JP4117537B2 - スズホイスカーの防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスズホイスカーの防止方法に関して、所定膜厚未満のごく薄いビスマスの下地皮膜を介してスズ系皮膜を形成することにより、スズホイスカーの発生を有効に防止するともに、下地皮膜のクラックを防止してスズ系皮膜に接合不良などの悪影響が及ばないものを提供する。
【0002】
【発明の背景】
スズメッキは、ハンダ付け性向上用皮膜、エッチングレジスト用皮膜などとして、弱電工業並びに電子工業部品などに広く利用され、また、スズ−鉛合金メッキに替わる実用的な鉛フリーメッキの有力候補でもあるが、スズメッキ皮膜にはいわゆる真正スズホイスカーが発生することが知られており、リードの線幅がきわめて狭い高密度実装用の微細パターンなどでは、このホイスカーが短絡の原因となり、プリント回路基板やフィルムキャリアなどの各種電子部品の信頼性を低下させるという問題がある。
【0003】
【従来の技術】
スズホイスカーの防止方法としては、メッキ後にアニール処理或はリフロー処理を行ったり、スズメッキ皮膜を金やスズ合金などの他のメッキ皮膜に代替する方法などが知られている。
一方、特許第2942476号公報(以下、従来技術1という)には、鉛フリーであるスズメッキ皮膜におけるホイスカー発生の問題の解消を目的として、リード線やリードフレーム上に、厚さ3〜8μmのスズの下地層と、厚さ2〜5μmのビスマス或はアンチモンの表面層を順次形成し、全体の厚みを10μm以上に調整したうえで、熱処理による効率的な拡散でスズとビスマス又はアンチモンとの合金を形成することが開示されている。
【0004】
また、特開平8−199386号公報(以下、従来技術2という)には、上記従来技術1と同様に、スズとビスマスの2層メッキが開示されている。即ち、上記従来技術1とは逆に、下地用のビスマス皮膜の上層にスズ皮膜を順次形成することにより、ハンダ付けで加熱された際に、溶融して容易に合金化し、ハンダ接合強度やハンダ濡れ性などに優れた皮膜を形成できることが開示されている。さらに、この2層メッキ皮膜の膜厚比率は、ビスマス皮膜:スズ皮膜=2:8〜8:2程度であり、2層メッキ皮膜の合計膜厚は2〜20μm程度が好ましいことが記載されている(同公報の請求の範囲、段落10、段落14〜15参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術1では、スズの膜厚が8μmを越えるとホイスカー発生の恐れが増すことが記載され、また、ビスマス皮膜の膜厚が1μmより薄くなると、拡散作用によるスズとの合金の形成に支障を来し、やはり、ホイスカーの発生を防止できなくなることが示唆されている(同公報の段落8参照)。
一般に、上記従来技術1〜2のようなビスマスとスズの2層メッキでは、上述にも示されたように、ホイスカーの発生を有効に防止しようとすれば、ビスマスの膜厚を所定以上に厚くするとともに、スズの膜厚を所定以上に厚くしないことが重要であると思われる。
【0006】
しかしながら、他方において、ビスマス皮膜はスズ皮膜などに比べて硬く、皮膜性状としてクラックが発生し易いことから、ビスマス皮膜の上層にスズ皮膜を形成する場合、ホイスカーの発生防止の有効性を高める見地から、ビスマスの膜厚を厚くすると、メッキ後の被メッキ物に折り曲げ加工などの外力を加えた場合、下地のビスマス皮膜にクラックが発生するとともに、これに続いて、当該クラックに起因して上層のスズ皮膜にもクラックが発生して、ハンダ付けの際に接合不良や密着不良が起き、スズ皮膜の初期の目的でもあるハンダ付け性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0007】
本発明は、ビスマスの下地皮膜上にスズ皮膜を形成して、この上層のスズ皮膜をハンダ付け面とするビスマス(下地層)/スズ(上層)の2層メッキ方法において、スズ系皮膜上のホイスカー発生とビスマス皮膜のクラック発生の両方を良好に防止することを技術的課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上層のスズ皮膜をハンダ付け面とするビスマス/スズの2層メッキ方法を鋭意研究した結果、ホイスカー防止の有効性を確実に担保するためには、下地ビスマス層の膜厚を所定以上に厚くする必要があるという上記従来技術1〜2からの予測に反して、下地のビスマス皮膜の膜厚が0.4μm未満のごく薄い所定範囲にある場合でも、上層のスズ皮膜のホイスカーの発生を有効に防止できること、また、薄いビスマス皮膜ではクラックが発生し難く、もって、上層のスズ皮膜にクラックなどの悪影響が及ばないことを見い出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明1は、(a)可溶性ビスマス塩を含有する前処理液を用いて被メッキ物に電気メッキを施し、被メッキ物上にビスマスの下地皮膜を形成した後、
