JP4109891B2 - 能動制振装置、露光装置及びデバイス製造方法 - Google Patents

能動制振装置、露光装置及びデバイス製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板を露光する露光装置等に用いられる能動制振装置、該能動制振装置を有する露光装置、および該露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体露光装置では、除振装置上にXYステージが搭載されている。この除振装置は、空気ばね、コイルばね、あるいは防振ゴムなどの振動吸収手段により振動を減衰させるものや、ボイスコイルモータ等のアクチュエータを駆動して能動的に除振する方式のものがある。
【0003】
しかし、上述の如き振動吸収手段を備えた除振装置においては、床から伝播する振動についてはある程度、振動を減衰できても、装置上に搭載されているXYステージ自身の駆動により発生する振動を有効に減衰できないという問題がある。ステージ自身が高速移動、急激な加減速により生じる駆動反力は除振装置に伝播し、除振装置を励振することとなるため、この振動はXYステージの位置決め性能を著しく低下させる原因となっている。
【0004】
更に、外部から加えられた加振力を受動的に除振する上述の振動吸収手段においては、床から伝播する振動の絶縁(除振)とXYステージ自身の駆動に起因する振動の抑制(制振)性能とをバランスよく解決することが求められる。
【0005】
近年では、ステージの駆動反力が除振台を強制振動させてしまうことを防ぐために、ステージの駆動方向と反対方向にカウンターマスを駆動することによって駆動反力と荷重の移動による効果を相殺して除振台に振動を伝えない、能動制振装置が提案され、除振と制振のトレードオフの解決が図られている。
【0006】
従来における能動制振装置の構成例を図1に示す。この能動制振装置は空気バネ式支持脚(1、8)の制御部(30〜41)と、ステージ16の制御部(18〜22)と、カウンターマス部の駆動制御部(25〜29)との3つの制御部がそれぞれ独立に制御則を実行する構成となっている(すなわち、制御ループがそれぞれの制御部で閉じた構成となっている)。以下、説明の便宜上、ステージ16の駆動方向をX軸とし、その鉛直方向をZ軸、除振台15の重心を通りステージ16の動作方向に対して垂直な軸をy軸、そしてy軸回りの回転軸をθy軸と定義する。
【0007】
ステージ16及びカウンターマス部23を搭載する除振台15は空気バネ式支持脚(1、8)により支持されている。この空気バネ式支持脚は、空気バネ(3,10)、与圧機械バネ(5,12)、粘性減衰を与える粘性要素(6、13)を有し、床からの振動を除振する。サーボバルブ(2,9)は、空気バネ(3,10)に対して動作流体である空気の給排気を制御する。空気バネの挙動は位置センサ(4,11)によりセンシングされ、除振台15の位置変位が計測される。位置センサ4および11の検出情報はそれぞれ変位増幅器30および31に入力され、変位増幅器(30、31)から変位分解器32へ入力される。変位分解器32は各空気バネ(3、10)の変位と回転(傾斜角)を要素とする2×2の行列演算によって、鉛直方向(Z方向)の変位とy軸回りの回転変位(θy)の情報とに分解される。その結果はPI補償器(33、34)に入力される偏差信号を演算するための負帰還情報となる。
【0008】
次に、加速度センサ(7、14)で測定された除振台の加速度出力は、それぞれ所定の適切なゲインと時定数を持つフィルタ35および36を通って加速度分解器37へ入力される。加速度分解器37は、加速度センサ(7、14)からの2つの入力情報によって、鉛直方向(Z方向)の加速度とy軸回りの回転方向(θy方向)の角加速度成分に分解する。この結果は推力分配器38に入力される偏差信号を演算するための負帰還情報となる。
目標位置設定器41は除振台の鉛直方向の変位と回転方向の変位の目標位置の設定を行ない、設定された目標値と、変位分解器32の出力信号の偏差信号がPI補償器(33、34)に入力される。PI補償器(33,34)の出力信号と、加速度分解器37の出力信号と、の偏差信号は推力分解器38に入力される。
【0009】
推力分配器38は鉛直方向(Z方向)とy軸まわりの回転方向(θy)の空気バネを制御するための指令値を空気バネ3および10の駆動指令値として分配する。分配された駆動指令値はそれぞれアンプ39および40でサーボバルブ2および9の駆動電流に変換され、サーボバルブ2および9の弁開閉によって空気バネ3および10内の圧力が調整されて除振台15は目標位置設定器41で設定された所望の位置に定常偏差なく保持可能となる。
【0010】
