JP4105874B2 - β−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖タンパクやグリコサミノグリカン、糖脂質等の複合糖鎖中に存在し、癌転移や癌化に関係している可能性のあるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミン鎖の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖タンパクやグリコサミノグリカン、糖脂質等の複合糖鎖は、細胞の癌化、分化、増殖、免疫等に深く関与していることが知られている。
【0003】
例えば、ガラクトースとN−アセチルグルコサミンが交互に結合したポリN−アセチルラクトサミンは複合糖鎖中に広く存在し、癌転移等に関わりをもつガレクチンとの強い相互作用をもつことが報告されている。通常、ポリN−アセチルラクトサミンは、N−アセチルラクトサミンがβ−1,3結合により繰り返し結合した構造を有する糖鎖を指す。
【0004】
ところが、近年、ヒトミルクムチン型糖鎖から、N−アセチルラクトサミンがβ−1,6結合により繰り返し結合した下記式(1)で表されるβ−1,6結合型ポリN−アセチルラクトサミン鎖が発見された(J. Biol. Chem.,264,872 (1989))。
【0005】
【化3】
Galβ1−4(GlcNAcβ1−6Galβ1−4)nGlcNAc …(1)
(式中、Galはガラクトース残基を表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を表す。n=1〜4)
さらに、マウス奇形腫細胞のポリラクトサミノグリカンからもβ−1,6結合型ポリN−アセチルラクトサミン鎖のフラグメントが単離されており(Glycoconjugate J.,6,129 (1989))、β−1,6結合型ポリN−アセチルラクトサミン鎖の機能的役割が注目されている。
【0006】
上記のようなβ−1,6結合型ポリN−アセチルラクトサミン鎖(本発明においてはβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖という)は、マウス奇形腫細胞のポリラクトサミノグリカンを部分的に酸分解し、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、あるいは高速液体クロマトグラフィー等により分離、精製して調製されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように天然物から抽出、精製する場合、原料に量的な制限があること、及び精製において多段階のカラム操作が必要であることなどから、工業的な規模で実施することは困難であった。また、目的物も微量しか得ることができないという問題もあった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、β−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖を簡単かつ安価に大量に製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体に、アルカリ性条件下でファミリー18に属するキチナーゼを作用させることを特徴とする、下記式(1)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の製造方法である。
【0010】
【化4】
Galβ1−4(GlcNAcβ1−6Galβ1−4)nGlcNAc …(1)
(式中、Galはガラクトース残基を表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を表す。n=1〜4)
上記第1の発明によれば、N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体に、アルカリ性条件下でキチナーゼを作用させることにより、上記オキサゾリン誘導体の水解物であるN−アセチルラクトサミンへの転移反応が繰り返し起こり、N−アセチルラクトサミンがβ−1,6結合により繰り返し結合した上記式(1)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖を簡単かつ安価に大量に得ることができる。
【0011】
また、本発明の第2は、N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体に、アルカリ性条件下でファミリー18に属するキチナーゼを作用させた後、更にβ−D−ガラクトシダーゼを作用させることを特徴とする、下記式(2)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の製造方法である。
【0012】
【化5】
(GlcNAcβ1−6Galβ1−4)nGlcNAc …(2)
(式中、Galはガラクトース残基を表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を表す。n=1〜4)
上記第2の発明によれば、N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体に、アルカリ性条件下でキチナーゼを作用させることにより、上記式(1)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖を得、これにβ−D−ガラクトシダーゼを作用させて非還元末端のガラクトース残基を切断することにより、非還元末端にN−アセチルグルコサミンを有する上記式(2)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖を簡単かつ安価に大量に得ることができる。
【0013】
上記の各β−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の製造方法においては、pH8〜10の条件下で前記キチナーゼを作用させることが好ましい。この態様によれば、N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体の転移反応をより効率よく行うことができる。
