JP2004263027A - 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー - Google Patents

熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー Download PDF

Info

Publication number
JP2004263027A
JP2004263027A JP2003053207A JP2003053207A JP2004263027A JP 2004263027 A JP2004263027 A JP 2004263027A JP 2003053207 A JP2003053207 A JP 2003053207A JP 2003053207 A JP2003053207 A JP 2003053207A JP 2004263027 A JP2004263027 A JP 2004263027A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermoplastic resin
organic solvent
fine particles
aqueous dispersion
dispersion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003053207A
Other languages
English (en)
Inventor
Hideki Watanabe
英樹 渡邉
Yasunobu Hirota
安信 廣田
Nobuyoshi Shirai
伸佳 白井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
DIC Corp
Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd filed Critical Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
Priority to JP2003053207A priority Critical patent/JP2004263027A/ja
Publication of JP2004263027A publication Critical patent/JP2004263027A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Developing Agents For Electrophotography (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)

Abstract

【課題】樹脂粒子内に残存する残留溶剤が極めて少ない熱可塑性樹脂微粒子水性分散体を連続的に効率良く得るための製造方法と、残存溶剤が極めて少ない電子写真用トナーを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂(P)を、前記熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を分散剤(D)の存在下で水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記熱可塑性樹脂(P)の微粒子が前記水性媒体中に分散した分散体を製造する第3工程とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法、前記製造方法で得られた熱可塑性樹脂微粒子水性分散体から熱可塑性樹脂の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有する電子写真用トナー。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用トナー、インキ等の印刷材料、塗料、接着剤、粘着材、繊維加工、製紙・紙加工、土木用等に用いられる熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法と、この製造方法で得られる熱可塑性樹脂微粒子を含有する電子写真用トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方式としては、例えば転相乳化法が挙げられる。転相乳化法は、樹脂を微粒子化する分散造粒法の一種であり、例えば、有機溶剤で溶解された自己水分散性樹脂中に疎水性物質を分散または溶解させてなる有機相を水とを混合することにより転相乳化させた後、有機溶剤を除去する微小カプセルの製造方法(例えば、特許文献1参照。)、アニオン型自己水分散性樹脂の有機溶剤溶液に着色剤を分散させ、樹脂を中和した後、水性媒体中へ転相乳化し、次いで有機溶剤の除去と乾燥とを行うカプセル型トナーの製造方法(例えば、特許文献2参照。)、前記アニオン型自己水分散性樹脂として中和塩構造を有するポリエステル樹脂を用いるトナーの製造方法(例えば、特許文献3参照。)、着色剤と自己水分散性樹脂を含有する有機溶剤溶液と水性媒体とを連続式乳化分散機を使用して乳化させた後、有機溶媒の除去と乾燥を行う電子写真用トナーの製造方法(例えば、特許文献4参照。)等が知られている。
【0003】
また、中和された酸基含有ポリエステル樹脂と沸点60〜200℃の水溶性有機化合物と水とを特定の配合比で配合してなる水分散体も知られている(例えば、特許文献5および特許文献6参照。)。
【0004】
前記特許文献1〜4に開示されている転相乳化法は、自己水分散性熱可塑性樹脂の有機溶剤溶液を調製することを念頭に考えられていたため、自己水分散性熱可塑性樹脂とこの熱可塑性樹脂を溶解できる有機溶剤(良溶媒)との組み合わせについての検討のみが提案されていた。そのため、自己水分散性熱可塑性樹脂とこの熱可塑性樹脂を溶解しない有機溶剤の組み合わせに対しては適用されていなかった。
【0005】
また、前記転送乳化法は、自己水分散性熱可塑性樹脂とこの熱可塑性樹脂を溶解できる有機溶剤(良溶媒)の組み合わせであるが故に、水性媒体中に自己水分散性熱可塑性樹脂を分散させた後も自己水分散性熱可塑性樹脂と有機溶剤との間の親和性が高く、結果として有機溶剤の除去工程後も、高濃度で有機溶剤が樹脂粒子内に残留してしまう欠点があった。
【0006】
特許文献5および特許文献6には、沸点60〜200℃の水溶性有機化合物として前記ポリエステル樹脂を溶解する沸点100℃以上の有機溶剤と共に前記ポリエステル樹脂を溶解しない沸点100℃未満の有機溶剤も例示されているが、得られた水系分散体から有機溶剤を除去すること、および、前記ポリエステル樹脂を、このポリエステル樹脂を溶解しない有機溶剤と組み合わせて用いることに関する記載や示唆はなく、実施例では前記ポリエステル樹脂を溶解する沸点100℃以上の有機溶剤(良溶媒)を含む有機溶剤をいずれも使用して水系分散体を製造した後、有機溶剤の除去を行うことなくコーティング剤等に用いている。これら前記実施例で得られる水系分散体は、有機溶剤の除去を行ったとしても、高濃度で有機溶剤が樹脂粒子内に残留してしまう。
【0007】
本発明者らは、既に、樹脂粒子内の残留溶剤量が極めて少ない熱可塑性樹脂微粒子水性分散体を得るための製造方法として自己水分散性熱可塑性樹脂を、前記自己水分散性熱可塑性樹脂を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤を除去することにより前記自己水分散性熱可塑性樹脂の微粒子が前記水性媒体中に分散した分散体を製造する第3工程とからなる製造方法と、この製造方法で得られた微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有する電子写真用トナーを特願2002−337815号として特許出願している。
【0008】
しかしながら、前記特許文献1〜6で用いている樹脂や本発明者らが既に特許出願した前記製造方法および前記電子写真用トナーは全て自己水分散性を有する熱可塑性樹脂であり、自己水分散性を有さない熱可塑性樹脂については適用できないものであった。
【0009】
【特許文献1】
特開平03−221137号公報(第1頁、第3〜6頁)
【特許文献2】
特開平05−066600号公報(第2頁、第6〜7頁)
【特許文献3】
特開平08−211655号公報(第2頁、第4〜6頁)
【特許文献4】
特開平09−297431号公報(第2頁、第3〜6頁)
【特許文献5】
特開昭56−088454号公報(第2頁、第4頁、第7頁)
【特許文献6】
特開昭56−125432号公報(第2頁、第4頁、第7頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、自己水分散性を有さない熱可塑性樹脂であっても樹脂粒子内に残存する残留溶剤が極めて少ない熱可塑性樹脂微粒子水性分散体を得るための製造方法と、自己水分散性を有さない熱可塑性樹脂であっても残存溶剤が極めて少ない電子写真用トナーを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見(a)〜(g)を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
(a)熱可塑性樹脂(P)を分散剤(D)の存在下で水性媒体中に分散することで、自己水分散性を有さない熱可塑性樹脂であっても熱可塑性樹脂微粒子の水性分散体を容易に得られること。
(b)有機溶剤として熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)を用い、この有機溶剤(S)を該熱可塑性樹脂(P)に吸収させて得られた膨潤体は、分散剤(D)の存在下で転相乳化することにより水性媒体中に微粒子状で分散し熱可塑性樹脂微粒子水性分散体とすることが容易であること。
【0013】
(c)有機溶剤として熱可塑性樹脂(P)を溶解しない沸点100℃未満の有機溶剤(S)を用いているため、得られた水分散体中の有機溶剤の除去が容易で、残留有機溶剤の極めて少ない熱可塑性樹脂微粒子水性分散体が製造できること。
【0014】
(d)前記熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法において、熱可塑性樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用することにより、着色剤(C)で着色された熱可塑性樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体が得られること。
【0015】
(e)前記熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法で得た着色剤(C)で着色された熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の着色された微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有させることにより用いる樹脂が自己水分散性熱可塑性樹脂に限定されず、かつ、残存溶剤が極めて少ない電子写真用トナーが得られること。
【0016】
(f)前記着色された微粒子を会合させた後分離し、乾燥して得られる電子写真用トナーは残留溶剤が極めて少なく、画質も向上すること。
【0017】
(g)前記製造方法で得られた熱可塑性樹脂微粒子水性分散体と着色剤(C)の水性媒体または着色樹脂粒子の水性媒体とを混合し、熱可塑性樹脂の微粒子と着色剤粒子または着色樹脂微粒子を会合させた後分離し、乾燥して得られる電子写真用トナーは残留溶剤が極めて少なく、画質も向上すること。
