JP4120075B2 - 高発泡性ポリオレフィン樹脂組成物及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度の意匠性を持つポリオレフィン(以下、「PO」と略す)からなるシート状発泡体に関するものであり、例えば壁紙や床材等の建築内装材を提供するシート状発泡体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
壁紙や床材等の建築内装材は、従来はポリ塩化ビニル(以下、「PVC」と略す)を用い、アゾジカルボンアミド(以下、「ADCA」と略す)や4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(以下、「OBSH」と略す)等の作用により発泡させたものが主流であった。即ち、ADCAやOBSH等の、熱分解によって揮発性物質を発生させる化学発泡剤を含有するPVCのプラスチゾルを紙等のバッキング材上に塗布し、熱処理して発泡性原反を製造し、更に高温で熱処理してADCA等を分解させ、その際に発生するガスによって発泡体を得るものである。この発泡性は深い立体的意匠性を付与することに必要である。しかし、PVCによる建築内装材は、火災時の発煙性が高いという問題点があった。そこで、POに無機充填剤を配合した樹脂組成物を用い、化学発泡剤の作用により発泡させた建築内装材が提案されている。
【0003】
しかし、建築基準法に定められた難燃性を付与するためには、無機充填材を大量に配合する必要がある。一般に無機充填材を大量に配合したPOを化学発泡剤によって高い発泡特性の発泡体を製造することは困難であった。即ち、充填剤の高充填によって、発泡セルは破壊されやすくなったり、あるいは発泡セル壁を透過したセルの内部ガスの漏洩(所謂、「ガス抜け」)が発生する等の現象による発泡性阻害が顕著となる。
【0004】
その為、微細なセルを有し、表面平滑性に優れ、かつ高い発泡倍率を持つ発泡体を得ることは困難で、表面の粗面化や発泡倍率が低い等、意匠性が不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、無機充填剤が大量に共存しても気泡が安定化されて、高発泡性を有するPO樹脂組成物を提供し、更に、それによる発泡性シート、発泡性原反、発泡シート、発泡原反及びこれらに印刷やエンボス加工(以下、これらを「意匠加工」と総称する)を施した建築内装材(以下、これらを「成形品」と総称する)を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題に対して鋭意検討したところ、ある種の化合物を配合すれば、この様な問題の抑制された高い発泡特性の樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明によれば、(A)PO、(B)無機充填剤、(C)化学発泡剤、(D)アルキル(メタ)アクリラートを5mol%以上含有するアルキル(メタ)アクリラート単独重合体及び/又は共重合体であって、重量平均分子量がポリスチレン換算で10万以下の重合体(以下、「ポリアクリラート類」と略す)の4成分を含有し、B、C及びD成分の配合量が下記の範囲であることを特徴とする樹脂組成物が高い発泡特性を有する樹脂組成物を与える。
B成分:A成分100重量部に対して30〜200重量部、
C成分:A成分100重量部に対して1〜15重量部、
D成分:B成分100重量部に対して0.2重量部以上3重量部以下
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳細に説明する。尚、A成分100重量部に対する重量部はphr単位で、B成分100重量部に対する重量部はphf単位で示す。
【0009】
[(A)PO]
本発明で用いるPOは、オレフィンをモノマーとする重合体である。重合方法は特に限定されないが、ラジカル重合、アニオン重合、配位重合、カチオン重合等が例示される。これらは単独で用いてもよいし、複数種をブレンドして用いても良い。
【0010】
ここでいうオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセン、ヘキサジエン、ヘキサトリエン、ヘプテン、ヘプタジエン、ヘプタトリエン、オクテン、オクタジエン、オクタトリエン、オクタテトラエン等やその異性体等、本質的には炭素数が2以上で炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するものである。この様なモノマーからなる重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等が例示される。
