JP4113296B2 - 伏目処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は横編機を使用して編成される編地の最終コースの編目ループを伏せ目編成により解れ止め処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
横編機で編成された編地の最終コースの編目ループを伏せ目編成して解れ止め処理を施すことで、編成完了後にの縫製作業を簡略化する伏せ目処理方法が種々検討されている。セーター等のニット衣類の前身頃部を編成する場合を例に挙げると、裾ゴム部分から編み始め胴体部分を経て肩方向へと編進められ、最終的に衿首部分を形成して編み終わる。あるいはこれとは逆に衿首など肩部分から編み始め裾部分を編み終わりとして編成される。編み終わりとなる衿首部あるいは裾部分は、例えば1×1リブのようにゴム編み組織等の伸縮性に優れた編組織により編成される場合が多い。
【0003】
しかしながら伏せ目処理では、形成される編目ループは隣接する最終コースの編目ループに順次重ねられていくため、伏せ目処理を施した編地終端部分は、伏せ目の際に形成された編目ループが編地ウエールの配列方向(編み幅方向)に連続するチェインステッチ状となるので伸縮性に乏しくなる。これはリブ編み部分の伸縮性を殺ぐ原因となる。またこのように伏目処理された編地は、着用の際に無理に引き伸ばされ該箇所が破断する等の虞もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の伏せ目処理方法が抱えていた問題に鑑み、編地の編み終わり箇所となる衿首部や裾ゴム部等の伸びが必要とされる箇所の解れ止め処理に適した横編機による伏目処理方法を提供することを目的とする。
【0005】
また、横編機上での編成がし易く、且つ高品位な仕上がりの伏目処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【発明の構成と作用効果】
本発明では、少なくとも前後一対のニードルベッドを有し、その何れか一方または双方のニードルベッドが左右にラッキング可能な横編機を使用し、編地を編成し、編地終端部となる最終コースの編目ループに編糸を供給して編目ループを形成し、該形成された編目ループを隣接する最終コースの編目ループと重ね合わせ、少なくとも該重ね合う編目ループを係止する編針に編糸を供給して続く編目ループを形成する編成を最終コースの一端側から他端側に向かって繰り返し行うことで編地の最終コースを伏目処理方法において、
伏目処理の際に形成される編目ループを一方のニードルベッド上の編針により形成し、且つ形成される編目ループは弾性糸が前記編糸に対し、下糸となるようにプレーティング編成するとともに以下のステップを含むことを特徴とする;
a)伏目処理がなされる編目ループと、該編目ループに隣接する編地の最終コースの編目ループとが互いに対峙するように前後のニードルベッド上の編針に係止させるステップ、
b)前記伏目処理がなされる編目ループを係止する編針に編糸および弾性糸を伏目処理がさなれる向きに供給して編目ループを形成するステップ、
c)ステップbで形成した編目ループと、これに隣接する編地の最終コースの編目ループを重ね合わせるステップ、
d)編糸および弾性糸を伏目処理がなされる向きと逆向きに移動して続く伏目処理がなされる編目ループを通過させるステップ、
e)上記a〜dのステップを繰り返して伏目処理を行う。
【0007】
これによれば伏目処理の際に形成される編目ループを編地の表側となるニードルベッドの針で形成される。そしてその際に弾性糸を下糸としてプレーティング編成されるので伏目処理された編地の終端部は伸縮性に富むだけでなく、下糸としてプレーティングされた弾性糸は編地の裏に隠れるので仕上がりの美しい編地となる。
【0008】
また、伏目処理と並行して抜き糸による編成が行われ、前記ステップbに続いてステップbで形成された編目ループの外側に位置し、編目ループを係止しない編針に抜き糸をフックさせるとともにステップbで形成された編目ループを越える位置まで移動させるステップ、
前記ステップdで編糸および弾性糸を移動させる際に抜き糸も同様に移動させるステップ、を含む。
【0009】
