JP4103368B2 - 金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルムの巻取式の蒸着方法を用いて、蒸着金属を溶融蒸発させ、その途中で酸素を導入して金属酸化物膜を得る金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置に関する。特に薄ものフィルムに対して厚い金属酸化物膜を設けることができる金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置に関する。さらに金属を十分に酸化させ金属酸化物膜を得る金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置に関する。さらに本発明によって得られるこの金属酸化物膜つきフィルムは、その絶縁性や透明性が求められる用途で用いられる。
【0002】
本発明は、また、2〜6μm厚さといった薄ものフィルムの強度を補強する金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置に関する。さらに、磁気記録媒体用フィルムに対して強度を補強する金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置に関する。特にデジタル記録式の磁気記録媒体用フィルムとして好適な金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置に関する。さらに、DVCシステムのVTR等のヘリカルスキャン方式で画像データ等の大量のデータがデジタル記録される磁気記録媒体に好適な磁気記録媒体用支持体を得る金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置に関する。さらに強磁性体を有する面の反対側に金属酸化物膜を付与する金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
従来、金属酸化物膜つきフィルムとしてガスバリア性の優れた包装用フィルムの分野で酸化アルミや酸化ケイ素の膜つきフィルムが提案されている。この分野での酸化アルミ膜や酸化ケイ素膜は直接酸化アルミや酸化ケイ素のセラミックスを加熱蒸発させ薄膜化する方法や、酸化アルミの場合では、その成膜手法として金属アルミを溶融し、その途中で酸素を導入して酸化膜とする方法がある。こうした金属酸化物膜つき包装用フィルムでは通常5〜30nm程度の金属酸化物膜をプラスチックフィルムに成膜する方法が提示されている。ガスバリア性を狙うのであれば膜厚としては、5〜30nm程度で十分な機能が発揮できる。
【0004】
また、磁気記録材料に使用する強磁性体のCoNi、Feを主成分とする材料の金属酸化物を得る方法では、磁気特性を良好にするために膜厚方向に部分的に酸化させたり、半金属酸化物を得る方法が特開昭62−275316号公報などに開示されているが、この分野では金属を完全に酸化させ、絶縁性や透明性の膜を得る目的では用いられていない。
【0005】
従来の酸化アルミを得る方法として、特開昭63−222849号公報に、蒸発源と冷却キャンの間に酸化ノズルがあり、蒸発源の上流側と下流側の両側から酸素導入して金属酸化物を得る方法が開示されている。この方法で2〜6μmのフィルムに50nmを超える金属酸化物膜を形成しようとすと、金属蒸気による非常に大きな熱負荷と酸化における反応熱によって、フィルムが熱負けし破れを発生させたり、ミシン目のような熱負けシワを発生させたりした。実際に、この従来例に記載されている方法をそのまま工夫なしで高周波誘導加熱法でアルミを溶融させ、途中で酸素導入して酸化アルミ膜を60nm程度得ようとしたところ、急激な熱負荷でフィルムが破断してしまい金属酸化物膜つきフィルムを得ることができなかった。
【0006】
また、酸化ノズルの特開昭62−275316号公報に、酸化ノズルの位置が規定されているものがあるが、この例の場合は、蒸発源の鉛直部分の蒸発蒸気ではなく、斜入射部分の蒸発蒸気を利用した例であり、蒸発蒸気がもたらす熱負荷や蒸発源材料からの輻射熱負荷が比較的小さい。にもかかわらずこの規定通りの位置で酸素を導入すると、酸素導入位置がフィルムに近すぎて急激な酸化反応熱の影響でフィルムが熱負けした。また、この従来例の場合は、金属を完全に酸化させ、絶縁性や透明性の膜を得るのではなく、磁気特性を良好にするために膜厚方向にCo−Ni系合金の強磁性体金属を部分的に酸化させたり、半金属酸化物を得る方法として用いられている。従って、十分に酸化させる条件としての酸化ノズルの位置を特定するものではない。
【0007】
また、特開平5−339718号公報に、酸化ノズルの形状に関する開示がなされているが、この形状で吹き出すと、真空中に導入される酸素の拡散状態が十分でなく、ある程度の粘性を持ったまま吹き出す酸素に対して急激な金属蒸気との反応が起こり、十分な酸化を得ようとするまで酸素導入量を増やすとフィルムが熱負けした。
【0008】
さらに、特開平6−17238号公報に、冷却キャンと蒸発源の間のマスクを冷却する機構が示されているが、ノズルの変形を防止するものではなく蒸着効率を上げる目的で採用されている例が開示されている。
【0009】
いずれにしても、薄ものフィルム上に、金属を蒸発源として途中で酸化させうるプロセスによって50〜500nmの厚みの金属酸化物膜を形成しようとするとフィルムが熱負けしてしまい金属酸化物膜つきフィルムを製造することができなかった。また、ある程度可能であったとしても十分かつ均一な酸化は得られなかった。
【0010】
また、磁気記録媒体に関しては、以下に説明する状況があった。
【0011】
1995年に実用化された民生用デジタルビデオテープは、厚さ6〜7μmのポリエステルベースフィルム上にCoの金属磁性薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングしてなり、DVミニカセットテープを使用したカメラ一体型ビデオの場合には基本仕様(SD仕様)で1時間の録画時間をもつ。
【0012】
このデジタルビデオカセット(DVC)は、家庭用で世界で初のデジタルビデオカセットであり、
a.小型ボディながら、膨大な情報が記録できる、
b.信号が劣化しないから、何年たっても画質・音質が劣化しない、
c.雑音の妨害を受けないから高画質・高音質が楽しめる、
d.ダビングを繰り返しても映像が劣化しない、
等のメリットを持ち、市場の評価は高い。
【0013】
また1998年にはSD仕様で1時間20分の録画時間をもつDVミニカセットテープ(DVC−LPテープ)が実用化され、そのベースフィルムには厚さ4〜5μmのポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルム、あるいは芳香族ポリアミドフィルムが用いられていて、このテープも長時間の録画時間を持ち、市場の評価は高い。
【0014】
これらベースフィルムには、粒径10〜300nmの微細粒子を含有し、該微細粒子により高さ5〜90nmの微細表面突起が形成されたポリエステルフィルムと、該フィルムの少なくとも片面に密着された厚さ50nm以下の有極性高分子を主体とする不連続被膜とからなり、該微細表面突起の高さが該不連続被膜の高さよりも高いポリエステルフィルム(例えば特公平6−51401号公報)、ヤング率が長手方向で600kg/mm2 以上で、幅方向のヤング率が長手方向のヤング率以上である厚み7μm以下のポリエチレン−2、6−ナフタレートフィルム(例えば特開平5−185507号公報)、デジタルデータストレージ(DDS−2,3,4)テープ用の芳香族ポリアミドフィルム(例えば特開平10−162349、特開平10−114038号公報等)が使用されている。
【0015】
これらDVCテープは非常に好評のため、生産量を増大させる要求がますます大きくなってきていて、DVCテープの生産性を上げるためにベースフィルムロールの巻き長さを長尺化して長さ15000m以上(従来10000m以下)とし、真空蒸着工程、1バッチあたりの生産量を上げることが検討されている。
【0016】
厚さ6〜7μmのポリエチレンテレフタレートフィルムでは、長さ15000m以上のベースフィルムロールを安定に大量に製造することが可能であるが、厚さ4〜5μmのポリエチレン−2、6−ナフタレートフィルムでは製造時にフィルムが破断し易い故に困難である。また芳香族ポリアミドフィルムは15000m以上の製品に限らず、現在市販されている量が従来のポリエステルフィルムと比べて格段に少なく、DVC−LPテープの量的拡大には制約が大きい。
【0017】
これら量的拡大の制約を解決するものとして、特開平11−48434号公報において、粒子を有するフィラー面と、粒子と有機化合物を含有する被膜を有するマット面を持ち、厚さ2〜5.5μmの、長手方向のヤング率が6000MPa以下、幅方向のヤング率が8000MPa以上のポリエステル系フィルムを用い、このフィルムの両面に、金属、半金属及び合金並びにこれらの酸化物及び複合物から選ばれた金属材料からなる強化膜を形成し、これを磁気記録媒体用支持体とすること、さらに、この支持体のマット面側に強磁性金属薄膜を形成することにより磁気記録媒体とすることを提案している。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、以下に述べる本発明に到達した。薄ものフィルムであっても、50〜500nmという厚みの金属酸化物膜をフィルムに形成することができ、かつその金属酸化物膜は十分に酸化され絶縁性や透明性などの機能をもつことができる金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置を提供することにある。また、デジタルビデオカセット(DVC)用フィルムとして実用化されたデジタル記録媒体用支持体では、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、6−ナフタレートの生ベースフィルムでは実現しなかった剛性を、薄い厚さのフィルムで得ることができフィルムの巻き数増加が可能となり、さらにヘッドタッチ性の良い、走行不良や大幅な出力低下のない磁気記録用フィルムに好適な金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置を提供することにある。
【0019】