ここで、PI補償器33は鉛直方向(Z軸方向)の変位の制御補償器、PI補償器34はy軸まわりの回転(θy)変位の制御補償器としてそれぞれ動作する(PI補償器の「P」要素は制御量を比例演算し、「I」要素は制御量に対して積分演算を施す補償を行なうものとする。)。以上が、除振台15を支持する空気バネ式支持脚(1、8)の制御の内容である。
【0011】
また、除振台15上に設けられたステージ16の水平方向の変位を計測する位置センサ17がセンシングする位置情報は変位増幅器18に入力される。変位増幅器18の出力信号と、目標速度生成器21が出力する速度情報を積分し、ステージ16の目標位置情報を生成する積分器22の出力信号と、の偏差信号がPID補償器19に入力され、アンプ20により増幅された制御量がステージ16に入力される。
【0012】
ここで、PID補償器19における「D」要素は微分演算を施す補償をする。ここで、ステージ16の目標位置指令は、目標速度生成器21が生成した目標速度を積分器22で積分することによって求めている。これが、ステージ16に対する制御の内容である。
【0013】
更に、除振台15上に設けられたカウンターマス23の水平方向の変位を計測する位置センサ24がセンシングする位置情報は変位増幅器25に入力される。この変位増幅器25の出力信号と、目標速度生成器28が出力する速度情報を積分し、カウンターマス23の目標位置情報を生成する積分器29の出力信号と、の偏差信号がPID補償器26に入力され、アンプ27により増幅された制御量がカウンターマス23に入力される。これが、カウンターマス23に対する駆動制御の内容である。
【0014】
図2(b)、(e)はステージ16と、カウンターマス23の駆動に対して目標速度生成器21および28が生成する目標速度の分布を時間を横軸として示す図である。ここで示される速度パターンは加速領域、定速領域、減速領域からなり、台形速度パターンとして知られている。
【0015】
図2(a),(d)はステージ16と、カウンターマス23の駆動に対する目標速度の微分値である目標加速度の分布を示す図である。速度パターンを示す図2(b),(e)における加速領域と減速領域に対する領域では加速度の方向が反転する。また、定速走行中は加速度は0となる。
【0016】
図2(c),(f)はステージ16と、カウンターマス23の駆動に対する目標速度の積分値である目標位置の分布を示す図である。位置制御されたステージ、およびカウンターマスは目標位置(破線で示す位置)に漸近し、位置決めされる。この目標位置までの移動量は、図2(b)、(e)で示す速度パターンの面積に一致する。
【0017】
ステージ16の加速、減速時に生じる駆動反力は、ステージ16と逆方向にカウンターマス23を駆動してステージ16が動いた時に除振台15に与える駆動反力と荷重移動によるモーメント変化を打ち消すことにより相殺することができる。その結果、ステージ16の駆動に起因して発生する駆動反力は、除振台15伝播することを防止することができる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ステージ16、カウンターマス23に対する初期設定、制御パラメータの更新設定等、初期化を行なう場合には、ステージ16とカウンターマス23を独立させて駆動させる必要があるが、ステージ、カウンターマスを独立して駆動するとその際の駆動反力や荷重移動によるモーメントは、相殺するべき反力、モーメントが存在しないため、発生した駆動反力等がそのまま除振台に伝播して除振台の外力として作用することとなる。そして、ステージやカウンターマスを単独に高速で動かすと、駆動反力や荷重移動によるモーメントの伝播を受けた除振台が励振され、除振台の許容駆動範囲を超えてしまうことも起こりうる。
【0019】
このような事態を防ぐためにステージやカウンターマスを低速で駆動させて設定を行なうことは可能であるが、この場合、ステージ、カウンターマスの駆動制御帯域を網羅するための設定が十分に行なえない場合も生じ、能動制振装置としての性能を制限することとなる。更には、半導体露光装置において、能動制振装置を適用してXYステージの除振を行なう場合には、上述のような初期設定等の設定における影響から結果として装置のスループットを下げてしまうことになる。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題の解決を図るため、制振性能の優れた能動制振装置、およびその装置を適用した露光装置を提供することを目的とするものである。
【0021】
すなわち、除振台上に搭載されたステージ及びカウンターマスのうち少なくとも一方の駆動により振動する該除振台を制振する能動制振装置は、
前記除振台を支持する支持脚と、
前記支持脚に含まれる駆動部を制御する制御部と、
前記ステージおよび前記カウンターマスのうち一方が他方に対し独立に駆動制御される場合の前記制御部の制御モードを設定する設定手段と、
