JP4116765B2 - 自動車用成形天井材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、自動車用成形天井材およびその製造方法に関し、さらに詳しくは軽量で、かつ剛性を備えたリサイクルが可能なポリプロピレン系発泡成形品からなる自動車用成形天井材およびその製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリプロピレンをはじめとするプロピレン系樹脂の発泡体は、一般にポリエチレン発泡体に比べ、耐熱性、強度、剛性などの物性が優れているため、高温用断熱材、包装材、建材、軽量構造材などとしての用途が拡大しつつある。
ところで、既存のポリプロピレン発泡体は、発泡倍率15〜40倍という高発泡体で、かつ柔らかいプロピレンランダム共重合体を主体とした軟質フォームである。これに対し、自動車内装用基材(骨材)としてのポリプロピレン発泡体は、軽量で剛性の高いことが要求されている。
【0003】
自動車内装用基材、たとえば自動車用天井材の基材には、紙段ボール、発泡ウレタンとガラス繊維との複合材、繊維と熱硬化性樹脂とを結合させてなるレジンフェルト、ガラス繊維を主体とし、その結合材としてポリエチレンまたはポリプロピレンを用いた材料、ポリスチレンの発泡体を用いてなるダイラークTMなど、多くの基材材料がある。
【0004】
しかしながら、自動車用成形天井材では、軽量であること、剛性が高いこと、寸法安定性に優れていること、音響特性に優れていること、安価であること、成形の自由度があること、成形時に環境を汚さないこと、リサイクルが可能であること(リサイクル性)、意匠のバリエーションが広いこと(意匠性)、取り付け作業が容易であることなどが要求され、上記のような基材材料にはそれぞれ一長一短があり、上記要求のすべてを満足する材料は少ない。特に近年地球環境問題からリサイクル性が重要視されており、現時点でリサイクル性を満足する自動車用天井材の基材材料は一部には使用されているが、これらの基材材料は、その他の問題から主流となるまでには至っていない。
【0005】
また、特開平5−70621号公報には、次のようなポリプロピレン系発泡成形品の製造方法が提案されている。すなわち、プロピレンブロック共重合体からなるプロピレン系樹脂、ラジカル発生剤、架橋助剤および発泡剤を含む発泡性シート形成用組成物を、該発泡剤が分解しない温度でシート状に成形し、得られた発泡性シートの片面にバッキング材を裏打ちまたはバッキング材としての機能を有する表皮材を積層して一体化した後、該発泡性シートに電離性放射線を照射して該プロピレン樹脂を架橋させ、次いで、該発泡性シートを加熱して発泡させると同時に成形加工することを特徴とする発泡成形品の製造方法である。このような製造方法によれば、軽量で、基材(骨材)として用いられ得る程度の強度および高剛性を有し、自動車などの内装材基材として用いられる複合発泡成形品が得られる。上記のような方法によれば、具体的にトランクルーム材、ドアートリムが得られることが上記公報に記載されているが、綿毛状のシート、ビロード等の起毛しているシートを表皮材として用いた場合には表皮材表面の起毛が毛倒れし、発泡成形品の表皮面の風合いは必ずしも満足できるものではない。
【0006】
さらに特開平8−207060号公報には、プロピレン単独重合体とプロピレン・エチレンブロック共重合体とからなる組成物を架橋助剤、架橋剤を存在させた状態で、シートを成形し、かかる後にシートを電子線照射して自動車用天井材を成形する技術が開示されている。しかし、この公報に記載されている組成物を用いて自動車用成形天井材を成形した場合、素材たるポリプロピレンシートが二次成形性の点で不充分であった。
【0007】
したがって、軽量で剛性が高く、寸法安定性、音響特性、成形環境性、意匠性、表皮面の風合い、取り付け作業性およびリサイクル性に優れ、しかも、成形の自由度の大きい安価な自動車用成形天井材を製造しうるような方法およびその成形天井材の出現が望まれている。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、泡保持性に優れ、微発泡セル形状を示し、薄肉成形性に優れ、かつ高発泡倍率の発泡シートを含む、軽量で剛性が高い自動車用成形天井材およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【発明の概要】
本発明に係る自動車用成形天井材の製造方法は、
下記のプロピレン樹脂組成物(A)75〜95重量部と、ガラス繊維(B)5〜25重量部(但し、プロピレン樹脂組成物(A)とガラス繊維(B)との合計量は100重量部である。)とを含み、さらにプロピレン樹脂組成物(A)とガラス繊維(B)との合計量100重量部に対して、ラジカル発生剤(C)を0.01〜0.1重量部、架橋助剤(D)を0.1〜5重量部、発泡剤(E)を2〜5重量部の割合で含む発泡性シート形成用組成物を、
該発泡剤(E)が分解しない温度でシート状に成形し、得られた発泡性シートの片面にバッキング材を裏打ちして一体化した後、該発泡性シートに電離性放射線を照射して該プロピレン樹脂組成物(A)を架橋させ、
次いで、該発泡性シートを加熱して発泡させた後、該発泡シートが冷却固化しないうちに該発泡シート表面に表皮材を載置してプレス成形加工することを特徴としている;
プロピレン樹脂組成物(A):
(A-1)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2〜8dl/gの範囲にあるエチレン・プロピレン共重合体セグメント10〜25重量%および結晶性ポリプロピレンセグメント75〜90重量%からなり、エチレン含有量が15〜25モル%であり、メルトフローレート(MFR、ASTM D-1238,L,230℃、2.16kg荷重、以下同じ。)が1〜15g/10分の範囲にあるプロピレンブロック共重合体:50〜65重量部の量と、