これによれば抜き糸は伏目処理される編目ループを係止する針の外側の針にフックされた後、この編目ループの前を横切って給糸口へ延びる。この状態で前記ステップbで形成した編目ループと、これに隣接する編地の最終コースの編目ループが目移しにより重ね合わせられることで抜き糸の渡り糸部分が編目ループと交絡する。このため編目ループが針から解放されても抜き糸で編地が吊り下げられた状態となるので伏目処理された編地部分の自重で伏目の際に形成される編目ループが引き伸ばされることがない。更に抜き糸の給糸口に延びる渡り糸部分に編目ループを交絡させるようにしたので編地の自重やテンションに応じて抜き糸が給糸口から引き出され、その分、編地が引き下げられることとなり、これが伏目の際の編目ループの形成の程良いテンションを与え、その編目ループの形成を容易にさせる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の伏せ目処理方法についての実施例を図面とともに以下詳細に説明する。実施例の編成に使用する横編機(不図示)は、前後一対のニードルベッドを有し、後ベッドが左右ラッキング可能に構成される。キャリッジは効率的な編成を行うため先行、中行、後行カムロックからなる3カムシステム機の例とするが、特にこれに限定されるものでない。図1は編成される編地1を示し、編地1は矢印方向に下から上に向かって編成され、編み終わり側にリブ編み3を行った後、終端部分に伏目処理5が施される。図2〜図4は本実施例の伏せ目処理方法の編成ステップを示し、図においてアルファベット大文字A〜Oは前ベッドの針を、アルファベット小文字a〜oは後ベッドの針をそれぞれ示し、また図中に示した左右方向の矢印はキャリッジの進行方向を、上下方向の矢印はループの目移し方向を示す。図5は図2〜図4の編成ステップにより伏目処理される編地の編成途中のループ構造図を模試的に示したものである。なお説明の便宜上編成で使用する針数は実際の針数よりも少なくするとともに編成ステップ図において針に係止される編目ループの内、黒く塗り潰して表したものは現コースにおいて編目ループが形成されるものを示し、白抜きで示したものは置き目を示す。また編目ループの内、ヤーンフィーダ15で形成されるものをサークルで、ヤーンフィーダ21で形成されるものをボックスで示した。
【0011】
ステップSは編地1の終わり側に設けたリブ編み(1×1リブ)3の最終コース10の編成が終了した時点のニードルベッド上の各針の編目ループの係止状態を示し、前ベッドの1本置きの針A,C,E,G,I,K,Mと、後ベッドの針b,d,f,h,j,l,nにリブ編みの最終コース10の編目ループが係止される。ステップ1は、続く伏目処理を行うために上記した状態にある編目ループの移し分けのステップで、前ベッドの針A,C,E,G,I,K,Mに係止された編目ループを対向する後ベッドの針a,c,e,g,i,k,mへ移す。同時に伏目処理の開始側となる後ベッドの針nに係止される編地右側端の編目ループ13を前ベッドの針Nへ移す。
【0012】
ステップ2から伏せ目処理の編成が開始されるが、本実施例では伏目処理の編目ループは、リブ編み編成に使用された編糸と同色の編糸(地糸)と、これに加えてゴム糸等の弾性糸によるプレーティング編成(添え編み)により形成される。
15はフィーダの先端に2つの給糸口を備えたプレーティング用のヤーンフィーダを示し、上糸に地糸17、下糸にゴム糸19がセットされている。このプレーティング用のヤーンフィーダに代えて地糸用、ゴム糸用のそれぞれのヤーンフィーダを準備して地糸がゴム糸よりも先行するようにヤーンフィーダを移動させて針に給糸させてもよい。また、21は抜き糸用のヤーンフィーダを示し、ナイロン糸などの強度があって滑りのよい編糸がセットされている。
【0013】
本実施例では伏目処理の編成の際に抜き糸による編成も併せて行われる。伏目処理の進行に伴い、針に係止される編目ループの数は減少し、これら編目ループに編地の自重が及ぶ。ここで開示される抜き糸編成は、編地の自重で形成される編目ループが引き伸ばされることなく伏目部の編目ループの大きさを均一にする目的で使用されるだけでなく伏目の際に形成される編目ループの形成を容易にする目的で使用される。
【0014】
まずステップ2において、先行システムでヤーンフィーダ15を移動させ地糸17とゴム糸19を前ベッドの針N,Mに給糸する。これにより針Nには後ニットされたリブ編みの最終コースの編目ループ13に続く編目ループ23が形成され、編目ループを係止しない針Mには編糸がフックされる。中行システムではヤーンフィーダ21により抜き糸26を前ベッドの編目ループを係止しない針Oに供給しフックするとともに抜き糸26が編目ループ23と後ベッドの針mに係止される編目ループ27の間を横切って針Lを越える位置まで移動させる。後行システムでは、先行システムで形成した編目ループ23とフックした編目ループ25を後ベッドの針m,nへ移す。この編目ループ25を後ベッドの針mへ移して編目ループ27に重ねることで抜き糸26の渡り糸部分26aを両編目ループ25,27間に挟む。
