JP2002308713A - アメーバ殺滅剤、アメーバの抑制方法及びレジオネラ属菌の除菌方法 - Google Patents

アメーバ殺滅剤、アメーバの抑制方法及びレジオネラ属菌の除菌方法

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JP2002308713A
JP2002308713A JP2001113127A JP2001113127A JP2002308713A JP 2002308713 A JP2002308713 A JP 2002308713A JP 2001113127 A JP2001113127 A JP 2001113127A JP 2001113127 A JP2001113127 A JP 2001113127A JP 2002308713 A JP2002308713 A JP 2002308713A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 アメーバの嚢子であっても効果的に殺滅する
ことができるアメーバ殺滅剤を提供する。 【解決手段】 ホスホニウム化合物を有効成分として含
有するアメーバ殺滅剤。スホニウム化合物はトリ−n−
ブチル−nヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−
ブチル−n−ドデシル−ホスホニウル塩またはテトラキ
ス−ヒドロキシメチル−ホスホニウム塩の1種以上の化
合物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は冷凍装置や空調施設
の循環冷却水や24時間風呂の循環温水などの、冷温水
系あるいは蓄熱水系などにおけるアメーバを殺滅するア
メーバ殺滅剤、それを用いたアメーバ抑制方法、さら
に、これら水系中でアメーバと共存しているレジオネラ
属菌の除菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】水系に生存するレジオネラ属菌はレジオ
ネラ症の病原菌として知られているが、空調施設の循環
冷却水などで繁殖し、空調機器を通して一時に大量の感
染者を出すなどの問題が生じる可能性があり、その除菌
のために様々な方法が提案されてきた。
【0003】しかしながら、これらレジオネラ属菌に対
して実験室での実験では充分な効果を有する薬剤であっ
ても、実際の水系では必ずしも充分な効果が得られない
ことが多かった。
【0004】実験室と実環境水系との薬効の違いについ
て詳細に検討したところ、実環境水系においては共存す
るアメーバの抑制、殺滅を行うことがレジオネラ属菌の
除菌に欠かせないことが判ってきた。
【0005】これまでレジオネラ属菌は実環境水中では
アメーバをはじめとする細菌捕食性原生動物に寄生し、
増殖することが知られていたが、従来のレジオネラ属菌
の除菌技術はこのレジオネラ属菌の増殖における生態学
的特性に着目していない点が問題だったのである。
【0006】すなわち、詳細な検討の結果、レジオネラ
属菌は、それ自体単独では生存できない環境下において
も、アメーバが共存している場合には、生存・増殖が可
能であることが判った。
【0007】ここで、レジオネラ属菌とアメーバが好適
に生育している水系にレジオネラ属菌用の殺菌剤を添加
した場合を考えると、その殺菌剤がアメーバの生育に影
響を与えないものであれば、アメーバは普通に活動して
いるので、ある確率でレジオネラ属菌を捕食する。アメ
ーバに捕食されたレジオネラ属菌は、アメーバの体内で
は水系内の殺菌剤の作用を受けることなく、また、アメ
ーバに消化されることもなくその体内で大量に増殖し、
やがて宿主であるアメーバを破裂させて水系に出てく
る。水系に出たレジオネラ属菌は、殺菌剤に曝されるこ
とにより徐々に死滅して行くが、死ぬ前にアメーバに捕
食されたレジオネラ属菌はアメーバの体内で再び増殖す
ることになる。
【0008】従って、このような水系で、レジオネラ属
菌を効果的に除菌するためには、レジオネラ属菌の増殖
の場であるアメーバ自体を抑制することが必要となるの
である。このようなレジオネラ属菌の宿主となるアメー
バとして、アカントアメーバ(Acanthamoeb
)、ネグレリア(Naegleria)、ハルトマネ
ラ(Hartmannella)、バンネラ(Vann
ella)等が挙げられる。
【0009】さらに、最近、アメーバはレジオネラ属菌