(A-2)MFRが1〜10g/10分の範囲にあるプロピレン単独重合体:35〜50重量部の量(但し、プロピレンブロック共重合体(A-1)とプロピレン重合体(A-2)との合計量は100重量部である。)と
からなるプロピレン樹脂組成物。
【0010】
本発明では前記プロピレンブロック共重合体(A-1)が、
(A-3)MFRが1〜7g/10分の範囲にある相対的に高分子量のプロピレンブロック共重合体:23〜50重量部の量と、
(A-4)MFRが15〜60g/10分の範囲にある相対的に低分子量のプロピレンブロック共重合体:50〜77重量部の量(但し、プロピレンブロック共重合体(A-3)とプロピレンブロック共重合体(A-4)との合計量は100重量部である。)と
からなる組成物であってもよい。
【0011】
前記結晶性ポリプロピレンセグメントは、結晶性ポリプロピレン80〜100重量%および結晶性ポリエチレン0〜20重量%からなることが好ましい。
本発明では、前記ガラス繊維(B)は、平均繊維径が5〜20μmの範囲にあり、繊維長さが0.1〜20mmの範囲にあることが好ましく、前記ガラス繊維(B)が、不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合した変性ポリプロピレンでコーティングされているガラス繊維であることが好ましい。
【0012】
また本発明では、前記電離性放射線の照射量が2〜10kGyの範囲にあることが好ましく、前記電離性放射線照射後の発泡性シートのゲル分率が、プロピレン系樹脂(A)の重量に対して4〜15重量%であることが好ましい。
さらに本発明では、前記発泡性シートが、加熱によりシートの厚み方向に主として膨張し、その倍率が5〜10倍で、かつ、厚みが3mm以上となる発泡シートが得られる未発泡のシートであることが好ましい。
【0013】
本発明に係る自動車用成形天井材は、上記プロピレン樹脂組成物(A)75〜95重量部と、
ガラス繊維(B)5〜25重量部(但し、(A)と(B)との合計量は100重量部である。)と
からなり、
ゲル分率がプロピレン樹脂組成物(A)の重量に対して4〜15重量%であり、かつ、厚み方向に主として膨張したその倍率が5〜10倍である
架橋発泡シートを有することを特徴としている。
【0014】
また本発明に係る自動車用成形天井材は、前記架橋発泡シートの一方の面に表皮材、他方の面にバッキング材が積層されてなることを特徴としている。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る自動車用成形天井材およびその製造方法について具体的に説明する。
まず、本発明において自動車用成形天井材を製造するのに用いられる発泡性シート形成用組成物について説明する。
【0016】
発泡性シート形成用組成物
本発明で用いられる発泡性シート形成用組成物は、プロピレン樹脂組成物(A)、ガラス繊維(B)、ラジカル発生剤(C)、架橋助剤(D)および発泡剤(E)、さらには熱安定剤や場合によっては着色剤などの添加剤を含んでいる。
(A)プロピレン樹脂組成物
本発明で用いられるプロピレン樹脂組成物(A)は、下記プロピレンブロック共重合体(A-1)とプロピレン単独重合体(A-2)とをブレンドして得られる。
【0017】
(プロピレンブロック共重合体(A-1))
プロピレンブロック共重合体(A-1)は、具体的には、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2〜8dl/g、好ましくは4〜7dl/gであるエチレン・プロピレン共重合体セグメント5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%と、結晶性ポリプロピレンセグメント70〜95重量%、好ましくは75〜90重量%とからなるプロピレンブロック共重合体である。
【0018】
前記結晶性ポリプロピレンセグメントは、少量の結晶性ポリエチレンを、本発明の目的を損なわない範囲内で含んでいてもよい。より具体的には、この結晶性ポリプロピレンセグメントは、結晶性ポリプロピレン80〜100重量%と結晶性ポリエチレン0〜20重量%とからなる。また、この結晶性ポリプロピレンまたは結晶性ポリエチレン中に、少量のエチレン、プロピレン等のα-オレフィン成分単位が含まれていてもよい。たとえば、結晶性ポリプロピレンは少量のエチレン成分単位を含んでいてもよく、また結晶性ポリエチレンは少量のプロピレン成分単位を含んでいてもよい。
【0019】
このプロピレンブロック共重合体(A-1)は、エチレン含有量が、通常10〜30モル%、好ましくは15〜25モル%である。
エチレン含有量が上記範囲内にあるプロピレンブロック共重合体を用いると、電離性放射線によるプロピレン系樹脂の架橋が適度な架橋度まで進むので、加熱によりシートの厚み方向に主として膨張させることができ、5〜10倍の発泡倍率で、厚みが3mm以上となる発泡シートを提供し得る発泡性シート形成用組成物を得ることができる。
【0020】
このプロピレンブロック共重合体(A-1)は、MFRが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは1〜15g/10分である。
本発明では、プロピレンブロック共重合体(A-1)が、相対的に高分子量のプロピレンブロック共重合体(A-3)と相対的に低分子量のプロピレンブロック共重合体(A-4)とからなり、プロピレンブロック共重合体(A-3)を10〜100重量部、好ましくは20〜100重量部の量、プロピレンブロック共重合体(A-4)を0〜90重量部、好ましくは0〜80重量部の量(但し、プロピレンブロック共重合体(A-3)とプロピレン単独重合体(A-4)との合計量は100重量部である。)で含むことが好ましい。
【0021】
