JP4121045B2 - 殺微生物組成物及び微生物の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有効成分の一つとしてテトラアルキルホスホニウム塩を含む殺微生物組成物ならびに殺微生物組成物の成分を用いる微生物の制御方法に関するものである。
さらに詳しくは、紙・パルプ工業における抄紙工程水や各種工業用の冷却水や洗浄水、循環水系、金属加工油、繊維油剤、繊維油剤などにおいて細菌類や藻類などの微生物の生育を抑えてスライム形成を抑制する、または殺菌・殺藻する、あるいは微生物の代謝に影響して悪臭発生を抑えるための殺微生物組成物及び微生物の制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記の種々の水系では、微生物の繁殖によって種々の悪影響が生ずる。例えば冷却水系では微生物の繁殖によりスライムが形成され熱交換器の効率を低下させたり、細菌が金属腐食を引き起こす。また、紙・パルプ工業においては、製紙工程中のリフラー、インレットまたはチェスト壁、白水ピット、スクリーン、配管内壁等の液と接触するあらゆる部分において微生物スライムが形成され、剥離してパルプスラリー中に混入したり、配管を詰まらせたりする。そしてパルプスラリー中に混入したスライムは紙上に斑点をつくって紙の品質を低下させたり、紙切れを引き起こして生産効率を低下させる。
また、微生物の栄養源を多く含むような水系では微生物(特に嫌気性細菌)の繁殖により、しばしば悪臭生成の問題が生ずる。
【0003】
かかるスライム発生や悪臭等の問題を解決するための殺微生物製剤の有効成分として、テトラアルキルホスホニウム塩を使用することは、従来より知られており、一般工業材料や工業用冷却水、あるいはパルプや紙の製造に用いるいわゆる工程水や用水等の殺菌剤、殺藻剤として利用されている。例えば、米国特許第3281365号、特開平2−4743号、特開平6−321716号公報、特開平8−40811号等が挙げられる。
【0004】
また、第二成分として挙げた(a)〜(l)の化合物を、殺微生物製剤の有効成分として使用することも従来より知られており、また商業的に入手可能である。これらは、例えば脂肪族ブロモニトロアルコールは特公昭40−8917号により、殺菌性組成物(非医療用殺菌性組成物)として開示されている。
また、4,5−ポリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン化合物は、殺微生物組成物として使用できる化合物として特開昭57−102878号に開示されている。
【0005】
これらの化合物は、一般に微生物制御のために高濃度添加する必要があるために、処理コストが高くなり、あるいは特定の細菌あるいは真菌に対する活性が弱いために、高濃度添加しても満足すべき効果が得られない場合がある。
また、長鎖のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウム塩は起泡性を有しているために、使用できる用途が限定されたり、あるいは泡立ちを抑えるため使用濃度を高くすることができないために、満足すべき効果が得られない場合がある。このために従来よりテトラアルキルホスホニウム塩を他の化合物と組合せることが開示されている。例えば特開昭61−36355号には、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール縮合体および殺藻剤のS−トリアジン類、との配合が開示されている。
【0006】
更に、特開昭62−26209号には直鎖状脂肪族アルデヒドとの配合が、特開昭63−60903号や米国特許4835143号にはベンズアルコン型の第四級アンモニウム塩との配合が、米国特許5063212号にはβ−ブロモ−β−ニトロスチレンとの配合が、米国特許5310733号には2−(2−ブロモ−2−ニトロエテニル)フランとの配合が、米国特許4835144号にはメチレンビスチオシアネートとの配合が、米国特許5063217号には5−クロロー2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの配合が、それぞれ開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらのものは、特定の微生物(例えば藻類)に対しては有効であるが、他の微生物に対しては充分な効力を示さないといった問題や、化合物の安定性が充分でないとか、薬剤の使用濃度が高く経済性が悪い等の問題がある、あるいは微生物に対する効力はあるものの安全性や環境への影響の点で問題を有している。
従来より多くの殺微生物組成物が開発され使用されているが、微生物制御の効果、および経済性の点で満足すべき殺微生物組成物あるいは制御方法は、未だに見あたらないのが現状である。
【0008】
本発明者らは、殺微生物組成物について鋭意研究した結果、テトラアルキルホスホニウム塩(第一成分)と12種類の化合物(a)〜(l)(第二成分)の1種または2種以上とを特定範囲の比率で組合せることにより、広範囲の微生物に対して相乗的殺微生物活性を生ずることを見い出した。
また、第一成分の化合物と第二成分の化合物は、かならずしも同時に添加しなくてもよく、別々に添加しても、単独使用の場合に比べて、より有効に微生物を制御することが可能であることを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づきなされるに至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、その(1)として、第一成分が下記一般式(1):
【0010】
【化4】
【0011】
(式中、R1は炭素原子数2〜4のアルキル基、R2は炭素原子数12〜18のアルキル基、nは1または2、Xn−はF−、Cl−、またはBr−のハロゲン陰イオン、無機酸または有機酸の陰イオンを示す)で表されるテトラアルキルホスホニウム塩であり、そして第二成分が(d)2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、および/または(l)N , N−ジデシル−N−メチル−ポリオキシエチル−アンモニウムプロピオネートであって、第一成分と、第二成分との配合割合(重量比として)が 90:10〜5:95 である殺微生物組成物を提供するものである。
【0012】
また本発明は、その(2)として、第一成分が上記(1)のテトラアルキルホスホニウム塩であり、そして第二成分が次の(b)、(c)、(e)、(f)、(h)、(i)、(k)の化合物の1種または2種以上を有効成分として、第一成分と、第二成分との配合割合(重量比として)が90:10〜10:90割合で含有することを特徴とする殺微生物組成物を提供するものである。
