JP4113411B2 - 施肥機のカバー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、田植機に搭載し、植え付けと同時に施肥するための施肥機の構造に関する。詳細には、施肥機の動力伝達系の保護等のために設けるカバーの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、苗載台後方に施肥機を搭載して、植え付け作業と同時に施肥作業を行う乗用型田植機が存在している。一般的に、施肥機は施肥ホッパと、その下部に位置する肥料を繰り出すロールケースと、該ロールケースに接続された施肥用ホースを具備し、施肥用ホース先端に設けた側条作溝器より泥土層に施肥するように構成されている。このようなリアマウント式の施肥機において、該施肥機の後方には動力伝達系の保護のためや外観を良くするためにカバーが設けられている。そして、該カバーは施肥機の後方に延設された支持アームに回動可能に支持され、メンテナンス時や残留肥料を排出する際のために、該カバーを上方に回動した状態(開状態)で保持できる技術は公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特公平5−6966号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来のカバーにおいては、該カバーを回動可能に支持し、任意の位置で保持可能にするために、回動支点にボルトやワッシャ、皿バネ、ロックナット等を配設しているため、部品点数が多く構造が複雑となり、組立工程数も多くなっていた。また、カバーの最大上方回動位置、つまり最大開位置が略水平位置までであり、該カバーを開いた状態だと該カバーの先端部が施肥ホッパ後側傾斜面より後方に突出するので、機体保管時等、該機体が壁や物等との隙間がない状態で置かれていると、メンテナンス時等に十分な空間が確保できず、作業がやりにくいという不具合があった。そこで本発明では、前記カバーを設ける際の部品点数を削減し、簡略化された構造で該カバーを開けてメンテナンス作業等をするに十分な角度での上方回動位置(開状態)を保持できる施肥機のカバーを提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
施肥機(40)の後部に回動可能に支持して後方を覆う施肥機のカバー(50)において、該カバー(50)を左右両端に形成した側板(51・51)と、該側板(51・51)の間に支持するカバー本体(52)から形成し、該側板(51・51)から回動支点(53)を突出し、該カバー本体(52)の上端部に取付部(52b)を設け、該取付部(52b)を前記回動支点(53)に嵌装して枢支し、該回動支点(53)近傍のカバー本体(52)の表面にカバー側突部としてのリブ(52a)を設けるとともに、前記施肥機(40)側の支持フレーム(43)よりカバー(50)側に突出する固定側突部としての保持部(54a)を設け、前記カバー(50)を上方へ回動した時に、前記リブ(52a)が保持部(54a)を乗り越えて、カバー(50)を上方回動位置で保持可能にし、前記カバー本体(52)の裏面の長手方向に亘って一体的に、側面視略「U」字型のパイプ状の溝部(52c)を突設形成し、前記側板(51・51)から突設したピン(51c)に、該カバー(50)の閉状態において、該溝部(52c)を嵌め込み保持し、該溝部(52c)を、ブラシ(65)やロール回転用ハンドル(66)の収納部としても兼用したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係る施肥機のカバーを具備する施肥機を搭載した乗用田植機の全体側面図、図2は同じく後部側面図、図3は本発明に係る施肥機の後面図、図4は本発明に係る施肥機のカバーの一実施例を示す側面一部断面図である。
【0008】
図5は他の参考例を示す側面一部断面図、図6は本発明に係る施肥機のカバーの開状態を示す斜視図である。図7は本発明に係る施肥機のカバーにロール回転用ハンドルを収納した状態を示す側面一部断面図、図8は同じく背面図、図9は本発明に係る施肥機のカバーにブラシを収納した状態を示す背面図、図10は本発明に係る施肥機の一部側面図、図11は同じく案内体を外した状態を示す一部側面図、図12はユニットクラッチ部を示す側面図である。
