JP2008115141A - アメーバ殺滅剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 持続してアメーバを防除し得る殺滅剤を提供する。
【解決手段】 オルトフタルアルデヒドを含有することを特徴とするアメーバ殺滅剤。工業用又は空調用循環冷却水系に対して、オルトフタルアルデヒドを添加することを特徴とする水中系のアメーバの殺滅方法。工業用又は空調用循環冷却水系に対して、オルトフタルアルデヒドの添加濃度が保有水量に対する維持濃度として1〜10mg/Lの範囲で連続添加、又は間欠投入するアメーバの殺滅方法。
【効果】 アメーバに対して低濃度の添加で効果がある。
【選択図】 なし
【解決手段】 オルトフタルアルデヒドを含有することを特徴とするアメーバ殺滅剤。工業用又は空調用循環冷却水系に対して、オルトフタルアルデヒドを添加することを特徴とする水中系のアメーバの殺滅方法。工業用又は空調用循環冷却水系に対して、オルトフタルアルデヒドの添加濃度が保有水量に対する維持濃度として1〜10mg/Lの範囲で連続添加、又は間欠投入するアメーバの殺滅方法。
【効果】 アメーバに対して低濃度の添加で効果がある。
【選択図】 なし
Description
本発明は、工業用又は空調用循環冷却水系に発生するアメーバの殺滅剤に関する。
水系に生存するレジオネラ属菌はレジオネラ肺炎の病原菌として知られており、これらが増殖し飛散すると、一時に大量の感染者を出すなどの問題が生じる可能性がある。このような問題の対策として、循環水系に殺菌剤を添加し菌の増殖を抑制する方法が用いられており、レジオネラ属菌を防除する殺菌剤として、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(以下、BNPと略)などのニトロアルコール系化合物や、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、CMTと略)などのイソチアゾロン系化合物等、種々の化合物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、実験室で十分な効果を示す薬剤であっても、実際の水系では必ずしも十分な効果が得られないことが多かった。
自然界におけるレジオネラ属菌は、アメーバ等の原生動物に寄生し、増殖することが知られており、このようなレジオネラの宿主となるアメーバ類としてアカントアメーバ(Acanthamoeba)、ネグレリア(Naegleria)、ハルトマネラ(Hartmannella)、バンネラ(Vannella)などが知られている。アメーバに捕食されたレジオネラ属菌はそれ自体単独では生存できない環境下においても生存・増殖を続けることが可能であり、従来のレジオネラ属菌の除菌技術はこのレジオネラ属菌の増殖における生態学的特性に着目していない点があった。したがって、レジオネラ属菌を効果的に除菌するためには、レジオネラ属菌の増殖の場であるアメーバ自体を殺滅することが必要となる。
これらアメーバの殺滅に有効な方法、あるいはアメーバとレジオネラ属菌とが共存しているときの有効なレジオネラ属菌の除去方法としてグルタルアルデヒド(以下、GDAと略)(特許文献2)を水系に添加する方法が提案されている。
更に、最近、アメーバはレジオネラの宿主となるのみならず、それ自体が経鼻的に脳に侵入し致死性の高い髄膜脳炎を引起したり、あるいは主としてコンタクトレンズ使用者の角膜炎の原因になるなど、病原性を有することが知られるようになってきた。
また、オルトフタルアルデヒド(以下、OPAと略)が抗菌活性を有することが知られているが、低濃度(10mg/L程度)ではその殺菌力が弱く、これを克服するためBNPと組合せて使用する方法が提案されている(特許文献3)。しかし、OPAがアメーバに対して有効であることや低濃度のOPAの連続添加又は間欠投入することでアメーバの殺滅に有効であることを予測する示唆は全くされていない。
冷却塔の薬剤処理は、殺菌剤濃度を一定以上に維持する連続添加や、週1回から3回程度の頻度で添加を行う間欠投入が行われる。この際添加される殺菌剤は有効成分として数ppm〜数十ppm程度の濃度であり、水質の悪化を防ぐことを目的とする。冷却水の薬剤処理に加えて月1回から年2回の頻度で化学的洗浄が行われ、この際にスライム除去や系内の除菌を目的として高濃度の過酸化水素やGDA、塩酸等の酸が用いられる。したがって、レジオネラ属菌、及びアメーバの殺滅に有効な殺菌剤は、冷却塔の薬剤処理において化学的洗浄までの期間、十分な抑制効果を発揮することが望まれる。
