JP2004354706A - 電子写真用トナーの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】得られる画質が良好で、耐久性、耐オフセット性に優れる電子写真用トナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)の水性分散体(I)と、軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有し平均粒子径が樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂微粒子(P2)の水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法であり、アクリル系樹脂(p2)の軟化点がポリエステル系(p1)の軟化点より高く、かつ、樹脂微粒子(P1)および/または樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂微粒子である電子写真用トナーの製造法。
【選択図】 なし
【解決手段】軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)の水性分散体(I)と、軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有し平均粒子径が樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂微粒子(P2)の水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法であり、アクリル系樹脂(p2)の軟化点がポリエステル系(p1)の軟化点より高く、かつ、樹脂微粒子(P1)および/または樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂微粒子である電子写真用トナーの製造法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は得られる画質が良好で、耐久性、耐オフセット性に優れる電子写真用トナーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真用トナーにおいては、得られる画像の質の向上と耐ホットオフセット性が益々求められており、そのような市場の要求に対して、例えば、重量平均分子量30,000未満のポリエステル系樹脂と重量平均分子量30,000以上のポリエステル系樹脂と着色剤とを混合した樹脂溶融体を水性媒体に分散した後、樹脂微粒子の乾燥を行う電子写真用トナーの製造方法等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。前記特許文献1では、例えば実施例においては、前記重量平均分子量30,000未満のポリエステル系樹脂として軟化点が102℃のポリエステル樹脂を用い、このポリエステル樹脂により画像の質の向上を図り、前記重量平均分子量30,000以上のポリエステル系樹脂として軟化点が165℃のポリエステル樹脂を用い、このポリエステル樹脂により耐ホットオフセット性の向上を図っている。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1の製造方法では、前記2つのポリエステル樹脂を混合した樹脂溶融体を用いて電子写真用トナーを製造しているため、例えば実施例1においては電子写真用トナー表面に前記軟化点が102℃のポリエステル樹脂と前記軟化点が165℃のポリエステル樹脂と混在してしまう。そのため、前記軟化点が102℃のポリエステル樹脂の影響により耐ホットオフセット性が十分でない。また、前記電子写真用トナーは吸湿しやすいポリエステル樹脂を用いているため、吸湿により帯電量の経時的な減少が起こりやすく、耐久性が十分ではなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−330990号公報(第2頁、第7頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、得られる画質が良好で、耐オフセット性、耐久性に優れる電子写真用トナーの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見(a)〜(c)を見出し、本発明を完成するに至った。
(a)軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(I)と軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有した樹脂微粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを、前記アクリル系樹脂(p2)の軟化点が前記ポリエステル系(p1)の軟化点より高く、前記樹脂微粒子(P1)および/または前記樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂微粒子で、かつ、樹脂微粒子(P2)の平均粒子径が樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さくなるような組み合わせで用い、前記水性媒体(I)と前記水性媒体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させることにより樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面に樹脂微粒子(P2)を会合してなるシェル層を形成でき、コアシェル構造を有する電子写真用トナーを製造することができること。
(b)前記電子写真用トナーは、前記ポリエステル樹脂(p1)を含有する樹脂微粒子をコア粒子として配置することで画質が向上し、前記ポリエステル樹脂(p2)を含有する樹脂粒子をシェル層として配置することで耐ホットオフセット性が向上すること。
(c)前記電子写真用トナーは、前記コアシェル構造をとることでコア粒子に含有されるポリエステル樹脂が吸湿するのを防ぐので帯電量の経時的な減少が少なく耐久性に優れること。
【0007】
即ち本発明は、軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(I)と軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有し平均粒子径が前記樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂微粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法であり、前記アクリル系樹脂(p2)の軟化点が前記ポリエステル系(p1)の軟化点より高く、かつ、前記樹脂微粒子(P1)および/または前記樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂微粒子であることを特徴とする電子写真用トナーの製造法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)としては、例えば、乳化剤、懸濁安定剤等等を用いることにより水性媒体中に分散可能な非自己水分散性ポリエステル系樹脂や乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく、水性媒体中に分散可能な自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)等が挙げられるが、なかでも自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)が好ましい。また、前記ポリエステル系樹脂(p1)は、テトラヒドロフランやメチルエチルケトン等の常温で前記ポリエステル系樹脂(p1)を溶解できる有機溶剤に前記ポリエステル系樹脂(p1)を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で水性媒体(非自己水分散性ポリエステル系樹脂の場合は乳化剤等を含有する水性媒体。自己水分散性の中でも中和により水性媒体中に分散可能となるポリエステル系樹脂の場合は中和剤を含有する水性媒体)を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能なポリエステル系樹脂が好ましく、0.1μm以下の粒子状で分散することが可能なポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0009】
前記自己水分散性ポリエステル系樹脂としては、例えば、スルフォン酸金属塩、カルボン酸金属塩等の中和された酸基含有ポリエステル系樹脂;中和された塩基性基含有ポリエステル系樹脂;ヒドロキシポリオキシエチレンのようないわゆるノニオン構造が導入されたポリエステル系樹脂等の親水性セグメント含有ポリエステル系樹脂;カルボキシル基等の酸基を有し、アルカノールアミンなどの有機塩基、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等の中和剤を添加することにより水相中にてアニオン化することの可能なポリエステル系樹脂;アミノ基やピリジン環等の塩基性基を有し、有機酸、無機酸等の中和剤を添加することにより水相中でカチオン化することの可能なポリエステル系樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有ポリエステル系樹脂や酸基含有ポリエステル系が好ましく、吸湿性が低く保存が容易なことから酸基含有ポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0010】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂としては、例えば、中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂、カルボキシル基等の酸基を含有し、中和により自己水分散性ポリエステル系樹脂となるポリエステル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、中和されたカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂、中和されたスルフォン基含有ポリエステル系樹脂、中和されたリン酸基含有ポリエステル系樹脂等が挙げられる。自己水分散性ポリエステル樹脂として中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂を用いる時は中和されたスルフォン基含有ポリエステル系樹脂が好ましく、前記中和により自己水分散性ポリエステル系樹脂となるポリエステル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたポリエステル系樹脂を用いる時は中和されたカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂が好ましい。なお、中和された酸基含有ポリエステル系樹脂の中和を外した場合の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0011】
前記中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂は、例えば、二塩基酸またはその無水物と二価のアルコールと中和された酸基を有する二塩基酸とを必須成分として、必要に応じて、三官能以上の多塩基酸、その無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等を併用し、窒素雰囲気中で加熱下に酸価を測定しながら180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法等により調製することができる。
【0012】
前記した酸基含有ポリエステル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂等、スルフォン酸基含有ポリエステル系樹脂、リン酸基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂が好ましい。酸基を含有するポリエステル系樹脂の酸価としては1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0013】
前記カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂は、例えば、二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として、必要に応じて三官能以上の多塩基酸、その無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等をカルボキシル基が残存する組成比率で用い、窒素雰囲気中で加熱下に酸価を測定しながら180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法等により調製することができる。
【0014】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂や酸基含有ポリエステル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、上記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、種々の触媒を添加することもできる。
【0015】
前記触媒としては、例えば、酸化アンチモン、酸化バリウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、琥珀酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、蟻酸カドミウム、一酸化鉛、珪酸カルシウム、ジブチル錫オキシド、ブチルヒドロキシ錫オキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。
【0016】
前記中和された酸基を有する二塩基酸としては、例えば、スルフォテレフタル酸、3−スルフォイソフタル酸、4−スルフォフタル酸、4−スルフォナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルフォ−p−キシリレングリコール、2−スルフォ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩などの金属塩が挙げられる。
【0017】
前記二塩基酸およびその無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデシル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の線状脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族または環状脂肪族の二塩基酸等が挙げられる。
【0018】
二価のアルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の線状脂肪族ジオ−ル類;ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコ−ル等のアラルキレングリコ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、水添ビスフェノ−ルA等の環状脂肪族のジオ−ル類等が挙げられる。
【0019】
三官能以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0020】
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。
【0021】
三官能以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0022】
一価のアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0023】
前記した二塩基酸、その無水物、三官能以上の塩基酸、その無水物、一塩基酸等はそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、カルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステル又はアリ−ルエステルとなっているものも使用できる。
【0024】
前記した二価のアルコール、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等は、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用することもできる。
【0025】
また、例えば、ジメチロ−ルプロピオン酸、ジメチロ−ルブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸のような、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も使用できる。
【0026】
本発明で用いるポリエステル系樹脂(p1)は環球法による軟化点が70〜130℃である必要がある。軟化点が70℃より低いとトナーの強度の低下、耐久性の低下、耐ホットオフセット性の低下が起こり好ましくない。130℃より大きいと画質と低温定着性が良好でなくなるので好ましくない。ポリエステル系樹脂(p1)の軟化点は75〜125℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。また、ポリエステル系樹脂(p1)のゲルパーミエーション(GPC)法による重量平均分子量は3000〜40,000が好ましく、5,000〜35,000がより好ましい。ポリエステル系樹脂(p1)の示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(Tg)は40〜75℃が好ましく、45〜70℃がより好ましく、50〜65℃が特に好ましい。
【0027】
前記ポリエステル系樹脂(p1)は、後述するアクリル系樹脂(p2)と相溶性が良好なことにより画質が良好な電子写真用トナーが得られることから、アルキル基および/またはアルケニル基を含有するポリエステル樹脂であることが好ましい。なかでも、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂の末端水酸基に、炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基に炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂がより好ましい。
【0028】
前記炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する酸無水物としては、例えば、n−オクチル無水コハク酸、イソオクチル無水コハク酸、n−ドデセニル無水コハク酸、イソドデセニル無水コハク酸等が挙げられ、なかでも、イソドデシル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸が好ましい。
【0029】
前記炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物としては、例えば、シェルケミカル社製分岐脂肪酸のグリシジルエステルであるカ−ジュラ−E10;ヒマシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸等の脂肪酸のモノグリシジルエステル;イソノナン酸等の分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。
【0030】
また、後述するアクリル系樹脂(p2)と相溶性が良好なことにより画質が良好な電子写真用トナーが得られることから芳香族ニ塩基酸の水素添加物やその無水物を含有する二塩基酸を用いて調製されたポリエステル樹脂が好ましく、フタル酸の水素添加物やその無水物を用いて調製されたポリエステル樹脂がより好ましい。前記フタル酸の水素添加物やその無水物のなかでもヘキサヒドロフタル酸やその無水物および/またはテトラヒドロフタル酸やその無水物が好ましい。前記芳香族ニ塩基酸の水素添加物やその無水物の使用量としては、ポリエステル樹脂重量の0.1〜50重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、1〜10重量%が特に好ましい。
【0031】