(b)上記ビスマスの下地皮膜上にスズのメッキ皮膜を形成して、この上層のスズ皮膜をハンダ付け面とするビスマス ( 下地層 ) /スズ ( 上層 ) の2層メッキ方法において、
上記ビスマスの下地皮膜の膜厚が0 . 05〜0 . 37μmであり、且つ、
上層のスズ皮膜の膜厚が1〜10μmであることを特徴とするスズホイスカーの防止方法である。
【0010】
本発明2は、上記本発明1において、下地ビスマス皮膜上にスズのメッキ皮膜を形成する替わりに、スズ−銅合金、スズ−銀合金、スズ−ビスマス合金、スズ−亜鉛合金、スズ−ニッケル合金、スズ−銅−銀合金から選ばれたスズ合金のメッキ皮膜を形成することを特徴とするスズホイスカーの防止方法である。
【0011】
本発明3は、上記本発明1又は2において、被メッキ物が銅、銅合金、42合金であることを特徴とするスズホイスカーの防止方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、第一に、ビスマスの下地皮膜上にスズ皮膜を形成して、この上層のスズ皮膜をハンダ付け面とするビスマス(下地層)/スズ(上層)の2層メッキを行うに際して、可溶性ビスマス塩を含有する前処理液を用いて電気メッキを施し、被メッキ物上にごく薄いビスマスの下地皮膜を形成し、その上にスズメッキ皮膜を形成するスズホイスカーの防止方法であり、第二に、上層にスズ皮膜を形成する替わりに、所定のスズ合金メッキ皮膜を形成するホイスカーの防止方法である。
【0013】
ビスマスの下地皮膜を形成するための前処理液は、基本的に、可溶性ビスマス塩を必須成分とし、これに浴ベースとしての酸又はその塩、さらには、必要に応じて、後述する上層スズ系皮膜を形成するためのスズ又はスズ合金メッキ浴と同様に、界面活性剤、光沢剤、pH調整剤、導電性塩などの各種添加剤を含有した液を意味し、硫酸浴や有機スルホン酸浴などの公知のビスマス電気メッキ浴を始め、電気メッキ処理によりビスマス皮膜を形成可能な任意の液が使用できることはいうまでもない。
【0014】
上記可溶性ビスマス塩は、前処理液中でBi3+を生成する任意の無機又は有機の塩を意味し、水溶性塩に限らず、難溶性塩もBi3+を少量又は微量生成することから排除するものではなく、これらを包含する概念である。当該ビスマス塩の具体例としては、硫酸ビスマス、酸化ビスマス、塩化ビスマス、臭化ビスマス、硝酸ビスマス、有機スルホン酸のビスマス塩、スルホコハク酸のビスマス塩などが挙げられる。
上記浴ベースとしての酸は、有機酸、無機酸、或はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを単用又は併用できる。
上記有機酸としては有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などが挙げられ、有機スルホン酸は排水処理が容易という利点がある。無機酸としては、硫酸、塩酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、リン酸、ホウ酸などが挙げられる。
また、電気メッキ処理においては、液温は常温〜50℃、陰極電流密度とメッキ時間は下地皮膜の膜厚にもよるが、陰極電流密度は0.5〜25A/dm2、メッキ時間は10秒〜5分程度である。
【0015】
本発明では、先ず、上記前処理液を用いた電気メッキにより、被メッキ物の素地表面にビスマスの下地皮膜を形成するが、このビスマス皮膜は0 . 05μm〜0 . 37μmのごく薄い膜厚で形成する必要があり、好ましくは0 . 05〜0 . 30μmである。
銅又は銅合金の素地表面にスズ皮膜を直接形成すると、銅素地界面での拡散により、スズと銅の金属間化合物が形成され、これがスズホイスカー発生の契機になると推定されるが、素地上にビスマスの下地皮膜を介在させると、スズの上層皮膜に銅が拡散せず、ホイスカーを有効に防止できる。
この銅の拡散を阻害する下地ビスマス皮膜の作用は、0 . 37μm以下でも充分に有効であり、ホイスカーの発生を円滑に防止するが、その一方で、下地のビスマス皮膜の膜厚が厚くなり過ぎると、折り曲げ加工などでビスマス皮膜にクラックが発生し易く、上層のスズ皮膜にも悪影響が及ぶ恐れがある。従って、下地のビスマス皮膜の膜厚は0 . 37μm以下であることが必要である。
【0016】
本発明は、前処理液による電気メッキで形成した下地用のビスマス薄膜を介して、被メッキ物上にスズ又はスズ合金メッキ皮膜を形成し、良好なハンダ付け性などを確保することを目的とする。即ち、このスズ皮膜又はスズ合金皮膜がハンダ付け面となる。
上記スズ系メッキ皮膜は電気メッキ又は無電解メッキで形成する。但し、厚付けする場合には電気メッキが有利である。
