JP4208218B2 - 高熱膨張係数を有する等方性黒鉛材の製造方法および該等方性黒鉛材からなる黒鉛製治具ならびに黒鉛製基材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高熱膨張係数を有する等方性黒鉛材の製造方法、および該等方性黒鉛材からなり、半導体製造、その他の分野において好適に使用し得る黒鉛製治具ならびにSiCなどのセラミックコーティングによる耐酸化性皮膜、耐食性皮膜を施すに適した黒鉛製基材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に実施されている等方性黒鉛材の工業的製造方法は、石油系または石炭系コークス粉末からなる骨材成分にピッチ系バインダー(結合剤)を配合して混練処理する混捏工程、混捏物を再粉砕した原料粉末をラバープレス(冷間静水圧プレス(CIP))により等方成形する成形工程、成形体を焼成炭化、黒鉛化する炭化黒鉛化工程からなる。使用されるコークスには、熱履歴によって生コークスとか焼コークスとがあり、生コークスは、原油精製または石炭乾留で得られる重質物(ボトムオイルまたはコールタール)を300〜550℃程度の温度で加熱して熱分解重合反応を行うことにより得ることができ、各種のコーキング法により製造され、か焼コークスは、生コークスをロータリーキルンなどを用いて、1000〜1500℃の温度に加熱か焼することにより製造されている。
【0003】
等方性黒鉛材は、摺動部材、放電加工用電極、原子炉用、半導体用など、多くの分野で使用されているが、このうち、半導体分野において使用される熱処理用のウエハボート、ライナーチューブ、プロセスチューブ、シリコンエピタキシャル成長用サセプタなどの治具は、耐酸化性の向上や吸着ガスの放出防止などを目的としてSiCコーティングが施されるが、基材となる黒鉛とSiCとの熱膨張係数が大きく異なると、加熱サイクルの間にコーティング(皮膜)がこわれ、保護皮膜として役割を果たさなくなるため、両者の熱膨張係数を合わせるのが好ましい。
【0004】
また、半導体のセラミックパッケージの位置決め、リードピン、リードフレームのろう付けなどに使用される等方性黒鉛材の治具においては、セラミック基板と黒鉛治具との熱膨張差に起因する寸法不良、とくにリードピン、リードフレームのピッチ間隔の不良を避けるために、黒鉛材の熱膨張係数をセラミックの熱膨張係数と同程度とすることが好ましいが、一般に、等方性黒鉛材の熱膨張率は必ずしも大きくないため、高熱膨張係数をそなえた等方性黒鉛材が望まれている。(特開昭63−310143号公報参照)
【0005】
前記等方性黒鉛材の工業的製造方法によれば、例えば、2.8〜7.9×10-6/Kの範囲の熱膨張係数をそなえた等方性黒鉛材が得られる(改訂 炭素材料入門、昭和59年炭素材料学会発行、第171頁)。高い熱膨張係数をそなえた等方性黒鉛材の製造方法として、例えば、特公昭60−5523号公報には、微晶質のピッチコークス、フェナンスレンの如きモザイク構造単位が十数ミクロン以下の等方質、微晶質構造をもつコークスを、市販の低膨張性のコークスと適宜混合して骨材とすることにより、各種の皮膜材料の熱膨張性と合致した等方性の黒鉛材を得る方法が開示され、具体例として、フェナンスレンコークスにコールタールピッチを加え、混捏して成形し、焼成後、2600℃の温度で黒鉛化することにより、熱膨張係数6.9×10-6/℃(350〜450℃)の等方性黒鉛材を得ることが示されている。
【0006】
また、生コークスから、平均粒径1〜20μm、軸比1.0〜1.3で、特定のトルエン不溶分、キノリン不溶分、揮発分を有するコークスを溶剤分別法により得、この特殊なコークスを等方成形した後、1000℃で焼成、2800℃で黒鉛化することによって、5.89〜6.28×10-6/℃の熱膨張係数を有する等方性黒鉛材を製造することも開示されている(特公平3−69845号公報)が、いずれも、原料として特殊な性状のコークスを選択使用するものであり、原料の調製が煩わしくコスト上昇をもたらすなどの難点がある。
