JP4111572B2 - β−炭化ケイ素成形体用黒鉛基材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はβ−炭化ケイ素成形体用黒鉛基材の製造方法に関し、さらに詳しくは高純度で複雑な形状にも容易に適用可能なβ−炭化ケイ素成形体の製造に適した原料たる黒鉛基材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭化ケイ素(以下「SiC」と略記する。)は、高温での強度,伝導性,耐酸化性に優れたセラミックであり、例えば高温ガス処理装置,電子部品用熱処理装置等に使用されている。特に純度の高いものは、IC製造プロセス中半導体ウェハーを熱処理するために使用されている。このようなSiC成形体の製法として、従来では基本的に次の▲1▼〜▲3▼のいずれかが採用されていた。
▲1▼SiC粉体に熱圧処理を施して直接SiC粉体を焼結する方法。
▲2▼SiC粉体を炭素質バインダーを用いて成形し、これを熱処理し、さらにSiを含浸して炭化したバインダーをSiC化させる再結晶方法。
▲3▼炭素基材に直接Si源を導入し、SiC化する方法。
【0003】
しかし、上記の製法にはいずれも問題が存在していた。つまり▲1▼,▲2▼の製法では不純物の混入により高純度のSiC成形体が得られず、しかも目的とする形状の付与はSiC成形体とした後の加工により行うため、SiCが非常に硬くて機械加工が困難なため、複雑な形状のSiC成形体が得られないという問題があり、また▲3▼の製法では炭素基材のかなりの部分がSiC化されずに残ってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人はこれらの問題を一挙に解消し、高純度で複雑な形状にも容易に適用可能なβ−SiC成形体を開発すべく鋭意研究を行った結果十分な成果が得られたので、先に「β−炭化珪素成形体及びその製造法」として特許出願を行った(特開平1−264969号)。即ち、先の発明は、複雑な形状にも容易に適用可能でかつ高純度のβ−SiC成形体(以下単に「SiC成形体」という。)の提供を目的とし、そのために出発原料として比較的加工を行いやすい黒鉛基材を採用し、予め製品形状に加工した黒鉛基材(黒鉛成形体)とSiOガスとを直接接触させて化学反応を起こさせることにより、所定の(製品)形状を有する黒鉛基材(黒鉛成形体)の表面から内部中心に亘る全容積領域をSiC化し、高純度のSiC成形体を得るようにしたものである。言い換えれば、特有のCVR法(化学気相反応法)を利用して、種々の形状が付与された後の黒鉛基材(黒鉛成形体)の内部中心部まで実質100%SiC化することにより、SiCの一元組成体に転化して、複雑な形状を有しながらも高純度であるSiC成形体の提供を可能としたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先の発明に係るSiC成形体(製品)は比較的高価であるため、製品のコスト低減を図るためには生産性を大きく向上させる必要があり、そのためにはCVR法の円滑実施に適した原料である特定範囲の物性をもつ黒鉛基材、つまり少なくとも嵩密度1.50Mg/m 以下及び平均ポアー半径1.5μm以上の物性を有する黒鉛基材(以下「CVR用黒鉛基材」と略称することがある。)を効率良く調達できることが一つの条件となる。また、SiC成形体(製品)を半導体等の分野に適用しようとする場合、不純物の濃度、特に問題となりやすいFe濃度が少なくとも1.0ppm程度以下(好ましくは0.5ppm以下)で、Al濃度が少なくとも0.3ppm程度以下(好ましくは0.1ppm以下)で灰分が10ppm程度以下あることが求められる。そこで、本発明は、CVR用黒鉛基材として最も適した黒鉛基材の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明(請求項記載の発明)は、黒鉛基材原料を粉砕した後混練し、次いで成形,焼成,黒鉛化の各処理を順次行なってβ−炭化ケイ素成形体用の黒鉛基材を製造する方法において、前記黒鉛基材原料を2000℃以上で熱処理した後1次粉砕し、さらに混練りした後2次粉砕し、次いで得られた2次粉砕品を分級して、平均粒径3μm以下の微粒を除去してSiC転化率を向上するように粒度調整を施したものを成形処理することを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、黒鉛化処理後の黒鉛基材として、すべて嵩密度が1.30Mg/m以下、平均ポアー半径が1.5μm以上で且つ真密度が1.8Mg/m以下のものであって、しかもシルバースポット現象(不純物が黒鉛化の際に触媒的に機能し、部分的により黒鉛化が進んで外側表面に銀白色の斑点が浮き出る現象)の全くないものを得ることができる。