上記スズ合金は、公知の2元又は3元以上のスズ合金を任意に選択でき、具体的には、スズ−銅合金、スズ−銀合金、スズ−ビスマス合金、スズ−亜鉛合金、スズ−ニッケル合金、スズ−銅−銀合金、スズ−銅−ビスマス合金などが好ましい(本発明2参照)。この場合、スズ−ビスマス合金などは他のスズ合金に比べて相対的にスズホイスカーが発生し難いとされるが、ビスマスの含有率によってはホイスカーが発生し易くなる場合もあるため、このような傾向のスズ合金についても、本発明を適用できることはいうまでもない。
【0017】
上層のスズメッキ又はスズ合金メッキを行う際のメッキ液は、基本的に、可溶性第一スズ塩と、液ベースとしての酸又はその塩と、必要に応じて、酸化防止剤、安定剤、錯化剤、界面活性剤、光沢剤、平滑剤などの各種添加剤を含有し、或は、さらに、スズ合金メッキ浴にあっては、スズ合金を構成するスズ以外の特定金属の可溶性塩を含有する。
上記可溶性第一スズ塩には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパノールスルホン酸、スルホコハク酸、p−フェノールスルホン酸などの有機スルホン酸の第一スズ塩を初め、ホウフッ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、塩化第一スズ、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウムなどが使用できる。
スズ合金を構成するスズ以外の特定金属の可溶性塩とは、Cu+、Ag+、Bi3+、Ni2+、Zn2+などの各種金属イオンを生成する任意の無機又は有機の塩を意味する。
例えば、可溶性銅塩は、硫酸銅、塩化銅、酸化銅、炭酸銅、酢酸銅、ピロリン酸銅、シュウ酸銅などである。可溶性銀塩は、メタンスルホン酸銀、エタンスルホン酸銀、2−プロパノールスルホン酸銀などの有機スルホン酸銀を初め、シアン化銀、ホウフッ化銀、硫酸銀、亜硫酸銀、炭酸銀、スルホコハク酸銀、硝酸銀、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、シュウ酸銀、酸化銀、酢酸銀などである。可溶性ビスマス塩は、硫酸ビスマス、酸化ビスマス、塩化ビスマス、臭化ビスマス、硝酸ビスマス、有機スルホン酸のビスマス塩、スルホコハク酸のビスマス塩などである。可溶性ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、酸化ニッケル、酢酸ニッケル、有機スルホン酸のニッケル塩などである。また、可溶性亜鉛塩は塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、有機スルホン酸亜鉛などである。
【0018】
上記酸化防止剤は浴中のSn2+の酸化防止を目的とするもので、次亜リン酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
上記安定剤はメッキ浴の安定又は分解防止を目的として含有され、特に銀、ビスマスなどの貴金属の可溶性塩を含有する場合、シアン化合物、チオ尿素類、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、アセチルシステインなどの含イオウ化合物、クエン酸等のオキシカルボン酸類などの公知の安定剤の含有が有効である。
また、一般に、メッキ浴中のSn2+は酸性では安定であるが、中性付近では不安定になり易い。上層のスズ又はスズ合金皮膜をpH3〜9程度の中性メッキ浴を使用して形成する場合には、この中性領域でSn2+を安定化させ、もって白色沈殿が生じたり、浴が分解するのを防止する目的で、錯化剤を含有させるのが有効である。
上記錯化剤は、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、モノカルボン酸などであり、具体的には、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、ジグリコール酸、或はこれらの塩などが挙げられる。好ましくは、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、或はこれらの塩などである。
また、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジオキシビス(エチルアミン)−N,N,N′,N′−テトラ酢酸、グリシン類、ニトリロトリメチルホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、或はこれらの塩なども錯化剤として有効である。
【0019】
上記界面活性剤には通常のノニオン系、アニオン系、両性、或はカチオン系などの各種界面活性剤が挙げられ、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善に寄与する。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、スルホベタイン、イミダゾリンベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0020】