【0011】
エチレン−α−オレフィン共重合体には、例えば、鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(以下、「VLDPE」と略称する)と呼ばれているものが含まれる。ここでいうα−オレフィンとは、エチレンと共重合し得るものでかつCH2=CRR’の骨格を有する不飽和炭化水素である。ここに、RおよびR’は炭化水素基及び/又は水素であって、少なくともどちらか一方は炭化水素基であれば、特に限定されない。その様なα−オレフィンの内、非環状モノオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−プロピレン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、2−エチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2,4−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、1−オクテン、2−メチル−1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘプテン、4−メチル−1−ヘプテン、5−メチル−1−ヘプテン、6−メチル−1−ヘプテン、2,3−ジメチル−1−ヘキセン、2,4−ジメチル−1−ヘキセン、2,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,5−ジメチル−1−ヘキセン、5,5−ジメチル−1−ヘキセン、2−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2−エチル−3−メチル−1−ペンテン、2−エチル−4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−3,3−ジメチル−1−ブテンが例示される。
【0012】
また、本発明で用いるPOとしては、上記のオレフィンと脂肪酸ビニル、(メタ)アクリル酸等との共重合体でもよい。
【0013】
以上、POを例示したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0014】
建築内装材としては、柔軟性が要求されることも多い。また、製造された発泡性シートや発泡性原反が反りをもつことも、意匠加工性の面から好ましくないことがある。その様な場合には、結晶化度の低いポリエチレン系樹脂が好適に使用される。低結晶化度のポリエチレン系樹脂としては、エチレンとα−オレフィン、あるいは脂肪酸ビニルとの共重合体が例示される。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と略す)もしくはそれと他のPOとのブレンド物であって、酢酸ビニル単位が10−45重量%含まれているようなものは、柔軟で、反りが起こりにくいので好適である。
【0015】
[(B)無機充填材]
無機充填剤は、下地に対する隠蔽性及び易燃性であるPOの希釈あるいは熱分解時の吸熱による難燃性を目的として配合される。本発明に用いる無機充填剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、三酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、二酸化チタン等の金属酸化物、硫化亜鉛等の硫化物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐等の無機燐系物質、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の金属ケイ酸塩等、その他にタルク、ヒドロキシ錫酸亜鉛等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
また、無機充填剤としては表面を脂肪酸及びその誘導体、燐酸エステル、シランカップリング剤、チタナートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン、メラミンと反応し得る官能基を複数有する化合物でメラミンを架橋したもの等で処理されたものは、凝集の抑制、POとの親和性、耐水性の向上等の面で好ましい。
【0017】
B成分は単独で用いてもよいが、複数種を併用することも出来る。
【0018】