前記設定手段により前記制御モードが設定されたか否かに応じ、前記一方を駆動制御するための制御目標値が前記制御部に入力される状態と該制御目標値が前記制御部に入力されない状態とを切替える切替手段と、
を備え
前記制御部は、前記一方を駆動制御するための制御目標値が前記制御部に入力される状態において、前記支持脚に含まれるセンサにより計測された前記除振台の変位の情報と前記制御目標値とに基づいて前記駆動部を制御する、ことを特徴とする。
【0022】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記切替手段は、前記ステージが前記カウンターマスとは独立に駆動制御される場合の前記制御部の制御モードが前記設定手段により設定された場合には、該ステージを駆動するための制御目標値が前記制御部に入力される状態に切替えることを特徴とする。
【0023】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記切替手段は、前記カウンターマスが前記ステージとは独立に駆動制御される場合の前記制御部の制御モードが前記設定手段により設定された場合には、該カウンターマスを駆動するための制御目標値が前記制御部に入力される状態に切替えることを特徴とする。
【0024】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記切替手段は、前記ステージおよび前記カウンターマスがそれぞれ互いに独立に駆動制御される場合の前記制御部の制御モードが前記設定手段により設定された場合には、該ステージを駆動するための制御目標値および該カウンターマスを駆動するための制御目標値がそれぞれ前記制御部に入力される状態に切替えることを特徴とする。
【0025】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記切替手段は、該一方が該他方に対し独立に駆動される場合の前記制御部の制御モードが前記設定手段により設定されなくなった場合には、該ステージを駆動するための制御目標値および前記カウンターマスを駆動するための制御目標値がいずれも前記制御部に入力されない状態に切替えることを特徴とする。
【0028】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記制御部は、前記支持脚に含まれるセンサにより計測された前記除振台の変位の情報と前記ステージを駆動するための制御目標値と前記カウンターマスを駆動するための制御目標値とに基づき、前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0029】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記制御部は、前記制御目標値が入力される、周波数特性を有するフィルタを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記制御部は、前記一方の並進運動に関する制御目標値に基づき前記除振台の回転方向の制振行うことを特徴とする。
【0031】
また、本発明にかかる露光装置は、ステージと、カウンターマスと、前記ステージと前記カウンターマスとを搭載する除振台とを有し、該除振台を制振しながら基板を露光する露光装置であって、
前記除振台を制振する上記の能動制振装置を有する、ことを特徴とする。
【0032】
また、本発明にかかるデバイス製造方法は、
基板に感光剤を塗布する工程と、
前記基板に塗布された感光剤を上記の露光装置によって露光する工程と、
前記露光装置によって露光された感光剤を現像する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0034】
<第1実施形態>
図3は、本発明にかかる第1実施形態に係る能動制振装置の構成を示すブロック図である。先に説明した能動制振装置(図1)と同一の要素には同一の参照番号を付している。
【0035】
図4は、能動制振装置における制御モードの設定を説明するフローチャートである。駆動すべき対象(ステージとカウンターマス、あるいはこれらの単独の駆動)を設定して、能動制振装置が行なう制御則を決定する。除振台15上のステージ16を駆動する場合(S401−Yes)、次にカウンターマス23をステージ16と共に駆動させるか否かを判断する(S402)。カウンターマス23を駆動させない場合(S402−No)、処理をステップS408に進め、制御モードを「ステージ単独駆動」に設定する。そして、図3に示すスイッチ46をオン(ON)、スイッチ47(OFF)に制御する(S409)。このスイッチ46、47については後に説明する。
【0036】