【0018】
即ち、本発明は、熱可塑性樹脂(P)を、前記熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を分散剤(D)の存在下で水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記熱可塑性樹脂(P)の微粒子が前記水性媒体中に分散した分散体を製造する第3工程とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、前記製造方法において熱可塑性樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用して得られた熱可塑性樹脂微粒子水性分散体から熱可塑性樹脂(P)の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有することを特徴とする電子写真用トナーを提供するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる熱可塑性樹脂(P)としては、ビニル系樹脂、重付加系樹脂、重縮合系樹脂、天然樹脂等が挙げられるが、なかでもテトラヒドロフランやメチルエチルケトン等の常温で熱可塑性樹脂(P)を溶解できる有機溶剤に熱可塑性樹脂(P)を溶解した後、得られた樹脂溶液に攪拌下で分散剤を含有する水性媒体を滴下することにより転相乳化して平均粒子径が10μm以下の粒子状で分散することが可能な熱可塑性樹脂が好ましく、0.1μm以下の粒子状で分散することが可能な熱可塑性樹脂が特に好ましい。
【0021】
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂、ロジン系樹脂、石油樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、本発明の製造方法で得られた樹脂微粒子を電子写真用トナーのバインダーとして用いた時に定着性に優れ、画像品質が高い電子写真用トナーが得られることからポリエステル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0022】
前記ポリエステル系樹脂は、例えば、二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として、必要に応じて三官能以上の多塩基酸、その無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等を原料として用い、窒素雰囲気中で180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法等により調製することができる。
【0023】
ポリエステル系樹脂の調製に使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器等の回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、前記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、種々の触媒を添加することもできる。
【0024】
前記触媒としては、例えば、酸化アンチモン、酸化バリウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、琥珀酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、蟻酸カドミウム、一酸化鉛、珪酸カルシウム、ジブチル錫オキシド、ブチルヒドロキシ錫オキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。
【0025】
前記二塩基酸およびその無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデシル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族または脂環式の二塩基酸等が挙げられる。
【0026】
二価のアルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコ−ル等のアラルキレングリコ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、水添ビスフェノ−ルA等の脂環式のジオ−ル類等が挙げられる。
【0027】
三官能以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0028】
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。
【0029】
三官能以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0030】
一価のアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0031】
前記した二塩基酸、その無水物、三官能以上の塩基酸、その無水物、一塩基酸等はそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、カルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステル又はアリ−ルエステルとなっているものも使用できる。
【0032】
前記した二価のアルコール、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等は、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用することもできる。
【0033】
また、例えば、ジメチロ−ルプロピオン酸、ジメチロ−ルブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸のような、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も使用できる。
【0034】
前記ポリエステル系樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000のポリエステル樹脂が好ましく、30,000〜300,000のポリエステル樹脂がより好ましい。
【0035】
本発明の製造方法で用いる熱可塑性樹脂(P)は水性媒体への分散に必要なイオン化する官能基を有していても良いし有していなくても良い。例えば、本発明の製造方法で得られる熱可塑性樹脂微粒子水性分散体を用いて電子写真用トナーを製造する場合には帯電に支障があるイオン化する官能基、例えばカルボキシル基等を持たない樹脂を用いることもできる。
【0036】
本発明で用いる有機溶剤(S)は、熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点〔常圧(101.3KPa)における沸点をいう。以下同様。〕100℃未満の有機溶剤であればよい。熱可塑性樹脂(P)を溶解する有機溶剤および/または沸点100℃以上の有機溶剤を用いた場合は、第3工程での有機溶剤が除去しにくくなるし、また、熱可塑性樹脂(P)を膨潤させることができない有機溶剤を用いた場合は、第2工程での熱可塑性樹脂(P)の水性媒体中への分散が困難となるため、いずれも好ましくない。
【0037】
なお、本発明で用いる熱可塑性樹脂(P)を溶解しない有機溶剤(S)とは、有機溶剤と熱可塑性樹脂(P)とを組み合わせて用いた場合に、25℃での熱可塑性樹脂(P)の前記有機溶剤への溶解度が15重量%以下となる有機溶剤を意味し、熱可塑性樹脂(P)の前記有機溶剤への溶解度が0重量%の有機溶剤を意味するものではない。
【0038】
本発明において、有機溶剤が熱可塑性樹脂(P)を溶解しない有機溶剤(S)に該当するか否かの判定は、例えば、ASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2結果の解釈(Interpretation of Results:)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行うことができる。
【0039】
前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定は、具体的には粒子状の熱可塑性樹脂(P)15重量部と有機溶剤85重量部をフラスコにとって密栓し、25℃で16時間振とうした後の溶解状態を観察し、前記ASTM D3132−84の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された下記判定区分で、1.「完全な溶液」か、2.「境界線の溶液」か、3.「不溶」かのどの区分に属するか判定することにより行うことができる。
1.「完全な溶液」;明瞭な固形物やゲル粒子を含まない単一の透明な相。
2.「境界線の領域」;明瞭な相分離を含まない透明または混濁した相。
3.「不溶」;2相に分離:分離したゲル固体相を含む液体又は2相に相分離した液体。
尚、本発明では、粒子状の熱可塑性樹脂(P)として、孔径3mmのスクリーンを通過させた熱可塑性樹脂(P)の粗粉砕物を前記判定に使用した。
【0040】
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂(P)と有機溶剤(S)とを、前記有機溶剤(S)に該当するか否かの判定において、2.「境界線の溶液」、または、3.「不溶」となる組み合わせで用いる方法であり、この組み合わせで熱可塑性樹脂(P)と有機溶剤(S)を用いることにより第3工程において脱溶剤が容易に行える。
【0041】
本発明で用いる有機溶剤(S)としては、なかでも第3工程での脱溶剤が更に容易に行えることから、25℃での熱可塑性樹脂(P)の有機溶剤への溶解度が10重量%以下となる有機溶剤であることが好ましく、7重量%以下となる有機溶剤であることがより好ましい。このときの溶解度の判定は、有機溶剤が前記樹脂濃度15重量%で有機溶剤(S)に該当するか否かの判定を行う代わりに、樹脂濃度が10重量%または7重量%での判定を行うことにより可能である。
【0042】
さらに、前記有機溶剤(S)としては、水性媒体中に分散された粒子状の膨潤体からの除去が容易で、残留溶剤が極めて少ない樹脂粒子が容易に効率良く経済的に製造できることから、水と相溶する有機溶剤(S1)が好ましい。ただし、この有機溶剤(S1)としては、水と有機溶剤がすべての混合比で均一相を形成する必要はなく、熱可塑性樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させて得られる膨潤体の水性媒体への分散を行う際の温度および水と有機溶剤の組成範囲において相溶すれば十分である。該有機溶剤(S1)は、この条件を満たせるものであれば、単一もしくは混合溶剤のどちらでも差し支えないが、第3工程で有機溶剤(S1)の除去を行う際の温度において水と相溶するものが好ましく、25℃で水と相溶するものがより好ましい。なかでも、有機溶剤(S1)としては、25℃における水への溶解度が50重量%以上であることが好ましく、25℃において全ての割合で水と相溶することが特に好ましい。さらに、有機溶剤(S1)が混合溶剤の場合は、使用する有機溶剤の沸点がいずれも100℃未満であることが好ましい。また、有機溶剤(S1)の沸点は40〜90℃であることがより好ましい。更に好ましくは40〜85℃であり、最も好ましくは40〜60℃である。
【0043】