また、磁気記録媒体に関しては、特開平11−48434号公報に開示されているDVC−LPテープでは、画質および走行耐久性にばらつきが生じ易く、工業的製品としては必ずしも満足でないことが明らかになってきた。すなわち、DVC−LPテープの画質が不良、すなわちドロップアウト(DO)が多い場合や、DVC−LPテープを繰り返し走行させるとテープが長手方向に伸びて支持体上の磁性層の剥離が部分的に起こりドロップアウトの発生が多くなる場合があることが判ってきた。
【0020】
そこで本発明の目的は、支持体として、生産性の良いポリエステルフィルムを用いた磁気記録媒体であって、DOが少なく画質が良く、繰り返し走行させた後でも走行耐久性が良好でDOの発生が少なく、DVC−LPテープ等のヘリカルスキャン方式によるデジタル記録用に好適な磁気記録媒体を製造することができる磁気記録媒体用支持体として用いると好適な金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法および製造装置は、上記課題点を解決するため下記の方法、構成、装置からなる。
【0022】
(1)金属を溶融させた蒸発源の上方に冷却キャンを配置させ、巻出手段から被蒸着フィルムを上記冷却キャンに沿わせて搬送させ蒸発蒸気にさらし金属酸化物を形成した後、巻取手段にて巻き取る薄膜形成方式であって、前記蒸発源の湯面と被蒸着フィルムとの最短距離hに対して、該湯面から0.6〜0.9×hの高さで、該湯面の鉛直部を含みかつ該湯面部の大きさの1.5倍以上の開口部から金属蒸気を通過させ、該開口部と冷却キャンの間から酸素を導入し、前記酸素の導入を、被蒸着フィルムの幅方向に設けられた複数の酸素吹出し用穴部から導入することを特徴とする金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0023】
(2)前記開口部が仕切板によって形成されているとともに、該仕切板を50℃以下の冷媒によって冷却することを特徴とする前記(1)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0025】
(3)前記酸素の導入は、前記開口部に向かう水平方向の位置から冷却キャンに向かう鉛直方向の位置までの範囲に導入することを特徴とする前記(1)または(2)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0026】
(4)前記酸素の導入は、前記穴部と冷却キャンの頂点の最短距離を結ぶ直線を中心として±30度の範囲に向かって導入することを特徴とする前記(1)から(3)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0027】
(5)前記(1)、(3)、(4)のいずれかに記載の穴部は、0.1〜1.5mmの径であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0028】
(6)前記酸素の導入は、フィルム搬送の巻出側および/または巻取側から導入し、それぞれを独立して導入圧力と流量を調整することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0029】
(7)前記(6)に記載の巻出側の導入量を巻取側の導入量よりも大きくすることを特徴とする前記(6)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0030】
(8)前記酸素の導入は、蒸発源の金属の溶融状態が安定した後に導入を始め、徐々に酸素導入量を増やすことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0031】
(9)前記(8)に記載の酸素導入量の上昇速度は(10ml/分)/秒を超えないように制御することを特徴とする前記(8)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0032】
(10)前記(8)に記載の酸素の導入は、巻出側の導入を巻取側よりも先に行うことを特徴とする前記(8)または(9)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0033】
(11)前記酸素導入量は、蒸着機本体と真空ポンプの間に取り付けられた真空計により監視し、圧力が上昇し始める導入量まで導入することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0034】
(12)前記酸素導入後の圧力と、導入前の圧力の差が3×10-2Pa以下であるように酸素導入量を調整することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0035】
(13)前記金属酸化物膜の厚みを50〜500nmとすることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0036】
(14)前記金属酸化物膜の表面抵抗値が107Ω/sq以上であることを特徴とする前記(1)〜(13)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0037】
(15)前記金属酸化物つきフィルムと未蒸着フィルムとの全光線透過率の差を5%以内とすることを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0038】
(16)前記金属酸化物つきフィルムの透過率を測定し、該透過率に基づいて、該透過率が実質的に一定になるように前記蒸発源のエネルギーおよび/または酸素導入量を調整制御することを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0039】
(17)蒸発させる金属がアルミおよび/または銅を主体とする材料であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0040】
(18)前記被蒸着フィルムの厚みが2〜6μmであることを特徴とする前記(1)〜(17)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0041】
(19)前記金属酸化物膜つきフィルムの長手方向、および幅方向のヤング率がそれぞれ5500MPa以上、および7500MPa以上であることを特徴とする前記(1)〜(18)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0042】
(20)前記被蒸着フィルムの片側の表面AのRa値が1〜5nmである磁気記録媒体用フィルムであって、該フィルムの表面B(裏面)に強度補強膜を形成することを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0043】
(21)前記被蒸着フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエステルフィルム、もしくはポリアミドフィルムからなることを特徴とする前記(1)〜(20)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0044】
(22)前記(20)に記載の表面Aに強磁性体薄膜を設けることを特徴とする前記(20)または(21)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0045】
(23)金属酸化物フィルムつきフィルムはデジタル記録方式の磁気記録媒体用に用いられることを特徴とする前記(1)〜(22)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
【0046】
(24)蒸着機内を減圧する手段と金属を加熱させ蒸発させる手段を有し、蒸発源の上方に冷却キャンを配置させ、巻出手段からフィルムを該冷却キャンに沿わせて搬送させ蒸発蒸気にさらし金属酸化物を形成した後、巻取手段で巻き取る金属酸化物膜つきフィルムの製造装置であって、前記蒸発面の湯面と被蒸着フィルムとの最短距離hに対して、該湯面から0.6〜0.9×hの高さに開口部を形成する仕切部材を有し、該開口部は、該湯面部の鉛直を含みかつ該湯面部の大きさの1.5倍以上をなす構成とし、該仕切部材と冷却キャン部材との間に酸素を導入する手段を有し、前記酸素を導入する手段が、被蒸着フィルムの幅方向に複数の穴部を有する酸素導入ノズルであることを特徴とする金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0047】
(25)前記開口部を形成するための仕切部材は、冷却配管が接合され、該冷却配管に冷媒を流す手段を具備することを特徴とする(24)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0048】
(26)(24)に記載の酸素導入ノズルを前記仕切部材と冷却キャン部材との間に配置し、該酸素導入ノズルへ実質的に一定量の酸素を導入する手段を具備することを特徴とする前記(24)または(25)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0049】
(27)前記酸素導入ノズルの穴部は、前記蒸発蒸気開口部の中心に向かう水平面から冷却キャンに向かう鉛直面までの範囲に開口するように設置されることを特徴とする前記(24)から(26)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0050】
(28)前記酸素導入ノズルの穴部は、該穴部と冷却キャンの頂点の最短距離を結ぶ直線を中心として±30度の範囲に向かう範囲に開口するように設置されることを特徴とする前記(24)から(27)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0051】
(29)前記(24)、(26)、(27)、(28)のいずれかにに記載の穴部は、0.1〜1.5mmの直径であることを特徴とする前記(24)〜(28)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0052】
(30)前記酸素導入ノズルは、フィルム搬送の巻出側および/または巻取側に配置し、それぞれの導入圧力と流量を独立して制御可能な手段を有することを特徴とする前記(26)〜(29)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0053】
(31)蒸着機内の圧力を監視する真空計を、蒸着機本体と真空ポンプの間に配置させることを特徴とする前記(24)〜(30)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0054】