従ってこのような黒鉛基材に対してCVR法を施すことにより、先の発明に係るSiC成形体(製品)の効率的な量産化が可能となり、またSiC成形体(製品)の純度レベルを著しく高めることができる。さらに、この方法は原料の粉砕を2段階で行う点に特徴があり、特に1次粉砕により多様な原料の使用が可能となる。従って、その分だけ原料コストを節約できるので、「黒鉛基材原料を粉砕した後混練し、次いで成形,焼成,黒鉛化の各処理を順次行なってSiC成形体用の黒鉛基材を製造する方法において、前記黒鉛基材原料を高温で熱処理した後粉砕し、得られた粉砕品を分級して、少なくとも粒径が3〜100μmとなるように粒度調整したものを混練処理する方法」に比べて黒鉛基材製造コストひいてはSiC成形体(製品)コストの一層の低減化が可能となる。
【0010】
また、上記の方法(請求項に記載の発明)により製造された黒鉛基材に対しCVR法を施すことにより、SiC成形体として、不純物濃度(Fe,Al濃度)が少なくともFe:0.5ppm以下、Al:0.1ppm以下で、灰分が10ppm以下であるものを得ることができるので、かかるSiC成形体であれば、極めて高純度が要求される半導体等の分野にも素材として十分適用することができる。
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
(1)本発明者らは、まず、CVR用黒鉛基材(少なくとも嵩密度1.50Mg/m 以下及び平均ポアー半径1.5μm以上の黒鉛基材の物性を有し、かつより純度レベルの高いもの)を効率良く製造するためには、以下(i)(iii)の条件を満足する手段を見い出す必要があると考えた。
(i)CVR反応性は、基本的に黒鉛基材内部へのSiOガスの拡散性の善し悪しによって左右されるため、少なくとも成形前の原料段階における炭素質粉末が適切な物性(特に粒径分布と開気孔率)を有することが必要である。
(ii)また、CVR反応性はこれに止まらず、さらに黒鉛基材粒子内部へのSiの固溶拡散性の善し悪しによっても左右されるため、その粒子内のミクロポア(真密度)を適切な範囲にする必要がある。
(iii)さらに、上記炭素質粉末中の不純物の含有量によっては、その不純物が黒鉛化の際に触媒として作用し部分的に黒鉛化が進むことになるが、これではその部分が緻密質になりすぎ、CVR用黒鉛基材として適合しなくなるため、そのような触媒的作用が起こらない程度に灰分が少ない炭素質粉末にしておく必要がある。
【0012】
そして、上記(i)(iii)の条件を同時に満足しうる手段(具体的構成)を見い出すべく、鋭意実験検討を重ねた。その結果、最終的に、「黒鉛基材原料を粉砕した後混練し、次いで成形,焼成,黒鉛化の各処理を順次行なってβ−炭化ケイ素成形体用の黒鉛基材を製造する方法において、前記黒鉛基材原料を高温で(好ましくは2000℃以上で)熱処理した後粉砕し、さらに該粉砕により生じた粉末品を分級して、少なくとも粒径が3〜100μmとなるように粒度調整したものを混練処理する」という特有の基本的構成を具備した本発明に係るCVR用黒鉛基材の製造方法を完成したものである。そして、この方法に基づき、「嵩密度1.50Mg/m3 以下及び平均ポアー半径1.5μm以上の物性を有し、かつ真密度が1.8Mg/m3 以下」という特有の構成に係るβ−炭化ケイ素成形体用黒鉛基材が得られたものである。
【0013】
さらに、得られた黒鉛基材を実際に使用してCVR法によりSiC成形体を製造し、その純度レベルを分析したところ、不純物としてのFe,Al濃度が極めて低くなっていることを知見し、さらに検討の末、最終的に「不純物としてのFe,Al濃度が少なくともFe:0.5ppm以下、Al:0.1ppm以下で、灰分が10ppm以下あるSiC成形体」という特有の構成に係るSiC成形体に到達したものである。
【0014】
(2)次に、上記のCVR用黒鉛基材の製造方法を具体的に説明する。
ヤシ殻炭や備長炭等の原料をまず高温で熱処理する。これにより、原料中のFe,Al,Si等の不純物を効果的に揮散させることができるので、黒鉛化終了後の黒鉛基材にシルバースポットが発生するのを抑制することができる。特に2000℃以上で熱処理することにより、不純物レベルを灰分1.5%程度以下にまで小さくすることができ、この場合はシルバースポットの発生を確実に防止することができる。