【0007】
原料として市販の生コークスのように入手の容易な生コークスを使用する等方性黒鉛材の製造方法として、焼成に際し融解することなく焼結する生コークスの微粉砕物またはそれにバインダーピッチを配合したものを加圧成形し、成形体を450〜700℃の温度で一次焼成し、ついで加圧下でピッチ含浸し、さらに高温焼成処理する方法(特公昭57−25484号公報)も開示されており、この方法によれば、嵩密度が1.8を越え、強度特性に優れた高密度の等方性黒鉛材を得ることができるが、この方法は高強度を得ることを目的としてなされたものであり、熱膨張率については必ずしも十分高い値が得られず、焼成後に含浸−再焼成の処理が必要となるため、工程が複雑で熱エネルギーの消費も多くなるなどの問題がある。
【0008】
発明者らは、等方性黒鉛材製造における上記従来の問題点を解消し、特殊性状のコークスを使用することなく、通常の生コークスを用いて経済的にも有利な高熱膨張係数を有する等方性黒鉛材を得るために、通常の市販の生コークスあるいは生コークスを加熱か焼することにより製造されるか焼コークスを原料とし、とくに、これに配合する硬質ピッチの性状、タールとの組合わせ、混捏物の調整と得られる黒鉛材の熱膨張係数との関係について見直し再検討を加えた結果、モザイク状または針状の生コークスを使用し、特定された性状、とくに特定の軟化点を有する硬質ピッチを配合して、特定量のタールを媒体として混捏処理し、混捏物の成形、焼成、黒鉛化処理に先立って、混捏物を特定の温度、雰囲気で熱処理してタール中の揮発分を特定量以上除去し、混捏物を調整した場合、高熱膨張係数の等方性黒鉛材が得られることを見出した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その目的は、高い熱膨張係数を有し、高密度および高強度をそなえた等方性黒鉛材を、通常の生コークスを原料とすることによって経済的にも有利に製造する方法を提供することにある。本発明は、また、該等方性黒鉛材からなり、半導体用などに適した黒鉛治具およびSiCなどの被覆用基材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1による高熱膨張係数を有する等方性黒鉛材の製造方法は、炭素質粉末の骨材成分にピッチ系バインダーを配合、混練する混捏工程、混捏物を粉砕して得た粉末を等方成形する工程、成形体を焼成炭化および黒鉛化処理する炭化黒鉛化工程を含む等方性黒鉛材の製造方法において、混捏工程が、揮発分5〜15重量%、平均粒子径4〜20μmの生コークスと、固定炭素量70〜90重量%、揮発分10〜30重量%、平均粒子径20〜30μmで、軟化点が200℃以上の硬質ピッチを、100:40〜250の重量比率で配合し、前記生コークス100重量部に対して5〜60重量部のタールを加えて混捏する工程からなり、混捏工程後、混捏物を、不活性雰囲気中、300〜400℃の温度で熱処理して、前記タール中の揮発分の30重量%以上を除去し、ついで、混捏物を粉砕して空気中で130〜200℃の温度にさらし、揮発分を15〜25重量%に調整した後、10〜60μmに粉砕して粉末とし、その後、等方成形する工程、炭化黒鉛化工程を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項2による黒鉛製治具は、骨材成分として針状生コークスを用いる請求項1記載の方法により生成した等方性黒鉛材からなり、嵩比重1.8以上、熱膨張係数7.0×10−6/K以上、硬度(Hs)70以下、電気抵抗率の異方比1.03以下、X線回折により得られるd002面の半値幅が0.3〜0.5度の性状を有することを特徴とする。
【0014】