【0009】
まず、本発明に係る田植機の全体構成について説明する。なお、本実施例において、田植機は4条植え式の植付部を搭載した乗用田植機としているが、4条植え式に限定されるものではない。図1及び図2に示す如く、乗用田植機は走行部1の後部に昇降リンク機構27を介して植付部15が配置され、該植付部15の後方には施肥機40が配設されている。該走行部1は機体フレーム3前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にフロントアクスルケースを介して前輪6を支持させると共に、後部にリアアクスルケースを介して後輪8を支持している。そして、前記エンジン2はボンネット9に覆われ、該ボンネット9の両側には予備苗載台30が配設され、該ボンネット9上部には燃料タンク4が設けられて、該燃料タンク4の後部には、操向ハンドル14が配置されている。該操向ハンドル14の下部左右両側方に主変速レバー、副変速レバー、アクセルレバー及び操作パネル等が具備される操作部11が集中配置されている。また、走行部1の機体フレーム3を覆う機体カバー12は、ボンネット9後部から座席13前部に渡ってメインステップ10を形成し、該メインステップ10後部では高く盛り上がって、その上に座席13が設けられている。前記メインステップ10の前方であってボンネット9の左右両側に、前部ステップ9aがボンネット9と一体的に形成されていて、該前部ステップ9aとメインステップ10の間にはクラッチペダル32及びブレーキレペダル等が配設されている。
【0010】
また、前記植付部15は、4条植えとした苗載台16や複数の植付爪17やセンターフロート34やサイドフロート35等から構成されており、前記苗載台16は前高後低に配設して、苗載台16の下部は下ガイドレール18、前面の上部は上ガイドレール19によって左右往復摺動自在に支持し、クランク式の植付爪17を植付伝動フレーム21の後部に配設している。したがって、前輪6及び後輪8を走行駆動して移動させるとともに、左右に往復摺動可能な苗載台16から1株分の苗を植付爪17によって取り出し、連続的に植え付け作業が行えるようになっている。
【0011】
植付伝動フレーム21の前部には、ローリング支点軸22を介してヒッチ24が設けられ、そのヒッチ24は、ヒッチ24の上部左右両側に枢支されているトップリンク25と、ヒッチ24の下部左右両側に枢支されているロワーリンク26とを含む昇降リンク機構27を介して走行部1の後部に連結されている。前記ロワーリンク26の前端部内側面にはリフトアーム37の基部が固設されており、このリフトアーム37をロワーリンク26の配設方向に対して略直交する上方向に突設している。昇降リンク機構27を昇降駆動させる昇降シリンダー20がこのロワーリンク26に連結したリフトアーム37に連結している。
【0012】
また、前記リフトアーム37の上端部とロワーリンク26の後端部との間には補強リンク61が連結されており、ロワーリンク26の剛性を高めるようにしている。前記トップリンク25及びロワーリンク26の前端部は、後部連結フレーム44間に横設された枢支ピンを介して枢支されており、この後部連結フレーム44が昇降リンク機構27の支持部として兼用されている。この昇降リンク機構27によって植付部15を昇降させる平行リンクが形成されており、圃場の凹凸に合わせて昇降させても、植付けられた苗の植付け姿勢が変わらないようにしている。
【0013】
前記植付伝動フレーム21の後部には植付爪17・17・・・が配置され、該植付伝動フレーム21内に設けられた植付駆動軸23からユニットクラッチ28や植付アーム軸70等を介して植付爪17・17・・・が駆動される。前記ユニットクラッチ28の操作部は、図12に示すように、前記植付伝動フレーム21上に固設されたブラケット29に回動軸33aが支持され、該回動軸33aに側面視略L字型のクラッチアーム33が回動可能に軸支されている。該クラッチアーム33の一端(下方)には、バネ36、ワイヤ31を介して図示せぬユニットクラッチレバーに連結されている。一方、該クラッチアーム33の他端(上方)にはピン74が止めピン等によって支承されている。そして、前記ワイヤ31を引っ張ることによって前記クラッチアーム33が回動軸33aを中心として回動され、前記ピン74が植付伝動フレーム21内に挿脱され、植付駆動軸23から植付アーム軸70への動力の断接を行う構造となっている。