相対的に高分子量のプロピレンブロック共重合体(A-3)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が1〜8dl/g、好ましくは2〜5dl/gであるエチレン・プロピレン共重合体セグメント5〜20重量%、好ましくは7〜15重量%と、結晶性ポリプロピレンセグメント80〜95重量%、好ましくは85〜93重量%とからなるプロピレンブロック共重合体であって、MFRが0.5〜10g/10分、好ましくは1〜7g/10分の範囲にある。
【0022】
相対的に低分子量のプロピレンブロック共重合体(A-4)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が3〜10dl/g、好ましくは5〜10dl/gであるエチレン・プロピレン共重合体セグメント5〜20重量%、好ましくは7〜15重量%と、結晶性ポリプロピレンセグメント80〜95重量%、好ましくは85〜93重量%とからなるプロピレンブロック共重合体であって、MFRが10〜80g/10分、好ましくは15〜60g/10分の範囲にある。
【0023】
(プロピレン単独重合体(A-2))
プロピレン単独重合体(A-2)は、MFRが0.5〜20g/10分、好ましくは1〜10g/10分である。
(組成物)
プロピレン樹脂組成物(A)においては、プロピレンブロック共重合体(A-1)は、30〜80重量部、好ましくは40〜80重量部の量で用いられ、プロピレン単独重合体(A-2)は、20〜70重量部、好ましくは20〜60重量部の量で用いられる(但し、プロピレンブロック共重合体(A-1)とプロピレン単独重合体(A-2)との合計量は100重量部である。)。
【0024】
プロピレンブロック共重合体(A-1)とプロピレン単独重合体(A-2)との割合が、上記範囲内にあると、泡保持性に優れ、微発泡セル形状を示し、薄肉成形性に優れ、かつ高発泡倍率の発泡シートが得られる。
本発明で用いられるプロピレン樹脂組成物(A)は、MFRが0.5〜20g/10分、好ましくは1.0〜15g/10分の範囲にある。このプロピレン樹脂組成物(A)のMFRが上記範囲内にあると、混練押出しが容易であり、また少ない架橋助剤の使用量で高い機械強度を保つことができ、天井材の材料として好適である。
【0025】
上記のようなプロピレン樹脂組成物(A)は、プロピレン樹脂組成物(A)とガラス繊維(B)との合計量100重量部に対して、75〜95重量部、好ましくは80〜90重量部の割合で用いられる。
(B)ガラス繊維
本発明で用いられるガラス繊維(B)は、平均繊維径が通常5〜20μm、好ましくは10〜15μmの範囲にあり、繊維長さが0.1〜20mm、好ましくは0.3〜10mmの範囲にある。
【0026】
ガラス繊維(B)は、プロピレン系樹脂(A)とガラス繊維(B)との合計量100重量部に対して、5〜25重量部、好ましくは10〜20重量部の割合で用いられる。
ガラス繊維(B)を上記のような割合で用いると、高剛性で耐熱性および寸法安定性に優れた自動車用成形天井材を提供し得る発泡性シートを得ることができる。
【0027】
自動車用成形天井材は、90℃から−40℃における湿冷熱試験において、10mm以上垂れ下がらないことが要求されるが、この要求は上記のガラス繊維(B)を用いることによって満たされる。また従来、剛性を向上させる充填剤として、タルクは安価で最もよく使用されている。しかしながら、天井材の剛性だけでなく耐熱性をも向上させる必要があるため、それらの物性を満足させるにはタルクの使用量が多くなり過ぎて、得られる天井材の重量が重くなり、しかも発泡性シートの発泡性が低下するという欠点がある。タルクのこのような欠点は、上記のガラス繊維(B)を用いることによって改善することができる。
【0028】
本発明においては、ガラス繊維(B)とプロピレン系樹脂(A)との接着性を高める観点から、不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性したポリプロピレン(変性ポリプロピレン)をガラス繊維に直接コーティングしたり、あるいはプロピレン系樹脂(A)に適量添加することが望ましい。
ポリプロピレンの変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)などが挙げられる。
【0029】
また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸ハライド、エステル、アミド、イミド、無水物などが挙げられ、具体的には、マレイミド、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
【0030】
これらの化合物は、単独または2種以上組み合わせて用いられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。
たとえばガラス繊維(B)に、無水マレイン酸をグラフト重合した変性ポリプロピレンを溶液状態で含浸付着させたり、溶融状態でコーティングすることができる。この際、ポリプロピレンへの不飽和カルボン酸またはその誘導体のグラフト量は、変性ポリプロピレン重量に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。また、変性ポリプロピレンは、不飽和カルボン酸またはその誘導体を高度にグラフト重合した変性ポリプロピレンを、未変性のポリプロピレンで希釈して上記グラフト量の範囲内にしたものでもよい。
【0031】
このような表面処理をしたガラス繊維(B)とプロピレン系樹脂(A)とは、重量比で60/40〜80/20の範囲で混合し、マスターバッチを製造しておくことが好ましい。特に長さ10mm、直径3mm程度の形状を有するマスターバッチにしておくことが、発泡性シートの成形をする際に他の成分との混合上好ましい。