請求項3による黒鉛製基材は、骨材成分として針状生コークスを用いる請求項1記載の方法により生成した等方性黒鉛材からなり、嵩比重1.8以上、熱膨張係数7.0×10−6/K以上、硬度(Hs)70以下、電気抵抗率の異方比1.03以下、X線回折により得られるd002面の半値幅が0.3〜0.5度の性状を有することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の等方性黒鉛材の製造方法について説明する。
(骨材成分)
本発明において、炭素質粉末の骨材成分を構成する原料としては、石油系または石炭系の生コークスを使用する。モザイク状コークス、針状コークスのいずれも使用することができる。生コークスは、前記のように、原油精製または石炭乾留で得られる重質物(ボトムオイルまたはコールタール)を300〜550℃程度の温度で加熱して熱分解重合反応を行うことにより得られるもので、各種のコーキング法により製造されている。生コークスは、黒鉛材に等方性を発現させ、組織の均質性を付与するために、予め120〜150℃程度の温度に加熱、乾燥して含まれる水分を除去した後、粉砕、磨砕することにより、平均粒子径を4〜20μmに調整する。揮発分の調整はほとんど要しない。なお、揮発分の測定は、JIS M8812に従って行う。
【0016】
(バインダー)
骨材成分に配合するバインダーとなる硬質ピッチは、石炭の乾留により得られる硬、中、軟ピッチのうち、硬ピッチをさらに加熱処理することにより製造される。本発明においては、固定炭素量70〜90重量%、揮発分10〜30重量%、平均粒子径20〜30μmで、軟化点200℃以上の硬質ピッチを配合する。とくに、成形体に含まれる揮発分を少なくし、微細均質な組織性状を有する等方性黒鉛材を得るために軟化点の高い硬質ピッチを使用するのが好ましく、より好ましくは300℃以上、最も好ましくは320℃以上の軟化点を有する硬質ピッチを用いる。なお、固定炭素量、揮発分および軟化点の測定は、それぞれJISK2425、JIS M8812およびJIS K2425に従って行う。
【0017】
(生コークスと硬質ピッチの混合)
生コークスに対する硬質ピッチの配合比率は、重量比率で、生コークス100に対し硬質ピッチ40〜250とする。硬質ピッチの配合比率が40未満では、得られる等方性黒鉛材の比重、強度が低下し、硬質ピッチの配合比率が250を越えると、得られる等方性黒鉛材が発泡するなど組織の均質性が低下し、十分な強度が得られなくなる。生コークス100に対する硬質ピッチの好ましい配合比率は150〜180重量部である。
【0018】
(混捏)
配合された粉体を均一に分散させるため、好ましくは固定炭素量15重量%以下のタールを媒体として、ニーダー、ミキサーなどの装置で攪拌混合する。タールの添加量は、生コークス100重量部に対して5〜60重量部とするのが好ましい。5重量部未満では、タールが均一に粉体に行き渡らず混捏物の均一性が低下する。60重量部を越えると、分体に対して余剰のタール分が分離して、混捏物の均一性が低下する。さらに好ましいピッチの添加量は、生コークス100重量部に対して30〜40重量部である。
【0019】
(混捏物の調整)
(1)得られた混捏物を粉砕するに先立って、混捏物を、窒素ガス雰囲気などの不活性雰囲気中、300〜400℃の温度で熱処理し、前記タール中の揮発分の30重量%以上を除去する。揮発分を均等に除去し、硬質ピッチおよびタールの性状を調整するために、ブリケットマシーン、あるいは型込め成形、CIP成形などの手段で、混捏物を均等な寸法に形付けすることが望ましい。熱処理時間は、混捏物の形状にもよるが、0.5〜10時間とするのが好ましい。
【0020】
(2)熱処理後、混捏物を、必要に応じて、空気中で130〜200℃の温度にさらし、揮発分を15〜25重量%に調整する。
【0021】
(粉砕)
熱処理された混捏物を、平均粒子径10〜60μmに粉砕する。