の宿主となるのみならず、それ自体が経鼻的に脳に侵入
し致死性の高い髄膜脳炎を引き起こしたり、あるいは主
としてコンタクトレンズ使用者の角膜炎の原因になるな
ど、病原性を有することが知られるようになってきた。
ここで、髄膜脳炎を引き起こすアメーバとしてアカント
アメーバ、ネグレリア、バラムチア(Balamuth
ia)が、角膜炎を引き起こすアメーバとしてアカント
アメーバがそれぞれ知られている。
【0010】このようにさまざまな問題を引き起こす可
能性のあるアメーバは、河川、湖沼、池などに、あるい
はビルなどの空調設備の循環冷却水系、循環式浴槽等の
人工環境水中に生息している。
【0011】これらアメーバの抑制や殺滅に有効な方
法、あるいはアメーバとレジオネラ属菌とが共存してい
るときの有効なレジオネラ属菌の除菌方法を、本発明者
等は特願平10−167593号などで提案を行ってき
た。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近の
詳細な検討の結果、これら技術ではアメーバの抑制が不
充分であることが判った。すなわち、アメーバは環境が
変化して通常の栄養体での生存に不適となった場合に
は、嚢子(シスト)となり、再度、栄養体での生存に適
した環境に戻ったときに栄養体となる。しかしながら、
従来技術ではこの嚢子状態のアメーバには充分な効果が
得られないことが判った。
【0013】本発明は、上記した従来の問題点を改善す
る、すなわち、嚢子状態のアメーバに対しても低濃度の
添加でも短時間で効果があるアメーバ殺滅剤、及び、そ
のアメーバ殺滅剤を用いる水系中のアメーバの抑制方
法、および、嚢子状態のアメーバと共存している場合で
あっても有効なレジオネラ属菌の除菌方法を提供するこ
とを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、レジオネ
ラ属菌を含む細菌の殺菌剤あるいは殺藻剤として特開平
6−321716号公報、特開平6−345790号公
報、特開平7−80469号公報、特開平8−4081
1号公報、特開平10−273408号公報、或いは特
開平11−71213号公報などで、或いは、鉄系金属
の腐食防止剤として本発明者等によって特開2000−
169979公報で、それぞれ提案されているホスホニ
ウム化合物がアメーバ抑制に関し有効であり、さらに通
常の薬品に対して強い耐性を示すアメーバの嚢子の殺滅
にもアメーバ種を選ばずに有効であることを見出し、本
発明に至った。
【0015】本発明のアメーバ殺滅剤は上記課題を解決
するため、請求項1に記載の通り、ホスホニウム化合物
を有効成分として含有するアメーバ殺滅剤であり、栄養
体のアメーバのみならずアメーバの嚢子に対しても有効
なものである。
【0016】本発明の水系中のアメーバの抑制方法は、
請求項3に記載の通り、アメーバが生存している水系に
対して、ホスホニウム化合物を添加する水系中のアメー
バの抑制方法である。
【0017】さらに、本発明のアメーバと共存している
水系中のレジオネラ属菌の除菌方法は請求項5に記載の
通り、アメーバとレジオネラ属菌が共存している水系に
対して、ホスホニウム化合物を該水系中のアメーバ数が
100mL当たり10個未満となる濃度になるように添
加することによりレジオネラ属菌を除菌する構成を有
し、少ない添加量で、水系中から効果的にレジオネラ属
菌を除去することができ、その水系の生態系への影響を
最小限に抑制することができ、また、薬剤の使用量を最
適化することができるので、ランニングコスト、あるい
は、廃水処理の点で有利である。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明のアメーバ殺滅剤におい
て、ホスホニウム化合物は一般式(I)で示される化合
物であり、用いるホスホニウム化合物が、トリ−n−ブ
チル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n−
ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩、テトラキス−
ヒドロキシメチル−ホスホニウム塩より選択された少な
くとも1種の化合物であると、入手しやすい上、水系へ
の添加量が少量でも添加開始後速やかに高い効果(アメ
ーバ殺滅効果、あるいは、レジオネラ属菌の除菌効果)
