JP2005049440A - 電子写真用トナーおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は得られる画像の質が良好な電子写真用トナーとその製造方法を提供すること。
【解決手段】アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子を含有するコア部と、前記コア部の表面にアルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層とを有する電子写真用トナー、および、アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有る樹脂粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、前記樹脂粒子(P1)と前記樹脂粒子(P2)とを会合させて前記樹脂粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に前記樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子を含有するコア部と、前記コア部の表面にアルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層とを有する電子写真用トナー、および、アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有る樹脂粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、前記樹脂粒子(P1)と前記樹脂粒子(P2)とを会合させて前記樹脂粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に前記樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は画質が良好な電子写真用トナーとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真用トナーにおいては、得られる画質の向上が益々求められており、そのような市場の要求に対して、例えば、樹脂粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成し、該凝集粒子の分散液中に別途調製した微粒子の分散液を添加混合して前記凝集粒子の表面に前記微粒子を付着させるトナーの製造方法がある(例えば、特許文献1参照。)。前記特許文献1の製造方法で得られるトナーは前記凝集粒子をコア粒子として、このコア粒子の表面に別途製造した微粒子を付着させてシェル層を形成したコアシェル構造を有するトナーであり、例えば、実施例3ではアクリル樹脂を含有する樹脂微粒子をコア粒子としてこのコア粒子の表面にポリエステル樹脂の樹脂微粒子を会合させてコアシェル構造を有するトナーを製造している。しかしながら、前記特許文献1で得られるトナーは画質がある程度向上しているものの、未だ市場の要求を満たすレベルには達成していない。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−26842号公報(第2頁、第10〜11頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、画質が良好な電子写真用トナーとその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見(a)および(b)を見出し、本発明を完成させるに至った。
(a)側鎖としてアルキル基やアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)はアクリル系樹脂と相溶性が良好であり、前記アクリル系樹脂をコア部として、このコア部の表面に前記ポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層を配置したコアシェル型トナーはにじみがなく、画質が良好なこと。
(b)前記電子写真用トナーは、アクリル系樹脂を含有した樹脂粒子(P1)と前記ポリエステル系樹脂(A)を含有した樹脂粒子(P2)とを樹脂粒子(P2)の平均粒子径が樹脂粒子(P1)の平均粒子経よりも小さくなる組み合わせで用い、前記樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性媒体(I)と前記樹脂粒子(P2)を水性分散体中に分散してなる水性媒体(II)とを混合し、樹脂粒子(P1)と樹脂粒子(P2)とを会合させて樹脂粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂粒子(P2)が会合させてシェル層を形成することにより容易に製造することができること。
【0006】
即ち本発明は、アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子を含有するコア部と、前記コア部の表面にアルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層とを有することを特徴とする電子写真用トナーを提供するものである。
【0007】
また、本発明はアクリル系樹脂を含有する樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有し、かつ、平均粒子径が前記樹脂粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、前記樹脂粒子(P1)と前記樹脂粒子(P2)とを会合させて前記樹脂粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に前記樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるアクリル系樹脂としては、例えば、乳化剤、懸濁安定剤等を用いることにより水性媒体中に分散可能な非自己水分散性アクリル系樹脂;乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく、水性媒体中に分散可能なアクリル系樹脂、中和により水性媒体中に分散が可能なアクリル樹脂等の自己水分散性アクリル系樹脂等が挙げられるが、なかでも自己水分散性アクリル系樹脂が好ましい。また、前記アクリル系樹脂は、テトラヒドロフランやメチルエチルケトンに25℃で前記アクリル系樹脂を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で水性媒体(非自己水分散性アクリル系樹脂の場合は乳化剤等を含有する水性媒体。自己水分散性の中でも中和により水性媒体中に分散可能となるアクリル系樹脂の場合は中和剤を含有する水性媒体)を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能なアクリル系樹脂が好ましく、平均粒子径が0.1μm以下の粒子状で分散することが可能なアクリル系樹脂が特に好ましい。
【0009】
前記自己水分散性アクリル系樹脂としては、例えば、スルフォン酸金属塩、カルボン酸金属塩等の中和された酸基含有アクリル系樹脂;中和された塩基性基含有アクリル系樹脂;ヒドロキシポリオキシエチレンのようないわゆるノニオン構造が導入されたアクリル系樹脂等の親水性セグメント含有アクリル系樹脂;カルボキシル基等の酸基を有し、アルカノールアミンなどの有機塩基、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等の中和剤を添加することにより水相中にてアニオン化することの可能なアクリル系樹脂;アミノ基やピリジン環等の塩基性基を有し、有機酸、無機酸等の中和剤を添加することにより水相中でカチオン化することの可能なアクリル系樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有アクリル系樹脂や酸基含有アクリル系樹脂が好ましく、吸湿性が低く保存が容易なことから酸基含有アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0010】
前記した中和された酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、中和された酸基含有(メタ)アクリル系樹脂、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましい。
【0011】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂、カルボキシル基等の酸基を含有し、中和により自己水分散性アクリル系樹脂となるアクリル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたアクリル系樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、中和されたカルボキシル基含有アクリル系樹脂、中和されたスルフォン基含有アクリル系樹脂、中和されたリン酸基含有アクリル系樹脂等が挙げられる。自己水分散性アクリル系樹脂として中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂を用いる時は中和されたスルフォン基含有アクリル系樹脂が好ましく、前記中和により自己水分散性アクリル系樹脂となるアクリル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたアクリル系樹脂を用いる時は中和されたカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。尚、前記中和された酸基含有アクリル系樹脂の中和を外した場合の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0012】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂は、例えば、中和された基を有する単量体を必須として必要により他の単量体と共に分散剤や界面活性剤等を含有する水に加え、更に易溶性の重合開始剤を添加して行う懸濁重合法等により調製することができる。
【0013】
前記した酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、酸基含有(メタ)アクリル系樹脂、酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等が挙げられ、なかでも、酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましい。なお、酸基含有アクリル系樹脂の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0014】
前記酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基等の酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂が好ましい。前記アクリル系樹脂の具体例としては、カルボキシル基含有アクリル系樹脂、スルフォン酸基含有アクリル系樹脂、リン酸基含有アクリル系樹脂等が挙げられ、なかでもカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。
【0015】
前記カルボキシル基含有アクリル系樹脂は、カルボキシル基を有する単量体を必須として必要により他の単量体と共に分散剤や界面活性剤等を含有する水に加え、更に該単量体に易溶性の重合開始剤を添加して行う懸濁重合法等により調製することができる。
【0016】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂や酸基含有アクリル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。
【0017】
前記中和された基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩等が挙げられる。
【0018】
前記酸基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0019】
前記した中和された基を有する単量体や酸基を有する単量体と共に、(メタ)アクリル系樹脂、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等のアクリル系樹脂の調製に用いることの出来る他の単量体としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数のものを併用してよい。
【0020】
アクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量は5,000〜300,000が好ましく、7,000〜250,000がより好ましく、10,000〜150,000が特に好ましい。アクリル系樹脂の環球法による軟化点は80〜160℃が好ましく、85〜155℃がより好ましく、90〜150℃が特に好ましい。アクリル系樹脂の示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(Tg)は45〜80℃が好ましく、50〜75℃がより好ましく、54〜70℃が特に好ましい。
【0021】
本発明で使用するポリエステル系樹脂(A)はアルキル基および/またはアルケニル基を有する必要がある。アルキル基、アルケニル基は直鎖状でも分岐状でも良く、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、ドデシル基、ドデセニル基等が挙げられる。アルキル基やアルケニル基は炭素原子数4〜20のアルキル基や炭素原子数4〜20のアルケニル基が好ましい
【0022】
