JP4115463B2 - 継手装置 - Google Patents
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Description
このような鋼管杭の回転貫入工法においては、地盤のN値が大きいと貫入抵抗が高くなるため、杭材のねじり強さより小さな回転トルクで貫入させるような施工管理を必要とする。したがって、杭の継手部の強度は、少なくとも杭材のねじり強さより大きくしなければならない。また、杭に作用するせん断力や曲げモーメントにも十分抵抗できる継手強度が必要となる。
まず、現場溶接による杭の継手方法については、十分な施工管理を行い、溶接部の概観検査・非破壊検査等の実施によって、前述の継手強度を確実に得ることができる。しかしながら、溶接作業には所定の技能資格を有する作業員を配置することが不可欠であり、労務費が高くなるとともに、溶接作業にかなり長い時間を要することもあって、コストアップにつながる、という課題がある。さらに、毎秒10m以上の強風が吹いているときや、降雨・降雪により母材が濡れているとき、気温が5℃以下のときは、とくに対策を講じる場合を除いて、一般に溶接作業を行うことができないため、工程に与える影響が大きい、という課題があった。
例えば、機械式継手の代表的な方法の一つであるネジ式継手は、接合すべき上部の杭部材の下端に取り付けた雌ネジ部(または雄ネジ部)を有する継手装置上部と、地中に設置された下部杭部材の上端に取り付けた雄ネジ部(または雌ネジ部)を有する継手装置下部と、を螺合させることによって、上部杭部材と下部杭部材とを接合するものである。したがって、十分な継手強度を確保するためには、所要の肉厚を有する部材とするとともに、所定の継手強度が得られるまで(少なくとも3回転以上)ねじ込む必要があり、継手装置としてある程度の長さを必要とする。
また、下部杭部材に固定されている継手装置下部に、上部杭部材に取り付けた継手装置上部を螺合するには、かなりの熟練性と時間を要する、という問題点があった。
さらに、杭を撤去するために、貫入時と逆方向に回転力を与えると、継手装置上部が継手装置下部から離脱する(螺合が解除される)ため、下部杭部材が地中に残置されることになる。このような不具合を防止し、杭全体を引き抜くには、係合ピン等を継手装置に挿通させることが行われているが、断面欠損を補うため必然的に肉厚の大きな部材とする必要があるとともに、継手装置の上下方向の長さを大きくする必要があり、コストアップにつながる、という課題があった。
しかしながら、上記特許文献に開示された技術は、いずれも杭の外周面から張り出す形で継手装置が装着されることになり、たとえ「掘削機能を有する羽根」を備えているとしても、杭を回転貫入させるときの貫入抵抗が著しく増加するとともに、原地盤を乱すことによって周面摩擦力が低下する、という課題があった。
しかしながら、この従来技術は、既製コンクリート杭部材の接合を対象としたものであり、本発明の主な対象である回転貫入工法のように大きな回転トルクが伝達できる継手強度を有していない、という課題がある。
上部構造部材下端に接合される継手装置上部と、
下部構造部材上端に接合される継手装置下部と、
挿入方向に断面が縮小するテーパーを有する楔と、
によって構成される継手装置であって、
前記継手装置上部は、その基部から下方に突出した係合部を有し、
前記継手装置下部は、その基部から上方に突出した係合部を有し、
これら係合部の一端は、互いに非同一鉛直面で係合されるとともに、
他端が前記楔を挿入可能な空間を形成し、
該空間に前記楔を挿入することによって、
前記上部構造部材と前記下部構造部材とを接合することを特徴とする。
ここで、構造部材とは、杭、柱、梁等の構造物の一部を形成する部材をいい、「互いに非同一鉛直面で係合される」ということは、互いの係合面が1つの鉛直面でなく、鉛直面とはある角度を有する面で噛合っている状態、あるいは複数の平面で噛合っている状態で係合されていることをいう。
また、請求項2の発明では、請求項1において、
継手装置上部と継手装置下部の係合部が、正面視でその先端部分が基部に比べて幅広に形成され、鉛直面に対してある角度を有する面で互いに係合されることを特徴とする。
さらに、請求項3の発明では、請求項1において、
継手装置上部と継手装置下部の係合部が、正面視でその先端部分が基部に比べて幅広となるような段差を有する形状に形成され、複数の平面で互いに係合されることを特徴とする。
さらに、請求項4の発明では、請求項1乃至請求項3において、