上記光沢剤、或は半光沢剤としては、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリリデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
【0021】
上記平滑剤としては、上記光沢剤などとも多少重複するが、β−ナフトール、β−ナフトール−6−スルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、(o−、p−)メトキシベンズアルデヒド、バニリン、(2,4−、2,6−)ジクロロベンズアルデヒド、(o−、p−)クロロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2(4)−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2(4)−クロロ−1−ナフトアルデヒド、2(3)−チオフェンカルボキシアルデヒド、2(3)−フルアルデヒド、3−インドールカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−バレルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アルドール、スクシンジアルデヒド、カプロンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アリルアルデヒド、グルタルアルデヒド、1−ベンジリデン−7−ヘプタナール、2,4−ヘキサジエナール、シンナムアルデヒド、ベンジルクロトンアルデヒド、アミン−アルデヒド縮合物、酸化メシチル、イソホロン、ジアセチル、ヘキサンジオン−3,4、アセチルアセトン、3−クロロベンジリデンアセトン、sub.ピリジリデンアセトン、sub.フルフリジンアセトン、sub.テニリデンアセトン、4−(1−ナフチル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−フリル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−チオフェニル)−3−ブテン−2−オン、クルクミン、ベンジリデンアセチルアセトン、ベンザルアセトン、アセトフェノン、(2,4−、3,4−)ジクロロアセトフェノン、ベンジリデンアセトフェノン、2−シンナミルチオフェン、2−(ω−ベンゾイル)ビニルフラン、ビニルフェニルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸、プロピレン−1,3−ジカルボン酸、ケイ皮酸、(o−、m−、p−)トルイジン、(o−、p−)アミノアニリン、アニリン、(o−、p−)クロロアニリン、(2,5−、3,4−)クロロメチルアニリン、N−モノメチルアニリン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、N−フェニル−(α−、β−)ナフチルアミン、メチルベンズトリアゾール、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−ベンズトリアジン、イミダゾール、2−ビニルピリジン、インドール、キノリン、モノエタノールアミンとo−バニリンの反応物、ポリビニルアルコール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
また、ゼラチン、ポリペプトン、N-(3-ヒドロキシブチリデン)-p-スルファニル酸、N-ブチリデンスルファニル酸、N-シンナモイリデンスルファニル酸、2,4-ジアミノ-6-(2'-メチルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2'-エチル-4-メチルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2'-ウンデシルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール類も平滑剤として有効である。
上記ベンゾチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)ベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-ベンゾチアゾールチオ酢酸などが挙げられる。
【0022】
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられるが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類なども有効である。
上記導電性塩としては、硫酸、塩酸、リン酸、スルファミン酸、スルホン酸などのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられるが、上記pH調整剤で共用できる場合もある。