ステップS402の判断で、カウンターマス23もステージ16と共に駆動させる場合(S402−Yes)、その駆動がステージ16の駆動により発生した駆動反力等を相殺するための制御を実行する場合(以下、これを「連動」という。)は(S403−Yes)、処理をステップS404に進め、制御モードを「連動」に設定する。そして、この場合は図3のスイッチ46をオフ(OFF)、スイッチ47もオフ(OFF)に制御する(S405)。このとき、制御モード設定器300(図3)はスイッチ301を制御して、オン(ON)状態として、ステージ16を駆動するための制御信号(目標速度を含む。)をカウンターマス23を駆動するための目標速度生成器28に入力する。
【0037】
ステップS403の判断で、カウンターマス23の駆動をステージの駆動に連動させないで、別個の制御指令によりそれぞれを駆動させる場合は「独立の駆動」に設定する(S406)。そして、この場合は図3のブロック線図でスイッチ46をオン(ON)、スイッチ47もオン(ON)に設定する(S407)。また、このとき、制御モード設定器300はスイッチ301(図3)をオフ(OFF)として、ステージ16に関する目標速度がカウンターマス23側の制御系に入力されないようにする。
【0038】
ステップS401の判断で、ステージを駆動させない場合(S401−No)に、カウンターマス単独で駆動する場合は(S410−Yes)、制御モードを「カウンターマス単独」に設定し(S411)、図3のスイッチ46をオフ(OFF)、スイッチ47をオン(ON)に制御する(S412)。
【0039】
ステップS410の判断で、カウンターマス23も駆動させない場合は(S410−No)、処理を終了する。
【0040】
以上のように、能動制振装置は、制御対象となるステージ16および/またはカウンターマス23の駆動に応じて4つの制御モードを選択的に設定し、制御ループの構成を切替えることができる。この制御モードの設定を実行するのは図3に示す制御モード設定器44、45、300であり、これらの全体的な制御を司るのは不図示のCPUである。図4の処理により設定された制御モードにより、スイッチ46、47、301はそれぞれオン/オフが切替えられる。図3はそれぞれのスイッチ46,47、301がオフ(OFF)の状態を示し、この状態では、ステージ16、カウンターマス23に関する制御信号は何ら空気バネの制御系に反映されない。また、ステージ16と、カウンターマス23との間の制御信号の授受も行なわれない状態である。
【0041】
スイッチがオン(ON)に制御されると、ステージ16、カウンターマス23を駆動するための目標速度生成器21、28で生成された目標速度が、フィルタ42、43を介して空気バネ支持脚の制御系の加算点A、Bにフィードフォワード入力される。
【0042】
また、目標速度生成器21が生成した制御信号は、カウンターマス23を駆動するための目標速度生成器28に入力される。
【0043】
上述のスイッチは、機械的なスイッチに限るものではなく、CPUの制御のもと、ソフトウエア上で信号の授受を切替えるものでもよい。
【0044】
次に、設定した制御モードに関して、制御の内容を説明する。
【0045】
<ステージとカウンターマスの連動モード(S404)>
上述のフローチャートの処理により設定された制御モードにより、各スイッチの設定が制御され、このスイッチの設定で能動制振装置の制御ループが制御モードに応じて組み替えられる。
【0046】
図5Aは連動モードが設定(S404)された場合の制御ループの概略的な接続関係を示す制御ブロック図である。図3の制御モード設定器300がスイッチ301を制御して、ステージ目標速度生成器21で生成された目標速度はカウンターマスに関する目標速度生成器28に入力される。
【0047】
この目標速度の入力により、ステージ16が駆動して発生する駆動反力を相殺する力を生成する動きを実現させる目標値が目標速度生成器28で生成され、カウンターマス23に入力される。
【0048】
駆動反力の相殺は、例えば、ステージ16で推力Fなる力が除振台15に伝達される場合、カウンターマス23の駆動で相殺するべき力は(−F)となり、両者の合力はゼロとなる。このことは、並進方向の力ばかりでなく、回転方向のモーメントに関しても同様であり、モーメントの総和がゼロとなるように、カウンターマス側の制御ループは機能する。加算点504で、ステージ側とカウンターマス側の状態量が重ね合わせられる。連動により駆動反力が完全に相殺された場合には、残留振動の影響などを受けることなく、ステージ目標位置に対して整定させることが可能となる。
【0049】
連動の制御モードでは、スイッチ46,47はオフ状態であるので、空気バネを制御するための制御ループには、ステージ側、カウンターマス側の制御指令は入力されず、空気バネ目標位置設定器41は、ステージ及びカウンターマスとは独立の制御則(制御ループ)を実行して空気バネ3(10)を制御する。
【0050】
<ステージ単独モード(S408)>