【0022】
(成形、焼成、黒鉛化)
混捏物を粉砕することにより生成した粉末を、常法に従って、CIP(冷間静水圧)成形により等方成形した後、成形体を、例えば800〜1500℃の温度で焼成炭化し、例えば2500〜3000℃の温度で黒鉛化処理して等方性黒鉛材を得る。
【0023】
上記により製造された等方性黒鉛材のうち、骨材成分として針状生コークスと硬質ピッチを混捏し、混捏物の粉砕、成形、焼成炭化および黒鉛化することにより生成した等方性黒鉛材は、嵩比重1.8以上、熱膨張係数7.0×10-6/K以上、硬度(HS )70以下、電気抵抗率の異方比1.03以下、X線回折により得られるd002面の半値幅が0.3〜0.5度の性状を有し、高熱膨張係数と加工が容易な低い硬度をそなえており、とくに半導体製造用の治具、SiCコーティングなどのセラミックコーティング用基材として好適に使用される。X線回折により得られるd002面の半値幅が0.3度未満では、高熱膨張係数が得られず、0.5度を越えると、低硬度が得られず加工が困難となる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。この実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
塊状のモザイク状生コークス(三菱化学(株)製)を、乾燥炉を用いて120℃の温度に加熱、保持して水分を除去した後、粉砕機で、平均粒子径13μmに粉砕した。粉砕された前記生コークス(揮発分13.5重量%)10kgと硬質ピッチ(大阪化成(株)製TGP−2000、固定炭素量85.0重量%、揮発分14.5重量%、軟化点320℃、平均粒子径20μm)15kgとを配合し、これをタール3.7kgと共にミキサーに装入し1時間混捏した。
【0026】
得られた混捏物を、型込め成形により約3kgの直方体9個に成形し、これらの直方体を加熱炉に装入して、窒素ガスを流下しながら350℃の温度に5時間保持する熱処理を行った。熱処理後、室温まで冷却し、直方体を粉砕機で平均粒子径100μmに粉砕し、さらに、加熱炉中で空気雰囲気下で200℃に加熱、保持し、揮発分を18重量%に調整した。
【0027】
ついで、室温まで冷却し、粉砕機で平均粒子径25μmに粉砕し、粉砕された原料粉末をゴム型に装入して脱気処理した後、ゴム型を水を圧力媒体とするCIP成形機に装填し、98.1MPa(1000kg/cm3 )の圧力で、縦400mm、横400mm、厚さ100mmの成形体とした。
【0028】
成形体を、コークス粉が充填された焼成炉で900℃の温度に加熱して焼成した後、黒鉛化炉で2800℃の温度で熱処理を施し、等方性黒鉛材を得た。得られた等方性黒鉛材から、直径10mm、長さ100mmの試験材を採取し、以下の方法に従って、(1)嵩比重、(2)熱膨張係数、(3)曲げ強度、(4)電気抵抗率、(5)抵抗率の異方性、(6)X線回折により得られるd002面の半値幅、(7)組織観察を行った。結果を表1に示す。
【0029】
(1)嵩比重の測定:ノギスで寸法を計り、天秤で重量を測定して算出する。
(2) 熱膨張係数(CTE)の測定:温度範囲30〜900℃、標準試料を石英として測定する。
(3)曲げ強度の測定:JIS R7222に従って測定する。
(4)電気抵抗率の測定:JIS R7222に従って測定する。
(5)抵抗率の異方性の測定:抵抗率をJIS R7222に従って測定し、測定値から異方性を求める。
(6)d002面の半値幅の測定:日本学術振興会第117委員会作成の「人造黒鉛の格子定数および結晶子の大きさ測定法」により測定する。
(7)組織観察:顕微鏡(×200倍)により観察を行い、微細で均質な組織は良好とする。
【0030】
実施例2
コークスとして、針状生コークス(三菱化学(株)製)10kgを使用した以外は、実施例1と同様にして等方性黒鉛材を得た。
