JP2016065269A - 金属調皮膜の製造方法及び金属調皮膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】 外観の意匠性が良好であって、且つ、電波透過性および電気絶縁性に優れた金属調皮膜の製造方法を提供すること。【解決手段】 粒子状または気化された金属Mを、樹脂基材7内のフィラーFの配向方向に直交する第1面P1に交差する方向から樹脂基材7の表面に衝突させることにより、樹脂基材7の表面に金属薄膜を成膜する成膜工程と、成膜工程にて成膜した金属薄膜を樹脂基材7とともに加熱することにより、金属薄膜にクラックを形成するクラック形成工程と、を含む、金属調皮膜の製造方法とすること。【選択図】 図3
Description
本発明は、金属調皮膜の製造方法及び金属調皮膜に関し、特に、電波透過性及び電気絶縁性に優れた金属調皮膜の製造方法及び金属調皮膜に関する。
車両に設けられるスマートハンドルは、非導電性の樹脂基材で形成されユーザがドアを開くときに操作するハンドル本体と、ハンドル本体内に内蔵されスマートキーから送信された信号を受信するアンテナとを備える。また、意匠性を向上させるために、ハンドル本体(樹脂基材)の外表面に金属光沢を有する皮膜(以下、金属調皮膜という)が形成される。
スマートハンドルには、外部に位置するスマートキーからハンドル本体内のアンテナに送信された信号を正確に受信する機能が要求される。加えて、スマートハンドルには、ユーザがスマートハンドルの所定位置に接触した際にドアの開閉が成されるように、人体が所定位置に接触したことによる静電容量変化を正確に検知するための機能も要求される。スマートキーから送信される電波を正確に受信するために、ハンドル本体の外表面に形成された金属調皮膜は、高い電波透過性を有していなければならない。また、ユーザがスマートハンドルの所定位置以外の位置に接触した際における誤動作を防止するために、ハンドル本体の外表面に形成された金属調皮膜は、高い電気絶縁性を有していなければならない。
特許文献1は、基材表面に無電解ニッケルメッキ皮膜を形成し、その後のベーキング(アフターベーキング)により無電解ニッケルメッキ皮膜中にクラックを形成することにより、電波透過性を有するように構成された金属調皮膜を開示する。また、特許文献2は、非導電性のポリカーボネート樹脂基材表面にスパッタリングによりアルミニウム皮膜およびクロム皮膜を形成し、その後、加熱によるポリカーボネート樹脂の体積膨張を利用してクロム皮膜中にクラックを形成することにより、電波透過性および電気絶縁性を有するように構成された金属調皮膜を開示する。
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に記載の金属調皮膜は、キャタライザー工程、アクセレーター工程、アクチベーター工程、無電解ニッケル工程、と、数多くの工程を経て製造される。このため金属調皮膜の生産性が悪い。また、各工程間に水洗が必要であり、排水処理設備も必要である。このため、金属調皮膜の生産設備のコストが高い。また、特許文献1及び2によれば、加熱による熱膨張差に基づいて皮膜中にクラックを形成しているが、成り行きでのクラックの形成であってクラックの方向性を制御できない。そのため、時にはクラックがスジのように観察される虞があって、外観の意匠性が損なわれる可能性がある。
特許文献1に記載の金属調皮膜は、キャタライザー工程、アクセレーター工程、アクチベーター工程、無電解ニッケル工程、と、数多くの工程を経て製造される。このため金属調皮膜の生産性が悪い。また、各工程間に水洗が必要であり、排水処理設備も必要である。このため、金属調皮膜の生産設備のコストが高い。また、特許文献1及び2によれば、加熱による熱膨張差に基づいて皮膜中にクラックを形成しているが、成り行きでのクラックの形成であってクラックの方向性を制御できない。そのため、時にはクラックがスジのように観察される虞があって、外観の意匠性が損なわれる可能性がある。