しなしながら、最近の詳細な検討の結果、薬剤添加初期には十分な殺菌、静菌効力を有し、アメーバに対しても抑制効果を有する薬剤であっても、冷却塔の薬剤処理においては徐々に系内の生菌数が上昇し、化学的洗浄までの間、細菌やアメーバに対して十分な抑制効果が得られていないことが判った。こうした環境ではアメーバが生育し易くなっており、したがってレジオネラ属菌の防除も十全ではないと言える。
本発明は、このような事情にかんがみ、アメーバに対して低濃度の添加で効果があるアメーバ殺滅剤を提供し、持続してアメーバを防除し得る殺滅剤を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オルトフタルアルデヒド(以下、OPAと略)が水中のアメーバに対して少ない添加量でも有用な効果を発揮し、更に冷却塔の連続添加、又は間欠添加に使用することによって従来の薬剤よりその効力が減少し難い傾向を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、(1)OPAを含有することを特徴とするアメーバ殺滅剤、(2)工業用又は空調用循環冷却水系に対して、OPAを添加することを特徴とする水中系のアメーバの殺滅方法、(3)工業用又は空調用循環冷却水系に対して、OPAの添加濃度が保有水量に対する維持濃度として1〜10mg/Lの範囲で連続添加、又は間欠投入するアメーバの殺滅方法を提供する。
本発明のアメーバ殺滅剤は、それ自身も病原となり、また、レジオネラ属菌の宿主となるアメーバに対して低濃度で効果的な殺滅が可能である。本発明のアメーバ殺滅剤は連続的な添加においても菌数が上昇し難いという特徴を備えており、その効力は工業用又は空調用循環冷却水系の細菌、及びアメーバの殺滅に特に有用であり、他の公知の殺菌剤には無い、予想外に優れたアメーバの殺滅を達成することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明においてOPAの対象水系への添加量は、月1回から2回の頻度で行う化学的洗浄で用いる場合には5mg/L以上、好ましくは25mg/L以上を用い、殺菌剤濃度を一定以上に維持する連続添加や、週1回から3回程度の頻度で添加を行う間欠投入を行う場合には1mg/L以上10mg/L以下であることが望ましい。
本発明においてOPAの対象水系への添加量は、月1回から2回の頻度で行う化学的洗浄で用いる場合には5mg/L以上、好ましくは25mg/L以上を用い、殺菌剤濃度を一定以上に維持する連続添加や、週1回から3回程度の頻度で添加を行う間欠投入を行う場合には1mg/L以上10mg/L以下であることが望ましい。
本発明においてOPAの対象水系への添加に際しては、アクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体、メタクリル酸系重合体、スルホン酸系重合体、リン酸系重合体、イタコン酸系重合体、イソブチレン系重合体、ホスホン酸、ホスフィン酸、あるいはこれらの水溶性塩などのスケール防止剤、CMT、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系化合物やGDA等のアルデヒド類、更にジチオール系化合物、メチレンビスチオシアネートなどのチオシアネート系化合物、イオネンポリマー、四級アンモニウム塩系化合物などのスライム防止剤、例えばニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸等のアミノカルボン酸系化合物、例えばグルコン酸、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、酒石酸、フィチン酸、コハク酸、乳酸等の有機カルボン酸など、各種の水処理剤を併用することができ、場合によっては予め、OPAにこれらの水処理剤を配合して使用しても良い。
更に、防食剤であるトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、モリブデン酸塩及びその塩、亜鉛及びその塩、リン酸及びその塩、亜硝酸及びその塩、亜硫酸及びその塩などから選ばれる1種あるいはそれ以上の成分を添加しても良い。
(アカントアメーバの前培養)
表1に示した配合組成を有するPYG液体培地にアカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba castellanii)を接種し、25℃で1週間培養した。