B成分の配合量は30〜200phrが好ましい。30phr以上であれば、下地に対する隠蔽性、難燃性の面で好ましく、200phr以下であれば、本発明の効果が顕著である。
【0019】
[(C)化学発泡剤]
本発明では、化学発泡剤による発泡性を活用する。ここでいう化学発泡剤とは、加熱によって分解し、ガスを発生させる物質である。C成分は、本発明の発泡性樹脂組成物、発泡性シート及び発泡性原反を製造する工程では実質的には分解せず、発泡性シート及び発泡性原反を熱処理して発泡させる温度では速やかに分解することが必要である。その代表例としてはADCA及びOBSHを挙げることができる。これら化学発泡剤の粒子形状、平均粒径、粒径分布は特に限定されない。この他、炭酸塩、炭酸水素塩等の無機発泡剤も例示される。これらは、各々単独で用いても良いし、複数種を併用しても良い。
【0020】
C成分の配合量は1〜15phrが好ましい。この範囲にあれば、発泡処理過程で発生するガスの量が適量であり、著しいセル破壊を引き起こさずに高い発泡倍率を実現できる。
【0021】
[(D)ポリアクリラート類]
本発明では、ポリアクリラート類を用いることで発泡体のセルが微細となり、発泡体自身の表面の平滑性も著しく高くなる。ここでいうポリアクリラート類とは、アクリル酸もしくはメタアクリル酸のアルキルエステルをモノマーとするポリマーである。ここでいうアルキル基は炭素数1−20の脂肪族の1価の基であり、鎖状でも環状構造をもっていてもよい。
【0022】
その様な基を鎖状の炭素数1−6の範囲で例示すれば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピルがある。また、環状構造をもつものとしては、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル等が例示される。しかし、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0023】
また、D成分は、(メタ)アクリラートの単独重合体のみでなく、(メタ)アクリラート及びそれと共重合しうる他のモノマー(以下、「コモノマー」と呼ぶ)との共重合体でもよい。その様なコモノマーとしては、エチレン、プロピレン、スチレン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。共重合体の一次構造としては、ブロック共重合体でも、交互共重合体でも、ランダム共重合体でもよく、更に、これらのモノマー、コモノマーの全てが共重合体の主鎖にあっても良いし、それらの一部が主鎖から分岐しているグラフト共重合体でもよい。この様な共重合体を構成するモノマーの中に占める(メタ)アクリラートの量(以下、「共重合比」と呼ぶ)は、5mol%以上であることが必要である。それ以下では、本発明の効果である発泡性の向上が不十分である。
【0024】
これらの(メタ)アクリラートの単独重合体や共重合体の製法としてはラジカル重合、イオン重合、配位重合等が例示されるが、特に制限されるものではない。
【0025】
D成分の重量平均分子量は、0.5万以上10万以下であることが必要である。この範囲外では、本発明の効果である発泡性の向上が不十分である。
【0026】
D成分の配合量は、0.2phf以上3phf以下の範囲であれば、本発明の効果が顕著となるので好ましい。有機溶剤を溶媒とする溶液として用いても良いが、その場合にも、D成分としての配合量がこの範囲にあることが必要である。
【0027】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物を製造する方法は特に限定されない。具体的には、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の混練方法が例示される。その操作条件としては、A成分のPOが熔融状態になり、かつ、C成分である発泡剤の分解による発泡が顕著とならないことが望ましい。
【0028】
[成形体の製造方法]
発泡原反を得る方法には二つある。上記の方法で製造した樹脂組成物を加工して発泡性シートとした後、バッキング材や表皮材と貼り合わせた発泡性原反を製造し、次いで発泡処理を行なうものである。もう一つは、同様にして製造した発泡性シートを発泡させて発泡シートとした後、バッキング材や表皮材と貼り合わせるものである。発泡性シートを製造する為の樹脂組成物のシート化方法も特に限定されない。即ち、カレンダー成形、インフレーション成形、押出成形、キャスト成形等が例示される。発泡性シート製造の温度は、発泡が顕著とならない温度であることが望ましい。
【0029】