継手装置上部と継手装置下部の基部が、所定の厚さを有する板状部材として構成されていることを特徴とする。
さらに、請求項5の発明では、請求項1乃至請求項4において、
継手装置上部の外周上面には上部構造部材と接合するためのテーパーが形成され、
継手装置下部の外周下面には下部構造部材と接合するためのテーパーが形成されていることを特徴とする。
さらに、請求項6の発明では、請求項1乃至請求項5において、
楔は、同一形状に形成されていることを特徴とする。
さらに、請求項7の発明では、請求項1乃至請求項6において、
楔にボルト挿通孔を形成し、
該ボルト挿通孔を貫通するボルトをナット締めすることによって、
前記楔の脱落を防止することを特徴とする。
また、請求項2の発明においては、継手装置上部と継手装置下部の係合部が、正面視でその先端部分が基部に比べて幅広に形成され、鉛直面に対してある角度を有する面で互いに係合されるので、とくに引き抜き抵抗が増加する。
さらに、請求項3の発明においては、継手装置上部と継手装置下部の係合部が、正面視でその先端部分が基部に比べて幅広となるような段差を有する形状に形成され、複数の平面で互いに係合されるので、とくに曲げモーメントに対する抵抗性が著しく向上する。
さらに、請求項4の発明においては、継手装置上部と継手装置下部の基部が、所定の厚さを有する板状部材として構成されているので、継手装置上部及び継手装置下部の曲げ剛性を著しく高めることができ、継手装置全体の強度を向上させることができる。
さらに、請求項5の発明においては、継手装置上部の外周上面には上部構造部材と接合するためのテーパーが形成され、継手装置下部の外周下面には下部構造部材と接合するためのテーパーが形成されているので、継手装置と構造部材との溶接接合が、テーパー部を利用することによって、所定の品質及び性能を確保しつつ、容易に行えることを可能とする。とくに、上部構造部材と下部構造部材の外径や板厚が異なる場合であっても、本発明の構成を採用することによって、安全かつ確実に構造部材同士を接合することができる。
さらに、請求項6の発明においては、楔が同一形状に形成されているので、楔を同一形状の金型を用いて製作でき、継手装置の製作費用を低減できる。
さらに、請求項7の発明においては、楔にボルト挿通孔を形成し、該ボルト挿通孔を貫通するボルトをナット締めすることによって、前記楔の脱落を防止するので、構造部材の接合作業中及び施工後において、楔の脱落を防止することによって、半永久的に構造部材の接合部の強度・安全性が確保できる。
なお、本発明の構成を採用することにより、継手装置の楔挿入用空間から楔を引き抜いて、継手装置上部と継手装置下部の係合を容易に解除できるので、構造部材同士の接合も解除することが可能となり、メンテナンスフリーの状態で構造部材を再使用することができる。
さらに、本発明に係る継手装置は、構造物の柱・梁等のように、軸力と曲げモーメント・せん断力が作用する構造部材に対しても適用することが可能である。本発明の継手装置について実施例に基づき、以下に説明する。なお、構造部材を杭(例えば、鋼管杭)とした場合で説明する。
継手装置Aの構成要素としては、継手装置Aの本体部を形成する継手装置上部10a及び継手装置下部20aと、楔右部30a及び楔左部30bから形成される楔30と、ボルト40及びナット45と、がある。
継手装置A全体の形状は、図1の正面図、図2の側面図、図3の背面図及び図4の係合断面を示す図の通り、中空断面でその外観がほぼ円筒形状に形成されている。継手装置Aは、ボルト40とナット45との螺合を、ボルト頭部41の六角ボルトの逆回転(左方向への回転)により解除して、ボルト40を引き抜き、さらに、楔右部30a及び楔左部30bを引き抜くことで、図5のように分解することができるようになっている。
また、望ましくは、テーパー部14の先端部を多少長めに形成するとよい。それによって、長めに形成されたテーパー部14の先端部が、継手装置上部10aと上部杭部材10bとを溶接する場合の裏当て金の機能を果たし、テーパー部14が開先継手として作用するため、上部杭部材10bの下端部に開先を設ける必要がなくなる。
