JP4113996B2 - 車両のサンルーフ用開口周縁部接合構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サンルーフ用開口周縁部接合構造に係り、詳しくはルーフパネルとそのルーフパネルの開口部を取り囲むように配置されるリインホースメントとの接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、サンルーフ(又はムーンルーフ)を備えた車両においては、ルーフパネルに設けられたルーフ開口部の周縁を補強するために、パネル内面側(車内側)に開口部周縁に沿ってリインホースメントが配置されるとともにその内周縁がルーフパネルの開口周縁に接合されている。図7〜図11は従来の接合構造を例示したものである。
図7〜図9に示す例は、ルーフパネル101のルーフ開口周縁部101aの全周を折り返してリインホースメント102の内周端部を挟着したヘミング103による接合構造であり、また図10及び図11に示す例は、開口部周縁のうち、後辺のみをヘミング103による接合構造とし、前辺及び側辺はルーフパネル101とリインホースメント102とを重ねてスポット溶接104によって接合する構造例である。なお、後辺をヘミングにする理由は、サンルーフパネル(図示省略)を車内側後方へスライドして開口を開放するタイプの開閉機構を採用した場合において、サンルーフパネルの車内側への変位量(下がり量)を小さく抑えるためである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図7〜図9に示す全周ヘミングによる接合構造例の場合は、略方形状に形成される開口周縁部のコーナー部に歪みが集中する関係で成形性が悪いものであり、その歪みが意匠面であるパネル上面にまで影響を及ぼし、意匠面の面品質を確保することが困難であるといった問題がある。
そのため、一般には図10及び図11に示したヘミングとスポット溶接とを併用した接合構造を採用しているが、この併用タイプの場合、当然のことながらスポット溶接機とヘミング装置といった、形式の異なる2種類の接合装置を使っての接合作業になることから、作業が煩雑化しかつ所要時間も長くなって製作コストが嵩むという点に問題があった。
【0004】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サンルーフ用開口周縁部の接合構造において、ヘミング加工によって発生する歪みの影響が意匠面に現れないようにすることによってヘミングによる接合構造を成立させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明に係る車両のサンルーフヘミング構造は、特許請求の範囲の各請求項に記載の通りの構成を備えた。
従って、請求項1〜3の発明によれば、ルーフパネルの開口周縁端部を折り返してリインホースメントの端部を挟着したヘミングによる接合構造において、意匠面であるルーフパネルの上面と、接合部である折り返し部分との間に段差部を設定したことによって、意匠面と接合部との間に距離を稼ぐことができる。このため、ヘミング加工によって接合部、特にコーナー部に歪みが発生してもその影響は段差部によって吸収されることになり、意匠面に及ぶことが回避される。かくして、ヘミングによる接合構造を成立することができる。
【0006】
この場合、請求項1の発明のように、開口周縁部におけるコーナー部を除いた直線部分にのみヘミングによる接合を施す構成、即ちコーナー部をヘミングレスとしたときは、歪みの発生が防止又は微少となり、意匠面の面品質を確保できる。また、請求項2の発明のように、コーナー部の折り返し部分を直線部の折り返し部分よりも小幅に設定したときは、歪みの発生を低減することが可能となり、この場合においても意匠面の面品質を確保できる。
【0007】
さらにまた、請求項3の発明によれば、サンルーフパネルの周縁部上面に当接可能なモールを段差部に設けることによって、該モールの上面高さをルーフパネル上面に面一となるように設定することができる。このため、ルーフ上面全体の略面一化が可能となって意匠面の外観見栄えが向上されるとともに、風切り音の防止効果が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。先ず、第1の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1はサンルーフ付き車両のルーフの上面斜視図、図2は図1のA部詳細図、図3は図2のB−B線断面図、図4は図2のC−C線断面図である。なお、図中の矢印FRは車両前方を示し、矢印OUTは車両側方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