【0031】
実施例3
ピッチとして、硬質ピッチ(アドケムコ(株)製MCP−200、固定炭素量73.0重量%、揮発分26.5重量%、軟化点200℃、平均粒子径20μm)15kgを配合した以外は、実施例1と同様にして等方性黒鉛材を得た。
【0032】
実施例4
ピッチとして、硬質ピッチ(アドケムコ(株)製MCP−250、固定炭素量78.0重量%、揮発分21.5重量%、軟化点250℃、平均粒子径20μm)15kgを配合した以外は、実施例1と同様にして等方性黒鉛材を得た。
【0033】
実施例5
コークスとして、針状生コークス(三菱化学(株)製)10kgを使用し、ピッチとして、硬質ピッチ(アドケムコ(株)製MCP−250、固定炭素量78.0重量%、揮発分21.5重量%、軟化点250℃、平均粒子径20μm)15kgを配合した以外は、実施例1と同様にして等方性黒鉛材を得た。
【0034】
実施例6
コークスとして、針状生コークス(三菱化学(株)製)10kgを使用し、ピッチとして、硬質ピッチ(アドケムコ(株)製MCP−300、固定炭素量83.0重量%、揮発分16.5重量%、軟化点300℃、平均粒子径20μm)15kgを配合した以外は、実施例1と同様にして等方性黒鉛材を得た。
【0035】
比較例1
実施例1のモザイク状生コークス(三菱化学(株)製)を1200℃の温度で熱処理した後、粉砕機で平均粒子径13μmに粉砕し、か焼コークスを得た。このか焼コークス10kgを骨材成分とし、実施例1と同様に硬質ピッチを配合し、以下実施例1と同様にして、等方性黒鉛材を得た。
【0036】
比較例2
実施例2の針状生コークス(三菱化学(株)製)を1200℃の温度で熱処理した後、粉砕機で平均粒子径13μmに粉砕し、か焼コークスを得た。このか焼コークス10kgを骨材成分とし、実施例1と同様に硬質ピッチを配合し、以下実施例1と同様にして、等方性黒鉛材を得た。
【0037】
比較例3
硬質ピッチ(大阪化成(株)製TGP−2000、固定炭素量85.0重量%、揮発分14.5重量%、軟化点320℃、平均粒子径20μm)15kgとタール3.7kgをミキサーに装入して1時間混捏した。
【0038】
得られた混捏物を、型込め成形により約3kgの直方体9個に成形し、これらの直方体を加熱炉に装入して、窒素ガスを流下しながら350℃の温度に5時間保持する熱処理を行った。熱処理後、室温まで冷却し、直方体を粉砕機で平均粒子径100μmに粉砕し、さらに、加熱炉中で空気雰囲気下で200℃に加熱、保持し、揮発分を18重量%に調整した。
【0039】
ついで、室温まで冷却し、粉砕機で平均粒子径25μmに粉砕し、粉砕された原料粉末をゴム型に装入して脱気処理した後、ゴム型を水を圧力媒体とするCIP成形機に装填し、98.1MPa(1000kg/cm3 )の圧力で、縦400mm、横400mm、厚さ100mmの成形体とした。
【0040】
成形体を、コークス粉が充填された焼成炉で900℃の温度に加熱して焼成した後、黒鉛化炉で2800℃の温度で熱処理を施したところ、得られた黒鉛材には割れが生じており、試験材を採取することができなかった。
【0041】
比較例4
コークスとして、針状生コークス(三菱化学(株)製)10kgを使用し、ピッチとして、硬質ピッチ(大阪化成(株)製GPC−730、固定炭素量75.0重量%、揮発分24.5重量%、軟化点150℃、平均粒子径20μm)15kgを配合した以外は、実施例1と同様にして等方性黒鉛材を得た。
【0042】
比較例5
コークスとして、針状生コークス(三菱化学(株)製)10kgを使用し、ピッチとして、硬質ピッチ(アドケムコ(株)製ADP、固定炭素量58.0重量%、揮発分41.5重量%、軟化点100℃、平均粒子径20μm)15kgを配合した以外は、実施例1と同様にして等方性黒鉛材を得た。
【0043】
比較例6