前記有機溶剤(S1)としては、例えば、アセトン(溶解度:全ての割合で水と相溶する。沸点:56.1℃)等のケトン類;メタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:64.7℃)、エタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:78.3℃)、イソプロピルアルコール(解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:82.26℃)等のアルコール類;酢酸メチル(溶解度:24重量%、沸点:56.9℃)等のエステル類等が挙げられる。これらの有機溶剤(S1)は単独で用いても良いし、2種以上を混合した混合溶剤を用いても良い。有機溶剤(S1)として好ましいものはケトン類、アルコール類であり、より好ましいものはアセトン、イソプロピルアルコールであり、最も好ましいものはアセトンである。
【0044】
前記有機溶剤(S)の使用量としては、目的とする熱可塑性樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子の粒径にもよるが、第1工程において熱可塑性樹脂(P)が有機溶剤(S)を十分に吸収し、膨潤して微粒子状での分散が容易なのり状(passte)の膨潤体とすることができること、第2工程において前記膨潤体の水性媒体への分散が容易であること、分散を完結させるために用いる水性媒体の使用量が抑制でき、熱可塑性樹脂微粒子水性分散体中の有機溶剤の含有量が大きくならず製造効率が良好となることから、前記熱可塑性樹脂(P)100重量部に対して5〜300重量部が好ましく、より好ましくは10〜200重量部であり、最も好ましくは20〜150重量部である。
【0045】
本発明で用いる分散剤(D)は、水に溶解しない物質を水中で凝集することなく安定に分散させることができれば良く、例えば、無機塩や有機系界面活性剤等が挙げられるが、有機系界面活性剤が好ましく使用できる。
【0046】
前記有機系界面活性剤としては例えば、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
前記陰イオン系界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
前記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0049】
前記陽イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミン硫酸塩等の脂肪族アミン類やセチルトリメチルクロライド等の脂肪族4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0050】
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルベタイン等が挙げられる。
【0051】
前記高分子系界面活性剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プロピオン酸セルロース等の繊維素系の高分子系界面活性剤;ポリ酢酸ビニル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体等のポリビニルアルコール系の高分子系界面活性剤;ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ポリビニルメチルエーテル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等の重合系の高分子系界面活性剤;ポリエステル樹脂、ポリエチレンイミン等の重縮合系の高分子系界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
分散剤(D)は、高分子系界面活性剤が好ましく、なかでも、重合系の高分子系界面活性剤がより好ましく、ポリエステル樹脂系界面活性剤が最も好ましい。前記ポリエステル樹脂系界面活性剤の中でも、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)による重量平均分子量が300〜20,000で、酸価が80〜500mgKOH/mgであるポリエステル樹脂(d1)を塩基性化合物で中和して得られる水可溶性ポリエステル樹脂(D1)が好ましい。前記ポリエステル樹脂(d1)の重量平均分子量は300〜5,000がより好ましく、300〜2,000が特に好ましい。前記ポリエステル樹脂(d1)の酸価は200〜500がより好ましく、300〜500が特に好ましい。
【0053】
前記ポリエステル樹脂(d1)は、更に疎水性基を含有するポリエステル樹脂(d2)がより好ましい。疎水性基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ドデシル基、ドデセニル基等のアルキル基やアルケニル基等を好ましく挙げることができる。これらは直鎖状でも分岐状でも良い。
【0054】
前記ポリエステル樹脂(d2)の調製方法としては、例えば、
▲1▼アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸と、その他の二塩基酸やその無水物と、二価のアルコールとを必須として、必要に応じて三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等を混合し、窒素雰囲気中で加熱下に酸価を測定しながら脱水縮合する調製方法、
▲2▼二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として調製した、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基を有していても良い)を加熱溶解し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する酸無水物を投入し、ポリエステル樹脂の末端水酸基に開環付加させる調製方法、
▲3▼二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須として調製した、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基を含有していても良い)を加熱溶融し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を投入し、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基の一部に開環付加させる調製方法等が挙げられる。
【0055】
前記その他の二塩基酸やその無水物、二価のアルコール、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上のアルコール、一価のアルコール等は前記ポリエステル系樹脂の調製に用いるものを使用することができる。
【0056】
製造方法▲2▼で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する酸無水物としては、例えば、n−ブチル無水コハク酸、n−ペンチル無水コハク酸、ネオペンチル無水コハク酸、n−ヘキシル無水コハク酸、n−ヘプチル無水コハク酸、n−オクチル無水コハク酸、イソオクチル無水コハク酸、2−エチルヘキシル無水コハク酸、n−ドデシル無水コハク酸、イソドデシル無水コハク酸、n−ドデセニル無水コハク酸、イソドデセニル無水コハク酸、6−ブチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、6−n−オクチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物等が挙げられる。アルキル基やアルケニル基を有する酸無水物は、単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0057】
調製方法▲3▼で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸等の飽和あるいは不飽和の脂肪酸のモノグリシジルエステルや、イソノナン酸、バ−サチック酸等の分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。前記した分岐脂肪酸のモノグリシジルエステルの市販品としては、カージュラE10(シェルケミカル社製)等が挙げられる。脂肪族モノエポキシ化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0058】
ポリエステル樹脂(d2)は、なかでも、前記調製方法▲2▼で得られる、末端に水酸基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の末端水酸基にアルキル基またはアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂や、調製方法▲3▼で得られる、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基にアルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂であれば、界面活性の効果が高いことからより好ましい。この際使用する末端に水酸基を有するポリエステル樹脂や末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、既にアルキル基やアルケニル基を含有していても良いし、含有していなくても良い。
【0059】
前記ポリエステル樹脂(d2)は、前記調製方法▲2▼で得られる末端構造や前記調製方法▲3▼で得られる末端構造を、それぞれ単独でポリエステル樹脂1分子中に含んでいても良いし、これらの末端構造を両方有していてもよい。
【0060】
前記ポリエステル樹脂(d1)は、前記ポリエステル樹脂(d2)のなかでも、更に、調製方法▲2▼で得られる一般式(1)で表される末端構造や、調製方法▲3▼で得られる一般式(2)または(3)で表される末端構造を有するポリエステル樹脂であれば特に好ましい。
【0061】
【化2】
Figure 2004263027
(式中、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、炭素原子数4〜20のアルキル基又は炭素原子数4〜20のアルケニル基を表すが、両方ともに水素原子であることはない。また、Rは炭素原子数4〜20のアルキル基又は炭素原子数4〜20のアルケニル基を表し、Rは炭素原子数4〜20のアルキル基又は炭素原子数4〜20のアルケニル基を表す。)
【0062】
前記ポリエステル樹脂(d1)の中和に用いる塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ化合物;ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩;前記アルカリ金属の酢酸塩類;アンモニア水;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。なかでも、アンモニア水が好ましい。
【0063】
前記塩基性化合物の使用量は、前記ポリエステル樹脂(d1)の有する酸基の当量に対して、それぞれ0.9〜5.0倍当量となる量が好ましく、1.0〜3.0倍当量となる量がより好ましい。
【0064】