【0014】
また、前記キチナーゼが、Bacillus属由来のキチナーゼであることが好ましい。この態様によれば、より安価にβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖を製造することができる。
【0015】
上記のようなβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖は、何らかの生物学的役割を担っていることが推測されており、例えば新規生理活性物質として、癌の治療薬、予防薬等の医薬品、診断薬、化粧品、食品等の研究開発に有効に用いることができる。また、カラム充填剤や試薬等としての利用も期待できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の合成方法の基本は、N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体に、アルカリ性条件下でキチナーゼを作用させて、N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体の水解物であるN−アセチルラクトサミンへβ−1,6結合で転移させるものである。
【0017】
本発明において、反応基質であるN−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体(以下、単にオキサゾリン誘導体という)とは、下記式に示す構造を有する化合物をいう。
【0018】
【化6】
【0019】
上記オキサゾリン誘導体は、例えばN−アセチルラクトサミンに塩化アセチルを作用させてアノマー位の塩素化及び水酸基の保護を行い、塩化テトラエチルアンモニウムと炭酸水素ナトリウムによりオキサゾリン環を形成し、最後にナトリウムメトキシドによる脱アセチル化を行なうことにより得ることができる(K. Sasaki, S. Ahlfors, T. Frejd, J. Kihlberg, G. Magnusson, J. Org. Chem., 53, 5629 (1988)、S. Nishimura, H. Kuzuhara, Y. Takiguchi, K. Shimahara, Carbohydr. Res., 194, 223 (1989))。
【0020】
キチナーゼとしては、Henrissatらによる糖質加水分解酵素の分類(Henrissat, B., Biochem. J., 280, 309 (1991)、Henrissat, B., A. Bairoch., Biochem. J., 293, 781 (1993))において、ファミリー18に属するキチナーゼが用いられ、特に、Bacillus属由来のキチナーゼが好ましく用いられる。
【0021】
キチナーゼは、Bacillus属の菌体(例えばBacillus circulans(IFO13627)等)の培養液から、例えば硫安沈殿により粗酵素を調製し、必要に応じて更にキチンカラム等を用いて精製することにより調製できる(T. Watanabe, K. Suzuki, W. Oyanagi, K. Ohnishi, H. Tanaka, J. Biol. Chem., 265, 15659 (1990))。なお、キチナーゼは、精製されたものを用いてもよく、粗酵素を用いてもよい。また、市販のキチナーゼを用いてもよく、例えば商品名「キチナーゼ」(Bacillus sp.由来、和光純薬工業社製)等を用いることができる。
【0022】
本発明においては、安価に入手できることから、Bacillus sp.由来のキチナーゼが特に好ましく用いられる。
【0023】
キチナーゼは、従来キチンを加水分解する酵素として知られているが、分解の反応機構としてオキサゾリニウムイオン中間体を経由する機構が知られている(Substrate Assisted Catalysis)。上記オキサゾリン誘導体は、このオキサゾリニウムイオン中間体に類似した構造をもつ遷移状態アナログであるため、糖転移の活性化エネルギーが非常に高く、キチナーゼの転移反応基質として非常に優れているものと考えられる。
【0024】
本発明において、式(1)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖(以下、N−アセチルラクトサミンオリゴ糖(1)という)は、例えば以下のようにして調製することができる。
【0025】
すなわち、上記オキサゾリン誘導体を、アルカリ性(好ましくはpH7〜11、より好ましくはpH8〜10)に調整した緩衝液に溶解し、これにキチナーゼを添加して20〜40℃で反応を行なう。上記のようなpH範囲で酵素反応を行なうことにより、効率よく転移反応が進行すると共に、一旦生成したオリゴ糖がキチナーゼによって再び分解されることを防ぐことができる。
【0026】
反応中は、反応液を経時的にサンプリングして高速液体クロマトグラフィーでオキサゾリン誘導体のピークの消失を確認した後、酵素を失活させ、高速液体クロマトグラフィー等により目的物を単離する。
【0027】
キチナーゼの添加量は、転移反応が充分に進行する量であれば特に制限はないが、例えば上記オキサゾリン誘導体を0.1mol/L含む反応系においては、キチナーゼの添加量は50〜500mU/mLが好ましく、70〜150mU/mLがより好ましい。なお、本発明において、キチナーゼ1U(ユニット)とは、pH6.8、37℃の条件下で酵素をN−アセチルキトサンに作用させた際に、1分間にN−アセチルキトサンから1μmolのN−アセチルグルコサミンに相当する還元糖を生成する酵素量を意味する。
【0028】
また、高速液体クロマトグラフィーの条件は、例えば「TSK-gel Amide-80」(商品名、トーソー社製)、「Asahipak NH2P-50 4E」(商品名、昭和電工社製)等のカラムを用い、溶媒としてアセトニトリル/水混合溶媒(アセトニトリル/水(v/v)=80/20〜60/40)等を用いて行なうことができる。
【0029】