コークスとして、モザイク状生コークス(三菱化学(株)製)10kgを使用し、ピッチとして、硬質ピッチ(大阪化成(株)製GPC−730、固定炭素量75.0重量%、揮発分24.5重量%、軟化点150℃、平均粒子径20μm)15kgを配合した以外は、実施例1と同様にして等方性黒鉛材を得た。
【0044】
実施例2〜6、比較例1〜2、4〜6で得られた等方性黒鉛材から実施例1と同様の試験材を採取し、実施例1と同様の方法で、嵩比重、熱膨張係数、曲げ強度、電気抵抗率、抵抗率の異方性、X線回折により得られるd002面の半値幅、組織観察を行った。実施例2〜6についての測定、観察結果を表1に示し、比較例についての測定、観察結果を表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1にみられるように、本発明に従う実施例1〜6の試験材はいずれも、緻密で均質な性状を示すと共に、7.0以上の高熱膨張係数をそなえている。原料として針状生コークスを使用した実施例2、5〜6の試験材は、高い熱膨張係数を有し、且つ硬度が低く加工性に優れているから、とくに半導体製造用の治具やセラミックコーティンング用基材として好適である。
【0048】
一方、表2に示すように、原料としてか焼コークスを使用した比較例1〜2の試験材は熱膨張係数が低く、硬質ピッチとして軟化点の低いものを使用した比較例4〜5の試験材は、いずれも組織が粗く、強度、硬度も低くなっており、比較例6の試験材にはひび割れが生じていた。
【0049】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、緻密で強度が高く、高熱膨張係数を有し、経済的にも有利な等方性黒鉛材が製造される。原料として針状生コークスを使用し、本発明に従って製造された等方性黒鉛材材は、高い熱膨張係数を有し、且つ硬度が低いため加工性に優れ、微細な加工も容易に行うことができるから、とくに、ウエハボート、ライナーチューブ、プロセスチューブ、サセプタなどの半導体製造用の治具やセラミックコーティンング用基材として好適である。
Claims (3)
- 炭素質粉末の骨材成分にピッチ系バインダーを配合、混練する混捏工程、混捏物を粉砕して得た粉末を等方成形する工程、成形体を焼成炭化および黒鉛化処理する炭化黒鉛化工程を含む等方性黒鉛材の製造方法において、混捏工程が、揮発分5〜15重量%、平均粒子径4〜20μmの生コークスと、固定炭素量70〜90重量%、揮発分10〜30重量%、平均粒子径20〜30μmで、軟化点が200℃以上の硬質ピッチを、100:40〜250の重量比率で配合し、前記生コークス100重量部に対して5〜60重量部のタールを加えて混捏する工程からなり、混捏工程後、混捏物を、不活性雰囲気中、300〜400℃の温度で熱処理して、前記タール中の揮発分の30重量%以上を除去し、ついで、混捏物を粉砕して空気中で130〜200℃の温度にさらし、揮発分を15〜25重量%に調整した後、10〜60μmに粉砕して粉末とし、その後、等方成形する工程、炭化黒鉛化工程を行うことを特徴とする高熱膨張係数を有する等方性黒鉛材の製造方法。
- 骨材成分として針状生コークスを用いる請求項1記載の方法により生成した等方性黒鉛材からなり、嵩比重1.8以上、熱膨張係数7.0×10−6/K以上、硬度(Hs)70以下、電気抵抗率の異方比1.03以下、X線回折により得られるd002面の半値幅が0.3〜0.5度の性状を有することを特徴とする黒鉛製治具。
- 骨材成分として針状生コークスを用いる請求項1記載の方法により生成した等方性黒鉛材からなり、嵩比重1.8以上、熱膨張係数7.0×10−6/K以上、硬度(Hs)70以下、電気抵抗率の異方比1.03以下、X線回折により得られるd002面の半値幅が0.3〜0.5度の性状を有することを特徴とする黒鉛製基材。
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