分散剤(D)として、例えば、前記したポリエステル樹脂(d1)を塩基性化合物で中和して得られる水化溶性ポリエステル樹脂(D1)を用いるときは、前記ポリエステル(d1)をあらかじめ中和して水化溶性ポリエステル樹脂(D1)としたものを使用してもよいし、例えば、後述する熱可塑性樹脂(P)と共にポリエステル樹脂(d1)を併用して得た膨潤体を水性媒体中に分散させて初期水性分散体とする第2工程において塩基性化合物を含有する水性媒体を用いて、中和して水化溶性ポリエステル樹脂(D1)としても良いが通常は前記ポリエステル(d1)をあらかじめ中和して水化溶性ポリエステル樹脂(D1)としたものを使用するのが好ましい。
【0065】
分散剤(D)の使用量としては、熱可塑性樹脂(P)を安定に水性媒体中に分散させることができる量であれば良く特に制限は無いが、膨潤体中の熱可塑性樹脂(P)100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、0.03〜10重量部がより好ましく、0.05〜5.0重量部が特に好ましい。
【0066】
本発明で用いる水性媒体としては、例えば水が好ましく使用することができる。水性媒体の使用量は、特に制限は無いが、熱可塑性樹脂(P)と有機溶剤(S)の合計100重量部に対して70〜400重量部が好ましく、100〜250重量部がより好ましい。
【0067】
本発明の製造方法の第1工程で膨潤体を製造する方法としては、特に限定されないが、短時間で前記膨潤体が得られるし、その後第2工程での前記膨潤体の水性媒体中への分散も容易になることから、粒子状の熱可塑性樹脂(P)を用い、前記有機溶剤(S)と共に加熱することにより前記膨潤体を製造することが好ましく、さらに加圧下で前記膨潤体を製造することがより好ましい。この際、前記熱可塑性樹脂(P)と前記有機溶剤(S)の加熱温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点以上が好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点〜180℃がより好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点+10℃〜120℃が特に好ましい。また、この系内の加圧圧力としては、ゲージ圧で0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくはゲージ圧で0.2〜1.5MPa、更に好ましくはゲージ圧で0.3〜1.0MPaである。系内を加圧する方法としては、例えば、前記膨潤体を得るための加熱により前記有機溶剤(S)を気化させて系内を加圧する方法、あらかじめ系内に不活性ガスを導入して予備加圧した後、加熱して前記有機溶剤(S)の気化によりさらに加圧する方法等が挙げられるが、有機溶剤(S)の還流、沸騰が抑制できると共に、粒度分布の狭い熱可塑性樹脂微粒子水性分散体を得られることから、予備加圧する方法が好ましい。予備加圧としては0.05〜0.5MPaが好ましい。
【0068】
0 前記第1工程において前記膨潤体を得た後、第2工程で初期水性分散体を製造する方法としては、膨潤体を分散剤(D)の存在下で水性媒体中に微粒子状で分散させる方法であれば良く特に制限は無いが、前記膨潤体の水性媒体中への分散が容易になることから、第1工程において加圧下で前記有機溶剤(S)の沸点以上の温度に加熱することにより得られた膨潤体を用い、前記膨潤体を加圧下で前記有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下の温度で分散剤(D)の存在下で機械的剪断力により前記水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とする方法が好ましい。この際の系の温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点〜180℃が好ましく、前記有機溶剤(S)の沸点+10℃〜120℃が特に好ましい。また、この系の圧力としては、ゲージ圧で0.1〜2.0MPaが好ましく、より好ましくはゲージ圧で0.2〜1.5MPa、更に好ましくはゲージ圧で0.3〜1.0MPaである。なお、前記膨潤体の作成とこの分散体の作成とを同一容器内で行う場合、分散体作成開始時の系の加熱加圧条件は、前記膨潤体の作成終了時の温度および圧力と同様であることが好ましい。ここで用いる水性媒体の温度としては、前記有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下であることが好ましく、なかでも前記有機溶剤(S)の沸点以上100℃未満であって、かつ、第2工程開始時の系の温度−20℃〜第2工程開始時の系の温度の範囲内とすることがより好ましい。
【0069】
さらに、前記第1工程で膨潤体を製造する際の温度、および、前記第2工程で初期水性分散体を製造する際の温度は、いずれも前記熱可塑性樹脂(P)の融点や軟化点より低温であることが好ましく、前記熱可塑性樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)以下の温度であってもよいが、なかでも前記有機溶剤(S)の沸点以上であって、かつ、ガラス転移温度(Tg)より10〜50℃高い温度であることが好ましい。なお、第1工程で膨潤体を製造する際の温度と第2工程で初期水性分散体を製造する際の温度は同一でも異なっていてもよい。
【0070】
第1工程で得られた膨潤体を第2工程で分散剤(D)の存在下で水性媒体中に微粒子状で分散させて初期水性分散体を製造する方法としては、例えば、例えば、(1)前記第1工程において溶融状態の前記熱可塑性樹脂(P)に分散剤(D)を加え混練して得た熱可塑性樹脂を用いて分散剤を含有する膨潤体を製造後、水性媒体中に微粒子状に微分散させる方法、(2)第1工程において前記熱可塑性樹脂(P)と共に分散剤を共に添加して、分散剤を含有する膨潤体を製造後、水性媒体中に微粒子状に微分散させる方法、(3)第2工程において膨潤体を分散剤(D)を溶解させた水性媒体中に微粒子状に微分散させる方法等が挙げられる。なかでも、簡便なことから、(2)および(3)の方法が好ましく、(3)の方法がより好ましい。
【0071】
この時に用いる分散剤(D)が、中和により分散効果を有する化合物、例えば前記ポリエステル樹脂(d1)を塩基性化合物で中和して得られる水可溶性ポリエステル樹脂(D1)等の時は、予め中和して得られた水可溶性ポリエステル樹脂(D1)を用いても良いし、第2工程で塩基性化合物を含有する水性媒体を用い、前記ポリエステル樹脂(d1)の中和と膨潤体の水性媒体への微粒子状での分散とを行ってもよいが、予め中和して得られた水可溶性ポリエステル樹脂(D1)を用いるのが好ましい。
【0072】
本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法としては、例えば以下の▲1▼〜▲3▼で示す方法が代表的な製造方法として挙げられる。
▲1▼第1工程として、密閉容器に熱可塑性樹脂(P)と有機溶剤(S)とを仕込み、加熱下、好ましくは加熱加圧下で、攪拌下に熱可塑性樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造した後、第2工程として、得られた膨潤体を攪拌等の機械的剪断力により、好ましくは加熱加圧下で、分散剤(D)を含有する水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記熱可塑性樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0073】
▲2▼前記▲1▼の第1工程と同様にして前記膨潤体を得た後、第2工程として、得られた膨潤体と分散剤(D)を含有する水性媒体とを連続乳化分散機に連続的に供給しながら機械的剪断力により前記膨潤体を前記分散剤(D)を含有する水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記熱可塑性樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0074】
▲3▼第1工程として、押出機等の溶融混練により溶融された熱可塑性樹脂(P)または合成された溶融状態の熱可塑性樹脂(P)に、圧入等の方法で有機溶剤(S)を連続的に供給し混合下に前記熱可塑性樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造し、得られた膨潤体を該熱可塑性樹脂(P)の融点または軟化点未満の温度まで降温させた後、第2工程として、得られた膨潤体と分散剤(D)を含有する水性媒体とを連続乳化分散機に連続的に供給しながら機械的剪断力により前記膨潤体を前記水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体とし、次いで、第3工程として、得られた初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記熱可塑性樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する方法。
【0075】
これらの方法の中でも、比較的容易に熱可塑性樹脂微粒子水性分散体が得られることから、前記▲1▼または▲2▼の方法が好ましい。前記▲1▼および▲2▼の方法で用いる熱可塑性樹脂(P)の形状としては、比較的短時間で膨潤体とすることができることから、粒子状であることが好ましく、例えば、粒子径1〜7mmのペレット、孔径が2〜7mmのスクリーンを通過させた粗粉砕物、平均粒子径800μm以下の粉体等が挙げられる。
【0076】
以下に、前記▲1▼、▲2▼の方法による熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法のより具体的な製造例を挙げる。
まず、プロペラ翼付のガラス製2Lのオートクレーブを用い、このオートクレーブに熱可塑性樹脂(P)を粉砕して得た粒子状物と有機溶剤(S)とを仕込み、不活性ガスを導入してオートクレーブ内を0.05〜0.5MPa予備加圧し、次いで10〜300rpmの攪拌下で有機溶剤(S)の沸点以上に昇温して有機溶剤(S)を一部気化させることによりオートクレーブ内を0.1〜2.0MPa(ゲージ圧)に加圧した後、50〜700rpmで3〜60分間攪拌して熱可塑性樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させて膨潤体とする(第1工程)。
【0077】
予備加圧に用いる不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等が挙げられるが窒素ガスが好ましい。
【0078】
この工程で得られた前記膨潤体は、有機溶剤(S)を吸収した熱可塑性樹脂(P)と、熱可塑性樹脂(P)に吸収されずに残った有機溶剤(S)との混合物であり、半透明〜白濁のり状(paste)の混合物として観察されるものが好ましい。なお、例えば、ポリエステル樹脂とイソプロピルアルコールの系では、攪拌速度を50rpm程度にゆるめると、イソプロピルアルコールが樹脂相から分離して2相を形成するのが観察されるが、それでもよい。
【0079】
このようにして膨潤体を得た後、前記▲1▼の方法では、300〜1500rpmで攪拌しながら予め加熱しておいた分散剤(D)を含有する水性媒体、例えば分散剤(D)を含有する水を2〜30分間かけて加圧注入して転相乳化させて、前記膨潤体が微粒子状に分散した初期水性分散体とする(第2工程)。このとき、前記膨潤体中の有機溶剤(S)は局部的な沸騰と還流が起こっており、熱可塑性樹脂(P)と親和性の低い有機溶剤(S)の分子は熱可塑性樹脂(P)から離れやすく、かつ転相乳化しやすくする環境を形成していると考えられる。
【0080】
