JP4106613B2 - ポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー - Google Patents

ポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用トナー、インキ等の印刷材料、塗料、接着剤、粘着剤、繊維加工、製紙・紙加工、土木用等の分野に用いられるポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法と、この製造方法で得られるポリエステル樹脂微粒子を含有する電子写真用トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方式としては、例えば、ポリエステル樹脂を微粒子化する分散造粒法等が挙げられる。転相乳化法は、このような分散造粒法のひとつであり、例えば、中和塩構造を有するポリエステル樹脂を水混和性有機溶剤中に溶解してなる樹脂溶液に水性媒体を加えて転相乳化し、次いで、有機溶剤の除去と乾燥とを行う静電荷像現像用トナーの製造方法が知られている。この製造方法では自己水分散性ポリエステル樹脂である中和塩構造を有するポリエステル樹脂を用いているため、乳化剤、懸濁安定剤等の補助材料を用いることなく、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体を製造することができる(例えば、特許文献1参照。)。また、中和された酸基含有ポリエステル樹脂と沸点60〜200℃の水溶性有機化合物と水とを特定の配合比で配合してなる水系分散体も知られている(例えば、特許文献2および特許文献3参照。)。
【0003】
前記特許文献1で開示されている転相乳化法は自己水分散性ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を調製することを念頭に考えられているため、自己水分散性ポリエステル樹脂とこのポリエステル樹脂を溶解できる有機溶剤(良溶媒)との組み合わせについての検討のみが提案されていた。そのため、自己水分散性ポリエステル樹脂とこのポリエステル樹脂を溶解しない有機溶剤の組み合わせに対しては適用されていなかった。また、前記転送乳化法は、自己水分散性ポリエステル樹脂とこのポリエステル樹脂を溶解できる有機溶剤(良溶媒)の組み合わせであるが故に、水性媒体中に自己水分散性ポリエステル樹脂を分散させた後も自己水分散性ポリエステル樹脂と有機溶剤との間の親和性が高く、結果として有機溶剤の除去工程後も、高濃度で有機溶剤が樹脂粒子内に残留してしまい、環境衛生上の問題がある。
【0004】
前記特許文献2および特許文献3には、沸点60〜200℃の水溶性有機化合物として前記ポリエステル樹脂を溶解する沸点100℃以上の有機溶剤と共に前記ポリエステル樹脂を溶解しない沸点100℃未満の有機溶剤も例示されているが、得られた水系分散体から有機溶剤を除去すること、および、前記ポリエステル樹脂を、このポリエステル樹脂を溶解しない沸点100℃未満の有機溶剤と組み合わせて用いることに関する記載や示唆はなく、実施例では前記ポリエステル樹脂を溶解する沸点100℃以上の有機溶剤(良溶媒)を含む有機溶剤をいずれも使用して水系分散体を製造した後、有機溶剤の除去を行うことなくコーティング剤等に用いている。これら前記実施例で得られる水系分散体は、有機溶剤の除去を行ったとしても、高濃度で有機溶剤が樹脂粒子内に残留してしまい、環境衛生上の問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平08−211655号公報(第2頁、第4〜6頁)
【特許文献2】
特開昭56−088454号公報(第2頁、第4頁、第7頁)
【特許文献3】
特開昭56−125432号公報(第2頁、第4頁、第7頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、樹脂粒子内に残存する残留溶剤が極めて少ないポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法と、残存溶剤が極めて少ない電子写真用トナーを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見(a)〜(h)を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(a)ポリエステル樹脂としてアルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂(P)、および、有機溶剤として前記ポリエステル樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)を用い、この有機溶剤(S)を前記ポリエステル樹脂(P)に吸収させて得られた膨潤体は、塩基性化合物を含有する水性媒体中に転送乳化することにより水性媒体中に微粒子状で分散させた自己水分散性のポリエステル樹脂微粒子水性分散体とすることが容易であること。
【0009】
(b)ポリエステル樹脂として前記アルキル基/およびアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂を用いているため、アルキル基およびアルケニル基とを含有しないカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を用いた時と比べてポリエステル樹脂微粒子水性分散体中のポリエステル樹脂微粒子の安定性が格段に向上し、また、得られるポリエステル樹脂微粒子は不定形の少ない球形であり、粒度分布も狭いこと。
【0010】
(c)有機溶剤としてポリエステル樹脂(P)を溶解しない沸点100℃未満の有機溶剤(S)を用いているため、得られた水性分散体中の有機溶剤の除去が容易で、残留有機溶剤の極めて少ないポリエステル樹脂微粒子水性分散体が製造できること。
【0011】
(d)前記ポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法において、ポリエステル樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用することにより、着色剤(C)で着色されたポリエステル樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体が得られること。
【0012】
(e)前記ポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法で得たポリエステル樹脂微粒子水性分散体の着色された微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有させることにより残存溶剤が極めて少ない電子写真用トナーが得られること。
【0013】
(f)前記着色された微粒子を会合させた後分離し、乾燥して得られる電子写真用トナーは残留溶剤が極めて少なく、画質も向上すること。
【0014】
(g)前記製造方法で得られたポリエステル樹脂微粒子水性分散体と着色剤(C)の水性媒体または着色樹脂粒子の水性媒体とを混合し、ポリエステル樹脂の微粒子と着色剤粒子または着色樹脂微粒子を会合させた後分離し、乾燥して得られる電子写真用トナーは残留溶剤が極めて少なく、画質も向上すること。
【0015】
(h)前記電子写真用トナーは、前記アルキル基/およびアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂を用いているため不定形の少なく、かつ、粒度分布の狭い球形のトナーであり、また、前記トナーを用いて得られた画像は色調、解像度に優れること。
【0016】
即ち、本発明は、アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂(P)を、前記ポリエステル樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を塩基性化合物を含有する水性媒体中に混合して、ポリエステル樹脂(P)中のカルボキシル基の一部乃至全部の塩基性化合物による中和と、前記膨潤体の水性媒体中への微粒子状での分散とを行うことにより初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル樹脂(P)の微粒子が前記水性媒体中に分散した分散体を製造する第3工程とからなることを特徴とするポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記製造方法においてポリエステル樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用して得られた熱可塑性樹脂微粒子水性分散体からポリエステル樹脂(P)の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有することを特徴とする電子写真用トナーを提供するものである。
【0018】
更に、本発明は、前記製造方法においてポリエステル樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用して得られた熱可塑性樹脂微粒子水性分散体中のポリエステル樹脂(P)の微粒子を会合させた後分離し、乾燥して得られることを特徴とする電子写真用トナーを提供するものである。
【0019】
更に、本発明は、前記製造方法で得られたポリエステル樹脂微粒子水性分散体と着色剤(C)の水性分散体または着色樹脂粒子の水性分散体とを混合し、分散しているポリエステル樹脂(P)の微粒子と着色剤粒子または着色樹脂微粒子を会合させた後分離し、乾燥して得られることを特徴とする電子写真用トナーを提供するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するアルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂(P)の調製方法としては、例えば、
▲1▼アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸と、二価のアルコールとを必須として、必要に応じてその他の二塩基酸やその無水物、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等を混合し、窒素雰囲気中で加熱下に酸価を測定しながら脱水縮合する調製方法、