図5Bはステージ16を単独に駆動する制御モードが設定(S408)された場合の制御ループの概略的な接続関係を示す制御ブロック図である。図3の制御モード設定器300がスイッチ301を制御して、オフ状態としてカウンターマス23側にステージの目標速度が入力されないように制御ループを分離する。
【0051】
また、制御モード設定器44はスイッチ46を制御してオン状態として、目標速度生成器21で生成された目標値を空気バネの制御系に入力する。空気バネ3(10)の制御系は空気バネに対する目標位置設定器41とセンサ4(11)、推力分配器38とによりループが構成される。
【0052】
このとき、目標速度生成器21が生成する目標速度はステージの制御ループを構成する積分器22に入力される一方で、フィルタ42にも入力される。このフィルタ42は図6に示すように所定の周波数特性を有しており、このフィルタがかけられたステージの目標速度の情報は、モード設定器44、スイッチ46により空気バネ式支持脚(1、8)の制御部に入力される(506)。
【0053】
図6はフィルタ42(43)の周波数特性を示す図である。カットオフ周波数をfHとするローパスフィルタであり、生成された目標速度の高周波成分はこのフィルタを通ることによりカットされるため、ステージ16やカウンターマス23の目標速度が不連続に変化した場合でも、除振台の空気バネに急激な入力の変化が加わるのを防ぐことができる。本実施形態では、ステージ側の目標速度に対するフィルタと、カウンターマス側の目標速度に対するフィルタと、2つのフィルタ42、43のカットオフ周波数を等しい値にしているが、異なるカットオフ周波数としても、本発明の趣旨は限定されるものではない。
【0054】
空気バネの平衡状態において、サーボバルブの入力電流をI、空気バネの圧力Pを出力とした伝達関数は(1)式で与えられる。
【0055】
【数1】
Figure 0004109891
【0056】
ただし、Gqはサーボバルブの流量ゲイン
kは空気の比熱比
P0は平衡状態における空気バネ圧力
V0は平衡状態における空気バネ容積
sはラプラス演算子
という積分特性で近似できる。
【0057】
したがって、除振台15のy軸回り(θy軸)の回転変位制御系にフィードフォワード入力されるステージの目標速度は(1)式の空気バネの積分特性により積分されることになり、目標速度をフィードフォワードすることはステージ16(あるいはカウンターマス23)の位置に比例した回転モーメントを除振台15に与えることと等価となる。
【0058】
この目標速度のフィードフォワード入力により、ステージ16(あるいはカウンターマス23)の移動によって発生する回転モーメントを打ち消すことができ、除振台15の揺れを効果的に抑制することができる。
【0059】
すなわち、ステージ16を単独で駆動させた場合でも、ステージの駆動制御の情報が空気バネの制御に入力され、その入力を加味して空気バネの出力を制御することが可能となる。従って、ステージ単独駆動における除振台の振動は空気バネの制御と協調して制振することが可能となる。
【0060】
<カウンターマス単独モード(S411)
図5Cはカウンターマス23を単独に駆動する制御モードが設定(S411)された場合の制御ループの概略的な接続関係を示す制御ブロック図である。図3の制御モード設定器300はスイッチ301を制御して、オフ状態となっている。従って、カウンターマス23は目標速度生成器28の生成した目標値に従って駆動する。
【0061】
制御モード設定器45はスイッチ47を制御してオン状態として、目標速度生成器28で生成された目標値を空気バネの制御系に入力する。空気バネ3(10)の制御系は空気バネに対する目標位置設定器41とセンサ4(11)、推力分配器38とによりループが構成される。
【0062】
このとき、目標速度生成器28が生成する目標速度はステージの制御ループを構成する積分器29に入力される一方で、フィルタ43にも入力される。このフィルタ43は先に説明したとおり図6に示すように所定の周波数特性を有しており、このフィルタがかけられたカウンターマスの目標速度の情報は、モード設定器45、スイッチ47により空気バネ式支持脚(1、8)の制御部に入力される(507)。
【0063】
フィルタ43は図6に示すように、カットオフ周波数fHのローパスフィルタであるが、このカットオフ周波数は、フィルタ42と異なる周波数を設定してもよく、共通の周波数を設定してもよい。
【0064】
空気バネの伝達関数は先に説明した(1)式のように、積分特性を有するので、除振台15のy軸回り(θy軸)の回転変位制御系にフィードフォワード入力されるカウンターマスの目標速度は(1)式の空気バネの積分特性により積分されることになり、目標速度をフィードフォワードすることはカウンターマス23の位置に比例した回転モーメントを除振台15に与えることと等価となる。
