JP4112031B2 - 離形フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、離形フィルムに関し、さらに詳しくは樹脂溶液から成形される樹脂シートや樹脂被膜、セラミックスラリーから成形されるセラミックシート等の成形用キャリヤーフィルム、あるいは粘着テープ等の粘着剤層の保護フィルムに有用な離形フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
離形フィルムは、樹脂シート、樹脂被膜あるいはセラミックシート等を成形する際のキャリヤーフィルムとして用いられる。
【0003】
樹脂シートは、例えば塩化ビニル等からなる樹脂溶液をキャリヤーフィルム上に塗工(流延)した後、溶媒を加熱除去し、キャリヤーフィルムを剥離分離することにより成形され、マーキングシート等の用途に供される。
【0004】
樹脂被膜は、例えば粘着剤となる樹脂を溶媒に溶解した塗液をキャリヤーフィルムの表面に塗布した後、加熱して溶媒を除去することにより製造される。
【0005】
セラミックシートは、例えばセラミック粉体とバインダー剤等を溶媒に分散させたスラリーをキャリヤーフィルムの表面に塗工した後、溶媒を加熱除去し、キャリヤーフィルムを剥離除去することにより成形される。
【0006】
一般的に、樹脂シートやセラミックシート等の表面のうち、キャリヤーフィルムから剥離された面の方が高精度な表面性を要求される用途に使用されることが多いため、キャリヤーフィルムに用いられるベースフィルムの表面粗さが、樹脂シートやセラミックシート等の表面粗さを大きく左右する。
【0007】
これらのキャリヤーフィルムのベースフィルムには、各種のフィルム、特に二軸配向ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略することがある)フィルムが使用されているが、PETフィルムはほとんどの場合、巻き取り性向上の目的でフィラー等を添加し表面を粗面化している。従って、フィラーが添加されたPETフィルムをベースフィルムとしたキャリヤーフィルムで成形された樹脂シートやセラミックシート等は、表面が粗面化され、シート類を相互に積層する場合、積層界面に空隙が入りやすいという問題が発生することがある。
【0008】
一方、離形フィルムは樹脂溶液やセラミックスラリーを塗工した後、溶媒除去のため加熱処理されるが、この加熱温度は、離形フィルムに用いられるベースフィルムのガラス転移温度(Tg)付近かそれ以上であることが多く、このため離形フィルムに寸法変化やシワ等の熱変形が生じて、成形された樹脂シート類の厚みムラや平面性が悪化し品質が低下する問題がある。特に、樹脂シート類の生産性を向上させるため、加熱処理時間を短縮し加熱温度を高くすると、前述の問題がより顕在化することが懸念される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を解消し、各種樹脂シート、樹脂被膜、セラミックシート等の表面を粗面化させず、加熱処理の際熱変形が生じない離形フィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベースフィルムが、表面粗さRaが10nm未満の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムである離形フィルムであって、120℃における150gf/mm2応力下での寸法変化率の絶対値が、応力方向及びその垂直方向とも0.2%以下であることを特徴とする離形フィルムである。
【0011】
なお、表面粗さRaは、触針式表面粗さ計を用いて得られた表面粗さ曲線(Y=f(x)、ここで、Y:表面変位、X:スキャン距離、表面変位の平均値:Y=0)から、その中心線の方向に測定長さ(L)を抜き取ったとき、下記式で与えられる。
【0012】
【数1】
Figure 0004112031
【0013】
また、寸法変化率の絶対値は、長さ30mm以上、幅4mmに切り出した短冊状の離形フィルムを、チャック間が10mmになるようにTMA(熱応力歪み測定装置)に装着し、寸法変化率を測定する方向に150gf/mm2の応力を加え、室温から5℃/分の速度で昇温し、120℃に到達したときの寸法変化を応力方向(離形フィルムの長手方向)、垂直方向別(離形フィルムの幅方向)に測定し下式にて求めた。
【0014】
【数2】
寸法変化率の絶対値=|寸法変化/チャック間距離|×100
【0015】
本発明におけるベースフィルムとしては、二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムを用いる。このフィルムを構成するポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下PENと略することがある)とは、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルである。
【0016】
かかるPENポリマーは、離形フィルムの耐熱変形性を損なわない範囲で共重合成分を少量(10モル%以下、特に5モル%以下)共重合したものでもよい。
【0017】
かかる共重合成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、シュウ酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸類、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類を好ましく挙げることができる。
【0018】