▲2▼二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として調製した、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基を有していても良い)を加熱溶解し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する酸無水物を投入し、ポリエステル樹脂の末端水酸基に開環付加させる調製方法、
▲3▼二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として調製した、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基を含有していても良い)を加熱溶融し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を投入し、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基の一部に開環付加させる調製方法等が挙げられる。
【0021】
前記した調製方法で使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器等の回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、前記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、種々の触媒を添加することもできる。
【0022】
ポリエステル樹脂(P)の有するアルキル基、アルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、ドデシル基、ドデセニル基等が挙げられる。
【0023】
前記調製方法▲1▼で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸等の二塩基酸やそれらの無水物が挙げられる。
【0024】
二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等のアラルキレングリコールまたは脂環式のジオール類等が挙げられる。
【0025】
その他の二塩基酸やその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族又は脂環式の二塩基酸等が挙げられる。
【0026】
三官能以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0027】
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。
【0028】
三官能以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−メチルプロパントリオール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0029】
一価のアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0030】
調製方法▲2▼の水酸基含有ポリエステル樹脂や、調製方法▲3▼のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を調製するのに用いる、二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとしては、例えば、調製方法▲1▼で用いる、その他の二塩基酸やその無水物、二価のアルコール等を用いることができる。また、例えば、調製方法▲1▼で用いる、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上の多価アルコール、一価のアルコール等も必要に応じて調製しても良い。
【0031】
調製方法▲2▼で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する酸無水物としては、例えば、n−ブチル無水コハク酸、n−ペンチル無水コハク酸、ネオペンチル無水コハク酸、n−ヘキシル無水コハク酸、n−ヘプチル無水コハク酸、n−オクチル無水コハク酸、イソオクチル無水コハク酸、2−エチルヘキシル無水コハク酸、n−ドデシル無水コハク酸、イソドデシル無水コハク酸、n−ドデセニル無水コハク酸、イソドデセニル無水コハク酸、6−ブチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、6−n−オクチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物等が挙げられる。アルキル基やアルケニル基を有する酸無水物は、単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0032】
調製方法▲3▼で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸等の飽和あるいは不飽和の脂肪酸のモノグリシジルエステルや、イソノナン酸、バ−サチック酸等の分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。前記した分岐脂肪酸のモノグリシジルエステルの市販品としては、カージュラE10(シェルケミカル社製)等が挙げられる。脂肪族モノエポキシ化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0033】
前記した▲1▼〜▲3▼の調製方法で用いる、二塩基酸やその無水物、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、カルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステル又はアリールエステルとなっているものも使用できる。
【0034】
また、前記した▲1▼〜▲3▼の調製方法で用いる、二価のアルコール、三価以上のアルコール、一価のアルコールは、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用しても良い。
【0035】
また、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸等の、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も前記調製方法▲1▼〜▲3▼で使用できる。
【0036】
ポリエステル樹脂(P)は、例えば、前記調製方法▲1▼で得られるアルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂(P1)であれば良いが、なかでも、調製方法▲2▼で得られる、末端に水酸基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の末端水酸基にアルキル基またはアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂(P2)や、調製方法▲3▼で得られる、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基にアルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂(P3)であれば、ポリエステル樹脂を微粒子状で水性媒体中に分散させた際に樹脂微粒子がより安定に分散することから好ましい。この際使用する末端に水酸基を有するポリエステル樹脂や末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、既にアルキル基やアルケニル基を含有していても良いし、含有していなくても良い。
【0037】
ポリエステル樹脂(P)は、ポリエステル樹脂(P2)の有する末端構造やポリエステル樹脂(P3)の有する末端構造を、それぞれ単独でポリエステル樹脂1分子中に含んでいても良いし、これらの末端構造を両方有していてもよい。
【0038】
ポリエステル樹脂(P)は、なかでも、調製方法▲2▼で得られる一般式(1)で表される末端構造や、調製方法▲3▼で得られる一般式(2)または(3)で表される末端構造を有するポリエステル樹脂であれば特に好ましい。
【化1】
Figure 0004106613
(式中、R1及びR2は、同一又は異なり、水素原子、炭素原子数4〜20のアルキル基又は炭素原子数4〜20のアルケニル基を表すが、両方ともに水素原子であることはない。また、R3 は炭素原子数4〜20のアルキル基又は炭素原子数4〜20のアルケニル基を表し、R4 は炭素原子数4〜20のアルキル基又は炭素原子数4〜20のアルケニル基を表す。)
【0039】
前記一般式(1)、(2)及び(3)中のR1〜R4が示している炭素原子数4〜20のアルキル基や炭素原子数4〜20のアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でも良く、例えば、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ペプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ドデシル基、ドデセニル基等が挙げられる。
【0040】
次に、ポリエステル樹脂(P)の性状について説明する。
ポリエステル樹脂(P)は、水性媒体中でポリエステル樹脂微粒子の安定性が良好なことから、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量が5,000〜300,000の範囲にあることが好ましく、なかでも、7,000〜100,000の範囲であることが好ましい。
【0041】
ポリエステル樹脂(P)の酸価は、1〜100mgKOH/gの範囲が好ましく、5〜40mgKOH/gの範囲がより好ましい。
【0042】
本発明で用いる有機溶剤(S)は、ポリエステル樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点〔常圧(101.3KPa)における沸点をいう。以下同様。〕100℃未満の有機溶剤であればよい。ポリエステル樹脂(P)を溶解する有機溶剤および/または沸点100℃以上の有機溶剤を用いた場合は、第3工程での有機溶剤が除去しにくくなるし、また、ポリエステル樹脂(P)を膨潤させることができない有機溶剤を用いた場合は、第2工程でのポリエステル樹脂(P)の水性媒体中への分散が困難となるため、いずれも好ましくない。
