JP4105555B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体に関するものであり、詳しくは、半導体レーザーを用いる追記型DVDディスクシステムにおいて、発振波長の長波長シフトに適用可能な優れた耐光性および保存安定性を有する光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、大容量光ディスクとして追記型DVDの開発が進められている。このDVDドライブは、光源として660nm帯の半導体レーザーを使用している。半導体レーザーは、使用環境の温度上昇に伴い、発振波長を長波長側へとシフトする特徴があることが一般的に知られている。このため、DVDの記録は、光源の長波長シフトに十分対応させることが必要となる。
このような状況下で最も好ましい追記型DVDは、波長650〜670nmで記録、再生が可能なメディアである。
なお、下記特許文献1および2には、ホルマザン金属キレート色素を含む追記型DVDが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−23235号公報
【特許文献2】
特開2002−11953号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、とくに半導体レーザーを用いる追記型DVDディスクシステムにおいて、発振波長の長波長シフトに適用可能な優れた耐光性および保存安定性を有する光記録媒体の提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有する色素を含む記録層を備えた光記録媒体が、発振波長670nm以下の半導体レーザーを用いる追記型DVDディスクシステムに適用可能なことを見いだし本発明に至った。
【0006】
請求項1の発明は、基板上に記録層を設けてなる光記録媒体において、前記記録層が、下記一般式(I)で示されるホルマザン化合物と金属、金属酸化物またはそれらの塩からなるホルマザン金属キレートアニオン化合物と、下記一般式(II)で示されるシアニン色素カチオン化合物とからなる色素塩の少なくとも一種類を含有することを特徴とする光記録媒体である。
【0007】
【化3】
【0008】
[前記一般式(I)において、R1〜R13はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルキルオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基を表し、XおよびYはそれぞれ独立に水酸基、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基を表す。]
【0009】
【化4】
[前記一般式(II)において、R14〜R15はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアルキル基、置換のアリール基を表し、A環およびB環はそれぞれ独立に炭素と隣接の窒素原子を連結し芳香族性を有する環を表す。]
【0010】
この構成によれば、とくに半導体レーザーを用いる追記型DVDディスクシステムにおいて、発振波長の長波長シフトに適用可能な優れた耐光性および保存安定性を有する光記録媒体を提供することができる。
【0011】
請求項2の発明は、前記金属または金属酸化物の価数が2価であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体である。
この構成によれば、耐光性および保存安定性が一層優れた光記録媒体を提供することができる。
【0012】
請求項3の発明は、前記2価の金属がニッケルまたは銅であることを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体である。
この構成によれば、耐光性および保存安定性が一層優れた光記録媒体を提供することができる。
【0013】
請求項4の発明は、一般式(I)のホルマザン金属キレートアニオン化合物において、R9がトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光記録媒体である。
この構成によれば、安定した高反射率かつ高変調度で記録再生できる光記録媒体を提供することができる。
【0017】
請求項5の発明は、基板上のトラックピッチが0.7〜0.8μmであり、溝幅が半値幅で、0.18〜0.36μmであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光記録媒体である。
この構成によれば、耐光性および保存安定性が一層優れた追記型DVDを提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
前記一般式(I)において、R1〜R13はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環残基、置換もしくは未置換のアルキルカルボニル基、置換もしくは未置換のアリールカルボニル基、置換もしくは未置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは未置換のアリールスルホニル基、置換もしくは未置換のアルキルチオオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルオキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、置換もしくは未置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、置換もしくは未置換のアルキルカルバモイル基、置換もしくは未置換のアリールカルバモイル基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルホ基、スルフィノ基、スルフェノ基、アミノスルホニル基、置換もしくは未置換のアルケニル基を表し、XおよびYはそれぞれ独立に水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、スルホ基、スルフィノ基、スルフェノ基、アミノスルホニル基を表す。
一般式(II)において、R14〜R15はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基を表し、A環およびB環はそれぞれ独立に炭素と隣接の窒素原子を連結し芳香族性を有する環を表す。
【0019】
前記ハロゲン原子の具体例は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0020】