【0032】
なお、プロピレン系樹脂(A)と他の成分との配合割合を決定するに際して、通常変性ポリプロピレンの使用量は最小限にとどめるために、上記変性ポリプロピレンでコーティングする前のガラス繊維(B)の量のみを考慮する。
(C)ラジカル発生剤
発泡性シート形成用組成物を架橋された状態とするために用いられるラジカル発生剤(C)としては、有機ペルオキシド、有機ペルオキシエステルが主として用いられ、このラジカル発生剤の半減期が1分(min)を示す分解温度は、プロピレン系樹脂(A)の融点よりも高いことが好ましい。なお、上記ラジカル発生剤(C)の半減期が100時間(hr)を示す分解温度が40℃以上であることが実用上好ましい。
【0033】
これら有機ペルオキシドおよび有機ペルオキシエステルとしては、具体的には、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド(1)、オクタノイルペルオキシド(2)、デカノイルペルオキシド(3)、ラウロイルペルオキシド(4)、こはく酸ペルオキシド(5)、アセチルペルオキシド(6)、t-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)(7)、m-トルオイルペルオキシド(8)、ベンゾイルペルオキシド(9)、t-ブチルペルオキシイソブチレート(10)、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(11)、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(12)、t-ブチルペルオキシマレイン酸(13)、t-ブチルペルオキシラウレート(14)、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノエート(15)、シクロヘキサノンペルオキシド(16)、t-ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート(17)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン(18)、t-ブチルペルオキシアセテート(19)、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン(20)、t-ブチルペルオキシベンゾエート(21)、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート(22)、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート(23)、メチルエチルケトンペルオキシド(24)、α,α'-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(25)、ジクミルペルオキシド(26)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(27)、t-ブチルクミルペルオキシド(28)、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド(29)、ジ-t-ブチルペルオキシド(30)、p-メンタンヒドロペルオキシド(31)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(32)、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(33)、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド(34)、クメンヒドロペルオキシド(35)、t-ブチルヒドロペルオキシド(36)などが挙げられる。これらのうちでは特に(12)〜(36)の化合物が好ましい。
【0034】
このラジカル発生剤(C)は、発泡性シート形成用組成物中に、前記ポリプロピレン系樹脂(A)とガラス繊維(B)との合計量100重量部に対して0.01〜0.1重量部の割合で存在する。このラジカル発生剤(C)の量が上記範囲内にあると、プロピレン系樹脂(A)の溶融粘弾性の適切な増加が達成され、良好な独立気泡を有する発泡成形品が得られる。
【0035】
(D)架橋助剤
上記のようなプロピレン系樹脂(A)を架橋するための架橋助剤(D)としては、具体的には、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N,4-ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミド、ジビニルベンゼン(DVB)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートなどの多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラートまたはビニルステアレートなどの多官能性ビニルモノマーが挙げられる。
【0036】
上記のような架橋助剤(D)により、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においてはジビニルベンゼン(DVB)、トリアリルイソシアヌレ―ト(TAIC)が好ましい。
この架橋助剤(D)は、発泡性シート形成用組成物中に、前記ポリプロピレン系樹脂(A)とガラス繊維(B)との合計量100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部の割合で存在する。この架橋助剤(D)の量が上記範囲内にあると、プロピレン系樹脂(A)の架橋反応が良好に進行し、所望の架橋度が得られ、溶融粘弾性が充分に改良され、適度な発泡が行われるので好ましい。
【0037】
(E)発泡剤