表1に示した配合組成を有するPYG液体培地にアカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba castellanii)を接種し、25℃で1週間培養した。
(大腸菌塗布寒天培地の調整)
細菌検査用寒天を1.5%となるよう蒸留水に溶かし、121℃、15分間の滅菌後、径90mmの滅菌シャーレに厚さ3〜5mmの寒天平板を作成した。別途に細菌培養用の普通寒天培地で培養した大腸菌を適当量滅菌蒸留水に懸濁して濃厚な大腸菌懸濁液を作成し、これを60℃、1時間加熱処理した後、滅菌蒸留水で10倍希釈した。この液を前記の寒天平板の全面に適当量塗布し、大腸菌が寒天の表面に固定される程度に乾燥させ、大腸菌塗布寒天培地を調製した。
細菌検査用寒天を1.5%となるよう蒸留水に溶かし、121℃、15分間の滅菌後、径90mmの滅菌シャーレに厚さ3〜5mmの寒天平板を作成した。別途に細菌培養用の普通寒天培地で培養した大腸菌を適当量滅菌蒸留水に懸濁して濃厚な大腸菌懸濁液を作成し、これを60℃、1時間加熱処理した後、滅菌蒸留水で10倍希釈した。この液を前記の寒天平板の全面に適当量塗布し、大腸菌が寒天の表面に固定される程度に乾燥させ、大腸菌塗布寒天培地を調製した。
試験例1(アカントアメーバに対する効力試験)
前培養したアカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba castellanii)を600×gで5分間遠心分離して回収し、滅菌蒸留水で105となるように調製したものを試験液とした。試験液10mlを試験管に測り取り、所定濃度の薬液を加え30℃で1時間インキュベートした。所定時間経過後の試験水の一部を採取し滅菌水で100倍希釈した後、1mlを大腸菌塗布寒天培地に塗布した。30℃で3日間培養後、光学顕微鏡にて培地を観察し、アメーバの生存の有無を確認した。結果を表2に示す。
前培養したアカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba castellanii)を600×gで5分間遠心分離して回収し、滅菌蒸留水で105となるように調製したものを試験液とした。試験液10mlを試験管に測り取り、所定濃度の薬液を加え30℃で1時間インキュベートした。所定時間経過後の試験水の一部を採取し滅菌水で100倍希釈した後、1mlを大腸菌塗布寒天培地に塗布した。30℃で3日間培養後、光学顕微鏡にて培地を観察し、アメーバの生存の有無を確認した。結果を表2に示す。
表2よりOPAは公知の薬剤の中で最も効力の高いCMTと比較して、より低濃度の添加でアメーバに対し優れた効力を示し、従来に無い優れたアメーバ殺滅剤であることが窺える。
試験例2(冷却塔試験装置における効力試験)
JIS G 0593に準拠した冷却塔試験装置を用いて、OPA及びCMTを1日1回、保有水量に対し有効成分として10mg/Lとなるよう添加し、生菌数及びアメーバの存在の有無を観察した。試験装置の運転には工水を用い、濃縮率6倍(電気伝導率80mS/m、pH8.2)とし、条件が整った状態を経過日数0日とした。冷却塔循環水1mlの生菌数を細菌培養用の普通寒天培地で、アメーバの検出を大腸菌塗布寒天培地によって確認した結果を表3に示す。
JIS G 0593に準拠した冷却塔試験装置を用いて、OPA及びCMTを1日1回、保有水量に対し有効成分として10mg/Lとなるよう添加し、生菌数及びアメーバの存在の有無を観察した。試験装置の運転には工水を用い、濃縮率6倍(電気伝導率80mS/m、pH8.2)とし、条件が整った状態を経過日数0日とした。冷却塔循環水1mlの生菌数を細菌培養用の普通寒天培地で、アメーバの検出を大腸菌塗布寒天培地によって確認した結果を表3に示す。
表3の結果より、CMTは連続薬剤が添加されているにも関わらず菌数の上昇が見られ、アメーバの生存も確認された。これに対しOPAは10mg/Lの添加でも生菌数の上昇は見られず、アメーバも検出されていない。したがってOPAを低濃度で連続添加することで、長期にわたって効果的にアメーバの防除が可能であると言える。
Claims (3)
- オルトフタルアルデヒドを含有することを特徴とするアメーバ殺滅剤。
- 工業用又は空調用循環冷却水系に対して、オルトフタルアルデヒドを添加することを特徴とする水中系のアメーバの殺滅方法。
- 工業用又は空調用循環冷却水系に対して、オルトフタルアルデヒドの添加濃度が保有水量に対する維持濃度として1〜10mg/Lの範囲で連続添加、又は間欠投入するアメーバの殺滅方法。
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