【0043】
なお、本発明で用いるポリエステル樹脂(P)を溶解しない有機溶剤(S)とは、有機溶剤とポリエステル樹脂(P)とを組み合わせて用いた場合に、25℃でのポリエステル樹脂(P)の前記有機溶剤への溶解度が15重量%以下となる有機溶剤を意味し、ポリエステル樹脂(P)の前記有機溶剤への溶解度が0重量%の有機溶剤を意味するものではない。
【0044】
本発明において、有機溶剤がポリエステル樹脂(P)を溶解しない有機溶剤(S)に該当するか否かの判定は、例えば、ASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2結果の判断の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行うことができる。
【0045】
前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定は、具体的には粒子状のポリエステル樹脂(P)15重量部と有機溶剤85重量部をフラスコにとって密栓し、25℃で16時間振とうした後の溶解状態を観察し、前記ASTM D3132−84の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された下記判定区分で、1.「完全な溶液」か、2.「境界線の溶液」か、3.「不溶」かのどの区分に属するか判定することにより行うことができる。
1.「完全な溶液」;明瞭な固形物やゲル粒子を含まない単一の透明な相。
2.「境界線の溶液」;明瞭な相分離を含まない透明または混濁した相。
3.「不溶」;2相に分離:分離したゲル固体相を含む液体又は2相に相分離した液体。
尚、本発明では、粒子状のポリエステル樹脂(P)として、孔径3mmのスクリーンを通過させたポリエステル樹脂(P)の粗粉砕物を前記判定に使用した。
【0046】
本発明の製造方法は、ポリエステル樹脂(P)と有機溶剤(S)とを、前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定において、2.「境界線の溶液」、または、3.「不溶」となる組み合わせで用いる方法であり、この組み合わせでポリエステル樹脂(P)と有機溶剤(S)を用いることにより第3工程において脱溶剤が容易に行える。
【0047】
本発明で用いる有機溶剤(S)としては、なかでも第3工程での脱溶剤が更に容易に行えることから、25℃でのポリエステル樹脂(P)の有機溶剤への溶解度が10重量%以下となる有機溶剤であることが好ましく、7重量%以下となる有機溶剤であることがより好ましい。このときの溶解度の判定は、有機溶剤が前記樹脂濃度15重量%で有機溶剤(S)に該当するか否かの判定を行う代わりに、樹脂濃度が10重量%または7重量%での判定を行うことにより可能である。
【0048】
さらに、前記有機溶剤(S)としては、水性媒体中に分散された粒子状の膨潤体からの除去が容易で、残留溶剤が極めて少ない樹脂粒子が容易に効率良く経済的に製造できることから、水と相溶する有機溶剤(S1)が好ましい。ただし、この有機溶剤(S1)としては、水と有機溶剤がすべての混合比で均一相を形成する必要はなく、ポリエステル樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させて得られる膨潤体の水性媒体への分散を行う際の温度および水と有機溶剤の組成範囲において相溶すれば十分である。該有機溶剤(S1)は、この条件を満たせるものであれば、単一もしくは混合溶剤のどちらでも差し支えないが、第3工程で有機溶剤(S1)の除去を行う際の温度において水と相溶するものが好ましく、25℃で水と相溶するものがより好ましい。なかでも、有機溶剤(S1)としては、25℃における水への溶解度が50重量%以上であることが好ましく、25℃において全ての割合で水と相溶することが特に好ましい。さらに、有機溶剤(S1)が混合溶剤の場合は、使用する有機溶剤の沸点がいずれも100℃未満であることが好ましい。また、有機溶剤(S1)の沸点は40〜90℃であることがより好ましい。更に好ましくは40〜85℃であり、最も好ましくは40〜60℃である。
【0049】
前記有機溶剤(S1)としては、例えば、アセトン(溶解度:全ての割合で水と相溶する。沸点:56.1℃)等のケトン類;メタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:64.7℃)、エタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:78.3℃)、イソプロピルアルコール(解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:82.26℃)等のアルコール類;酢酸メチル(溶解度:24重量%、沸点:56.9℃)等のエステル類等が挙げらる。これらの有機溶剤(S1)は単独で用いても良いし、2種以上を混合した混合溶剤を用いても良い。有機溶剤(S1)として好ましいものはケトン類、アルコール類であり、より好ましいものはアセトン、イソプロピルアルコールであり、最も好ましいものはアセトンである。
【0050】
前記有機溶剤(S)の使用量としては、目的とするポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子の粒径にもよるが、第1工程においてポリエステル樹脂(P)が有機溶剤(S)を十分に吸収し、膨潤して微粒子状での分散が容易なのり状の膨潤体とすることができること、第2工程において前記膨潤体の水性媒体への分散が容易であること、分散を完結させるために用いる水性媒体の使用量が抑制でき、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の有機溶剤の含有量が大きくならず製造効率が良好となることから、前記ポリエステル樹脂(P)100重量部に対して5〜300重量部が好ましく、より好ましくは10〜200重量部であり、最も好ましくは20〜150重量部である。
【0051】
また、水の使用量は、ポリエステル樹脂(P)と有機溶剤(S)の合計100重量部に対して70〜400重量部が好ましく、100〜250重量部がより好ましい。
【0052】
ポリエステル樹脂(P)中のカルボキシル基の一部乃至全部の中和に使用される塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ化合物;ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩;前記アルカリ金属の酢酸塩類;アンモニア水;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。なかでも、アンモニア水が好ましい。
【0053】
前記塩基性化合物の使用量は、ポリエステル樹脂(P)中のカルボキシル基の当量に対して、0.9〜5.0倍当量となる量であることが好ましく、1.0〜3.0倍当量となる量であることがより好ましい。
【0054】
本発明の製造方法の第1工程で膨潤体を製造する方法としては、特に限定されないが、短時間で前記膨潤体が得られるし、その後第2工程での前記膨潤体の水性媒体中への分散も容易になることから、前記ポリエステル樹脂(P)と前記有機溶剤(S)とを共に加熱することにより前記膨潤体を製造することが好ましく、さらに加圧下で前記膨潤体を製造することがより好ましい。この際、前記ポリエステル樹脂(P)と前記有機溶剤(S)の加熱温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点以上が好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点〜180℃がより好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点+10℃〜120℃が特に好ましい。また、この系内の加圧圧力としては、ゲージ圧で0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくはゲージ圧で0.2〜1.5MPa、更に好ましくはゲージ圧で0.3〜1.0MPaである。系内を加圧する方法としては、例えば、前記膨潤体を得るための加熱により前記有機溶剤(S)を気化させて系内を加圧する方法、あらかじめ系内に不活性ガスを導入して予備加圧した後、加熱して前記有機溶剤(S)の気化によりさらに加圧する方法等が挙げられるが、有機溶剤(S)の還流、沸騰が抑制できると共に、粒度分布の狭いポリエステル樹脂微粒子水性分散体を得られることから、予備加圧する方法が好ましい。予備加圧としては0.05〜0.5MPaが好ましい。
【0055】
前記第1工程において前記膨潤体を得た後、第2工程で得られた膨潤体を塩基性化合物を含有する水性媒体中に混合してポリエステル樹脂(P)中のカルボキシル基の一部乃至全部の塩基性化合物による中和と前記膨潤体の水性媒体中への微粒子状での分散とを行うことにより初期水性分散体を製造する方法としては、特に限定されないが、前記膨潤体の水性媒体中への分散が容易になることから、第1工程において加圧下で前記有機溶剤(S)の沸点以上の温度に加熱することにより得られた膨潤体を用い、前記膨潤体を加圧下で前記有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下の温度で機械的剪断力により前記塩基性化合物を含有する水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とする方法が好ましい。この際の系の温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点〜180℃が好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点+10℃〜120℃が特に好ましい。また、この系の圧力としては、ゲージ圧で0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくはゲージ圧で0.2〜1.5MPa、更に好ましくはゲージ圧で0.3〜1.0MPaである。なお、前記膨潤体の作成とこの分散体の作成とを同一容器内で行う場合、分散体作成開始時の系の加熱加圧条件は、前記膨潤体の作成終了時の温度および圧力と同様であることが好ましい。ここで用いる塩基性化合物を含有する水性媒体の温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下であることが好ましく、なかでも前記有機溶剤(S)の沸点以上100℃未満であって、かつ、第2工程開始時の系の温度−20℃〜第2工程開始時の系の温度の範囲内とすることがより好ましい。