本発明で用いられる発泡剤(E)は、常温で液体または固体であって加熱により分解して気体を発生する化学物質であり、プロピレン系樹脂(A)の融点以上の分解温度を有するものであれば特に限定はされない。
このような発泡剤としては、アゾジカーボンアミド(ADCA)、アゾジカルボン酸バリウム、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3-ジスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、ビウレア、炭酸亜鉛などが挙げられる。これらの中では、ガス発生量が多く、ガス発生終了温度がプロピレン系樹脂(A)の熱劣化開始温度よりも充分低い、アゾジカーボンアミド(ADCA)、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリヒドラジノトリアジンが特に好ましい。
【0038】
この発泡剤(E)は、発泡性シート形成用組成物中に、前記ポリプロピレン系樹脂(A)とガラス繊維(B)との合計量100重量部に対して2〜5重量部の割合で存在する。発泡剤(E)の量が上記範囲内にあると、発生するガスの量が適度であるために、厚み方向へ5〜10倍の膨張が可能となり、しかも泡が均一の大きさで、かつ均一に分散する。また、架橋度を上げて発泡度を上げ過ぎると、シートは3次元方向に膨張し、天井用発泡基材として使用できなくなる。
【0039】
添加剤
発泡性シート形成用組成物は、上記のような各成分に加えて、各種の添加剤を含むことができる。たとえばプロピレン系樹脂(A)とともに、ガラス繊維(B)、ラジカル発生剤(C)、架橋助剤(D)および発泡剤(E)を混練する際に、炭素原子数30以上のフェノール系耐熱安定剤を使用することができる。
【0040】
フェノール系耐熱安定剤を、発泡性シート形成用組成物中に、0.05〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%添加すると、ポリマーラジカルの発生濃度を制御して架橋効率を高めるとともに上記発泡性シート形成用組成物を加熱し発泡させる際および発泡体の熱加工の際の酸化劣化を防止することができ、かつ、使用中の製品の耐熱老化性を高めることができるため好ましい。
【0041】
このような耐熱安定剤としては、たとえば、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、1,3,5トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ベンジルベンゼン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、あるいはこれらの2種以上の混合物が用いられる。
【0042】
また発泡剤(D)に、発泡剤の二次凝集を防止する機能を有する添加剤を前もって混合しておけば、発泡剤(D)の発泡性シート形成用組成物中への分散性が向上し、粗大気泡のない良好な発泡体を得ることができる。このような添加剤には、金属石鹸類、界面活性剤類がある。具体的には、たとえばステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸金属塩およびステアリルモノグリセライドのような、混練温度で固体である物質が好ましい。
【0043】
また、発泡成形品は一般に白色を帯びた外観を呈するため、発泡成形品の末端などの色が目立つ場合、発泡性シート形成用組成物中にカーボンブラックなどの着色剤を添加することができる。
バッキング材
本発明においては、上記のような発泡性シート形成用組成物から得られた発泡性シートの片面にバッキング材が裏打ちされるが、好ましいバッキング材としては、たとえばウーリーナイロン、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、寒冷紗、ガラスクロスなどからなり、目付が15〜100g/m2 、好ましくは20〜80g/m2 である通気性の不織布および織布であって、発泡剤の分解時に溶融しない材料が挙げられる。
【0044】
さらに、バッキング材としては、絞り成形等の成形加工で金型の形状に追随させるため、縦横の伸びが大きく、かつ縦横の伸縮性のバランスのとれた材料が好ましい。
表皮材
本発明で用いられる表皮材としては、具体的には、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の不織布、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等からなる織布、天然繊維からなる織布などが挙げられる。上記不織布等の目付は、通常100〜300g/m2 である。また、これらの材料にポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の発泡体をラミネートした複合材料も表皮材として用いることができる。さらに、塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー等から製造されたレザーに織布等を裏打ちした複合材料、およびこのようなレザーにポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の発泡体をラミネートした複合材料も表皮材として用いることができる。
【0045】
なお、上述した発泡性シートは発泡状態では溶融状態であり、織布、不織布、連続気泡発泡体とはアンカー効果により結合し、また、ポリプロピレンとは熱融着により結合するため、接着剤は必ずしも必要としない。
製造方法
次に、上記のような発泡性シート形成用組成物を用いて、自動車用成形天井材の製造方法について説明する。
【0046】