【0015】
原料の採択に際しては、以下の基準によればよい。即ち、本来、CVR法における反応性は、前述したように黒鉛基材内部へのSiOガスの拡散性の善し悪しに大きく左右される訳であるが、これに止まらず、さらに黒鉛基材粒子内部へのSiの固溶拡散性の善し悪しによっても左右される。本発明者らは、この点を考慮し、Siの固溶拡散性を良好にするために適切なミクロポア(真密度)を調べるべく実験を行った結果、1.80Mg/m3 程度以下であれば有効であることを見い出した。しかしながら、炭素CからSiCへと反応するときに約17%の体積膨張が生ずるので、結局、原料としては、真密度が1.90(Mg/m3 )程度以下のものでも適用可能と言える。従って、当初の原料として非常にSiC化しやすいものだけを採択する場合にはヤシ殻炭や備長炭等が好適であるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0016】
ところで、非常にSiC化しやすい原料炭だけを使用しようとすると、入手できる原料炭の範囲が狭められ、その結果原料コストの上昇につながるというマイナス面が無視できなくなってくる。そこで、当初の原料中に、真密度が1.90Mg/m3 程度以上のSiC化しにくい原料炭を加えても、同様の効果が得られるようにするための対策について種々検討した結果、混合原料をまず高温で(好ましくは2000℃で)熱処理した後、一旦粉砕して混練りすることにより多様な原料炭が組織的に均一な状態となし、この混練り後の原料に対して引き続き後述の本発明に係る特徴ある粒度調整操作を施せばよいことが確認できた。
【0017】
上述の通り、原料中の灰分を1.5%程度以下にまで抑制しようとする場合には、熱処理温度を2000℃以上に設定する必要があるが、加熱時にフロン,塩素等のハロゲン系ガスを流す場合には、熱処理温度が1800〜2000℃でも灰分を1.5%程度にまで落とすことは可能である。但し、温度操作だけで不純物レベルを低下させる方が、コストの低減化という観点からは望ましい。また、熱処理を減圧下で行うことも可能であり、この場合は、不純物がより揮散しやすくなるので、次の工程である粉砕処理の開始を早められる利点がある。
【0018】
次に、上記の熱処理を終えた原料を粉砕処理した後、得られた粉砕品をさらに分級機にかけて、〜10μm程度の微粒,1〜100μm程度の中間粒,20〜500μm程度の粗粒の3種類に区分けする。次に、これらの3種類の粉砕品のうち粗粒だけもしくは中間粒だけ又は粗粒と中間粒との混合品を取り出し、そのいずれにおいても、物性として粒径が3〜100μm好ましくは5〜30μmの範囲内に収まるように粒度調整を行う。
【0019】
粒度調整済原料の粒径の下限を3μmとしたのは、分級機の性能を考慮したためであり、好ましくは製造コストの点から5μmとすべきである。上限を100μmとしたのは、CVR反応効率を考慮したためであり、好ましくは30μmとすべきである。なお、混合品の場合における粗粒と中間粒との比率(重量比)は、上記物性範囲を確保できる限り任意に設定することができる。
【0020】
上述のように、当初の黒鉛基材原料を、一旦原料中の不純物レベルを抑制した後、好ましくは灰分1.5%程度にまで少なくした後粉砕して、粒径が3〜100μmとなるように粒度調整された原料とすることにより、この粒度調整済原料に対し引き続き常法に従って混練り,900℃での焼成,2500℃での黒鉛化処理を順次行えば、黒鉛化終了後の基材として、すべて嵩密度が1.50Mg/m3 以下で平均ポアー半径が1.5μm以上且つ真密度が1.8Mg/m3 以下のものであって、しかもシルバースポット現象が全く発生していないものを得ることができる。
【0021】
従って、このような物性を有する黒鉛基材に対してCVR法を施すことにより、先の発明に係るSiC成形体(製品)の効率的な量産化が可能となり、製品SiC成形体のコスト低減化を図ることができる。さらには、不純物濃度(Fe,Al濃度)が少なくともFe:0.5ppm以下、Al:0.1ppm以下で灰分が10ppm以下であるSiC成形体、即ち極めて高純度が要求される半導体等の分野の素材として十分適用可能であるSiC成形体とすることができる。
【0022】
【実験例】
次に、実験例により本発明を更に詳細に説明する。
(実験例1〜8)