【0056】
さらに、前記第1工程で膨潤体を製造する際の温度、および、前記第2工程で初期水性分散体を製造する際の温度は、いずれも前記ポリエステル樹脂(P)の融点や軟化点より低温であることが好ましく、前記ポリエステル樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)以下の温度であってもよいが、なかでも前記有機溶剤(S)の沸点以上であって、かつ、ガラス転移温度(Tg)より10〜50℃高い温度であることが好ましい。なお、第1工程で膨潤体を製造する際の温度と第2工程で初期水性分散体を製造する際の温度は同一でも異なっていてもよい。
【0057】
本発明のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法としては、例えば以下の▲1▼〜▲3▼で示す方法が代表的な製造方法として挙げられる。
▲1▼第1工程として、密閉容器にポリエステル樹脂(P)と有機溶剤(S)とを仕込み、加熱下、好ましくは加熱加圧下で、攪拌下にポリエステル樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造した後、第2工程として、得られた膨潤体を塩基性化合物を含有する水性媒体中に混合して、攪拌等の機械的剪断力により、好ましくは加熱加圧下で、塩基性化合物を含有する水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0058】
▲2▼前記▲1▼の第1工程と同様にして前記膨潤体を得た後、第2工程として、得られた膨潤体と塩基性化合物を含有する水性媒体とを連続乳化分散機に連続的に供給しながら前記膨潤体中のポリエステル樹脂(P)のカルボキシル基の一部乃至全部の塩基性化合物による中和と機械的剪断力による前記膨潤体の前記水性媒体中への微粒子状での分散とを行って初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0059】
▲3▼第1工程として、押出機等の溶融混練機により溶融されたポリエステル樹脂樹脂(P)または合成された溶融状態のポリエステル樹脂(P)に、圧入等の方法で有機溶剤(S)を連続的に供給し混合下に前記ポリエステル樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造し、得られた膨潤体を該ポリエステル樹脂(P)の融点または軟化点未満の温度まで降温させた後、第2工程として、得られた膨潤体と塩基性化合物を含有する水性媒体とを連続乳化分散機に連続的に供給しながら前記膨潤体中のポリエステル樹脂(P)のカルボキシル基の一部乃至全部の塩基性化合物による中和と機械的剪断力による前記膨潤体の前記水性媒体中への微粒子状での分散とを行って初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0060】
これらの方法の中でも、比較的容易にポリエステル樹脂微粒子水性分散体が得られることから、前記▲1▼または▲2▼の方法が好ましい。前記▲1▼および▲2▼の方法で用いるポリエステル樹脂(P)の形状としては、比較的短時間で膨潤体とすることができることから、粒子状であることが好ましく、例えば、粒子径1〜7mmのペレット、孔径が2〜7mmのスクリーンを通過させた粗粉砕物、平均粒子径800μm以下の粉体等が挙げられる。
【0061】
以下に、前記▲1▼、▲2▼の方法によるポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法のより具体的な製造例を挙げる。
まず、プロペラ翼付のガラス製2Lのオートクレーブを用い、このオートクレーブにポリエステル樹脂(P)を粉砕して得た粒子状物と有機溶剤(S)とを仕込み、不活性ガスを導入してオートクレーブ内を0.05〜0.5MPaとなるように予備加圧し、次いで10〜300rpmの攪拌下で有機溶剤(S)の沸点以上に昇温して有機溶剤(S)を一部気化させることによりオートクレーブ内を0.1〜2.0MPa(ゲージ圧)に加圧した後、50〜700rpmで3〜60分間攪拌してポリエステル樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させて膨潤体とする(第1工程)。
【0062】
予備加圧に用いる不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等が挙げられるが窒素ガスが好ましい。
【0063】
この工程で得られた前記膨潤体は、有機溶剤(S)を吸収したポリエステル樹脂(P)と、ポリエステル樹脂(P)に吸収されずに残った有機溶剤(S)との混合物であり、半透明〜白濁のり状の混合物として観察されるものが好ましい。なお、例えば、有機溶剤(S)としてイソプロピルアルコールを用いた系では、攪拌速度を50rpm程度にゆるめると、イソプロピルアルコールが樹脂相から分離して2相を形成するのが観察されるが、それでもよい。
【0064】
このようにして膨潤体を得た後、前記▲1▼の方法では、300〜1500rpmで攪拌しながら予め加熱しておいた塩基性化合物を含有する水性媒体、例えばアンモニア水を2〜30分間かけて加圧注入して転相乳化させて、前記膨潤体が微粒子状に分散した初期水性分散体とする(第2工程)。このとき、前記膨潤体中の有機溶剤(S)は局部的な沸騰と還流が起こっており、ポリエステル樹脂(P)と親和性の低い有機溶剤(S)の分子はポリエステル樹脂(P)から離れやすく、かつ転相乳化しやすくする環境を形成していると考えられる。
【0065】
また、前記▲2▼の方法では、膨潤体を得た後、連続乳化分散機、例えば、特開平9−311502号公報に記載されているスリットを有するリング状固定子とスリットを有するリング状回転子とを同軸状に設けた高速回転型連続乳化分散機等を使用して連続的に塩基性化合物を含有する水性媒体中に該膨潤体を微粒子状で分散させて初期水性分散体とする(第2工程)。この場合、前記膨潤体と前記水性媒体とを所定の温度、圧力条件で連続乳化分散機に送り込み、前記回転子を300〜10000rpmで回転させれば良い。
【0066】
前記膨潤体が微粒子状で分散した分散体を得た後、得られた分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散したポリエステル樹脂微粒子水性分散体が得られる(第3工程)。前記有機溶剤(S)の除去方法としては、例えば、減圧チャンバー中にスプレーする方法、脱溶剤缶壁内面に薄膜を形成させる方法、溶剤吸収用充填剤入りの脱溶剤缶を通過させる方法等が挙げられる。前記有機溶剤(S)を除去する方法の一例として、ロータリーエバポレーターを使用した除去方法を以下に記す。
試料量;500ml
容器;2Lなす型フラスコ
回転数;60rpm
バス温度;47℃
減圧度;13.3KPaから20分間かけて1.33KPaに減圧度を高め、引き続き10分間1.33KPaで脱溶剤する。
【0067】
なお、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子を粉体塗料やホットメルト接着剤などとして利用する場合や、生成した粒子をトナーなど粉体として取り出す場合には、樹脂微粒子が分散した分散体からの有機溶剤(S)の除去は前記分散体の製造後直ちに行うのがよい。有機溶剤(S)が含有されたまま分散体を長期間保存しておくと分散体中の樹脂微粒子が自然と凝集する傾向を示すからである。
【0068】
本発明の製造方法においては、アルキル基およびアルケニル基を含有しないカルボキシル基含有ポリエステル樹脂と有機溶剤(S)を用いても残留溶剤が極めて少ないポリエステル樹脂微粒子水性媒体を調製できるが、後述する実施例と比べて前記水性分散体中のポリエステル樹脂微粒子は不定形粒子を含み、粒度分布も広い。また、保存安定性も十分でなく経時的に樹脂粒子が大きくなる傾向がある。
【0069】
本発明のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法では、製造条件を種々変更することによりポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を0.01〜50μm程度の範囲内で自由に制御することが可能である。
【0070】
本発明のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法において、得られる分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を小さく制御するためには、例えば、次に記す手段等をとれば良い。
▲1▼ポリエステル樹脂(P)中のカルボキシル基等の親水性セグメント濃度を高くする。
▲2▼ポリエステル樹脂(P)に対する塩基性化合物の使用量を大きくする。
▲3▼ポリエステル樹脂(P)に対する有機溶剤(S)の使用量を大きくする。
▲4▼分散体製造時の温度を高くする。
▲5▼分散体製造時の攪拌速度を大きくする。
【0071】
逆に、本発明のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法において、得られる分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を大きくするためには、これらの条件を逆にしてやれば良い。なお、ポリエステル樹脂(P)および有機溶剤(S)と共に、その他の成分、例えばカーボンブラック等の着色剤(C)、磁性粉、ワックス、帯電制御剤等の添加剤を用いることによっても、分散体中の樹脂微粒子の平均粒径は大きくなる。
【0072】
このような本発明の製造方法で得られたポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子は、得られた分散体の温度、pH、電解質濃度などの条件を制御することにより分散している樹脂微粒子を会合させて、より大きな粒子に成長させることも可能である。
【0073】