を得ることができ、なかでもトリ−n−ブチル−n−ヘ
キサデシル−ホスホニウム塩であると特に効果が高い。
このようなホスホニウム化合物の塩としてはフッ化物イ
オン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、
硫酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン等の無機酸
陰イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、蓚酸イオン、安息
香酸イオン、フタル酸イオン、メチルもしくはジメチル
リン酸エステルイオン、エチルもしくはジエチルリン酸
エステルイオン、ブチルもしくはジブチルリン酸エステ
ルイオン、イソプロピルもしくはジイソプロピルリン酸
エステルイオン、2−エチルヘキシルもしくはジ(2−
エチルヘキシル)リン酸エステルイオン、メタンスルホ
ン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の有機物
陰イオンとからなる塩を挙げることができる。等とから
なる塩を挙げることができる。
【0019】
【化1】 [(R)3R’P+nn- ……(I) (但し、式中Rは炭素数1〜4のアルキル基または炭素
数1〜4のヒドロキシアルキル基を、R’は炭素数12
〜18のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシア
ルキル基をそれぞれ示す。Xn-は無機酸陰イオンまたは
有機酸陰イオンを、nは1または2または3をそれぞれ
示す。なお、上記式(I)中の3つのRは必ずしも同じ
ものである必要はない)
【0020】本発明においてホスホニウム化合物の対象
水系への添加量は、その水系の微生物による汚れ具合や
薬品の添加方法、水系中の滞留時間等を加味して、添加
する。すなわち、本発明で用いるホスホニウム化合物の
効果は高いため、通常5〜100mg/Lの範囲で添加
する。しかし、アメーバ数が特に少ないときには1mg
/L以下の添加量でも充分な場合があり、また、極めて
汚染された水系などで迅速に効果を得たい場合には10
00mg/Lなどの比較的高濃度の添加をおこなっても
良い。
【0021】添加方法としては特に制限はないが、初回
の添加以降、数日から一ヶ月おき位に間歇的に添加する
か、あるいは水系中の薬剤の濃度を一定濃度以上に維持
するように、例えば対象水系への補給水に対して連続的
に添加することにより充分に高い効果を得ることができ
る。
【0022】特に、レジオネラ属菌の除菌を目的とする
場合には、水中のアメーバ数を100mL当たり10個
未満にできる程度に添加すれば、速やかに効果が現れ、
また、以降水中のアメーバ数を100mL当たり10個
未満に維持するように管理すれば、その水系のレジオネ
ラ属菌の菌数を充分に低いレベルに保つことができる。
このように水中のアメーバ数を適正量に制御するように
添加することで、過量の添加を防止することができ、ラ
ンニングコストの低減、水系の生態系の攪乱防止、排水
処理への負担防止などの効果を得ることができる。
【0023】本発明においてホスホニウム化合物の対象
水系への添加に際しては、他の成分、例えばアクリル酸
系重合体、マレイン酸系重合体、メタクリル酸系重合
体、スルホン酸系重合体、リン酸系重合体、イタコン酸
系重合体、イソブチレン系重合体、ホスホン酸、ホスフ
ィン酸、あるいはこれらの水溶性塩などのスケール防止
剤、例えば5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリ
ン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−
オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイ
ソチアゾロン系化合物、例えばグルタルアルデヒド、フ
タルアルデヒド等のアルデヒド類、例えば過酸化水素、
ヒドラジン、塩素系殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム
等)、臭素系殺菌剤及びヨウ素系殺菌剤、更にジチオー
ル系化合物、メチレンビスチオシアネートなどのチオシ
アネート系化合物、ヨーネンポリマー、四級アンモニウ
ム塩系化合物などのスライム防止剤、例えばエチレンジ
アミン、ジエチレントリアミン等のアミン系化合物、例
えばニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチ
レントリアミン五酢酸等のアミノカルボン酸系化合物、
例えばグルコン酸、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、酒石
酸、フィチン酸、琥珀酸、乳酸等の有機カルボン酸な
ど、各種の水処理剤を併用することができ、場合によっ
てはホスホニウム化合物にこれらの水処理剤を予め配合
した水処理剤として使用してもよい。
【0024】さらに、対象水系が金属と接する場合には
防食剤であるトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾー
ル、メルカプトベンゾチアゾール、モリブデン酸及びそ
の塩、亜鉛及びその塩、リン酸及びその塩、亜硝酸及び
その塩、亜硫酸及びその塩などから選ばれる1種あるい
はそれ以上の成分を添加しても良い。
【0025】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。 (大腸菌塗布寒天培地の調製)細菌検査用寒天を濃度が
1.5%(w/v) となるようにイオン交換水に溶か
し、121℃、15分間の滅菌後、径90mmの滅菌シ
ャーレに15〜20mL分注して寒天平板を作製した。
次いで、別途に標準寒天平板培地で培養した大腸菌を適
当な量採取し、滅菌イオン交換水に懸濁して濃厚な大腸
菌懸濁液を作製し、これを60℃で1時間加熱処理した
後、滅菌イオン交換水でODが0.5となるよう希釈し
た。そして、この液0.3mLを前記の寒天平板の全面
に塗布して、大腸菌が寒天の表面に固定される程度に乾
燥させ、大腸菌塗布寒天培地を調製した。
【0026】<アカントアメーバ栄養体に対する効果確
認:実施例1>上記で作製した大腸菌塗布寒天培地を用
いて2日間培養したアカントアメーバ96(Acant
hamoeba 96)の栄養体を滅菌水道水に1mL
当たり1.2×104個添加したものを試験水として用
いた。
【0027】この試験水10mLを組織培養用フラスコ
に入れ、表1に示す薬品(併記した略号で以下、記載す
る場合がある)を10mg/L、25mg/Lあるいは
50mg/Lずつ添加した後28℃で静置した。薬品添
加1時間後および3時間後に試験水の一部を採取し、必
要に応じて段階希釈した後、その1mLを大腸菌塗布寒
天培地に塗布し、28℃で7日間培養後、培地上に発生
したプラーク数をカウントすることにより、生残アメー
バ数を調べた。その結果を表2に示す。ここで、FAD
MA、GA及びCMIはいずれも水系の殺菌剤として一
般に広く用いられているものである。また表中「<1」
は検出下限(1個/mL)であることを示す(表2〜5
で同様)。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】表2より本発明に係るアメーバ殺滅剤を用
いる水系中のアメーバの抑制方法によれば、アカントア
メーバ栄養体に対して、低濃度であっても迅速にその抑
制が可能であることが判る。特にトリ−n−ブチル−n
−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドは10mg/
Lの低濃度の添加であっても非常に高い抑制効果を有し
ていることが判る。
【0031】<ネグレリア栄養体に対する効果確認:実
施例2>実施例1と同様に、ただし、アカントアメーバ
96の栄養体を有する試験水の代わりに、冷却水系から
分離、培養したネグレリアの栄養体を滅菌水道水に1m
L当たり1.2×104個添加したものを試験水として
用いた。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】本発明に係るアメーバ殺滅剤はアカントア
メーバのみならず、ネグレリア栄養体に対しても高い効
果を発揮し、特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル
−ホスホニウムクロライドが10mg/Lの低濃度の添
加であっても非常に高い抑制効果を有していることが判
る。
【0034】<アカントアメーバ嚢子に対する効果確
認:実施例3>実施例1と同様に、ただし、アカントア
メーバ96の栄養体を有する試験水の代わりに、アカン
トアメーバ96の嚢子を滅菌水道水に1mL当たり1.