【0015】
次にステップ3では、後ベッドを1針分左へラッキングした状態とし、先行システムで後ベッドの針m,nに預けた編目ループ25,27と23を前ベッドの針L,Mに移した後、次の後行システムでは編目形成を行うことなく単にヤーンフィーダ15,21を針L,Mを越えて右側へ移動する。以上の編成で編地1のウエールが1本減少したことになる。
【0016】
次にステップ4においては、先行システムで地糸17とゴム糸19を前ベッドの針M,Lに給糸し、編目ループ29、31を形成し、中行システムでは抜き糸26を前ベッドの編目ループを係止しない針Nに供給しフックさせる。そして後行システムでは、先行システムで形成した編目ループ29、31を後ベッドの針l,mへ移す。このとき針lに形成される重ね目ループ(31,33)で抜き糸26の渡り糸部分26bを拘束する。
【0017】
次にステップ5において、後ベッドを1針分左へラッキングさせ、先行システムで後ベッドの針l,mに係止する編目ループ31,33と29を前ベッドの針K,Lに移した後、後行システムでヤーンフィーダ15、21を針Lを越える位置まで移動させる。これにより編地1のウエールが更に1本減少する。
以下ステップ4、5と同様な編成を残る編地部分に対して繰り返し行い編地1のウエールを減少させていき、針Cまでの伏目処理が施される(途中省略)。この状態では前ベッドの針E〜Oの各針に抜き糸26がフックされた状態となっている。
【0018】
ステップ6〜14は伏目処理編成の後半部分の編成を示す。ステップ6で先行システムでヤーンフィーダ15を使用し地糸17とゴム糸19を前ベッドの針C,Bに給糸して編目ループ41、43を形成し、続く中行システムではヤーンフィーダ21を使用して抜き糸26を前ベッドの編目ループを係止しない針Dに供給しフックさせる。そして後行システムでは、先行システムで形成した編目ループ41、43を後ベッドの針b,cへ移す。これにより上記と同様に後針床の針bに形成される重ね目ループ43,45で抜き糸26の渡り糸部分26nを拘束する。
【0019】
次にステップ7で後ベッドを1針分左へラッキングさせ、先行システムで後ベッドの針b,cに係止する編目ループ43,45と41を前ベッドの針A,Bに移し、その後、後行システムで給糸口15,21を針Bを越える位置まで移動させる。
【0020】
ステップ8では、先行システムで後ベッドの針aに係止されるリブ編みの最終コース10の編目ループ14を前ベッドの針Aに移した後、中行システムでヤーンフィーダ15を使って前ベッドの針B,Aに給糸して編目ループ47、49を形成する。後行システムでは抜き糸26を針Cへ給糸してフックさせる。ステップ8が終わった状態では、編地1の最終コース10のほとんどが伏目処理により針から解放され、前ベッドの針A,Bに編地側端の2つの編目ループ49、47が残されるだけとなっている。一方、前ベッドの針C〜Oにはそれぞれ抜き糸26がフックされた状態で、針から解放された編地1の編目ループが抜き糸26の渡り糸部分26a,26b,26c…、で吊り下げられた状態となっている。
【0021】
ステップ9では、前ベッドの針Bに係止される編目ループ47を対向する後ベッドの針bに移し、次のステップ10で後ベッドをラッキングしてこの編目ループ47を前ベッドの針Aへ移して編目ループ49と重ねる。続くステップ11、12でこの重ね目ループに続く編目ループ51、53が形成される。
【0022】
ステップ13、14では、抜き糸用のヤーンフィーダ21により前ベッドの針C〜Oに対して給糸して1往復の編目コース55、57を編成する。次のステップ15、16では、ヤーンフィーダ15に切り換えて針Aと針C〜Oに給糸して1往復の捨て編みコース59、61を編成するとともにステップ16bの後行システムにおいてヤーンフィーダを伴うことなく針Aと針C〜Oの進退動作をさせて前ベッドの針Aと針C〜Oに係止した編目ループを針から払い落として編地編成を終了する。この捨て編みコース59,61は針Aに対してのみ行うようにしてもよい。このように伏目処理の編成に続けてステップ13〜16のヤーンフィーダ15,21によるコース編成を追加することで編機から払い落とされた編地は、抜き糸部分を編地から容易に引き抜くことができるとともに抜き糸を引き抜いた後、捨て編み部分を引っ張ることで編目ループ53の捨て編みコース59に続く部分が引き出されて結び目を形成してランバックを容易な方法で確実に防ぐことができる。