また、上記のようにして得られたN−アセチルラクトサミンオリゴ糖(1)に、緩衝液(好ましくはpH5〜7、より好ましくはpH6〜6.5)中でβ−D−ガラクトシダーゼを作用させて、非還元末端のガラクトース残基を切断することにより、式(2)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖(以下、N−アセチルラクトサミンオリゴ糖(2)という)を得ることができる。
【0030】
本発明において、β−D−ガラクトシダーゼの添加量は、反応が充分に進行する量であれば特に制限はないが、例えば、基質を5〜10mmol/L含む反応系においては、β−D−ガラクトシダーゼの添加量は5〜250mU/mLが好ましく、25〜125mU/mLがより好ましい。なお、β−D−ガラクトシダーゼ1U(ユニット)とは、酵素をパラニトロフェニル−β−D−ガラクトシドにpH6.0、37℃で作用させた際に、1分間にパラニトロフェニル−β−D−ガラクトシドから1μmolのパラニトロフェノールを遊離する酵素量を意味する。
【0031】
β−D−ガラクトシダーゼとしては、特に制限はないが、例えばストレプトコッカス ニューモニア(Streptococcus pneumoniae、ATCC6305)、Bacillus circulans(IFO13627)等由来のものを使用することができる。
【0032】
β−D−ガラクトシダーゼは、これらの菌体の培養液から、例えば硫安沈殿(Green, A. A. et al. : Methods in Enzymology, vol. 1, p76, 1955)や、ゲル濾過クロマトグラフィー(Miyazaki et al. : Agric Bio Chem, 52, 625-631, 1988)により調製することができる。また、市販のβ−D−ガラクトシダーゼを用いてもよく、例えば商品名「乳糖分解酵素製剤Biolacta FN5」(Bacillus circulans由来、大和化成社製)等が挙げられる。なお、β−D−ガラクトシダーゼは、N−アセチルヘキソサミニダーゼ活性を除いておくことが好ましい。
【0033】
本発明においては、ストレプトコッカス ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)由来のβ−D−ガラクトシダーゼが特に好ましく用いられる。
【0034】
上記の各酵素反応を行なう際に用いられる緩衝液としては、キチナーゼを用いた酵素反応の場合は、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液等が挙げられる。また、β−D−ガラクトシダーゼを用いた酵素反応の場合は、例えばSodium cacodylate緩衝液、リン酸緩衝液等が挙げられる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
製造例
N−アセチルラクトサミン4.0gに塩化アセチル20mLを加え、撹拌しながら室温で4日間反応を行なった。なお、反応中は、TLC(酢酸エチル/ヘキサン(v/v)=4/1)により反応を追跡した。
【0036】
この反応液をエバポレートによって濃縮し、過剰量の塩化メチレンで希釈後、pHが中性になるまで冷水及び飽和炭酸水素ナトリウム溶液で分液し、得られた有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過して硫酸ナトリウムを除去した。
【0037】
得られた濾液をエバポレートにより濃縮し、更に減圧乾燥して溶媒を完全に除去して、塩化N−アセチル−3,6,2',3',4',6'−ヘキサ−O−アセチル−α−ラクトサミニル(以下、化合物(I)という)6.80gを得た。
【0038】
上記化合物(I)3.01gをアセトニトリル25mLに溶解し、この溶液に、塩化カルシウムによって一時間半乾燥させた塩化テトラエチルアンモニウム1.0gと炭酸水素ナトリウム1.0gを加え、55℃で1時間40分間還流させた。
【0039】
TLC(酢酸エチル/ヘキサン(v/v)=4/1)にて反応終了を確認し、ガラスフィルターG4(商品名、柴田科学社製)で固形物を除去し、得られた濾液を減圧下で濃縮した後、過剰量の塩化メチレンで希釈し、水相のpHが中性になるまで冷水及び飽和炭酸水素ナトリウム溶液で分液した。
【0040】
得られた有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムにより乾燥後、濾過して硫酸ナトリウムを除去した後、エバポレートによって濃縮し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(Gel:商品名「Silica Gel 60」、Merck社製、particle size:0.04−0.063mm、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン(v/v)=4/1)により精製して、固体状の2−メチル{3,6ジ−O−アセチル−4−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル)1,2−ジデオキシ−α−グルコピラノ}[2,1−d]−2−オキサゾリン(以下、化合物(II)という)1.40gを得た。
【0041】
アルゴン雰囲気下、上記化合物(II)1.40gを無水メタノール270mLに溶解させ、0.01Mの濃度になるようにナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加し、室温で2時間反応させた。TLC(酢酸エチル/ヘキサン(v/v)=4/1)により反応終了を確認した後、反応溶液が中性になるまでイオン交換樹脂Amberlite IR-120(H+)(商品名、オルガノ社製)を加えた後、濾過してイオン交換樹脂を除去した。
【0042】
得られた濾液をエバポレートによって濃縮し、更に減圧乾燥して、2−メチル{4−O−(β−D−ガラクトピラノシル)1,2−ジデオキシ−α−D−グルコピラノ}[2,1−d]−2−オキサゾリン(以下、オキサゾリン誘導体(I)という)0.80gを得た。なお、オキサゾリン誘導体(I)は、NMRにより構造を確認した。
【0043】
実施例1