このように、段違い状に下方に突出した継手装置上部10aの係合部17は、図4の係合断面を示す図において、X方向及びY方向の中心軸の交点を原点とする座標でみると、第2象限及び第4象限に該当する部分に各一個ずつ形成されている。そして、その一端は、図2に示すように継手装置下部20aとの係合面11を形成し、他端は、図1に示すように楔30との係合面12を形成している。なお、係合部17は、図5に示すとおり、基部18と一体化した部分の幅aに比べて、先端部の幅bが大きくなるように、その先端方向に徐々に幅広となるよう形成されている。したがって、係合面11及び12は同一鉛直面で当接せず、鉛直面とある角度を有する平面で当接することになる。これによって、杭Bを引き抜くときの引き抜き抵抗を十分に期待することができる。
また、望ましくは、テーパー部24の先端部を多少長めに形成するとよい。それによって、長めに形成されたテーパー部24の先端部が、継手装置下部20aと下部杭部材20bとを溶接する場合の裏当て金の機能を果たし、テーパー部24が開先継手として作用するため、下部杭部材20bの上端部に開先を設ける必要がなくなる。
このように、段違い状に上方に突出した継手装置下部20aの係合部27は、図4の係合断面を示す図において、X方向及びY方向の中心軸の交点を原点とする座標でみると、第1象限及び第3象限に該当する部分に各一個ずつ形成されている。そして、その一端は、図2に示すように、継手装置上部10aとの係合面21を形成し、他端は、図1に示すように、楔30との係合面22を形成している。なお、係合部27は、図5に示すとおり、基部28と一体化した部分の幅aに比べて、先端部の幅bが大きくなるように、その先端方向に徐々に幅広となるよう形成されている。したがって、係合面21及び22は同一鉛直面で当接せず、鉛直面とある角度を有する平面で当接することになる。これによって、杭Bを引き抜くときの引き抜き抵抗を十分に期待することができる。
このような継手装置上部10a及び継手装置下部20aの一実施例を図6に示す。これら継手装置上部10a及び継手装置下部20aの製作は、比較的部材厚の大きな鋼管や円柱状の鋼材を機械切削したり、精密鋳造によって行われる。
継手装置上部10aと継手装置下部20aとは、上記のように構成されているため、互いの係合部17と係合部27とを、側面視で図2に示すように、Z字状に噛合うように、すなわち、非同一鉛直面(鉛直面とある角度を有する面)で係合させることができる。
静置した継手装置下部20aに、図2に示すように、継手装置上部10aを係合部17及び27が噛合うように係合させると、継手装置Aの正面視及び背面視において、楔30が挿入可能な空間として、図1と図3とに示すように、楔挿入部13及び23が形成される。この楔挿入部13及び23は、継手装置上部10aの楔30との係合面12と、継手装置下部20aの楔30との係合面22と、によって形成される、平行四辺形の断面形状を有する空間であり、継手装置Aの内面方向に向かって、空間の幅が狭くなるようなテーパー状に形成されている。
すなわち、継手装置上部10a及び継手装置下部20aの係合に関しては、係合部17及び27が先端部分に向かって幅広に形成されているため、同一鉛直面で係合することがない。したがって、上部杭部材10bを逆回転させて杭全体を引き抜くときに、十分な引き抜き抵抗が確保できる。また、楔挿入部13及び23を形成するように係合されるため、下部杭部材20bの上部に固定された継手装置下部20aに対して、上部杭部材10bの下部に接合された継手装置上部10aがかなり広い範囲で摺動可能になることである。これをもっと具体的に説明すれば、継手装置上部10aと継手装置下部20aとの中心軸が一致し、かつ、それぞれの係合部17及び27が係合面11及び21で係合された状態であっても、Y方向(図4における側面視方向)には、楔30の最小断面寸法(図4における楔挿入部13,23の最小間隔)の最大限約2倍の範囲で摺動可能となる。
したがって、上部杭部材10bの下部杭部材20bへの係合、すなわち、固定された状態にある継手装置下部20aへの継手装置上部10aの係合が極めて容易に行える。
このことは、本発明の最も特徴的な作用・効果であり、上部杭部材10bの中心線が下部杭部材20bの中心線と一致しない状態でも、上部杭部材10b全体を水平方向に摺動させることによって、容易に中心線が一致するような位置に上部杭部材10bをセットすることができる。
とくに、係合面11及び21における係合状態(噛合い状態)を目視観察することによって、上部杭部材10bが所定の位置にセットされているかどうかを、一目で判断することができ、作業効率の著しい向上を図ることが可能となった。
本発明の継手装置Aにおける構成要素の1つである楔30は、継手装置上部10aと継手装置下部20aとを、係合部17及び27によって噛合わせたときに生じる空間、すなわち、楔挿入部13及び23に嵌合される楔右部30a及び楔左部30bからなる。