本発明で用いる軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)としては、例えば、乳化剤、懸濁安定剤等等を用いることにより水性媒体中に分散可能な非自己水分散性アクリル系樹脂や乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく、水性媒体中に分散可能な自己水分散性アクリル系樹脂(p22)等が挙げられるが、なかでも自己水分散性アクリル系樹脂(p22)が好ましい。また、前記アクリル系樹脂(p2)は、テトラヒドロフランやメチルエチルケトン等の常温で前記アクリル系樹脂(p2)を溶解できる有機溶剤に前記アクリル系樹脂(p2)を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で水性媒体(非自己水分散性アクリル系樹脂の場合は乳化剤等を含有する水性媒体。自己水分散性の中でも中和により水性媒体中に分散可能となるアクリル系樹脂の場合は中和剤を含有する水性媒体)を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能なアクリル系樹脂が好ましく、0.1μm以下の粒子状で分散することが可能なアクリル系樹脂が特に好ましい。
【0032】
前記自己水分散性アクリル系樹脂としては、例えば、スルフォン酸金属塩、カルボン酸金属塩等の中和された酸基含有アクリル系樹脂;中和された塩基性基含有アクリル系樹脂;ヒドロキシポリオキシエチレンのようないわゆるノニオン構造が導入されたアクリル系樹脂等の親水性セグメント含有アクリル系樹脂;カルボキシル基等の酸基を有し、アルカノールアミンなどの有機塩基、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等の中和剤を添加することにより水相中にてアニオン化することの可能なアクリル系樹脂;アミノ基やピリジン環等の塩基性基を有し、有機酸、無機酸等の中和剤を添加することにより水相中でカチオン化することの可能なアクリル系樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有アクリル系樹脂や酸基含有アクリル系樹脂が好ましく、吸湿性が低く保存が容易なことから酸基含有アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0033】
前記した中和された酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、中和された酸基含有(メタ)アクリル系樹脂、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましい。
【0034】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂、カルボキシル基等の酸基を含有し、中和により自己水分散性アクリル系樹脂となるアクリル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたアクリル系樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、中和されたカルボキシル基含有アクリル系樹脂、中和されたスルフォン基含有アクリル系樹脂、中和されたリン酸基含有アクリル系樹脂等が挙げられる。自己水分散性アクリル系樹脂として中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂を用いる時は中和されたスルフォン基含有アクリル系樹脂が好ましく、前記中和により自己水分散性アクリル系樹脂となるアクリル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたアクリル系樹脂を用いる時は中和されたカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。尚、前記中和された酸基含有アクリル系樹脂の中和を外した場合の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0035】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂は、例えば、中和された基を有する単量体を必須として必要により他の単量体と共に分散剤や界面活性剤等を含有する水に加え、更に易溶性の重合開始剤を添加して行う懸濁重合法等により調製することができる。
【0036】
前記した酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、酸基含有(メタ)アクリル系樹脂、酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等が挙げられ、なかでも、酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましい。なお、酸基含有アクリル系樹脂の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0037】
前記酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル系樹脂、スルフォン酸基含有アクリル系樹脂、リン酸基含有アクリル系樹脂等が挙げられ、なかでもカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。
【0038】
前記カルボキシル基含有アクリル系樹脂は、カルボキシル基を有する単量体を必須として必要により他の単量体と共に分散剤や界面活性剤等を含有する水に加え、更に該単量体に易溶性の重合開始剤を添加して行う懸濁重合法等により調製することができる。
【0039】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂や酸基含有アクリル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。
【0040】
前記中和された基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩等が挙げられる。
【0041】
前記酸基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0042】
前記した中和された基を有する単量体や酸基を有する単量体と共に、(メタ)アクリル系樹脂、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等のアクリル系樹脂の調製に用いることの出来る他の単量体としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数のものを併用してよい。
【0043】
本発明で用いるアクリル系樹脂(p2)は環球法による軟化点が120〜190℃である必要がある。軟化点が120℃より低いとトナーの強度の低下、耐ホットオフセット性の低下が起こり好ましくない。190℃より大きいと低温定着性が良好でなくなり、微粒子化しにくく、画質も良好でなくなるので好ましくない。アクリル系樹脂(p2)の軟化点は135〜180℃が好ましく、140〜170℃がより好ましい。アクリル系樹脂(p2)のGPC法による重量平均分子量は50,000〜500,000が好ましく、60,000〜420,000がより好ましく、70,000〜350,000が特に好ましい。アクリル系樹脂(p2)のDSCによるTgは55〜85℃が好ましく、60〜80℃がより好ましく、66〜75℃が特に好ましい。
【0044】
本発明では、前記アクリル系樹脂(p2)の軟化点が前記ポリエステル系樹脂(p1)の軟化点よりも高くなる組み合わせで前記ポリエステル系樹脂(p1)とアクリル系樹脂(p2)とを用いる必要があるが、なかでも、ポリエステル系樹脂(p1)の軟化点と前記アクリル系(p2)軟化点との差が20℃以上となるような組み合わせで用いるのが好ましく、軟化点の差が30〜80℃となるような組み合わせで用いるのがより好ましい。
【0045】
本発明では前記樹脂微粒子(P1)および/または樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色されていることが必要である。着色は、本発明の製造方法で得られるコアシェル構造を有する樹脂微粒子が電子写真用トナーとして用いることができる程度になされていれば良く、例えば、樹脂微粒子(P1)が着色されており樹脂微粒子(P2)が着色されていなくても良いし、樹脂微粒子(P1)が着色されておらず樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色されていても良いし、樹脂微粒子(P1)および樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色されていても良いが、樹脂微粒子(P1)として着色された樹脂微粒子を用いるのが好ましい。着色された樹脂微粒子を含有する水性分散体は、例えば、ポリエステル系樹脂(p1)やアクリル系樹脂(p2)と着色剤(A)とを加圧ニーダー等を用いて混練した着色された樹脂を水性媒体中に分散させることにより得られる。
【0046】
前記着色剤(A)としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)等が挙げられる。
【0047】
前記着色剤(A)は、ポリエステル系樹脂(p1)やアクリル系樹脂(p2)100重量部に対して1〜20重量部の範囲内になるよう使用するのが好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0048】
本発明で用いる水性分散体(I)は樹脂微粒子(P1)の平均粒子径が1〜10μmである水性分散体が電子写真用トナーとして好適なトナーが得られることから好ましく、樹脂微粒子(P1)の平均粒子径が2〜8μmである水性分散体がより好ましい。
【0049】
樹脂微粒子(P1)は、ポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子を水性媒体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体中の樹脂微粒子を会合させて得られる会合微粒子や、ポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子を水性媒体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体と着色剤粒子の水性分散体および/または着色樹脂微粒子の水性分散体とを混合して混合分散体とし、前記混合分散体中のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子と着色剤粒子および/または着色樹脂微粒子とを会合させて得られる会合微粒子が好ましい。会合は、例えば、後述する樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)との会合を行う際の方法を用いることができる。
【0050】
前記会合微粒子を含有する水性分散体を製造する際には、会合を行う際にポリエステル系樹脂(p1)のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃で加熱するのが好ましく、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい。
【0051】
前記着色剤粒子の水性分散体もしくは別途製造した着色樹脂微粒子の水性分散体としては、着色剤粒子もしくは着色樹脂微粒子が水性媒体中に微粒子状で分散されているものであればよく、特に限定されないが、例えば、界面活性剤などを用いて着色剤(A)を乳化処理した水性分散体、着色剤(A)と樹脂を加熱溶融したのち、分散剤を含有する水中に分散した水性分散体等が挙げられる。これら水性分散体中における着色剤粒子や着色樹脂粒子の濃度は、目的とするトナーの着色剤濃度の5〜10倍であることが好ましい。
【0052】
前記会合微粒子の調製の際に用いるポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)の平均粒子径は0.05〜0.8μmが好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.1〜0.4μmが特に好ましい。
【0053】
本発明で水性分散体(II)中の樹脂微粒子(P2)の平均粒子径は前記樹脂微粒子(P1)の平均粒子径よりも小さいことが必要である。樹脂微粒子(P2)の平均粒子径は0.03〜1.0μmがシェル層を形成しやすいことから好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.2〜0.4μmがより好ましい。
【0054】
本発明の製造方法としては、例えば、
工程1.ポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アクリル系樹脂(p2)を含有した樹脂微粒子(P2)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(II)とをそれぞれ製造する工程、
工程2.前記工程1で得られた水性分散体(I)と水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、該コア粒子の表面に樹脂微粒子が会合してなるシェル層を形成させ、会合微粒子とする工程、
工程3.前記工程2で得られた会合微粒子を含む分散体から会合微粒子を回収し、必要によりイオン交換水等で洗浄した後乾燥させる工程、
からなる製造方法等が挙げられる。
【0055】
工程1で水性分散体(I)と水性分散体(II)は、例えば、前記特許文献1の製造方法を利用して調製することができる。具体的には、例えば、カルボキシル基含有のポリエステル樹脂やカルボキシル基含有アクリル系樹脂の樹脂溶融体を調製した後、前記溶融体を溶融状態を維持しつつ塩基性化合物を含有する水性媒体中に分散させれば良い。
【0056】
本発明で用いる水性分散体(I)は、なかでも、下記製法(1)で得られる分散体が樹脂微粒子内に残留する有機溶剤の量が少なく、かつ、平均粒子径の小さい電子写真用トナーが得られるので好ましい。また、本発明で用いる水性分散体(II)は、下記製法(2)で得られる分散体が樹脂微粒子内に残留する有機溶剤の量が少なく、かつ、平均粒子径の小さい電子写真用トナーが得られるので好ましい。更に、水性分散体(I)として前記製法(1)得られる分散体を用い、かつ、水性分散体(II)として前記製法(1)得られる分散体を用いのが最も好ましい。
製法(1):自己水分散性熱可塑性樹脂(P)を、前記自己水分散性熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記自己水分散性熱可塑性樹脂(P)の微粒子が前記水性媒体中に分散した分散体とする第3工程を有する製造方法であって、自己水分散性熱可塑性樹脂(P)として自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)を用いるポリエステル系樹脂微粒子水性分散体の製法。
製法(2):前記製法(1)において自己水分散性熱可塑性樹脂(P)として自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)を用いる代わりに自己水分散性アクリル系樹脂(p22)を用いるアクリル系樹脂微粒子水性分散体の製法。
【0057】
前記製法(1)や製法(2)では必要に応じて例えば会合等の工程を行っても良い。
【0058】
前記製法(1)や製法(2)で用いる有機溶剤(S)は、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点〔常圧(101.3KPa)における沸点をいう。以下同様。〕100℃未満の有機溶剤であればよい。ポリエステル系樹脂(P12)やアクリル系樹脂(p22)を溶解する有機溶剤および/または沸点100℃以上の有機溶剤を用いた場合は、第3工程での有機溶剤が除去しにくくなるし、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を膨潤させることができない有機溶剤を用いた場合は、第2工程でのポリエステル系樹脂(p12)およびアクリル系樹脂(p22)の水性媒体中への分散が困難となるため、いずれも好ましくない。
【0059】
なお、前記有機溶剤(S)とは、有機溶剤とポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)と組み合わせて用いた場合に、25℃でのポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の前記有機溶剤への溶解度が15重量%以下となる有機溶剤を意味し、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の前記有機溶剤への溶解度が0重量%の有機溶剤を意味するものではない。
【0060】
前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定は、例えば、ASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2結果の解釈(Interpretation of Results:)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行うことができる。
【0061】
前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定は、具体的には粒子状のポリエステル系樹脂(p12)またはアクリル系樹脂(p22)15重量部と有機溶剤85重量部をフラスコにとって密栓し、25℃で16時間振とうした後の溶解状態を観察し、前記ASTM D3132−84の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された下記判定区分で、1.「完全な溶液」か、2.「境界線の溶液」か、3.「不溶」かのどの区分に属するか判定することにより行うことができる。
1.「完全な溶液(Complete Solution)」;明瞭な固形物やゲル粒子を含まない単一の透明な相(A single, clear liquid phase with no distinct solid or gel particle)。
2.「境界線の領域(Borderline Solution)」;明瞭な相分離を含まない透明または混濁した相(Cloudy or turbid but without distinct phase separation)。
3.「不溶(Insoluble)」;2相に分離:分離したゲル固体相を含む液体又は2相に相分離した液体(Two phases : either a liquid with separate gel solid phase or two separate liquids)。
尚、本発明では、粒子状のポリエステル系樹脂(p12)や粒子状のアクリル系樹脂(p22)として、孔径3mmのスクリーンを通過させたポリエステル系樹脂(p12)の粗粉砕物とアクリル系樹脂(p22)の粗粉砕物を前記判定に使用した。
【0062】
前記製法(1)や前記製法(2)では、ポリエステル系樹脂(p12)と有機溶剤(S)とを、また、アクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)とを、前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定において、2.「境界線の溶液」、または、3.「不溶」となる組み合わせで用いる。この組み合わせでポリエステル系樹脂(p12)と有機溶剤(S)とを、およびアクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)とを用いることにより第3工程において脱溶剤が容易に行える。
【0063】
本発明で用いる有機溶剤(S)としては、なかでも前記製法(1)や前記製法(2)の第3工程での脱溶剤が更に容易に行えることから、25℃でのポリエステル系樹脂(p12)とアクリル系樹脂(p22)の溶解度が10重量%以下となる有機溶剤であることが好ましく、7重量%以下となる有機溶剤であることがより好ましい。このときの溶解度の判定は、有機溶剤が前記樹脂濃度15重量%で有機溶剤(S)に該当するか否かの判定を行う代わりに、樹脂濃度が10重量%または7重量%での判定を行うことにより可能である。
【0064】