上記防腐剤としては、ホウ酸、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
上記消泡剤としては、プルロニック界面活性剤、高級脂肪族アルコール、アセチレンアルコール及びそれらのポリアルコキシレートなどが挙げられる。
【0023】
上記スズ又はスズ合金皮膜はハンダ付け性などを良好に確保するためのもので、前述の通り、ハンダ付け面となる。
本発明のスズ系上層皮膜の膜厚は一般的な表面被覆用として1〜10μmである。
【0024】
本発明では、被メッキ物の代表例は銅又は黄銅などの銅合金を素地とするものであるが、この外にも電子部品に常用される42合金、鋼などの鉄系素地、或は、チタン、亜鉛などの任意の金属を素地とするものに適用できる。好ましくは、本発明3に示すように、銅、銅合金、42合金である。
また、本発明のスズホイスカーの防止方法を適用した被メッキ物の好ましい具体例としては、IC、コネクタ、プリント回路基板、ウエハーのパッド、フィルムキャリア、電池用電池材料などが挙げられる。
【0025】
【作用】
銅、黄銅などの銅系素地が被メッキ物である場合を代表例として説明すると、銅系素地と上層のスズ又はスズ合金皮膜の間にビスマスの薄膜を下地皮膜として介在させるため、上層皮膜に銅が拡散せず、もって、スズと銅の金属間化合物が形成されず、スズホイスカーを有効に防止できるものと推定される。前述したように、この銅の拡散阻害作用は、ビスマス皮膜の膜厚が0 . 37μm以下のごく薄い場合にも有効に機能する。
また、詳細なメカニズムはいまだ不明であるが、銅系素地以外の42合金などの被メッキ物に適用した場合にも、この下地用の金属薄膜の介在によりスズホイスカーを円滑に防止できる。
【0026】
【発明の効果】
ビスマスの下地皮膜を0 . 05〜0 . 37μmのごく薄い条件で形成しても、上層のスズ皮膜又はスズ合金皮膜にホイスカーが発生するのを有効に防止できるとともに、薄いビスマス皮膜にはクラックが発生し難いため、上層のスズ又はスズ合金皮膜にもクラックが波及するなどの悪影響が及ぶことを円滑に防止できる。
従って、上述の通り、下地のビスマス皮膜をごく薄く形成し、且つ、上層のスズ系皮膜をハンダ付け面とするようにビスマス皮膜 ( 下地 ) /スズ系皮膜 ( 上層 ) の2層メッキを被メッキ物に施すと、当該被メッキ物に折り曲げ加工などの外力を加えたうえで、ハンダ付けする場合にも、2層メッキにクラックが発生せず、接合不良や密着不良などが起こる恐れはない。
また、下地ビスマス皮膜はごく薄いため、コスト削減に寄与する。
【0027】
【実施例】
以下、本発明のホイスカーの防止方法の実施例を順次述べるとともに、当該実施例で得られたスズ系メッキ皮膜についてのホイスカーの発生防止評価試験例、クラックの発生度合評価試験例を説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0028】
下記の実施例1〜10のうち、実施例3及び5はビスマスの膜厚を本発明の上限に近い値で形成した例、実施例1は同膜厚を0.05μmにした例、実施例4は0.20μm、他の実施例は同膜厚を0.10μmにした例である。実施例1〜4及び実施例9〜10は上層がスズ皮膜の例、他の実施例は同じくスズ合金皮膜の例である。また、実施例1〜8は被メッキ物が42合金製である例、実施例9は同じく黄銅の例、実施例10は同じく銅の例である。
一方、比較例1〜8のうち、比較例1及び比較例7は被メッキ物上にビスマス下地を形成せずにスズ皮膜を形成したブランク例である。比較例1〜4及び比較例7〜8は上層がスズ皮膜の例、他の比較例は同じくスズ合金皮膜の例である。比較例1〜6は被メッキ物が42合金製である例、比較例7は同じく黄銅の例、比較例8は同じく銅の例である。冒述の従来技術2には、下地ビスマス層の適正な膜厚範囲の下限として0.4μmが記載されているが、比較例3及び比較例8はこの従来技術2に準拠した例である。 尚、図1の最左欄〜中央寄り欄には、実施例及び比較例における素地の種類、下地ビスマス皮膜の膜厚、上層スズ系皮膜の種類を夫々まとめた。
【0029】
下記の実施例1〜10及び比較例1〜8におけるメッキ処理の手順を述べると、42合金、銅又は黄銅製のリードフレームを素地として、下記(1)の前処理液で電気メッキ処理を施してビスマスの薄膜を下地形成したのち、下記(2)のスズ又はスズ合金メッキ液を用いて電気メッキを行った。
また、上記実施例1〜10及び比較例1〜8では、上層のスズ又はスズ合金の膜厚は1μmに統一した。
【0030】
《実施例1》
(1)前処理によるビスマス下地形成
前処理液として下記(a)の電気ビスマスメッキ液を建浴し、下記(b)の液温で同欄の膜厚に達するまで通電処理を行った。
(2)上層のスズメッキ処理
下記の(c)の電気スズメッキ液を建浴して、(d)の液温で同欄の膜厚になるまで電気メッキを行った。
(c)電気スズメッキ液
硫酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