発泡は通常の壁紙製造時に用いられる熱風式発泡炉あるいは遠赤外線ヒーター等を用いて常圧下で実施することが出来る。建築内装材に用いる表皮材やバッキング材としては、表面硬度、柔軟性、耐摩耗性等、それぞれの部材として必要な特性を有するポリマーであれば特に限定されない。例えば、壁紙のバッキング材としては、水酸化アルミニウムで処理された不燃紙、グアニジン類等で含浸処理した難燃紙を用いることができる。このような処理のなされていない一般紙を用いることも出来る。表皮材としては、例えば、ポリオレフィン、含フッ素ポリマー、ポリ(メタ)アクリラート、ポリシロキサン等のシート等が例示される。
【0030】
また、建築内装材として重要な意匠性を与えるために、表面への印刷やエンボス加工を施すこともできる。印刷は発泡性シート、発泡シート、発泡性原反、発泡原反のいずれかに施すことができる。印刷に先立って、表面の極性を上げる為にコロナ放電処理やオゾン処理を施すと、印刷適性が向上する。また、表面にプライマーを塗布する方法を用いると、印刷適性が更に向上する。
【0031】
エンボス加工の一つであるメカニカルエンボス加工によって、発泡シート若しくは発泡原反にエンボスを施すことができる。また、適切な発泡抑制インキがある場合には、発泡性シート若しくは発泡性原反に該インキを部分的に塗布した後に熱処理すると、該抑制インキの塗布されなかった部分のみが発泡するので、塗布された部分が凹んだエンボスを施すことができる。この場合、該抑制インキを通常のインキと混合して使用すると、特定の絵柄の部分のみ凹んだ意匠性の高い内装材料を製造することができる。発泡抑制インキの例としては、無水トリメリット酸やベンゾトリアゾール類を含有するものが挙げられる。
【0032】
[他の添加剤]
本発明の樹脂組成物や成形体には、本発明の趣旨を損わない範囲で、上記以外の種々の公知の添加剤等を添加、塗布することができる。例えば、樹脂組成物の物性改善の為の変性ポリマー、ADCAやOBSH以外の発泡剤、発泡助剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、顔料等が添加剤の例として挙げられる。塗布剤としては、接着剤や前記のプライマーが例示される。
【0033】
発泡速度を速める為に、公知の発泡助剤を併用することも差し支えない。発泡助剤については、例えば、技術情報協会編集:「各種高分子の発泡成形技術」(1993年)に記載されている。その様な発泡助剤としては、金属酸化物、有機酸金属塩、亜燐酸塩等の金属化合物、尿素、グリセリン、ジエチレングリコール等が例示される。金属化合物の金属元素としては、亜鉛、バリウム、カルシウム、ホウ素、錫、ホウ素等が例示される。例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、亜燐酸亜鉛、ジブチル錫マレエート、カルシウム系、バリウム系、亜鉛系の脂肪酸塩が好適な例である。特に脂肪酸塩は親和性、発泡速度制御効果などが大きいので好ましく、オクタデカン酸亜鉛、ドデカン酸亜鉛、酢酸亜鉛、オクタデカン酸バリウム、オクタデカン酸カルシウム等が挙げられる。その配合量は、所望の発泡特性に応じて選定すればよい。
【0034】
難燃剤としては、燐酸エステル、ホスホナート、ホスフィナート、ホスフィンオキシド、ホスフィト、ホスホニト、ホスフィニト、ホスフィン等の有機燐系難燃剤、メラミンポリホスファート、ジメラミンポリホスファート等の有機塩基のポリ燐酸塩、有機ハロゲン化物、メラミン、メラミンシアヌラート、メラミンイソシアヌラート等が例示される。
【0035】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、ホスフィト系、スルフィド系等が例示される。
【0036】
光安定剤としては、サリシラート系、ヒドロキシベンゾアート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の光吸収剤やヒンダードアミン系が挙げられる。
【0037】
架橋剤としては、過酸化物系、アゾ系等が挙げられる。
【0038】
帯電防止剤は、静電気によるコンピューター等の誤動作防止や塵の付着に効果があり、例えば、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の各種界面活性剤が例示される。
【0039】
抗菌剤や防黴剤は建築内装材の表面や裏面での黴や様々な微生物の発生を抑制する為のもので、ピリジニウム塩等の四級アンモニウム塩や四級ホスホニウム塩、銀イオンを含んだ化合物等が例示される。また、光化学反応による同様の作用をもつ化合物、例えば二酸化チタン等も挙げられる。