さらに、前記有機溶剤(S)としては、水性媒体中に分散された粒子状の膨潤体からの除去が容易で、残留溶剤が極めて少ない樹脂粒子が容易に効率良く経済的に製造できることから、水と相溶する有機溶剤が好ましい。ただし、この水と相溶する有機溶剤としては、水と有機溶剤がすべての混合比で均一相を形成する必要はなく、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を有機溶剤(S)で膨潤させて得られる膨潤体の水性媒体への分散を行う際の温度および水と有機溶剤の組成範囲において相溶すれば十分である。有機溶剤(S)は、この条件を満たせるものであれば、単一もしくは混合溶剤のどちらでも差し支えないが、第3工程で有機溶剤(S)の除去を行う際の温度において水と相溶するものが好ましく、25℃で水と相溶するものがより好ましい。なかでも、有機溶剤(S)としては、25℃における水への溶解度が50重量%以上であることが好ましく、25℃において全ての割合で水と相溶することが特に好ましい。さらに、有機溶剤(S)が混合溶剤の場合は、使用する有機溶剤の沸点がいずれも100℃未満であることが好ましい。また、有機溶剤(S)の沸点は40〜90℃であることがより好ましい。更に好ましくは40〜85℃であり、最も好ましくは40〜60℃である。
【0065】
前記前記水と相溶する有機溶剤としては、例えば、アセトン(溶解度:全ての割合で水と相溶する。沸点:56.1℃)等のケトン類;メタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:64.7℃)、エタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:78.3℃)、イソプロピルアルコール(解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:82.26℃)等のアルコール類;酢酸メチル(溶解度:24重量%、沸点:56.9℃)等のエステル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合した混合溶剤を用いても良い。有機溶剤として好ましいものはケトン類、アルコール類であり、より好ましいものはアセトン、イソプロピルアルコールであり、最も好ましいものはアセトンである。
【0066】
前記有機溶剤(S)の使用量としては、目的とする樹脂微粒子の粒径にもよるが、第1工程においてポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)が有機溶剤(S)を十分に吸収し、膨潤して微粒子状での分散が容易なのり状の膨潤体とすることができること、第2工程において前記膨潤体の水性媒体への分散が容易であること、分散を完結させるために用いる水性媒体の使用量が抑制でき、水性分散体中の有機溶剤(S)の含有量が大きくならず製造効率が良好となることから、前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)100重量部に対して5〜300重量部が好ましく、より好ましくは10〜200重量部であり、最も好ましくは20〜150重量部である。
【0067】
水性媒体の使用量は、ポリエステル系樹脂(p12)と有機溶剤(S)との合計、またはアクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)との合計100重量部に対して70〜400重量部が好ましく、100〜250重量部がより好ましい。
【0068】
本発明で用いる水性媒体としては、例えば、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)として、乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく水性媒体中への分散が可能な樹脂を用いた場合は水が好ましく、また、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)として、乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく中和により水性媒体中への分散が可能となる樹脂を用いた場合は中和剤を含有させた水が好ましい。なお、これらの水性媒体には、必要に応じて、更に乳化剤、懸濁安定剤等を含有させることもできるが、通常は含有させないことが好ましい。
【0069】
前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル樹脂(p22)として、中和により水性媒体中への分散が可能となるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂を用いた場合、これらの樹脂に自己水分散性を付与するために、ポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂を有機溶剤(S)で膨潤させて得られる膨潤体を水性媒体中に分散させる第2工程までの任意の工程において中和剤による中和を行うが、なかでも前記膨潤体を水性媒体中に分散させる第2工程において中和剤を含有させた水性媒体を用いて中和することが好ましい。
【0070】
前記中和により水性媒体中への分散が可能となるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂が酸基含有樹脂である場合に酸基の中和に用いる中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ化合物;ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩;前記アルカリ金属の酢酸塩類;アンモニア水;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。なかでも、アンモニア水が好ましい。
【0071】
また、前記中和により水性媒体中への分散が可能となるアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂が塩基性基含有樹脂である場合に塩基性基の中和に用いる中和剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。
【0072】
前記中和剤の使用量は、酸基含有樹脂中の酸基の当量、または、塩基性基含有樹脂中の塩基性基の当量に対して、それぞれ0.9〜5.0倍当量となる量であることが好ましく、1.0〜3.0倍当量となる量であることがより好ましい。
【0073】
前記製法(1)や製法(2)の第1工程で膨潤体を製造する方法としては、特に限定されないが、短時間で前記膨潤体が得られるし、その後第2工程での前記膨潤体の水性媒体中への分散も容易になることから、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル樹脂(p22)として粒子状の樹脂を用い、前記有機溶剤(S)と共に加熱することにより前記膨潤体を製造することが好ましく、さらに加圧下で前記膨潤体を製造することがより好ましい。この際、前記ポリエステル系樹脂(p12)と有機溶剤(S)の加熱温度や前記アクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)の加熱温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点以上が好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点〜180℃がより好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点+10℃〜120℃が特に好ましい。また、系内の加圧圧力としては、ゲージ圧で0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくはゲージ圧で0.2〜1.5MPa、更に好ましくはゲージ圧で0.3〜1.0MPaである。系内を加圧する方法としては、例えば、前記膨潤体を得るための加熱により前記有機溶剤(S)を気化させて系内を加圧する方法、あらかじめ系内に不活性ガスを導入して予備加圧した後、加熱して前記有機溶剤(S)の気化によりさらに加圧する方法等が挙げられるが、有機溶剤(S)の還流、沸騰が抑制できると共に、粒度分布の狭いポリエステル系樹脂微粒子水性分散体を得られることから、予備加圧する方法が好ましい。予備加圧としては0.05〜0.5MPaが好ましい。
【0074】
前記第1工程において前記膨潤体を得た後、第2工程で膨潤体中に微粒子状で分散させて初期水性分散体を製造する方法としては、特に限定されないが、前記膨潤体の水性媒体中への分散が容易になることから、第1工程において加圧下で前記有機溶剤(S)の沸点以上の温度に加熱することにより得られた膨潤体を用い、前記膨潤体を加圧下で前記有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下の温度で機械的剪断力により前記水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とする方法が好ましい。この際の系の温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点〜180℃が好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点+10℃〜120℃が特に好ましい。また、この系の圧力としては、ゲージ圧で0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくはゲージ圧で0.2〜1.5MPa、更に好ましくはゲージ圧で0.3〜1.0MPaである。なお、前記膨潤体の作成とこの分散体の作成とを同一容器内で行う場合、分散体作成開始時の系の加熱加圧条件は、前記膨潤体の作成終了時の温度および圧力と同様であることが好ましい。ここで用いる水性媒体の温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下であることが好ましく、なかでも前記有機溶剤(S)の沸点以上100℃未満であって、かつ、第2工程開始時の系の温度−20℃〜第2工程開始時の系の温度の範囲内がより好ましい。
【0075】
さらに、前記第1工程で膨潤体を製造する際の温度、および、前記第2工程で初期水性分散体を製造する際の温度はそれぞれ、前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の融点や軟化点より低温であることが好ましく、それぞれ前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)のガラス転移温度(Tg)以下の温度であってもよいが、なかでも、それぞれ前記有機溶剤(S)の沸点以上であって、かつ、ガラス転移温度(Tg)より10〜50℃高い温度であることが好ましい。なお、第1工程で膨潤体を製造する際の温度と第2工程で初期水性分散体を製造する際の温度は同一でも異なっていてもよい。
【0076】
前記製法(1)や製法(2)としては、例えば以下の▲1▼〜▲3▼で示す方法等が代表的な製法として挙げられる。
▲1▼第1工程として、密閉容器にポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)とを仕込み、加熱下、好ましくは加熱加圧下で、攪拌下にポリエステル系樹脂(p12)やポリエステル系樹脂(p22)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造した後、第2工程として、得られた膨潤体を攪拌等の機械的剪断力により、好ましくは加熱加圧下で、中和剤を含有していてもよい水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0077】
▲2▼前記▲1▼の第1工程と同様にして前記膨潤体を得た後、第2工程として、得られた膨潤体と中和剤を含有していてもよい水性媒体とを連続乳化分散機に連続的に供給しながら機械的剪断力により前記膨潤体を前記水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0078】
▲3▼第1工程として、押出機等の溶融混練により溶融されたポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)または合成された溶融状態のポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)に、圧入等の方法で有機溶剤(S)を連続的に供給し混合下に前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造し、得られた膨潤体を該ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の融点または軟化点未満の温度まで降温させた後、第2工程として、得られた膨潤体と中和剤を含有していてもよい水性媒体とを連続乳化分散機に連続的に供給しながら機械的剪断力により前記膨潤体を前記水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0079】
これらの方法の中でも、比較的容易にポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の樹脂微粒子水性分散体が得られることから、前記▲1▼または▲2▼の方法が好ましい。前記▲1▼および▲2▼の方法で用いるポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の形状としては、比較的短時間で膨潤体とすることができることから、粒子状であることが好ましく、例えば、粒子径1〜7mmのペレット、孔径が2〜7mmのスクリーンを通過させた粗粉砕物、平均粒子径800μm以下の粉体等が挙げられる。
【0080】
以下に、前記▲1▼、▲2▼の方法によるポリエステル系樹脂微(p12)を含有する樹脂微粒子の分散体やアクリル系樹脂微(p22)を含有する樹脂微粒子の水性分散体のより具体的な製造例を挙げる。
まず、プロペラ翼付のガラス製2Lのオートクレーブを用い、このオートクレーブにポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を粉砕して得た粒子状物と有機溶剤(S)とを仕込み、不活性ガスを導入してオートクレーブ内を0.05〜0.5MPa予備加圧し、次いで10〜300rpmの攪拌下で有機溶剤(S)の沸点以上に昇温して有機溶剤(S)を一部気化させることによりオートクレーブ内を0.1〜2.0MPa(ゲージ圧)に加圧した後、50〜700rpmで3〜60分間攪拌してポリエステル系樹脂(p1)やポリエステル系樹脂(p2)を有機溶剤で膨潤させて膨潤体とする(第1工程)。
【0081】
予備加圧に用いる不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等が挙げられるが窒素ガスが好ましい。
【0082】
この工程で得られた前記膨潤体は、有機溶剤(S)を吸収したポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)と、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p2)に吸収されずに残った有機溶剤(S)との混合物である。なお、例えば、ポリエステル系樹脂(p12)とイソプロピルアルコールの系では、攪拌速度を50rpm程度にゆるめると、イソプロピルアルコールが樹脂相から分離して2相を形成するのが観察されるが、それでもよい。
【0083】
このようにして膨潤体を得た後、前記▲1▼の方法では、300〜1500rpmで攪拌しながら予め加熱しておいた水性媒体、例えば水もしくはアンモニア水を2〜30分間かけて加圧注入して転相乳化させて、前記膨潤体が微粒子状に分散した初期水性分散体とする(第2工程)。このとき、前記膨潤体中の有機溶剤(S1)は局部的な沸騰と還流が起こっており、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)と親和性の低い有機溶剤(S)の分子はポリエステル系樹脂(p12)やポリエステル系樹脂(p22)から離れやすく、かつ転相乳化しやすくする環境を形成していると考えられる。
【0084】
また、前記▲2▼の方法では、膨潤体を得た後、連続乳化分散機、例えば、特開平9−311502号公報に開示されているスリットを有するリング状固定子とスリットを有するリング状回転子とを同軸状に設けた高速回転型連続乳化分散機等を使用して連続的に水性媒体中に該膨潤体を微粒子状で分散させて分散体とする(第2工程)。この場合、前記膨潤体と前記水性媒体とを所定の温度、圧力条件で連続乳化分散機に送り込み、前記回転子を300〜10000rpmで回転させれば良い。
【0085】
前記膨潤体が微粒子状で分散した分散体を得た後、得られた分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の樹脂微粒子が水性媒体中に分散した分散体が得られる(第3工程)。前記有機溶剤(S)の除去方法としては、例えば、減圧チャンバー中にスプレーする方法、脱溶剤缶壁内面に薄膜を形成させる方法、溶剤吸収用充填剤入りの脱溶剤缶を通過させる方法等が挙げられる。前記有機溶剤(S)を除去する方法の一例として、ロータリーエバポレーターを使用した除去方法を以下に記す。
試料量;500ml
容器;2Lなす型フラスコ
回転数;60rpm
バス温度;47℃
減圧度;13.3KPaから20分間かけて1.33KPaに減圧度を高め、引き続き10分間1.33KPaで脱溶剤する。
【0086】
前記製法(1)や製法(2)では、製造条件を種々変更することによりポリエステル系樹脂(p12)を含有する樹脂微粒子の水性分散体やアクリル系樹脂(p22)を含有する樹脂微粒子の水性分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を0.01〜50μm程度の範囲内で自由に制御することが可能である。
【0087】
前記製法(1)や製法(2)において、得られる分散体中のポリエステル系樹脂(P12)を含有する樹脂微粒子やアクリル系樹脂(P22)を含有する樹脂微粒子の平均粒径を小さく制御するためには、例えば、次に記す手段等をとれば良い。
▲1▼ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)中の酸基または中和された酸基の濃度等の親水性セグメント濃度を高くする。
▲2▼ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)として中和により水性媒体中への分散が可能となるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂を用いた場合、中和剤の量を大きくする。
▲3▼ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)に対する有機溶剤(S)の使用量を大きくする。
▲4▼分散体製造時の温度を高くする。
▲5▼分散体製造時の攪拌速度を大きくする。
【0088】
逆に、得られる分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を大きくするためには、これらの条件を逆にしてやれば良い。なお、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)および有機溶剤(S)と共に、例えば着色剤(A)、磁性粉、ワックス、帯電制御剤等の添加剤を用いることによっても、分散体中の樹脂微粒子の平均粒径は大きくなる。
【0089】
次に、前記工程2で会合を行うことにより樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、コア粒子の表面に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる。ここで、「会合」について述べる。一般に前記した製造方法等により得られるような樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子は、その表面電荷に由来する静電反発力により凝集することなく水性媒体中に安定に存在するが、同時に、ファンデルワールス力によって樹脂粒子間には引力が働いている。そこで、何らかの作用で樹脂粒子表面電荷を適宜減少させてやると、静電反発力より引力が大きくなり、樹脂微粒子同志が凝集し始めて、より大きい粒子径に成長した樹脂粒子の分散体となる。これを本発明では会合という。この会合の温度はポリエステル系樹脂(p1)のガラス転移温度とアクリル系樹脂(p2)のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃が好ましく、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい。会合に要する時間は、通常2〜12時間であり、4〜10時間が好ましい。また、会合は、攪拌下、好ましくは穏やかな攪拌下、例えば、アンカー翼で10〜100rpm程度の回転数による攪拌下で行うと良い。