本発明は、外観の意匠性が良好であって、且つ、電波透過性および電気絶縁性に優れた金属調皮膜の製造方法、及び、外観の意匠性が良好であって、且つ電波透過性及び電気絶縁性に優れた金属調皮膜を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、非導電性であり且つフィラーが配向性を持って内部に含有されている樹脂基材(7)の表面に形成される金属調皮膜(10)の製造方法であって、粒子状または気化された金属(M)を、フィラーの配向方向に直交する第1面(P1)に交差する方向から樹脂基材の表面に衝突させることにより、樹脂基材の表面に金属薄膜(9)を成膜する成膜工程と、成膜工程にて成膜した金属薄膜を樹脂基材とともに加熱することにより、金属薄膜にクラック(C)を形成するクラック形成工程と、を含む、金属調皮膜の製造方法を提供する。
本発明は、非導電性であり且つフィラーが配向性を持って内部に含有されている樹脂基材(7)の表面に形成される金属調皮膜(10)の製造方法であって、粒子状または気化された金属(M)を、フィラーの配向方向に直交する第1面(P1)に交差する方向から樹脂基材の表面に衝突させることにより、樹脂基材の表面に金属薄膜(9)を成膜する成膜工程と、成膜工程にて成膜した金属薄膜を樹脂基材とともに加熱することにより、金属薄膜にクラック(C)を形成するクラック形成工程と、を含む、金属調皮膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、成膜工程にて、スパッタリング、蒸着、CVDなどの手法により生じた粒子状の金属あるいは気化された金属が非導電性の樹脂基材表面に衝突する。衝突した金属が樹脂基材表面に堆積することにより、樹脂基材表面に金属薄膜が成膜される。この場合において、粒子状又は気化された金属が樹脂基材表面に衝突する際における金属の進行方向(この方向を以下、衝突方向と呼ぶ)は、樹脂基材内のフィラーの配向方向に直交する面(第1面)に交差する方向である。つまり、衝突方向は、上記第1面に平行でない方向である。換言すれば、衝突方向は、樹脂基材内のフィラーの配向方向に直交する方向とは異なる方向である。ここで、成膜される金属薄膜の平面方向、つまり金属薄膜が成膜される樹脂基材の表面に垂直な方向から見た衝突方向を平面視衝突方向と定義した場合、本発明によれば、平面視衝突方向が、フィラーの配向方向に直交する方向とは異なる方向となる。
一般に、スパッタリング等によってターゲットから放出されて基材表面に衝突した金属により形成される金属薄膜の引張強度は、基材表面に衝突する金属の衝突方向を基材の表面に射影した方向、つまり平面視衝突方向に沿って低く、平面視衝突方向に直交する方向に沿って高い。従って、本発明において、成膜工程後のクラック形成工程にて樹脂基材とともに金属薄膜が加熱膨張された場合、金属薄膜は、平面視衝突方向に沿って分断されやすい。
また、フィラーが含有された樹脂基材の線膨張率は、フィラーの配向方向に沿って小さく、フィラーの配向方向に直交する方向に沿って大きい。このため、成膜工程後のクラック形成工程にて金属薄膜が樹脂基材とともに加熱膨張された場合、樹脂基材表面の金属薄膜は、樹脂基材の線膨張率が大きい方向、すなわちフィラーの配向方向に直交する方向により多く引っ張られる。そのため、金属薄膜は、フィラーの配向方向に直交する方向沿って分断されやすい。