本発明の一つの要件となる原料の純度レベル上昇化手段の有意性を確認するための実験を行った。原料としてスリランカ産ヤシガラ炭(灰分4.0〜5.0%)を使用し、温度条件を変えてそれぞれ熱処理を行った後粉砕を行い、それぞれの粉砕品を常法に従って混練りし、次いで成形,900℃焼成,2500℃黒鉛化処理を行って黒鉛基材を得た。また、同一の原料を使用し、フロンガスを流しつつ温度条件を変えてそれぞれ熱処理を行った後粉砕を行い、それぞれの粉砕品に対して同様の一連の処理を施すことにより黒鉛基材を得た。
【0023】
得られた黒鉛基材について、シルバースポット発生の有無を調べ、外観で評価した。その結果については、熱処理温度及び熱処理後粉砕品の灰分と併せて表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0004111572
【0025】
表1から明らかなように、熱処理温度を2000℃以上にすると灰分が1.5%程度に低下し、シルバースポットの発生が無くなっていることが分かる。また、フロンガスを併用する場合は、熱処理温度が1800℃程度でも同様の効果が得られることが分かる。
【0026】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
原料としてスリランカ産ヤシガラ炭(灰分4.0〜5.0%)を使用し、まず2000℃で熱処理を行った後粉砕して平均粒径が12μmの粉砕品となし、この粉砕品を分級機にかけて、平均粒径3μmの微粒,平均粒径7μmの中間粒,平均粒径28μmの粗粒の3種類を、それぞれ重量比で61:28:11の割合で得た。さらに、粗粒と中間粒とを粗粒:中間粒が69:31(重量比)の割合で混合した粉砕品(平均粒径20μm)も用意した。これらのうち微粒を除く3種類の粉砕品のそれぞれについて、適量のコールタールピッチを加えて混練りし、引き続き常法に従って成形,900℃焼成,2500℃黒鉛化処理を行い、黒鉛基材を得た。
【0027】
得られた黒鉛基材から10×10×40(mm)の大きさの試験片を作製し、この試験片を1830℃,150Torrの下に12時間SiOガスと反応させてSiC成形体に転化させた。得られた黒鉛基材の物性、SiC成形体のCVR化率及び不純物濃度と、使用した黒鉛基材の原料となったヤシガラ炭粉砕品の特性(区分,平均粒径)をまとめて表2に示す。
【0028】
(実施例2)
実施例1と同じ原料ヤシガラ炭を使用し、まず2000℃で熱処理を行った後粉砕(1次粉砕)して平均粒径が12μmの粉砕品となし、この粉砕品に適量のコールタールピッチを加えて混練りした後、2次粉砕して平均粒径が30μmの粉砕品を得た。次に、この粉砕品を分級機にかけて、平均粒径3μmの微粒,平均粒径17μmの中間粒,平均粒径96μmの粗粒の3種類を、それぞれ重量比で59:38:3の割合で得た。さらに、粗粒と中間粒とを粗粒:中間粒が60:40(重量比)の割合で混合した粉砕品(平均粒径20μm)も用意した。これらのうち微粒を除く3種類の粉砕品のそれぞれについて、引き続き常法に従って成形,900℃焼成,2500℃黒鉛化処理を行い、黒鉛基材を得た。
【0029】
得られた黒鉛基材から実施例1と同様の試験片を作製し、同様のCVR反応によりSiC成形体に転化させた。得られた黒鉛基材の物性、SiC成形体のCVR化率及び不純物濃度と、使用した黒鉛基材の原料となったヤシガラ炭2次粉砕品の特性(区分,平均粒径)を表2に併せて示す。
【0030】
(比較例1)
原料としてピッチコークス(灰分0.3〜0.7%)を使用し、熱処理することなく粉砕(一次粉砕)して平均粒径が15μmの粉砕品を得た。この粉砕品に適量のコールタールピッチを加えて混練りした後、2次粉砕して平均粒径20μmの2次粉砕品を得た。この2次粉砕品を分級機にかけて平均粒径3μmの微粒,平均粒径21μm中間粒,平均粒径110μmの粗粒の3種類を、それぞれ重量比で49:50:1の割合で得た。さらに、粗粒と中間粒とを粗粒:中間粒が49:50(重量比)の割合で混合した粉砕品(平均粒径46μm)も用意した。これらのうち微粒を除く3種類の2次粉砕品のそれぞれについて、引き続き常法に従って成形,900℃焼成,2500℃黒鉛化処理を行い、黒鉛基材を得た。
【0031】
得られた黒鉛基材から実施例1と同様の試験片を作製し、同様のCVR反応によりSiC成形体に転化させた。得られた黒鉛基材の物性、SiC成形体のCVR化率及び不純物濃度と、使用した黒鉛基材の原料となったピッチコークス粉砕品の特性(粒径区分,平均粒径)をまとめて表2に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0004111572