【0014】
次に、施肥機40について説明する。施肥機40は、苗マット載置面に対向して配置される。すなわち、図2及び図3に示す如く、施肥機40は支持フレーム43に固定されて、苗載台16の各条の左右中央上方に配置される。該支持フレーム43は基部フレーム43aと支持柱43bと横フレーム43cから構成されている。基部フレーム43aは前記植付伝動フレーム21の後部に固定されて立設され、該基部フレーム43aには、施肥機40の下部より延設される施肥ホース46と、後述する植付アーム68との干渉を防ぐために、左右両側の施肥ホース46においてはこれらを保持するホースガイド58・58が固設されている。さらに該基部フレーム43aには支持柱43bの下端が固設され、該支持柱43bの上端に縦フレーム43dを介して側面視略逆L字状に構成された横フレーム43c・43cが後面視で左右水平方向二本前後平行に横設されている。また、機体後方側の横フレーム43cの略左右中央部には、ホースガイドステー49がボルト等により垂設され、該ホースガイドステー49の下部には前記ホースガイド58と同様の機能を持つ、内側の2本の施肥ホース46・46を支持するホースガイド59が横設固定されている。
【0015】
前記横フレーム43cの水平面部下に、ロールケース47がプレート47d(図4に図示)を介して固設され、横フレーム43cと横フレーム43cの間に架設されている。そして、このように横フレーム43c・43cに固定されるロールケース47内に、繰出ロール45を収容し、該繰出ロール45の回転により一定量の肥料を繰り出す構成としている。該ロールケース47の下部には施肥ホース46が連通され、該施肥ホース46の下端は作溝器38の後部に延設された作溝ガイド39に連通している。該作溝器38は前記植付爪17により植え付けられる位置の側方の前に配置され、サイドフロート35・35及びセンターフロート34(図1に図示)の裏面に固定されている。
【0016】
上述の如く配設された施肥機40には、繰出装置41と、該繰出装置41上に載置される施肥ホッパ42と、繰出装置41の下部に連通される施肥ホース46等から構成され、左右隣接する2条ずつの繰出装置41・41と一つの施肥ホッパ42等とで施肥ユニット98が構成され、該施肥ユニット98・98は機体左右方向に並設して配置される。そして、前記繰出装置41の後方には、本発明に係る、条止めクラッチである爪クラッチ84やワンウェイクラッチ82等を保護するためのカバー50が施肥ユニット98・98に亘って上下回動可能に横設されている。
【0017】
前記繰出装置41の上部には施肥ホッパ42が分離可能に連通接続されている。すなわち、図4に示すように、該施肥ホッパ42の底面には肥料排出口93が開口され、底部の内部周囲にシャッターガイド63が設けられ、該シャッターガイド63は左右内面に前後水平方向にレール状の凹部を形成して、該シャッターガイド63に開閉手段となるシャッター62が摺動可能に挿入され、該シャッター62の摺動部にはスポンジやゴム等で構成した弾性体を設けてシールして漏れの防止及び摺動性の向上を図っている。そして、該シャッター62の把持部62aによって、前記シャッターガイド63にシャッター62を挿入して摺動することによって肥料排出口93を開閉できるようにしている。
【0018】
前記シャッターガイド63の両側部にはフック64・64が枢支され、一方、ロールケース47の側面の係合部を係合することによって繰出装置41と施肥ホッパ42を固定でき、係合を解除することによって施肥ホッパ42を外すことができ、肥料の補給やメンテナンス等を容易にできるようにしている。
【0019】
前記繰出装置41は、ロールケース47内の中央に繰出回転体である繰出ロール45が内装されており、繰出ロール45の側端部はロールケース47により回転自在に枢支され、該繰出ロール45の左右両側端部を延出して爪部45aを形成して、条止めクラッチである爪クラッチ84を介して駆動軸48と連結可能に構成している。該繰出ロール45への動力伝達構成は前記植付爪17の回動を動力伝達機構69を介して伝達される。
【0020】