また、前記▲2▼の方法では、膨潤体を得た後、連続乳化分散機、例えば、特開平09−311502号公報に開示されているスリットを有するリング状固定子とスリットを有するリング状回転子とを同軸状に設けた高速回転型連続乳化分散機等を使用して連続的に水性媒体中に該膨潤体を微粒子状で分散させて分散体とする(第2工程)。この場合、前記膨潤体と前記水性媒体とを所定の温度、圧力条件で連続乳化分散機に送り込み、前記回転子を300〜10000rpmで回転させれば良い。
【0081】
前記膨潤体が微粒子状で分散した分散体を得た後、得られた分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記熱可塑性樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体が得られる(第3工程)。前記有機溶剤(S)の除去方法としては、例えば、減圧チャンバー中にスプレーする方法、脱溶剤缶壁内面に薄膜を形成させる方法、溶剤吸収用充填剤入りの脱溶剤缶を通過させる方法等が挙げられる。前記有機溶剤(S)を除去する方法の一例として、ロータリーエバポレーターを使用した除去方法を以下に記す。
試料量;500ml
容器;2lなす型フラスコ
回転数;60rpm
バス温度;47℃
減圧度;13.3KPaから20分間かけて1.33KPaに減圧度を高め、引き続き10分間1.33KPaで脱溶剤する。
【0082】
なお、熱可塑性樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子を粉体塗料やホットメルト接着剤などとして利用する場合や、生成した粒子をトナーなど粉体として取り出す場合には、樹脂微粒子が分散した分散体からの有機溶剤(S)の除去は前記分散体の製造後直ちに行うのがよい。有機溶剤(S)が含有されたまま分散体を長期間保存しておくと分散体中の樹脂微粒子が自然と凝集する傾向を示すからである。
【0083】
本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法では、製造条件を種々変更することにより熱可塑性樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を0.01〜50μm程度の範囲内で自由に制御することが可能である。
【0084】
本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法において、得られる分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を小さく制御するためには、例えば、次に記す手段等をとれば良い。
▲1▼熱可塑性樹脂(P)に対する分散剤(D)の使用量を多くする。
▲2▼熱可塑性樹脂(P)に対する有機溶剤(S)の使用量を大きくする。
▲3▼分散体製造時の温度を高くする。
▲4▼分散体製造時の攪拌速度を大きくする。
【0085】
逆に、本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法において、得られる分散体中の樹脂微粒子の平均粒径を大きくするためには、これらの条件を逆にしてやれば良い。なお、熱可塑性樹脂(P)、有機溶剤(S)および分散剤(D)と共に、その他の成分、例えばカーボンブラック等の着色剤(C)、磁性粉、ワックス、帯電制御剤等の添加剤を用いることによっても、分散体中の樹脂微粒子の平均粒径は大きくなる。
【0086】
このような本発明の製造方法で得られた熱可塑性樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子は、得られた分散体の温度、pH、電解質濃度などの条件を制御することにより分散している樹脂微粒子を会合させて、より大きな粒子に成長させることも可能である。
【0087】
本発明で使用する有機溶剤(S)は、後述する分散体中の樹脂微粒子の会合の工程で樹脂微粒子同士の接着剤的役割も担っている。通常第3工程での脱溶剤は、この会合工程を終了した後に行われるが、会合工程前に一旦脱溶剤しておいて貯蔵しておき、会合工程で同一もしくは類似の有機溶剤の必要量を再添加してから会合させ、ついで脱溶剤してもよい。
【0088】
次に、本発明の電子写真用トナーを説明する。
本発明の電子写真用トナーは、本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法で得られた分散体から熱可塑性樹脂(P)の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有する電子写真用トナーであり、本発明の方法で得た分散体をそのまま用い、この分散体から樹脂微粒子を分離し、乾燥して得られる樹脂微粒子を用いてなる電子写真用トナーや、本発明の方法でトナーサイズより小さい粒径の樹脂微粒子が分散した分散体を得た後、必要に応じて別途製造したトナーサイズより小さい粒径の樹脂微粒子が分散した分散体と混合し、得られた分散体の温度、pH、電解質濃度などの条件を適宜制御することにより分散体中の樹脂微粒子を会合させてトナーサイズの微粒子とした後、粒子を分離し、乾燥して得られる樹脂微粒子を用いてなる電子写真用トナー等が挙げられる。
【0089】
このような本発明の電子写真用トナーとしては、以下の(1)〜(4)に示す電子写真感用トナーが例示できる。
【0090】
(1)本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法において、熱可塑性樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させる第1工程で熱可塑性樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用することにより得られる着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散した分散体を得た後、得られた分散体から熱可塑性樹脂(P)の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を用いてなる電子写真用トナー。なお、着色剤(C)と共にワックス等の添加剤、磁性粉、電荷制御剤等を併用することもできる。この場合、前記分散体中の着色樹脂微粒子の平均粒径はトナーサイズ、例えば1〜10μmであることが好ましい。
【0091】
(2)前記(1)と同様にして着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散した分散体を得た後、塩化ナトリウム等の無機塩等を添加して樹脂微粒子の表面電位を減少させて分散している樹脂微粒子同志を会合させて、より大きな平均粒径を有する着色樹脂粒子の分散体とし、次いで有機溶剤(S)を除去し、微粒子の分離を行った後、乾燥して得られる微粒子を用いてなる電子写真用トナー。なお、前記有機溶剤(S)の除去は、樹脂微粒子同志の会合前に行ってもよい。また、着色剤(C)と共にワックス等の添加剤、磁性粉、電荷制御剤等を併用することもできる。この場合、会合前の分散体中の着色樹脂微粒子の平均粒径は0.01〜1μmであることが好ましく、会合後の着色樹脂微粒子の平均粒径はトナーサイズであることが好ましい。
【0092】
(3)前記(1)と同様にして着色樹脂微粒子が水性媒体中に分散した分散体を得た後、前記(2)と同様に樹脂微粒子同志を会合させて、より大きな平均粒径を有する着色樹脂粒子(コア粒子)の分散体とし、次いで別途製造したシェル層用の樹脂微粒子の水性分散体と混合し、前記(2)と同様にして分散している着色樹脂粒子(コア粒子)にシェル層用の樹脂微粒子を会合させて、コア/シェル構造の着色樹脂粒子の分散体とし、次いで有機溶剤(S)を除去し、微粒子の分離を行った後、乾燥して得られる微粒子を用いてなる電子写真用トナー。なお、前記有機溶剤(S)の除去は、樹脂微粒子同志の会合前に行ってもよい。この場合、会合前の分散体中の着色樹脂微粒子の平均粒径は0.01〜1μmであることが好ましく、会合終了後の着色樹脂微粒子の平均粒径はトナーサイズであることが好ましい。
【0093】
前記(3)で用いるシェル層用の樹脂微粒子は、コア用の樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)より1〜40℃高いTgを有する熱可塑性樹脂(P)からなる樹脂微粒子か、後述する帯電制御剤を用いて樹脂微粒子を調製した時は該帯電制御剤の使用量を多く用いて調製された樹脂微粒子が好ましい。
【0094】
(4)熱可塑性樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を得た後、前記膨潤体を水性媒体中に微粒子状で分散させて分散体とし、次いで得られた分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記熱可塑性樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を得た後、別途製造した着色剤の水性分散体もしくは別途製造した着色樹脂微粒子の水性分散体と混合し、そこに塩化ナトリウム等の無機塩等を添加して樹脂微粒子の表面電位を減少させて分散している樹脂微粒子と着色剤粒子若しくは着色樹脂微粒子を会合させて、より大きな平均粒径を有する着色樹脂微粒子の分散体とし、次いで微粒子の分離を行った後、乾燥して得られる微粒子を用いてなる電子写真用トナー。この場合、前記着色剤(C)と共にワックス等の添加剤、磁性粉、電荷制御剤等を併用することもでき、添加剤、磁性粉、電荷制御剤等を含有した樹脂微粒子の水性分散体を併用して会合させることもできる。また、前記有機溶剤(S)の除去は、樹脂微粒子と着色剤粒子若しくは着色樹脂微粒子の会合を行った後に行ってもよい。ここで用いる各分散体中の微粒子の平均粒径は0.01〜1μmであることが好ましく、会合後の着色樹脂微粒子の平均粒径はトナーサイズであることが好ましい。
【0095】
前記(4)で用いる別途製造した着色剤の水性分散体もしくは別途製造した着色樹脂微粒子の水性分散体としては、着色剤もしくは着色樹脂微粒子が水性媒体中に微粒子状で分散されているものであればよく、特に限定されないが、例えば、界面活性剤などを用いて着色剤を乳化処理した水性分散体、着色剤(C)と熱可塑性樹脂を加熱溶融したのち、分散剤を含有する水中に分散した水性分散体、着色剤(C)を分散させた熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解させた後、水を加えて転相乳化した水性分散体、本発明の製造方法で熱可塑性樹脂(P)を有機溶剤(S)で膨潤させる際に着色剤(C)を併用することにより得られる水性分散体等が挙げられ、なかでも本発明の製造方法で得られる水性分散体が好ましい。これら水性分散体中における着色剤(C)の濃度は、目的とするトナーの着色剤濃度の5〜10倍であることが好ましい。
【0096】
前記着色剤(C)としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105)、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)等が挙げられる。
【0097】
前記着色剤(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(P)100重量部に対して1〜20重量部の範囲内になるよう使用するのが好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0098】
以下に本発明の製造方法で言う「会合」という工程と現象について述べる。