前記アルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の一級アルキル基、イソブチル基、イソアミル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、1-エチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、1-プロピルブチル基、1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルブチル基、1-エチル-2-メチルブチル基、1-プロピル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、1-イソプロピルペンチル基、1-イソプロピル-2-メチルブチル基、1-イソプロピル-3-メチルブチル基、1-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1-プロピルヘキシル基、1-イソブチル-3-メチルブチル基等の二級アルキル基、ネオペンチル基、tert-ブチル基、tert-ヘキシル基、tert-アミル基、tert-オクチル基等の三級アルキル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、4-(2-エチルヘキシル)シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基(アダマンタン基)等のシクロアルキル基等が挙げられる。更に、これら一級および二級アルキル基は、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環残基等を以て置換されていてもよく、また酸素、硫黄、窒素等の原子を介して前記のアルキル基で置換されていてもよい。酸素を介して置換されているアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、ピペリジノ基、モルホリノ基等が、硫黄を介して置換されているアルキル基としては、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、エチルチオプロピル基、フェニルチオエチル基等が、窒素を介して置換されているアルキル基としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0021】
前記アリール基の具体例は、フェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0022】
前記複素環残基の具体例は、インドリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリル基等が挙げられる。
【0023】
前記アルキルカルボニル基の具体例は、カルボニル基の炭素原子に直接置換または未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0024】
前記アリールカルボニル基の具体例は、カルボニル基の炭素原子に直接置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0025】
前記アルキルオキシカルボニル基の具体例は、オキシカルボニル基の酸素原子に直接置換または未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0026】
前記アリールオキシカルボニル基の具体例は、オキシカルボニル基の酸素原子に直接置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0027】
前記アルキルスルホニル基の具体例は、スルホニル基の硫黄原子に直接置換または未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
前記アリールスルホニル基の具体例は、スルホニル基の硫黄原子に直接置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0028】
前記アルキルチオオキシ基の具体例は、硫黄原子に直接置換または未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0029】
前記アリールチオオキシ基の具体例は、硫黄原子に直接置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0030】
前記アルキルオキシ基の具体例は、酸素原子に直接置換または未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0031】
前記アリールオキシ基の具体例は、酸素原子に直接置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0032】
前記アルキルアミノ基の具体例は、窒素原子に直接置換または未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0033】
前記アリールアミノ基の具体例は、窒素原子に直接置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0034】
前記アルキルカルボニルアミノ基の具体例は、カルボニルアミノ基の炭素原子に直接置換または未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0035】
前記アリールカルボニルアミノ基の具体例は、カルボニルアミノ基の炭素原子に直接置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0036】
前記アルキルカルバモイル基の具体例は、カルバモイル基の窒素原子に直接それぞれ独立して水素原子、置換または未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0037】
前記アリールカルバモイル基の具体例は、カルバモイル基の窒素原子に直接それぞれ独立して水素原子、置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0038】
アルキルスルホニルアミノ基の具体例は、硫黄原子に直接置換もしくは未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0039】