また、PENポリマーにはグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸等のような三官能基以上を持つ化合物を、実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合してもよい。
【0019】
さらに、PENポリマーは、その耐加水分解性を向上させるために例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコール等の一官能性化合物によって末端の水酸基及び/又はカルボキシル基の一部又は全部を封鎖したものであってもよい。
【0020】
本発明に用いるPENポリマーは、固有粘度が0.5以上であって、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのみを繰り返し単位とするホモポリマーであることが、ヤング率等の機械的特性や耐熱変形性等の熱的特性に優れたベースフィルムが得られるため好ましい。
【0021】
かかるPENポリマーは公知の方法で製造することができる。例えば、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール又はそのエステル形成性誘導体とを、触媒の存在下で重縮合させることによって製造することができる。また、PEN共重合体の場合は、前述の重合成分に共重合成分を加えて重縮合させることによって製造することができるし、共重合成分を含むポリエステルとPENポリマーとを溶融状態で混合しエステル交換反応を行なわせることによって製造することもできる。
【0022】
なお、PENポリマーには、フィルムの巻取り性を良好なものとするため、平均粒径が0.01〜20μmの無機微粒子あるいは有機微粒子を、フィルムの表面粗さRaが10nm未満になる割合、例えば0.005〜2重量%含有させることが好ましい。かかる微粒子の具体例として、シリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック等の無機微粒子、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、架橋シリコーン樹脂等の有機微粒子を好ましく挙げることができる。PENポリマーはPETポリマーに比べてその分子鎖が剛直でフィルムのスティフネスが高いため、かかる微粒子の配合量がPETポリマーより少なくても十分な巻取り性を得ることができる。
【0023】
前記微粒子以外にも、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。また他の熱可塑性樹脂を少量(例えば20重量%以下、特に10重量%以下)ブレンドすることもできる。
【0024】
本発明における二軸配向PENフィルムは、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法等の従来から知られている方法で製造することができる。例えば、逐次二軸延伸法では、PENポリマーを十分に乾燥してから溶融押出法にて未延伸フィルムを製造し、続いて該未延伸フィルムを130〜150℃の温度で縦方向に2〜6倍延伸し、次いで120〜150℃の温度で横方向に2〜6倍延伸を行い、さらに220〜255℃の温度で5秒〜1分間熱固定することにより製造することができる。なお、熱固定は制限収縮下に行なってもよい。溶融押出の際、静電密着法を使用することが好ましい。
【0025】
また、PENフィルムの等方性を良好なものとするために、前述の縦方向及び横方向の延伸倍率を同じにすることが好ましい。離形フィルムの110℃付近での耐熱変形性をさらに向上させるため、二軸延伸後熱固定したフィルムを120〜150℃の温度で弛緩状態で熱処理するのが好ましい。
【0026】
本発明に用いる二軸配向PENフィルムの厚みは特に限定されないが10〜200μmであることが好ましい。
【0027】
本発明においては、二軸配向PENフィルムの少なくとも片面に離形層を設けることが好ましい。離形層を形成する成分としては、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、脂肪族ワックス等を挙げることができる。また、キャスティングされる樹脂によっては離形層を設けなくてもよい。
【0028】
かかる離形層を形成する成分には、本発明の目的を妨げない範囲で公知の各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、顔料、消泡剤等を挙げることができる。
【0029】
離形層の塗設は離形層を形成する成分を含む塗液を二軸配向PENフィルムに塗布し、加熱乾燥させて塗膜を形成させることにより行なうことができる。加熱条件としては80〜160℃で10〜120秒間、特に120〜150℃で20〜60秒間が好ましい。塗布方法は、任意の公知の方法が使用でき、例えばロールコーター法、ブレードコーター法等が好ましく挙げられる。
【0030】
本発明においては、ベースフィルムと離形層の密着性を高めるために、ベースフィルムと離形層の間に接着層を設けることが好ましい。この接着層を形成する成分としては、例えば離形層がシリコーン樹脂層の場合、シランカップリング剤が好ましい。このシランカップリング剤としては一般式Y−Si−X3で表わされるものがさらに好ましい。ここで、Yは例えばアミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、メルカプト基等で代表される官能基、Xはアルコキシ基で代表される加水分解性の官能基を表わす。かかる接着層の厚みは、0.01〜5μmの範囲が好ましく、0.02〜2μmの範囲が特に好ましい。接着層の厚みが上記の範囲であるとベースフィルムと離形層の密着性が良好となり、かつ接着層を設けたベースフィルムがブロッキングしにくいため、離形フィルムの取り扱いで問題が生じにくい利点がある。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を掲げて本発明を更に説明する。なお、各特性値は下記の方法で測定した。