一般に、本発明の製造方法により得られるような熱可塑性樹脂微粒子水性分散体中の樹脂微粒子は、その表面電荷に由来する静電反発力により凝集することなく水性媒体中に安定に存在するが、同時に、ファンデルワールス力によって樹脂粒子間には引力が働いている。そこで、何らかの作用で樹脂粒子表面電荷を適宜減少させてやると、静電反発力より引力が大きくなり、樹脂微粒子同志が凝集し始めて、より大きい粒子径に成長した樹脂粒子の分散体となる。これを本発明では会合という。この会合の温度は熱可塑性樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度+50℃が好ましく、会合工程中に系内に存在している有機溶剤(S)の沸点との関係により、0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)の加圧下に加熱するのが更に好ましい。会合に要する時間は、通常2〜12時間であり、4〜10時間が好ましい。また、会合は、穏やかな攪拌下、例えば、アンカー翼で10〜100rpm程度の回転数による攪拌下で行うと良い。
【0099】
前記の樹脂粒子表面電荷を減少もしくは失わせる方法としては、例えば、塩析等が挙げられる。この際、用いることができる塩析剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第2鉄、塩化カルシウム等の金属塩類やカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属錯体等が挙げられる。又、会合工程において着色剤などを分散処理したり、会合の進行を制御する目的で、必要に応じて界面活性剤を使用してもよい。前記界面活性剤としては、例えば、前記した有機系界面活性剤等が使用できる。
【0100】
本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法は、粒径が1〜10μmの電子写真用トナーを製造するのに特に好ましい。
【0101】
本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法は、形状中に鋭利な尖点部分を含まない球形の樹脂粒子からなる水分散樹脂やトナーを製造することができる。ここで「球形」とは、真球状はもちろん楕円状、いびつな球状(ポテト状)等を含む幅広い概念を言う。
【0102】
本発明の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法や本発明の電子写真用トナーにおいては、磁性粉、ワックス等の添加剤を必要に応じて用いても良い。これらは、前記熱可塑性樹脂(P)と予め混練して混練物としておくのが良い。これらの添加剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0103】
磁性粉としては、例えば、マグネタイト、フェライト、コバルト、鉄、ニッケル等の金属単体やその合金等が挙げられる。
【0104】
ワックスは、電子写真用トナー用のオフセット防止剤として使用できる。ワックスとしては、例えば、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィシュワックス、ステアリルビスアミド、酸化ワックス等の合成ワックス類や、カルナバワックス、ライスワックス等の天然ワックス等が挙げられる。
【0105】
また、帯電制御剤を用いると帯電特性が良好なトナーが得られる。帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、フッ素処理活性剤等のプラス帯電制御剤や、電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等のマイナス帯電制御剤等が挙げられる。
【0106】
帯電制御剤を使用する際には、これらの帯電制御剤を有機溶剤(S)に予め溶解しておいてから熱可塑性樹脂(P)に加えると良い。コア粒子とシェル層からなるトナーを製造する際には、シェル層を製造する際に帯電制御剤を用いれば、帯電制御剤を前記シェル層に配置したトナーを製造することもできる。
【0107】
本発明において、ポリエステル樹脂微粒子水性分散体中の不揮発分の割合は、前記水性分散体を真空乾燥器中に100℃、0.1KPa、3時間の条件で放置し、前記水性分散体の重量変化から求めた。また、微粒子の体積平均粒子径は、0.001〜2μmの粒子径測定はLeeds+Northrup社製のMICROTRAC UPA150を用いて測定し、1〜40μmの粒子測定はベックマンコールター社製マルチサイザーTM3を用いて測定した。
【0108】
粒子径が0.001〜2μmである粒子の粒度分布の値の評価は、前記MICROTRAC UPA150を用いて粒子径の小さい側から積算した場合に体積が10%となるところの粒子径(D10)と粒子経の小さい側から積算した場合に体積が90%となるところの粒子径(D90)とを測定し、この比(D90/D10)を求めることにより行った。
粒子径が1〜40μmである粒子の粒度分布の値の評価は、前記コ−ルターマルチサイザーTM3を用いて粒子径の小さい側から積算した場合に累積重量が16%となるところの粒子経(D16)と粒子径の小さい側から積算した場合に累積重量が84%(D84)となるところの粒子経とを測定し、この比(D84/D16)の平方根を求めることにより行った。粒度分布の値は小さい程粒度分布の幅が狭いことを表す。
【0109】
また、熱可塑性樹脂微粒子水性分散体中の残留溶剤の定量は、下記条件でガスクロマトグラフィ法で測定した。
測定機;島津GC−17A
カラム;ULBON HR−20M(PPG)
カラム温度;80〜150℃
昇温速度;10℃/分
【0110】
【実施例】
以下に本発明を、合成例、参考例、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。例中の部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0111】
合成例1〔熱可塑性樹脂(P)の調製〕
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計、及びコンデンサ−を備えた3lステンレスフラスコに、イオン交換水1,400部、第3リン酸カルシウム30部、スチレン504部、n−ブチルアクリレ−ト95部、およびメタクリル酸1部を仕込み、室温でタービン翼を用いて250rpmで撹拌した。攪拌を維持しながらパ−ブチルO(t−ブチルパ−2−エチルヘキサノエ−ト:日本油脂株式会社製の過酸化物系重合開始剤)4.8部を投入し、系の温度を1時間を要して80℃まで上昇させ、更に同温度で6時間維持し重合反応を行った。反応終了後、系を40℃に冷却し、1規定の塩酸300部を加え、30分間撹拌した後150メッシュのナイロン濾布を用いてスチレン−アクリル系共重合体を回収した。これを50℃に制御した熱風乾燥機で乾燥させた。得られたスチレンアクリル系共重合体のGPC法による重量平均分子量は214,000であり、酸価は、6(mgKOH/g)であった。これを熱可塑性樹脂(P−1)と略記する。
【0112】
合成例2(同上)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計、及び精留塔を備えた5lステンレスフラスコに、エチレングリコ−ル641部、ネオペンチルグリコ−ル719部、トリメチロ−ルプロパン164部を仕込み、140℃まで昇温し、ジブチル錫オキサイド2.4部を投入し、系内が均一に攪拌できることを確認後、テレフタル酸1,580部及びイソフタル酸1,053部を徐々に投入した。次いで、攪拌を継続しながら温度を195℃まで上げ、その後10時間を要して240℃まで昇温した。さらに同温度で8時間縮合反応を続け、酸価が5.6、示差走査熱量測定によるガラス転移温度(Tg)が62℃、GPC法による重量平均分子量(Mw)が178,000であるポリエステル樹脂を得た。これを熱可塑性樹脂(P−2)と略記する。
【0113】
参考例1〔分散剤(D)含有水性媒体の調製〕
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計、及び精留塔を備えた5lステンレスフラスコに、1,6−ヘキサンジオ−ル640部およびトリメチロ−ルプロパン448部を仕込み、窒素ガスを導入しながら120℃まで昇温し、ジブチル錫オキサイド1部を投入し、アジピン酸1,018部を投入した。次いで、攪拌しながら反応系を4時間を要して220℃まで上げた。同温度で脱水縮合反応を継続し、酸価が6となった時点で、系の温度を190℃まで下げた。ドデセニル無水コハク酸646部と無水トリメリット酸1,997部を投入し、ドデセニル無水コハク酸とポリエステル樹脂の末端水酸基との開環反応を1時間行い、酸価が290で、GPC法による重量平均分子量(Mw)が15,000であるポリエステルを得た。このポリエステル樹脂5部、25%アンモニア水1.4部およびイオン交換水348.6部を混合攪拌し、前記ポリエステル樹脂を中和して、中和されたポリエステル樹脂からなる分散剤が溶解した水性媒体を得た。これを水性媒体1と略記する。
【0114】
参考例2(同上)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計、及び精留塔を備えた5lステンレスフラスコに、1,6−ヘキサンジオ−ル640部およびトリメチロ−ルプロパン448部を仕込み、窒素ガスを導入しながら120℃まで昇温し、ジブチル錫オキサイドの1部を投入し、アジピン酸の1,018部を投入した。次いで攪拌しながら、反応系の温度を4時間を要して220℃まで上げた。同温度で脱水縮合反応を継続し、酸価が6となった時点で、系の温度を190℃まで下げた。無水コハク酸847部を投入し、無水環とポリエステル末端水酸基との開環反応を1時間行った。次いで、カ−ジュラE10(シェルケミカル社製の分岐脂肪酸のグリシジルエステルの商品名)135部を投入し、カージュラE10のエポキシ基とポリエステル樹脂の末端カルボキシル基との開環付加反応を30分間行い、酸価が170で、GPC法による重量平均分子量(Mw)が16,000であるポリエステルを得た。このポリエステル樹脂5部、25%アンモニア水1.4部およびイオン交換水348.6部を混合攪拌し、前記ポリエステル樹脂を中和して、中和されたポリエステル樹脂からなる分散剤が溶解した水性媒体を得た。これを水性媒体2と略記する。
【0115】
実施例1
樹脂の濃度が10%となる条件でイソプロピルアルコールに対する熱可塑性樹脂(P−1)の溶解性の判定をASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行ったところ、前記判定法の判定区分で「不溶」であった。
【0116】
熱可塑性樹脂(P−1)の粗粉砕物(孔径3mmのスクリーンを通過させたもの。以下同様。)100部およびイソプロピルアルコール100部をプロペラ翼付きの2lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にイソプロピルアルコールを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、ラテムルS−180(花王株式会社製のアニオン系界面活性剤)5部とイオン交換水の350部からなる90℃に予備加熱した水性媒体355部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳白色の初期水性分散体を得た。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去して熱可塑性樹脂微粒子水性分散体1を得た。