(b)4 , 5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4 , 5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、のいずれかの化合物、又はその無機酸塩あるいは有機酸塩、
(c)1 , 2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、
(e)4 , 5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、
(f)2 , 2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、
(h)ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)又はその塩、
(i)ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド]、
(k)ジメチルジオクチルアンモニウムクロリド。
【0013】
さらにまた本発明は、その(3)として、第二成分として(g)オルトフタルアルデヒドを含む場合、第一成分と、第二成分との配合割合(重量比として)が 95:5〜10:90である殺微生物組成物を提供するものである。
【0014】
また本発明は、その(4)として、上記(1)のテトラアルキルホスホニウム塩が、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
のいずれかである殺微生物組成物を提供するものである。
【0015】
さらにまた本発明は、その(5)として、微生物制御の対象となる水系に、前記の第一成分と第二成分とを、同時に及び/又は別々に添加して殺菌・殺藻を行う、または、微生物の生育を抑制してスライム形成を抑制する、または、微生物の代謝に影響して悪臭発生を抑えることを特徴とする微生物の制御方法を提供するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の殺微生物組成物の第一成分として使用できるテトラアルキルホスホニウム塩のうち、(1)式において、Xn- がハロゲン陰イオンの例としては、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリn−プロピルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリn−プロピルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムクロリド、
トリn−プロピルn−オクタデシルホスホニウムブロミド、
を挙げることができるが、中でも、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
が効力の点で好ましい。
【0022】
また、(1)式においてXn- は、硫酸イオン、リン酸イオンまたは有機酸の陰イオンであり、例えばギ酸、酢酸、安息香酸、フタル酸等の脂肪族カルボン酸イオンまたは芳香族カルボン酸イオン;メチルまたはジメチルリン酸エステルイオン、エチルまたはジエチルリン酸エステルイオン、ブチルまたはジブチルリン酸エステルイオン、イソプロピルまたはジイソプロピルリン酸エステルイオン、2−エチルヘキシルまたはジ(2−エチルヘキシル)リン酸エステルイオン等のアルキルリン酸エステルイオン;メタンスルホン酸イオン等のアルキルスルホン酸イオン;p−トルエンスルホン酸イオン等の置換または未置換のベンゼンスルホン酸イオン;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸イオン等のホスホン酸イオン等が挙げられる。
【0023】
かかるテトラアルキルホスホニウム塩としては、例えば、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムp−トルエンスルホネート、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムジエチルホスフェート、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムジエチルホスフェート、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムジn−ブチルホスフェート、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムベンゾエート、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムメタンスルホネート、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムp−トルエンスルホネート、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウム−p−トルエンスルホネート、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムジメチルホスフェート、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウム−n−ブチルホスフェート、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムジメチルホスフェート、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムジn−ブチルホスフェート、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムベンゾエート、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムアセテート、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムメタンスルホネート、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムp−トルエンスルホネート、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムジエチルホスフェート、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムジn−ブチルホスフェート、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムベンゾエート、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムメタンスルホネート、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムp−トルエンスルホネート、