楔右部30a及び楔左部30bは、図7に示すように、同一形状として形成されており、その断面形状は菱形の平行四辺形とされている。また、楔外面35から楔内面36に向けて、側面方向の断面寸法(楔30の幅)が縮小するように、テーパーが形成されている。そのため、楔30は、楔挿入部13及び23に極めて容易に嵌合できる。
なお、楔右部30a及び楔左部30bは、同一形状に形成されているため、前記継手装置上部10a及び継手装置下部20aと同様に、ロストワックスによって製作することにより、製作費のコストダウンを図ることができるとともに、各係合面11,12及び21、22や楔30の各面(楔上面31、楔下面32、楔右側面33、楔左側面34、楔外面35及び楔内面36)を滑らかに形成することができる。したがって、各部材の係合・嵌合作業を容易に行うことができる。とくに、継手装置Aの各部材の端面を面取りしておくことにより、各部材の係合・嵌合作業を極めて容易に行うことができる。
ボルト40は、図5に示すように、六角レンチ孔が形成されたボルト頭部41と、ボルト軸部42と、ボルトネジ部43と、から構成される。ボルト40の機能としては、ボルト頭部41を楔左部30bに形成されたボルト頭部係合部39bに係合し、楔右部30aに形成されたナット係合部39aに対して、ボルトネジ部43を介してナット45を締め付けることにより、楔右部30a及び楔左部30bを互いに中心軸側に引き寄せ、楔30の脱落を防止している。この場合、ナット45をボルトネジ部43に螺合させた状態で、ボルト頭部41に形成された六角レンチ孔に六角レンチを嵌合させ、ボルト40を右回転させることにより、ナット45を締め付けられるような構成となっている。なお、ナット45としては、緩み防止機能を有するものを用いることが望ましい。
図1、図2、図3、図4は、継手装置Aの全ての構成要素を組み立てた場合の正面図、側面図、背面図、係合断面図を示したものである。上部杭部材10bに工場溶接で接合された継手装置上部10aは、その係合部17と継手装置下部20aの係合部27とが、それぞれの係合面11及び21と楔30を介して噛合うことにより、下部杭部材20bに工場溶接で接合された継手装置下部20aに係合される。それによって、上部杭部材10bが下部杭部材20bに接合され、所要の杭長となるまでこの手順を繰り返すことによって、杭Bが形成される。
このとき、継手装置上部10aの係合部17と継手装置下部20aの係合部27とは、鉛直面に対してある角度を有する平面で係合される。すなわち、係合部17及び27は、先端部分に向かって幅広に形成されているため、同一鉛直面で係合されることはない。したがって、杭Bを地中に回転貫入させるときの押し込み力はもとより、杭Bを逆回転させて引き抜く際にも、十分な引き抜き抵抗力を確保することができる。
一方、杭Bの上部外面には、直方体形状の回転金具50が杭Bの中心線上の外周面に2個溶接されており、これらが前記杭回転駆動キャップ62に係合されて回転力を杭Bに伝達する。
杭Bの上部杭部材10bに伝達された時計回りの回転力は、継手装置上部10aの係合部17の係合面11を介して、継手装置下部20aの係合部27の係合面21に伝達されることによって、下部杭部材20bに伝達される。このとき、本発明の継手装置Aの押し込み抵抗は、継手装置上部10aと継手装置下部20aとの全ての係合面のうち、水平面で係合している面積の全てが有効に機能する。
逆に、杭Bを引き抜く場合には、回転駆動装置61に反時計回りの回転力を与える。この場合には、継手装置上部10aの係合部17の楔30との係合面12を介して楔30に回転力が伝達され、さらに、継手装置下部20aの係合部27の楔30との係合面22を介して、下部杭部材20bに伝達される。この場合の引き抜き抵抗としては、図5に示す係合部17または係合部27の最小断面D1またはD2に対応したせん断強さとして機能する。
また、回転トルクに対しては、係合面11または係合面21における鉛直方向の有効投影面積分の支圧抵抗によって伝達されることになる。
杭Bに作用するせん断力に対しては、上部杭部材10bに関し、継手装置上部10aの係合部17が基部18と一体化されている有効断面C1に相当するせん断抵抗が期待でき、同様に、下部杭部材20bに関しては、継手装置下部20aの係合部27が基部28と一体化されている有効断面C2に相当するせん断抵抗が期待できる。