アリールスルホニルアミノ基の具体例は、硫黄原子に直接置換または未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリールの具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0040】
前記アルケニル基の具体例は、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基、1−ブテン−3−イニル基、1−ペンテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、1−,2−ジメチル−1−ブテニル基、2,2−ジメチル−1−ブテニル基、1,3−ペンタジエニル基、1,4−ペンタジエニル基、1−ペンテン−3−イニル基、1−ペンテン−4−イニル基等が挙げられる。
【0041】
2価の金属原子の具体例は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ロジウム、パラジウム、カドニウム等が挙げられ、2価の金属酸化物の具体例は酸化バナジウム等が挙げられる。また、上述の金属もしくは金属酸化物は、塩として供給することもできる。塩類の陰イオンの具体例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、スルホキシル酸、亜硫酸、亜硫酸水素、チオスルファト、硫酸、チオシアン酸、リン酸、シアン化物、シアン酸、炭酸、炭酸水素、酢酸、シュウ酸等が挙げられ、また、アセチルアセトナト、ベンゾイルトリフロロアセトナト、フリルトリフロロアセトナト、ピバロイルトリフロロアセトナト等の有機キレート塩であっても良い。
とくに、ニッケル、銅のホルマザン金属キレートアニオン化合物は、光記録材料として光学特性が優れている。
【0042】
なお、本発明において、前記一般式(I)のホルマザン金属キレートアニオン化合物のR9がトリフルオロメチル基であると、記録特性が改善された光記録媒体が提供できるため好ましい。
また、前記A環およびB環はそれぞれ独立に炭素と隣接の窒素原子を連結し芳香族性を有する環であればよいが、下記表のC1〜C10で表されるものが好ましい。
【0043】
本発明における色素塩の特徴は、第一に、3つの配位子を有するホルマザン化合物と2価の金属または金属酸化物等によりホルマザン金属キレートアニオン化合物を作成することであり、第二に、シアニン色素カチオン化合物と作用することで、下記化学式で表されるような安定な色素塩を作成できる点にある。
本発明における色素塩は、光堅牢度の高いホルマザン金属キレート化合物の特徴と、分子吸光係数、屈折率の大きなシアニン色素カチオン化合物の特徴を兼ね備えている点が優れている。
【0044】
【化5】
【0045】
また、本発明の光記録媒体において、記録層は、所望の光学特性および熱的特性を有するのがよい。
光学特性に望まれる条件は、記録再生波長である630nm〜690nmに対して短波長側に大きな吸収帯を有し、かつ記録再生波長が該吸収帯の長波長端近傍にあることである。これは、記録再生波長である630nm〜690nmで大きな屈折率と消衰係数を有することを意味するものである。
具体的には、記録再生波長近傍(±10nm)の波長領域の光に対する記録層単層の屈折率nが1.5以上3.0以下であり、消衰係数kが0.02以上0.2以下の範囲にあることが好ましい。nが1.5未満の場合には、十分な光学的変化得られにくいため、記録変調度が低くなるため好ましくなく、nが3.0を越える場合には、波長依存性が高くなり過ぎるため、記録再生波長領域であってもエラーとなってしまうため好ましくない。また、kが0.02未満の場合には、記録感度が悪くなるため好ましくなく、kが0.2を越える場合には、50%以上の反射率を得ることが困難となるので好ましくない。
【0046】
熱的特性に望まれる条件は、有機色素の熱重量分析における主減量過程での重量減量が、温度に対して急であることである。主減量過程により有機材料膜からなる記録層は分解し、膜厚の減少と光学定数の変化を起こし、光学的な意味での記録部が形成されるからである。したがって、主減量過程の重量減量が温度に対して穏やかな場合、これは広い温度範囲にわたって記録部が形成されてしまうため、高密度の記録部を形成させる場合は極めて不利となる。同様な理由で重量減量の過程が複数存在する材料を用いた場合も高密度対応には不利である。
【0047】
本発明ではいくつかの重量減量過程のうちで、減量率が最大のものを主減量過程と呼ぶ。本発明において重量減量の傾きは下記のように求める。
図1は、重量減量過程を説明するための図である。図1に示すように、質量m0の有機材料を窒素雰囲気下中で、10℃/分で昇温させる。この昇温に従って、質量は微量づつ減少し、はぼ直線a−bの重量減量線を示し、ある温度に達すると急激な重量減少を起こし、ほぼ直線c−dに沿って重量減量を起こす。さらに温度を上げ続けると質量の急激な減量が終了し、ほぼ直線e−fに沿った重量減少を起こす。今直線a−bと直線c−dとの交点に於ける温度をT1(℃)、初期質量m0に対する残存重量をm1(%)、直線c−dと直線e−fとの交点に於ける温度をT2(℃)、初期質量m0に対する残存重量をm2(%)とする。
原料開始温度はT1、減量終了温度はT2となり、重量減量の傾きは、
( m1−m2 )(%) / ( T2−T1 )(℃) で示される値で、初期重量に対する重量減量率は、( m1−m2 )(%) で示される。
上記定義に基づくと光記録媒体に用いる記録材料としては、主減量過程に於ける重量減量の傾きが2%/℃以上であることが好ましい。この重量減量の傾きが2%/℃未満である記録材料を用いると、記録部の広がりが大きくなり、また短い記録部を形成することが困難となるため、情報記録媒体には不向きである。
また、主減量過程に於ける重量減量率は、30%以上であることが好ましい。30%未満であると、良好な記録変調度、記録感度が得られない可能性がある。
更に、熱的特性に必要な条件は、減量開始温度T1が、ある温度範囲にあることが必要である。具体的には減量開始温度が350℃以下であり、好ましくは200〜350℃の範囲にあることが望ましい。減量開始温度が350℃超であると、記録レーザ光のパワーが高くなり実用的でなく、200℃未満であると再生劣化を起こすなど記録安定性が悪化する。
【0048】
図2は、本発明の光記録媒体の一実施形態(追記型)を説明するための断面図である。図2における光記録媒体は、基板1上に記録層2を設けたもの(a)、基板1と記録層2との間に下引き層3を設けたもの(b)、基板1上に下引き層3、記録層2、保護層4を順次設けたもの(c)、基板1上に下引き層3、記録層2、保護層4を順次設け、さらに基板1の反対面にハードコート層5を設けたもの(d)として示されている。