【0090】
前記の樹脂粒子表面電荷を減少もしくは失わせる方法としては、例えば、希塩酸、希硫酸、酢酸、蟻酸、炭酸などの酸をいわゆる逆中和剤として添加する方法や、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第2鉄、塩化カルシウム等の金属塩類やカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属錯体を添加する塩析等が挙げられる。又、会合工程におい着色剤などを分散処理したり、会合の進行を制御する目的で、必要に応じて界面活性剤を使用してもよい。
【0091】
前記界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルジスルフォン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド等のカチオン界面活性剤、アルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール等のノニオン界面活性剤等が挙げられ、適宜選択して使用することができる。
【0092】
前記工程2における水性分散体(I)と水性分散体(II)との混合割合〔(I)/(II)〕は固形分の重量比で1〜5が好ましく、1.5〜4がより好ましい。
【0093】
コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる際は、シェル層の厚さが0.2〜4μmになる様に会合を行うのが好ましく、厚さが0.3〜3μmになる様に会合を行うのがより好ましい。
【0094】
前記工程3で得られたコアシェル構造を有する粒子を回収する方法としては、例えば、濾過等が挙げられる。乾燥は、室温で放置して自然乾燥させてもよいし、電子写真トナーの性能に影響を及ぼさない温度、例えば、50℃程度で乾燥機を用いて行っても良い。
【0095】
本発明の電子写真用トナーは、磁性粉、ワックス等の添加剤を必要に応じて用いても良い。これらを含有する電子写真用トナーは、前記したポリエステル系樹脂(p1)やアクリル系樹脂(p2)と予め混練して混練物としてき、これらの混練物を用いた水性分散体を用いることにより製造することが出来る。これらの添加剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0096】
磁性粉としては、例えば、マグネタイト、フェライト、コバルト、鉄、ニッケル等の金属単体やその合金等が挙げられる。
【0097】
ワックスは、電子写真用トナー用のオフセット防止剤として使用できる。ワックスとしては、例えば、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィシュワックス、ステアリルビスアミド、酸化ワックス等の合成ワックス類や、カルナバワックス、ライスワックス等の天然ワックス等が挙げられる。
【0098】
また、帯電制御剤を用いると帯電特性が良好なトナーが得られる。帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、フッ素処理活性剤等のプラス帯電制御剤や、電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等のマイナス帯電制御剤等が挙げられる。
【0099】
本発明において、水性分散体(I)や水性分散体(II)中の不揮発分の割合は、前記水性分散体を真空乾燥器中に100℃、0.1KPa、3時間の条件で放置し、前記水性分散体の重量変化から求めた。また、微粒子の粒径は、0.001〜2μmの粒子径測定はLeeds+Northrup社製のMICROTRAC UPA150を用て測定し、1〜40μmの粒子測定はベックマンコールター社製マルチサイザーTM3を用いて測定した。
【0100】
また、前記水性分散体中の残留溶剤の定量は、下記条件でガスクロマトグラフィ法で測定した。
測定機;島津GC−17A
カラム;ULBON HR−20M(PPG)
カラム温度;80〜150℃
昇温速度;10℃/分
【0101】
【実施例】
以下に本発明を、合成例、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。例中の部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0102】
合成例1〔ポリエステル系樹脂(p1)の合成〕
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコール325部およびネオペンチルグリコール546部を仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド1.0部を投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸1,632部、p−ターシャリブチル安息香酸43部及び安息香酸8部を徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して温度を245℃まで上げた。さらに同温度で8時間反応させ、酸価が10以下になったの確認した後、200℃まで降温する。200℃にてドデセニル無水コハク酸83部を加えて1時間反応させ、酸価が17.2mgKOH/g、環球法による軟化点が112℃、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(Tg)が62℃、GPC法による数平均分子量(Mn)が4,600、重量平均分子量(Mw)が10,300であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル樹脂1とする。
【0103】
合成例2〔アクリル系樹脂(p2)の合成〕
板バルブ及びタービン翼を備えた5Lのステンレス製オートクレーブに、水 2000容積部、けん化度が85%でかつ重合度が2,000であるポリビニルアルコールの1%水溶液 50容積部、スチレン 638部、メタクリル酸 16部、メタクリル酸メチル 283部、nブチルアクリレート 63部及びベンゾイルパーオキサイド 4.7部を仕込んで、700rpmの攪拌下に120℃に昇温させて2時間かけて重合を行った。次いで、90℃に降温してからオートクレーブに横型コンデンサーを取り付け、オートクレーブの気相を窒素ガスに置換した状態で3時間かけて常圧にて蒸留を行った。オートクレーブから内容物を取り出して、この内容物をナイロン網により水切りし、次いで流動乾燥機中で乾燥させて酸価が9.8mgKOH/g、環球法による軟化点が163℃、DSCによるTgが67℃、GPC法によるMnが15,300、Mwが185,000である重合体を得た。これをスチレン−アクリル樹脂1とする。
【0104】
合成例3(比較対照用ポリエステル樹脂の合成)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコール232部、ネオペンチルグリコール390部及びトリメチロールプロパン104部を仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド1.0部を投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸1,366部を徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して温度を245℃まで上げた。さらに同温度で8時間反応させ、酸価が8.7mgKOH/g、環球法による軟化点が162℃、DSCによるTgが66℃、GPC法によるMnが14,600、Mwが177,500であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル樹脂2とする。
【0105】
参考例1〔水性分散体(I)の調製〕
樹脂の濃度が10%となる条件でアセトンに対するポリエステル樹脂1の溶解性の判定をASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行ったところ、前記判定法の判定区分で「境界線上の溶液」であった。
【0106】
ポリエステル樹脂1 49部、リ−ガル330(キャボット社製のカーボンブラック)30部、ビスコ−ル550P(株式会社三洋化成製のポリプロピレンワックス)9部及びボントロンE−80(オリエント化学工業株式会社製の帯電制御剤)12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水1.5部とイオン交換水398.5部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率〔水性媒体中のアンモニアのモル数(Ma)のポリエステル樹脂1中のカルボキシル基のモル数(Mc)に対する比[(Ma)/(Mc)]を百分率で表したもの。以下同様。〕は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体1を得た。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.21μm、粒度分布は1.9、残留溶剤量は240ppmであった。
【0107】
参考例2(同上)
ポリエステル樹脂1 25部、リ−ガル330 54部、ビスコ−ル550P9部及びボントロンE−80 12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水0.8部とイオン交換水399.2部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体2を得た。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.23μm、粒度分布は2.2、残留溶剤量は260ppmであった。
【0108】
参考例3(同上)
ポリエステル樹脂1の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水3.1部とイオン交換水396.9部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体3を得た。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.19μm、粒度分布は1.5、残留溶剤量は210ppmであった。
【0109】
参考例4〔水性分散体(II)の調製〕
樹脂の濃度が10%となる条件でアセトンに対するスチレン−アクリル樹脂1の溶解性の判定をASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行ったところ、前記判定法の判定区分で「境界線上の溶液」であった。
【0110】
スチレン−アクリル樹脂1の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水1.8部とイオン交換水398.2部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してスチレン−アクリル樹脂微粒子水性分散体4を得た。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.30μm、粒度分布は2.7、残留溶剤量は300ppmであった。
【0111】
実施例1
アンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1 100部及びアセトン10部を仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20部と1%塩化カルシウム水溶液20部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色された平均粒径4μmのコア粒子を含む水性分散体を得た。この分散体にポリエステル樹脂微粒子水性分散体4 52部を添加し、更に、1%希塩酸10部と1%塩化カルシウム水溶液10部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液10部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、コア粒子の表面にポリエステル樹脂微粒子を会合させて得られたシェル層を有するコアシェル構造の樹脂微粒子を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でアセトンを留去し、イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、樹脂微粒子を得た。この樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定したところ、残留溶剤量は20ppm(検出限界)以下であり、体積平均粒子径は5.9μm、粒度分布は1.7であった。この樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナー1を調製した。このトナーを用いて得られる画像、耐オフセット性及び耐久性の評価を下記に示す方法で行った。結果を第1表に示す。
【0112】
画像評価方法:トナー1を電子写真用複写機「U−Bix5000」(小西六写真工業株式会社製)に装填し、テストチャートとして電子写真学会発行のA4カラ−用(番号5−1)を用いて1200dpiの画像を形成したときの1dot lineの解像性を下記判定に従い評価した。
◎:完全な1dot lineを形成している。
○:ほぼ完全な1dot lineを形成している。
×:不完全な1dot lineを形成している。
××:1dot lineを形成していない。
【0113】
耐オフセット性評価方法:トナー1を電子写真用複写機「U−Bix5000」に装填し、1万枚の連続走行試験後の画像の汚れ、及び表面温度200℃でのヒートロールへのトナーの付着を目視にて評価した。
○:画像が良好で、ヒートロールへのトナーの付着が全くない。
△:画像の汚れはないが、ヒートロールへのトナーの付着が部分的に存在する。または、ヒートロールへのトナーの付着は殆どないが、画像が汚れている。
×:画像が汚れており、ヒートロールにトナーが著しく付着している。
【0114】
耐久性の評価方法:トナー1をボールミル架台上で100rpmで60分間攪拌し、帯電量Q60(μq/g)を測定した。これをを3日間放置したのちもう一度帯電量Q(μq/g)を測定した。帯電量の減衰率(Q/Q60)×100(%)を求め、これを耐久性として評価した。この値が高い程耐久性に優れていることを示す。
○:85%以上
△:70%以上85%未満
×:70%未満
【0115】
実施例2
アンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体2 60部、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体3 40部及びアセトン10部を仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20部と1%塩化カルシウム水溶液20部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色された平均粒径4.1μmのコア粒子を含む水性分散体を得た。この分散体にポリエステル樹脂微粒子水性分散体4 52部を添加し、更に、1%希塩酸10部と1%塩化カルシウム水溶液10部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液10部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、コア粒子の表面にポリエステル樹脂微粒子を会合させて得られたシェル層を有するコアシェル構造の樹脂微粒子を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でアセトンを留去し、イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、樹脂微粒子を得た。この樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定したところ、残留溶剤量は20ppm(検出限界)以下であり、体積平均粒子径は5.8μm、粒度分布は1.5であった。この樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974とをヘンシェルミキサ−で混合してトナー2を調製した。このトナーを用いて得られる画像、耐オフセット性及び耐久性の評価を実施例1と同様にして行い、結果を第1表に示す。
【0116】
比較例1
ポリエステル系樹脂1 33部とポリエステル樹脂2 33部、リーガル330 20部、ビスコール550P 6部及びボントロンE−80 8部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシング行い加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物100部を180℃に加熱して着色樹脂熔融体をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.10重量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.4リットルの速度で、上記着色樹脂熔融体と同時に上記キャビトロンに移送した。この時の中和率は150モル%であった。
【0117】
回転子の回転速度が7500rpm、圧力が5Kg/cm2の運転条件で上記キャビトロンで製造した温度135℃のスラリーを10秒間で温度35℃まで冷却して出口から取り出した。このスラリー中のトナー粒子は球形であり、分散液の濃度は固形分が25%であった。コールターマルチサイザー2による測定により、トナー粒子の平均粒子径は6.2ミクロンであり、その粒度分布は1.6であった。粒子を濾別した後に水洗を行い、乾燥して樹脂微粒子を得た。この樹脂粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974とヘンシェルミキサーで混合してトナー1′を調整した。このトナーを用いて得られる画像、耐オフセット性及び耐久性の評価を実施例1と同様にして行い、結果を第1表に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られる電子写真用トナーは、軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、該コア粒子の表面上に軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有した樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層が形成されており、得られる画像の質が良好で、耐ホットオフセット性、耐久性にも優れる。
【発明の属する技術分野】
本発明は得られる画質が良好で、耐久性、耐オフセット性に優れる電子写真用トナーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真用トナーにおいては、得られる画像の質の向上と耐ホットオフセット性が益々求められており、そのような市場の要求に対して、例えば、重量平均分子量30,000未満のポリエステル系樹脂と重量平均分子量30,000以上のポリエステル系樹脂と着色剤とを混合した樹脂溶融体を水性媒体に分散した後、樹脂微粒子の乾燥を行う電子写真用トナーの製造方法等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。前記特許文献1では、例えば実施例においては、前記重量平均分子量30,000未満のポリエステル系樹脂として軟化点が102℃のポリエステル樹脂を用い、このポリエステル樹脂により画像の質の向上を図り、前記重量平均分子量30,000以上のポリエステル系樹脂として軟化点が165℃のポリエステル樹脂を用い、このポリエステル樹脂により耐ホットオフセット性の向上を図っている。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1の製造方法では、前記2つのポリエステル樹脂を混合した樹脂溶融体を用いて電子写真用トナーを製造しているため、例えば実施例1においては電子写真用トナー表面に前記軟化点が102℃のポリエステル樹脂と前記軟化点が165℃のポリエステル樹脂と混在してしまう。そのため、前記軟化点が102℃のポリエステル樹脂の影響により耐ホットオフセット性が十分でない。また、前記電子写真用トナーは吸湿しやすいポリエステル樹脂を用いているため、吸湿により帯電量の経時的な減少が起こりやすく、耐久性が十分ではなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−330990号公報(第2頁、第7頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、得られる画質が良好で、耐オフセット性、耐久性に優れる電子写真用トナーの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見(a)〜(c)を見出し、本発明を完成するに至った。