1×104個添加したものを試験水として用い、薬品添
加濃度を25mg/L、50mg/Lあるいは100m
g/Lとして試験を行った。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】表4より本発明に係るアメーバ殺滅剤を用
いる水系中のアメーバの抑制方法によれば、アカントア
メーバに関してその栄養体に対してのみならず、嚢子に
対しても低濃度であっても迅速にその抑制が可能である
ことが判る。特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル
−ホスホニウムクロライドは25mg/Lの低濃度の添
加であっても非常に高い抑制効果を有していることが判
る。
【0037】<ネグレリア栄養体に対する効果確認:実
施例4>実施例3と同様に、ただし、アカントアメーバ
96の嚢子を有する試験水の代わりに、ネグレリアの嚢
子を滅菌水道水に1mL当たり1.0×104個添加し
たものを試験水として用いた。結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
【0039】表5より本発明に係るアメーバ殺滅剤を用
いる水系中のアメーバの抑制方法によれば、ネグレリア
に関してその栄養体に対してのみならず、嚢子に対して
も低濃度であっても迅速にその抑制が可能であることが
判る。特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホス
ホニウムクロライドは25mg/Lの低濃度の添加であ
っても非常に高い抑制効果を有していることが判る。
【0040】ここで、実施例1〜4の結果から3時間接
触で99.99%のアメーバを殺滅するために必要な各
薬品の濃度を表6にまとめた(表中、「50mg/L
超」あるいは「100mg/L超」はそれぞれ50mg
/Lあるいは100mg/Lの薬剤添加では効果がな
く、さらに高濃度の添加が必要とされることを示
す。)。
【0041】
【表6】
【0042】一般的な殺菌・殺藻剤である脂肪酸ジメチ
ルアミドはネグレリアの嚢子に対して有効ではなく、グ
ルタルアルデヒドおよびCMIはネグレリアの栄養体以
外には短時間(3時間以内)での充分な(99.99%
以上の)殺滅効果を示さなかった。
【0043】これに対して、本発明のアメーバ殺滅剤の
有効成分であるホスホニウム化合物の添加により、アメ
ーバの種類によらず安定した抑制効果か得られ、さらに
アメーバの嚢子に対しても比較的低濃度で充分な効果が
得られる。特にトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−
ホスホニウムクロライドを用いた場合、低濃度の添加で
栄養体及び嚢子の両者に対して顕著な効果が得られる。
【0044】<実際の水系での確認:実施例5>アカン
トアメーバ、エキナアメーバ(Echinamoeb
)、ハルトマネラ、ネグレリア、バンネラおよびフェ
キシリフェラ(Vexillifera)のアメーバ
と、レジオネラ属菌とが共存する、空調装置に組み込ま
れた循環冷却水系(冷凍能力:3冷凍トン、保有水量1
00L、1日に8時間運転)にトリ−n−ブチル−n−
ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドを、冷却水中の
濃度が20mg/Lに維持されるように水系の補給水に
対して注入し、30日間その濃度に保持した。
【0045】このとき、水系中のレジオネラ属菌、アメ
ーバ及び一般細菌についてその数の変化を調べた。結果
を図1に示す。
【0046】なお、レジオネラ属菌数及びアメーバ数の
測定は、「新版レジオネラ症防止指針」(厚生省生活衛
生局企画課監修、財団法人ビル管理教育センター発行、
1999年)に記載の方法に準拠して行った。また、一
般細菌数はJIS・K−0101の63.2に従って測
定した。
【0047】また、図1中、グラフ横軸において、添加
開始日を「0」とし、添加開始の30日前を「−3
0」、添加開始の30日後を「30」とし、その他の日
もこれらに準じて記載してある。グラフ縦軸最下部の値
は本来「100」であるが、「100」以下の場合は測定
下限以下であるため「不検出」としてある。
【0048】図1により、本発明に係るアメーバ抑制剤
であるトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニ
ウムクロライドの添加によりアメーバ数が効果的に抑制
されていることが判る。すなわち、トリ−n−ブチル−
n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロライドの注入開始
後3日でアメーバ数が不検出(2個/100mL未満)
となり、その4日後にレジオネラ属菌も不検出(10個
/100mL未満)となった。薬剤の注入期間中はアメ
ーバ数は2個/100mL以下に維持され、レジオネラ
属菌は検出されなかった。さらに薬剤の注入を中止して
も、その後の4週間、アメーバは10個/100mL以