本発明で使用する有機溶剤(S)は、後述する分散体中の樹脂微粒子の会合の工程で樹脂微粒子同士の接着剤的役割も担っている。通常第3工程での脱溶剤は、この会合工程を終了した後に行われるが、会合工程前に一旦脱溶剤しておいて貯蔵しておき、会合工程で同一もしくは類似の有機溶剤の必要量を再添加してから会合させ、ついで脱溶剤してもよい。
【0074】
次に、本発明の電子写真用トナーを説明する。
本発明の電子写真用トナーは、本発明のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法で得られた分散体からポリエステル樹脂(P)の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有する電子写真用トナーであり、本発明の方法で得たポリエステル樹脂微粒子水性分散体をそのまま用い、この分散体から樹脂微粒子を分離し、乾燥して得られる樹脂微粒子を用いてなる電子写真用トナー(T1)や、本発明の方法でトナーサイズより小さい粒径の樹脂微粒子が分散したポリエステル樹脂微粒子水性分散体を得た後、必要に応じて別途製造したトナーサイズより小さい粒径の樹脂微粒子が分散した分散体と混合し、得られた分散体の温度、pH、電解質濃度などの条件を適宜制御することにより分散体中の樹脂微粒子を会合させてトナーサイズの微粒子とした後、粒子を分離し、乾燥して得られる樹脂微粒子を用いてなる電子写真用トナー(T2)等が挙げられる。本発明の電子写真用トナーは、画質が向上することから電子写真用トナー(T2)が好ましい。
【0075】
本発明の電子写真用トナーとしては、例えば、前記電子写真用トナー(T1)として以下の(1)に示すトナーや前記電子写真用トナー(T2)として以下の(2)〜(4)に示すトナー等が例示できる。
【0076】
(1)本発明のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法において、ポリエステル樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させる第1工程でポリエステル樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用することにより得られる着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散した分散体を得た後、得られた分散体からポリエステル樹脂(P)の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を用いてなる電子写真用トナー。なお、着色剤(C)と共にワックス等の添加剤、磁性粉、電荷制御剤等を併用することもできる。この場合、前記分散体中の着色樹脂微粒子の平均粒径はトナーサイズ、例えば1〜10μmであることが好ましい。
【0077】
(2)前記(1)と同様にして着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散した分散体を得た後、逆中和剤の添加などの方法で樹脂微粒子の表面電位を減少させて分散している樹脂微粒子同志を会合させて、より大きな平均粒径を有する着色樹脂粒子の分散体とし、次いで有機溶剤(S)を除去し、微粒子の分離を行った後、乾燥して得られる微粒子を用いてなる電子写真用トナー。なお、前記有機溶剤(S)の除去は、樹脂微粒子同志の会合前に行ってもよい。また、着色剤(C)と共にワックス等の添加剤、磁性粉、電荷制御剤等を併用することもできる。この場合、会合前の分散体中の着色樹脂微粒子の平均粒径は0.01〜1μmであることが好ましく、会合後の着色樹脂微粒子の平均粒径はトナーサイズであることが好ましい。
【0078】
(3)前記(1)と同様にして着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散した分散体を得た後、前記(2)と同様に樹脂微粒子同士を会合させて、より大きな平均粒径を有する着色樹脂粒子(コア粒子)の分散体とし、次いで別途製造したシェル層用の樹脂微粒子の水性分散体と混合し、前記(2)と同様にして分散している着色樹脂粒子(コア粒子)にシェル層用の樹脂微粒子を会合させて、コア/シェル構造の着色樹脂粒子の分散体とし、次いで有機溶剤(S)を除去し、微粒子の分離を行った後、乾燥して得られる微粒子を用いてなる電子写真用トナー。なお、前記有機溶剤(S)の除去は、樹脂微粒子同士の会合前に行ってもよい。この場合、会合前の分散体中の着色樹脂微粒子の平均粒径は0.01〜1μmであることが好ましく、会合終了後の着色樹脂微粒子の平均粒径はトナーサイズであることが好ましい。
【0079】
前記(3)で用いるシェル層用の樹脂微粒子は、コア用の樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)より1〜40℃高いTgを有するポリエステル樹脂(P)からなる樹脂微粒子か、後述する帯電制御剤を用いて樹脂微粒子を調製した時は該帯電制御剤の使用量を多く用いて調製された樹脂微粒子が好ましい。
【0080】
(4)ポリエステル樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を得た後、前記膨潤体を水性媒体中に微粒子状で分散させて分散体とし、次いで得られた分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を得た後、別途製造した着色剤(C)の水性分散体もしくは別途製造した着色樹脂微粒子の水性分散体と混合し、逆中和剤の添加などの方法で樹脂微粒子の表面電位を減少させて分散している樹脂微粒子と着色剤粒子若しくは着色樹脂微粒子を会合させて、より大きな平均粒径を有する着色樹脂粒子の分散体とし、次いで微粒子の分離を行った後、乾燥して得られる微粒子を用いてなる電子写真用トナー。この場合、前記着色剤(C)と共にワックス等の添加剤、磁性粉、電荷制御剤等を併用することもできるし、添加剤、磁性粉、電荷制御剤等を含有した樹脂微粒子の水性分散体を併用して会合させることもできる。また、前記有機溶剤(S)の除去は、樹脂微粒子と着色剤粒子若しくは着色樹脂微粒子の会合を行った後に行ってもよい。ここで用いる各分散体中の微粒子の平均粒径は0.01〜1μmであることが好ましく、会合後の着色樹脂微粒子の平均粒径はトナーサイズであることが好ましい。
【0081】
前記(4)で用いる別途製造した着色剤(C)の水性分散体もしくは別途製造した着色樹脂微粒子の水性分散体としては、着色剤(C)もしくは着色樹脂微粒子が水性媒体中に微粒子状で分散されているものであればよく、特に限定されないが、例えば、界面活性剤などを用いて着色剤(C)を乳化処理した水性分散体、着色剤(C)と樹脂を加熱溶融したのち、分散剤を含有する水中に分散した水性分散体、着色剤(C)を分散させたポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させた後、水を加えて転相乳化した水性分散体、本発明の製造方法でポリエステル樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させる際に着色剤(C)を併用することにより得られる水性分散体等が挙げられ、なかでも本発明の製造方法で得られる水性分散体が好ましい。これら水性分散体中における着色剤(C)の濃度は、目的とするトナーの着色剤濃度の5〜10倍であることが好ましい。
【0082】
前記着色剤(C)としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105)、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)等が挙げられる。
【0083】
前記着色剤(C)の含有量は、ポリエステル樹脂(P)100重量部に対して1〜20重量部の範囲内になるよう使用するのが好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0084】
以下に本発明の製造方法で言う「会合」という工程と現象について述べる。
一般に、本発明の製造方法により得られるようなポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子は、その表面電荷に由来する静電反発力により凝集することなく水性媒体中に安定に存在するが、同時に、ファンデルワールス力によって樹脂粒子間には引力が働いている。そこで、何らかの作用で樹脂粒子表面電荷を適宜減少させてやると、静電反発力より引力が大きくなり、樹脂微粒子同志が凝集し始めて、より大きい粒子径に成長した樹脂粒子の分散体となる。これを本発明では会合という。この会合の温度はポリエステル樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃が好ましく、会合工程中に系内に存在している有機溶剤(S)の沸点との関係により、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい。会合に要する時間は、通常2〜12時間であり、4〜10時間が好ましい。また、会合は、穏やかな攪拌下、例えば、アンカー翼で10〜100rpm程度の回転数による攪拌下で行うと良い。
【0085】
前記の樹脂粒子表面電荷を減少もしくは失わせる方法としては、例えば、希塩酸、希硫酸、酢酸、蟻酸、炭酸などの酸をいわゆる逆中和剤として添加する方法が挙げられる。この際、必要に応じて塩析剤と呼ばれる塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第2鉄、塩化カルシウム等の金属塩類やカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属錯体を添加しても良い。又、会合工程において着色剤などを分散処理したり、会合の進行を制御する目的で、必要に応じて界面活性剤を使用してもよい。
【0086】
前記界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルジスルフォン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド等のカチオン界面活性剤、アルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール等のノニオン界面活性剤等が挙げられ、適宜選択して使用することができる。
【0087】