(a)軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(I)と軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有した樹脂微粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを、前記アクリル系樹脂(p2)の軟化点が前記ポリエステル系(p1)の軟化点より高く、前記樹脂微粒子(P1)および/または前記樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂微粒子で、かつ、樹脂微粒子(P2)の平均粒子径が樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さくなるような組み合わせで用い、前記水性媒体(I)と前記水性媒体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させることにより樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面に樹脂微粒子(P2)を会合してなるシェル層を形成でき、コアシェル構造を有する電子写真用トナーを製造することができること。
(b)前記電子写真用トナーは、前記ポリエステル樹脂(p1)を含有する樹脂微粒子をコア粒子として配置することで画質が向上し、前記ポリエステル樹脂(p2)を含有する樹脂粒子をシェル層として配置することで耐ホットオフセット性が向上すること。
(c)前記電子写真用トナーは、前記コアシェル構造をとることでコア粒子に含有されるポリエステル樹脂が吸湿するのを防ぐので帯電量の経時的な減少が少なく耐久性に優れること。
【0007】
即ち本発明は、軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(I)と軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有し平均粒子径が前記樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂微粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法であり、前記アクリル系樹脂(p2)の軟化点が前記ポリエステル系(p1)の軟化点より高く、かつ、前記樹脂微粒子(P1)および/または前記樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂微粒子であることを特徴とする電子写真用トナーの製造法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)としては、例えば、乳化剤、懸濁安定剤等等を用いることにより水性媒体中に分散可能な非自己水分散性ポリエステル系樹脂や乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく、水性媒体中に分散可能な自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)等が挙げられるが、なかでも自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)が好ましい。また、前記ポリエステル系樹脂(p1)は、テトラヒドロフランやメチルエチルケトン等の常温で前記ポリエステル系樹脂(p1)を溶解できる有機溶剤に前記ポリエステル系樹脂(p1)を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で水性媒体(非自己水分散性ポリエステル系樹脂の場合は乳化剤等を含有する水性媒体。自己水分散性の中でも中和により水性媒体中に分散可能となるポリエステル系樹脂の場合は中和剤を含有する水性媒体)を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能なポリエステル系樹脂が好ましく、0.1μm以下の粒子状で分散することが可能なポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0009】
前記自己水分散性ポリエステル系樹脂としては、例えば、スルフォン酸金属塩、カルボン酸金属塩等の中和された酸基含有ポリエステル系樹脂;中和された塩基性基含有ポリエステル系樹脂;ヒドロキシポリオキシエチレンのようないわゆるノニオン構造が導入されたポリエステル系樹脂等の親水性セグメント含有ポリエステル系樹脂;カルボキシル基等の酸基を有し、アルカノールアミンなどの有機塩基、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等の中和剤を添加することにより水相中にてアニオン化することの可能なポリエステル系樹脂;アミノ基やピリジン環等の塩基性基を有し、有機酸、無機酸等の中和剤を添加することにより水相中でカチオン化することの可能なポリエステル系樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有ポリエステル系樹脂や酸基含有ポリエステル系が好ましく、吸湿性が低く保存が容易なことから酸基含有ポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0010】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂としては、例えば、中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂、カルボキシル基等の酸基を含有し、中和により自己水分散性ポリエステル系樹脂となるポリエステル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、中和されたカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂、中和されたスルフォン基含有ポリエステル系樹脂、中和されたリン酸基含有ポリエステル系樹脂等が挙げられる。自己水分散性ポリエステル樹脂として中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂を用いる時は中和されたスルフォン基含有ポリエステル系樹脂が好ましく、前記中和により自己水分散性ポリエステル系樹脂となるポリエステル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたポリエステル系樹脂を用いる時は中和されたカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂が好ましい。なお、中和された酸基含有ポリエステル系樹脂の中和を外した場合の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0011】
前記中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂は、例えば、二塩基酸またはその無水物と二価のアルコールと中和された酸基を有する二塩基酸とを必須成分として、必要に応じて、三官能以上の多塩基酸、その無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等を併用し、窒素雰囲気中で加熱下に酸価を測定しながら180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法等により調製することができる。
【0012】
前記した酸基含有ポリエステル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂等、スルフォン酸基含有ポリエステル系樹脂、リン酸基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂が好ましい。酸基を含有するポリエステル系樹脂の酸価としては1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0013】
前記カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂は、例えば、二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として、必要に応じて三官能以上の多塩基酸、その無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等をカルボキシル基が残存する組成比率で用い、窒素雰囲気中で加熱下に酸価を測定しながら180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法等により調製することができる。
【0014】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂や酸基含有ポリエステル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、上記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、種々の触媒を添加することもできる。
【0015】
前記触媒としては、例えば、酸化アンチモン、酸化バリウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、琥珀酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、蟻酸カドミウム、一酸化鉛、珪酸カルシウム、ジブチル錫オキシド、ブチルヒドロキシ錫オキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。
【0016】
前記中和された酸基を有する二塩基酸としては、例えば、スルフォテレフタル酸、3−スルフォイソフタル酸、4−スルフォフタル酸、4−スルフォナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルフォ−p−キシリレングリコール、2−スルフォ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩などの金属塩が挙げられる。
【0017】
前記二塩基酸およびその無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデシル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の線状脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族または環状脂肪族の二塩基酸等が挙げられる。
【0018】
二価のアルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の線状脂肪族ジオ−ル類;ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコ−ル等のアラルキレングリコ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、水添ビスフェノ−ルA等の環状脂肪族のジオ−ル類等が挙げられる。
【0019】
三官能以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0020】
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。
【0021】
三官能以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0022】
一価のアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0023】
前記した二塩基酸、その無水物、三官能以上の塩基酸、その無水物、一塩基酸等はそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、カルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステル又はアリ−ルエステルとなっているものも使用できる。
【0024】
前記した二価のアルコール、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等は、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用することもできる。
【0025】
また、例えば、ジメチロ−ルプロピオン酸、ジメチロ−ルブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸のような、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も使用できる。
【0026】
本発明で用いるポリエステル系樹脂(p1)は環球法による軟化点が70〜130℃である必要がある。軟化点が70℃より低いとトナーの強度の低下、耐久性の低下、耐ホットオフセット性の低下が起こり好ましくない。130℃より大きいと画質と低温定着性が良好でなくなるので好ましくない。ポリエステル系樹脂(p1)の軟化点は75〜125℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。また、ポリエステル系樹脂(p1)のゲルパーミエーション(GPC)法による重量平均分子量は3000〜40,000が好ましく、5,000〜35,000がより好ましい。ポリエステル系樹脂(p1)の示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(Tg)は40〜75℃が好ましく、45〜70℃がより好ましく、50〜65℃が特に好ましい。
【0027】
前記ポリエステル系樹脂(p1)は、後述するアクリル系樹脂(p2)と相溶性が良好なことにより画質が良好な電子写真用トナーが得られることから、アルキル基および/またはアルケニル基を含有するポリエステル樹脂であることが好ましい。なかでも、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂の末端水酸基に、炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基に炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂がより好ましい。
【0028】
前記炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する酸無水物としては、例えば、n−オクチル無水コハク酸、イソオクチル無水コハク酸、n−ドデセニル無水コハク酸、イソドデセニル無水コハク酸等が挙げられ、なかでも、イソドデシル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸が好ましい。
【0029】
前記炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物としては、例えば、シェルケミカル社製分岐脂肪酸のグリシジルエステルであるカ−ジュラ−E10;ヒマシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸等の脂肪酸のモノグリシジルエステル;イソノナン酸等の分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。
【0030】
また、後述するアクリル系樹脂(p2)と相溶性が良好なことにより画質が良好な電子写真用トナーが得られることから芳香族ニ塩基酸の水素添加物やその無水物を含有する二塩基酸を用いて調製されたポリエステル樹脂が好ましく、フタル酸の水素添加物やその無水物を用いて調製されたポリエステル樹脂がより好ましい。前記フタル酸の水素添加物やその無水物のなかでもヘキサヒドロフタル酸やその無水物および/またはテトラヒドロフタル酸やその無水物が好ましい。前記芳香族ニ塩基酸の水素添加物やその無水物の使用量としては、ポリエステル樹脂重量の0.1〜50重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、1〜10重量%が特に好ましい。
【0031】
本発明で用いる軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)としては、例えば、乳化剤、懸濁安定剤等等を用いることにより水性媒体中に分散可能な非自己水分散性アクリル系樹脂や乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく、水性媒体中に分散可能な自己水分散性アクリル系樹脂(p22)等が挙げられるが、なかでも自己水分散性アクリル系樹脂(p22)が好ましい。また、前記アクリル系樹脂(p2)は、テトラヒドロフランやメチルエチルケトン等の常温で前記アクリル系樹脂(p2)を溶解できる有機溶剤に前記アクリル系樹脂(p2)を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で水性媒体(非自己水分散性アクリル系樹脂の場合は乳化剤等を含有する水性媒体。自己水分散性の中でも中和により水性媒体中に分散可能となるアクリル系樹脂の場合は中和剤を含有する水性媒体)を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能なアクリル系樹脂が好ましく、0.1μm以下の粒子状で分散することが可能なアクリル系樹脂が特に好ましい。
【0032】
前記自己水分散性アクリル系樹脂としては、例えば、スルフォン酸金属塩、カルボン酸金属塩等の中和された酸基含有アクリル系樹脂;中和された塩基性基含有アクリル系樹脂;ヒドロキシポリオキシエチレンのようないわゆるノニオン構造が導入されたアクリル系樹脂等の親水性セグメント含有アクリル系樹脂;カルボキシル基等の酸基を有し、アルカノールアミンなどの有機塩基、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等の中和剤を添加することにより水相中にてアニオン化することの可能なアクリル系樹脂;アミノ基やピリジン環等の塩基性基を有し、有機酸、無機酸等の中和剤を添加することにより水相中でカチオン化することの可能なアクリル系樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有アクリル系樹脂や酸基含有アクリル系樹脂が好ましく、吸湿性が低く保存が容易なことから酸基含有アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0033】
前記した中和された酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、中和された酸基含有(メタ)アクリル系樹脂、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましい。