図3は、本発明の光記録媒体の別の実施形態(CD-R)を説明するための断面図である。図3における光記録媒体は、基板1上に記録層2、金属反射層6、保護層4を順次設けたもの(a)、基板1上に下引き層3、記録層2、金属反射層6、保護層4を順次設けたもの(b)、基板1上に下引き層3、記録層2、金属反射層6、保護層4を順次設け、さらに基板1の反対面にハードコート層5を設けたもの(c)として示されている。
図4は、本発明の光記録媒体の別の実施形態(DVD-R)を説明するための断面図である。図4における光記録媒体は、基板1上に記録層2、金属反射層6、保護層4を順次設けたもの(a)、基板1上に記録層2、金属反射層6、保護層4、接着層8、保護基板7を順次設けたもの(b)、基板1上に下引き層3、記録層2、金属反射層6、保護層4、接着層8、保護基板7を順次設け、さらに基板1の反対面にハードコート層5を設けたもの(c)として示されている。
なお、本発明では、例えば図2の構造を有する光記録媒体を2枚貼合わせた、いわゆるエアーサンドイッチ、または密着貼合わせ構造を採用することもできる。
【0049】
前記基板1において、基板1側より記録再生を行う場合は、使用レーザー光に対して透明でなければならず、記録層2側から記録、再生を行う場合は、基板1は透明である必要はない。基板材料としては例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等のプラスチック、ガラス、セラミックあるいは金属等を用いることができる。なお、基板1の表面にトラッキング用の案内溝や、案内ピット、さらにアドレス信号等のプレフォーマット等が形成されていてもよい。
また本発明の光記録媒体において、基板1上のトラックピッチが0.7〜0.8μmであり、かつ溝幅が半値幅で、0.18〜0.36μmであるのが好ましい。
基板は通常、深さ1000〜2500Åの案内溝を有している。トラックピッチは、通常、0.7〜1.0μmであるが、高容量化の用途には0.7〜0.8μmが好ましい。溝幅は、半値幅で0.18〜0.36μmが好ましい。0.18μm未満であると十分なトラッキングエラー信号強度を得ることが困難となる恐れがある。また、0.36μmを越える場合には、記録したときに記録部が横に広がりやすくなるので好ましくない。
【0050】
また本発明では、前記図2〜4で示したように、基板1、記録層2、保護層4、金属反射層6以外に、下引き層3等の中間層を設けることができる。この中間層は(a)接着性の向上、(b)水またはガス等のバリアー、(c)記録層の保存安定性の向上、(d)反射率の向上、(e)溶剤からの基板や記録層の保護、(f)案内溝・案内ピット・プレフォーマット等の形成等を目的として設けられる。(a)の目的に対しては高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の種々の高分子物質、およびシランカップリング剤等を用いることができ、(b)および(c)の目的に対しては、前記高分子材料以外に無機化合物、例えばSiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiN等金属、または半金属、例えばZn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Al等を用いることができる。また(d)の目的に対しては金属、例えばAl、Ag等や、金属光沢を有する有機薄膜、例えばメチン染料、キサンテン系染料等を用いることができ、(e)および(f)の目的に対しては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。下引き層3の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0051】
本発明における記録層2は、レーザー光の照射により何らかの光学的変化を生じさせ、その変化により情報を記録できるものであって、この記録層2中には本発明の色素塩が含有されていることが必要であるが、記録層2の形成にあたって本発明の色素を1種、または2種以上の組合せで用いてもよい。さらに、本発明の前記色素塩は光学特性、記録感度、信号特性等の向上の目的で他の有機色素および金属、金属化合物と混合してもよいし、記録層2を積層化してもよい。前記他の有機色素の例としては、ポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントレキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトレヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、および金属キレート化合物等が挙げられ、前記の色素を単独で用いてもよいし、2種以上の組合せにしてもよい。
また、前記色素中に金属、金属化合物、例えば、In、Te、Bi、Se、Sb、Ge、Sn、Al、Be、TeO2、SnO、As、Cd等を分散混合あるは積層の形態で用いることもできる。さらに、前記色素中に高分子材料例えば、アイオノマー樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の種々の材料もしくはシランカップリング剤等を分散混合して用いてもよいし、あるいは特性改良の目的で安定剤(例えば遷移金属錯体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を併用することもできる。
記録層2の形成は蒸着、スパッタリング、CVDまたは溶液塗布等の通常の手段によって行うことができる。塗布法を用いる場合には前記色素等を有機溶媒等に溶解してスプレー、ローラーコーティング、ディッピングおよび、スピンコーティング等の慣用のコーティング法によって行われる。用いられる有機溶剤としては一般にメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類、あるいはベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族類、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のセロソルブ類、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類等を用いることができる。記録層の膜厚は100Å〜10μm、好ましくは200Å〜2000Åが適当である。
【0052】