本発明の電子写真用トナーの製造方法は、粒径が1〜10μmの電子写真用トナーを製造するのに特に好ましい。
【0088】
本発明の製造方法は、形状中に鋭利な尖点部分を含まない球形の樹脂粒子からなるポリエステル樹脂微粒子水性分散体や電子写真用トナーを製造することができる。ここで「球形」とは、真球状はもちろん楕円状、いびつな球状(ポテト状)等を含む幅広い概念を言う。
【0089】
本発明のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法や本発明の電子写真用トナーにおいては、磁性粉、ワックス等の添加剤を必要に応じて用いても良い。これらは、ポリエステル樹脂(P)と予め混練して混練物としておくのが良い。これらの添加剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0090】
磁性粉としては、例えば、マグネタイト、フェライト、コバルト、鉄、ニッケル等の金属単体やその合金等が挙げられる。
【0091】
ワックスは、電子写真用トナー用のオフセット防止剤として使用できる。ワックスとしては、例えば、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィシュワックス、ステアリルビスアミド、酸化ワックス等の合成ワックス類や、カルナバワックス、ライスワックス等の天然ワックス等が挙げられる。
【0092】
また、帯電制御剤を用いると帯電特性が良好なトナーが得られる。帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、フッ素処理活性剤等のプラス帯電制御剤や、電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等のマイナス帯電制御剤等が挙げられる。
【0093】
帯電制御剤を使用する際には、これらの帯電制御剤を有機溶剤(S)に予め溶解しておいてからポリエステル樹脂(P)に加えると良い。コア粒子とシェル層からなるトナーを製造する際には、シェル層を製造する際に帯電制御剤を用いれば、帯電制御剤を前記シェル層に配置したトナーを製造することもできる。
【0094】
本発明において、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の不揮発分の割合は、前記水性分散体を真空乾燥器中に100℃、0.1KPa、3時間の条件で放置し、前記水性分散体の重量変化から求めた。また、微粒子の体積平均粒子径は、0.001〜2μmの粒子径測定はLeeds+Northrup社製のMICROTRAC UPA150を用いて測定し、1〜40μmの粒子測定はベックマンコールター社製マルチサイザーTM3を用いて測定した。
【0095】
粒子径が0.001〜2μmである粒子の粒度分布の値の評価は、前記MICROTRAC UPA150を用いて粒子径の小さい側から積算した場合に体積が10%となるところの粒子径(D10)と粒子経の小さい側から積算した場合に体積が90%となるところの粒子径(D90)とを測定し、この比(D90/D10)を求めることにより行った。
粒子径が1〜40μmである粒子の粒度分布の値の評価は、前記コ−ルターマルチサイザーTM3を用いて粒子径の小さい側から積算した場合に累積重量が16%となるところの粒子経(D16)と粒子径の小さい側から積算した場合に累積重量が84%(D84)となるところの粒子経とを測定し、この比(D84/D16)の平方根を求めることにより行った。粒度分布の値は小さい程粒度分布の幅が狭いことを表す。
【0096】
また、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の残留溶剤の定量は、下記条件でガスクロマトグラフィ法で測定した。
測定機;島津GC−17A
カラム;ULBON HR−20M(PPG)
カラム温度;80〜150℃
昇温速度;10℃/分
【0097】
【実施例】
以下に本発明を、合成例、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。例中の部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0098】
合成例1〔ポリエステル樹脂(P)の調製〕
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコ−ル324部、ネオペンチルグリコ−ル545部およびトリメチロ−ルプロパン112部を仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド2.4部を投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸1,808部を徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して温度を240℃まで上げた。さらに同温度で5時間反応させ、酸価が10.0mgKOH/gになった時に温度を220℃まで下げた後、ドデセニル無水コハク酸100部を投入し、同温度で30分間ドデセニル無水コハク酸とポリエステル樹脂の水酸基末端との開環付加反応を行ない、酸価が16.0、環球法による軟化点が113℃、示差走査熱量測定(DSC)法によるガラス転移温度(Tg)が58℃、GPC法による数平均分子量(Mn)が3,500、重量平均分子量(Mw)が20,000であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル樹脂(P−1)と略記する。
【0099】
合成例2(同上)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2)1,428部およびシクロヘキサンジメタノ−ル137部を仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド1.4部を投入し、系が均一に攪拌されていることを確認後、テレフタル酸936部を徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を220℃まで上げ、その後3時間を要して温度を245℃まで上げた。さらに同温度で8時間反応させ、酸価が20.0になった時に温度を230℃まで下げた後、カ−ジュラ−E10(シェルケミカル社製分岐脂肪酸のグリシジルエステル)101部を投入し、同温度で30分間カ−ジュラ−E10のエポキシ基とポリエステル樹脂の末端カルボキシル基との開環付加反応を行い、酸価が9.9、環球法による軟化点が114℃、DSCによるTgが63℃、GPC法によるMnが4,000、Mwが16,000であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル樹脂(P−2)と略記する。
【0100】
合成例3(比較対照用ポリエステル樹脂の調製)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2)1698部およびシクロヘキサンジメタノール163部を仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド1.4部を投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸943部およびイソフタル酸111部を徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を220℃まで上げ、その後3時間を要して温度を245℃まで上げた。さらに同温度で8時間反応させ、酸価が16.0、環球法による軟化点が115℃、DSCによるTgが65℃、GPC法によるMnが4,200、Mwが18,000であるポリエステル樹脂を得た。これを比較対照用ポリエステル樹脂(P′−1)と略記する。
【0101】
実施例1
樹脂の濃度が10%となる条件でアセトンに対するポリエステル樹脂(P−1)の溶解性の判定をASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行ったところ、前記判定法の判定区分で「境界線上の溶液」であった。
【0102】
ポリエステル樹脂(P−1)の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水2.9部とイオン交換水397.1部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率〔水性媒体中のアンモニアのモル数(Ma)のポリエステル樹脂(P−1)中のカルボキシル基のモル数(Mc)に対する比[(Ma)/(Mc)]を百分率で表したもの。以下同様。〕は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体1を得た。
【0103】
得られたポリエステル樹脂微粒子水性分散体1の不揮発分、体積平均粒子径、粒度分布、残留溶剤量の測定と、保存安定性試験を行った。不揮発分、体積平均粒子径、粒度分布、残留溶剤量の測定は前記した方法を用いて測定し、保存安定性試験は下記に示す方法に従った。結果を第1表に示す。
【0104】
保存安定性試験の方法:ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1を容器に入れ密閉し、25℃で6ヶ月間静置保存し、性状を目視で観察し以下の通り評価した。
×:容器の底部に沈降物がある。
○:均一な分散体であり、容器の底に沈殿物が認められない。
【0105】
実施例2
実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(P−2)の溶解性の判定を行ったところ、判定区分で「境界線上の溶液」であった。
【0106】
ポリエステル樹脂(P−1)100部の代わりにポリエステル樹脂(P−2)100部を使用した以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体2を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0107】
実施例3