上述したように、本発明においては、平面視衝突方向とフィラーの配向方向に直交する方向は異なる。そのため、クラック形成工程では、平面視衝突方向及びその方向とは異なるフィラーの配向方向に直交する方向に沿って金属薄膜が分断される。こうして異なる複数の方向に沿って金属薄膜が分断されることにより、網目状のクラックが一様に形成される。このような網目状のクラックにより金属薄膜が微細な海島状の塊に分断される。従って、金属調皮膜の表面に特定の方向に延びたスジのようなクラックが発生する可能性が低く、故に、金属調皮膜の外観の意匠性が向上する。さらに、網目状のクラックの形成によって良好な電気絶縁性(高い表面抵抗)および良好な電波透過性を得ることができる。このように、本発明によれば、外観の意匠性が良好であって、且つ、電波透過性および電気絶縁性に優れた金属調皮膜の製造方法を提供することができる。加えて本発明によれば、金属調皮膜を製造するために特許文献1に記載されたような数多くの工程を経る必要がないので、生産性が向上する。
この場合、成膜工程にて、粒子状または気化された金属を、フィラーの配向方向に平行であり且つ樹脂基材の表面に直交する第2面(P2)に平行な方向から樹脂基材の表面に衝突させるとよい。より好ましくは、成膜工程にて、粒子状または気化された金属を、第2面に平行であってフィラーの配向方向に交差する方向から樹脂基材の表面に衝突させるとよい。
これによれば、衝突方向が第2面に平行である場合、平面視衝突方向がフィラーの配向方向に平行となる。このため、クラック形成工程では、平面視衝突方向及びその方向に直交するフィラーの配向方向に直交する方向に金属薄膜が分断される。こうして直交する2つの方向に沿って金属薄膜が分断されることにより、より一層、均一に(方向性を持つことなく)金属薄膜が分断されて、網目状のクラックが一様に形成される。
また、成膜工程において、粒子状または気化された金属の発生源(5)から樹脂基材に向かう方向が、第1面に交差し且つ第2面に平行な方向に一致するように、発生源(5)に対して樹脂基材が配置されているとよい。より好ましくは、成膜工程において、発生源から樹脂基材に向かう方向が、第1面に交差し、且つ第2面に平行であってフィラーの配向方向に交差する方向に一致するように、発生源に対して樹脂基材が配置されているとよい。
これによれば、粒子状または気化された金属の発生源から樹脂基材に向かう方向が、衝突方向に一致する。したがって、このように発生源に対して樹脂基材を配置することにより、成膜工程時に平面視衝突方向が樹脂基材内のフィラーの配向方向に平行となるように、粒子状または気化された金属を樹脂基材の表面に衝突させることができる。
本発明においては、粒子状または気化された金属は、いかなる方法により生成されてもよい。典型的には、スパッタリング、蒸着、CVD等の手法が、粒子状または気化された金属の生成方法として用いられる。スパッタリングを採用する場合、生成される金属は粒子状である。蒸着を採用する場合、金属蒸気が生成される。スパッタリングを採用する場合、固体金属からなるターゲットから、粒子状の金属が放出される(叩き出される)。また、粒子状または気化された金属が樹脂基材表面に衝突するためのエネルギーは、粒子状または気化される金属の生成時に得られるものであっても良いし、その後に得られるものであってもよい。例えば、スパッタリングの場合、金属粒子がターゲットから叩き出される際に得られるエネルギーにより、金属粒子が樹脂基材表面に衝突する。また、粒子状または気化された金属が樹脂基材表面に衝突する際の方向は、粒子状または気化された金属の発生源と樹脂基材との配置関係によって調整することができるが、外力によって方向を調整するように構成してもよい。
樹脂基材を構成する樹脂は、非導電性であり、フィラーが配向性を持って内部に含有されていれば、熱硬化性樹脂であってもよく熱可塑性樹脂であってもよい。樹脂基材を構成する樹脂として、ナイロン(登録商標)、POM(ポリアセタール)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成)樹脂、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PEK(ポリエーテルケトン)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、等の1種又は2種以上が例示される。また、樹脂基材を構成する樹脂はアロイ樹脂(ポリマーアロイ)であってもよい。アロイ樹脂として、PC/PBT樹脂、PC/ABS樹脂が例示されるが、この限りでない。