次に、施肥機40の動力伝達機構69の構成について説明する。図2及び図3に示すように、植付伝動フレーム21の後部の側面に植付アーム軸70が突出され、該植付アーム軸70にクランクアーム67を固設し、該クランクアーム67の先端に植付アーム68の中途部を連結し、該植付アーム68の一端(前端)に植付爪17を取り付けて他端(後部)に揺動アーム76の一端を枢結している。該揺動アーム76の他端を支点軸77に枢支して、該支点軸77を植付伝動フレーム21後端より上方へ突設したアーム71後端に固設し、揺動アーム76より動力伝達機構69を介して駆動軸48に動力が伝達される。該動力伝達機構69は前記揺動アーム76に固設される駆動アーム83、駆動ロッド72、カウンターアーム73、連結リンク80、揺動アーム81よりなり、前記揺動アーム76に駆動アーム83が固定され、該駆動アーム83に駆動ロッド72が枢支されている。該駆動ロッド72の他端には、図示せぬボルトの一端がリンクボール等により回転自在に支持され、他側のネジ部が座金75、カウンターアーム73に形成した長孔73a、座金75と挿通して、端部が固定レバー78に螺装して締め付け固定できるようにしている。
【0021】
該カウンターアーム73の中途部は支点軸79により前記支持フレーム43に枢支され、該カウンターアーム73の他端は連結リンク80の一端に枢支され、該連結リンク80の他端は揺動アーム81に枢支されている。該揺動アーム81はワンウェイクラッチ82を介して前記駆動軸48に連結され、該駆動軸48が爪クラッチ84を介して繰出ロール45と連結可能に構成されている。
【0022】
そして、植付アーム軸70に伝達された動力がクランクアーム67を介して植付アーム68を回動し、該植付アーム68後部と連結している揺動アーム76を揺動させると、該揺動アーム76に取り付けられた駆動アーム83が揺動し、この揺動が駆動ロッド72を上下方向に往復動し、カウンターアーム73、連結リンク80を介して揺動アーム81を揺動する。そして、この揺動アーム81の揺動によってワンウェイクラッチ82を介して駆動軸48が一方向に間欠回転駆動され、爪クラッチ84を「入」状態にすると、繰出ロール45が回転され、一定量ずつ肥料が施肥ホース46より落下されるのである。
【0023】
続いて、本発明に係る前記カバー50について図4乃至図9を用いて説明する。該カバー50は、上述した横フレーム43c・43cの左右両端に架設されたフレーム部51a・51aと一体的に形成された側板51・51と、該側板51・51に回動自在に支承されたカバー本体52とからなり、該側板51・51で両側面を形成し、該側板51・51で支持されたカバー本体52で後面を形成した構成となっている。そして、前記カバー50は後述するように、前記カバー本体52の回動支点53近傍表面にカバー側突部となるリブ52aを設けるとともに、前記施肥機側の支持フレーム43よりカバー側に突出する固定側突部となるボルト頭で構成した保持部54aを設け、該カバー本体52を上方へ回動したときに、カバー側突部が固定側突部を乗り越えて上方回動位置で掛合させて保持可能にした構造となっている。
【0024】
即ち、図4に示すように、前記カバー本体52は、合成樹脂等で構成され、繰出装置41側(内側)を覆うように短手方向に湾曲した板状部材に構成されている。該カバー本体52の上端部には円筒の一部を切り欠いた側面視略「C」字型の取付部52bを設け、該取付部52bが回動中心となるように、カバー本体52の上部が前記側板51に設けた、ボルト等によって構成した回動支点53にて回動可能に支持されている。前記カバー本体52の取付部52bの表面(外側)には、長手方向(左右水平方向)に側面視略三角形状の突起に構成したリブ52aが一体的に引き抜き加工等で形成されている。該リブ52aはカバー本体52を開状態に保つためのカバー50側の保持部としての役割を果たしている。
【0025】
また、前記支持フレーム43において、機体後部側の横フレーム43cの左右両側には、該横フレーム43cと前記ロールケース47との間に介在するプレート47dがボルト54・54によって締結固定されている。すなわち、該横フレーム43cの後面の左右両側に螺装したボルト54・54の頭部が保持部54a・54aとして突出した構成としており、該保持部54a・54aが上述した支持フレーム43側の保持部となっている。なお、この保持部54aはボルトを利用しているが、ピン等を挿入固定して突起を形成して保持部とすることもできる。