【0034】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂、カルボキシル基等の酸基を含有し、中和により自己水分散性アクリル系樹脂となるアクリル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたアクリル系樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、中和されたカルボキシル基含有アクリル系樹脂、中和されたスルフォン基含有アクリル系樹脂、中和されたリン酸基含有アクリル系樹脂等が挙げられる。自己水分散性アクリル系樹脂として中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂を用いる時は中和されたスルフォン基含有アクリル系樹脂が好ましく、前記中和により自己水分散性アクリル系樹脂となるアクリル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたアクリル系樹脂を用いる時は中和されたカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。尚、前記中和された酸基含有アクリル系樹脂の中和を外した場合の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0035】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂は、例えば、中和された基を有する単量体を必須として必要により他の単量体と共に分散剤や界面活性剤等を含有する水に加え、更に易溶性の重合開始剤を添加して行う懸濁重合法等により調製することができる。
【0036】
前記した酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、酸基含有(メタ)アクリル系樹脂、酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等が挙げられ、なかでも、酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましい。なお、酸基含有アクリル系樹脂の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0037】
前記酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル系樹脂、スルフォン酸基含有アクリル系樹脂、リン酸基含有アクリル系樹脂等が挙げられ、なかでもカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。
【0038】
前記カルボキシル基含有アクリル系樹脂は、カルボキシル基を有する単量体を必須として必要により他の単量体と共に分散剤や界面活性剤等を含有する水に加え、更に該単量体に易溶性の重合開始剤を添加して行う懸濁重合法等により調製することができる。
【0039】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂や酸基含有アクリル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。
【0040】
前記中和された基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩等が挙げられる。
【0041】
前記酸基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0042】
前記した中和された基を有する単量体や酸基を有する単量体と共に、(メタ)アクリル系樹脂、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等のアクリル系樹脂の調製に用いることの出来る他の単量体としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数のものを併用してよい。
【0043】
本発明で用いるアクリル系樹脂(p2)は環球法による軟化点が120〜190℃である必要がある。軟化点が120℃より低いとトナーの強度の低下、耐ホットオフセット性の低下が起こり好ましくない。190℃より大きいと低温定着性が良好でなくなり、微粒子化しにくく、画質も良好でなくなるので好ましくない。アクリル系樹脂(p2)の軟化点は135〜180℃が好ましく、140〜170℃がより好ましい。アクリル系樹脂(p2)のGPC法による重量平均分子量は50,000〜500,000が好ましく、60,000〜420,000がより好ましく、70,000〜350,000が特に好ましい。アクリル系樹脂(p2)のDSCによるTgは55〜85℃が好ましく、60〜80℃がより好ましく、66〜75℃が特に好ましい。
【0044】
本発明では、前記アクリル系樹脂(p2)の軟化点が前記ポリエステル系樹脂(p1)の軟化点よりも高くなる組み合わせで前記ポリエステル系樹脂(p1)とアクリル系樹脂(p2)とを用いる必要があるが、なかでも、ポリエステル系樹脂(p1)の軟化点と前記アクリル系(p2)軟化点との差が20℃以上となるような組み合わせで用いるのが好ましく、軟化点の差が30〜80℃となるような組み合わせで用いるのがより好ましい。
【0045】
本発明では前記樹脂微粒子(P1)および/または樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色されていることが必要である。着色は、本発明の製造方法で得られるコアシェル構造を有する樹脂微粒子が電子写真用トナーとして用いることができる程度になされていれば良く、例えば、樹脂微粒子(P1)が着色されており樹脂微粒子(P2)が着色されていなくても良いし、樹脂微粒子(P1)が着色されておらず樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色されていても良いし、樹脂微粒子(P1)および樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色されていても良いが、樹脂微粒子(P1)として着色された樹脂微粒子を用いるのが好ましい。着色された樹脂微粒子を含有する水性分散体は、例えば、ポリエステル系樹脂(p1)やアクリル系樹脂(p2)と着色剤(A)とを加圧ニーダー等を用いて混練した着色された樹脂を水性媒体中に分散させることにより得られる。
【0046】
前記着色剤(A)としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)等が挙げられる。
【0047】
前記着色剤(A)は、ポリエステル系樹脂(p1)やアクリル系樹脂(p2)100重量部に対して1〜20重量部の範囲内になるよう使用するのが好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0048】
本発明で用いる水性分散体(I)は樹脂微粒子(P1)の平均粒子径が1〜10μmである水性分散体が電子写真用トナーとして好適なトナーが得られることから好ましく、樹脂微粒子(P1)の平均粒子径が2〜8μmである水性分散体がより好ましい。
【0049】
樹脂微粒子(P1)は、ポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子を水性媒体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体中の樹脂微粒子を会合させて得られる会合微粒子や、ポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子を水性媒体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体と着色剤粒子の水性分散体および/または着色樹脂微粒子の水性分散体とを混合して混合分散体とし、前記混合分散体中のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子と着色剤粒子および/または着色樹脂微粒子とを会合させて得られる会合微粒子が好ましい。会合は、例えば、後述する樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)との会合を行う際の方法を用いることができる。
【0050】
前記会合微粒子を含有する水性分散体を製造する際には、会合を行う際にポリエステル系樹脂(p1)のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃で加熱するのが好ましく、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい。
【0051】
前記着色剤粒子の水性分散体もしくは別途製造した着色樹脂微粒子の水性分散体としては、着色剤粒子もしくは着色樹脂微粒子が水性媒体中に微粒子状で分散されているものであればよく、特に限定されないが、例えば、界面活性剤などを用いて着色剤(A)を乳化処理した水性分散体、着色剤(A)と樹脂を加熱溶融したのち、分散剤を含有する水中に分散した水性分散体等が挙げられる。これら水性分散体中における着色剤粒子や着色樹脂粒子の濃度は、目的とするトナーの着色剤濃度の5〜10倍であることが好ましい。
【0052】
前記会合微粒子の調製の際に用いるポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)の平均粒子径は0.05〜0.8μmが好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.1〜0.4μmが特に好ましい。
【0053】
本発明で水性分散体(II)中の樹脂微粒子(P2)の平均粒子径は前記樹脂微粒子(P1)の平均粒子径よりも小さいことが必要である。樹脂微粒子(P2)の平均粒子径は0.03〜1.0μmがシェル層を形成しやすいことから好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.2〜0.4μmがより好ましい。
【0054】
本発明の製造方法としては、例えば、
工程1.ポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アクリル系樹脂(p2)を含有した樹脂微粒子(P2)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(II)とをそれぞれ製造する工程、
工程2.前記工程1で得られた水性分散体(I)と水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、該コア粒子の表面に樹脂微粒子が会合してなるシェル層を形成させ、会合微粒子とする工程、
工程3.前記工程2で得られた会合微粒子を含む分散体から会合微粒子を回収し、必要によりイオン交換水等で洗浄した後乾燥させる工程、
からなる製造方法等が挙げられる。
【0055】
工程1で水性分散体(I)と水性分散体(II)は、例えば、前記特許文献1の製造方法を利用して調製することができる。具体的には、例えば、カルボキシル基含有のポリエステル樹脂やカルボキシル基含有アクリル系樹脂の樹脂溶融体を調製した後、前記溶融体を溶融状態を維持しつつ塩基性化合物を含有する水性媒体中に分散させれば良い。
【0056】
本発明で用いる水性分散体(I)は、なかでも、下記製法(1)で得られる分散体が樹脂微粒子内に残留する有機溶剤の量が少なく、かつ、平均粒子径の小さい電子写真用トナーが得られるので好ましい。また、本発明で用いる水性分散体(II)は、下記製法(2)で得られる分散体が樹脂微粒子内に残留する有機溶剤の量が少なく、かつ、平均粒子径の小さい電子写真用トナーが得られるので好ましい。更に、水性分散体(I)として前記製法(1)得られる分散体を用い、かつ、水性分散体(II)として前記製法(1)得られる分散体を用いのが最も好ましい。
製法(1):自己水分散性熱可塑性樹脂(P)を、前記自己水分散性熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記自己水分散性熱可塑性樹脂(P)の微粒子が前記水性媒体中に分散した分散体とする第3工程を有する製造方法であって、自己水分散性熱可塑性樹脂(P)として自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)を用いるポリエステル系樹脂微粒子水性分散体の製法。
製法(2):前記製法(1)において自己水分散性熱可塑性樹脂(P)として自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)を用いる代わりに自己水分散性アクリル系樹脂(p22)を用いるアクリル系樹脂微粒子水性分散体の製法。
【0057】
前記製法(1)や製法(2)では必要に応じて例えば会合等の工程を行っても良い。
【0058】
前記製法(1)や製法(2)で用いる有機溶剤(S)は、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点〔常圧(101.3KPa)における沸点をいう。以下同様。〕100℃未満の有機溶剤であればよい。ポリエステル系樹脂(P12)やアクリル系樹脂(p22)を溶解する有機溶剤および/または沸点100℃以上の有機溶剤を用いた場合は、第3工程での有機溶剤が除去しにくくなるし、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を膨潤させることができない有機溶剤を用いた場合は、第2工程でのポリエステル系樹脂(p12)およびアクリル系樹脂(p22)の水性媒体中への分散が困難となるため、いずれも好ましくない。
【0059】
なお、前記有機溶剤(S)とは、有機溶剤とポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)と組み合わせて用いた場合に、25℃でのポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の前記有機溶剤への溶解度が15重量%以下となる有機溶剤を意味し、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の前記有機溶剤への溶解度が0重量%の有機溶剤を意味するものではない。
【0060】
前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定は、例えば、ASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2結果の解釈(Interpretation of Results:)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行うことができる。
【0061】
前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定は、具体的には粒子状のポリエステル系樹脂(p12)またはアクリル系樹脂(p22)15重量部と有機溶剤85重量部をフラスコにとって密栓し、25℃で16時間振とうした後の溶解状態を観察し、前記ASTM D3132−84の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された下記判定区分で、1.「完全な溶液」か、2.「境界線の溶液」か、3.「不溶」かのどの区分に属するか判定することにより行うことができる。
1.「完全な溶液(Complete Solution)」;明瞭な固形物やゲル粒子を含まない単一の透明な相(A single, clear liquid phase with no distinct solid or gel particle)。
2.「境界線の領域(Borderline Solution)」;明瞭な相分離を含まない透明または混濁した相(Cloudy or turbid but without distinct phase separation)。
3.「不溶(Insoluble)」;2相に分離:分離したゲル固体相を含む液体又は2相に相分離した液体(Two phases : either a liquid with separate gel solid phase or two separate liquids)。
尚、本発明では、粒子状のポリエステル系樹脂(p12)や粒子状のアクリル系樹脂(p22)として、孔径3mmのスクリーンを通過させたポリエステル系樹脂(p12)の粗粉砕物とアクリル系樹脂(p22)の粗粉砕物を前記判定に使用した。
【0062】
前記製法(1)や前記製法(2)では、ポリエステル系樹脂(p12)と有機溶剤(S)とを、また、アクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)とを、前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定において、2.「境界線の溶液」、または、3.「不溶」となる組み合わせで用いる。この組み合わせでポリエステル系樹脂(p12)と有機溶剤(S)とを、およびアクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)とを用いることにより第3工程において脱溶剤が容易に行える。
【0063】
本発明で用いる有機溶剤(S)としては、なかでも前記製法(1)や前記製法(2)の第3工程での脱溶剤が更に容易に行えることから、25℃でのポリエステル系樹脂(p12)とアクリル系樹脂(p22)の溶解度が10重量%以下となる有機溶剤であることが好ましく、7重量%以下となる有機溶剤であることがより好ましい。このときの溶解度の判定は、有機溶剤が前記樹脂濃度15重量%で有機溶剤(S)に該当するか否かの判定を行う代わりに、樹脂濃度が10重量%または7重量%での判定を行うことにより可能である。
【0064】
さらに、前記有機溶剤(S)としては、水性媒体中に分散された粒子状の膨潤体からの除去が容易で、残留溶剤が極めて少ない樹脂粒子が容易に効率良く経済的に製造できることから、水と相溶する有機溶剤が好ましい。ただし、この水と相溶する有機溶剤としては、水と有機溶剤がすべての混合比で均一相を形成する必要はなく、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を有機溶剤(S)で膨潤させて得られる膨潤体の水性媒体への分散を行う際の温度および水と有機溶剤の組成範囲において相溶すれば十分である。有機溶剤(S)は、この条件を満たせるものであれば、単一もしくは混合溶剤のどちらでも差し支えないが、第3工程で有機溶剤(S)の除去を行う際の温度において水と相溶するものが好ましく、25℃で水と相溶するものがより好ましい。なかでも、有機溶剤(S)としては、25℃における水への溶解度が50重量%以上であることが好ましく、25℃において全ての割合で水と相溶することが特に好ましい。さらに、有機溶剤(S)が混合溶剤の場合は、使用する有機溶剤の沸点がいずれも100℃未満であることが好ましい。また、有機溶剤(S)の沸点は40〜90℃であることがより好ましい。更に好ましくは40〜85℃であり、最も好ましくは40〜60℃である。
【0065】
前記前記水と相溶する有機溶剤としては、例えば、アセトン(溶解度:全ての割合で水と相溶する。沸点:56.1℃)等のケトン類;メタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:64.7℃)、エタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:78.3℃)、イソプロピルアルコール(解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:82.26℃)等のアルコール類;酢酸メチル(溶解度:24重量%、沸点:56.9℃)等のエステル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合した混合溶剤を用いても良い。有機溶剤として好ましいものはケトン類、アルコール類であり、より好ましいものはアセトン、イソプロピルアルコールであり、最も好ましいものはアセトンである。
【0066】
前記有機溶剤(S)の使用量としては、目的とする樹脂微粒子の粒径にもよるが、第1工程においてポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)が有機溶剤(S)を十分に吸収し、膨潤して微粒子状での分散が容易なのり状の膨潤体とすることができること、第2工程において前記膨潤体の水性媒体への分散が容易であること、分散を完結させるために用いる水性媒体の使用量が抑制でき、水性分散体中の有機溶剤(S)の含有量が大きくならず製造効率が良好となることから、前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)100重量部に対して5〜300重量部が好ましく、より好ましくは10〜200重量部であり、最も好ましくは20〜150重量部である。
【0067】
水性媒体の使用量は、ポリエステル系樹脂(p12)と有機溶剤(S)との合計、またはアクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)との合計100重量部に対して70〜400重量部が好ましく、100〜250重量部がより好ましい。
【0068】