(32)蒸発蒸気にさらされる部位と巻取手段の間に被蒸着フィルムの幅方向に複数の光学モニタを配置し、該光学モニタにより透過率を監視する手段を有することを特徴とする前記(24)〜(31)のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0055】
(33)光学モニタの信号を受け、透過率が実質的に一定になるように酸素導入量または蒸発源のエネルギーを調整制御する手段を有することを特徴とする前記(32)に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
【0056】
【発明の実施の形態】
本発明は、金属を溶融させた蒸発源の上方に冷却キャンを配置させ、巻出手段から被蒸着フィルムを冷却キャンに沿わせて搬送させ蒸発蒸気にさらし金属酸化物を形成した後、巻取手段にて巻き取る薄膜形成方式であって、蒸発源の湯面と被蒸着フィルムとの最短距離hに対して、該湯面から0.6〜0.9×hの高さで、該湯面の鉛直部を含みかつ該湯面部の大きさの1.5倍以上の開口部から金属蒸気を通過させ、該開口部と冷却キャンの間から、酸素を導入し、前記酸素の導入を、被蒸着フィルムの幅方向に設けられた複数の酸素吹出し用穴部から導入する金属酸化物膜つきフィルムの製造方法である。
【0057】
本発明の特徴を表す装置の一例を示す図を用いてその製造方法の説明をする。図2に本発明を実施する真空蒸着機の一例の縦断面図を示し、特に本発明の特徴を表す一例を図1に示す。
【0058】
図2において、真空室はフィルムの巻取巻出しを行う上室11と蒸着を行う下室12に略別れており、それぞれ上室用ポンプ9および下室用ポンプ8によって減圧される。減圧ポンプはしばしば粗引き用ポンプと高真空ポンプを併用して高真空に到達させる。通常の真空蒸着では下室の方が上室よりも一桁圧力を低く設定される。アルミ蒸着の場合であると、上室が10-1〜10-2Pa台、下室が10-3〜10-4Pa台に設定される。巻出手段1にロール状のフィルム3aをセットし、ガイドロール5a、5b、5c、5dにフィルム3bを沿わせて、さらに冷却キャン4にフィルム3cを沿わせて、蒸発源7にフィルムを対向させその後、ガイドロール6a、6b、6c、6dにフィルム3dを沿わせて、巻取手段2によってフィルムが巻き取られ、ロール状フィルム3eになるようにフィルムがセットされる。ガイド手段5a〜5d、6a〜6dは、フィルム3に適当に張力を与えるようになっている。こうしてフィルムをセットした後、蒸発源7に金属材料をセットした後、減圧し、蒸発源7を加熱し蒸発させ、ある速度でフィルムを搬送させ蒸着フィルムを得るシステムである。
【0059】
金属の溶融方法としては、減圧下で高周波誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム法、レーザアブレーション法などが挙げられる。金属酸化物膜の厚膜化のためには、高周波誘導加熱法、電子ビーム法が好ましく用いられ、高融点材料、例えば1500℃以上の融点材料であれば電子ビーム法が好ましく用いられる。また、冷却キャン4はエチレングリコールなどの冷媒を利用して、しばしば−20℃程度に冷却される。さらに詳しくは、図1にその配置を示す。
【0060】
図1は金属蒸気が飛翔している部位を拡大し、本発発明の配置等の位置関係をわかりやすく説明するための縦断面図である。るつぼ22の中に金属材料21を入れ図示しない加熱方法で加熱して金属材料21を溶融状態とする。例えば高周波誘導加熱法で金属を加熱すると金属が徐々に発光し始め、さらに加熱すると溶融状態となり発光状況も安定する。さらに加熱すると溶融した金属の湯面28がバタツキ始める。この湯面28のバタツキが始まるところが安定して蒸発させるポイントでもある。こうして金属を溶融蒸発させる。
【0061】
この溶融した金属の湯面28から冷却キャン4に沿わせたフィルム3cの最短距離(鉛直)をhとすると、0.6〜0.9×hの位置に仕切板24a、24bを配置させ、この仕切板24a、24bと冷却キャン4の間に酸素ノズル26a、26bを配置させる。この位置に仕切板24a、24bを配置させることで、金属の溶融による熱負荷を被蒸着フィルムに必要以上に与えることなく、下記に示す酸素導入領域との区別ができて効率良く金属蒸気30に酸素を反応させることができる。仕切板24a、24bの位置が湯面28の位置から0.9×hの位置よりも大きいと、高エネルギーをもった金属蒸気に金属酸化物にするための酸素を送り込む領域が小さすぎて、十分に酸化させようとすると反応熱が直接フィルムに及びフィルムが熱負けしてシワが発生する。十分な酸化が必要でなければ適宜酸素導入量を小さくすれば良く、さらに目標の膜厚が50nm以下と薄ければ蒸発源の加熱の電力を小さく設定でき、これは、蒸発蒸気のもつエネルギーを小さくするという意味であるが、大きな熱負荷なく酸化蒸着が可能である。しかしながら、大蒸発量で厚膜化した金属酸化物膜を得るために十分な酸化を行おうとする場合は、仕切板24a、24bの位置が湯面28から0.9×hの位置よりも大きいと急激な反応熱によりフィルムがダメージを受けるということである。また、仕切板24a、24bの位置が湯面28からの0.6×hの位置よりも小さいと、酸素雰囲気の領域が大きすぎて、金属蒸気の蒸発するのに酸素分子が障害となり十分に金属原子等がフィルムに到達しない。これは、酸素分圧が大きくなり平均自由工程が小さくなってしまう問題点である。さらにこれ以上仕切板24a、24bが蒸発源21に近いと蒸発源21の熱負荷によって冷却したとしても変形が起こりやすく、また急激に冷やされた金属蒸気が凝結して蒸発効率も悪い。従って仕切板の高さ位置は湯面28の位置から0.6〜0.9×hの位置とするものであり、さらに0.7〜0.8×hの位置が好ましい。
【0062】
有効な蒸発蒸気部分のみを使用するためさらなる仕切板23a、23bを配置して、図1に示すようにある程度酸素雰囲気で満たされる領域をつくっても良い。仕切板24a、24bは、高温蒸気による熱負荷により酸素ノズルを変形させないために、さらに自身の変形防止のために50℃以下の冷媒の配管25a、25bを仕切板24a、24bに溶接するなどして沿わせて冷却するのが好ましい。冷媒の温度が50℃超えるとフィルムへの熱負荷の足かせになるので好ましくない。しばしば冷却構造なしの酸素ノズルの例があるが、本発明者らの知見によると冷却機構なしの酸素ノズルは変形を伴い十分に均等な酸素吹き出しはできない。被蒸着フィルムが蒸発蒸気30にさらされる領域を決定する仕切板の開口部はるつぼ22内の溶融金属21の湯面の大きさに対して、湯面28の鉛直を含む1.5倍の大きさの開口をフィルム搬送方向に持つのが好ましい。すなわち、フィルム搬送方向の湯面の大きさをWとすると、仕切板24a、24bの間で開口している開口部分の大きさW1はW1>1.5×Wとすると良い。こうすることで溶融金属の蒸発蒸気のうち十分に運動エネルギーの大きな蒸発粒子密度が密な蒸発原子等を含む領域の蒸着になる。
【0063】
磁気記録フィルムなどの例では、積極的に斜入射析出させるようさせるように敢えて溶融金属21の湯面22の鉛直部分を避け、析出状態による膜品質、すなわち磁気記録特性を保持する方法が開示されているが、この場合は、蒸発した蒸気のうち密に蒸発している部分を使用しないので非常に効率が悪く、本発明の例では、非常に厚い膜厚を一度に得られる手法であるため、このような例は用いない。すなわち、もっとも効率よく運動エネルギーも大きい蒸発分子等を利用する方法である。湯面の鉛直部が最も活発な粒子を含みさらにその湯面の1.5倍以上の領域を含ませることで効率よく蒸発蒸気を利用できる。溶融金属の湯面の大きさの1.5倍以下であると非常に効率が悪く、また、仕切板に蒸着された付着物が落下して溶融金属の中に入ってしまうトラブルも発生した。
【0064】
これを積極的に利用した方法は、特開平6−17238号公報に開示があるが、本発明で用いるのは、材料への不純物のコンタミという意味で好ましくない。酸素導入の向きは、開口部に向かう水平、例えば図1でいうと酸素ノズル26aに対して点線31から冷却キャン4に向かう鉛直、例えば図1でいうと酸素ノズル26aに対して点線32までの範囲に導入し、さらに好ましくは、例えば酸素ノズル26aの酸素吹出し用の穴部29aであれば冷却キャン4の頂点34との最短距離を結ぶ直線33を中心として±30度の範囲に向かって導入するのが好ましい。穴部29a、29bを直接フィルムに向かって導入すると、この場合、やはり酸素吹出し用の穴部29a、29bがキャン直下にある場合と同等になり急激な酸化反応熱がフィルムに伝わり好ましくない。従って、仕切板24a、24bの位置が溶融金属の湯面28から0.6×hの高さに近いほど穴部29a、29bの方向は鉛直方向に向けても良いが、開口部方向に向けるのは好ましくなく、仕切板24a、24bの位置が溶融金属の湯面28から0.9×hの高さに近いほど穴部29a、29bの方向は開口部の方向に向けるのは好ましいが、鉛直方向に向けるのは好ましくないという関係になる。
【0065】
また酸素導入は、図3に示すように被蒸着フィルムの幅方向に複数の穴部43から導入し幅方向に均一に均等に酸素ノズル42に導入するのが好ましく、例えば、1mの幅のフィルムに幅方向に均等に酸化膜を形成させるためにはフィルム幅方向に1mより大きい幅で、例えば10mmおきに穴43を開け、配置することが好ましく用いられる。さらに43の穴径を0.1〜1.5mmとすることで十分に拡散した酸素分子等を導入することができる。0.1mmよりも小さいと加工性が悪く、蒸着物質の回り込み付着によって穴部がふさがれてしまうことがしばしば起こり、1.5mmを超えると、導入した酸素が拡散されないまま、すなわち粘性流の状態で真空中に導入されるので不均一な酸化や急激な酸化反応が起こり熱負荷が大きくなり、ひいてはフィルムの熱負けを引き起こすので好ましくない。
【0066】
また、図2に示すように、酸素導入は、フィルム搬送の巻出側26aおよび/または巻取側26bから導入し、それぞれを独立して導入圧力と流量を調整するのが好ましい。蒸着機13の装置外の酸素ガスボンベ14からレギュレータ16を介して圧力を調整し、配管15を17aと17bの2つの配管に分岐した後レギュレータ18a、18bで個別に圧力を調整し、その後マスフローコントローラ19a、19bを通って流量を調整され、20a、20bの配管を通って導入されるしくみになっている。
【0067】