【0026】
つまり、前記カバー本体52を上方に持ち上げ、カバー50側の保持部である前記リブ52aが、支持フレーム43側の保持部54a・54aを乗り越えるまで前記取付部52bを中心に回動させ手を放すと、カバー本体52の自重によって該カバー本体52が閉じる向きに戻ろうとしても、該リブ52aと該保持部54a・54aとが当接して掛合することによって、カバー本体52が開いた状態を保持する構造となっている。
【0027】
このような構造にすることにより、前記カバー本体52の回動支点53にバネ等の部品を用いることなく簡略化された構造で該カバー50を開状態に保持でき、かつ、該カバー50開状態においてカバー本体52は、メンテナンス等の作業をするに十分な回動角度が確保できる。なお、本実施例においては、支持フレーム43側の保持部54a・54aは横フレーム43cの左右両側2箇所に設けてあるが、前記カバー本体52を開状態に保持可能であれば、該カバー本体52の重量等によって、支持フレーム43側の保持部を設ける位置や箇所数は限定されるものではない。また、該カバー本体52に形成されるリブ52aも、前記支持フレーム43側の保持部と掛合することによって該カバー本体52の上方回動位置を保持できる形状であれば本実施例に限定されない。
【0028】
また、前記施肥機40を、上部に施肥ホッパ42、その下部に繰出装置41を配置し、該繰出装置41後方に前記カバー本体52の回動支点53を配置し、前記施肥ホッパ42の後下部を前方へ下がる後方下部斜面42aとして、施肥ホッパ42の後下部に空間を形成し、前記カバー50の上方回動時に前記空間にカバーを収納するように構成している。つまり、前記施肥ホッパ42の後方下部斜面42a下方に形成する空間は、側面視において、カバー50を略立てた状態で十分収納できる空間に形成しており、前記回動支点53は施肥ホッパ42の後端面よりも、カバー50を開放状態に保持している状態における前後長さ以上前方に位置させている。よって、カバー50を上方に回動して開放状態に保持している状態では、前記カバー本体52の後端は後方に突出することなく、施肥機の繰出駆動伝達部(動力伝達機構69)を十分開放して、機体の後方に壁や物等があり十分な空間がない場合等でも、メンテナンス等の作業が可能となる。
【0029】
さらに、前記カバー50を開状態に保持する構造の参考例として、図5を用いて説明する。本参考例では、前記側板51・51の形状を工夫する等して側板51’・51’とし、前記回動支点53をより後方の回動支点53’となるような構成にしている。つまり、前記カバー本体52を上方に回動させたとき、該カバー本体52の重心Gが回動支点53’の中心を通る鉛直線Lよりも前方(施肥ホッパ側)に位置するように回動支点53’を配設する。このような構造にすることにより、前記カバー本体52を開状態に保持する際、該カバー本体52の重心が前記回動支点53’よりも前方に位置するまで該カバー本体52を回動させると、カバー本体52の重心が支点越えとなって該カバー本体52の自重により、施肥ホッパ42の後方下部斜面42aに該カバー本体52が当接した状態となり、前記カバー50の開状態を保持できる。このような構造にすることにより、該カバー50を開状態に保持するために、上述したカバー本体52に形成したリブ52a等の保持機構が不必要となり、より簡略化された組立工程によってカバー本体52の十分な回動角度を有した開状態を保持することが可能となる。
【0030】
前記カバー本体52の裏面(内側)の中途部には、該カバー本体52の定位置(閉状態)を嵌め込み保持するための溝部52cが一体的に突設されている。該溝部52cは、側面視略「U」字型のパイプ状であり、該カバー本体52の長手方向に亘って形成されている。
【0031】
そして、図6に示すように、前記側板51・51それぞれの内側面には前記カバー本体52に形成された溝部52cと嵌合するためのピン51c・51cがそれぞれ一体的または別部材として設けられている。該ピン51c・51cは、前記側板51・51にそれぞれカバー50内側に向けて突設された略円柱状の部材であり、該ピン51c・51cに前記溝部52cが左右の側板51・51においてそれぞれ嵌合し、前記カバー本体52を閉状態に保持できる。このように、前記カバー50は、前記側板51・51に設けられたピン51c・51cに、前記カバー本体52に形成された溝部52cを嵌合して保持することによって、走行作業中等に該カバー本体52が振動によってがたついたりしないようにしっかりと閉状態を保持できる構造となっている。但し、ピン51cは両側に設けているが、前記カバー50の左右中間部に機体から支持部を延設し、該支持部に前記ピン51cと同様の部材を設けることで更に強固に保持することも可能となる。