【0117】
得られた熱可塑性樹脂微粒子水性分散体1の不揮発分、体積平均粒子径、粒度分布、残留溶剤量の測定と、保存安定性試験を行った。不揮発分、体積平均粒子径、粒度分布、残留溶剤量の測定は前記した方法を用いて測定し、保存安定性試験は下記に示す方法に従った。結果を第1表に示す。
【0118】
保存安定性試験の方法:熱可塑性樹脂微粒子水性分散体1を容器に入れ密閉し、25℃で6ヶ月間静置保存し、性状を目視で観察し以下の通り評価した。
○:均一な分散体であり、容器の底に沈殿物が認められない。
×:容器の底部に沈降物がある。
××:前記○や×の判定に関わらず、分散体に粘度の上昇が認められる。
【0119】
実施例2
樹脂の濃度が10%となる条件でアセトンに対する熱可塑性樹脂(P−2)の溶解性の判定をASTM D3132−84(Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行ったところ、前記判定法の判定区分で「境界線の領域」であった。
【0120】
熱可塑性樹脂(P−2)の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にイソプロピルアルコールを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、前記参考例1で調製した水性媒体1 355部を90℃に予備加熱した後5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳白色の初期水性分散体を得た。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去して熱可塑性樹脂微粒子水性分散体2を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0121】
実施例3
水性媒体1 355部の代わりに水性媒体2 355部を使用した以外は実施例2と同様にして、熱可塑性樹脂微粒子水性分散体2を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0122】
実施例4
熱可塑性樹脂(P−2)49部、リ−ガル330(キャボット社製のカーボンブラック)30部、ビスコ−ル550P(株式会社三洋化成製のポリプロピレンワックス)9部及びボントロンE−80(オリエント化学工業株式会社製の帯電制御剤)12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌しながら粗粉砕物にアセトンを吸収させることにより半透明なのり状の膨潤体を得た。その後、前記参考例1で調製した水性分散体1の355部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳白色の初期水性分散体を得た。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去して熱可塑性樹脂微粒子水性分散体2を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0123】
実施例5
アンカ−翼、コンデンサ−、窒素ガス導入口、温度計を装備したガラス製2lオ−トクレ−ブに、熱可塑性樹脂微粒子水性分散体2 300部、熱可塑性樹脂微粒子水性分散体4 100部及びアセトン40部を仕込み室温で毎分50rpmでアンカー翼を回転させながら1%希塩酸20部と1%塩化カルシウム水溶液20部と1%ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液20部との混合物を30分間を要して滴下した。その後、系内の温度を80℃まで1時間を要して上昇させ、同温度でさらに5時間会合を行い、球形の着色粒子を含むポリエステル樹脂微粒子水性分散体を得た。ロータリーエバポレーターを使用して47℃、60分間の条件でアセトンを留去し、イオン交換水で分散体を3回洗浄し、水と分離後乾燥し、熱可塑性樹脂微粒子を得た。この熱可塑性樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定を測定したところ、残留溶剤量は20ppm、体積平均粒子径は6.5μm、粒度分布は1.35であった。この熱可塑性樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナーを調製した。また、トナーを市販のフルカラー複写機に装填し、テストチャートとして電子写真学会発行のA4カラー用(番号5−1)を用いて画像の評価を行った。得られた画像は色調解像度ともに良好であった。
【0124】
比較例1
樹脂の濃度を10%から15%に変更し、かつ、アセトンの代わりにテトラヒドロフラン(THF)を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂(P−1)の溶解性の判定を行ったところ、判定区分は「完全な溶液」であった。
【0125】
熱可塑性樹脂(P−1)の粗粉砕物100部およびTHF100部をプロペラ翼付きの2lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、イオン交換水からなる90℃に予備加熱した水性媒体355部を5分間かけて加圧注入し、水中に熱可塑性樹脂(P−2)を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去して比較対照用ポリエステル樹脂微粒子水性分散体1′を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0126】
比較例2
樹脂の濃度を10%から15%に変更し、かつ、アセトンの代わりにテトラヒドロフラン(THF)を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂(P−2)の溶解性の判定を行ったところ、判定区分は「完全な溶液」であった。
【0127】
熱可塑性樹脂(P−2)の粗粉砕物100部およびアセトン100部をプロペラ翼付きの2lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌して樹脂溶液を得た。その後、イオン交換水からなる90℃に予備加熱した水性媒体355部を5分間かけて加圧注入し、水中に膨潤体を微粒子状に分散させた乳濁色の初期水性分散体を得た。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でTHFを留去して比較対照用ポリエステル樹脂微粒子水性分散体2′を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0128】
比較例3
熱可塑性樹脂(P−2)49部、リ−ガル330 30部、ビスコ−ル550P 9部及びボントロンE−80 12部を混合し、ヘンシェルミキサーにてミキシングを行い、加圧ニーダーで混練し混練物を調製した。この混練物の粗粉砕物100部およびTHF100部をプロペラ翼付きの2lガラスオ−トクレ−ブに仕込み、窒素ガスで0.2MPaに予備加圧し、100rpmでプロペラ翼を回転させながら系内が90℃になるまで加熱した。この時のオートクレーブ内の圧力は0.45MPaに増加していた。系内が90℃になった後、900rpmにプロペラ翼の回転数を上げて10分間攪拌し、樹脂溶液を得た。その後、イオン交換水からなる水性媒体355部を90℃に予備加熱した後5分間かけて加圧注入し、水中に前記混練物を微粒子状に分散させた乳白色の初期水性分散体を得た。攪拌を続けながら得られた初期水性分散体を30℃まで水冷して取り出し、ロータリーエバポレーターを使用して47℃、30分間の条件でアセトンを留去して比較対照用熱可塑性樹脂微粒子水性分散体3′を得た。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0129】
比較例4
熱可塑性樹脂微粒子水性分散体2 300部、熱可塑性樹脂微粒子水性分散体4 100部およびアセトン40部の代わりに比較対象用熱可塑性樹脂微粒子水性分散体2′ 300部、熱可塑性樹脂微粒子水性分散体3′ 100部およびTHF 40部を用いた以外は実施例5と同様にして、熱可塑性樹脂微粒子を得た。この熱可塑性樹脂粒子の残留溶剤量、体積平均粒子径および粒度分布を測定を測定したところ、残留溶剤量は2500ppm、体積平均粒子径は9.6μm、粒度分布は1.86であった。この熱可塑性樹脂微粒子とこの樹脂微粒子の重量に対して0.3%のアエロジルR−974(日本アエロジル製シリカ)とヘンシェルミキサ−で混合してトナーを調製した。このトナーを市販のフルカラー複写機に装填し、テストチャートとして電子写真学会発行のA4カラー用(番号5−1)を用いて画像の評価を行った。得られた画像は色調、解像度共に劣ったものであった。また、トナーが経時的に凝集するいわゆるブロッキング現象が起こり、画像の印刷が困難であった。
【0130】
【表1】
Figure 2004263027
【0131】
【表2】
Figure 2004263027
【0132】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることができる沸点100℃未満の有機溶剤(S)、好ましくは水と相溶する有機溶剤を用い、前記熱可塑性樹脂(P)に前記有機溶剤(S)で吸収させて膨潤体とした後、分散剤の存在下で転相乳化して前記膨潤体を微粒子状で水性媒体中に分散させるため、用いる樹脂として自己水分散性樹脂に限定することなく幅広い熱可塑性樹脂を選択することができる。また、有機溶剤の除去が容易で、樹脂微粒子内に残存する残存溶剤が極めて少ない熱可塑性樹脂微粒子水性分散体が得られる。
また、前記本発明の製造方法で得られる熱可塑性樹脂微粒子水性分散から樹脂微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有する本発明の電子写真用トナーは種々の熱可塑性樹脂を用いて得られるトナーであり、残存溶剤も極めて少ない。

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂(P)を、前記熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を分散剤(D)の存在下で水性媒体中に微粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記熱可塑性樹脂(P)の微粒子が前記水性媒体中に分散した分散体を製造する第3工程とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂(P)がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量が10,000〜500,000のポリエステル樹脂で、かつ、前記分散剤(D)がGPC法による重量平均分子量が300〜20,000で、酸価が80〜500であるポリエステル樹脂(d1)を塩基性化合物で中和して得られる水可溶性ポリエステル樹脂(D1)である請求項1記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  3. 前記ポリエステル樹脂(d1)が下記一般式(1)、(2)または(3)で表される末端構造を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂である請求項2記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
    Figure 2004263027