配管が片側だけであると、被蒸着フィルムの搬送方向で酸化のムラが発生し、すなわち、フィルムの厚み方向で酸化度合いを測定すると厚み方向で酸化ムラが発現したりする。これは、たとえばオージェ電子分光法で深さ方向に金属と酸素、あるいは金属酸化物の強度特性を分析する、いわゆるデプスプロファイルをとると、深さ方向にそのムラが分析できる。
【0068】
また、巻出側の酸素導入量は巻取側の導入量よりも大きくするのが好ましい。これは、被フィルムの搬送により酸化途中の酸化膜が金属蒸気の密度の濃い部分に持ち込まれるため効率よく酸化が促進される。これは、巻出し側の酸素導入量と巻取側の酸素導入量を例えば7:3の比率で、すなわち例として巻出側の酸素導入量をマスフローコントローラで2800ml/分、巻取側を1200ml/分の導入し金属酸化物膜つきフィルムを得た場合、金属酸化物膜は透明で十分に酸化された膜が形成できたが、逆に3:7の比率で酸素導入しようと、巻出側を1200ml/分の酸素導入にした後、巻取側を2000ml/分の酸素導入をした時点でフィルムへの熱負荷が大きくなり熱負けを生じたため、この時点で酸素導入量の増加を止め、この条件で金属酸化物膜を得た。
【0069】
この場合のオージェ分光法での分析をすれば明かにその違いが判る。すなわち、金属元素の強度が観察される。この現象は、例えば金属としてアルミを用いた場合、酸化アルミの酸化度合いによってその膜の透明性の程度が異なるが、すなわち酸化が十分であるほど透明な酸化アルミ膜が形成されるが、透過率の相違によっても酸化度合いの違いが判断可能である。
【0070】
さらに、酸素導入は、蒸発源の金属の溶融状態が安定した後に導入を始め、徐々に酸素導入量を増やすのが好ましい。ここで蒸発源の金属の溶融状態が安定したとは以下の内容をいう。すなわち、金属をるつぼに入れて加熱していくとはじめは金属が徐々に発光をはじめ赤らんでくる。その後、熱容量に応じてエネルギーが熱エネルギーに変換されていき融点付近で金属が徐々に液体化してくる。その後減圧下に置かれているのでその蒸気圧での沸点を迎えると気体になるが、この溶融状態をつくってからその雰囲気での沸点までの間の温度でできるだけ前記沸点付近まで加熱をし突沸しない程度に湯面がゆらゆらと揺れる程度まで加熱した状態を安定状態という。また、徐々に酸素導入量を増やす理由は、目標の酸素導入量までいっきに上昇させると急激な酸化反応によってフィルムが熱負けするからである。被蒸着フィルムの搬送速度を十分速くして熱負荷を少なくする方法もあるが、目標として得られる条件でのフィルム搬送速度の約5倍の速度で搬送させてもフィルムの熱負けにより破断したりした。従って導入量を徐々に増大させるのが好ましく、種々検討した結果、酸素導入量の上昇速度は(10ml/分)/秒を超えないように制御するのが好ましい。(10ml/分)/秒を超えると熱負荷が大きくフィルムへの熱ダメージが大きい。
【0071】
酸素導入する順としては、巻出側の導入を巻取側よりも先に行うのが好ましい。巻取側から酸素導入すると、導入した瞬間に急激な酸化反応による熱負荷がフィルムにかかりフィルムが熱負けし易く好ましくない。酸素導入量の最適点の管理は、蒸着機本体と真空ポンプの間に取り付けられた真空計により監視し、圧力が上昇し始める導入量まで導入するのが好ましい。酸素導入量を徐々に導入すると真空度は金属との反応に費やされるので導入量の増やしかたに応じて、その増大量が大きい場合には圧力が一旦上昇し、その後導入した酸素量が反応に寄与すると再びまたもとの圧力に復帰する。増大量が小さいと圧力には変化が少ない。飛翔している金属蒸気に十分に酸化される量まで到達するともとの真空圧力(到達圧力)を越えはじめる。このポイントが必要十分な金属蒸気の反応する圧力とみなすことができる。これは、真空ポンプとの能力バランスもあるが、ほぼ適切な点とみなすことができる。真空ポンプ8と蒸着機13との間に取り付けられた真空計10によって真空圧力を監視し、酸素導入後の圧力と、導入前の圧力の差が3×10-2Pa以下であるように酸素導入量を調整すると十分な金属酸化物膜を維持できる。
【0072】
本発明によって得られる金属酸化物膜の厚みは、包装用蒸着等で用いられている50nm以下の厚みよりももっと厚い膜厚の場合に、すなわち50〜500nmとする場合のその効果が発揮される。すなわち50nm以下の膜厚、例えば特開昭63−222849号公報に記載の例の場合は、熱負荷に何とか耐えられるが、この膜厚を超えるとフィルムへの熱負荷という点非常に難しくなる。また、この現象は厚みが増すほど熱負荷が大きくなる。我々の実績ではこの方式では500nm以上になるとフィルムが薄い場合、特に4μmを下回るようなフィルムの場合は熱負けに至ってしまう。
【0073】
また、金属酸化物膜の表面抵抗値が107 Ω/sq以上とする場合に好適に利用できる。107 未満の場合であると十分な金属酸化物膜とならず、ある意味で半酸化状態であり、こうした膜の場合は酸化反応熱の負荷は小さい。従って、本発明の効果がもっとも発揮されるのは107 以上の場合であり好適に用いられる。
【0074】
また、金属酸化物膜つきフィルムと未蒸着フィルムとの全光線透過率の差が5%以内とするとする場合に好適に用いられる。金属蒸気の酸化が不十分であると全光線透過率が低下する。酸化が十分であると透明性があがる。透明性を維持して、さらに絶縁性も維持して厚い膜すなわち50nm〜500nmの膜を成膜する場合において特に好適な方法となる。さらに金属酸化物つきフィルムの透過率を測定し、透過率に基づいて、透過率が実質的に一定になるように蒸発源のエネルギーおよび/または酸素導入量を調整制御することが好ましい。インラインで透過率を測定しそれを維持することで透明性の品質が維持でき好ましい。またその調整は、蒸発源への投入エネルギー(電力)で調整する方法もあるが、酸素導入量を調整する方が簡便で行いやすい。ただし、膜厚の品質が重要な場合は蒸発源への投入電力と酸素導入量のバランスで制御することが好ましい。
【0075】
透過率とは、JISで規定されているC光やD65光源に対する透過率やある波長の透過率をいうが、フィルムの全光線透過率は、C光あるいはD65光源に対する透過率を言い、例えばスガ試験機株式会社製の”ヘーズコンピュータHZ−1”装置にて測定可能な全光線透過率で表現されるものとする。また、インラインでモニタする透過率は、この全光線透過率であっても、ある特定の波長の光の透過率であっても良いが、測定精度や測定機器の分解能の関係で光強度の強い500〜600nmの特定の波長の光の透過率を用いて代用しても良い。特定波長の光の受光を行う場合は、干渉フィルター等を用いてある特定波長の光を通過させてそれを受光することで実現できる。
【0076】
ここでの光学モニタ(透過率測定器)51はセンサーとしてフォトマルやシリコンフォトダイオードを利用したものが好適に用いられ、具体的には、ULVAC製”FADM−2”などが市販されており用いられる。この製品の場合は、光源として、ハロゲンランプを用い、受光部波長としては、565±5nmのバンドパスフィルターを用いて565nmの光を受光したものを利用した方式である。
【0077】
本発明で用いられる金属21は、目的の特性が得られれば特に問わないが、アルミおよび/または銅を主体とする材料が、融点も低温であり、安価な材料であるため好適に用いられる。また酸化アルミ膜、酸化銅膜はその特性上、ガスバリア性、剛性、熱膨張特性などが良好であり好ましく用いられる。その他の材料としては、Zn、Sn、Ni、Ag、Co、Fe、Mn、Mg、Inなどの金属も挙げられる。これらの材料の中には酸化物が半導体の性能となるSn、Mg、Inなどの材料、またはこれらの合金材料もあるが、導電性が求められる用途では、これらの材料が選択される。
【0078】
被蒸着フィルムの厚みが2〜6μmである場合に好適に用いられる。フィルム厚みが厚い場合はその熱容量から熱負荷が多少あったとしても熱負けなくできる場合があるが、2〜6μmという薄いフィルムの場合は熱負荷により破れが起きやすく、破れが発生すると破断も伴い、真空容器を放圧する必要がでてきて非常に復旧に時間を要するだけでなく生産性も悪くなる。また、2〜6μmと薄いフィルムであっても金属酸化物膜の厚みを50〜500nmとすることで結果としてフィルムの長手方向、幅方向のヤング率がそれぞれ5500MPa以上、7500MPa以上である金属酸化物膜つきフィルムが生産できる。
【0079】
さらに、被蒸着フィルムの片側の表面Aの表面粗さRa値が1〜5nmである磁気記録媒体用フィルムであって、フィルムの表面B(裏面)に強度補強膜として形成することで、2〜6μmといった薄いフィルムであっても磁気記録用フィルムとして使用可能であり、同じカセットでも巻き数を増大させることができメモリを増大させることが可能となり大変好ましい。被蒸着フィルムが、ポリエステルであり、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートであると、またはポリアミドフィルムであると現在使用されているDVCフィルムとして利用されているので製品化に結びつけることができ大変好ましい。表面Aに強磁性体薄膜を設けることで磁気記録用フィルムとしての性能が発揮できる。金属酸化物膜つきフィルムはデジタル記録方式の磁気記録媒体用として好適に用いられる。
【0080】
本発明におけるポリエステルは分子配向により高強度フィルムとなり得るポリエステルであればよいが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。すなわち、その構成成分の80%以上がエチレンテレフタレート、エチレンナフタレートであるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートである。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが挙げられる。
【0081】
さらに、上記のポリエステルには、他に、ポリエステルと非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレングリコールなどの少なくとも一つを5重量%を越えない程度に混合してもよい。
【0082】
本発明の支持体の片側の表面Aの表面粗さRa値は、表面A上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜が記録・再生時にビデオヘッドにより磨耗することを極力少なくし、DVCテープの出力特性を良好に保つために、1〜5nm、好ましくは2〜4nmである。このRa値が1nm未満であると、表面A上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層が平滑すぎて、デジタルビデオテープレコーダーで記録、再生する時にビデオヘッドによりビデオテープの強磁性金属薄膜が磨耗してしまう。SRa値が5nmを超えると、該強磁性金属薄膜層が粗面すぎて、DVCテープの出力特性が低下する。