前記ポリエステル系樹脂(A)としては、例えば、乳化剤、懸濁安定剤等等を用いることにより水性媒体中に分散可能な非自己水分散性ポリエステル系樹脂;乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく、水性媒体中に分散可能なポリエステル系樹脂、中和により水性媒体中に分散可能なポリエステル系樹脂等の自己水分散性ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、なかでも自己水分散性ポリエステル系樹脂が好ましい。また、前記ポリエステル系樹脂(A)は、テトラヒドロフランまたはメチルエチルケトンに25℃で前記ポリエステル系樹脂を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で水性媒体(非自己水分散性ポリエステル系樹脂の場合は乳化剤等を含有する水性媒体。自己水分散性の中でも中和により水性媒体中に分散可能となるポリエステル系樹脂の場合は中和剤を含有する水性媒体。)を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能なポリエステル系樹脂が好ましく、0.1μm以下の粒子状で分散することが可能なポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0023】
前記自己水分散性ポリエステル系樹脂としては、例えば、スルフォン酸金属塩、カルボン酸金属塩等の中和された酸基含有ポリエステル系樹脂;中和された塩基性基含有ポリエステル系樹脂;ヒドロキシポリオキシエチレンのようないわゆるノニオン構造が導入されたポリエステル系樹脂等の親水性セグメント含有ポリエステル系樹脂;カルボキシル基等の酸基を有し、アルカノールアミンなどの有機塩基、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等の中和剤を添加することにより水相中にてアニオン化することの可能なポリエステル系樹脂;アミノ基やピリジン環等の塩基性基を有し、有機酸、無機酸等の中和剤を添加することにより水相中でカチオン化することの可能なポリエステル系樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有ポリエステル系樹脂や酸基含有ポリエステル系が好ましく、吸湿性が低く保存が容易なことから酸基含有ポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0024】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂としては、例えば、中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂、カルボキシル基等の酸基を含有し、中和により自己水分散性ポリエステル系樹脂となるポリエステル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、中和されたカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂、中和されたスルフォン基含有ポリエステル系樹脂、中和されたリン酸基含有ポリエステル系樹脂等が挙げられる。自己水分散性ポリエステル樹脂として中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂を用いる時は中和されたスルフォン基含有ポリエステル系樹脂が好ましく、前記中和により自己水分散性ポリエステル系樹脂となるポリエステル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたポリエステル系樹脂を用いる時は中和されたカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂が好ましい。なお、中和された酸基含有ポリエステル系樹脂の中和を外した場合の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0025】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂は、例えば、アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸やその無水物と二価のアルコールと中和された酸基を有する二塩基酸とを必須成分として、必要に応じて、三官能以上の多塩基酸、その無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等を併用し、窒素雰囲気中で加熱下に酸価を測定しながら180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法等により調製することができる。
【0026】
前記酸基含有ポリエステル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂等、スルフォン酸基含有ポリエステル系樹脂、リン酸基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂がより好ましい。酸基含有ポリエステル系樹脂の酸価としては1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0027】
前記カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂は、例えば、
1.アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸やその無水物と、二価のアルコールとを必須として、必要に応じて、その他の二塩基酸やその無水物、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上の多価アルコール、一価のアルコール等を混合し、窒素雰囲気中で180〜260℃の反応温度で酸価と水酸基価を測定しながら脱水縮合する方法、
2.二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として調製した、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基や水酸基を有していても良い)を加熱溶解し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する酸無水物を投入し、ポリエステル樹脂の末端水酸基に開環付加させる方法、
3.二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須の成分として調製した、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基や水酸基を含有していても良い)を加熱溶融し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を投入し、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基の一部に開環付加させる方法、
等の製造方法により調製できる。
【0028】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂や酸基含有ポリエステル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、上記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、種々の触媒を添加することもできる。
【0029】
前記触媒としては、例えば、酸化アンチモン、酸化バリウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、琥珀酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、蟻酸カドミウム、一酸化鉛、珪酸カルシウム、ジブチル錫オキシド、ブチルヒドロキシ錫オキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。
【0030】
前記中和された酸基を有する二塩基酸としては、例えば、スルフォテレフタル酸、3−スルフォイソフタル酸、4−スルフォフタル酸、4−スルフォナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルフォ−p−キシリレングリコール、2−スルフォ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩などの金属塩が挙げられる。
【0031】
前記アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクチル無水コハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸等が挙げられる。
【0032】
二価のアルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコ−ル等のアラルキレングリコ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、水添ビスフェノ−ルA等の脂環式のジオ−ル類等が挙げられる。
【0033】
前記その他の二塩基酸およびその無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデシル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の線状脂肪族の二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の環状脂肪族の二塩基酸や芳香族の二塩基酸等が挙げられる。
【0034】
三官能以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0035】
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。
【0036】
三官能以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0037】
一価のアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0038】
前記方法2で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸等、各種の飽和あるいは不飽和の脂肪酸のモノグリシジルエステルや、カージュラE10(シェルケミカル社製)、イソノナン酸、バ−サチック酸等の分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。
【0039】
前記方法3で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する酸無水物としては、例えば、n−ブチル無水コハク酸、n−ペンチル無水コハク酸、ネオペンチル無水コハク酸、n−ヘキシル無水コハク酸、n−ヘプチル無水コハク酸、n−オクチル無水コハク酸、イソオクチル無水コハク酸、2−エチルヘキシル無水コハク酸、n−ドデシル無水コハク酸、イソドデシル無水コハク酸、n−ドデセニル無水コハク酸、イソドデセニル無水コハク酸、6−ブチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、6−n−オクチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物等が挙げられる。なかでも、n−ドデセニル無水コハク酸が好ましい。
【0040】
前記した二塩基酸、その無水物、三官能以上の塩基酸、その無水物、一塩基酸等はそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、カルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステル又はアリールエステルとなっているものも使用できる。
【0041】
前記した二価のアルコール、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等は、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用することもできる。
【0042】
また、例えば、ジメチロ−ルプロピオン酸、ジメチロ−ルブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸のような、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も使用できる。
【0043】
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)としては、前記製造方法2で記載した、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂の末端水酸基にアルキル基および/またはアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル系樹脂や、前記製造方法3で記載した末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基にアルキル基および/またはアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル系樹脂が好ましい。
【0044】
アルキル基やアルケニル基を含有するポリエステル系樹脂は、前記ポリエステル系樹脂の原料の合計100重量部に対して、前記アルキル基やアルケニル基を含有する化合物を0.1〜50重量部用いて得られるポリエステル系樹脂が好ましく、0.5〜20重量部用いて得られるポリエステル系樹脂がより好ましく、1.0〜10重量部用いて得られるポリエステル系樹脂が最も好ましい。
【0045】
更に、ポリエステル系樹脂(A)は原料として芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する化合物(a)を用いて得られるポリエステル樹脂がアクリル系樹脂との相溶性を良好にし、画質が良好な電子写真用トナーが得られるので好ましい。前記化合物(a)は芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有すれば良く、例えば、芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する化合物はもちろん、他の製造方法によるものでも、芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有するものであれば支障なく使用することができる。このような化合物(a)としては、例えば、芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する塩基酸(a1)や芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有するアルコール(a2)等が挙げられる。