また、樹脂基材は、フィラーを含有し、且つフィラーが配向性を持つように成形されるのであれば、どのような成形方法で成形されてもよい。例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形等により、樹脂基材が成形され得る。好ましくは、樹脂基材は射出成形により成形されると良い。射出成形により樹脂基材が成形される場合、樹脂金型内のキャビティに樹脂が流動する方向に沿って、フィラーが配向する可能性が高い。このため、比較的容易に樹脂基材内のフィラーに配向性を持たせることができる。
成膜工程にて成膜される金属薄膜を構成する金属として、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、SUSを例示することができるが、この限りでない。また、金属薄膜の膜厚は、10nm〜200nmであるのが好ましい。膜厚が10nm未満である場合、金属調皮膜の明度が低下する。一方、膜厚が200nmを越える場合、使用する金属材料のコストが高くなる。
また、本発明におけるクラック形成工程においては、成膜工程にて成膜された金属薄膜を樹脂基材とともに、60℃以上の温度、好ましくは80℃以上の温度に加熱すると良い。加熱温度が60℃未満である場合、金属薄膜にクラックが十分に形成されない虞がある。
また、本発明は、非導電性であり且つフィラーが配向性を持って内部に含有されている樹脂基材(7)の表面に形成される金属調皮膜(10)であって、粒子状または気化された金属(M)を、フィラーの配向方向に直交する第1面(P1)に交差する方向から樹脂基材の表面に衝突させることにより、樹脂基材の表面に金属薄膜(9)を成膜し、成膜した金属薄膜を樹脂基材とともに加熱することにより、製造された、金属調皮膜を提供する。この場合、金属薄膜は、粒子状または気化された金属を、フィラーの配向方向に平行であり且つ樹脂基材の表面に直交する第2面(P2)に平行な方向から樹脂基材の表面に衝突させることにより、成膜されるとよい。
上記した本発明に係る金属調皮膜は、外観の意匠性が良好であって、且つ、電波透過性および電気絶縁性に優れる。
本実施形態に係る金属調皮膜は、成膜工程と、クラック形成工程とを経て製造される。成膜工程では、粒子状または気化された金属を樹脂基材の表面に衝突させることにより、樹脂基材の表面に金属薄膜が成膜される。クラック形成工程では、成膜工程にて樹脂基材の表面に成膜された金属薄膜を樹脂基材とともに加熱し、金属薄膜に熱応力を加えることにより、金属薄膜にクラックが形成される。
成膜工程にて樹脂基材の表面に金属薄膜を成膜するために、成膜装置が用いられる。図1は、本実施形態に係る成膜装置の一例としてのスパッタリング装置1の側面の概略断面図である。図1に示すように、本実施形態に係るスパッタリング装置1は、内部に空間が形成されたケーシング2と、保持プレート3と、円板状のテーブル4とを備えて構成される。保持プレート3はケーシング2内の空間のうちの上方部分に配置され、テーブル4はケーシング2内の空間のうちの下方部分に配置される。保持プレート3の図1において下面に固体金属からなるターゲット5が保持される。
テーブル4の図1において上面に樹脂基材7が載置される。本実施形態において、樹脂基材7は車両のアウトサイドドアハンドルの外郭を構成するハンドル本体である。樹脂基材7は非導電性(絶縁性)の樹脂、例えばPC(ポリカーボネート)樹脂とPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂のアロイ樹脂により形成される。この樹脂基材7の内部には、強度を増加させるためのフィラーFが含有されている。樹脂基材7内のフィラーFは配向性を有する。つまり、フィラーFは、ある特定の方向に沿って樹脂基材7内に配設される。フィラーFは、例えば樹脂基材7が射出成形によって成形された場合においては、樹脂金型のキャビティー内での樹脂の流動方向に配向する。