硫酸 60g/L
クレゾールスルホン酸 40g/L
ゼラチン 2g/L
β−ナフトール 1g/L
(d)電気メッキ条件
液温 :20℃
陰極電流密度:4A/dm2
スズ膜厚 :1μm
【0031】
《実施例2》
上記実施例1を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を0.10μmとした以外は、この実施例1と同様の条件で操作して、素地金属の42合金材の上に前処理でビスマスを薄膜形成したのち、スズメッキを施した。
【0032】
《実施例3》
上記実施例1を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を0.37μmとした以外は、この実施例1と同様の条件で操作して、素地金属の42合金材の上に前処理でビスマスを薄膜形成したのち、スズメッキを施した。
【0033】
《実施例4》
上記実施例1を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を0.20μmとした以外は、この実施例1と同様の条件で操作して、42合金材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズメッキを施した。
【0034】
《実施例5》
(1)前処理によるビスマス下地形成
上記実施例1と同様の条件で操作して、ビスマス皮膜が0.35μmになるまで電気メッキ処理を行った。
(2)上層のスズ−銅合金メッキ処理
下記の(c)の電気スズ−銅合金メッキ液を建浴して、(d)の液温で同欄の膜厚になるまで電気メッキを行った。
(c)電気スズ−銅合金メッキ液
硫酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
硫酸銅5水和物(Cu+として) 20g/L
クエン酸三ナトリウム 140g/L
硫酸アンモニウム 70g/L
ステアリルジメチルアンモニウムベタイン 1g/L
(d)電気メッキ条件
液温 :20℃
陰極電流密度:3A/dm2
スズ膜厚 :1μm
【0035】
《実施例6》
上記実施例5を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を0.10μmとした以外は、この実施例5と同様の条件で操作して、42合金材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズ−銅合金メッキを施した。
【0036】
《実施例7》
(1)前処理によるビスマス下地形成
上記実施例1と同様の条件で操作して、ビスマス皮膜が0.10μmになるまで電気メッキ処理を行った。
(2)上層のスズ−亜鉛合金メッキ処理
下記の(c)の電気スズ−亜鉛合金メッキ液を建浴して、(d)の液温で同欄の膜厚になるまで電気メッキを行った。
(c)電気スズ−亜鉛合金メッキ液
硫酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
硫酸亜鉛(Zn2+として) 8g/L
クエン酸 100g/L
硫酸アンモニウム 70g/L
ラウリルジメチルアンモニウムベタイン 1g/L
アンモニア水(28%)でpH6に調整
(d)電気メッキ条件
液温 :25℃
陰極電流密度:3A/dm2
スズ膜厚 :1μm
【0037】
《実施例8》
(1)前処理によるビスマス下地形成
上記実施例1と同様の条件で操作して、ビスマス皮膜が0.10μmになるまで電気メッキ処理を行った。
(2)上層のスズ−銀合金メッキ処理
下記の(c)の電気スズ−銀合金メッキ液を建浴して、(d)の液温で同欄の膜厚になるまで電気メッキを行った。
(c)電気スズ−銀合金メッキ液
塩化第一スズ(Sn2+として) 43g/L
酢酸銀(Ag2+として) 1.3g/L
酒石酸 150g/L
アセチルシステイン 32g/L
(d)電気メッキ条件
液温 :20℃
陰極電流密度:3A/dm2
スズ膜厚 :1μm
【0038】
《実施例9》
上記実施例2を基本として、被メッキ物を42合金に替えて黄銅製とした以外は、この実施例2と同様の条件で操作して、黄銅材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズメッキを施した。
【0039】
《実施例10》
上記実施例2を基本として、被メッキ物を42合金に替えて銅製とした以外は、この実施例2と同様の条件で操作して、銅材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズメッキを施した。
【0040】
《比較例1》
42合金材のリードフレームを被メッキ物として、その素地上にビスマス下地を形成しない以外は、前記実施例1と同様の条件で操作して、スズメッキ液を用いて電気メッキを行い、1μmのスズメッキ皮膜を形成した。
【0041】
《比較例2》