【0046】
前記芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する塩基酸(a1)としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸やその無水物等のシクロアルカン構造を有する二塩基酸およびその無水物や、テトラヒドロフタル酸やその無水物、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸やその無水物等が挙げられる。
【0047】
前記芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有するアルコール(a2)としては、例えば、水添ビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0048】
前記芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する化合物(a)としては、画質に優れる電子写真用トナーが得られることから
芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する二塩基酸やその無水物が好ましく、シクロアルカン構造を有する二塩基酸およびその無水物がより好ましく、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物が最も好ましい。
【0049】
前記ポリエステル系樹脂(A)は、前記ポリエステル系樹脂(A)の原料の合計100重量部に対して、前記芳香環の水素添加物構造を有する化合物(a)を0.1〜50重量部用いて得られるポリエステル系樹脂が好ましく、0.5〜20重量部用いて得られるポリエステル系樹脂がより好ましく、1.0〜10重量部用いて得られるポリエステル系樹脂が最も好ましい。
【0050】
ポリエステル系樹脂(A)のGPC法による重量平均分子量は50,000〜500,000が好ましく、60,000〜420,000がより好ましく、70,000〜350,000が特に好ましい。ポリエステル系樹脂(A)の環球法による軟化点は120〜190℃が好ましく、135〜180℃がより好ましく、140〜170℃が最も好ましい。ポリエステル系樹脂(A)のDSCによるTgは55〜85℃が好ましく、60〜80℃がより好ましく、65〜75℃が特に好ましい。
【0051】
本発明では、前記ポリエステル系樹脂(A)の軟化点が前記アクリル系樹脂の軟化点よりも高いことが好ましく、前記ポリエステル系樹脂(A)の軟化点が前記アクリル系樹脂の軟化点よりも30〜50℃高いことがより好ましい。
【0052】
本発明ではコア部および/またはシェル層の一部乃至全部が着色されている。着色は、電子写真用トナーとして用いることができる程度になされていれば良く、例えば、コア部が着色されておりシェル層が着色されていなくても良いし、コア部が着色されておらずシェル層の一部乃至全部が着色されていても良いし、コア部およびシェル層の一部乃至全部が着色されていても良いが、なかでも、コア部が着色されているのが好ましい。着色されたコア部やシェル層は、例えば、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂(A)と着色剤とを加圧ニーダー等を用いて混練した着色されたアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂を用いることにより得られる。
【0053】
前記着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)等が挙げられる。
【0054】
前記着色剤は、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して1〜20重量部の範囲内になるよう使用するのが好ましい。着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0055】
本発明の電子写真用トナーのコア部の平均粒径は1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。また、シェル層の厚みは0.2〜4μmが好ましく、0.3〜3μmがより好ましい。
【0056】
次に、本発明の電子写真用トナーの製造方法について説明する。本発明の電子写真用トナーの好ましい製造方法としては、例えば、
工程1.アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、ポリエステル系樹脂(A)を含有した樹脂粒子(P2)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(II)とを、前記樹脂粒子(P1)および/または前記樹脂粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂粒子となる様にそれぞれ製造する工程、
工程2.前記工程1で得られた水性分散体(I)と水性分散体(II)とを樹脂粒子(P2)の平均粒子径が樹脂粒子(P1)の平均粒子経よりも小さくなる組み合わせで混合し、樹脂粒子(P1)と樹脂粒子(P2)とを会合させて樹脂粒子(P1)をコア部として、該コア部の表面に樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させ、会合粒子とする工程、
工程3.前記工程2で得られた会合粒子を含む分散体から会合粒子を回収し、必要によりイオン交換水等で洗浄した後乾燥させる工程、
からなる製造方法等が挙げられる。
【0057】
前記水性分散体(I)や水性分散体(II)は、例えば、以下の方法で製造することができる。
方法▲1▼:アクリル系樹脂を含有する樹脂やポリエステル樹脂(A)を含有する樹脂をジェットミル等を用いて粉砕、必要により分級した後、乳化剤、懸濁安定剤等を含有していても良い水性媒体に分散させる方法。
方法▲2▼:アクリル系樹脂を含有する樹脂やポリエステル樹脂(A)として、酸基を含有するアクリル系樹脂を含有する樹脂やポリエステル系樹脂を用い、これらの樹脂と有機溶剤とを混合し、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液を調製した後、この樹脂溶液に塩基性化合物を含有する水性媒体を滴下して転相乳化を行う方法。
【0058】
なかでも、粒度分布の幅が小さい球形の樹脂微粒子が製造でき、得られる画像の質が良好な電子写真用トナーが得られることから前記水性分散体(I)や水性分散体(II)は前記方法▲2▼を用いて製造するのが好ましい。前記▲2▼の方法を用いて水性分散体(I)や水性分散体(II)を製造する方法について説明する。
【0059】
前記▲2▼の方法を用いて水性分散体(I)や水性分散体(II)を製造する方法において、用いる酸基含有ポリエステル樹脂や酸基含有アクリル系樹脂は、カルボキシル基含有のポリエステル系樹脂やカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。これらの樹脂の酸価は1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0060】
前記したカルボキシル基含有アクリル系樹脂やカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂と必要により顔料、帯電制御剤、離形剤等とを加熱ニーダー、加熱3本ロール、2軸押出し混練機等を用いて混練物を得た後、この混練物とテトラヒドロフランやメチルエチルケトン等の有機溶剤とを混合し樹脂を有機溶剤中に溶解した樹脂溶液を得る。この時の混練物を有機溶剤の混合割合は、通常混練物100重量部に対して5〜300重量部である。
【0061】
次に、この樹脂溶剤に攪拌下で塩基性化合物を含有する水性媒体を滴下し転相乳化を行う。ここで用いる塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物、それらの炭酸塩、それらの酢酸塩など、更には、アンモニア水、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが挙げられる。これらのなかではアンモニア水が好ましい。また、これら塩基性化合物は単独使用でもよいし、2種類以上の併用でも構わない。
【0062】
塩基性化合物の使用量は、アクリル系樹脂やポリエステル樹脂(A)を水性媒体中に安定に分散させるような量であれば良く制限は無いが、樹脂中の酸基に対して、通常0.5〜6.0倍当量である。
【0063】
水性媒体の使用量は、樹脂溶液100重量部に対して通常70〜400重量部である。また、水性媒体の滴下速度は、通常毎分10〜800mlである。
【0064】
転相乳化を行う際の攪拌は、例えばタービン翼を用いて行う事ができる。攪拌速度は通常300〜10000rpmである。
【0065】
転相乳化が終了した後は、有機溶剤を除去しても良い。有機溶剤を除去する方法としては、例えば、減圧蒸留等が挙げられる。
【0066】
前記水性分散体(I)中の樹脂粒子の平均粒子径は1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。また、前記水性分散体(I)中の樹脂粒子(P1)は、アクリル系樹脂を含有した樹脂粒子を水性媒体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体中の樹脂粒子を会合させて得られる会合粒子や、アクリル系樹脂を含有した樹脂粒子を水性媒体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体と着色剤粒子の水性分散体および/または着色樹脂粒子の水性分散体とを混合して混合分散体とし、前記混合分散体中のアクリル系樹脂を含有した樹脂粒子と着色剤粒子および/または着色樹脂微粒子とを会合させて得られる会合粒子が好ましい。会合は、例えば、後述する樹脂粒子(P1)と樹脂粒子(P2)との会合を行う際の方法を用いることができる。
【0067】
前記会合粒子を含有する水性分散体を製造する際には、会合を行う際にアクリル系樹脂(p1)のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃で加熱するのが好ましく、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい
【0068】
前記着色剤粒子の水性分散体もしくは別途製造した着色樹脂粒子の水性分散体としては、着色剤粒子もしくは着色樹脂粒子が水性媒体中に微粒子状で分散されているものであればよく、特に限定されないが、例えば、界面活性剤などを用いて着色剤を乳化処理した水性分散体、着色剤と樹脂を加熱溶融したのち、分散剤を含有する水中に分散した水性分散体等が挙げられる。これら水性分散体中における着色剤粒子や着色樹脂粒子の濃度は、目的とするトナーの着色剤濃度の5〜10倍であることが好ましい。
【0069】
前記会合粒子を含有する水性分散体を調製する際に用いるアクリル系樹脂を含有した樹脂粒子の平均粒子径は0.05〜0.8μmが好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.1〜0.4μmが特に好ましい。
【0070】
前記水性分散体(II)中の樹脂粒子(P2)の平均粒子径は0.03〜1.0μmがシェル層を形成しやすいことから好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.2〜0.4μmがより好ましい。
【0071】
次に、前記工程2で会合を行うことにより樹脂粒子(P1)をコア粒子として、コア粒子の表面に樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる。ここで、「会合」について述べる。一般に前記した製造方法等により得られるような樹脂粒子水性分散体中の樹脂粒子は、その表面電荷に由来する静電反発力により凝集することなく水性媒体中に安定に存在するが、同時に、ファンデルワールス力によって樹脂粒子間には引力が働いている。そこで、何らかの作用で樹脂粒子表面電荷を適宜減少させてやると、静電反発力より引力が大きくなり、樹脂微粒子同志が凝集し始めて、より大きい粒子径に成長した樹脂粒子の分散体となる。これを本発明では会合という。この会合の温度はアクリル系樹脂のガラス転移温度とポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃が好ましく、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい。会合に要する時間は、通常2〜12時間であり、4〜10時間が好ましい。また、会合は、攪拌下、好ましくは穏やかな攪拌下、例えば、アンカー翼で10〜100rpm程度の回転数による攪拌下で行うと良い。
【0072】
前記の樹脂粒子表面電荷を減少もしくは失わせる方法としては、例えば、希塩酸、希硫酸、酢酸、蟻酸、炭酸などの酸をいわゆる逆中和剤として添加する方法や、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第2鉄、塩化カルシウム等の金属塩類やカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属錯体を添加する塩析等が挙げられる。又、会合工程におい着色剤などを分散処理したり、会合の進行を制御する目的で、必要に応じて界面活性剤を使用してもよい。
【0073】
前記界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルジスルフォン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド等のカチオン界面活性剤、アルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール等のノニオン界面活性剤等が挙げられ、適宜選択して使用することができる。