図1に示すように、鉄板から形成されるルーフパネル1は、その略中央部に車両側方に長い横長で略方形状のサンルーフ用開口2を備えている。ルーフパネル1の車内側には、ルーフパネル1よりも厚肉の鉄板からなる補強部材としてのリインホースメント3が前記開口2を取り囲むように配置され、そのリインホースメント3の内周端部がルーフパネル1の開口周縁端部とヘミングによる接合構造とされている。
【0010】
以下、サンルーフ開口周縁に関してのヘミングによる接合構造の詳細を図2〜図4に基づいて説明する。ルーフパネル1の開口周縁部は、その全周に関してパネル上面1aに対して車内方向に90度折り曲げられたのち開口側に水平に張り出す断面L形の段差部1bを備えており、該段差部1bの延出端部が180度折り返されてリインホースメント3の内周端部を挟着する構造、即ちヘミングによる接合構造とされている。
そして、段差部1bの折り返し部分1c(以下、フランジという)は、開口2の周縁部のうち、コーナー部を除いた前後辺及び左右側辺の直線部に設定されており、コーナー部は折り返し部分1cのない折り曲げ加工のみの形状としている。即ち、開口周縁部のコーナー部がヘミングレス構造となっている。
【0011】
図3及び図4に示すように、段差部1bには、樹脂製のモール4が取り付けられている。具体的には、モール4は外周側に形成された断面コ字形の係合溝4aが段差部1bを挟み込むことによって取り付けられ、内周側には樹脂製のサンルーフパネル5の外周上面に対して当接可能なリップ4bを有している。なお、開口2を開閉するためのサンルーフパネル5は、ルーフパネル1の車内側に配置される図示省略のスライド装置を介してスライド可能に設けられている。
【0012】
前記リインホースメント3は、その外周端部におけるサイド部が図3に示すように、ブラケット6を介してサイドパネル7に対してルーフパネル1のサイド側端部と共にスポット溶接によって接合されている。
また、リインホースメント3はその幅方向の略中間部位に下方へ突出するビード3aを有し、これによって所定の面剛性が確保されている。このビード3aは、図3及び図4に示すように、フランジ1cの外周側に所定のスペースを置いて設置されており、このことによってフランジ1cとビード3a間にシール面3bが構成されている。そして、サンルーフパネル5の外周縁がフランジ1c下面に臨み、その外周縁に取り付けられるウエザーストリップ8がシール面3bに当接されている。
【0013】
本実施の形態においては、上述したように、開口周縁部におけるルーフパネル1とリインホースメント3との接合をヘミングによる接合構造としたものでって、この場合において、そのヘミングによる接合部位と意匠面であるパネル上面1aとの間に段差部1bを設定したことによって、接合部位から意匠面間での間に距離を稼いでヘミング加工による歪みを段差部1bによって吸収することができる。このため、歪みの影響が意匠面にまで及ぶことが抑制されることになり、所期の面品質を確保することができる。
特に、本実施の形態ではヘミング加工時に最も歪みの発生し易い部位であるコーナー部をヘミングレスとし、直線部をヘミングによる接合構造としたことによって、歪みの発生自体を減少できる。
このようなことから、本実施の形態によれば、ヘミング加工の成形性を向上することが可能となって、開口周縁部の全周についてヘミングによる接合構造を成立することができる。そして、このことは、従来のヘミングとスポット溶接とを併用する接合構造に比べて、作業工程数及び作業時間が減少できるとともに、1種の設備で済むことから、製作コストを低減することが可能となる。
【0014】
また、本実施の形態では、ルーフパネル1の開口内周縁に段差部1bを設定し、その段差部1bにモール4を設ける構成であるため、パネル上面1aに対してモール4の上面を面一に設定することが可能となり、意匠面の外観見栄えを向上する上で有効となり、しかも、モール4のリップ4bもサンルーフパネル5の上面に対して略面一に設定して風切り音を防止できる。
また、サンルーフパネル5の外周縁端部はヘミング構造の下面に臨み、その端部に取り付けたウエザーストリップ8がフランジ1cの外周側に設けたリインホースメント3のシール面3bに当接する構成としたことによって、コーナー部がヘミングレスであっても、適正なシール性を確保できる。