などが挙げられるが、中でもアルキルスルホン酸イオン、置換または未置換のベンゼンスルホン酸イオンを含むテトラアルキルホスホニウム塩は、金属に対する腐食性が少ないために好ましい。
【0024】
本発明の殺微生物組成物の第二成分(a)として使用できる一般式(2)で示される脂肪族ブロモニトロアルコールとしては、
2−ブロモ−2−ニトロエタノール、
2−ブロモ−2−ニトロプロパノール、
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、
2−ブロモ−2−ニトロブタノール、
2−ブロモ−2−ニトロブタン−1,3−ジオール、
3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール、
1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール、
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、
等が挙げられる。
そして、生物効力及び製剤中での安定性の点から特に好ましい成分(a)としては、
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、
を挙げることができる。
本発明の成分(a)としては、これらの脂肪族ブロモニトロアルコール1種類を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の殺微生物組成物の第二成分(b)としては、
4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、
2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、
又はその無機酸あるいは有機酸との塩を挙げることができる。ここで塩としては、特に塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、及びマレイン酸塩等を挙げることができる。
この(b)の化合物は種々の方法により合成することが可能であり、例えば特開昭57−102878号公報記載の方法により合成できる。
【0026】
本発明の殺微生物組成物の第二成分(h)としては、ポリヘキサメチレンンビグアニド、またはその塩を挙げることができるが、特に塩酸塩が好適に使用される。
このポリヘキサメチレンンビグアニド塩としては、通常、700〜3000程度の平均分子量のものを用いることができる。
【0027】
本発明の殺微生物組成物の第二成分(i)としては、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンンジクロリド]を挙げることができる。特に、平均分子量が2000〜20,000程度のポリマーが好適に使用される。
【0028】
本発明の殺微生物組成物の第二成分(l)としては、N,N−ジデシル−N−メチル−ポリオキシエチル−アンモニウムプロピオネートを挙げることができる。ヘキストインダストリー社製のドジゲン3519、またはロンザ社製バーダップ26が特に好適に使用される。
【0029】
本発明の殺微生物組成物は、通常、テトラアルキルホスホニウム塩と第二成分(a)〜(l)の化合物とを水あるいは有機溶剤に溶解して製剤化するが、場合によってはエマルジョン等に製剤化することもできる。
ここで用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール、1−ブタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート等のグリコール系溶剤、酢酸エチル、アジピン酸ジエチル、乳酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を混合したものであってもよい。また、その他に水と上記1種以上の有機溶剤の混合液も使用することができる。
【0030】
本発明の殺微生物組成物は、前記の水及び/又は1種以上の有機溶剤の溶液として使用することができるが、エマルジョンとして使用することもできる。
エマルジョンとして使用する場合には、界面活性剤を使用すると都合が良い。また、必要に応じて増粘剤を配合することができる。
界面活性剤は、特に制限されるものではなく何れを使用してもよく、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の脂肪族アルコール類のアルキレンオキシド付加物;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等のアルキルフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル等の脂肪酸類のアルキレンオキシド付加物;ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーまたはその誘導体等を挙げることができる。
増粘剤としては、キサンタンガム、アラビアゴム、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
更に、また必要に応じて消泡剤、酸化防止剤等の安定剤を添加することもできる。
【0031】
本発明の殺微生物組成物は、各有効成分をあらかじめ混合した液製剤として使用するのが一般的であるが、使用用途によっては、液製剤のみならず粉末製剤または顆粒剤として製剤化することができる。
その使用用途として、例えば抗菌防臭剤とする場合は、本発明の第一成分および第二成分(例えば(a)、(c)、(g))のみで粉末製剤とすることができるが、必要に応じて増量剤または賦形剤を配合することができる。
使用できる増量剤としては、殺微生物組成物における使用が知られているいずれの増量剤を使用してもよく、例として硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類、クエン酸、コハク酸等の有機酸、マンニット、ソルビット等の糖アルコール、酸化デンプン等の糖類を挙げることができる。