【0074】
前記工程2における水性分散体(I)と水性分散体(II)との混合割合〔(I)/(II)〕は固形分の重量比で1〜5が好ましく、1.5〜4がより好ましい。
【0075】
コア粒子の表面上に樹微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる際は、シェル層の厚さが0.2〜4μmになる様に会合を行うのが好ましく、厚さが0.3〜3μmになる様に会合を行うのがより好ましい。
【0076】
前記工程3で得られたコアシェル構造を有する粒子を回収する方法としては、例えば、濾過等が挙げられる。乾燥は、室温で放置して自然乾燥させてもよいし、電子写真用トナーの性能に影響を及ぼさない温度、例えば、50℃程度で乾燥機を用いて行っても良い。
【0077】
本発明の電子写真用トナーは、磁性粉、ワックス等の添加剤を必要に応じて用いても良い。これらを含有する電子写真用トナーは、前記したアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂(p2)と予め混練して混練物としておき、これらの混練物を用いた水性分散体を用いることにより製造することが出来る。これらの添加剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0078】
磁性粉としては、例えば、マグネタイト、フェライト、コバルト、鉄、ニッケル等の金属単体やその合金等が挙げられる。
【0079】
ワックスは、電子写真用トナー用のオフセット防止剤として使用できる。ワックスとしては、例えば、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィシュワックス、ステアリルビスアミド、酸化ワックス等の合成ワックス類や、カルナバワックス、ライスワックス等の天然ワックス等が挙げられる。
【0080】
また、帯電制御剤を用いると帯電特性が良好なトナーが得られる。帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、フッ素処理活性剤等のプラス帯電制御剤や、電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等のマイナス帯電制御剤等が挙げられる。
【0081】
本発明において、水性分散体(I)や水性分散体(II)中の不揮発分の割合は、前記水性分散体を真空乾燥器中に100℃、0.1KPa、3時間の条件で放置し、前記水性分散体の重量変化から求めた。また、樹脂微粒子の平均粒子径は、0.001〜2μmの平均粒子径測定はLeeds+Northrup社製のMICROTRAC UPA150を用いて測定し、1〜40μmの平均粒子測定はベックマンコールター社製マルチサイザーTM3を用いて測定した。
【0082】
【実施例】
以下に本発明を、合成例、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。例中の部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0083】
合成例1(アクリル系樹脂の合成)
板バルブ及びタービン翼を備えた5Lのステンレス製オートクレーブに、水 2,000容積部、けん化度が85モル%でかつ重合度が2,000であるポリビニルアルコールの1%水溶液 50ml、スチレン 560g、メタクリル酸28g、メタクリル酸メチル 350g、nブチルアクリレート 62g及びベンゾイルパーオキサイド 5gを仕込んで、700rpmの攪拌下に120℃に昇温させて2時間かけて重合を行った。次いで、90℃に降温してからオートクレーブに横型コンデンサーを取り付け、オートクレーブの気相を窒素ガスに置換した状態で3時間かけて常圧にて蒸留を行った。オートクレーブから内容物を取り出して、この内容物をナイロン網により水切りし、次いで流動乾燥機中で乾燥させて酸価が17.2mgKOH/g、環球法による軟化点が130℃、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(Tg)が64℃、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による数平均分子量(Mn)が11,200、重量平均分子量(Mw)が131,000である重合体を得た。これをスチレン−アクリル系樹脂1とする。
【0084】
合成例2〔ポリエステル系樹脂(P2)の合成〕
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコ−ル 324g、ネオペンチルグリコ−ル 545gおよびトリメチロ−ルプロパン 112gを仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド 2.4gを投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸 1,808gを徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して温度を240℃まで上げた。さらに同温度で5時間反応させ、酸価が10.0になった時に温度を220℃まで下げた後、ドデセニル無水コハク酸 100gを投入し、同温度で30分間ドデセニル無水コハク酸とポリエステル樹脂の水酸基末端との開環付加反応を行ない、酸価が16.0、環球法による軟化点が113℃、DSC法によるTgが58℃、GPC法によるMnが3,500、Mwが20,000であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル系樹脂1と略記する。
【0085】
合成例3(比較対照用ポリエステル樹脂の合成)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計、及び精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコ−ル 321g、ネオペンチルグリコ−ル 358g、トリメチロ−ルプロパン 84gを仕込み、140℃まで昇温し、ジブチル錫オキサイド 2.1gを投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸 790g及びイソフタル酸 553gを徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して240℃まで昇温した。さらに同温度で8時間縮合反応を続け、酸価が13.6、環球法による軟化点が114℃、DSC法によるTgが60℃、GPC法によるMwが18,800、Mnが3,800であるポリエステル樹脂を得た。これを比較対照用ポリエステル樹脂1′と略記する。
【0086】
参考例1〔アクリル系樹脂の水性分散体(I)の調製〕
スチレン−アクリル系樹脂1 49g、リ−ガル330(キャボット社製のカーボンブラック)30g、ビスコ−ル550P(株式会社三洋化成製のポリプロピレンワックス)9g及びボントロンE−80(オリエント化学工業株式会社製の帯電制御剤)12gを混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100gおよびテトラヒドロフラン(THF)100gをプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、25%アンモニア水1.5gとイオン交換水398.5gからなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中にポリエステル樹脂を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去した。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.23μm、粒度分布は2.4であった。
【0087】
得られた水性分散体をアンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1100g及びアセトン10gを仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20gと1%塩化カルシウム水溶液20gと1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20gとの混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色された平均粒径4μmの粒子を含む水性分散体を得た。これをアクリル系樹脂微粒子水性分散体と略記する。
【0088】
参考例2〔ポリエステル系樹脂の水性分散体(II)の調製〕
ポリエステル系樹脂1 100gおよびTHF 100gをプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、25%アンモニア水3.2gとイオン交換水396.8gからなる90℃に予備加熱した水性媒体400gを5分間かけて加圧注入し、水中にポリエステル樹脂を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去した。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.21μm、粒度分布は2.2であった。これをポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1と略記する。
【0089】
参考例3(比較対照用ポリエステル系樹脂の水性分散体の調製)
ポリエステル系樹脂1の換わりにポリエステル系樹脂1′ 100gを用いた以外は参考例2と同様にして、不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.26μm、粒度分布は2.7の比較対照用ポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1′を得た。
【0090】
実施例1
アンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、アクリル系樹脂微粒子水性分散体1 100g、ポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1 52gおよびTHF10gを仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20gと1%塩化カルシウム水溶液20gと1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20gとの混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、アクリル系樹脂微粒子をコア粒子として、コア粒子の表面にポリエステル樹脂微粒子を会合させて得られたシェル層を有するコアシェル構造の樹脂微粒子を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でTHFを留去し、イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、樹脂微粒子を得た。この樹脂粒子の体積平均粒子径および粒度分布を測定したところ、体積平均粒子径は5.9μm、粒度分布は1.7であった。この樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナー1を調製した。このトナーを用いて得られる画質の評価を下記に示す方法で行った。結果を第1表に示す。
【0091】
画質評価方法:トナー1を電子写真用複写機「U−Bix5000」(小西六写真工業株式会社製)に装填し、テストチャートとして電子写真学会発行のA4カラ−用(番号5−1)を用いて1200dpiの画像を形成したときの1dot lineの解像性を下記判定に従い評価した。
◎:完全な1dot lineを形成している。
○:ほぼ完全な1dot lineを形成している。
×:不完全な1dot lineを形成している。
××:1dot lineを形成していない。
【0092】
比較例1
ポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1 52gの換わりにポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1′ 52g用いた以外は実施例1と同様にして、比較対照用トナー1′を得た。このトナーを用いて得られる画像の評価を実施例1と同様にして行い、結果を第1表に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【発明の効果】
本発明の電子写真用トナーは、アクリル系樹脂を含有する樹脂微粒子からなるコア部と、前記コア部の表面に、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層とを有する電子写真用トナーであり、アクリル系樹脂とポリエステル系樹脂(A)の相溶性が良好なため、画質が良好である。