【0033】
表2から明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1,実施例2ではいずれも、CVR用黒鉛基材(嵩密度1.50Mg/m3 以下、平均ポアー半径1.5μm以上及び真密度が1.8Mg/m3 以下の黒鉛基材)が確実に得られており、SiC成形体のSiC化率もほぼ100%であることが分かる。一方、本発明の要件を満たさない比較例1では、SiC成形体としてSiC化率が70%以下のものしか得られていないため、比較例1で得られた黒鉛化終了後の黒鉛基材は、CVR用黒鉛基材として全く適していないものであることが分かる。
【0034】
また、実施例1,実施例2ではいずれも、SiC成形体として、不純物濃度(Fe,Al濃度)が少なくともFe:0.5ppm以下、Al:0.1ppm以下で灰分が10ppm以下あるものが得られており、極めて高純度が要求される半導体分野向け素材として十分適用できるSiC成形体となっているのに対し、比較例1のSiC成形体では、純度レベルの点から、半導体向け素材には不適であることが分かる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1記載の発明の製造方法によれば、すべて嵩密度が1.30(Mg/m )以下、平均ポアー半径が1.5μm以上で且つ真密度が1.8Mg/m 以下のSiC成形体用黒鉛基材を確実に得ることができる。しかも、黒鉛基材原料の熱処理により原料中の不純物を効果的に除くことができ、この結果、シルバースポット現象の発生を有効に防止し、黒鉛基材の表面から中心に亘る全容積領域において偏ることなく上記の物性が均一に付与された黒鉛基材とすることができる。
【0036】
従って、このような黒鉛基材に対してCVR法を施すことにより、先の発明に係るSiC成形体(複雑な形状にも容易に適用可能でかつ純度の良いSiC成形体)の効率的な量産化が可能となり、製品SiC成形体のコスト低減化を図ることができ、またそのSiC成形体(製品)の純度レベルを著しく高めることができる。
【0037】
また、発明(請求項記載の発明)は、原料の粉砕を2段階で行う点に特徴があり、特に1次粉砕により多様な原料の使用を可能としたものである。従って、その分だけ原料コストを節約できるので、「黒鉛基材原料を粉砕した後混練し、次いで成形,焼成,黒鉛化の各処理を順次行なってSiC成形体用の黒鉛基材を製造する方法において、前記黒鉛基材原料を高温で熱処理した後粉砕し、得られた粉砕品を分級して、少なくとも粒径が3〜100μmとなるように粒度調整したものを混練処理する方法」に比べて黒鉛基材製造コストひいてはSiC成形体(製品)コストの一層の低減化を図ることができる。
【0038】
また、請求項記載の発明によれば、原料中の不純物レベルを確実に灰分1.5%以下に抑制してシルバースポットの発生を皆無にできるので、上記各効果を一層確実、顕著なものとすることができる。
【0039】
また、請求項記載の発明によれば、原料中の不純物が揮散しやすくなるので、それに続く一連の処理が早まり黒鉛基材の生産性が上がるので、その生産性の向上に応じた一層のコスト低減化が期待できる。
【0040】
さらに、上記黒鉛基材に対してCVR法を施すことにより、不純物濃度(Fe,Al濃度)が少なくともFe:0.5ppm以下、Al:0.1ppm以下で灰分が10ppm以下であるSiC成形体、即ち極めて高純度が要求される半導体等の分野の素材として十分適用可能なSiC成形体を提供することができる。

Claims (2)

  1. 黒鉛基材原料を粉砕した後混練し、次いで成形,焼成,黒鉛化の各処理を順次行なってβ−炭化ケイ素成形体用の黒鉛基材を製造する方法において、前記黒鉛基材原料を2000℃以上で熱処理した後1次粉砕し、さらに混練りした後2次粉砕し、次いで得られた2次粉砕品を分級して、平均粒径3μm以下の微粒を除去してSiC転化率を向上するように粒度調整を施したものを成形処理することを特徴とするβ−炭化ケイ素成形体用黒鉛基材の製造方法。
  2. 熱処理を減圧下で行うものである請求項1に記載のβ−炭化ケイ素成形体用黒鉛基材の製造方法。
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