【0032】
本発明の微生物の制御方法は、微生物制御の対象となる水系に、上記の第一成分と第二成分とを、同時に及び/又は別々に添加して殺菌・殺藻や微生物の生育を抑制してスライム形成の抑制、または微生物の代謝に影響して悪臭発生を抑えるものである。
ここで、微生物の制御とは、微生物によって引き起こされる種々のトラブルを防ぐために、液系内および液に接触する固体表面上の微生物を死滅させたり、あるいは必要とする期間にわたって一定の菌数以下に抑えたり、あるいは、ある特定の菌の増殖を抑えることにより悪臭の発生を抑えること等を意味するものである。
その方法は、各有効成分をあらかじめ混合して一つの製剤にしたものを所望の濃度にしたものを同時に、或いは有効成分化合物を時間をずらして別々に添加し、水系内にて目的とする混合割合とすることにより、微生物を制御することが可能となる。
【0033】
本発明の殺微生物組成物の適性使用量は適用分野、使用場所により異なるが、通常0.01mg/l以上の濃度で使用される。一般的には、液総重量に対して殺微生物組成物を有効成分として0.05〜200mg/lとなるように添加することで微生物の制御が可能である。
本発明の殺微生物組成物を適用する水系のpHは特に制限はなく、通常、pH3〜pH12、好ましくはpH5〜pH10の範囲である。
【0034】
【実施例】
以下に本発明を、実施例により更に詳細に説明する。
まず、本発明の具体的な製剤例を以下に示す。なお、製剤例中の部は重量部を意味する。
【0035】
(効力確認試験)
以下の供試薬剤を用いて効力確認試験を行った。
(第一成分)
略号 薬剤名称
P1:トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド
P2:トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド
P3:トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド
P4:トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムクロリド
P5:トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド
(第二成分)
略号 薬剤名称
A1:2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール
A2:2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール
B1:2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン
C :1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン
D :2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン
E :4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン
F :2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド
G :オルトフタルアルデヒド
H :ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩 (平均分子量2200)
I :ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニ
オ)エチレンジクロリド] (平均分子量60000)
J :ジメチルジデシルアンモニウムクロリド
K :ジメチルジオクチルアンモニウムクロリド
L :N,N−ジデシル−N−メチル−ポリオキシエチル−アンモニウムプロピオネート (ヘキストインダストリー社製のドジゲン3519を有効成分70%として使用)
【0036】
(実施例1)[冷却水中の菌に対する殺菌効力の確認試験]
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド(P1)と2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1、3−ジオール(A1)の組み合わせについて薬剤混合比率を変えた場合の相乗効果について検討した。イ社の冷却水(pH8.4、一般菌数4.3×105 cfu/ml)(以下「菌種(i)」という)50mlに対し、ブイヨン培地50mlを加え30℃、15時間前培養を行った。この培養液8mlをL字型試験管にとり、供試薬剤P1+A1の濃度が有効成分としていずれも10ppmになるように供試薬剤希釈液及び水を添加し、トータル液量を10mlとした。30℃で24時間振とう培養した後、寒天平板法により液中の生菌数を測定した。その結果を表1に示す。化合物P1とA1とをある特定の割合で併用した場合には、これらの化合物を単独で使用した場合から予想できなかった相乗効果が認められた。
なお、混合薬剤P1:A1、P2:A2、P1:J、P4:A1、P4:JおよびP5:Jは、参考例である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
(実施例2〜19)[菌に対する殺菌効力の確認試験]
実施例2〜6、8〜19については、菌種、薬剤の種類、薬剤濃度、及び接触時間の試験条件を表3に示すように変えた他は、実施例1と同様に試験した。実施例7は白水濾過液中において薬剤処理を行い殺菌効果を調べた。具体的には、ハ社製紙工場の白水濾過液(pH5.0、生菌数 7.4×106cfu/ml)8mlをL字型試験管にとり、供試薬剤P2+Fの濃度が有効成分としていずれも20ppm になるように供試薬剤希釈液及び水を添加し、トータル液量を10mlとした。30℃で1.5時間振とう培養した後、寒天平板法により液中の生菌数を測定した。実施例2〜19の結果は表1及び表2に併記した。
なお、薬剤P2:A2、P1:J、P4:A1、P4:JおよびP5:Jは、参考例である。
【0040】
【表3】
【0041】
(実施例20)[製紙白水中の菌に対する増殖抑制効果の確認試験]
ホ社の製紙工場より採取した白水(pH6.2、細菌数1.6×107cfu/ml、糸状菌数3.4×104cfu/ml)10mlにブイヨン液体培地90mlを加え、30℃で24時間振とう培養を行った。この培養液1mlをL字型試験管にとりブイヨン液体培地4ml、滅菌水13mlを加え、第一成分および第二成分の成分濃度が6ppmとなるように供試薬剤希釈液または滅菌水を2ml加えて、30℃で振とう培養した。