また、本発明の電子写真用トナーは、アクリル系樹脂を含有した樹脂微粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂を含有し平均粒子径が前記樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂微粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法によりにより容易に得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は画質が良好な電子写真用トナーとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真用トナーにおいては、得られる画質の向上が益々求められており、そのような市場の要求に対して、例えば、樹脂粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成し、該凝集粒子の分散液中に別途調製した微粒子の分散液を添加混合して前記凝集粒子の表面に前記微粒子を付着させるトナーの製造方法がある(例えば、特許文献1参照。)。前記特許文献1の製造方法で得られるトナーは前記凝集粒子をコア粒子として、このコア粒子の表面に別途製造した微粒子を付着させてシェル層を形成したコアシェル構造を有するトナーであり、例えば、実施例3ではアクリル樹脂を含有する樹脂微粒子をコア粒子としてこのコア粒子の表面にポリエステル樹脂の樹脂微粒子を会合させてコアシェル構造を有するトナーを製造している。しかしながら、前記特許文献1で得られるトナーは画質がある程度向上しているものの、未だ市場の要求を満たすレベルには達成していない。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−26842号公報(第2頁、第10〜11頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、画質が良好な電子写真用トナーとその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見(a)および(b)を見出し、本発明を完成させるに至った。
(a)側鎖としてアルキル基やアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)はアクリル系樹脂と相溶性が良好であり、前記アクリル系樹脂をコア部として、このコア部の表面に前記ポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層を配置したコアシェル型トナーはにじみがなく、画質が良好なこと。
(b)前記電子写真用トナーは、アクリル系樹脂を含有した樹脂粒子(P1)と前記ポリエステル系樹脂(A)を含有した樹脂粒子(P2)とを樹脂粒子(P2)の平均粒子径が樹脂粒子(P1)の平均粒子経よりも小さくなる組み合わせで用い、前記樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性媒体(I)と前記樹脂粒子(P2)を水性分散体中に分散してなる水性媒体(II)とを混合し、樹脂粒子(P1)と樹脂粒子(P2)とを会合させて樹脂粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂粒子(P2)が会合させてシェル層を形成することにより容易に製造することができること。
【0006】
即ち本発明は、アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子を含有するコア部と、前記コア部の表面にアルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層とを有することを特徴とする電子写真用トナーを提供するものである。
【0007】
また、本発明はアクリル系樹脂を含有する樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有し、かつ、平均粒子径が前記樹脂粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、前記樹脂粒子(P1)と前記樹脂粒子(P2)とを会合させて前記樹脂粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に前記樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるアクリル系樹脂としては、例えば、乳化剤、懸濁安定剤等を用いることにより水性媒体中に分散可能な非自己水分散性アクリル系樹脂;乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく、水性媒体中に分散可能なアクリル系樹脂、中和により水性媒体中に分散が可能なアクリル樹脂等の自己水分散性アクリル系樹脂等が挙げられるが、なかでも自己水分散性アクリル系樹脂が好ましい。また、前記アクリル系樹脂は、テトラヒドロフランやメチルエチルケトンに25℃で前記アクリル系樹脂を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で水性媒体(非自己水分散性アクリル系樹脂の場合は乳化剤等を含有する水性媒体。自己水分散性の中でも中和により水性媒体中に分散可能となるアクリル系樹脂の場合は中和剤を含有する水性媒体)を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能なアクリル系樹脂が好ましく、平均粒子径が0.1μm以下の粒子状で分散することが可能なアクリル系樹脂が特に好ましい。
【0009】
前記自己水分散性アクリル系樹脂としては、例えば、スルフォン酸金属塩、カルボン酸金属塩等の中和された酸基含有アクリル系樹脂;中和された塩基性基含有アクリル系樹脂;ヒドロキシポリオキシエチレンのようないわゆるノニオン構造が導入されたアクリル系樹脂等の親水性セグメント含有アクリル系樹脂;カルボキシル基等の酸基を有し、アルカノールアミンなどの有機塩基、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等の中和剤を添加することにより水相中にてアニオン化することの可能なアクリル系樹脂;アミノ基やピリジン環等の塩基性基を有し、有機酸、無機酸等の中和剤を添加することにより水相中でカチオン化することの可能なアクリル系樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有アクリル系樹脂や酸基含有アクリル系樹脂が好ましく、吸湿性が低く保存が容易なことから酸基含有アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0010】
前記した中和された酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、中和された酸基含有(メタ)アクリル系樹脂、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましい。
【0011】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂、カルボキシル基等の酸基を含有し、中和により自己水分散性アクリル系樹脂となるアクリル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたアクリル系樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、中和されたカルボキシル基含有アクリル系樹脂、中和されたスルフォン基含有アクリル系樹脂、中和されたリン酸基含有アクリル系樹脂等が挙げられる。自己水分散性アクリル系樹脂として中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂を用いる時は中和されたスルフォン基含有アクリル系樹脂が好ましく、前記中和により自己水分散性アクリル系樹脂となるアクリル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたアクリル系樹脂を用いる時は中和されたカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。尚、前記中和された酸基含有アクリル系樹脂の中和を外した場合の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0012】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂は、例えば、中和された基を有する単量体を必須として必要により他の単量体と共に分散剤や界面活性剤等を含有する水に加え、更に易溶性の重合開始剤を添加して行う懸濁重合法等により調製することができる。
【0013】
前記した酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、酸基含有(メタ)アクリル系樹脂、酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等が挙げられ、なかでも、酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましい。なお、酸基含有アクリル系樹脂の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0014】
前記酸基含有アクリル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基等の酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたアクリル系樹脂が好ましい。前記アクリル系樹脂の具体例としては、カルボキシル基含有アクリル系樹脂、スルフォン酸基含有アクリル系樹脂、リン酸基含有アクリル系樹脂等が挙げられ、なかでもカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。
【0015】
前記カルボキシル基含有アクリル系樹脂は、カルボキシル基を有する単量体を必須として必要により他の単量体と共に分散剤や界面活性剤等を含有する水に加え、更に該単量体に易溶性の重合開始剤を添加して行う懸濁重合法等により調製することができる。
【0016】
前記中和された酸基含有アクリル系樹脂や酸基含有アクリル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。
【0017】
前記中和された基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩等が挙げられる。
【0018】
前記酸基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0019】
前記した中和された基を有する単量体や酸基を有する単量体と共に、(メタ)アクリル系樹脂、中和された酸基含有スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂等のアクリル系樹脂の調製に用いることの出来る他の単量体としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数のものを併用してよい。
【0020】
アクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量は5,000〜300,000が好ましく、7,000〜250,000がより好ましく、10,000〜150,000が特に好ましい。アクリル系樹脂の環球法による軟化点は80〜160℃が好ましく、85〜155℃がより好ましく、90〜150℃が特に好ましい。アクリル系樹脂の示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(Tg)は45〜80℃が好ましく、50〜75℃がより好ましく、54〜70℃が特に好ましい。
【0021】
本発明で使用するポリエステル系樹脂(A)はアルキル基および/またはアルケニル基を有する必要がある。アルキル基、アルケニル基は直鎖状でも分岐状でも良く、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、ドデシル基、ドデセニル基等が挙げられる。アルキル基やアルケニル基は炭素原子数4〜20のアルキル基や炭素原子数4〜20のアルケニル基が好ましい
【0022】
前記ポリエステル系樹脂(A)としては、例えば、乳化剤、懸濁安定剤等等を用いることにより水性媒体中に分散可能な非自己水分散性ポリエステル系樹脂;乳化剤、懸濁安定剤等を用いることなく、水性媒体中に分散可能なポリエステル系樹脂、中和により水性媒体中に分散可能なポリエステル系樹脂等の自己水分散性ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、なかでも自己水分散性ポリエステル系樹脂が好ましい。また、前記ポリエステル系樹脂(A)は、テトラヒドロフランまたはメチルエチルケトンに25℃で前記ポリエステル系樹脂を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で水性媒体(非自己水分散性ポリエステル系樹脂の場合は乳化剤等を含有する水性媒体。自己水分散性の中でも中和により水性媒体中に分散可能となるポリエステル系樹脂の場合は中和剤を含有する水性媒体。)を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能なポリエステル系樹脂が好ましく、0.1μm以下の粒子状で分散することが可能なポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0023】