一方、曲げモーメントに対しては、係合部17及び27が噛合っている部分の鉛直面(すなわち、図5に示す断面D1またはD2)におけるせん断強さによって主として抵抗する。
したがって、本発明の継手装置Aにおいては、杭Bに作用するせん断力・曲げモーメントの大きさに応じて、発生する応力度が許容値以下となるよう、係合部17及び27の部材幅(a)・部材厚(t)・突出高さ(h)を設定すればよい。とくに、部材厚tについては、同じ材質を用いる場合、少なくても上部杭部材10b及び下部杭部材20bの部材厚より大きく設定しておく必要がある。
なお、本実施例では係合部17及び27をそれぞれ2箇所ずつ設けた継手装置上部10a及び継手装置下部20aについて説明したが、杭Bに作用する外力の大きさによっては、それぞれ4箇所あるいはそれ以上設置することも可能である。
なお、本実施例においては、主に鋼管杭を対象として説明したが、鋼管杭に限らず、既製コンクリート杭に対しても適用可能である。この場合、既製コンクリート杭の上下両端面に固着された鋼製継手部材に、継手装置上部10aまたは継手装置下部20aを工場溶接で接合すればよい。
なお、説明の都合上、図10における継手装置下部120a、継手装置下部120aの基部128、継手装置下部120aの係合部127、継手装置下部120aのテーパー部124に対して、図10を180度回転させた状態の図を想定して、それぞれに対応する構成要素の符号を、継手装置上部110a、継手装置上部110aの基部118、継手装置上部110aの係合部117、継手装置上部110aのテーパー部114のように呼ぶこととする。
ここで、継手装置下部120aの外径は杭Bの外径にほぼ等しく、テーパー部124の外径は杭Bの内径より若干小さめに形成されている。
したがって、下部杭部材に接合されている継手装置下部120aに、上部杭部材に接合されている継手装置上部110aを、それぞれの係合部117及び127が当接するように係合させると、その一端はZ字状または逆Z字状の係合面を形成し、他端では平行四辺形状の断面形状を有する楔130の挿入空間を形成する。このとき、楔挿入空間が内周面に向かって平面視で先細り状態となるよう、係合部117及び127の設置幅を設定する。
このようにして形成された楔挿入空間に楔130を挿入し、対面側の楔130同士をボルト・ナットによって締め付けることにより、上部杭部材が下部杭部材に構造的に接合される。
なお、このような継手装置Aの各構成要素は、厚板や中実鋼材を切削加工したり、精密鋳造によって製作される。
実施例2の継手装置Aは、上記のように構成したので、実施例1での作用・効果に加えて、以下のような作用・効果を奏する。
・継手装置上部110a及び継手装置下部120aの基部118及び128を板状部材として構成したことにより、継手装置Aの断面剛性が向上するとともに、それぞれの係合部117及び127の奥行き方向の部材厚(図10における部材厚t)を任意に設定できる。とくに、継手装置A全体としてみると、基部118及び128が補強リブとして作用するので、継手強度の大幅な向上を図ることができる。
・したがって、杭Bに作用する外力の大きさに対して、必要とされる継手強度を満足するための係合部117及び127の正面視における幅(図10における部材幅a,b)、突出高さ(図10における突出高さh)を設定する際の自由度が高まる。
・換言すれば、係合部117及び127の部材厚tを大きくすることにより、突出高さhを低減することができるので、継手装置Aの全体の高さ(継手長)を小さくすることによるコストダウンが図れる。
・上部杭部材、下部杭部材ともにその上端及び下端が閉塞構造となるため、杭B本体内への地下水の浸入を防ぐことができる。これにより、杭B内周側の腐食しろを考慮しなくてよいから、経済的な杭の設計が可能となる。
本発明の継手装置Aは、外観的にはほぼ円環状に形成され、本体を構成する要素として、図示しない継手装置上部及び継手装置下部220aと、楔230とがある。
また、係合部227は、この実施例では4箇所に設けられ、それぞれの正面視が基部228での幅(a)よりも、先端部での幅(b)の方が幅広の段差を有する形状(ハンマー状)に形成されている。したがって、係合部227の一端を継手装置上部210aの係合部217と当接すると、係合面が複数の平面をなし、他端側で楔230の挿入空間を形成するようになっている。