金属反射層6は単体で高反射率の得られる腐食されにくい金属、半金属等が挙げられ、材料例としてはAu、Ag、Cr、NI、Al、Fe、Sn等が挙げられるが、反射率、生産性の点からAu、Ag、Al、が最も好ましく、これらの金属、半金属は単独で使用してもよく、2種の合金としてもよい。
膜形成法としては蒸着、スッパタリング等が挙げられ、膜圧としては50〜5000Å、好ましくは100〜3000Åである。
【0053】
また、保護層4あるいはハードコート層5は、(a)記録層2を傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(b)記録層2の保存安定性の向上、(c)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記中間層に示した材料を用いることができる。また、無機材料として、SiO、SiO2等も用いることができ、有機材料としてポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、芳香属炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。
前記材料のうち保護層4あるいはハードコート層5に最も好ましい例としては生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層4あるいはハードコート層5の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmがよい。本発明において、前記中間層、保護層、およびハードコート層には記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0054】
次に、前記一般式(I)および(II)で示される化合物において、好適な化合物例を表1〜3に示す。また好適な色素塩例を表4に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(合成例1)
反応容器に、エタノール、2−ヒドラジノ安息香酸塩酸塩10.0gおよび酢酸ナトリウム4.4gを加え攪拌した。これに2−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド9.2gを滴下した。次に、アントラニル酸7.3gを等量のテトラフルオロボロン酸ナトリウム存在下、−10℃でジアゾ化した溶液と、先の析出物のアルコール懸濁液とを反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過し、適当な溶剤で再結晶させることで精製し、18.1gのホルマザン化合物を得た。このホルマザン化合物と、1/2等量の酢酸銅II水和物をDMF中還流状態2時間作用させた後、2倍等量のC1の過塩素酸化物を加え再びDMF中還流状態2時間作用させた。冷却後水に排出し、析出物をシリカゲルカラムにて精製し、化合物例塩1を26.4g得た。
【0060】
(実施例1)
厚さ0.6mmの射出成形ポリカーボネート基板上に、フォトポリマーにて深さ1750Å、半値幅0.25μm、トラックピッチ0.74μmの案内溝を形成し、化合物例塩1の1,1,2,2-テトラフルオロプロパノール溶液をスピンナー塗布し、厚さ900Åの記録層を形成し、ついでスパッタ法により金1200Åの反射層を設け、さらにその上にアクリル系フォトポリマーにて7μmの保護層を設けた後、厚さ0.6mmの射出成形ポリカーボネート平面基板をアクリル系フォトポリマーにて接着し、記録媒体とした。
【0061】
(実施例2〜13)
実施例1で化合物塩1の代わりに化合物例塩2〜25を用い実施例1と全く同様に記録媒体を形成した。
【0062】
(比較例1)
実施例1で化合物例塩1の代わりに、以下に示す化合物を用い実施例1と全く同様に記録媒体を形成した。
【0063】
【化6】
【0064】
前記のようにして得られた各記録媒体について、次のようにして耐光性および保存安定性を調べた。
<記録条件>
記録媒体にレーザー発振波長658nm、ビーム径1.0μmの半導体レーザー光を用い、トラッキングしながらEFM信号(線速3.5m/sec.)を記録し、発振波長670nmの半導体レーザーの連続光(再生パワー0.7mW)で再生し、再生波形を観察した。
<テスト条件>
耐光性テスト:50000Lux、Xe光、20時間連続照射
保存安定性テスト:60℃、RH90%、600時間放置
【0065】
【表5】
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、とくに半導体レーザーを用いる追記型DVDディスクシステムにおいて、発振波長の長波長シフトに適用可能な優れた耐光性および保存安定性を有する光記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】重量減量過程を説明するための図である。
【図2】本発明の光記録媒体の一実施形態(追記型)を説明するための断面図である。
【図3】本発明の光記録媒体の別の実施形態(CD-R)を説明するための断面図である。
【図4】本発明の光記録媒体の別の実施形態(DVD-R)を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 記録層
3 下引き層
4 保護層
5 ハードコート層
6 金属反射層
7 保護基板
8 接着層
Claims (5)
- 基板上に記録層を設けてなる光記録媒体において、前記記録層が、下記一般式(I)で示されるホルマザン化合物と金属、金属酸化物またはそれらの塩からなるホルマザン金属キレートアニオン化合物と、下記一般式(II)で示されるシアニン色素カチオン化合物とからなる色素塩の少なくとも一種類を含有することを特徴とする光記録媒体。
- 前記金属または金属酸化物の価数が2価であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- 前記2価の金属がニッケルまたは銅であることを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体。
- 一般式(I)のホルマザン金属キレートアニオン化合物において、R9がトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光記録媒体。
- 基板上のトラックピッチが0.7〜0.8μmであり、溝幅が半値幅で、0.18〜0.36μmであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光記録媒体。
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