上記実施例1を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を1.00μmとした以外は、この実施例1と同様の条件で操作して、42合金材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズメッキを施した。
【0042】
《比較例3》
上記実施例1を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を0.40μmとした以外は、この実施例1と同様の条件で操作して、42合金材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズメッキを施した。
【0043】
《比較例4》
上記実施例1を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を0.50μmとした以外は、この実施例1と同様の条件で操作して、42合金材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズメッキを施した。
【0044】
《比較例5》
上記実施例5を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を0.50μmとした以外は、この実施例1と同様の条件で操作して、42合金材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズ−銅合金メッキを施した。
【0045】
《比較例6》
上記実施例7を基本として、下地用のビスマス皮膜の膜厚を1.00μmとした以外は、この実施例7と同様の条件で操作して、42合金材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズ−亜鉛合金メッキを施した。
【0046】
《比較例7》
黄銅材のリードフレームを被メッキ物として、その素地上にビスマス下地を形成しない以外は、前記実施例1と同様の条件で操作して、スズメッキ液を用いて電気メッキを行い、1μmのスズメッキ皮膜を形成した。
【0047】
《比較例8》
上記実施例1を基本として、被メッキ物を42合金材から銅材のリードフレームに代替し、下地用のビスマス皮膜の膜厚を0.40μmとした以外は、この実施例1と同様の条件で操作して、銅材の上に前処理でビスマス薄膜を下地形成したのち、スズメッキを施した。
【0048】
そこで、上記実施例1〜10及び比較例1〜8で得られた各リードフレームを試料として、ホイスカーの発生防止評価を行った。
《スズホイスカーの発生防止評価試験例》
走査型電子顕微鏡を用いて、上記実施例1〜10及び比較例1〜8の各試料の形成直後のスズ系皮膜表面を微視観察してホイスカーが発生していない状況を確認してから、室温下で200時間放置した後、試料の同一視認部位を観察して、ホイスカーの発生状況を調べた。
ホイスカー発生防止の評価基準は次の通りである。
○:同一視認部位でのホイスカーの発生本数はゼロであった。
△:同視認部位にホイスカーは見い出されたが、その長さは20μm未満であった。
×:同視認部位にホイスカーが見い出され、長さ20μm以上に達するものがあった。
【0049】
図1の右から2欄目はその試験結果である。
同図1によると、比較例1及び7は、ビスマスの下地処理をしないブランク例であるため、ホイスカーが発生して×の評価であったが、0.4μm以上の膜厚で下地ビスマス皮膜を形成した他の比較例では、ホイスカーの発生はなく○の評価であった。一方、実施例1〜10においては、全てにホイスカーの発生はなく○の評価であった。
以上の点を詳述すると、被メッキ物にビスマスの下地皮膜を介してスズ系皮膜を形成する場合、スズホイスカーの発生防止は、介在するビスマス皮膜による銅の拡散阻害作用によるものと考えられることから、一般には、ビスマス皮膜が厚い方がスズホイスカー防止の有効性の増大が予測されるが、実施例1〜10のように、0 . 37μm以下のごく薄い膜厚で下地皮膜を形成しても、有効にスズホイスカーを防止できるとともに、実施例1のように、0.05μmのきわめて薄い場合でも、ホイスカーの防止に実効があることが明らかになった。
また、上層の皮膜は、実施例1〜4及び実施例9〜10ではスズであり、実施例5〜8では各種のスズ合金であるが、これらの上層皮膜の種類を問わず、ビスマス薄膜の下地形成はホイスカー防止に有効であることが確認できた。
さらに、被メッキ物の種類は、実施例1〜8では被メッキ物は42合金であり、実施例9では黄銅、実施例10では銅であるが、これらの素地金属の種類を問わず、ビスマス薄膜の下地形成はホイスカー防止に有効なことが確認できた。
【0050】
次いで、上記実施例1〜10及び比較例1〜8で得られた各リードフレームを試料として、メッキ皮膜のクラック発生度合の評価を行った。
《クラック発生度合の評価試験例》
上記実施例1〜10及び比較例1〜8の各試料を120度の角度になるまで1回折り曲げ操作を行った後、走査型電子顕微鏡を用いて皮膜外観を微視観察し、クラックの発生状況を調べた。