ポリエステル樹脂(P−1)49部、リ−ガル330(キャボット社製のカーボンブラック)30部、ビスコ−ル550P(株式会社三洋化成製のポリプロピレンワックス)9部及びボントロンE−80(オリエント化学工業株式会社製の帯電制御剤)12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付の2Lのオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより黒色のり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水2.9部とイオン交換水397.1部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた黒色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。得られた初期水性分散体を攪拌を続けながら30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体3を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0108】
実施例4
ポリエステル樹脂(P−1)100部およびリーガルR330 100部とを混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーを用いて溶融混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびアセトン100部とをプロペラ翼付の2Lのオートクレーブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより黒色のり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水5部とイオン交換水400部からなる90℃に予備加熱した水性媒体405部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた黒色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は259モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体4を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0109】
実施例5
リーガルR330 100部の代わりにビスコール550P 100部を用いた以外は実施例4と同様にしてポリエステル樹脂微粒子水性分散体5を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0110】
実施例6
リーガルR330 100部の代わりにボントロンE−80 100部を用いた以外は実施例4と同様にしてポリエステル樹脂微粒子水性分散体6を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0111】
比較例1
樹脂の濃度を10%から15%に変更し、かつ、アセトンの代わりにテトラヒドロフラン(THF)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂(P′−1)の溶解性の判定を行ったところ、判定区分は共に「完全な溶液」であった。
【0112】
ポリエステル樹脂(P′−1)の粗粉砕物100部およびTHF100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、25%アンモニア水2.9部とイオン交換水397.1部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中にポリエステル樹脂を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去して比較対照用ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1′を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0113】
比較例2
ポリエステル樹脂(P′−1)49部、リ−ガル330 30部、ビスコ−ル550P 9部およびボントロンE−80 12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびTHF100部をプロペラ翼付の2Lのオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、25%アンモニア水2.9部とイオン交換水397.1部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に前記混練物を微粒子状に分散させた黒色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。得られた初期水性分散体を攪拌を続けながら30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去して比較対照用ポリエステル樹脂微粒子水性分散体2′を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0114】
【表1】
Figure 0004106613
【0115】
【表2】
Figure 0004106613
【0116】
実施例7
アンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1 300部、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体3 100部及びアセトン40部を仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20部と1%塩化カルシウム水溶液20部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色粒子を含むポリエステル樹脂微粒子水性分散体を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でアセトンを留去し、イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、ポリエステル樹脂微粒子を得た。このポリエステル樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定を測定したところ、残留溶剤量は20ppm(検出限界)以下であり、体積平均粒子径は5.9μm、粒度分布は1.3であった。このポリエステル樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナー1を調製した。このトナーを用いて得られる画像の評価を下記に示す方法で行った。結果を第3表に示す。
【0117】
画像評価方法:トナー1を市販のフルカラ−複写機に装填し、テストチャートとして電子写真学会発行のA4カラ−用(番号5−1)を用いて1200dpiの画像を形成したときの1dot lineの解像性を下記判定に従い評価した。
◎:完全な1dot lineを形成している。
○:ほぼ完全な1dot lineを形成している。
×:不完全な1dot lineを形成している。
××:1dot lineを形成していない。
【0118】
実施例8
アンカー翼、コンデンサーを備えたオートクレーブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1 280部、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体4 56部、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体5 40部およびポリエステル樹脂微粒子水性分散体6 24部を仕込み、50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20部と1%塩化カルシウム20部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色粒子を含むポリエステル樹脂微粒子水性分散体を得た。イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、ポリエステル樹脂微粒子を得た。このポリエステル樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定を測定したところ、残留溶剤量は20ppm(検出限界)以下であり、体積平均粒子径は6.0μm、粒度分布は2.1であった。このポリエステル樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナー2を調製した。実施例7と同様に評価を行いその結果を第3表に示す。
【0119】
実施例9
アンカー翼、コンデンサーを備えたオートクレーブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1 280部、リーガルR330 5部に界面活性剤0.05部とイオン交換水10部を加えてホモジナイザー処理した着色剤、ビスコール550Pを乳化した乳化液を固形分換算で2部、および、T−77(保土ヶ谷化学工業株式会社製の帯電制御剤)1.5部をアセトン35部に溶解したものを仕込み、50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20部と1%塩化カルシウム20部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色粒子を含むポリエステル樹脂微粒子水性分散体を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でアセトンを留去しイオン交換水で分散体を3回洗浄を繰り返した後、水と分離後乾燥し、ポリエステル樹脂微粒子を得た。このポリエステル樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定を測定したところ、残留溶剤量は20ppm(検出限界)以下であり、体積平均粒子径は6.1μm、粒度分布は2.3であった。このポリエステル樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナー3を調製した。実施例7と同様に評価を行いその結果を第3表に示す。
【0120】
比較例3
ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1 300部およびポリエステル樹脂微粒子水性分散体3 100部を用いる代わりに比較対照用ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1′ 300部および比較対照用ポリエステル樹脂微粒子水性分散体2′ 100部を用いる以外は実施例7と同様にしてポリエステル樹脂微粒子を得た。このポリエステル樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定を測定したところ、残留溶剤量は600ppm、体積平均粒子径は6.5μm、粒度分布は3.3であった。このポリエステル樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合して比較対象用トナー1′を調製した。実施例7と同様に評価を行いその結果を第3表に示す。
【0121】
比較例4
ポリエステル樹脂(P′−1)49部、リ−ガル330 30部、ビスコ−ル550P 9部およびボントロンE−80 12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびTHF100部をプロペラ翼付の2Lのオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、500rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、25%アンモニア水1.4部とイオン交換水398.6部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた黒色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は70モル%であった。得られた初期水性分散体を攪拌を続けながら30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去して後、得られた分散体をイオン交換水で3回洗浄を繰り返した後、水と分離後乾燥し、ポリエステル樹脂微粒子を得た。このポリエステル樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定を測定したところ、残留溶剤量は650ppmであり、体積平均粒子径は6.6μm、粒度分布は3.8であった。このポリエステル樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合して比較対照用トナー2′を調製した。実施例7と同様に評価を行いその結果を第3表に示す。
【0122】
【表3】
Figure 0004106613
【0123】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、ポリエステル樹脂としてアルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることができる沸点100℃未満の有機溶剤(S)、好ましくは水と相溶する有機溶剤を用い、前記ポリエステル樹脂(P)に前記有機溶剤(S)で吸収させて膨潤体とした後、転相乳化して前記膨潤体を微粒子状で水性媒体中に分散させ、次いで得られた分散体から前記有機溶剤の除去を行うため、有機溶剤の除去が容易で、樹脂微粒子内に残存する残存溶剤が極めて少ない熱可塑性樹脂微粒子水性分散体が得られる。
前記アルキル基/およびアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂を用いることにより、アルキル基およびアルケニル基とを含有しないポリエステル樹脂を用いた時と比べてポリエステル樹脂微粒子水性分散体中のポリエステル樹脂微粒子の安定性が格段に向上し、かつ、ポリエステル樹脂微粒子の形状も不定形の少ない球形である。
前記本発明の製造方法で得られるポリエステル樹脂微粒子水性分散から樹脂微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有する本発明の電子写真用トナーは、前記アルキル基/およびアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂を用いることにより不定形の少ない球形のトナーであり、耐久性と流動性が良好である。
また、前記本発明の製造方法で得られる電子写真用トナーは、残存溶剤が極めて少ない。

Claims (13)

  1. アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを含有するポリエステル樹脂(P)を、前記ポリエステル樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を塩基性化合物を含有する水性媒体中に混合して、ポリエステル樹脂(P)中のカルボキシル基の一部乃至全部の塩基性化合物による中和と、前記膨潤体の水性媒体中への微粒子状での分散とを行うことにより初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル樹脂(P)の微粒子が前記水性媒体中に分散した分散体を製造する第3工程とからなることを特徴とするポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  2. ポリエステル樹脂(P)と有機溶剤(S)とを加熱することにより前記膨潤体を製造する請求項1に記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  3. 前記第1工程においてポリエステル樹脂(P)と有機溶剤(S)とを加圧下で有機溶剤(S)の沸点以上の温度に加熱することにより前記膨潤体を製造し、前記第2工程において前記膨潤体を加圧下で有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下の温度で機械的剪断力により前記水性媒体中に微粒子状に分散させて前記初期水性分散体を製造する請求項1に記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  4. 前記第1工程においてポリエステル樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)より10〜50℃高い温度で前記膨潤体を製造し、前記第2工程においてポリエステル樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)より10〜50℃高い温度で前記初期水性分散体を製造する請求項3に記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  5. 有機溶剤(S)が水と相溶する有機溶剤である請求項3に記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  6. 有機溶剤(S)がアセトンおよび/またはイソプロピルアルコールである請求項3に記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  7. ポリエステル樹脂(P)100重量部に対する有機溶剤(S)の使用量が10〜200重量部で、かつ、ポリエステル樹脂(P)と有機溶剤(S)の合計100重量部に対する水の使用量が70〜400重量部である請求項3に記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  8. 前記ポリエステル樹脂(P)が、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂の水酸基にアルキル基またはアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有する酸価が1〜100のポリエステル樹脂、または、末端にカルボキシル基を有するポリエステルの末端カルボキシル基にアルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有する酸価が1〜100のポリエステル樹脂である請求項1〜7のいずれか1項記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  9. ポリエステル樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用することにより、着色剤(C)で着色されたポリエステル樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  10. 前記ポリエステル樹脂(P)が、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂の水酸基にアルキル基またはアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有する酸価が1〜100のポリエステル樹脂、または、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂のカルボキシル基にアルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有する酸価が1〜100のポリエステル樹脂である請求項9記載のポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  11. 請求項9または10記載の製造方法で得られたポリエステル樹脂微粒子水性分散体中のポリエステル樹脂(P)の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
  12. 請求項9または10記載の製造方法で得られたポリエステル樹脂微粒子水性分散体中のポリエステル樹脂(P)の微粒子を会合させた後分離し、乾燥して得られることを特徴とする電子写真用トナー。
  13. 請求項1〜9のいずれか1項記載の製造方法で得られたポリエステル樹脂微粒子水性分散体と着色剤(C)の水性分散体または着色樹脂粒子の水性分散体とを混合し、分散しているポリエステル樹脂(P)の微粒子と着色剤粒子または着色樹脂微粒子を会合させた後分離し、乾燥して得られることを特徴とする電子写真用トナー。
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