性ペ−スト(3)を挿入して該リング状陽極(11)と該支柱(2)との導通を確保すると共に該支柱床面(4)との平坦化をはかる。設置後、不慮の外的衝撃等による破損を抑制するため、該リング状複合流電陽極(1)の表面に床面(4)に達する孔(13)を開けアンカ−ボルト(プラグレスボルト)(14)を打ち込み、該支柱敷設基盤床(4)に固定する。該リング状複合流電陽極(1)の難点は、支柱敷設基盤床(4)に固定補助手段としてのアンカ−ボルト(14)打ち込み工程(一個のリング状複合流電陽極で4箇所)が、予想外に手間取ることにある。該リング状陽極(11)の孔(13)開け加工を始め、基盤床の位置決め・床面孔開け、ボルト締付け作業、加えて支柱(2)の位置によっては取付締め付け固定が極めて手間取り、作業効率を制約する。
【0026】
本発明の分割型リング状流電陽極(111)は、固定補助手段としてのアンカ−ボルト(14)打ち込み工程を無くすることを目的として検討・開発したものである。
【0027】
図2及び図3の本発明の流電陽極(111)は、構造上はリング状である。既存の支柱(2)への取付を考慮して分割型になっている。この点は、先行発明のリング状複合流電陽極(1)と同様である。しかし、先行発明のリング状複合流電陽極(1)は、図4及び図5の如くリングの直径で半割りした等分割構造である。本発明の流電陽極(111)は、図2及び図3に示す如く該リング(111)の外周が、対象支柱(2)の外形が通る大きさ(内角180度以下)で、該リングの内径(中空部)に向かって広がり(扇状)のある形状を有する扇状分割リング(113)と分割リング(112)からなる不等分割構造の分割型リング状流電陽極(111)である。分割破線(114)は、直線或いは曲線のいずれでも良い.分割したリング片(112),(113)は、夫々リング片を分割破線(114)に嵌め込むことで一体化され両者の分離の危惧が避けられる。また、該リング(112),(113)は該リングの内側から中心に向かって対象支柱の外面に接する複数の張り出し部分(115)を形成している。これにより支柱(2)と該リング状流電陽極(111)とのズレや接触不良が防止できる。すなわち、先の発明の半割リング状流電陽極(1)の構造を不等二分割リング状流電陽極(111)に変更し、複数の張り出し部分(115)を形成させることで固定用のアンカ−ボルト(プラグレスボルト)(14)を不要とすることができた。さらに、支柱(2)と該リング状流電陽極(111)との空隙や該リング状流電陽極(111)と床面(4)の接触面には亜鉛粉粒を導電材とした導電性ペースト(3)或いはパテを貼付又は充填して複合化し該支柱(2)と該リング状流電陽極(111)及び床面(4)との導通と接合の強化を図る。
【0028】
本発明のリング状流電陽極は、高純度亜鉛或いは亜鉛基合金陽極が鋳造性、加工性及び陽極性能の点から最も好ましい。アルミニウム合金やマグネシウム合金陽極も使用できるが環境によって効果が不安定で、適用範囲に乏しい。
【0029】
【発明の効果】
以上、詳述したように土木・建築・機械装置等の基盤床面に敷設される鋼構造物支柱地際部の腐食を抑制又は防止する電気防食用流電陽極について検討した。新規或いは既存の支柱地際部を重点的に防食するため半割りリング状複合流電陽極を先に開発した。しかし、該リング状複合流電陽極は基盤床に固定する手段としてのアンカ−ボルト打ち込み込み工程が、該陽極の孔開け加工を始め、基盤床の位置決め・床面孔開け、ボルト締付け作業に加えて支柱の位置によっては取付締め付けが極めて困難で、予想外に手間取り、作業効率を制約する。
そこで、従来のリング状流電陽極の構造を等分割(半割)から不等分割リング状流電陽極(扇状)にすることによって、分割リング片と噛み合わせるだけで分割型リング状流電陽極の一体化と固定が容易になり、また該リング片の内径側に張り出し部を設けることで対象支柱との接触と固定が確保され、該リング状流電陽極の移動や分離が完全に抑制されボルト止め作業が不要となった。該リング用流電陽極と対象支柱の地際部との空間は、両者間及び設置床面に亜鉛粉末を導電材とした導電性ペーストを貼布或いは充填することで固定と導通が補強される。
その結果、アンカ−ボルト打ち込み作業が不要になり、作業工程を大幅に削減する事ができる.
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼製支柱管地際部の腐食概念の説明図である。
【図2】円形分割型リング状流電陽極を鋼製支柱管地際部に取付けた斜視図。
【図3】円形分割型リング状流電陽極の構造を示す例図。
【図4】半割りリング状複合流電陽極を鋼製支柱管地際部に取付けた斜視図。
【図5】半割りリング状複合流電陽極の構造を示す例図。
【符号の説明】
1 半割りリング状複合流電陽極
11 半割りリング状流電陽極
12 切り込み部(切断箇所)
13 固定孔
14 アンカ−ボルト(プラグレスボルト)
111 円形分割型リング状流電陽極
112 分割リング状流電陽極
113 扇状分割リング状流電陽極
114 分割破線(部)
115 張り出し部
2 鋼管支柱
21 地際部
22 塵埃,汚染物質等含有溜水部
23 陽極部
24 陰極部
3 導電性ペ−スト
4 床面(コンクリ−ト)
Claims (2)
- 金属製構造物を支える金属製支柱の設置床面との境界近傍である地際部の電気防食用分割型リング状流電陽極であって、該リング状流電陽極の外形が円形或いは多角形で、防食対象金属製支柱の外形よりも大きい内径を有し、表面が略平滑な同心円状の中空体であり、該中空体は内表面に複数の中心に向かって防食対象金属製支柱の外面に接触する形状・サイズの張り出し部分を有する分割リング、と該リング状流電陽極の外周の一部分に対象金属製支柱の外形が通る大きさで中空部に向かって扇状の広がりのある形状を有する扇状分割リング、とを噛み合わせた構造を特徴とした分割型リング状流電陽極。
- 金属製構造物を支える支柱が、主として鉄鋼製の管であり、該支柱の地際部および床面と該リング状流電陽極との空間に亜鉛粉末を導電材としたペースト或いはパテを充填して複合一体化した請求項1に記載の分割型リング状流電陽極。
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