上記オキサゾリン誘導体(I)41.3mgをエッペンドルフチューブに取り、200mUのキチナーゼA1(Bcillus cirulans WL-12由来)を溶解した50mMトリス緩衝液(pH9.0)1.1mLを添加し、40℃で反応を行なった。
【0044】
反応中、高速液体クロマトグラフィーにより反応を追跡し、反応開始から2時間後にオキサゾリン誘導体(I)の消失及び重合体の生成を確認した後、100℃で10分間熱失活を行なった。なお、高速液体クロマトグラフィーは、以下の条件(1)で行なった。
【0045】
・条件(1)
カラム:「TSK-gel Amide-80 (4.6×25mm)」(商品名、トーソー社製)
溶媒:アセトニトリル/水(v/v)=60/40
温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出:RI
次いで、得られた反応液をフィルター処理後、以下の条件(2)で高速液体クロマトグラフィーを行ない、目的物を含む画分をそれぞれ回収した。
【0046】
・条件(2)
カラム:「TSK-gel Amide-80 (21.5×30mm)」(商品名、トーソー社製)
溶媒:アセトニトリル/水(v/v)=65/35
温度:40℃
流速:4.0mL/min
検出:RI
そして、回収した各画分をエバポレートで濃縮、凍結乾燥して、N−アセチルラクトサミンオリゴ糖(1)(n=1〜3)を得た。乾燥質量による収率は、n=1は20.5%、n=2は26.4%、n=3は8.6%であった。なお、各糖鎖の構造は13CNMR、DEPT及びMALDI TOF MASSにより確認した。
【0047】
実施例2
実施例1で得られたN−アセチルラクトサミンオリゴ糖(1)(n=1)8.7mgをファルコンチューブに入れ、20mMリン酸緩衝液(pH6.0)2.0mLを添加し、市販のβ−D−ガラクトシダーゼ(Streptococcus pneumoniae由来、商品名「β1,4−ガラクトシダーゼ」、CALBIOCHEM社製)26mUを加えて、37℃で反応を行なった。
【0048】
反応開始から42時間後に、高速液体クロマトグラフィーにて反応終了を確認し、80℃で25分間熱失活を行なった。なお、高速液体クロマトグラフィーは、以下の条件(3)で行なった。
【0049】
・条件(3)
カラム:「TSK-gel Amide-80 (4.6×25mm)」(商品名、トーソー社製)
溶媒:アセトニトリル/水(v/v)=75/25
温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出:RI
次いで、得られた反応液をフィルター処理後、以下の条件(4)で高速液体クロマトグラフィーを行ない、目的物を含む画分を回収した。
【0050】
・条件(4)
カラム:「TSK-gel Amide-80 (21.5×30mm)」(商品名、トーソー社製)
溶媒:アセトニトリル/水(v/v)=60/40
温度:40℃
流速:4.0mL/min
検出:RI
そして、回収した画分をエバポレートで濃縮、凍結乾燥して、N−アセチルラクトサミンオリゴ糖(2)(n=1)を5.7mg得た。乾燥質量による収率は84%であった。なお、糖鎖の構造は、13CNMR及びMALDI TOF MASSにより確認した。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体に、アルカリ性条件下でキチナーゼを作用させることにより、上記オキサゾリン誘導体の水解物であるN−アセチルラクトサミンへの転移反応が進行して、N−アセチルラクトサミンがβ−1,6結合により繰り返し結合したβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖を簡単かつ安価に大量に得ることができる。そして、さらにβ−D−ガラクトシダーゼを作用させて、非還元末端のガラクトース残基を切断することにより、非還元末端にN−アセチルグルコサミンを有するβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖を簡単かつ安価に大量に得ることができる。
【0052】
上記のようなβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖は、例えば新規生理活性物質として、癌の治療薬、予防薬等の医薬品、診断薬、化粧品、食品等の研究開発に有効に用いることができる。また、カラム充填剤や試薬等としての利用も期待できる。
Claims (4)
- N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体に、アルカリ性条件下でファミリー18に属するキチナーゼを作用させることを特徴とする、下記式(1)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の製造方法。
【化1】
Galβ1−4(GlcNAcβ1−6Galβ1−4)nGlcNAc …(1)
(式中、Galはガラクトース残基を表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を表す。n=1〜4) - N−アセチルラクトサミンのオキサゾリン誘導体に、アルカリ性条件下でファミリー18に属するキチナーゼを作用させた後、更にβ−D−ガラクトシダーゼを作用させることを特徴とする、下記式(2)で表されるβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の製造方法。
【化2】
(GlcNAcβ1−6Galβ1−4)nGlcNAc …(2)
(式中、Galはガラクトース残基を表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を表す。n=1〜4) - pH8〜10の条件下で前記キチナーゼを作用させる、請求項1又は2に記載のβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の製造方法。
- 前記キチナーゼが、Bacillus属由来のキチナーゼである、請求項1〜3のいずれか一つに記載のβ−1,6結合型N−アセチルラクトサミンオリゴ糖の製造方法。
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