本発明で用いる水性媒体としては、例えば、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)として、乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく水性媒体中への分散が可能な樹脂を用いた場合は水が好ましく、また、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)として、乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく中和により水性媒体中への分散が可能となる樹脂を用いた場合は中和剤を含有させた水が好ましい。なお、これらの水性媒体には、必要に応じて、更に乳化剤、懸濁安定剤等を含有させることもできるが、通常は含有させないことが好ましい。
【0069】
前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル樹脂(p22)として、中和により水性媒体中への分散が可能となるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂を用いた場合、これらの樹脂に自己水分散性を付与するために、ポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂を有機溶剤(S)で膨潤させて得られる膨潤体を水性媒体中に分散させる第2工程までの任意の工程において中和剤による中和を行うが、なかでも前記膨潤体を水性媒体中に分散させる第2工程において中和剤を含有させた水性媒体を用いて中和することが好ましい。
【0070】
前記中和により水性媒体中への分散が可能となるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂が酸基含有樹脂である場合に酸基の中和に用いる中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ化合物;ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩;前記アルカリ金属の酢酸塩類;アンモニア水;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。なかでも、アンモニア水が好ましい。
【0071】
また、前記中和により水性媒体中への分散が可能となるアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂が塩基性基含有樹脂である場合に塩基性基の中和に用いる中和剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。
【0072】
前記中和剤の使用量は、酸基含有樹脂中の酸基の当量、または、塩基性基含有樹脂中の塩基性基の当量に対して、それぞれ0.9〜5.0倍当量となる量であることが好ましく、1.0〜3.0倍当量となる量であることがより好ましい。
【0073】
前記製法(1)や製法(2)の第1工程で膨潤体を製造する方法としては、特に限定されないが、短時間で前記膨潤体が得られるし、その後第2工程での前記膨潤体の水性媒体中への分散も容易になることから、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル樹脂(p22)として粒子状の樹脂を用い、前記有機溶剤(S)と共に加熱することにより前記膨潤体を製造することが好ましく、さらに加圧下で前記膨潤体を製造することがより好ましい。この際、前記ポリエステル系樹脂(p12)と有機溶剤(S)の加熱温度や前記アクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)の加熱温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点以上が好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点〜180℃がより好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点+10℃〜120℃が特に好ましい。また、系内の加圧圧力としては、ゲージ圧で0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくはゲージ圧で0.2〜1.5MPa、更に好ましくはゲージ圧で0.3〜1.0MPaである。系内を加圧する方法としては、例えば、前記膨潤体を得るための加熱により前記有機溶剤(S)を気化させて系内を加圧する方法、あらかじめ系内に不活性ガスを導入して予備加圧した後、加熱して前記有機溶剤(S)の気化によりさらに加圧する方法等が挙げられるが、有機溶剤(S)の還流、沸騰が抑制できると共に、粒度分布の狭いポリエステル系樹脂微粒子水性分散体を得られることから、予備加圧する方法が好ましい。予備加圧としては0.05〜0.5MPaが好ましい。
【0074】
前記第1工程において前記膨潤体を得た後、第2工程で膨潤体中に微粒子状で分散させて初期水性分散体を製造する方法としては、特に限定されないが、前記膨潤体の水性媒体中への分散が容易になることから、第1工程において加圧下で前記有機溶剤(S)の沸点以上の温度に加熱することにより得られた膨潤体を用い、前記膨潤体を加圧下で前記有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下の温度で機械的剪断力により前記水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とする方法が好ましい。この際の系の温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点〜180℃が好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点+10℃〜120℃が特に好ましい。また、この系の圧力としては、ゲージ圧で0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくはゲージ圧で0.2〜1.5MPa、更に好ましくはゲージ圧で0.3〜1.0MPaである。なお、前記膨潤体の作成とこの分散体の作成とを同一容器内で行う場合、分散体作成開始時の系の加熱加圧条件は、前記膨潤体の作成終了時の温度および圧力と同様であることが好ましい。ここで用いる水性媒体の温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下であることが好ましく、なかでも前記有機溶剤(S)の沸点以上100℃未満であって、かつ、第2工程開始時の系の温度−20℃〜第2工程開始時の系の温度の範囲内がより好ましい。
【0075】
さらに、前記第1工程で膨潤体を製造する際の温度、および、前記第2工程で初期水性分散体を製造する際の温度はそれぞれ、前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の融点や軟化点より低温であることが好ましく、それぞれ前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)のガラス転移温度(Tg)以下の温度であってもよいが、なかでも、それぞれ前記有機溶剤(S)の沸点以上であって、かつ、ガラス転移温度(Tg)より10〜50℃高い温度であることが好ましい。なお、第1工程で膨潤体を製造する際の温度と第2工程で初期水性分散体を製造する際の温度は同一でも異なっていてもよい。
【0076】
前記製法(1)や製法(2)としては、例えば以下の▲1▼〜▲3▼で示す方法等が代表的な製法として挙げられる。
▲1▼第1工程として、密閉容器にポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)と有機溶剤(S)とを仕込み、加熱下、好ましくは加熱加圧下で、攪拌下にポリエステル系樹脂(p12)やポリエステル系樹脂(p22)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造した後、第2工程として、得られた膨潤体を攪拌等の機械的剪断力により、好ましくは加熱加圧下で、中和剤を含有していてもよい水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0077】
▲2▼前記▲1▼の第1工程と同様にして前記膨潤体を得た後、第2工程として、得られた膨潤体と中和剤を含有していてもよい水性媒体とを連続乳化分散機に連続的に供給しながら機械的剪断力により前記膨潤体を前記水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0078】
▲3▼第1工程として、押出機等の溶融混練により溶融されたポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)または合成された溶融状態のポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)に、圧入等の方法で有機溶剤(S)を連続的に供給し混合下に前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造し、得られた膨潤体を該ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の融点または軟化点未満の温度まで降温させた後、第2工程として、得られた膨潤体と中和剤を含有していてもよい水性媒体とを連続乳化分散機に連続的に供給しながら機械的剪断力により前記膨潤体を前記水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0079】
これらの方法の中でも、比較的容易にポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の樹脂微粒子水性分散体が得られることから、前記▲1▼または▲2▼の方法が好ましい。前記▲1▼および▲2▼の方法で用いるポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の形状としては、比較的短時間で膨潤体とすることができることから、粒子状であることが好ましく、例えば、粒子径1〜7mmのペレット、孔径が2〜7mmのスクリーンを通過させた粗粉砕物、平均粒子径800μm以下の粉体等が挙げられる。
【0080】
以下に、前記▲1▼、▲2▼の方法によるポリエステル系樹脂微(p12)を含有する樹脂微粒子の分散体やアクリル系樹脂微(p22)を含有する樹脂微粒子の水性分散体のより具体的な製造例を挙げる。
まず、プロペラ翼付のガラス製2Lのオートクレーブを用い、このオートクレーブにポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)を粉砕して得た粒子状物と有機溶剤(S)とを仕込み、不活性ガスを導入してオートクレーブ内を0.05〜0.5MPa予備加圧し、次いで10〜300rpmの攪拌下で有機溶剤(S)の沸点以上に昇温して有機溶剤(S)を一部気化させることによりオートクレーブ内を0.1〜2.0MPa(ゲージ圧)に加圧した後、50〜700rpmで3〜60分間攪拌してポリエステル系樹脂(p1)やポリエステル系樹脂(p2)を有機溶剤で膨潤させて膨潤体とする(第1工程)。
【0081】
予備加圧に用いる不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等が挙げられるが窒素ガスが好ましい。
【0082】
この工程で得られた前記膨潤体は、有機溶剤(S)を吸収したポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)と、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p2)に吸収されずに残った有機溶剤(S)との混合物である。なお、例えば、ポリエステル系樹脂(p12)とイソプロピルアルコールの系では、攪拌速度を50rpm程度にゆるめると、イソプロピルアルコールが樹脂相から分離して2相を形成するのが観察されるが、それでもよい。
【0083】
このようにして膨潤体を得た後、前記▲1▼の方法では、300〜1500rpmで攪拌しながら予め加熱しておいた水性媒体、例えば水もしくはアンモニア水を2〜30分間かけて加圧注入して転相乳化させて、前記膨潤体が微粒子状に分散した初期水性分散体とする(第2工程)。このとき、前記膨潤体中の有機溶剤(S1)は局部的な沸騰と還流が起こっており、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)と親和性の低い有機溶剤(S)の分子はポリエステル系樹脂(p12)やポリエステル系樹脂(p22)から離れやすく、かつ転相乳化しやすくする環境を形成していると考えられる。
【0084】
また、前記▲2▼の方法では、膨潤体を得た後、連続乳化分散機、例えば、特開平9−311502号公報に開示されているスリットを有するリング状固定子とスリットを有するリング状回転子とを同軸状に設けた高速回転型連続乳化分散機等を使用して連続的に水性媒体中に該膨潤体を微粒子状で分散させて分散体とする(第2工程)。この場合、前記膨潤体と前記水性媒体とを所定の温度、圧力条件で連続乳化分散機に送り込み、前記回転子を300〜10000rpmで回転させれば良い。
【0085】
前記膨潤体が微粒子状で分散した分散体を得た後、得られた分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)の樹脂微粒子が水性媒体中に分散した分散体が得られる(第3工程)。前記有機溶剤(S)の除去方法としては、例えば、減圧チャンバー中にスプレーする方法、脱溶剤缶壁内面に薄膜を形成させる方法、溶剤吸収用充填剤入りの脱溶剤缶を通過させる方法等が挙げられる。前記有機溶剤(S)を除去する方法の一例として、ロータリーエバポレーターを使用した除去方法を以下に記す。
試料量;500ml
容器;2Lなす型フラスコ
回転数;60rpm
バス温度;47℃
減圧度;13.3KPaから20分間かけて1.33KPaに減圧度を高め、引き続き10分間1.33KPaで脱溶剤する。
【0086】
前記製法(1)や製法(2)では、製造条件を種々変更することによりポリエステル系樹脂(p12)を含有する樹脂微粒子の水性分散体やアクリル系樹脂(p22)を含有する樹脂微粒子の水性分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を0.01〜50μm程度の範囲内で自由に制御することが可能である。
【0087】
前記製法(1)や製法(2)において、得られる分散体中のポリエステル系樹脂(P12)を含有する樹脂微粒子やアクリル系樹脂(P22)を含有する樹脂微粒子の平均粒径を小さく制御するためには、例えば、次に記す手段等をとれば良い。
▲1▼ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)中の酸基または中和された酸基の濃度等の親水性セグメント濃度を高くする。
▲2▼ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)として中和により水性媒体中への分散が可能となるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂を用いた場合、中和剤の量を大きくする。
▲3▼ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)に対する有機溶剤(S)の使用量を大きくする。
▲4▼分散体製造時の温度を高くする。
▲5▼分散体製造時の攪拌速度を大きくする。
【0088】
逆に、得られる分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を大きくするためには、これらの条件を逆にしてやれば良い。なお、ポリエステル系樹脂(p12)やアクリル系樹脂(p22)および有機溶剤(S)と共に、例えば着色剤(A)、磁性粉、ワックス、帯電制御剤等の添加剤を用いることによっても、分散体中の樹脂微粒子の平均粒径は大きくなる。
【0089】
次に、前記工程2で会合を行うことにより樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、コア粒子の表面に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる。ここで、「会合」について述べる。一般に前記した製造方法等により得られるような樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子は、その表面電荷に由来する静電反発力により凝集することなく水性媒体中に安定に存在するが、同時に、ファンデルワールス力によって樹脂粒子間には引力が働いている。そこで、何らかの作用で樹脂粒子表面電荷を適宜減少させてやると、静電反発力より引力が大きくなり、樹脂微粒子同志が凝集し始めて、より大きい粒子径に成長した樹脂粒子の分散体となる。これを本発明では会合という。この会合の温度はポリエステル系樹脂(p1)のガラス転移温度とアクリル系樹脂(p2)のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃が好ましく、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい。会合に要する時間は、通常2〜12時間であり、4〜10時間が好ましい。また、会合は、攪拌下、好ましくは穏やかな攪拌下、例えば、アンカー翼で10〜100rpm程度の回転数による攪拌下で行うと良い。
【0090】
前記の樹脂粒子表面電荷を減少もしくは失わせる方法としては、例えば、希塩酸、希硫酸、酢酸、蟻酸、炭酸などの酸をいわゆる逆中和剤として添加する方法や、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第2鉄、塩化カルシウム等の金属塩類やカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属錯体を添加する塩析等が挙げられる。又、会合工程におい着色剤などを分散処理したり、会合の進行を制御する目的で、必要に応じて界面活性剤を使用してもよい。
【0091】
前記界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルジスルフォン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド等のカチオン界面活性剤、アルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール等のノニオン界面活性剤等が挙げられ、適宜選択して使用することができる。
【0092】
前記工程2における水性分散体(I)と水性分散体(II)との混合割合〔(I)/(II)〕は固形分の重量比で1〜5が好ましく、1.5〜4がより好ましい。
【0093】
コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる際は、シェル層の厚さが0.2〜4μmになる様に会合を行うのが好ましく、厚さが0.3〜3μmになる様に会合を行うのがより好ましい。
【0094】
前記工程3で得られたコアシェル構造を有する粒子を回収する方法としては、例えば、濾過等が挙げられる。乾燥は、室温で放置して自然乾燥させてもよいし、電子写真トナーの性能に影響を及ぼさない温度、例えば、50℃程度で乾燥機を用いて行っても良い。
【0095】
本発明の電子写真用トナーは、磁性粉、ワックス等の添加剤を必要に応じて用いても良い。これらを含有する電子写真用トナーは、前記したポリエステル系樹脂(p1)やアクリル系樹脂(p2)と予め混練して混練物としてき、これらの混練物を用いた水性分散体を用いることにより製造することが出来る。これらの添加剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0096】
磁性粉としては、例えば、マグネタイト、フェライト、コバルト、鉄、ニッケル等の金属単体やその合金等が挙げられる。
【0097】
ワックスは、電子写真用トナー用のオフセット防止剤として使用できる。ワックスとしては、例えば、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィシュワックス、ステアリルビスアミド、酸化ワックス等の合成ワックス類や、カルナバワックス、ライスワックス等の天然ワックス等が挙げられる。
【0098】
また、帯電制御剤を用いると帯電特性が良好なトナーが得られる。帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、フッ素処理活性剤等のプラス帯電制御剤や、電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等のマイナス帯電制御剤等が挙げられる。