【0083】
表面Aの表面粗さRa値を上記の水準とするためには、フィルム表面上に、平均粒径が5〜30nm好ましくは8〜30nmの微細粒子を、0.5〜12.0重量%好ましくは0.6〜10.0重量%含む有機化合物からなる被覆層を形成し、この被覆層の面を、表面Aとすることが望ましい。微細粒子としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球、有機化合物としてはポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン等の有極性高分子これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。
【0084】
次に本発明のフィルムの製造方法を例示する。
【0085】
本発明の支持体に用いるポリエステルフィルムは、A面側原料として含有粒子を可能な限り除いたポリエステルを用い、溶融、成形、二軸延伸、熱固定からなる通常のプラスチックフィルム製造工程によって、縦、横方向に90〜140℃でそれぞれ2.7〜5.5倍、3.5〜7.0倍延伸し、190〜220℃の温度で熱固定を行うという条件で、下記操作を行うことにより製造することができる。
【0086】
表面AのRa値を調整するために、一方向に延伸後の平滑なポリエステルフィルムのA面側に、平均粒径が5〜30nm好ましくは8〜25nmの微細粒子を0.5〜12.0重量%好ましくは0.6〜10.0重量%含む有機化合物からなる塗液を塗布して、表面A側に被覆層を形成させ、表面Aに微細表面突起を形成する。被覆層は連続皮膜形状、不連続皮膜形状のいずれであってもかまわない。被膜構成成分にその滑り性、耐久性向上のためにシリコーン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤を少量添加してもよい。
【0087】
DVCテープの磁性層の耐久性を更に増すことが望まれる時は、表面Aを形成するポリエステル層内に平均粒径が30〜90nm、好ましくは40〜80nmの微細粒子を1.0重量%以下、好ましくは0.8重量%以下、含ませることにより、表面A上に表面突起をもたせるのが好ましい。微細粒子としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球等が使用できるが、これらに限定されない。
【0088】
表面Aの表面粗さRa値は前記被覆層内、ポリエステル層内の微細粒子の種類、平均粒径、添加量を調整することにより調節することができる。
【0089】
なお、前記したA面側原料(A層用)と積極的により大きな微粒子を含有させた原料(B層用)を用い、共押出し技術によってA/B積層フィルムを溶融押出しし製膜してもよい。また、前記したA面側原料からなる単層フィルムの表面A側とは反対側の表面(B面側)に、滑剤を含む塗液を塗布しB面側を易滑処理した面としてもよい。B層内に含有させる微細粒子の種類、粒径、含有量の調整によりB面側のRa値を2〜50nmに調整するのが好ましい。滑剤を含む塗液中に微細粒子を含有させ、その微細粒子の種類、粒径、含有量を調整することによっても調整可能である。細細粒子としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球等が使用できるが、これらに限定されない。
【0090】
本発明によって得られる磁気記録媒体用支持体は、ポリエステルフィルムと、このフィルムの片側の表面Bに形成された強化膜すなわち本発明の金属酸化物膜と、さらに必要に応じてその反対側の表面Aに形成された被覆層とからなり、この支持体の厚さは2.0〜6.0μm、好ましくは2.0〜5.5μm、より好ましくは3.0〜5.0μmである。厚さが6.0μmを越えると本発明の支持体より作成されるDVミニカセットテープの録画時間が80分を下回り好ましくない。厚さが2.0μmを下回るとあまりにも支持体剛性が低下しすぎ、DVCテープとビデオテープレコーダー内の磁気ヘッドとの接触が弱くなりDVCテープの電磁変換特性、特に出力が低下する。
【0091】
支持体の長手方向、幅方向のヤング率は、それぞれ5500MPa以上、7500MPa以上であり、好ましくは、それぞれ6000〜20000MPa、8000〜24000MPaである。長手方向のヤング率が5500MPaを下回るとDVCテープを繰り返し再生すると伸びてしまい再生時のDOが増加してしまう。幅方向のヤング率が7500MPaを下回るとDVCテープの繰り返し再生によりDVCテープのエッジが磁気ヘッドにより変形して、わかめ状になり、再生時のDOが増加してしまう。支持体の長手方向、幅方向のヤング率をそれぞれ20000MPa、24000MPaを超えるほどに高くするには、使用するポリエステルフィルムのヤング率を長手方向11000MPa以上、幅方向15000MPa以上のように極めて高くしなければならず、そのためにはポリエステルフィルムの延伸倍率を非常に大きくしなければならず、ポリエステルフィルムの製膜時の破れが増加して工業的生産は実際上、極めて難しくなるので好ましくない。
【0092】
フィルムの表面Bに強化膜すなわち本発明の金属酸化物膜が形成されていることにより、支持体のヤング率や曲げ剛性が向上する。強化膜の厚さは、支持体の長手方向、幅方向のヤング率をそれぞれ5500MPa以上、7500MPa以上とすることができれば、特に限定はなく、強化膜材料の材質によって決めればよい。金属酸化物膜の厚みとしては50〜500nmの厚さが好ましく、50〜200nmの範囲がより有効である。50nmを下回ると強化の目的を達成しがたく、500nmを越えると強化膜がポリエステルフィルムより剥離しがちとなるので好ましくない。
【0093】
強化膜、すなわち本発明の金属酸化物膜を形成していない厚さ2〜6μmのポリエステルフィルムの支持体から作成されたDVCテープは、繰返し再生することによって伸びてしまい再生時のDOが増加することがあり、さらにDVCテープのエッジも磁気ヘッドにより変形して、わかめ状になり、再生時のDOが増加する。
【0094】
強化膜、すなわち本発明の金属酸化物膜はポリエステルフィルムの表面B上に設けると好ましい。強化膜をポリエステルフィルムの表面A上に設けると強化膜表面は面粗さが大となりがちであり、その上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層が粗面になりがちで、DVCテープの出力特性が低下しがちであり好ましくない。もちろん、結晶粒が微細化するような膜であればこの限りではない。
【0095】
本発明の支持体の強化膜形成側の表面での表面電気抵抗は107 Ω/sq以上が好ましい。この説明を以下に記す。磁気記録表面AへのCoの真空蒸着は、図4の例に示すような真空蒸着装置によって強磁性体の膜を形成している。
【0096】
図4のCoの真空蒸着機113は、上室111は図1とほぼ同じ機構になっており、下室112は磁気記録用の機構になっている。
【0097】
図4において、真空室はフィルムの巻取巻出しを行う上室111と蒸着を行う下室112に略別れており、それぞれ上室用ポンプ9および下室用ポンプ8によって減圧される。減圧ポンプはしばしば粗引き用ポンプと高真空ポンプを併用して高真空に到達させる。通常の真空蒸着では下室の方が上室よりも一桁圧力を低く設定される。例えば、上室が10-1〜10-2Pa台、下室が10-3〜10-5Pa台に設定される。巻出手段101にロール状のフィルム103aをセットし、ガイドロール105a、105b、105c、105dにフィルムを沿わせて、さらに冷却キャン104にフィルム3cを沿わせて、蒸発源7にフィルムを対向させその後、ガイドロール106a、106b、106c、106dにフィルムを沿わせて、巻取手段2によってフィルムが巻き取られ、ロール状フィルム103eになるようにフィルムがセットされる。ガイド手段105a〜105d、106a〜106dは、フィルム103に適当に張力を与えるようになっている。こうしてフィルムをセットした後、蒸発源107に金属材料として例えばCoをセットした後、減圧し、電子ビーム136を用いて蒸発源107を加熱し蒸発させ、ある速度でフィルムを搬送させ蒸着フィルムを得るシステムである。
【0098】
また、冷却キャン104はエチレングリコールなどの冷媒を利用して、しばしば−20℃程度に冷却される。
【0099】
また、磁気記録性良好な膜を形成させる関係で、防着板124a、124bを用いてマスクをし、蒸発源から蒸発粒子が斜入射析出するように蒸発部の開口を設けてある。さらに、Co金属表面を酸化させるために巻取側から酸素導入管126を用いて酸素を導入できるようになっている。
【0100】
強磁性体の蒸着では通常蒸発源として電子ビーム法が好適に用いられているが、これはCoなどの強磁性体の材料の融点が非常に高いことや蒸発源のコントロール性などの点から採用されている。支持体の強化膜すなわち本発明の金属酸化物膜の形成側の表面を冷却キャン表面上に沿わせながらなされる。このような電子ビーム法による蒸着では、蒸発させる材料電子ビームをあてることによりその反射電子、2次電子が発生し、この電子が被蒸着フィルム側に到達する。この電子によりフィルムが帯電し冷却キャンへのフィルムの密着を強化する働きがある。また、別の手段でフィルムを帯電させて冷却キャンとフィルムとの密着を強化して行ったりする。例えば電子ビームを被蒸着フィルムに直接あてマイナス帯電させたり、イオン銃などによりプラスのイオンを被蒸着フィルムにあてプラス帯電させたりして行なう。このようにフィルムの静電密着効果を利用してフィルムの冷却キャンへの密着力を強化し冷却効率を上げることにより、Coなどの高融点材料の蒸着に伴う熱負荷を低減させている。しかしながら、支持体の強化膜すなわち本発明の金属酸化物膜の形成側の表面での表面電気抵抗が107 Ω/sq未満であると、支持体表面と冷却キャンとの間に静電密着力が働かなくなり、支持体表面と冷却キャンとの密着力が下がり、Coの真空蒸着の際に、Coの融解によって発生する発光による輻射熱と蒸発蒸気のもつ運動エネルギー、潜熱が支持体に伝わり、フィルムに伝わった熱が冷却キャンに逃げることが困難となり、支持体を構成するポリエステルフィルムが融け易くなって、いわゆる熱負けが発生してCoの真空蒸着ができなくなるというトラブルが生じる。