    (式中、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を表すが、両方ともに水素原子であることはない。また、R は炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を表し、R は炭素原子数4〜20のアルキル基または炭素原子数4〜20のアルケニル基を表す。)
  4. 前記第1工程において前記熱可塑性樹脂(P)と共に前記ポリエステル樹脂(d1)を併用して膨潤体を製造し、前記第2工程において塩基性化合物を含有する水性媒体を用いて前記ポリエステル樹脂(d1)の中和と前記膨潤体の微粒子状での分散とを行い前記初期水性分散体を製造する請求項2記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  5. 前記第2工程において前記水可溶性ポリエステル樹脂(D1)を含有する水性媒体を用いて前記初期水性分散体を製造する請求項2記載の熱可塑性樹脂微粒子分散体の製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂(P)と有機溶剤(S)とを加熱することにより前記膨潤体を製造する請求項1〜5のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  7. 前記第1工程において熱可塑性樹脂(P)と有機溶剤(S)とを加圧下で有機溶剤(S)の沸点以上の温度に加熱することにより前記膨潤体を製造し、前記第2工程において前記膨潤体を加圧下で有機溶剤(S)の沸点以上120℃以下の温度で機械的剪断力により前記水性媒体中に微粒子状に分散させて前記初期水性分散体を製造する請求項1〜5のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  8. 前記第1工程において熱可塑性樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)より10〜50℃高い温度で前記膨潤体を製造し、前記第2工程において熱可塑性樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)より10〜50℃高い温度で前記初期水性分散体を製造する請求項7記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  9. 前記有機溶剤(S)が水と相溶する有機溶剤である請求項7に記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  10. 前記有機溶剤(S)がアセトンおよび/またはイソプロピルアルコールである請求項7記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  11. 前記熱可塑性樹脂(P)100重量部に対する有機溶剤(S)の使用量が10〜200重量部で、かつ、熱可塑性樹脂(P)と有機溶剤(S)の合計100重量部に対する水の使用量が70〜400重量部である請求項7記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  12. 前記熱可塑性樹脂(P)と共に着色剤(C)を併用することにより、着色剤(C)で着色された熱可塑性樹脂(P)の微粒子が水性媒体中に分散した分散体を製造する請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法。
  13. 請求項12記載の製造方法で得られた熱可塑性樹脂微粒子水性分散体から熱可塑性樹脂(P)の微粒子を分離し、乾燥して得られる微粒子を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
JP2003053207A 2003-02-28 2003-02-28 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー Pending JP2004263027A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003053207A JP2004263027A (ja) 2003-02-28 2003-02-28 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003053207A JP2004263027A (ja) 2003-02-28 2003-02-28 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004263027A true JP2004263027A (ja) 2004-09-24

Family

ID=33117882

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003053207A Pending JP2004263027A (ja) 2003-02-28 2003-02-28 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004263027A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007033714A (ja) * 2005-07-25 2007-02-08 Fuji Xerox Co Ltd 静電荷現像用トナー、静電荷現像用トナーの製造方法、静電荷現像用現像剤及び画像形成方法
JP2007241160A (ja) * 2006-03-13 2007-09-20 Seiko Epson Corp 負帯電性トナーの製造方法
JP2007241161A (ja) * 2006-03-13 2007-09-20 Seiko Epson Corp 負帯電性トナーの製造方法
EP2105455A3 (en) * 2008-03-27 2011-03-02 Xerox Corporation Latex processes
US20120295023A1 (en) * 2011-05-17 2012-11-22 Gary William Dombrowski Latex Particles Imbibed With a Thermoplastic Polymer

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007033714A (ja) * 2005-07-25 2007-02-08 Fuji Xerox Co Ltd 静電荷現像用トナー、静電荷現像用トナーの製造方法、静電荷現像用現像剤及び画像形成方法
JP4645341B2 (ja) * 2005-07-25 2011-03-09 富士ゼロックス株式会社 静電荷現像用トナーの製造方法
JP2007241160A (ja) * 2006-03-13 2007-09-20 Seiko Epson Corp 負帯電性トナーの製造方法
JP2007241161A (ja) * 2006-03-13 2007-09-20 Seiko Epson Corp 負帯電性トナーの製造方法
JP4662058B2 (ja) * 2006-03-13 2011-03-30 セイコーエプソン株式会社 負帯電性トナーの製造方法
JP4716021B2 (ja) * 2006-03-13 2011-07-06 セイコーエプソン株式会社 負帯電性トナーの製造方法
EP2105455A3 (en) * 2008-03-27 2011-03-02 Xerox Corporation Latex processes
US20120295023A1 (en) * 2011-05-17 2012-11-22 Gary William Dombrowski Latex Particles Imbibed With a Thermoplastic Polymer
JP2012255135A (ja) * 2011-05-17 2012-12-27 Rohm & Haas Co 熱可塑性ポリマーを吸収したラテックス粒子
US9006331B2 (en) * 2011-05-17 2015-04-14 Rohm And Haas Company Latex particles imbibed with a thermoplastic polymer

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4269655B2 (ja) 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー
US6894090B2 (en) Method for producing aqueous dispersion of thermoplastic resin microparticles and toner for electrophotography
JP5629173B2 (ja) 乳化重合凝集法トナー組成物
CA2562956C (en) Emulsion containing epoxy resin
CA2700696C (en) Solvent-free emulsion process
JP4106613B2 (ja) ポリエステル樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー
WO2008059645A1 (fr) Polymère estérique hyper-ramifié, toner électrophotographique et cuvée principale de pigments utilisant ce polymère
WO2008059646A1 (fr) Polymère hyper-ramifié de type ester et toner électrophotographique dans lequel il est utilisé
CN102295920B (zh) 荧光调色剂组合物和荧光颜料
JP4241029B2 (ja) 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー
JP2004263027A (ja) 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー
JP4277254B2 (ja) 熱可塑性樹脂微粒子水性分散体の製造方法および電子写真用トナー
JP2004326001A (ja) 電子写真用トナーの製造方法
JP2004354706A (ja) 電子写真用トナーの製造法
CA2929411C (en) Low fixing temperature sustainable toner
JP4048942B2 (ja) 静電荷像現像用トナーの製造方法
JP2005077603A (ja) 電子写真用トナーおよびその製造方法
JP5134207B2 (ja) 着色剤含有樹脂乳化粒子の製造方法
JP2003107798A (ja) 電子写真用トナー
JP4247669B2 (ja) 静電荷像現像用トナー及びその製造方法
JP2005077602A (ja) 電子写真用トナーおよびその製造方法
JP4356223B2 (ja) 静電荷像現像用トナー
JP2004295030A (ja) 電子写真用トナーの製造方法
JP2005049440A (ja) 電子写真用トナーおよびその製造方法
JP2004354707A (ja) 電子写真用トナーの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20050823