前記自己水分散性ポリエステル系樹脂としては、例えば、スルフォン酸金属塩、カルボン酸金属塩等の中和された酸基含有ポリエステル系樹脂;中和された塩基性基含有ポリエステル系樹脂;ヒドロキシポリオキシエチレンのようないわゆるノニオン構造が導入されたポリエステル系樹脂等の親水性セグメント含有ポリエステル系樹脂;カルボキシル基等の酸基を有し、アルカノールアミンなどの有機塩基、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等の中和剤を添加することにより水相中にてアニオン化することの可能なポリエステル系樹脂;アミノ基やピリジン環等の塩基性基を有し、有機酸、無機酸等の中和剤を添加することにより水相中でカチオン化することの可能なポリエステル系樹脂等が挙げられ、なかでも、中和された酸基含有ポリエステル系樹脂や酸基含有ポリエステル系が好ましく、吸湿性が低く保存が容易なことから酸基含有ポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0024】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂としては、例えば、中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂、カルボキシル基等の酸基を含有し、中和により自己水分散性ポリエステル系樹脂となるポリエステル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、中和されたカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂、中和されたスルフォン基含有ポリエステル系樹脂、中和されたリン酸基含有ポリエステル系樹脂等が挙げられる。自己水分散性ポリエステル樹脂として中和された酸基を有する化合物を必須成分として用いて得られたポリエステル系樹脂を用いる時は中和されたスルフォン基含有ポリエステル系樹脂が好ましく、前記中和により自己水分散性ポリエステル系樹脂となるポリエステル系樹脂を調製したのち、酸基を中和して得られたポリエステル系樹脂を用いる時は中和されたカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂が好ましい。なお、中和された酸基含有ポリエステル系樹脂の中和を外した場合の酸価としては、1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0025】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂は、例えば、アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸やその無水物と二価のアルコールと中和された酸基を有する二塩基酸とを必須成分として、必要に応じて、三官能以上の多塩基酸、その無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等を併用し、窒素雰囲気中で加熱下に酸価を測定しながら180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法等により調製することができる。
【0026】
前記酸基含有ポリエステル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂等、スルフォン酸基含有ポリエステル系樹脂、リン酸基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂がより好ましい。酸基含有ポリエステル系樹脂の酸価としては1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0027】
前記カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂は、例えば、
1.アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸やその無水物と、二価のアルコールとを必須として、必要に応じて、その他の二塩基酸やその無水物、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上の多価アルコール、一価のアルコール等を混合し、窒素雰囲気中で180〜260℃の反応温度で酸価と水酸基価を測定しながら脱水縮合する方法、
2.二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として調製した、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基や水酸基を有していても良い)を加熱溶解し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する酸無水物を投入し、ポリエステル樹脂の末端水酸基に開環付加させる方法、
3.二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須の成分として調製した、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基や水酸基を含有していても良い)を加熱溶融し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を投入し、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基の一部に開環付加させる方法、
等の製造方法により調製できる。
【0028】
前記中和された酸基含有ポリエステル系樹脂や酸基含有ポリエステル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、上記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、種々の触媒を添加することもできる。
【0029】
前記触媒としては、例えば、酸化アンチモン、酸化バリウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、琥珀酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、蟻酸カドミウム、一酸化鉛、珪酸カルシウム、ジブチル錫オキシド、ブチルヒドロキシ錫オキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。
【0030】
前記中和された酸基を有する二塩基酸としては、例えば、スルフォテレフタル酸、3−スルフォイソフタル酸、4−スルフォフタル酸、4−スルフォナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルフォ−p−キシリレングリコール、2−スルフォ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩などの金属塩が挙げられる。
【0031】
前記アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクチル無水コハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸等が挙げられる。
【0032】
二価のアルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコ−ル等のアラルキレングリコ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、水添ビスフェノ−ルA等の脂環式のジオ−ル類等が挙げられる。
【0033】
前記その他の二塩基酸およびその無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデシル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の線状脂肪族の二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の環状脂肪族の二塩基酸や芳香族の二塩基酸等が挙げられる。
【0034】
三官能以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0035】
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。
【0036】
三官能以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0037】
一価のアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0038】
前記方法2で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸等、各種の飽和あるいは不飽和の脂肪酸のモノグリシジルエステルや、カージュラE10(シェルケミカル社製)、イソノナン酸、バ−サチック酸等の分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。
【0039】
前記方法3で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する酸無水物としては、例えば、n−ブチル無水コハク酸、n−ペンチル無水コハク酸、ネオペンチル無水コハク酸、n−ヘキシル無水コハク酸、n−ヘプチル無水コハク酸、n−オクチル無水コハク酸、イソオクチル無水コハク酸、2−エチルヘキシル無水コハク酸、n−ドデシル無水コハク酸、イソドデシル無水コハク酸、n−ドデセニル無水コハク酸、イソドデセニル無水コハク酸、6−ブチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、6−n−オクチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物等が挙げられる。なかでも、n−ドデセニル無水コハク酸が好ましい。
【0040】
前記した二塩基酸、その無水物、三官能以上の塩基酸、その無水物、一塩基酸等はそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、カルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステル又はアリールエステルとなっているものも使用できる。
【0041】
前記した二価のアルコール、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等は、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用することもできる。
【0042】
また、例えば、ジメチロ−ルプロピオン酸、ジメチロ−ルブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸のような、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も使用できる。
【0043】
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)としては、前記製造方法2で記載した、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂の末端水酸基にアルキル基および/またはアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル系樹脂や、前記製造方法3で記載した末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基にアルキル基および/またはアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル系樹脂が好ましい。
【0044】
アルキル基やアルケニル基を含有するポリエステル系樹脂は、前記ポリエステル系樹脂の原料の合計100重量部に対して、前記アルキル基やアルケニル基を含有する化合物を0.1〜50重量部用いて得られるポリエステル系樹脂が好ましく、0.5〜20重量部用いて得られるポリエステル系樹脂がより好ましく、1.0〜10重量部用いて得られるポリエステル系樹脂が最も好ましい。
【0045】
更に、ポリエステル系樹脂(A)は原料として芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する化合物(a)を用いて得られるポリエステル樹脂がアクリル系樹脂との相溶性を良好にし、画質が良好な電子写真用トナーが得られるので好ましい。前記化合物(a)は芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有すれば良く、例えば、芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する化合物はもちろん、他の製造方法によるものでも、芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有するものであれば支障なく使用することができる。このような化合物(a)としては、例えば、芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する塩基酸(a1)や芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有するアルコール(a2)等が挙げられる。
【0046】
前記芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する塩基酸(a1)としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸やその無水物等のシクロアルカン構造を有する二塩基酸およびその無水物や、テトラヒドロフタル酸やその無水物、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸やその無水物等が挙げられる。
【0047】
前記芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有するアルコール(a2)としては、例えば、水添ビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0048】
前記芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する化合物(a)としては、画質に優れる電子写真用トナーが得られることから
芳香環の一部乃至全部を水素添加して得られる構造を有する二塩基酸やその無水物が好ましく、シクロアルカン構造を有する二塩基酸およびその無水物がより好ましく、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物が最も好ましい。
【0049】
前記ポリエステル系樹脂(A)は、前記ポリエステル系樹脂(A)の原料の合計100重量部に対して、前記芳香環の水素添加物構造を有する化合物(a)を0.1〜50重量部用いて得られるポリエステル系樹脂が好ましく、0.5〜20重量部用いて得られるポリエステル系樹脂がより好ましく、1.0〜10重量部用いて得られるポリエステル系樹脂が最も好ましい。
【0050】
ポリエステル系樹脂(A)のGPC法による重量平均分子量は50,000〜500,000が好ましく、60,000〜420,000がより好ましく、70,000〜350,000が特に好ましい。ポリエステル系樹脂(A)の環球法による軟化点は120〜190℃が好ましく、135〜180℃がより好ましく、140〜170℃が最も好ましい。ポリエステル系樹脂(A)のDSCによるTgは55〜85℃が好ましく、60〜80℃がより好ましく、65〜75℃が特に好ましい。