したがって、下部杭部材に接合されている継手装置下部220aに、上部杭部材に接合されている継手装置上部210aを、それぞれの係合部217及び227が当接するように係合させると、その一端は階段状の複数の係合面を形成し、他端では平行四辺形状の断面が2個積み重ねられた形状を有する楔230の挿入空間を形成する。このとき、楔挿入空間が内周面に向かって平面視で先細り状態となるよう、係合部217及び227の設置幅を設定する。
このようにして形成された楔挿入空間に楔230を挿入し、対面側の楔230同士をボルト・ナットによって締め付けることにより、上部杭部材が下部杭部材に構造的に接合される。
なお、このような継手装置Aの各構成要素は、厚板や中実鋼材を切削加工したり、精密鋳造によって製作される。
しかしながら、曲げモーメントに対しては、主として複数の平面で噛合った係合部の曲げ強度で抵抗する。このときの曲げ強度は、係合部217及び227の最も断面積の小さな断面のせん断強さ、例えば、図12(B)の場合には断面D2のせん断強さによって設定される。なお、本実施例では、継手装置下部220aの係合部227と継手装置上部210aの係合部217とが複数の平面(階段状の平面)で係合されるため、実施例1に比べて大きな曲げ剛性が期待できる。
なお、継手装置上部210aの係合部217及び継手装置下部220aの係合部227に関しては、それらの正面視における部材幅がaからbに拡幅された部分229を形成する面が、水平面に対してある角度を有して互いに係合されるように形成される(係合部217及び227の拡幅部に嵌合用のテーパーを形成する)ことによって、継手装置上部210aを継手装置下部220aに係合しやすくなる。
また、それぞれの係合部217及び227の端面は、面取りしておくことが好ましい。
なお、本実施例では、継手装置Aの本体部分、すなわち継手装置上部210aの基部218及び継手装置下部220aの基部228を円環状に形成した例について説明したが、この部分を板状に形成すること(実施例2と複合した構成とすること)も可能である。
・継手装置下部220aの係合部227と継手装置上部210aの係合部217とが複数の平面(階段状の平面)で係合されるため、実施例1に比べて大きな曲げ剛性が期待できる。
・継手装置下部220aの係合部227及び継手装置上部210aの係合部217の幅(図12に示すa及びb)、突出高さ(h)、部材厚(t)の組み合わせを適切に設定することにより、極めて大きな曲げ強度を期待することができる。
まず、杭Bの最も先端の部材である下部杭部材20bを、杭打ち機60によって吊り込み、回転駆動装置61に接続された杭回転駆動キャップ62に、下部杭部材20bに取り付けた回転金具50を介して、係合させる(図8参照)。このとき、下部杭部材20bの上端部には、工場溶接によって、継手装置下部20aが接合された状態になっている。
そこで、上部杭部材10bの回転金具50を杭回転駆動キャップ62に係合して、上部杭部材10bを接合すべき下部杭部材20bの上方にセットする(図9の4番目)。
そして、楔右部30a及び楔左部30bをボルト40及びナット45によって締め付ける。これによって、上部杭部材10bが下部杭部材20bに接合されたことになる。
次いで、回転駆動装置61により、上部杭部材10bに時計回り方向の回転トルクを与えて、所定の深さまで地中に貫入させる(図9の5番目)。
このような手順を繰り返し、所定杭長の杭Bを地中に設置することができる(図9の6番目)。
本発明の継手装置Aにおける継手装置上部10aは、その外径を上部杭部材10bの外径と等しくなるよう構成されていることから、杭回転駆動キャップ62に容易に係合することができる。
そこで、杭Bの最上部の杭部材(杭頭部を形成する杭部材)を除く他の杭部材については、回転金具50を取り付けずに、杭回転駆動キャップ62に係合した継手装置上部10aを介して、回転駆動装置61からの回転トルクを継手装置下部20aに伝達することが可能となる。
杭回転駆動キャップ62 → 継手装置上部10a → 上部杭部材10b → 継手装置下部20a → 下部杭部材20b
へと伝達させ、杭Bを地中に貫入させるものである。
ただし、杭Bの最上部の杭部材については、下部杭部材20bが接合されていないので、その上部に回転金具50を取り付け、杭回転駆動キャップ62から継手装置上部10aを取り外し、実施例1と同様な方法で回転トルクを伝達させる必要がある。
本発明の継手装置Aをこのように利用することにより、回転金具50の必要数量を低減することができるので、さらなるコストダウンが図られる。
また、下部杭部材20bに回転金具50を取り付ける必要がなくなったため、従来のように杭Bの周辺地盤を乱すことがなくなり、周面摩擦力の増加を期待することができる、という副次的な効果もある。