【0023】
次に本発明の伏目処理編成の変形例を図6に示す。先の実施例では伏目処理の際に形成される編目ループは前ベッドの隣接する2つの針を使って形成され、また抜き糸は前ベッドの針でフックされた。この変形例は、伏目の際に形成される編目ループは前ベッドの1つの針でのみ形成される点と抜き糸が後ベッドの針でフックされる点で先の実施例と異なる以外は同じであり、使用するヤーンフィーダやカムシステムも同じものを使用する。ステップSで終端部のリブ編み編成が行われた後、伏目処理のための移し分けがステップ1、2で行われ、後ベッドの針nに係止していたリブ編みの最終コースの編目ループが前ベッドの針Mに係止される以外は全て後ベッドの針へ係止される。
【0024】
ステップ3で先行システムで針Mに編目ループを形成し、続く中行システムで後ベッドの針nに抜き糸をフックさせる。そして後行システムで針Mに係止する編目ループを後ベッドの針mに移して抜き糸を編目ループでくるむ。続くステップ4では先行システムで後ベッドをラッキングして針mに係止する編目ループを前ベッドの針Lへ移すとともに後行システムで各ヤーンフィーダを右側へ移動させる。上記ステップ3とステップ4により編地のウエールは1本減少する。これを基本編成として残る編地終端部に対して繰り返し行うことで伏目処理を終える。
【0025】
なお上記の実施例では2枚ベッド横編機による方法を示したが、これに限定されるものではなく、例えば4枚ベッド横編機でも実施できるなど本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】伏目処理が施された編地を示す図である。
【図2】本発明の伏目処理の実施例に係る編成ステップの前半部分を示した図である。
【図3】図2に続く伏目処理の編成ステップを示した図である。
【図4】図3に続く伏目処理の編成ステップを示した図である。
【図5】伏目処理される編地の処理途中のループ構成図を示した図である。
【図6】本発明の伏目処理の変形例に係る編成ステップを示した図である。
【符号の説明】
1…編地、3…リブ編み部分、5…伏目処理部分、15…プレーティング用ヤーンフィーダ、17…地糸、19…ゴム糸、21…抜き糸用ヤーンフィーダ、26…抜き糸、26a,26b,26c…抜き糸渡り糸部分
Claims (2)
- 少なくとも前後一対のニードルベッドを有し、その何れか一方または双方のニードルベッドが左右にラッキング可能な横編機を使用し、編地を編成し、編地終端部となる最終コースの編目ループに編糸を供給して編目ループを形成し、該形成された編目ループを隣接する最終コースの編目ループと重ね合わせ、少なくとも該重ね合う編目ループを係止する編針に編糸を供給して続く編目ループを形成する編成を最終コースの一端側から他端側に向かって繰り返し行うことで編地の最終コースを伏目処理方法において、
伏目処理の際に形成される編目ループを一方のニードルベッド上の編針により形成し、且つ形成される編目ループは弾性糸が前記編糸に対し、下糸となるようにプレーティング編成するとともに以下のステップを含むことを特徴とする;
a)伏目処理がなされる編目ループと、該編目ループに隣接する編地の最終コースの編目ループとが互いに対峙するように前後のニードルベッド上の編針に係止させるステップ、
b)前記伏目処理がなされる編目ループを係止する編針に編糸および弾性糸を伏目処理がさなれる向きに供給して編目ループを形成するステップ、
c)ステップbで形成した編目ループと、これに隣接する編地の最終コースの編目ループを重ね合わせるステップ、
d)編糸および弾性糸を伏目処理がなされる向きと逆向きに移動して続く伏目処理がなされる編目ループを通過させるステップ、
e)上記a〜dのステップを繰り返して伏目処理を行う。 - 伏目処理と並行して抜き糸による編成が行われ、前記ステップbに続いてステップbで形成された編目ループの外側に位置し、編目ループを係止しない編針に抜き糸をフックさせるとともにステップbで形成された編目ループを越える位置まで移動させるステップ、
前記ステップdで編糸および弾性糸を移動させる際に抜き糸も同様に移動させるステップ、を含むことを特徴とする請求項1に記載の伏目処理方法。
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