【0051】
本発明では、前記ポリエステル系樹脂(A)の軟化点が前記アクリル系樹脂の軟化点よりも高いことが好ましく、前記ポリエステル系樹脂(A)の軟化点が前記アクリル系樹脂の軟化点よりも30〜50℃高いことがより好ましい。
【0052】
本発明ではコア部および/またはシェル層の一部乃至全部が着色されている。着色は、電子写真用トナーとして用いることができる程度になされていれば良く、例えば、コア部が着色されておりシェル層が着色されていなくても良いし、コア部が着色されておらずシェル層の一部乃至全部が着色されていても良いし、コア部およびシェル層の一部乃至全部が着色されていても良いが、なかでも、コア部が着色されているのが好ましい。着色されたコア部やシェル層は、例えば、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂(A)と着色剤とを加圧ニーダー等を用いて混練した着色されたアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂を用いることにより得られる。
【0053】
前記着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)等が挙げられる。
【0054】
前記着色剤は、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して1〜20重量部の範囲内になるよう使用するのが好ましい。着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0055】
本発明の電子写真用トナーのコア部の平均粒径は1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。また、シェル層の厚みは0.2〜4μmが好ましく、0.3〜3μmがより好ましい。
【0056】
次に、本発明の電子写真用トナーの製造方法について説明する。本発明の電子写真用トナーの好ましい製造方法としては、例えば、
工程1.アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、ポリエステル系樹脂(A)を含有した樹脂粒子(P2)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(II)とを、前記樹脂粒子(P1)および/または前記樹脂粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂粒子となる様にそれぞれ製造する工程、
工程2.前記工程1で得られた水性分散体(I)と水性分散体(II)とを樹脂粒子(P2)の平均粒子径が樹脂粒子(P1)の平均粒子経よりも小さくなる組み合わせで混合し、樹脂粒子(P1)と樹脂粒子(P2)とを会合させて樹脂粒子(P1)をコア部として、該コア部の表面に樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させ、会合粒子とする工程、
工程3.前記工程2で得られた会合粒子を含む分散体から会合粒子を回収し、必要によりイオン交換水等で洗浄した後乾燥させる工程、
からなる製造方法等が挙げられる。
【0057】
前記水性分散体(I)や水性分散体(II)は、例えば、以下の方法で製造することができる。
方法▲1▼:アクリル系樹脂を含有する樹脂やポリエステル樹脂(A)を含有する樹脂をジェットミル等を用いて粉砕、必要により分級した後、乳化剤、懸濁安定剤等を含有していても良い水性媒体に分散させる方法。
方法▲2▼:アクリル系樹脂を含有する樹脂やポリエステル樹脂(A)として、酸基を含有するアクリル系樹脂を含有する樹脂やポリエステル系樹脂を用い、これらの樹脂と有機溶剤とを混合し、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液を調製した後、この樹脂溶液に塩基性化合物を含有する水性媒体を滴下して転相乳化を行う方法。
【0058】
なかでも、粒度分布の幅が小さい球形の樹脂微粒子が製造でき、得られる画像の質が良好な電子写真用トナーが得られることから前記水性分散体(I)や水性分散体(II)は前記方法▲2▼を用いて製造するのが好ましい。前記▲2▼の方法を用いて水性分散体(I)や水性分散体(II)を製造する方法について説明する。
【0059】
前記▲2▼の方法を用いて水性分散体(I)や水性分散体(II)を製造する方法において、用いる酸基含有ポリエステル樹脂や酸基含有アクリル系樹脂は、カルボキシル基含有のポリエステル系樹脂やカルボキシル基含有アクリル系樹脂が好ましい。これらの樹脂の酸価は1〜100が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0060】
前記したカルボキシル基含有アクリル系樹脂やカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂と必要により顔料、帯電制御剤、離形剤等とを加熱ニーダー、加熱3本ロール、2軸押出し混練機等を用いて混練物を得た後、この混練物とテトラヒドロフランやメチルエチルケトン等の有機溶剤とを混合し樹脂を有機溶剤中に溶解した樹脂溶液を得る。この時の混練物を有機溶剤の混合割合は、通常混練物100重量部に対して5〜300重量部である。
【0061】
次に、この樹脂溶剤に攪拌下で塩基性化合物を含有する水性媒体を滴下し転相乳化を行う。ここで用いる塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物、それらの炭酸塩、それらの酢酸塩など、更には、アンモニア水、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが挙げられる。これらのなかではアンモニア水が好ましい。また、これら塩基性化合物は単独使用でもよいし、2種類以上の併用でも構わない。
【0062】
塩基性化合物の使用量は、アクリル系樹脂やポリエステル樹脂(A)を水性媒体中に安定に分散させるような量であれば良く制限は無いが、樹脂中の酸基に対して、通常0.5〜6.0倍当量である。
【0063】
水性媒体の使用量は、樹脂溶液100重量部に対して通常70〜400重量部である。また、水性媒体の滴下速度は、通常毎分10〜800mlである。
【0064】
転相乳化を行う際の攪拌は、例えばタービン翼を用いて行う事ができる。攪拌速度は通常300〜10000rpmである。
【0065】
転相乳化が終了した後は、有機溶剤を除去しても良い。有機溶剤を除去する方法としては、例えば、減圧蒸留等が挙げられる。
【0066】
前記水性分散体(I)中の樹脂粒子の平均粒子径は1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。また、前記水性分散体(I)中の樹脂粒子(P1)は、アクリル系樹脂を含有した樹脂粒子を水性媒体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体中の樹脂粒子を会合させて得られる会合粒子や、アクリル系樹脂を含有した樹脂粒子を水性媒体中に分散してなる水性分散体を調製した後、前記水性分散体と着色剤粒子の水性分散体および/または着色樹脂粒子の水性分散体とを混合して混合分散体とし、前記混合分散体中のアクリル系樹脂を含有した樹脂粒子と着色剤粒子および/または着色樹脂微粒子とを会合させて得られる会合粒子が好ましい。会合は、例えば、後述する樹脂粒子(P1)と樹脂粒子(P2)との会合を行う際の方法を用いることができる。
【0067】
前記会合粒子を含有する水性分散体を製造する際には、会合を行う際にアクリル系樹脂(p1)のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃で加熱するのが好ましく、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい
【0068】
前記着色剤粒子の水性分散体もしくは別途製造した着色樹脂粒子の水性分散体としては、着色剤粒子もしくは着色樹脂粒子が水性媒体中に微粒子状で分散されているものであればよく、特に限定されないが、例えば、界面活性剤などを用いて着色剤を乳化処理した水性分散体、着色剤と樹脂を加熱溶融したのち、分散剤を含有する水中に分散した水性分散体等が挙げられる。これら水性分散体中における着色剤粒子や着色樹脂粒子の濃度は、目的とするトナーの着色剤濃度の5〜10倍であることが好ましい。
【0069】
前記会合粒子を含有する水性分散体を調製する際に用いるアクリル系樹脂を含有した樹脂粒子の平均粒子径は0.05〜0.8μmが好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.1〜0.4μmが特に好ましい。
【0070】
前記水性分散体(II)中の樹脂粒子(P2)の平均粒子径は0.03〜1.0μmがシェル層を形成しやすいことから好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.2〜0.4μmがより好ましい。
【0071】
次に、前記工程2で会合を行うことにより樹脂粒子(P1)をコア粒子として、コア粒子の表面に樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる。ここで、「会合」について述べる。一般に前記した製造方法等により得られるような樹脂粒子水性分散体中の樹脂粒子は、その表面電荷に由来する静電反発力により凝集することなく水性媒体中に安定に存在するが、同時に、ファンデルワールス力によって樹脂粒子間には引力が働いている。そこで、何らかの作用で樹脂粒子表面電荷を適宜減少させてやると、静電反発力より引力が大きくなり、樹脂微粒子同志が凝集し始めて、より大きい粒子径に成長した樹脂粒子の分散体となる。これを本発明では会合という。この会合の温度はアクリル系樹脂のガラス転移温度とポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃が好ましく、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい。会合に要する時間は、通常2〜12時間であり、4〜10時間が好ましい。また、会合は、攪拌下、好ましくは穏やかな攪拌下、例えば、アンカー翼で10〜100rpm程度の回転数による攪拌下で行うと良い。
【0072】
前記の樹脂粒子表面電荷を減少もしくは失わせる方法としては、例えば、希塩酸、希硫酸、酢酸、蟻酸、炭酸などの酸をいわゆる逆中和剤として添加する方法や、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第2鉄、塩化カルシウム等の金属塩類やカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属錯体を添加する塩析等が挙げられる。又、会合工程におい着色剤などを分散処理したり、会合の進行を制御する目的で、必要に応じて界面活性剤を使用してもよい。
【0073】
前記界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルジスルフォン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド等のカチオン界面活性剤、アルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール等のノニオン界面活性剤等が挙げられ、適宜選択して使用することができる。
【0074】
前記工程2における水性分散体(I)と水性分散体(II)との混合割合〔(I)/(II)〕は固形分の重量比で1〜5が好ましく、1.5〜4がより好ましい。
【0075】
コア粒子の表面上に樹微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる際は、シェル層の厚さが0.2〜4μmになる様に会合を行うのが好ましく、厚さが0.3〜3μmになる様に会合を行うのがより好ましい。
【0076】
前記工程3で得られたコアシェル構造を有する粒子を回収する方法としては、例えば、濾過等が挙げられる。乾燥は、室温で放置して自然乾燥させてもよいし、電子写真用トナーの性能に影響を及ぼさない温度、例えば、50℃程度で乾燥機を用いて行っても良い。
【0077】
本発明の電子写真用トナーは、磁性粉、ワックス等の添加剤を必要に応じて用いても良い。これらを含有する電子写真用トナーは、前記したアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂(p2)と予め混練して混練物としておき、これらの混練物を用いた水性分散体を用いることにより製造することが出来る。これらの添加剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0078】
磁性粉としては、例えば、マグネタイト、フェライト、コバルト、鉄、ニッケル等の金属単体やその合金等が挙げられる。
【0079】
ワックスは、電子写真用トナー用のオフセット防止剤として使用できる。ワックスとしては、例えば、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィシュワックス、ステアリルビスアミド、酸化ワックス等の合成ワックス類や、カルナバワックス、ライスワックス等の天然ワックス等が挙げられる。
【0080】
また、帯電制御剤を用いると帯電特性が良好なトナーが得られる。帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、フッ素処理活性剤等のプラス帯電制御剤や、電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等のマイナス帯電制御剤等が挙げられる。
【0081】
本発明において、水性分散体(I)や水性分散体(II)中の不揮発分の割合は、前記水性分散体を真空乾燥器中に100℃、0.1KPa、3時間の条件で放置し、前記水性分散体の重量変化から求めた。また、樹脂微粒子の平均粒子径は、0.001〜2μmの平均粒子径測定はLeeds+Northrup社製のMICROTRAC UPA150を用いて測定し、1〜40μmの平均粒子測定はベックマンコールター社製マルチサイザーTM3を用いて測定した。
【0082】
【実施例】