【0099】
本発明において、水性分散体(I)や水性分散体(II)中の不揮発分の割合は、前記水性分散体を真空乾燥器中に100℃、0.1KPa、3時間の条件で放置し、前記水性分散体の重量変化から求めた。また、微粒子の粒径は、0.001〜2μmの粒子径測定はLeeds+Northrup社製のMICROTRAC UPA150を用て測定し、1〜40μmの粒子測定はベックマンコールター社製マルチサイザーTM3を用いて測定した。
【0100】
また、前記水性分散体中の残留溶剤の定量は、下記条件でガスクロマトグラフィ法で測定した。
測定機;島津GC−17A
カラム;ULBON HR−20M(PPG)
カラム温度;80〜150℃
昇温速度;10℃/分
【0101】
【実施例】
以下に本発明を、合成例、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。例中の部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0102】
合成例1〔ポリエステル系樹脂(p1)の合成〕
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコール325部およびネオペンチルグリコール546部を仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド1.0部を投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸1,632部、p−ターシャリブチル安息香酸43部及び安息香酸8部を徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して温度を245℃まで上げた。さらに同温度で8時間反応させ、酸価が10以下になったの確認した後、200℃まで降温する。200℃にてドデセニル無水コハク酸83部を加えて1時間反応させ、酸価が17.2mgKOH/g、環球法による軟化点が112℃、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(Tg)が62℃、GPC法による数平均分子量(Mn)が4,600、重量平均分子量(Mw)が10,300であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル樹脂1とする。
【0103】
合成例2〔アクリル系樹脂(p2)の合成〕
板バルブ及びタービン翼を備えた5Lのステンレス製オートクレーブに、水 2000容積部、けん化度が85%でかつ重合度が2,000であるポリビニルアルコールの1%水溶液 50容積部、スチレン 638部、メタクリル酸 16部、メタクリル酸メチル 283部、nブチルアクリレート 63部及びベンゾイルパーオキサイド 4.7部を仕込んで、700rpmの攪拌下に120℃に昇温させて2時間かけて重合を行った。次いで、90℃に降温してからオートクレーブに横型コンデンサーを取り付け、オートクレーブの気相を窒素ガスに置換した状態で3時間かけて常圧にて蒸留を行った。オートクレーブから内容物を取り出して、この内容物をナイロン網により水切りし、次いで流動乾燥機中で乾燥させて酸価が9.8mgKOH/g、環球法による軟化点が163℃、DSCによるTgが67℃、GPC法によるMnが15,300、Mwが185,000である重合体を得た。これをスチレン−アクリル樹脂1とする。
【0104】
合成例3(比較対照用ポリエステル樹脂の合成)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコール232部、ネオペンチルグリコール390部及びトリメチロールプロパン104部を仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド1.0部を投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸1,366部を徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して温度を245℃まで上げた。さらに同温度で8時間反応させ、酸価が8.7mgKOH/g、環球法による軟化点が162℃、DSCによるTgが66℃、GPC法によるMnが14,600、Mwが177,500であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル樹脂2とする。
【0105】
参考例1〔水性分散体(I)の調製〕
樹脂の濃度が10%となる条件でアセトンに対するポリエステル樹脂1の溶解性の判定をASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行ったところ、前記判定法の判定区分で「境界線上の溶液」であった。
【0106】
ポリエステル樹脂1 49部、リ−ガル330(キャボット社製のカーボンブラック)30部、ビスコ−ル550P(株式会社三洋化成製のポリプロピレンワックス)9部及びボントロンE−80(オリエント化学工業株式会社製の帯電制御剤)12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水1.5部とイオン交換水398.5部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率〔水性媒体中のアンモニアのモル数(Ma)のポリエステル樹脂1中のカルボキシル基のモル数(Mc)に対する比[(Ma)/(Mc)]を百分率で表したもの。以下同様。〕は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体1を得た。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.21μm、粒度分布は1.9、残留溶剤量は240ppmであった。
【0107】
参考例2(同上)
ポリエステル樹脂1 25部、リ−ガル330 54部、ビスコ−ル550P9部及びボントロンE−80 12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水0.8部とイオン交換水399.2部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体2を得た。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.23μm、粒度分布は2.2、残留溶剤量は260ppmであった。
【0108】
参考例3(同上)
ポリエステル樹脂1の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水3.1部とイオン交換水396.9部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してポリエステル樹脂微粒子水性分散体3を得た。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.19μm、粒度分布は1.5、残留溶剤量は210ppmであった。
【0109】
参考例4〔水性分散体(II)の調製〕
樹脂の濃度が10%となる条件でアセトンに対するスチレン−アクリル樹脂1の溶解性の判定をASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行ったところ、前記判定法の判定区分で「境界線上の溶液」であった。
【0110】
スチレン−アクリル樹脂1の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、25%アンモニア水1.8部とイオン交換水398.2部からなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去してスチレン−アクリル樹脂微粒子水性分散体4を得た。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.30μm、粒度分布は2.7、残留溶剤量は300ppmであった。
【0111】
実施例1
アンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1 100部及びアセトン10部を仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20部と1%塩化カルシウム水溶液20部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色された平均粒径4μmのコア粒子を含む水性分散体を得た。この分散体にポリエステル樹脂微粒子水性分散体4 52部を添加し、更に、1%希塩酸10部と1%塩化カルシウム水溶液10部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液10部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、コア粒子の表面にポリエステル樹脂微粒子を会合させて得られたシェル層を有するコアシェル構造の樹脂微粒子を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でアセトンを留去し、イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、樹脂微粒子を得た。この樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定したところ、残留溶剤量は20ppm(検出限界)以下であり、体積平均粒子径は5.9μm、粒度分布は1.7であった。この樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナー1を調製した。このトナーを用いて得られる画像、耐オフセット性及び耐久性の評価を下記に示す方法で行った。結果を第1表に示す。
【0112】
画像評価方法:トナー1を電子写真用複写機「U−Bix5000」(小西六写真工業株式会社製)に装填し、テストチャートとして電子写真学会発行のA4カラ−用(番号5−1)を用いて1200dpiの画像を形成したときの1dot lineの解像性を下記判定に従い評価した。
◎:完全な1dot lineを形成している。
○:ほぼ完全な1dot lineを形成している。
×:不完全な1dot lineを形成している。
××:1dot lineを形成していない。
【0113】
耐オフセット性評価方法:トナー1を電子写真用複写機「U−Bix5000」に装填し、1万枚の連続走行試験後の画像の汚れ、及び表面温度200℃でのヒートロールへのトナーの付着を目視にて評価した。
○:画像が良好で、ヒートロールへのトナーの付着が全くない。
△:画像の汚れはないが、ヒートロールへのトナーの付着が部分的に存在する。または、ヒートロールへのトナーの付着は殆どないが、画像が汚れている。
×:画像が汚れており、ヒートロールにトナーが著しく付着している。
【0114】
耐久性の評価方法:トナー1をボールミル架台上で100rpmで60分間攪拌し、帯電量Q60(μq/g)を測定した。これをを3日間放置したのちもう一度帯電量Q(μq/g)を測定した。帯電量の減衰率(Q/Q60)×100(%)を求め、これを耐久性として評価した。この値が高い程耐久性に優れていることを示す。
○:85%以上
△:70%以上85%未満
×:70%未満
【0115】
実施例2
アンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体2 60部、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体3 40部及びアセトン10部を仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20部と1%塩化カルシウム水溶液20部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色された平均粒径4.1μmのコア粒子を含む水性分散体を得た。この分散体にポリエステル樹脂微粒子水性分散体4 52部を添加し、更に、1%希塩酸10部と1%塩化カルシウム水溶液10部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液10部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、コア粒子の表面にポリエステル樹脂微粒子を会合させて得られたシェル層を有するコアシェル構造の樹脂微粒子を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でアセトンを留去し、イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、樹脂微粒子を得た。この樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定したところ、残留溶剤量は20ppm(検出限界)以下であり、体積平均粒子径は5.8μm、粒度分布は1.5であった。この樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974とをヘンシェルミキサ−で混合してトナー2を調製した。このトナーを用いて得られる画像、耐オフセット性及び耐久性の評価を実施例1と同様にして行い、結果を第1表に示す。
【0116】
比較例1
ポリエステル系樹脂1 33部とポリエステル樹脂2 33部、リーガル330 20部、ビスコール550P 6部及びボントロンE−80 8部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシング行い加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物100部を180℃に加熱して着色樹脂熔融体をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.10重量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.4リットルの速度で、上記着色樹脂熔融体と同時に上記キャビトロンに移送した。この時の中和率は150モル%であった。
【0117】
回転子の回転速度が7500rpm、圧力が5Kg/cm2の運転条件で上記キャビトロンで製造した温度135℃のスラリーを10秒間で温度35℃まで冷却して出口から取り出した。このスラリー中のトナー粒子は球形であり、分散液の濃度は固形分が25%であった。コールターマルチサイザー2による測定により、トナー粒子の平均粒子径は6.2ミクロンであり、その粒度分布は1.6であった。粒子を濾別した後に水洗を行い、乾燥して樹脂微粒子を得た。この樹脂粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974とヘンシェルミキサーで混合してトナー1′を調整した。このトナーを用いて得られる画像、耐オフセット性及び耐久性の評価を実施例1と同様にして行い、結果を第1表に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られる電子写真用トナーは、軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、該コア粒子の表面上に軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有した樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層が形成されており、得られる画像の質が良好で、耐ホットオフセット性、耐久性にも優れる。
Claims (9)
- 軟化点70〜130℃のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(I)と、軟化点120〜190℃のアクリル系樹脂(p2)を含有し平均粒子径が前記樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂微粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法であり、前記アクリル系樹脂(p2)の軟化点が前記ポリエステル系(p1)の軟化点より高く、かつ、前記樹脂微粒子(P1)および/または前記樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂微粒子であることを特徴とする電子写真用トナーの製造法。
- 軟化点80〜120℃のポリエステル系樹脂(p11)を含有した樹脂微粒子(P11)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I−1)と軟化点140〜170℃のアクリル系樹脂(p21)を含有した樹脂微粒子(P21)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II−1)とを前記ポリエステル系樹脂(p11)の軟化点と前記アクリル系樹脂(p21)との軟化点の差が30〜80℃となるような組み合わせで用いる請求項1記載の電子写真用トナーの製造法。
- 前記樹脂微粒子(P11)が平均粒子径1〜10μmの樹脂微粒子であり、前記樹脂微粒子(P21)が平均粒子径0.08〜0.5μmの樹脂微粒子である請求項2記載の電子写真用トナーの製造法。
- 前記樹脂微粒子(P11)がポリエステル系樹脂(p11)を含有した樹脂微粒子を水性分散体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体中の樹脂微粒子を会合させて得られる平均粒径1〜10μmの会合微粒子であり、前記樹脂微粒子(P21)が平均粒子径0.08〜0.5μmの樹脂微粒子である請求項2記載の電子写真用トナーの製造法。
- 前記樹脂微粒子(P11)がポリエステル系樹脂(p11)を含有した樹脂微粒子を水性分散体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体と着色剤粒子の水性分散体および/または着色樹脂微粒子の水性分散体とを混合して混合分散体とし、前記混合分散体中のポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子と着色剤粒子および/または着色樹脂微粒子とを会合させて得られる平均粒径1〜10μmの会合微粒子であり、前記樹脂微粒子(P21)が平均粒子径0.08〜0.5μmの樹脂微粒子である請求項2記載の電子写真用トナーの製造法。
- 前記水性分散体(I−1)と前記水性分散体(II−1)とを混合し、樹脂微粒子(P11)と樹脂微粒子(P21)とを会合させて樹脂微粒子(P11)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P21)が会合してなる厚さ0.2〜4.0μmのシェル層を形成させる請求項2記載の電子写真用トナーの製造法。
- 前記水性分散体(I−1)と前記水性分散体(II−1)とを混合し、樹脂微粒子(P11)と樹脂微粒子(P21)とをポリエステル系樹脂(p1)のガラス転移温度と前記アクリル系樹脂(p2)のガラス転移温度のうち低い方のガラス転移温度〜ガラス転移温度+50℃の温度で会合させて樹脂微粒子(P11)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P21)が会合してなるシェル層を形成させる請求項2記載の電子写真用トナーの製造法。
- 前記水性分散体(II)が、前記アクリル系樹脂(p2)として自己水分散性アクリル系樹脂(p22)を用い、前記アクリル系樹脂(p22)を、前記アクリル系樹脂(p22)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記アクリル系樹脂(p22)を含有する樹脂微粒子(P22)が前記水性媒体中に分散した分散体とする第3工程を有する製造方法で得られたものである請求項1〜7のいずれか1項記載の電子写真用トナーの製造法。
- 前記水性分散体(I)が、前記ポリエステル系樹脂(p1)として自己水分散性ポリエステル系樹脂(p12)を用い、前記ポリエステル系樹脂(p12)を、前記ポリエステル系樹脂(p12)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記ポリエステル系樹脂(p12)を含有する樹脂微粒子(P12)が前記水性媒体中に分散した分散体とする第3工程を有する製造方法で得られたものである請求項8項記載の電子写真用トナーの製造法。
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