経時的に培養液の濁り(660nmにおける吸光度)を測定し、初期吸光度値に対する吸光度増加が0.1を越えた時点を菌増殖の開始とみなした。薬剤添加の場合に吸光度増加が0.1を越えるまでに要した時間から、薬剤無添加の場合に吸光度増加が0.1を越えるまでに要した時間を差し引いて増殖抑制時間とした。この増殖抑制時間が長いほど、増殖抑制効果が高いと判断される。試験結果を表4に示す。
なお、供試薬剤P1:A1およびP1:Jは、参考例である。
【0042】
【表4】
【0043】
(実施例21)[緑藻類に対する殺藻効果の確認試験]
緑藻類Chlorella vurgaris をデットマー培地で前培養した後、420nmの吸光度が0.25となるように蒸留水で希釈した。(藻類の数:4.0×106個/ml)
この藻類希釈液13mlをL字型試験管にとり、表5に示す供試薬剤の希釈液および水を加えて、トータル液量を15mlにした。
なお、この時の有効成分濃度条件は表5のとおりである。光照射を12時間/日の割で行いながら25℃、1日間振とう培養を行った。そして1日目の藻類の外観を観察して藻類に対する薬剤の効力を判定した。結果を表5に示す。表5において、緑色とは藻類が生存していることを、薄緑色とは一部の藻類が生き残っていることを、白色とはほとんどの藻類が死滅していることをそれぞれ示す。
なお、供試薬剤P1:J、P4:JおよびP5:Jは、参考例である。
【0044】
【表5】
【0045】
(実施例22)[冷却水中への添加方法と微生物制御効果の確認試験]
緑藻類、細菌を主体とするスライムが発生した冷却塔(40冷凍トン)に、有効成分としてトリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリドを50重量%含む水製剤(以下P2製剤という)を、冷却塔の保有水量に対して80ppmとなるように、1週間に2度の割で(火曜日と金曜日に)3週間続けて添加した。(なお本試験は火曜日から開始した。)その結果、3週間目の時点ではスライムの外観に著しい変化は認められなかった。
そこでこの冷却水に有効成分としてポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド](平均分子量6000)を60重量%含む水製剤(以下I製剤という)を1週間に2度の割で(火曜日と金曜日に)保有水量に対して80ppmとなるように添加したところ、I製剤を使用して3週間目でスライム外観の緑色がやや薄くなった。
次にP2製剤を保有水量に対して80ppmとなるように添加し、翌日、I製剤を80ppm添加して6日間放置するという処理を3週間続けたところ、スライム外観の緑色が薄くなると共に、スライム付着量も肉眼的に減少した。
このように、本発明の化合物どうしの組み合わせは、同時添加でなくても別々に添加使用しても有意な微生物制御効果を示した。
【0046】
【発明の効果】
本発明においては、テトラアルキルホスホニウム塩(第一成分)と12種類の化合物(a)〜(l)(第二成分)の1種または2種以上を特定範囲の比率で組合せることにより、広範囲の微生物に対して相乗的殺微生物活性を発揮し、紙・パルプ工業における抄紙工程水や各種工業用の冷却水や洗浄水、循環水系、金属加工油、繊維油剤、繊維油剤などにおいて細菌類や藻類などの微生物の生育を抑えてスライム形成を抑制する、または殺菌・殺藻する、あるいは微生物の代謝に影響して悪臭の発生を抑えることができる。
また、第一成分の化合物と第二成分の化合物は、かならずしも同時に添加しなくてもよく、別々に添加しても、単独使用の場合に比べて、より有効に微生物を制御することが可能である。
Claims (5)
- 第一成分が下記一般式(1):
(b)4 , 5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4 , 5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、のいずれかの化合物、又はその無機酸塩あるいは有機酸塩、
(c)1 , 2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、
(e)4 , 5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、
(f)2 , 2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、
(h)ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)又はその塩、
(i)ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド]、
(k)ジメチルジオクチルアンモニウムクロリド、
であって、第一成分と、第二成分との配合割合(重量比として)が 90:10〜10:90 である殺微生物組成物。 - テトラアルキルホスホニウム塩が、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリエチルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリn−プロピルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−ドデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−テトラデシルホスホニウムブロミド、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロリド、
トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロミド、
のいずれかである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の殺微生物組成物。 - 微生物制御の対象となる水系に、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の第一成分と第二成分とを、同時に及び/又は別々に添加して殺菌・殺藻を行う、または、微生物の生育を抑制してスライム形成を抑制する、または、微生物の代謝に影響して悪臭発生を抑えることを特徴とする微生物の制御方法。
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