【0032】
さらに、前記カバー本体52に形成された溝部52cは、工具等の収納部としても利用できる。図7乃至図10に示すように、該溝部52cに収納する工具等の例としては、施肥作業前や終了後等に、施肥機の繰出装置41や施肥ホース46等の掃除をする際に用いるブラシ65やロール回転用ハンドル66がある。該ロール回転用ハンドル66とは、繰出ロール45に残留した肥料を排出するために、着脱式である前記施肥ホッパ42をはずし、二条ずつまたは条止めクラッチである爪クラッチ84・84を解除して一条毎の繰出ロール45を回転させる場合に、該繰出ロール45に一体的に形成された爪部45aに噛合させて、該繰出ロール45を回すために用いるものである。すなわち、該ロール回転用ハンドル66には、図3に示す前記繰出ロール45の爪部45aの反対側に形成された爪部45bと噛合できるように該繰出ロール45と凹凸が互いに逆になるような形状、つまり、爪クラッチ84と略同一形状の爪部66aが形成されている。さらに、ロール回転用ハンドル66の一端には把持部66bが設けられており、該把持部66bは前記溝部52cに嵌合できる形状に構成して、該把持部66bを前記溝部52cに嵌合させて収納するのである。また、図9に示すように、前記ブラシ65を該溝部52cに収納するときは、前記ロール回転用ハンドル66と同様に、該ブラシ65の把持部65bを前記溝部52cに嵌合できる形状に構成して、把持部65bを該溝部52cに嵌め込み収納する。このようにして、施肥機40の清掃作業の際に用いるブラシ65やロール回転用ハンドル66等や機体の調整等に用いる工具等を前記カバー本体52に形成された溝部52cに嵌め込んで収納することにより、別途にこのような工具等を収納する場所を設ける必要が無く、メンテナンス作業時には容易に取り出すことができて、該カバー本体52の内側の空間を有効に活用でき、かつ、外観的にも優れたものとなる。
【0033】
次に、施肥作業中等に施肥機40の施肥ホッパ42に設けられた、該施肥ホッパ42内の肥料の残量を目測するための銘板55について図3及び図6を用いて説明する。前記施肥ホッパ42は、該施肥ホッパ42内の肥料の残量が確認できるように合成樹脂等の透明な素材で形成されている。しかし、このように施肥ホッパ42を透明な素材で形成することによって、後方等からは肥料の残量が確認できるのだが、座席13に座っている施肥作業中の作業者側から該施肥ホッパ42内の肥料の残量を確認しようとすると、視線の角度や日光の照射具合によって正確な残量を目測することが難しい。そこで、施肥ホッパ42内の肥料のより正確な残量を確認できるようにするため、銘板55を設けている。
【0034】
前記銘板55は、図3に示すように、前記施肥ホッパ42・42の後面または側面のどちらか一側(本実施例では後面)において、座席13に座った状態で視界に入る位置にそれぞれに貼設された略長方形の有色の板状部材である。該銘板55の色は、施肥する肥料の色と異なる色であればよいが、より見やすくするためには肥料と反対色系であることが好ましい。なお、該銘板55を設ける数や大きさや形状等は任意であり、限定されるものではない。また、本実施例では前期銘板55は前記施肥ホッパ42・42の後面のみに貼設しているが、必要に応じて前後面両側に設けてもよい。このように、施肥ホッパ42を透明な素材で形成し、該施肥ホッパ42に銘板55を貼設することによって、該銘板55を該施肥ホッパ42の後面、側面または前面の一側のみに設ければよく、また、施肥ホッパ42内の肥料の残量を、肥料補給者側(後方)から及び施肥作業者側(前方)からもより正確に確認することが可能となる。さらに、別途に肥料の残量警報等を設ける必要もなくなり構造の簡略化も図ることができる。
【0035】