【0101】
本発明の磁気記録媒体用支持体を用いて磁気記録媒体を作成するには、支持体の表面A(表面Aが被覆層からなる場合はその被覆層の表面)上に真空蒸着により強磁性金属薄膜層を形成するが、使用する金属は公知のものを使用でき、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。金属薄膜層の厚さは一般に100〜300nmである。この強磁性体薄膜層上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングにより形成し、さらにその上をパーフルオロエーテル系などの潤滑剤処理することにより作成することができる。
【0102】
本発明の磁気記録媒体では、支持体表面Bをそのまま磁気テープの走行面側の面としてもよいし、DVCビデオテープレコーダー内の各種ガイド、ピンとの走行において走行性、耐久性を確保するためにさらに表面B上に固体微粒子および結合剤からなり、必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することによりバックコート層を形成してもよい。バックコート層の厚さは0.5〜1.5μm程度である。微粒子としてはカーボンブラック、アルミナ等が、潤滑剤としてはシリコーン、フッ素化合物等が、結合材としてはポリウレタン、エポキシ樹脂等が用いられるが、これらに限定されない。本発明の磁気記録媒体用支持体は、DVC−LPテープ作成用の支持体として使用すると優れた結果を得ることができ好適である。またAITシステム等のデータストレージ用途の支持体として使用しても優れた結果を得ることができる。
【0103】
絶縁抵抗測定装置の概略図を図5に示す。KAWAGUCHI ELECTRIC WORKS TOKYO製”TERA OHM METER”のサンプル測定部およびその測定回路を示す。サンプル60を図のようにセットする。すなわち図中下側に測定したい面である金属酸化物膜62を、上側にベースフィルム61となるようにセットする。このように電極間に挟んで体積箱63に入れ測定する。測定回路は図中右側に示すが、測定部が抵抗65、絶縁抵抗計部が64となる。
【0104】
【実施例】
本実施例で用いた測定法を下記に示す。
【0105】
(1)Ra値
本発明における磁気記録媒体用支持体の表面Aの表面粗さRa値は、原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した。セイコーインスツルメント社製の走査型プローブ顕微鏡(SPI3800シリーズ)を用い、ダイナミックフォースモードでフィルムの表面を30μm角の範囲で原子間力顕微鏡計測走査を行い、得られる表面のプロファイル曲線よりJIS・B0601・Raに相当する算術平均粗さより求めた。面内方向の拡大倍率は1万〜5万倍、高さ方向の拡大倍率は100万倍程度とした。
【0106】
(2)ヤング率
本発明のフィルムの長手方向(MD)、幅方向(TD)のヤング率は、引張試験測定により得られる応力−ひずみ曲線におけるスタート点の立ち上がり勾配からASTM・D−882−67に準じて測定し、単位はMPaで表す。このときのサンプル幅、実効長さは10mm、100mmとし、引張速度は100mm/minとした。
【0107】
(3)全光線透過率
スガ試験機株式会社製の”ヘーズコンピュータHZ−1”装置にて、サンプルをセットして、全光線透過率を測定した。
【0108】
(3)本発明の金属酸化物膜の表面抵抗値
KAWAGUCHI ELECTRIC WORKS TOKYO製”TERA OHM METER”を用いて測定した。サンプル測定部およびその測定回路を図5に示す。測定電圧は10Vで測定した。
【0109】
(4)磁気テープ(DVCテープ)の特性評価
市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーのLPモードを用いて静かな室内で録画し、1分間の再生をして画面にあらわれたブロック状のモザイク個数(ドロップアウト(DO)個数)を数えることによって、DVCテープ特性を評価した。
DO個数は常温(25℃)でテープ製造後の初期特性を最初に調べた。次にテープの走行を100回くり返した後のDO個数を測定しDVCテープの走行耐久性を評価した。
【0110】
(5)金属酸化物膜の膜厚、組成の評価
オージェ電子分光法の深さ方向分析を行った。装置は、PERKIN ELMER社製”PH1670”を使用して測定した。測定真空度は5×10-6Pa〜1×10-7Paで測定した。サンプルを試料台に固定して、加速電圧3kV、照射電流10nA、試料傾斜角度74度、ビーム径200nm以下の測定条件で測定した。イオンエッチング条件としては、イオン種Ar+、加速電圧3kV、イオン電流2μA、試料傾斜角30度で測定した。
【0111】
次に実施例に基づき、本発明を説明する。
【0112】
[実施例1]
(1)フィルムの製膜
実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート原料Aと、実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに平均粒径220nmのケイ酸アルミニウムを0.48重量%含有させた原料Bとを厚み比5:1の割合で、口金を通して、共押出しし冷却ドラムに密着させシート化し、ロール延伸法で110℃で3.4倍に縦延伸した。
【0113】
縦延伸の後の工程で、A層の外側に下記組成の水溶液を固形分濃度22mg/m2 で塗布した。
A層外側:
メチルセルロース 0.11重量%
水溶性ポリエステル(テレフタル酸70モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1の共重合体)0.28重量%
アミノエチルシランカップリング剤 0.01重量%
平均粒径 11nmの極微細シリカ 0.03重量%
その後、ステンターにて横方向に110℃で4.0倍に延伸し、210℃で熱処理し、厚さ4.5μmのポリエステルフィルムを得た。このフィルムをスリッターを用いて幅600mmにスリットし、巻取り長さ20000mのフィルムロールとした。
【0114】
得られたフィルム1枚の全光線透過率を、スガ試験機株式会社製の”ヘーズコンピュータHZ−1”装置にて測定すると、92.2%であった。
(2)金属酸化物膜の形成
得られたフィルムロールを用い、下記の通り酸化アルミ膜を150nm成膜した。図1〜図2に示す真空蒸着機を用いて形成した。蒸発源のるつぼと冷却キャンの最短距離が冷却キャンの頂点のほぼ鉛直にとった距離で、その距離が800mmであり、仕切板の位置は蒸発源るつぼから640mmの位置に配置した。なお、仕切板は20℃の水で冷却した。フィルム搬送方向の開口部は200mmとした。酸素ノズルは、巻出側、巻取側ともに開口部から50mm後退した位置に取り付けられており、出口部は幅が800mmでφ12mm肉厚1mmの円管部材の両端がふさがれた構造の部材に、10mm間隔で0.5mmφの穴を開けたノズルを使用した。前記円管部材へは配管部材41が3箇所接続されており、酸素が供給されるようになっている。穴の向かう向きは、巻出側、巻取側ともに冷却キャンの頂点へ向けた。まず得られたフィルムロールを図2の巻出手段にセットしガイド手段5a〜5d、冷却キャン、ガイド手段6a〜6dにフィルムを沿わせて、巻取手段2にフィルム端部を貼り付けセットした。装置には100mmφ×深さ100mmの炭素るつぼが4つフィルム幅方向に並べられており、これに金属アルミを800gづつ計3200gの金属アルミをセットした。その後、蒸着機13を減圧し、上室の真空圧力を1×10-1Pa、下室12の真空圧力を1×10-2Paまで排気した。その後、シャッター部材35を閉じた状態で高周波誘導加熱法でアルミを溶かした。投入した電力は4つのるつぼトータルで32kWであった。4つのるつぼの溶融状態が均等になるように4つのるつぼへの投入電力を調整した。その後、溶融アルミの湯面の状態を観察し沸騰による湯面のバタツキがゆらゆらしている程度になるように電力量を微調整し約35kWにした。巻出手段の張力を44.1N(4.5kgf)、巻取張力を39.2N(4.0kgf)に設定し、冷却キャン4とガイドローラ5a〜5d、6a〜6dの速度設定により300m/分の速度で被蒸着フィルムの搬送を開始した。その後シャッター部材を開側にして、アルミ蒸着を行った。アルミ膜が幅方向に均等に蒸着されているかを光学モニタ51により監視し、透過率が一定になるように蒸発源の4つのるつぼの投入電力を微調整した。ここでの透過率は、ハロゲンランプを光源として、JISで規定されているD65光源の光強度分布に換算した全光線透過率である。光学モニタはフィルム幅方向に4つ付いておりこの4つの透過率バラツキが±1%になるように調整した。この状態で真空計10の圧力は2.5×10-2Paであった。その後、巻出側の酸素ノズル26aから酸素導入量の上昇速度を(10ml/分)/秒を超えないように徐々に上昇させ2500ml/分まで導入した。酸素導入に応じて真空計10の値はふらつき圧力上昇してはもとの圧力へもどることを繰り返した。その後巻取側の酸素ノズル26bから酸素導入量の上昇速度を(10ml/分)/秒を越えないように徐々に上昇させ1700mlまで導入した。酸素導入に応じて真空計10の値はふらつき圧力上昇してはもとの圧力へもどることを繰り返した。この状態で真空計10の圧力は5×10-2Paであった。この状態で巻取側の監視窓36からフィルムを観察するとほぼ透明に見えた。透過率は4つの光学モニタの値で88.5%、88.6%、88.7%、88.4%を示していた。その後、監視窓から蒸着後のフィルムを監視してフィルムが熱負けが発生しないことを確認しつつ徐々にフィルムの搬送速度を下げていった。120m/分になったところでミシン目状の熱負けが若干発生したので140m/分まで再び速度を上昇させた。この状態で16000m分のフィルム巻取搬送を行い酸化アルミ膜を形成した。その後、シャッター部材35を閉側にして酸素導入を止め、蒸発源への電力供給を切った。そして搬送速度を10m/分まで下げ蒸着機13の放圧を行った。この酸化アルミ膜の膜厚は150nmであった。膜厚の測定はオージェ電子分光法で分析した。分析結果を図6に示す。光学的に分光反射率特性を用いて酸化アルミの屈折率を入力することで厚みを求める手法もある。得られたフィルム1枚の全光線透過率は、スガ試験機株式会社製の”ヘーズコンピュータHZ−1”装置にて測定すると、88.5%であった。表面抵抗値は1.5×1012Ω/sqであった。こうして厚さ4.65μmの支持体を作成した。この支持体の特性は表1に示す。