しかしながら、本発明に係る継手装置Aについては、その平面形状をどのように形成することも可能である。例えば、本発明の継手装置Aの平面形状を矩形とすることにより、角型鋼管部材の継手として利用できる。
このように、環状の構造部材であれば、異なる形状や異なる外径・板厚の部材であっても、本発明の継手装置Aが適用可能となる。
また、構造部材の接続方向は、鉛直方向に限らず、水平方向や任意の方向にも対応できることから、構造物の柱・梁等の部材の継手装置としても、合理的かつ経済的なものを提供することができる。
B 本発明の継手装置によって接合された杭、
C1 継手装置上部の係合部における水平方向せん断面、
C2 継手装置下部の係合部における水平方向せん断面、
D1 継手装置上部の係合部における鉛直方向せん断面、
D2 継手装置下部の係合部における鉛直方向せん断面、
10a、110a、210a 継手装置上部、
10b 上部杭部材、
11 継手装置上部の継手装置下部20aとの係合面、
12 継手装置上部の楔30との係合面、
13 正面視における楔挿入部、
14,114,214 継手装置上部の外周上部のテーパー部、
15 継手装置上部の内周面の厚肉部、
16 継手装置上部の上部杭部材との溶接部、
17、117,217 継手装置上部の係合部、
18、118,218 継手装置上部の基部、
20a、120a、220a 継手装置下部、
20b 下部杭部材、
21 継手装置下部の継手装置上部10aとの係合面、
22 継手装置下部の楔30との係合面、
23 背面視における楔挿入部、
24、124、224 継手装置下部の外周下部のテーパー部、
25 継手装置下部の内周面の厚肉部、
26 継手装置下部の下部杭部材との溶接部、
27,127,227 継手装置下部の係合部、
28,128,228 継手装置下部の基部、
30、130、230 楔、
30a 楔右部、
30b 楔左部、
31 楔上面、
32 楔下面、
33 楔右側面、
34 楔左側面、
35 楔外面、
36 楔内面、
38 楔のボルト挿通孔、
39 楔のナット係合部、
40 ボルト、
41 ボルト頭部、
42 ボルト軸部、
43 ボルトネジ部、
45 ナット、
50 回転金具、
60 杭打ち機、
61 回転駆動装置、
62 杭回転駆動キャップ。
Claims (7)
- 上部構造部材下端に接合される継手装置上部と、
下部構造部材上端に接合される継手装置下部と、
挿入方向に断面が縮小するテーパーを有する楔と、
によって構成される継手装置であって、
前記継手装置上部は、その基部から下方に突出した係合部を有し、
前記継手装置下部は、その基部から上方に突出した係合部を有し、
これら係合部の一端は、互いに非同一鉛直面で係合されるとともに、
他端が前記楔を挿入可能な空間を形成し、
該空間に前記楔を挿入することによって、
前記上部構造部材と前記下部構造部材とを接合することを特徴とする継手装置。 - 継手装置上部と継手装置下部の係合部が、正面視でその先端部分が基部に比べて幅広に形成され、鉛直面に対してある角度を有する面で互いに係合されることを特徴とする請求項1に記載の継手装置。
- 継手装置上部と継手装置下部の係合部が、正面視でその先端部分が基部に比べて幅広となるような段差を有する形状に形成され、複数の平面で互いに係合されることを特徴とする請求項1に記載の継手装置。
- 継手装置上部と継手装置下部の基部が、所定の厚さを有する板状部材として構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の継手装置。
- 継手装置上部の外周上面には上部構造部材と接合するためのテーパーが形成され、
継手装置下部の外周下面には下部構造部材と接合するためのテーパーが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の継手装置。 - 楔は、同一形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の継手装置。
- 楔にボルト挿通孔を形成し、
該ボルト挿通孔を貫通するボルトをナット締めすることによって、
前記楔の脱落を防止することを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の継手装置。
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