以下に本発明を、合成例、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。例中の部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0083】
合成例1(アクリル系樹脂の合成)
板バルブ及びタービン翼を備えた5Lのステンレス製オートクレーブに、水 2,000容積部、けん化度が85モル%でかつ重合度が2,000であるポリビニルアルコールの1%水溶液 50ml、スチレン 560g、メタクリル酸28g、メタクリル酸メチル 350g、nブチルアクリレート 62g及びベンゾイルパーオキサイド 5gを仕込んで、700rpmの攪拌下に120℃に昇温させて2時間かけて重合を行った。次いで、90℃に降温してからオートクレーブに横型コンデンサーを取り付け、オートクレーブの気相を窒素ガスに置換した状態で3時間かけて常圧にて蒸留を行った。オートクレーブから内容物を取り出して、この内容物をナイロン網により水切りし、次いで流動乾燥機中で乾燥させて酸価が17.2mgKOH/g、環球法による軟化点が130℃、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(Tg)が64℃、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による数平均分子量(Mn)が11,200、重量平均分子量(Mw)が131,000である重合体を得た。これをスチレン−アクリル系樹脂1とする。
【0084】
合成例2〔ポリエステル系樹脂(P2)の合成〕
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計および精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコ−ル 324g、ネオペンチルグリコ−ル 545gおよびトリメチロ−ルプロパン 112gを仕込み、温度を140℃まで上げ、ジブチル錫オキサイド 2.4gを投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸 1,808gを徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら、3時間を要して温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して温度を240℃まで上げた。さらに同温度で5時間反応させ、酸価が10.0になった時に温度を220℃まで下げた後、ドデセニル無水コハク酸 100gを投入し、同温度で30分間ドデセニル無水コハク酸とポリエステル樹脂の水酸基末端との開環付加反応を行ない、酸価が16.0、環球法による軟化点が113℃、DSC法によるTgが58℃、GPC法によるMnが3,500、Mwが20,000であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル系樹脂1と略記する。
【0085】
合成例3(比較対照用ポリエステル樹脂の合成)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計、及び精留塔を備えた3Lステンレスフラスコに、エチレングリコ−ル 321g、ネオペンチルグリコ−ル 358g、トリメチロ−ルプロパン 84gを仕込み、140℃まで昇温し、ジブチル錫オキサイド 2.1gを投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸 790g及びイソフタル酸 553gを徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して240℃まで昇温した。さらに同温度で8時間縮合反応を続け、酸価が13.6、環球法による軟化点が114℃、DSC法によるTgが60℃、GPC法によるMwが18,800、Mnが3,800であるポリエステル樹脂を得た。これを比較対照用ポリエステル樹脂1′と略記する。
【0086】
参考例1〔アクリル系樹脂の水性分散体(I)の調製〕
スチレン−アクリル系樹脂1 49g、リ−ガル330(キャボット社製のカーボンブラック)30g、ビスコ−ル550P(株式会社三洋化成製のポリプロピレンワックス)9g及びボントロンE−80(オリエント化学工業株式会社製の帯電制御剤)12gを混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100gおよびテトラヒドロフラン(THF)100gをプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、25%アンモニア水1.5gとイオン交換水398.5gからなる90℃に予備加熱した水性媒体400部を5分間かけて加圧注入し、水中にポリエステル樹脂を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去した。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.23μm、粒度分布は2.4であった。
【0087】
得られた水性分散体をアンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1100g及びアセトン10gを仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20gと1%塩化カルシウム水溶液20gと1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20gとの混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色された平均粒径4μmの粒子を含む水性分散体を得た。これをアクリル系樹脂微粒子水性分散体と略記する。
【0088】
参考例2〔ポリエステル系樹脂の水性分散体(II)の調製〕
ポリエステル系樹脂1 100gおよびTHF 100gをプロペラ翼付きの2Lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、25%アンモニア水3.2gとイオン交換水396.8gからなる90℃に予備加熱した水性媒体400gを5分間かけて加圧注入し、水中にポリエステル樹脂を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。この時の中和率は150モル%であった。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去した。この分散体の不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.21μm、粒度分布は2.2であった。これをポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1と略記する。
【0089】
参考例3(比較対照用ポリエステル系樹脂の水性分散体の調製)
ポリエステル系樹脂1の換わりにポリエステル系樹脂1′ 100gを用いた以外は参考例2と同様にして、不揮発分は25%、体積平均粒子径は0.26μm、粒度分布は2.7の比較対照用ポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1′を得た。
【0090】
実施例1
アンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2Lオ−トクレ−ブに、アクリル系樹脂微粒子水性分散体1 100g、ポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1 52gおよびTHF10gを仕込み室温で50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20gと1%塩化カルシウム水溶液20gと1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20gとの混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、アクリル系樹脂微粒子をコア粒子として、コア粒子の表面にポリエステル樹脂微粒子を会合させて得られたシェル層を有するコアシェル構造の樹脂微粒子を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でTHFを留去し、イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、樹脂微粒子を得た。この樹脂粒子の体積平均粒子径および粒度分布を測定したところ、体積平均粒子径は5.9μm、粒度分布は1.7であった。この樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナー1を調製した。このトナーを用いて得られる画質の評価を下記に示す方法で行った。結果を第1表に示す。
【0091】
画質評価方法:トナー1を電子写真用複写機「U−Bix5000」(小西六写真工業株式会社製)に装填し、テストチャートとして電子写真学会発行のA4カラ−用(番号5−1)を用いて1200dpiの画像を形成したときの1dot lineの解像性を下記判定に従い評価した。
◎:完全な1dot lineを形成している。
○:ほぼ完全な1dot lineを形成している。
×:不完全な1dot lineを形成している。
××:1dot lineを形成していない。
【0092】
比較例1
ポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1 52gの換わりにポリエステル系樹脂微粒子水性分散体1′ 52g用いた以外は実施例1と同様にして、比較対照用トナー1′を得た。このトナーを用いて得られる画像の評価を実施例1と同様にして行い、結果を第1表に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【発明の効果】
本発明の電子写真用トナーは、アクリル系樹脂を含有する樹脂微粒子からなるコア部と、前記コア部の表面に、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層とを有する電子写真用トナーであり、アクリル系樹脂とポリエステル系樹脂(A)の相溶性が良好なため、画質が良好である。
また、本発明の電子写真用トナーは、アクリル系樹脂を含有した樹脂微粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂を含有し平均粒子径が前記樹脂微粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂微粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法によりにより容易に得られる。
Claims (8)
- アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子を含有するコア部と、前記コア部の表面にアルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有するシェル層とを有することを特徴とする電子写真用トナー。
- 前記ポリエステル系樹脂(A)が炭素原子数4〜20のアルキル基および/または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有するポリエステル系樹脂である請求項1記載の電子写真用トナー。
- 前記ポリエステル系樹脂(A)が末端に水酸基を有するポリエステル系樹脂の末端水酸基に炭素原子数4〜20のアルキル基および/または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル系樹脂、及び/又は、末端にカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基に炭素原子数4〜20のアルキル基および/または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル系樹脂である請求項2記載の電子写真用トナー。
- 前記コア部の平均粒子径が1〜10μmで、前記シェル層の厚さが0.2〜4.0μmである請求項1、2または3記載の電子写真用トナー。
- アクリル系樹脂を含有する樹脂粒子(P1)を水性分散体中に分散してなる水性分散体(I)と、アルキル基および/またはアルケニル基を有するポリエステル系樹脂(A)を含有し、かつ、平均粒子径が前記樹脂粒子(P1)の平均粒子径より小さい樹脂粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、前記樹脂粒子(P1)と前記樹脂粒子(P2)とを会合させて前記樹脂粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に前記樹脂粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
- 前記ポリエステル系樹脂(A)が末端に水酸基を有するポリエステル系樹脂の末端水酸基に炭素原子数4〜20のアルキル基および/または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル系樹脂、及び/又は、末端にカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基に炭素原子数4〜20のアルキル基および/または炭素原子数4〜20のアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル系樹脂である請求項5記載の電子写真用トナーの製造方法。
- 前記樹脂粒子(P1)の平均粒子径が1〜10μmで、前記樹脂粒子(P2)の平均粒子径が0.08〜0.5μmである請求項5記載の電子写真用トナーの製造方法。
- 前記水性分散体(I)と前記水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなる厚さ0.2〜4.0μmのシェル層を形成させる請求項5、6または7記載の電子写真用トナーの製造方法。
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