【0065】
この目標速度のフィードフォワード入力により、カウンターマス23の移動によって発生する回転モーメントを打ち消すことができ、除振台15の揺れを効果的に抑制することができる。
【0066】
従って、カウンターマスを独立に駆動した場合でも空気バネの制御と協調して除振台を制振することが可能となる。
【0067】
<ステージ、カウンターマスを独立して駆動するモード(S406)>
図5Dはステージ16とカウンターマス23を独立に駆動する制御モードが設定(S406)された場合の制御ループの概略的な接続関係を示す制御ブロック図である。この場合、図3の制御モード設定器300はスイッチ301を制御して、オフ状態としてカウンターマス23側にステージの目標速度が入力されないように制御ループを分離する。
【0068】
また、制御モード設定器44はスイッチ46を制御してオン状態として、目標速度生成器21で生成された目標値を空気バネの制御系に入力する。空気バネ3の制御系は空気バネに対する目標位置設定器41とセンサ4(11)、推力分配器38とによりループが構成される。
【0069】
また、制御モード設定器45はスイッチ47を制御してオン状態として、目標速度生成器28で生成された目標値を空気バネの制御系に入力する。空気バネ3(10)の制御系は空気バネに対する目標位置設定器41とセンサ4(11)、推力分配器38とによりループが構成される。
【0070】
ステージの目標速度の情報は、モード設定器44、スイッチ46により空気バネ式支持脚(1、8)の制御部に入力される(506)。カウンターマスの目標速度の情報は、モード設定器45、スイッチ47により空気バネ式支持脚(1、8)の制御部に入力される(507)。
【0071】
目標速度のフィードフォワード入力により、ステージ16及びカウンターマス23の移動によって発生する回転モーメントの影響を空気バネの制御系に取り込み、その入力を加味して空気バネの出力を制御することで回転モーメントの影響を打ち消すことができ、除振台15の揺れを効果的に抑制することができる。
【0072】
従って、ステージ及びカウンターマスが独立に駆動した場合でも空気バネの制御と協調して除振台を制振することが可能となる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態にかかる能動制振装置によれば、制御対象となるステージ、カウンターマスの制御目標値を除振台の制御部へ、制御対象に応じて切り替え入力することにより、ステージ、カウンターマスを単独もしくは独立に駆動した場合に生じる励振の影響を反映した制振が可能となる。
【0074】
<第2実施形態>
空気バネ制御系は(1)式の積分特性を有する伝達関数として与えられるが、一次遅れ系で近似する制御系に対しても、図3と同じ構成の能動制振装置に対し、フィルタ42および43の周波数特性を図7に示すように与えると、周波数fL以下の領域で積分特性をその伝達関数に与えることができる。すなわち、フィードフォワード入力される制御目標値により、空気バネ制御部に積分特性を反映させることが可能である。この場合、図7の周波数fLの値は、一次遅れ系の時定数の逆数値と等しくなるように設定すればよい。
【0075】
図7のような周波数特性を有するフィルタを用いることによって、例えば、空気バネ制御系におけるサーボバルブ(2、9)の伝達関数が一次遅れ系で近似される特性を持つ場合にも、積分要素の特性を制御系に反映させることが可能となり、上述の制御モードにおける、ステージ単独、カウンターマス単独、そして、ステージ、カウンターマスをそれぞれ独立に駆動させるモードに対応して、除振台の揺れを制振することが可能となる。
【0076】
更に、第1および第2実施形態では、除振台15を支える空気バネ支持脚の数を鉛直方向に2つとしたが、これは3つ以上でも構わない。空気バネ支持脚が鉛直方向に3つを有する構成の場合には、除振台の位置制御系はz軸並進制御系、X軸回りの回転制御系、y軸回りの回転制御系、の3つの制御系を有する構成となる。この場合、変位分解器、加速度分解器、推力分配器ではそれぞれ3行3列の行列計算を行なうことで、上述の設定モードに応じた制御は同様に可能である。
【0077】
また、除振台を支持する空気バネは鉛直方向だけでなく、水平方向にも除振台15を駆動するように取り付けられていても構わない。水平方向に空気バネを設けることにより、水平方向の除振台の揺れを抑えることが可能となる。
【0078】
また、水平方向に除振台15を駆動させるために電磁アクチュエータが更に取り付けられていても構わない。水平方向(x軸方向)に駆動する電磁アクチュエータを設けることにより、ステージ16やカウンターマス23が独立に動作する場合に生ずる駆動反力を、電磁アクチュエータの駆動により吸収し、上述の空気バネ制御系と協調して振動を相殺することも可能である。