まず、発泡性シート形成用組成物をシート状に成形するには、上記のような各成分を含む発泡性シート形成用組成物をブラベンダーなどで混練した後、カレンダーロールでシート状に成形する方法、プレス成形機でシート化する方法、および押出機を用いて発泡性シート形成用組成物を混練した後Tダイまたは環状ダイを通してシート化する方法などが採用できる。これらのなかでは、発泡性シート形成用組成物を混練した後、発泡剤(E)の分解温度未満の温度でTダイから押し出して成形する方法は、エネルギー消費量、所要時間ともに少なく、シートの平面性や押出肌も良好であり好ましい。
【0047】
発泡性シート形成用組成物をシート状とする際には、前述のように発泡剤(E)が分解しない温度で行う必要があるが、具体的には発泡剤としてアゾジカーボンアミド(ADCA)を用いる場合には約160〜190℃、好ましくは165〜180℃で発泡性シート形成用組成物のシート化を行うことが好ましい。
この未発泡状態の発泡性シートの厚みは、0.5〜1mm程度である。
【0048】
次に、上記のようにして得られた発泡性シートの片面に、上記バッキング材を従来公知の方法で裏打ち一体化する。たとえば、本発明においては、発泡性シート形成用組成物をシート状に押し出し、その直後の一対のシーティングロールに通すとともに、バッキング材をこの一対のシーティングロールに通すことにより、発泡性シートとバッキング材とをシーティングロールで圧着して一体化することができ、このような一体化方法は接着剤を特に必要としないので好ましい。
【0049】
このようにバッキング材を発泡性シートに裏打ちしておくことにより、このシートの加熱軟化によるドローダウンを防止することができるとともに、発泡性シートを構成するポリプロピレン系樹脂(A)をシートの厚み方向に主として膨張させることができ、3倍以上の発泡倍率の成形品、特に5〜10倍という高発泡倍率の成形品を得ることができる。
【0050】
次に、このバッキング材が裏打ち一体化された発泡性シートに、電離性放射線を照射して、上記プロピレン系樹脂(A)を架橋させる。
電離性放射線としては、α線、β線、γ線、X線、電子線、中性子線などが用いられる。このうちコバルト−60のγ線、電子線が好ましく用いられる。この電離性放射線の照射量としては、約2〜10kGy、好ましくは3〜7kGyであり、かつ、架橋度の指標となるゲル分率が4〜15重量%、好ましくは5〜10重量%の範囲内になるような照射量であることが望ましい。
【0051】
電離性放射線の照射量を上記範囲内にすると、架橋されたプロピレン系樹脂(A)の架橋度が適度で所望の発泡度を得ることができ、しかも、発泡性シートの発泡により厚み方向に主として膨張するので好ましい。また、この程度の架橋度を有する発泡シートのトリミング屑は、リサイクル使用することができる。たとえば、このトリミング屑を自動車成形天井材用の未使用樹脂と混合して有効に使用することができる。
【0052】
ここで、架橋されたプロピレン系樹脂(A)の架橋度の指標となるゲル分率は、次のようにして求められる。
#100メッシュのスクリーン籠に試料を3g採り、この試料について、ソックスレー抽出装置を用いて、p-キシレンで3時間抽出処理を行い、その抽出残率(キシレン不溶分率)を求め、このキシレン不溶分率をもってゲル分率とする。
【0053】
このようにして架橋された発泡性シートを加熱して所望形状に成形すると、ポリプロピレン系発泡成形品が得られる。この際には、当然発泡剤(E)の分解温度以上に加熱することが必要である。
発泡性シートを加熱して発泡させるには、以下のような方法がある。
(1)発熱体からの輻射熱を利用する方法。
(2)高周波誘導により加熱する方法。
(3)オーブンを用いて加熱する方法。
(4)熱風加熱する方法。
【0054】
発泡性シートは主として厚さ方向に発泡するが、加熱により収縮する傾向があり、シート周囲をクランプしておく必要がある。発泡性シートは発泡が起こりつつあるか、あるいは発泡がほぼ完了したがなおシートが可塑性を保っている間に成形する。加工方法としては、プレス成形法が用いられる。
表皮材は一般的にはポリエステルの不織布が用いられる。この表皮材は、発泡性シートが発泡した後、冷却固化しないうち、すなわち可塑状態にあるうちに、発泡性シートの上面に載置し、上下合わせの天井用金型を閉じて両者を積層一体化するとともに賦形する。金型は冷却水溝を設けておき、チラー等を使って冷却する。なお本発明では、表皮材の上に発泡性シートを載置してもよい。
【0055】
本発明の方法によれば、表皮材はヒーターによって加熱されることがないので、厚さと外観に変化がなく、特に綿毛状のシート、ビロード等の起毛しているシートあるいは植毛されたシートを表皮材として用いた場合であっても毛倒れすることがなく、風合いの優れた表皮面が得られる。
上下金型のクリアランスは発泡シートの発泡厚みプラス表皮材の厚みより1〜2mm小さい位が適している。なお、発泡シートの末端のクリアランスを最小にすることにより、発泡樹脂を押し潰してトリミングが容易になる。
【0056】
上記のようにして得られる表皮材と発泡シートとバッキング材とが順に積層された本発明に係る自動車用成形天井材は、軽量で剛性が高く、かつ表皮材の表面状態が良好に保存されているので、表皮面の風合いに優れている。
上述した方法により上記プロピレン樹脂組成物(A)75〜95重量部、好ましくは80〜90重量部と、
ガラス繊維(B)5〜25重量部、好ましくは10〜20重量部(但し、(A)と(B)との合計量は100重量部である。)と
からなり、
ゲル分率がプロピレン樹脂組成物(A)の重量に対して4〜15重量%、好ましくは5〜10重量%であり、かつ、厚み方向に主として膨張したその倍率が5〜10倍、好ましくは6〜8倍である
架橋発泡シートを有する本発明に係る自動車用成形天井材が得られる。
【0057】
本発明に係る自動車用成形天井材は、例えば前記架橋発泡シートの一方の面に表皮材、他方の面にバッキング材が積層されている。