【0040】
滑剤は熔融混練時やシート成形時における樹脂組成物の流動性やシート成形性の調整に用いられるものであり、各種ワックス類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸アミド類、高級脂肪酸の低級アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール等とのエステル類、高級脂肪族アルコール類、金属石鹸、燐酸エステル類、亜燐酸エステル類等が挙げられる。
【0041】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
[原料]
実施例、比較例及び参考例には以下の原料を用いた。
【0043】
[A成分、PO]
A1:EVA、酢酸ビニル含有量=20重量%、MFR=1.5g/10分
東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン631」
A2:EVA、酢酸ビニル含有量=26重量%、MFR=4.0g/10分
東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン634」
A3:EVA、酢酸ビニル含有量=28重量%、MFR=6.0g/10分
東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン751」
A4:VLDPE、ダウケミカル社製、商品名「Engage 8100」
[B成分、無機充填剤]
B1:二酸化チタン
B2:水酸化アルミニウム
B3:炭酸カルシウム
[C成分、化学発泡剤]
C1:ADCA
C2:OBSH
[D成分、ポリ(アルキル(メタ)アクリラート)及びその比較対象物]
D1:ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、
三菱レイヨン株式会社製、商品名「ダイヤナール BR−105」
重量平均分子量=5.5万
D2:エチレンとブチルアクリラートとの共重合体、
日本触媒化学株式会社製、商品名「ST−100」
重量平均分子量=5.0万
1H−NMRによって測定したエチレン/ブチルアクリラート共重合比
=88/12
D’:ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、
三菱レイヨン株式会社製、商品名「ダイヤナール BR−101」
重量平均分子量=16万
D”:ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、
重量平均分子量=0.4万
(日本化学会編、「第4版実験化学講座」、第28巻「高分子合成」(1992年、丸善)の第128頁から第129頁に記載された実験例2・87のポリメチルメタクリラートの重合方法において、モノマーを2−メチルプロピルメタクリラートに代え、t−C4H9Liの量を0.5mmolに増やして重合を行って調製した。)
LD:低密度ポリエチレン
東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン213」
重量平均分子量=5.3万
[実施例1−12、比較例1−10、参考例1]
A成分として酢酸ビニルが26%のEVA(A2)を用い、B成分として炭酸カルシウム(B3)と二酸化チタン(B1)との併用で合計60−210phr、C成分としてADCA(C1)とOBSH(C2)とを、それぞれ、5phr、及び1phr、発泡助剤としてのステアリン酸亜鉛(Zn−St)を3phr、D成分としてD1,D2,D’,D”,LDを0−3.0phr(0−2phf)配合し、135℃にてオープンロールで混練して、表1に示す処方の発泡性樹脂組成物を調製した。次いで、この発泡性樹脂組成物から、135℃に調整したオープンロールを用いて、0.1mmの厚みの発泡性シートを作成し、難燃紙とロール上で熱融着して発泡性原反を得た。この発泡性原反をスモールオーブン(ウェルナマチス社製)によって、210℃で60秒間加熱して発泡原反を得た。発泡倍率と発泡特性とを表1に示した。
【0044】
尚、発泡倍率は次式を用いて求めた。
【0045】
発泡倍率=(発泡原反の樹脂層厚み)/(発泡性原反の樹脂層厚み)
ここに、「発泡原反の樹脂層厚み」と「発泡性原反の樹脂層厚み」とは、それぞれ、それら原反の厚みから、難燃紙の厚みを差し引いたものである。
【0046】
また、得られた発泡原反の発泡特性は、セルの緻密性、表面の平滑性を目視観測し、次の様に評価した。
【0047】
◎:非常に緻密なセルのみで構成され、表面も平滑。
【0048】