【0115】
次に、この支持体の表面A上に真空蒸着により厚さ180nmのコバルト−酸素薄膜を形成した。次にコバルト−酸素薄膜層上に、CVD法によりダイヤモンド状カーボン膜を10nmの厚みで形成させた。この後、150℃のホットローラーに表面B側を接触させて走行させ、カール戻しを行った。続いてフッ素含有脂肪酸エステル系潤滑剤を3nmの厚さで塗布し、最後にカーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層(厚さ400nm)を、メチルエチルケトン溶液を用いた溶液塗布によりフィルム表面B上に設け、スリッターにより幅6.35mm幅にスリットし、リールに巻き取り磁気記録テープ(DVC−LPテープ、LPモードでの録画時間120分)を作成した。得られたDVC−LPテープの特性を表2に示す。
【0116】
[実施例2]
高周波誘導加熱法による蒸発金属の加熱手法ではなく電子ビームを用いた装置を用いて金属を溶融させた。図1〜図2のうち蒸発源の加熱方式が電子ビームである以外はほとんど同じ仕様の蒸着機を用いて蒸着した。用いたフィルムは実施例1と全く同じものを用いた。蒸着手法はまったく実施例1と同様の方法で行った。電子銃の投入電力は50kW(加速電圧は20kV、2.5Aのエミッション電流)であった。フィルム幅方向にムラを生じないようにスキャニングでフィルム幅方向に走査して行った。巻出手段の張力を44.1N(4.5kgf)、巻取張力を39.2N(4.0kgf)に設定し、冷却キャン4とガイドローラ5a〜5d、6a〜6dの速度設定により300m/分の速度で被蒸着フィルムの搬送を開始した。その後シャッター部材を開側にして、アルミ蒸着を行った。アルミ膜が幅方向に均等に蒸着されているかを光学モニタ51により監視し透過率が一定になるように蒸発源の4つのるつぼの投入電力を微調整した。ここでの透過率は、ハロゲンランプを光源として、JISで規定されているD65光源の光強度分布に換算した全光線透過率である。光学モニタはフィルム幅方向に4つ付いておりこの4つの透過率バラツキが±1%になるように調整した。この状態で真空計10の圧力は2.0×10-2Paであった。その後、巻出側の酸素ノズル26aから酸素導入量の上昇速度を(10ml/分)/秒を超えないように徐々に上昇させ3000ml/分まで導入した。酸素導入に応じて真空計10の値はふらつき圧力上昇してはもとの圧力へもどることを繰り返した。その後巻取側の酸素ノズル26bから酸素導入量の上昇速度を(10ml/分)/秒を越えないように徐々に上昇させ2500mlまで導入した。酸素導入に応じて真空計10の値はふらつき圧力上昇してはもとの圧力へもどることを繰り返した。この状態で真空計10の圧力は4×10-2Paであった。この状態で巻取側の監視窓36からフィルムを観察するとほぼ透明に見えた。透過率は4つの光学モニタの値で89.0%、88.7%、88.7%、89.1%を示していた。その後、監視窓から蒸着後のフィルムを監視してフィルムが熱負けが発生しないことを確認しつつ徐々にフィルムの搬送速度を下げていった。80m/分になったところでミシン目状の熱負けが若干発生したので100m/分まで再び速度を上昇させた。この状態で12000m分のフィルム巻取搬送を行い酸化アルミ膜を形成した。その後、シャッター部材35を閉側にして酸素導入を止め、蒸発源への電力供給を切った。そして搬送速度を10m/分まで下げ蒸着機13の放圧を行った。この酸化アルミ膜の膜厚は200nmであった。膜厚の測定はオージェ電子分光法で分析した。分析結果を図7に示す。光学的に分光反射率特性を用いて酸化アルミの屈折率を入力することで厚みを求める手法もある。得られたフィルム1枚の全光線透過率は、スガ試験機株式会社製の”ヘーズコンピュータHZ−1”装置にて測定すると、89.0%であった。表面抵抗値は8×1012Ω/sqであった。こうして厚さ4.70μmの支持体を作成した。この支持体の特性は表1に示す。
【0117】
次に、この支持体の表面A上に真空蒸着により厚さ180nmのコバルト−酸素薄膜を形成した。次にコバルト−酸素薄膜層上に、CVD法によりダイヤモンド状カーボン膜を10nmの厚みで形成させた。この後、150℃のホットローラーに表面B側を接触させて走行させ、カール戻しを行った。続いてフッ素含有脂肪酸エステル系潤滑剤を3nmの厚さで塗布し、最後にカーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層(厚さ400nm)を、メチルエチルケトン溶液を用いた溶液塗布によりフィルム表面B上に設け、スリッターにより幅6.35mm幅にスリットし、リールに巻き取り磁気記録テープ(DVC−LPテープ、LPモードでの録画時間120分)を作成した。得られたDVC−LPテープの特性を表2に示す。
【0118】
[実施例3]
実施例1と全く同じフィルムおよび装置で、酸素導入量以外は実施例1全く同じ条件で酸化アルミ膜を形成させた。酸素導入量は、巻出側の酸素ノズル26aから酸素導入量の上昇速度を(10ml/分)/秒を超えないように徐々に上昇させ1700ml/分まで導入した。酸素導入に応じて真空計10の値はふらつき圧力上昇してはもとの圧力へもどることを繰り返した。その後巻取側の酸素ノズル26bから酸素導入量の上昇速度を(10ml/分)/秒を越えないように徐々に上昇させ2000mlまで導入した。酸素導入に応じて真空計10の値はふらつき圧力上昇してはもとの圧力へもどることを繰り返した。この状態で巻取側の監視窓36からフィルムを観察すると若干茶色がかったほぼ透明な膜が形成されているように見えた。透過率は4つの光学モニタの値で85.3%、84.6%、84.7%、85.4%を示していた。ここでの透過率は、ハロゲンランプを光源として、JISで規定されているD65光源の光強度分布に換算した全光線透過率である。その後、監視窓から蒸着後のフィルムを監視してフィルムが熱負けが発生しないことを確認しつつ徐々にフィルムの搬送速度を下げていった。140m/分になったところでミシン目状の熱負けが若干発生したので160m/分まで再び速度を上昇させた。この状態で16000m分のフィルム巻取搬送を行い酸化アルミ膜を形成した。その後、シャッター部材35を閉側にして酸素導入を止め、蒸発源への電力供給を切った。そして搬送速度を10m/分まで下げ蒸着機13の放圧を行った。この酸化アルミ膜の膜厚は105nmであった。膜厚の測定はオージェ電子分光法で分析した。分析結果を図8に示す。光学的に分光反射率特性を用いて酸化アルミの屈折率を入力することで厚みを求める手法もある。得られたフィルム1枚の全光線透過率は、スガ試験機株式会社製の”ヘーズコンピュータHZ−1”装置にて測定すると、84.8%であった。表面抵抗値は2.5×108 Ω/sqであった。こうして厚さ4.605μmの支持体を作成した。この支持体の特性は表1に示す。
【0119】
[比較例1]
強化膜を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして厚さ4.5μmのポリエステルフィルムを製造し、これを支持体としてDVC−LPテープ(LPモードでの録画時間120分)を作成した。得られた支持体(フィルム)、DVC−LPテープの特性を表1、表2に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
表1、表2に示した特性から明らかなように、本発明の支持体の片側表面Aに強磁性金属薄膜層が設けられた磁気テープはDO個数が少なく、走行耐久性に優れ、長時間録画可能なDVC−LPテープであった。これに対し、本発明外の支持体からは磁気テープの加工ができなかったり、磁気テープが作成できても初期特性、走行耐久性のうちの少なくともどれかが劣っていた。
【0123】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルムの巻取式の蒸着方法であって、蒸着金属を溶融蒸発させ、その途中で酸素を導入して十分に酸化された金属酸化物膜を得ることができる。特に2〜6μmといった薄ものフィルムに対して50〜500nmという厚い金属酸化物膜を設けることができる。さらに絶縁性や透明性が求められる用途で用いることができる。
【0124】
本発明は、また、2〜6μm厚さといった薄ものフィルムの強度を補強する方法を提供でき、磁気記録媒体用フィルム、特にデジタル記録式の磁気記録媒体用フィルムに対して好適に用いることができる。従って薄ものフィルムでも強度があることから、同じ大きさで大容量の磁気記録フィルムが得られる。
【0125】
本発明による磁気記録媒体用支持体を用いると、繰り返し走行させた後でも走行耐久性が良好でドロップアウト(DO)の発生が少なく、長時間録画可能なDVC−LPテープ等のヘリカルスキャン方式によるデジタル記録用に好適な磁気記録媒体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1の蒸発部分を拡大した概略図である。
【図3】本発明の酸化ノズルの一例を示した概略図である。
【図4】従来法で磁性体を蒸着する製造装置の一例を示す概略図である。
【図5】表面抵抗値測定装置の概略図である。
【図6】実施例1の酸化アルミ膜のオージェ電子分光法による深さ方向の分析結果である。
【図7】実施例2の酸化アルミ膜のオージェ電子分光法による深さ方向の分析結果である。
【図8】実施例3の酸化アルミ膜のオージェ電子分光法による深さ方向の分析結果である。
【符号の説明】
1:巻出手段
2:巻取手段
3a:フィルムロール(巻出前)
3b:フィルム(巻出手段〜冷却キャン)
3c:フィルム(蒸着部、冷却キャンに沿わせている部分)
3d:フィルム(冷却キャン〜巻取手段)
3e:フィルムロール(巻取後)
4:冷却キャン
5a,5b,5c,5d:ガイドロール
6a,6b,6c,6d:ガイドロール
7:蒸発源
8:下室用真空ポンプ
9:上室用真空ポンプ
10:真空計
11:真空蒸着機上室
12:真空蒸着機下室
13:真空蒸着機
14:酸素ボンベ
15:配管
16:レギュレータ
17a,17b:酸素ガス配管
18a,18b:レギュレータ
19a,19b:マスフローコントローラ
20a,20b:配管
21:金属
22:るつぼ
23a,23b:防着板
24a,24b:仕切板
25a,25b:冷却機構(斜線部分)
26a,26b:酸素ノズル
27:
28:溶融金属の湯面
29a,29b:酸素ノズルの酸素吹出し用の穴部
30:蒸発蒸気
31:仕切板の水平方向の直線
32:酸素吹出し用の穴部の鉛直方向を示す直線