【0058】
【発明の効果】
本発明に係る自動車用成形天井材の製造方法によれば、架橋時に発泡剤(E)が分解してプロピレン系樹脂(A)が発泡してしまうことがなく、発泡性シートの縦方向および横方向への発泡による膨張が規制され、厚み方向に主として膨張する。したがって、プロピレン系樹脂(A)の架橋後に発泡性シートを加熱することにより、泡保持性に優れ、微発泡セル形状を示し、薄肉成形性に優れ、かつ高発泡倍率のポリプロピレン系発泡成形品を得ることができる。しかも、このポリプロピレン系発泡成形品は、結晶性ポリプロピレンセグメントとエチレンプロピレン共重合体セグメントとからなるプロピレンブロック共重合体を含む組成物から構成され、また厚み方向に主として発泡してその発泡倍率が5〜10倍になっているため、軽量で、剛性の高い成形天井が得られる。
【0059】
本発明の自動車用成形天井材は、寸法安定性、音響特性、成形環境性、意匠性、表皮面の風合い、取り付け作業性およびリサイクル性に優れ、しかも、成形の自由度が大きく、安価である。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例においては、ガラス繊維マスターバッチとして、長さが10mm、平均繊維径が13μmのガラス繊維(70重量%)に、無水マレイン酸をグラフト重合して得た変性ポリプロピレン(無水マレイン酸のグラフト量が変性ポリプロピレン重量に対して0.6重量%)(30重量%)を押出しコーティングしたマスターバッチ(ガラス繊維含量:70重量%、変性ポリプロピレン含量:30重量%)を用いた。
【0061】
【実施例1】
プロピレンブロック共重合体(ブロックPP-1)(MFR:2.0g/10分、エチレン含量:20モル%、エチレン・プロピレン共重合体セグメント:10重量%、結晶性ポリプロピレンセグメント(結晶性ポリプロピレン:86.7重量%、結晶性ポリエチレン:13.3重量%)90重量%、エチレン・プロピレン共重合体セグメントの極限粘度[η]:3dl/g)15重量部と、
プロピレンブロック共重合体(ブロックPP-2)(MFR:20g/10分、エチレン含量:20モル%、エチレン・プロピレン共重合体セグメント:10重量%、結晶性ポリプロピレンセグメント(結晶性ポリプロピレン:86.7重量%、結晶性ポリエチレン:13.3重量%)90重量%、エチレン・プロピレン共重合体セグメントの極限粘度[η]:7dl/g)50重量部と、
MFRが11.0g/10分のプロピレン重合体(ホモPP)35重量部と、
前記ブロックPP-1とブロックPP-2とホモPPとの合計量100重量部に対して、
ガラス繊維マスターバッチ15重量部と、
ラジカル発生剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3 0.05重量部と、
架橋助剤としてジビニルベンゼン(DVB)1.0重量部と、
酸化防止剤としてテトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン[商品名Irganox 1010,日本チバガイギー(株)製]0.1重量部と、
ステアリン酸カルシウム0.1重量部と、
発泡剤としてアゾジカーボンアミド(ADCA)3.0重量部と
を、高速混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて混合した。
【0062】
次いで、この混合物をスクリュー50mm径の2軸押出機を用いて170℃にて溶融して造粒し、未発泡の均一混合ペレットを得た。
次いで、このペレットをスクリュー90mm径で1800mm幅のT−ダイシート成形機を用いて175℃の温度で0.7mm厚の未発泡の発泡性シートに成形した。そして、この発泡性シートの片面に目付け30g/m2 のポリエステル不織布からなるバッキング材を裏打ちした。
【0063】
次いで、この発泡性シートにγ線(Co−60)を4kGy照射して、架橋を行なった。この架橋後の発泡性シートの沸騰p-キシレンによる処理を3時間行なって求めたゲル分率(キシレン不溶分率)が5.7%であった。
次いで、この発泡性シートをサイズ1500mm×1300mmにカットし、その4方をクランプしてバッキング材が下面となる状態で、遠赤外線ヒータにより発泡性シートを加熱した。ヒーターの温度条件は上ヒータの設定温度を400℃とし、またその反対側すなわちバッキング材側にある下ヒータの設定温度を300℃にして加熱したところ75秒で発泡した。得られた発泡シートは、厚みが4.9mmで、発泡倍率が7倍であった。
【0064】
なお、フリー発泡状態の発泡シートの厚みとその発泡倍率は、次の要領で求めた。
発泡性シートの4方をクランプした後、上下ヒーターで発泡性シートを加熱発泡させた。次いで、得られた発泡シートを空気ファンにより強制冷却して固化した。そして、固化後の発泡シートの中央部の平均厚みを「フリー発泡状態の発泡シートの厚み」とした。また、この発泡シートの厚みを、発泡させる前のシート(発泡性シート)の厚みで割った値を「フリー発泡状態の発泡シートの発泡倍率」とした。
【0065】
泡保持性は、得られた発泡シートが未だ冷却固化しないうちに、発泡シート上面に天井表皮材として目付け250g/m2のポリエステル製不織布を重ね、上下合わせの天井金型にてプレス成形した時の平面部厚み(t1(mm))およびコーナー部厚み(t2(mm))により評価した。
なお、プレス時の金型クリアランスの設定は4mmとし、厚みはノギスにより測定し、5回の平均値として以下のように評価した。
【0066】
【表1】
【0067】
微発泡は、泡保持性の評価で用いたサンプルの平面部発泡セルの気泡径を測定しその平均値r(μm)で評価した。
◎: r≦250μm
○:250<r≦300μm
△:300<r≦350μm
×:r>350μm
結果を表2に示す。
【0068】