○:緻密なセルが大部分であり、表面も平滑。
【0049】
△:1mm程度以上の大きいセルが部分的に存在し、表面が部分的に粗い。
【0050】
×:1mm程度以上の大きいセルが大部分であり、表面が全体的に凹凸。
【0051】
D成分を全く用いない比較例1にては、発泡原反の発泡状態が極めて粗く、かつ発泡倍率も2.4倍と低いものであった。ところが、B成分の量を同じにして、平均分子量5.5万のD1を1.2phf使用した実施例1では、発泡倍率が5.7倍と大きく向上し、更に発泡状態も多少の荒れはあるものの良好となった。即ち、D1成分を用いるとB成分(無機充填剤)が存在しても発泡特性が良好であることが明らかである。
【0052】
D成分として平均分子量が16万と特許請求範囲の上限よりも高いものであるD’を実施例1のD1成分と同量配合したところ、発泡倍率は2.0倍と著しく低く、発泡状態も大半の気泡が潰れた様な状態であった(比較例2)。即ち、D成分としては、一定値以下の平均分子量であることが必要と判る。
【0053】
一方、比較例3では、逆に平均分子量が0.4万と特許請求範囲の下限よりも低いD”を用いた。その結果、発泡倍率は2.3倍であり、非常に荒れた発泡状態を呈した。このことから、D成分としては、一定値以上の平均分子量であることが必要と判る。
【0054】
また、比較例4でD成分の代わりに用いたLDは、D2と同程度の重量平均分子量であるが、(メタ)アクリラートを共重合成分としないポリエチレンである。この結果から、モノマー成分として一定値以上の(メタ)アクリラートが必須であることが判る。
【0055】
次に、B成分の合計量を増やした例について説明する。これらの処方とその結果も表1に示す。
【0056】
B成分の合計量を100phrに増やしたのが実施例2−8及び比較例5である。D成分を用いない比較例5にては、発泡倍率は3倍と低く、発泡状態は非常に荒れていた。一方、2−メチルプロピルメタアクリラートの単独重合体であるD1やエチレンとブチルアクリラートとの共重合体であるD2をD成分として用いた実施例2−8では、いずれも比較的良好な発泡状態の下に約4倍乃至5倍程度の高い発泡倍率を示した。即ち、D成分は、(メタ)アクリラートの単独重合体でも共重合体でも良いことが判る。
【0057】
B成分の量を合計180phrまで増やしても、同様に優れた気泡安定化作用が保たれている(比較例6及び実施例9)。
【0058】
更に、A成分の種類とB成分の無機充填剤の内容とを変えた例について説明する。その処方と結果も表1に示す。
【0059】
実施例6及び比較例5のA成分を、酢酸ビニル含有率の異なるEVAであるA1(20%)、A3(28%)あるいはVLDPEであるA4に替え、更にB3の内の30phrを水酸化アルミニウムであるB2に置き換えたのが、実施例11−13と比較例8−10である。A成分やB成分の種類によらず、D成分の気泡安定化効果が示されている。
【0060】
【表1】
【0061】
【発明の効果】
以上述べた様に、アルキル(メタ)アクリラートの単独重合体若しくは共重合体を用いることによって、POに無機充填材を高充填しても良好な高発泡性を発現できることが明らかである。
Claims (8)
- (A)ポリオレフィン、(B)無機充填剤、(C)化学発泡剤、(D)アルキル(メタ)アクリラートを5mol%以上含有するアルキル(メタ)アクリラート単独重合体及び/又は共重合体であって、重量平均分子量がポリスチレン換算で0.5万以上10万以下の重合体の4成分を含有し、B、C及びD成分の配合量が下記の範囲であることを特徴とする発泡性樹脂組成物。
B成分:A成分100重量部に対して30〜200重量部、
C成分:A成分100重量部に対して1〜15重量部、
D成分:B成分100重量部に対して0.2重量部以上3重量部以下 - 請求項1に記載の発泡性樹脂組成物からなる発泡性シート。
- 請求項2に記載の発泡性シートと表皮材及び/又はバッキング材とから構成される発泡性原反。
- 請求項3記載の発泡性原反を熱処理して発泡させた発泡原反。
- 請求項2に記載の発泡性シートを熱処理によって発泡させた発泡シート。
- 請求項5に記載の発泡シートと表皮材及び/又はバッキング材とから構成される発泡原反。
- 請求項4又は6に記載の発泡原反で構成され、印刷及び/又はエンボス加工が施されたものであることを特徴とする建築内装材。
- 請求項5に記載の発泡シートで構成され、印刷及び/又はエンボス加工が施されたものであることを特徴とする建築内装材。
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