33:酸素吹出し用の穴部と冷却キャンの下部頂点を結ぶ直線
34:冷却キャンの下部頂点
35:シャッター部材
36:のぞき窓
26a,26b:酸素ノズル
41:酸素ノズルへの酸素導入管
42:酸素ノズル
43:酸素ノズルの酸素吹出し用の穴部
51:光学モニタ
60:サンプル
61:ベースフィルム
62:金属酸化物膜
63:体積箱
64:超絶縁計
65:測定部分
66:電極板
67:電極板
101:巻出手段
102:巻取手段
103a:フィルムロール(巻出前)
103b:フィルム(巻出手段〜冷却キャン)
103e:フィルムロール(巻取後)
104:冷却キャン
105a,105b,105c,105d:ガイドロール
106a,106b,106c,106d:ガイドロール
107:蒸発源
108:下室用真空ポンプ
109:上室用真空ポンプ
110:真空計
111:真空蒸着機上室
112:真空蒸着機下室
113:真空蒸着機
114:酸素ボンベ
130:蒸発蒸気
116:レギュレータ
118:レギュレータ
119:マスフローコントローラ
124a,124b:防着板
126:酸素ノズル
136:電子ビーム
Claims (33)
- 金属を溶融させた蒸発源の上方に冷却キャンを配置させ、巻出手段から被蒸着フィルムを上記冷却キャンに沿わせて搬送させ蒸発蒸気にさらし金属酸化物を形成した後、巻取手段にて巻き取る薄膜形成方式であって、前記蒸発源の湯面と被蒸着フィルムとの最短距離hに対して、該湯面から0.6〜0.9×hの高さで、該湯面の鉛直部を含みかつ該湯面部の大きさの1.5倍以上の開口部から金属蒸気を通過させ、該開口部と冷却キャンの間から酸素を導入し、前記酸素の導入を、被蒸着フィルムの幅方向に設けられた複数の酸素吹出し用穴部から導入することを特徴とする金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記開口部が仕切板によって形成されているとともに、該仕切板を50℃以下の冷媒によって冷却することを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記酸素の導入は、前記開口部に向かう水平方向の位置から冷却キャンに向かう鉛直方向の位置までの範囲に導入することを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記酸素の導入は、前記穴部と冷却キャンの頂点の最短距離を結ぶ直線を中心として±30度の範囲に向かって導入することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 請求項1、3、4のいずれかに記載の穴部は、0.1〜1.5mmの径であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記酸素の導入は、フィルム搬送の巻出側および/または巻取側から導入し、それぞれを独立して導入圧力と流量を調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 請求項6に記載の巻出側の導入量を巻取側の導入量よりも大きくすることを特徴とする請求項6に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記酸素の導入は、蒸発源の金属の溶融状態が安定した後に導入を始め、徐々に酸素導入量を増やすことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 請求項8に記載の酸素導入量の上昇速度は(10ml/分)/秒を超えないように制御することを特徴とする請求項8に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 請求項8に記載の酸素の導入は、巻出側の導入を巻取側よりも先に行うことを特徴とする請求項8または9に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記酸素導入量は、蒸着機本体と真空ポンプの間に取り付けられた真空計により監視し、圧力が上昇し始める導入量まで導入することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記酸素導入後の圧力と、導入前の圧力の差が3×10-2Pa以下であるように酸素導入量を調整することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記金属酸化物膜の厚みを50〜500nmとすることを特徴とする請求項1〜12にのいずれか記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記金属酸化物膜の表面抵抗値が107Ω/sq以上であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記金属酸化物つきフィルムと未蒸着フィルムとの全光線透過率の差が5%以内とすることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記金属酸化物つきフィルムの透過率を測定し、該透過率に基づいて、該透過率が実質的に一定になるように前記蒸発源のエネルギーおよび/または酸素導入量を調整制御することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 蒸発させる金属がアルミおよび/または銅を主体とする材料であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記被蒸着フィルムの厚みが2〜6μmであることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記金属酸化物膜つきフィルムの長手方向、および幅方向のヤング率がそれぞれ5500MPa以上、および7500MPa以上であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記被蒸着フィルムの片側の表面AのRa値が1〜5nmである磁気記録媒体用フィルムであって、該フィルムの表面B(裏面)に強度補強膜を形成することを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 前記被蒸着フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエステルフィルム、もしくはポリアミドフィルムからなることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 請求項20に記載の表面Aに強磁性体薄膜を設けることを特徴とする請求項20または21に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 金属酸化物フィルムつきフィルムはデジタル記録方式の磁気記録媒体用に用いられることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造方法。
- 蒸着機内を減圧する手段と金属を加熱させ蒸発させる手段を有し、蒸発源の上方に冷却キャンを配置させ、巻出手段からフィルムを該冷却キャンに沿わせて搬送させ蒸発蒸気にさらし金属酸化物を形成した後、巻取手段で巻き取る金属酸化物膜つきフィルムの製造装置であって、前記蒸発面の湯面と被蒸着フィルムとの最短距離hに対して、該湯面から0.6〜0.9×hの高さに開口部を形成する仕切部材を有し、該開口部は、該湯面部の鉛直を含みかつ該湯面部の大きさの1.5倍以上をなす構成とし、該仕切部材と冷却キャン部材との間に酸素を導入する手段を有し、前記酸素を導入する手段が、被蒸着フィルムの幅方向に複数の穴部を有する酸素導入ノズルであることを特徴とする金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 前記開口部を形成するための仕切部材は、冷却配管が接合され、該冷却配管に冷媒を流す手段を具備することを特徴とする請求項24に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 請求項24に記載の酸素導入ノズルを前記仕切部材と冷却キャン部材との間に配置し、該酸素導入ノズルへ実質的に一定量の酸素を導入する手段を具備することを特徴とする請求項24または25に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 前記酸素導入ノズルの穴部は、前記蒸発蒸気開口部の中心に向かう水平面から冷却キャンに向かう鉛直面までの範囲に開口するように設置されることを特徴とする請求項24から26のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 前記酸素導入ノズルの穴部は、該穴部と冷却キャンの頂点の最短距離を結ぶ直線を中心として±30度の範囲に向かう範囲に開口するように設置されることを特徴とする請求項24から27のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 請求項24、26、27、28のいずれかに記載の穴部は、0.1〜1.5mmの直径であることを特徴とする請求項24から28のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 前記酸素導入ノズルは、フィルム搬送の巻出側および/または巻取側に配置し、それぞれの導入圧力と流量を独立して制御可能な手段を有することを特徴とする請求項26から29のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 蒸着機内の圧力を監視する真空計を、蒸着機本体と真空ポンプの間に配置させることを特徴とする請求項24から30のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 蒸発蒸気にさらされる部位と巻取手段の間に被蒸着フィルムの幅方向に複数の光学モニタを配置し、該光学モニタにより透過率を監視する手段を有することを特徴とする請求項24から31のいずれかに記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
- 光学モニタの信号を受け、透過率が実質的に一定になるように酸素導入量または蒸発源のエネルギーを調整制御する手段を有することを特徴とする請求項32に記載の金属酸化物膜つきフィルムの製造装置。
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