下に抑制され、その間レジオネラ属菌は検出されていな
い。
【0049】このように、トリ−n−ブチル−n−ヘキ
サデシル−ホスホニウムクロライドの添加により、当初
この水系に生息していた多種類のアメーバを殺滅するこ
とができ、また、これらアメーバの数を10個/100
mL未満にすることによりレジオネラ属菌を効果的に抑
制することができることが確認された。
【0050】さらに殺菌・殺藻剤として知られているト
リ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウムクロ
ライドの添加にもかかわらず、その添加濃度がレジオネ
ラ属菌が充分に除去される範囲に制御されているため
に、注入期間の前後を通じて一般細菌の数に大きな変化
がなく、この添加濃度がアメーバ及びレジオネラ属菌以
外の水系の環境に及ぼす影響が少ないことが理解でき
る。
【0051】
【発明の効果】本発明のアメーバ殺滅剤は、ホスホニウ
ム化合物を有効成分として有しているため、一般に抑制
が困難なアメーバの嚢子に対しても低濃度の添加で迅速
に効果が得られる優れたアメーバ殺滅剤であり、このよ
うなホスホニウム化合物を有効成分としてアメーバとレ
ジオネラ属菌が共存している水系に対して、その水系中
のアメーバ数が100mL当たり10個未満となる濃度
になるように添加することによりレジオネラ属菌を極め
て効果的に除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レジオネラ属菌、アメーバ及び一般細菌が共存
する実際の水系に本発明のアメーバ殺滅剤の有効成分と
してトリ−n−ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウ
ムクロライドを添加したときのこれらレジオネラ属菌、
アメーバ及び一般細菌の生存数の変化を調べた結果を示
す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C02F 1/50 C02F 1/50 532K ZAB ZAB F25D 17/02 305 F25D 17/02 305 F28G 9/00 F28G 9/00 N (72)発明者 石間 智生 茨城県つくば市緑ケ原4−4 アクアス株 式会社つくば総合研究所内 (72)発明者 栗原 美友紀 茨城県つくば市緑ケ原4−4 アクアス株 式会社つくば総合研究所内 Fターム(参考) 4H011 AA02 AD01 BB17 DD01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホスホニウム化合物を有効成分として含
    有することを特徴とするアメーバ殺滅剤。
  2. 【請求項2】 上記ホスホニウム化合物が、トリ−n−
    ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n
    −ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩、テトラキス
    −ヒドロキシメチル−ホスホニウム塩より選択された少
    なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1
    に記載のアメーバ殺滅剤。
  3. 【請求項3】 アメーバが生存している水系に対して、
    ホスホニウム化合物を添加することを特徴とする水系中
    のアメーバの抑制方法。
  4. 【請求項4】 上記ホスホニウム化合物が、トリ−n−
    ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n
    −ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩、テトラキス
    −ヒドロキシメチル−ホスホニウム塩より選択された少
    なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項3
    に記載の水系中のアメーバの抑制方法。
  5. 【請求項5】 アメーバとレジオネラ属菌が共存してい
    る水系に対して、ホスホニウム化合物を該水系中のアメ
    ーバ数が100mL当たり10個未満となる濃度になる
    ように添加することによりレジオネラ属菌を除菌するこ
    とを特徴とするアメーバと共存している水系中のレジオ
    ネラ属菌の除菌方法。
  6. 【請求項6】 上記ホスホニウム化合物が、トリ−n−
    ブチル−n−ヘキサデシル−ホスホニウム塩、トリ−n
    −ブチル−n−ドデシル−ホスホニウム塩、テトラキス
    −ヒドロキシメチル−ホスホニウム塩より選択された少
    なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項5
    に記載のアメーバと共存している水系中のレジオネラ属
    菌の除菌方法。
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