【0079】
また、ステージやカウンターマスの動作方向として、XYステージのような平面内を2次元に動作するものでもよく、空気バネ支持脚が鉛直方向を含めて3つある(図3のy軸方向に更に空気バネ支持脚を1つ設ける)場合には、XYステージおよびカウンターマスのx軸方向の目標速度を空気バネ制御系のθy軸まわりの制御ループに、XYステージおよびカウンターマスのy軸方向の目標速度を空気バネ制御系のx軸まわりの回転変位(θx軸)を制御する制御ループにそれぞれフィードフォワード入力すればよい。これによって、XYステージおよびカウンターマスが独立に動作する場合でも、上述の制御モードで説明したように除振台の振動の制振は可能である。
【0080】
<第3実施形態>
図8は、上記の駆動装置を基板ステージとして組み込んだ露光装置の概略構成を示す図である。この露光装置は、原版ステージ220に保持された原版(レチクル、マスク)221を照明光学系210により照明し、原版221のパターンを投影光学系230を介して基板ステージ(ウエハステージ)240上の基板(ウエハ)241に投影し基板241を露光する。ここで、基板ステージ240は、図3に示す能動制振装置が適用され、ステージの制御系が構成されている。
【0081】
このように本発明にかかる能動制振装置を組み込んだ露光装置によれば、第1に、ステージの移動に伴う振動を低減することで、オーバーレイ精度、線幅精度等の精度やスループット等を向上させることができる。
【0082】
また、ステージの初期設定等を効率よく行なうことが可能となり、露光装置のスループットを向上させることが可能となる。
【0083】
次に、上記の露光装置を利用した半導体デバイスの製造プロセスを説明する。図9は半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行なう。ステップ2(マスク作製)では設計した回路パターンに基づいてマスクを作製する。
【0084】
一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記のマスクとウエハを用いて、上記の露光装置によりリソグラフィ技術を利用してウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組立て工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行なう。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これを出荷(ステップ7)する。
【0085】
図10は、上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す図である。ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を成膜する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では上記の露光装置によって回路パターンをウエハに転写する。ステップ17(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行なうことによって、ウエハ上に多重に回路パターンを形成する。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、制振性能の優れた能動制振装置、およびその装置を適用した露光装置を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】従来における能動制振装置の構成例を示す図である。
【図2】ステージおよびカウンターマスの目標値、速度パターン、加減速パターンを説明する図である。
【図3】第1実施形態に係る能動制振装置の構成を説明するブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る能動制振装置において、制御モードの設定を説明する図である。
【図5A】ステージとカウンターマスの連動モードが設定された場合の制御ループの概略的な接続関係を示す制御ブロック図である。
【図5B】ステージを単独に駆動する制御モードが設定された場合の制御ループの概略的な接続関係を示す制御ブロック図である。
【図5C】カウンターマスを単独に駆動する制御モードが設定された場合の制御ループの概略的な接続関係を示す制御ブロック図である。
【図5D】ステージとカウンターマスを独立に駆動する制御モードが設定された場合の制御ループの概略的な接続関係を示す制御ブロック図である。
【図6】第1実施形態におけるフィルタの周波数特性を示す図である。
【図7】第2実施形態におけるフィルタの周波数特性を示す図である。
【図8】本発明の好適な実施の形態である能動制振装置を組み込んだ露光装置の概略構成を示す図である。