次に、前記繰出装置41から繰り出された肥料が、途中で滞留することなくスムーズに施肥されるようにするために工夫された前記案内体60の形状について説明する。図10に示すように、ロールケース47の下部に配設される肥料案内体60の下部の前部斜面60a及び後部斜面60bは、水平面に対してそれぞれ傾斜角度α及びβを有している。そして、繰出ロール45が図の矢印Aの向きに回転することによって繰り出された肥料が落下する側、本実施例では前部斜面60aの傾斜角度αは後部斜面60bの傾斜角度βと比較して大きくなっている。つまり、前記傾斜角度α及びβの両方を大きくすると、該案内体60の下方の肥料出口部が狭くなって肥料がつまりやすくなり、また、該傾斜角度α及びβの両方を小さくすると、繰出ロール45から落下した肥料が斜面上に滞留しスムーズに流れにくくなる。よって、該肥料案内体60の下部の前記斜面60a及び60bについて、前記傾斜角度αを大きくし傾斜角βを小さく形成している。該案内体60をこのような形状にすることによって、案内体60の下部斜面によって肥料がスムーズに案内され、該案内体60内に肥料が滞留して固まる等の不具合が解消できより均一的な施肥が可能となる。
【0036】
また、前記案内体60は、施肥作業後に該案内体60や施肥ホース46内に残留した肥料を排出するために、前記ロールケース47と着脱可能な構造となっている。図11に示すように、案内体60は該案内体60上部に形成された溝部60cに前記ロールケース47の下部の外側に形成された突部47aを嵌め込むことによって該ロールケース47に装着する構造となっている。そして、前記案内体60をより着脱し易くするために、該案内体60をゴム等の弾性的な素材によって伸縮可能に形成されており、該案内体60の上部外周辺には該案内体60を着脱する際の把持部となる縁部60dが形成されている。
【0037】
つまり、前記案内体60を前記ロールケース47から取り外す際は、該案内体60に形成された前記縁部60dを手で把持して引っ張ることによって、該案内体60の嵌め込み口60eを広げ、該案内体60に形成された溝部60cと前記ロールケース47に形成された突部47aとの嵌合を解除する構造となっている。なお、案内体60を取り外す作業は、通常機体後方から行うので、該案内体60の縁部60dは、後部側が幅広に形成され手で掴みやすい形状としている。このような構造にすることにより、前記案内体60の着脱を容易に行うことができ、また、該案内体60はゴム等の弾性素材で形成されているので、錆等が発生することなく長期使用が可能となる。
【0038】
また、図12に示すように、前記繰出装置41の下方には前記ユニットクラッチ28が、該ユニットクラッチ28のクラッチアーム33に支承されたピン74が挿脱される面が上方を向いて位置している。つまり、上述のように前記案内体60をロールケース47から取り外し残留肥料の清掃を行う際に、この残留肥料がこぼれ落ちる位置に該ユニットクラッチ28が位置している。そのため、前記ピン74挿脱部に落下した残留肥料が付着したり、さらに付着した肥料が雨等の水分と混ざることによって固まったりすると、該ピン74の挿脱がスムーズに行われず、ユニットクラッチ28が作動不良になるおそれがある。
【0039】
そこで、前記ユニットクラッチ28のピン74挿脱部の上方にカバー56を設けている。該カバー56は、上述した植付アーム68と施肥ホース46が干渉しないために設けられているホースガイド58と溶接等により一体的に固設されている。該カバー56は、金属板を折り曲げて側面視略「へ」字型に形成されたものであり、前方及び後方に向けて傾斜面を有するように固設されているので、落下してきた肥料が該カバー56上面に載ったままにならずに、前方及び後方に流れ落ちて行くような形状となっている。
【0040】
このように、前記ユニットクラッチ28のピン74挿脱部の上方に前記カバー56を設けることによって、前記案内体60を取り外して残留肥料を排出する際に落下してくる肥料から、前記ユニットクラッチ28のピン74挿脱部を保護することができ、常に円滑なユニットクラッチ28の作動を維持することが可能となる。また、前記カバー56も該カバー56自体に落下してきた肥料が残留しないような形状となっているので、該カバー56の錆付きも防止できる。さらに、該カバー56は前記ホースガイド58と直接一体的に固設されているので、該カバー56を設けるために別途取付部材等を設ける必要がなく、簡易な構造で該カバー56を設けることができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0042】