【0032】
(1)表面粗さ(Ra)
触針式表面粗さ計(小坂研究所(株)製、サーフコーダ30C)を用いて針の半径2μm、触針圧30mgの条件でフィルム表面をスキャンし、フィルム表面の変位を測定し、表面粗さ曲線を記録した。この表面粗さ曲線から、その中心線方向に測定長さ(L)を抜き取り、X軸をスキャン距離、Y軸を表面変位ととしたときの表面粗さ曲線(Y=f(x))から下記式で計算した。
【0033】
【数3】
Figure 0004112031
【0034】
(2)耐熱変形性(寸法変化率の絶対値)
測定方向に30mm以上、幅4mmで切り出した短冊状のフィルムをTMA(熱応力歪み測定装置、セイコー電子工業株式会社製TMA/SS120C)の治具にチャック間が10mmになるように装着し、フィルムに150gf/mm2の応力を加え、室温から5℃/分の昇温速度で加熱し、120℃に到達したときの寸法変化を応力方向、垂直方向別に測定し、下記式にて計算して求めた。
【0035】
【数4】
寸法変化率の絶対値=|寸法変化/チャック間距離|×100
【0036】
[実施例1]
固有粘度が0.62のPENポリマーを押出機で溶融し、ダイスから40℃に維持してある回転冷却ドラム上に押出し、静電密着法を用いて溶融ポリマーを回転冷却ドラムに密着させて急冷し未延伸フィルムとした。次いで、この未延伸フィルムを縦方向に3.7倍、引き続き横方向に3.8倍延伸し、さらに240℃にて熱固定を行なって厚さ50μmの二軸配向PENフィルムを得た。
【0037】
この二軸配向PENフィルムの片面に、下記に示す塗液を6g/m2(wet)の塗布量で塗布し、140℃の温度で1分間加熱乾燥及び硬化させて離形層の厚さが0.15μmの離形フィルムを作成した。なお、塗液は、ビニル基を有するポリジメチルシロキサンとジメチルハイドロジェンシランからなる付加反応タイプの硬化型シリコーンをメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びトルエンの混合溶媒中に溶解させ、さらにシリコーンレジンを前記硬化型シリコーンに対し固形分比で10重量%となる量配合し、全体の固形分濃度が2%の溶液とし、この溶液に白金触媒を添加して作成した。この離形フィルムの特性を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
固有粘度が0.62のPETポリマーを押出機で溶融し、ダイスから40℃に維持してある回転冷却ドラム上に押出し、静電密着法を用いて溶融ポリマーを回転冷却ドラムに密着させて急冷し未延伸フィルムとした。次いで、この未延伸フィルムを縦方向に3.6倍、引き続き横方向に3.9倍延伸し、さらに220℃にて熱固定を行なって厚さ50μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0039】
この二軸配向PETフィルムの片面に、下記に示す塗液を6g/m2(wet)の塗布量で塗布し、140℃の温度で1分間加熱乾燥及び硬化させて離形層の厚さが0.15μmの離形フィルムを作成した。なお、塗液は、ビニル基を有するポリジメチルシロキサンとジメチルハイドロジェンシランからなる付加反応タイプの硬化型シリコーンをメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びトルエンの混合溶媒中に溶解させ、全体の固形分濃度が2%の溶液とし、この溶液に白金触媒を添加して作成した。この離形フィルムの特性を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004112031
【0041】
表1より明らかなように、実施例に示した本発明の離形フィルムは、表面粗さが小さく、また耐熱変形性に優れるものである。
【0042】
【発明の効果】
本発明の離形フィルムは、ベースフィルムとして表面粗さの小さいPENフィルムを用いることにより、樹脂シート等の成形時の溶媒加熱除去を高温度、高荷重で行なってもシート類の変形が見られず、かつ表面精度の高いシート類を製造することができる。

Claims (3)

  1. ベースフィルムが、表面粗さRaが10nm未満の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムである離形フィルムであって、120℃における150gf/mm2応力下での寸法変化率の絶対値が、応力方向及びその垂直方向とも0.2%以下であることを特徴とする離形フィルム。
  2. ベースフィルムが、平均粒径が0.01〜20μmの無機微粒子又は有機微粒子を0.005〜2重量%含む二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムである請求項1記載の離形フィルム。
  3. ベースフィルムの少なくとも片面に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、脂肪族ワックスから選ばれた少なくとも1種を積層してなる請求項1記載の離形フィルム。
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