【0015】
次に、本発明の第2の実施の形態を図5及び図6に基づいて説明する。この実施の形態は、図示のように、リインホースメント3の内周端部を挟着するためにヘミング加工される段差部1bからの折り返し部分であるフランジ1cに関する変更例である。即ち、この実施の形態においては、開口内周縁のコーナー部にもフランジ1dを設定したものであるが、そのフランジ1dの折り返し量を、直線部のフランジ1cよりも小幅に設定することによって完全な形でのヘミングによる接合構造を成立させている。そして、このことを除いては前述した第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0016】
従って、この実施の形態によるときは、ヘミング加工による歪みは、コーナー部にヘミング加工を必要としない第1の実施の形態に比べると、多少とも増加すると考えられる。しかし、それは挟着部分とパネル上面1aとの間に設定されている段差部1bによって吸収可能なことから、意匠面へ歪みが影響することを回避できる。従って、この場合においても開口全周に関してヘミングによる接合構造を成立することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、サンルーフ開口周縁部に関するルーフパネルとリインホースメントとの接合構造において、開口全周に関してヘミングによる接合構造とした上で、意匠面の面品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るサンルーフ付き車両のルーフの上面斜視図である。
【図2】図1のA部詳細図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】図2のC−C線断面図である。
【図5】第2の実施の形態に係るヘミングによる接合構造を示す斜視図である。
【図6】図5のD−D線断面図である。
【図7】従来のヘミング構造説明図である。
【図8】図7のE部詳細図である。
【図9】図8のF−F線断面図である。
【図10】従来のヘミング及びスポット溶接による接合構造説明図である。
【図11】図10のG部詳細図である。
【符号の説明】
1…ルーフパネル
1a…パネル上面
1b…段差部
1c…折り返し部分
2…開口
3…リインホースメント
3a…ビード
3b…シール面
Claims (3)
- 略方形状のサンルーフ用の開口を備えたルーフパネルと、該ルーフパネルの車内面側の開口周縁に沿って配置されるリインホースメントとを備え、前記ルーフパネルの開口周縁端部を折り返して前記リインホースメントの内周端部を挟着させた車両のサンルーフ用開口周縁部接合構造であって、
前記ルーフパネルの開口周縁部におけるパネル上面と前記折り返し部分との間には、全周にわたってパネル上面よりも車内側に低い段差部を設定し、
前記リインホースメントの内周端部を挟着するための前記ルーフパネルの折り返し部分が開口周縁におけるコーナー部を除いた直線部分にのみ設定されている車両のサンルーフ用開口周縁部接合構造。 - 略方形状のサンルーフ用の開口を備えたルーフパネルと、該ルーフパネルの車内面側の開口周縁に沿って配置されるリインホースメントとを備え、前記ルーフパネルの開口周縁端部を折り返して前記リインホースメントの内周端部を挟着させた車両のサンルーフ用開口周縁部接合構造であって、
前記ルーフパネルの開口周縁部におけるパネル上面と前記折り返し部分との間には、全周にわたってパネル上面よりも車内側に低い段差部を設定し、
前記リインホースメントの内周端部を挟着するために折り返された前記ルーフパネルの折り返し部分のうち、開口周縁におけるコーナー部の折り返し部分が直線部の折り返し部分よりも小幅に設定されている車両のサンルーフ用開口周縁部接合構造。 - 略方形状のサンルーフ用の開口を備えたルーフパネルと、該ルーフパネルの車内面側の開口周縁に沿って配置されるリインホースメントとを備え、前記ルーフパネルの開口周縁端部を折り返して前記リインホースメントの内周端部を挟着させた車両のサンルーフ用開口周縁部接合構造であって、
前記ルーフパネルの開口周縁部におけるパネル上面と前記折り返し部分との間には、全周にわたってパネル上面よりも車内側に低い段差部を設定し、
前記段差部には、前記開口を開閉するために配置されるサンルーフパネルの周縁部上面に当接可能なモールを設けた車両のサンルーフ用開口周縁部接合構造。
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