施肥機(40)の後部に回動可能に支持して後方を覆う施肥機のカバー(50)において、該カバー(50)を左右両端に形成した側板(51・51)と、該側板(51・51)の間に支持するカバー本体(52)から形成し、該側板(51・51)から回動支点(53)を突出し、該カバー本体(52)の上端部に取付部(52b)を設け、該取付部(52b)を前記回動支点(53)に嵌装して枢支し、該回動支点(53)近傍のカバー本体(52)の表面にカバー側突部としてのリブ(52a)を設けるとともに、前記施肥機(40)側の支持フレーム(43)よりカバー(50)側に突出する固定側突部としての保持部(54a)を設け、前記カバー(50)を上方へ回動した時に、前記リブ(52a)が保持部(54a)を乗り越えて、カバー(50)を上方回動位置で保持可能にし、前記カバー本体(52)の裏面の長手方向に亘って一体的に、側面視略「U」字型のパイプ状の溝部(52c)を突設形成し、前記側板(51・51)から突設したピン(51c)に、該カバー(50)の閉状態において、該溝部(52c)を嵌め込み保持し、該溝部(52c)を、ブラシ(65)やロール回転用ハンドル(66)の収納部としても兼用したので、カバー本体の回動支点にバネ等の部品を用いることなく簡略化された構造で、かつ、メンテナンス等の作業するに十分な回動角度を確保した状態で、前記施肥機のカバーをし開状態に保持することが出来る。
【0043】
また、施肥機40の清掃作業の際に用いるブラシ65やロール回転用ハンドル66等や機体の調整等に用いる工具等を前記カバー本体52に形成された溝部52cに嵌め込んで収納することにより、別途にこのような工具等を収納する場所を設ける必要が無く、メンテナンス作業時には容易に取り出すことができて、該カバー本体52の内側の空間を有効に活用でき、かつ、外観的にも優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る施肥機のカバーを具備する施肥機を搭載した乗用田植機の全体側面図。
【図2】 同じく後部側面図。
【図3】 本発明に係る施肥機の後面図。
【図4】 本発明に係る施肥機のカバーの一実施例を示す側面一部断面図。
【図5】 同じく参考例を示す側面一部断面図。
【図6】 本発明に係る施肥機のカバーの開状態を示す斜視図。
【図7】 本発明に係る施肥機のカバーにロール回転用ハンドルを収納した状態を示す側面一部断面図。
【図8】 同じく背面図。
【図9】 本発明に係る施肥機のカバーにブラシを収納した状態を示す背面図。
【図10】 本発明に係る施肥機の一部側面図。
【図11】 同じく案内体を外した状態を示す一部側面図。
【図12】 ユニットクラッチ部を示す側面図。
【符号の説明】
40 施肥機
42 施肥ホッパ
43 支持フレーム
50 カバー
51 側板
52 カバー本体
52a リブ
54a 保持部

Claims (1)

  1. 施肥機(40)の後部に回動可能に支持して後方を覆う施肥機のカバー(50)において、該カバー(50)を左右両端に形成した側板(51・51)と、該側板(51・51)の間に支持するカバー本体(52)から形成し、該側板(51・51)から回動支点(53)を突出し、該カバー本体(52)の上端部に取付部(52b)を設け、該取付部(52b)を前記回動支点(53)に嵌装して枢支し、該回動支点(53)近傍のカバー本体(52)の表面にカバー側突部としてのリブ(52a)を設けるとともに、前記施肥機(40)側の支持フレーム(43)よりカバー(50)側に突出する固定側突部としての保持部(54a)を設け、前記カバー(50)を上方へ回動した時に、前記リブ(52a)が保持部(54a)を乗り越えて、カバー(50)を上方回動位置で保持可能にし、前記カバー本体(52)の裏面の長手方向に亘って一体的に、側面視略「U」字型のパイプ状の溝部(52c)を突設形成し、前記側板(51・51)から突設したピン(51c)に、該カバー(50)の閉状態において、該溝部(52c)を嵌め込み保持し、該溝部(52c)を、ブラシ(65)やロール回転用ハンドル(66)の収納部としても兼用したことを特徴とする施肥機のカバー。
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