【実施例2】
実施例1において、ブロックPP-1の量を25重量部、ブロックPP-2の量を25重量部、ホモPPの量を50重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、成形天井材を調製し、試験を行った。結果を表2に示す。
【0069】
【実施例3】
実施例1において、ブロックPP-2を使用せず、ブロックPP-1の量を55重量部、ホモPPの量を45重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、成形天井材を調製し、試験を行った。結果を表2に示す。
【0070】
【比較例1】
実施例1において、ブロックPPP-2を使用せず、ブロックPP-1の量を29重量部、ホモPPの量を71重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、成形天井材を調製し、試験を行った。結果を表2に示す。
【0071】
【比較例2】
比較例1において、γ線照射量を6.0kGyとしたこと以外は比較例1と同様にして、成形天井材を調製し、試験を行った。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
Claims (10)
- 下記のプロピレン樹脂組成物(A)75〜95重量部と、ガラス繊維(B)5〜25重量部(但し、プロピレン樹脂組成物(A)とガラス繊維(B)との合計量は100重量部である。)とを含み、さらにプロピレン樹脂組成物(A)とガラス繊維(B)との合計量100重量部に対して、ラジカル発生剤(C)を0.01〜0.1重量部、架橋助剤(D)を0.1〜5重量部、発泡剤(E)を2〜5重量部の割合で含む発泡性シート形成用組成物を、
該発泡剤(E)が分解しない温度でシート状に成形し、得られた発泡性シートの片面にバッキング材を裏打ちして一体化した後、該発泡性シートに電離性放射線を照射して該プロピレン樹脂組成物(A)を架橋させ、
次いで、該発泡性シートを加熱して発泡させた後、該発泡シートが冷却固化しないうちに該発泡シート表面に表皮材を載置してプレス成形加工することを特徴とする自動車用成形天井材の製造方法;
プロピレン樹脂組成物(A):
(A-1)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2〜8dl/gの範囲にあるエチレン・プロピレン共重合体セグメント10〜25重量%および結晶性ポリプロピレンセグメント75〜90重量%からなり、エチレン含有量が15〜25モル%であり、メルトフローレート(ASTM D-1238,L,230℃、2.16kg荷重)が1〜15g/10分の範囲にあるプロピレンブロック共重合体:50〜65重量部の量と、
(A-2)メルトフローレート(ASTM D-1238,L,230℃、2.16kg荷重)が1〜10g/10分の範囲にあるプロピレン単独重合体:35〜50重量部の量(但し、プロピレンブロック共重合体(A-1)とプロピレン単独重合体(A-2)との合計量は100重量部である。)と
からなるプロピレン樹脂組成物。 - 前記プロピレンブロック共重合体(A-1)が、
(A-3)メルトフローレート(ASTM D-1238,L,230℃、2.16kg荷重)が1〜7g/10分の範囲にある相対的に高分子量のプロピレンブロック共重合体:23〜50重量部の量と、
(A-4)メルトフローレート(ASTM D-1238,L,230℃、2.16kg荷重)が15〜60g/10分の範囲にある相対的に低分子量のプロピレンブロック共重合体:50〜77重量部の量(但し、プロピレンブロック共重合体(A-3)とプロピレンブロック重合体(A-4)との合計量は100重量部である。)と
からなる請求項1に記載の自動車用成形天井材の製造方法。 - 前記結晶性ポリプロピレンセグメントが、結晶性ポリプロピレン80〜100重量%および結晶性ポリエチレン0〜20重量%からなる請求項1に記載の自動車用成形天井材の製造方法。
- 前記ガラス繊維(B)は、平均繊維径が5〜20μmの範囲にあり、繊維長さが0.1〜20mmの範囲にある請求項1に記載の自動車用成形天井材の製造方法。
- 前記ガラス繊維(B)が、不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合した変性ポリプロピレンでコーティングされているガラス繊維であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用成形天井材の製造方法。
- 前記電離性放射線の照射量が2〜10kGyの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の自動車用成形天井材の製造方法。
- 前記電離性放射線照射後の発泡シートのゲル分率が、プロピレン系樹脂(A)の重量に対して4〜15重量%の範囲にある請求項1に記載の自動車用成形天井材の製造方法。
- 前記発泡性シートが、加熱によりシートの厚み方向に主として膨張し、その倍率が5〜10倍で、かつ、厚みが3mm以上となる発泡シートが得られる未発泡のシートである請求項1に記載の自動車用成形天井材の製造方法。
- 請求項1または2に記載のプロピレン樹脂組成物(A)75〜95重量部と、
ガラス繊維(B)5〜25重量部(但し、(A)と(B)との合計量は100重量部である。)と
からなり、
ゲル分率がプロピレン樹脂組成物(A)の重量に対して4〜15重量%であり、かつ、厚み方向に主として膨張したその倍率が5〜10倍である
架橋発泡シートを有することを特徴とする自動車用成形天井材。 - 前記架橋発泡シートの一方の面に表皮材、他方の面にバッキング材が積層されてなる請求項9に記載の自動車用成形天井材。
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