但し、本試験例においては、前記ホイスカー発生評価試験例とは異なり、前記実施例1〜10及び比較例1〜8での上層のスズ又はスズ合金皮膜の膜厚を10μmに統一して形成し、本試験に供した。
一方、図2〜図5はクラックの発生度合の優劣評価をA〜Dの4段階で判定する基準となるモデルの顕微鏡写真であり、その評価A〜Dの内訳とモデル写真の関係は次の通りである。
評価A(図2):クラックの発生がなく、皮膜外観は良好。
評価B(図3):クラックの発生がほとんどなく、皮膜外観はほぼ良好。
評価C(図4):クラックが少し発生した。
評価D(図5):クラックが大きく発生し、皮膜外観も不良。
尚、上記図4〜図5では、皮膜のほぼ全面に亘って走るヒビ割れ状の亀裂がクラックを示す。
本試験例においては、観察した各メッキ皮膜をこれらの基準写真と照合することにより、A〜Dの4段階評価を行った。ちなみに、実用レベルを担保する見地から、B以上の評価が合格であり、C以下の評価は不合格を示す。
【0051】
図1の最右欄はその試験結果である。
比較例1〜8のうち、ビスマス下地処理をしていないブランク例である比較例1及び比較例8では、クラックの発生がなくA評価であったが、ビスマス下地の膜厚が0.40μm以上に形成した他の比較例では、全ての皮膜にクラックが発生して評価はC〜Dであり、特に、ビスマス下地の膜厚が0.50μm〜1.00μmの比較例2及び比較例4〜6では、クラックが大きく発生してDの評価であった。
これに対して、実施例1〜10は、ビスマス下地の膜厚が0 . 37μm以下のごく薄い場合であるが、これらの実施例1〜10では、クラックの発生がないか、ほとんど発生せず、全ての評価はA〜Bであった。
即ち、ビスマス下地の膜厚が0.37μmの実施例3、又は0.37μmの実施例5では、評価はBであり、同膜厚が0.20μm〜0.10μmである実施例2、実施例4及び実施例6〜10ではA評価であり、もっとも薄い0.05μmの実施例1では当然にA評価であって、上層皮膜がスズ及び各種のスズ合金を問わず、クラックの発生がないことが確認できた。
また、ビスマス下地皮膜の上にスズ皮膜を形成した実施例3と比較例3を対比すると、ビスマス下地の膜厚が0.37μmの実施例3ではクラック評価がBであるのに対して、膜厚が0.40μmの比較例3ではC評価であるため、クラック防止の有効性に鑑みると、ビスマス皮膜を0 . 37μm以下に薄く形成することの臨界的意義は明らかである。
【0052】
そこで、上記ホイスカーの評価試験例とクラック評価試験例の結果を総合すると、スズ系皮膜に予めビスマス下地皮膜を形成する場合、ビスマスの下地皮膜を0.4μm以上に厚く形成すれば、ビスマス皮膜にクラックが発生し、これに起因して上層のスズ系皮膜にまでクラックが波及して、ハンダ付けの際に、接合不良や密着不良を起こす恐れが多いが、ビスマス下地皮膜を0 . 05μm〜0 . 37μmの範囲にて薄く形成することで、ビスマス下地でのクラック発生の問題を排除できるうえ、ごく薄い膜厚にも拘わらず、上層のスズ系皮膜でのホイスカー防止の有効性にまったく問題のないことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜10及び比較例1〜8における被メッキ物の種類、ビスマス下地皮膜の膜厚、上層スズ系皮膜の種類、ホイスカー発生防止評価の試験結果及びクラック発生度合評価の試験結果を示す図表である。
【図2】クラック発生度合のA評価を示す基準写真である。
【図3】クラック発生度合のB評価を示す基準写真である。
【図4】クラック発生度合のC評価を示す基準写真である。
【図5】クラック発生度合のD評価を示す基準写真である。
Claims (3)
- (a)可溶性ビスマス塩を含有する前処理液を用いて被メッキ物に電気メッキを施し、被メッキ物上にビスマスの下地皮膜を形成した後、
(b)上記ビスマスの下地皮膜上にスズのメッキ皮膜を形成して、この上層のスズ皮膜をハンダ付け面とするビスマス ( 下地層 ) /スズ ( 上層 ) の2層メッキ方法において、
上記ビスマスの下地皮膜の膜厚が0 . 05〜0 . 37μmであり、且つ、
上層のスズ皮膜の膜厚が1〜10μmであることを特徴とするスズホイスカーの防止方法。 - 下地ビスマス皮膜上にスズのメッキ皮膜を形成する替わりに、スズ−銅合金、スズ−銀合金、スズ−ビスマス合金、スズ−亜鉛合金、スズ−ニッケル合金、スズ−銅−銀合金から選ばれたスズ合金のメッキ皮膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のスズホイスカーの防止方法。
- 被メッキ物が銅、銅合金、42合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスズホイスカーの防止方法。
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