【図9】半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。
【図10】半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。
【符号の説明】
1、8 空気バネ式支持脚
2、9 サーボバルブ
4、11 位置センサ
5、12 予圧用機械バネ
6、13 粘性要素
7、14 加速度センサ
16 ステージ
17 位置センサ
18 変位増幅器
23 カウンターマス
24 位置センサ
25 変位増幅器
19、26 PID補償器
20、27 アンプ
21、28 目標速度生成器
22、29 積分器
30、31 変位増幅器
32 変位分解器
33、34 PI補償器
35、36 フィルタ
37 加速度分解器
38 推力分配器
39、40 アンプ
41 除振台15の目標位置を生成する目標位置設定器
42、43 フィルタ
44、45、300 制御モード設定器
46、47、301 スイッチ

Claims (10)

  1. 除振台上に搭載されたステージ及びカウンターマスのうち少なくとも一方の駆動により振動する該除振台を制振する能動制振装置であって、
    前記除振台を支持する支持脚と、
    前記支持脚に含まれる駆動部を制御する制御部と、
    前記ステージおよび前記カウンターマスのうち一方が他方に対し独立に駆動制御される場合の前記制御部の制御モードを設定する設定手段と、
    前記設定手段により前記制御モードが設定されたか否かに応じ、前記一方を駆動制御するための制御目標値が前記制御部に入力される状態と該制御目標値が前記制御部に入力されない状態とを切替える切替手段と、
    を備え
    前記制御部は、前記一方を駆動制御するための制御目標値が前記制御部に入力される状態において、前記支持脚に含まれるセンサにより計測された前記除振台の変位の情報と前記制御目標値とに基づいて前記駆動部を制御する、
    ことを特徴とする能動制振装置。
  2. 前記切替手段は、前記ステージが前記カウンターマスとは独立に駆動制御される場合の前記制御部の制御モードが前記設定手段により設定された場合には、該ステージを駆動するための制御目標値が前記制御部に入力される状態に切替えることを特徴とする請求項1に記載の能動制振装置。
  3. 前記切替手段は、前記カウンターマスが前記ステージとは独立に駆動制御される場合の前記制御部の制御モードが前記設定手段により設定された場合には、該カウンターマスを駆動するための制御目標値が前記制御部に入力される状態に切替えることを特徴とする請求項1に記載の能動制振装置。
  4. 前記切替手段は、前記ステージおよび前記カウンターマスがそれぞれ互いに独立に駆動制御される場合の前記制御部の制御モードが前記設定手段により設定された場合には、該ステージを駆動するための制御目標値および該カウンターマスを駆動するための制御目標値がそれぞれ前記制御部に入力される状態に切替えることを特徴とする請求項1に記載の能動制振装置。
  5. 前記切替手段は、該一方が該他方に対し独立に駆動される場合の前記制御部の制御モードが前記設定手段により設定されなくなった場合には、該ステージを駆動するための制御目標値および前記カウンターマスを駆動するための制御目標値がいずれも前記制御部に入力されない状態に切替えることを特徴とする請求項1に記載の能動制振装置。
  6. 前記制御部は、前記支持脚に含まれるセンサにより計測された前記除振台の変位の情報と前記ステージを駆動するための制御目標値と前記カウンターマスを駆動するための制御目標値とに基づき、前記駆動部を制御することを特徴とする請求項4に記載の能動制振装置。
  7. 前記制御部は、前記制御目標値が入力される、周波数特性を有するフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の能動制振装置。
  8. 前記制御部は、前記一方の並進運動に関する制御目標値に基づき、前記除振台の回転方向の制振を行うことを特徴とする請求項1に記載の能動制振装置。
  9. ステージと、カウンターマスと、前記ステージと前記カウンターマスとを搭載する除振台とを有し、該除振台を制振しながら基板を露光する露光装置であって、
    前記除振台を制振する請求項1乃至のいずれか1項に記載の能動制振装置を有する、ことを特徴とする露光装置。
  10. デバイス製造方法であって、
    基板に感光剤を塗布する工程と、
    前記基板に塗布された感光剤を請求項に記載の露光装置によって露光する工程と、
    前記露光装置によって露光された感光剤を現像する工程と、
    を含むことを特徴とするデバイス製造方法。
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