また、樹脂基材7の表面に厚さ20μmのアクリル樹脂等からなる平滑層11がUV硬化により形成されている。この平滑層11により樹脂基材7の表面が平滑化される。ここで、図1の上下方向により示されるスパッタリング装置1の高さ方向をZ方向と定義する。Z方向は、テーブル4上の樹脂基材7の表面に垂直な方向、すなわち樹脂基材7の平面方向である。
また、図1に示すように、ケーシング2には、その内部に不活性ガスであるアルゴンガスを導入するための不活性ガス導入口2aと、内部の空気を排気するための排気口2bが設けられる。さらに、ケーシング2には、内部のガス圧力(成膜圧力)を検出するための圧力センサ8が取り付けられる。
図2は、Z方向から見たターゲット5と樹脂基材7との配置関係を示す図である。図2に示すように、ターゲット5と樹脂基材7とは、Z方向から見て異なる位置に配置される。ここで、Z方向に直交する面内において、ターゲット5から樹脂基材7に向かう方向をY方向と定義し、Z方向及びY方向に直交する方向をX方向と定義する。この場合、ターゲット5と樹脂基材7は、Y方向に所定の間隔を開けて配置される。また、樹脂基材7は、内部のフィラーFの配向方向(矢印A方向)がY方向に一致するように、ターゲット5に対して配置される。
このスパッタリング装置1を用いて、樹脂基材7の表面に金属薄膜を形成する。この場合、まず、ケーシング2内を減圧し、次いで、ケーシング2内の圧力(成膜圧力)が所定の圧力となるようにアルゴンガスをケーシング2内に導入する。そして、テーブル4とターゲット5との間でグロー放電を起こしてケーシング2内のアルゴンガスをプラズマ化する。これによりアルゴンイオンが生成される。生成したアルゴンイオン(Ar+)が陰極を構成するターゲット5に衝突することによってターゲット5から金属粒子が叩き出される(放出される)。図1において、アルゴンイオンが白丸により示され、ターゲット5から叩き出された金属粒子が黒丸で示される。ターゲット5から叩き出された(放出された)金属粒子は、叩き出された際に得たエネルギーによってターゲット5から樹脂基材7に向かう方向に進行し、樹脂基材7の表面に衝突する。樹脂基材7の表面に衝突した金属粒子が樹脂基材7の表面に堆積することにより、樹脂基材7の表面(平滑層11の上面)に金属薄膜が成膜される(成膜工程)。金属薄膜の膜厚が予め決められた膜厚に達した時点で放電を停止し、成膜を終了する。なお、上記説明のスパッタリング法は2極DCグロー放電スパッタリング法であるが、これ以外の方式によるスパッタリング、例えば高周波スパッタリング法やマグネトロンスパッタリング法により、金属薄膜を成膜してもよい。
図3は、ターゲット5から放出された金属粒子が樹脂基材7の表面に衝突する際における金属粒子の進行方向を模式的に示す図である。図3に示すように、ターゲット5から放出された金属粒子Mは、斜め上方から樹脂基材7の表面に衝突する。ここで、図3の矢印A方向で示される樹脂基材7内のフィラーの配向方向に直交する面を第1面P1と定義し、ターゲット5から放出された金属粒子Mが樹脂基材7の表面に衝突する際における進行方向を衝突方向Sと定義する。本実施形態では、ターゲット5から樹脂基材7に向かう方向が、衝突方向Sと一致する。ターゲット5と樹脂基材7はY方向に離間して配置されているため、ターゲット5から樹脂基材7に向かう方向はY方向成分を含む。よって、衝突方向SはY方向に直交する面に交差する。また、Y方向はフィラーの配向方向(矢印A方向)に平行である。このことから、衝突方向Sは、フィラーの配向方向(矢印A方向)に直交する第1面Pに交差する。つまり、ターゲット5から放出された金属粒子Mは、フィラーの配向方向に直交する第1面Pに交差する方向から樹脂基材7の表面に衝突する。
図4は、ターゲット5から放出された金属粒子が樹脂基材7の表面に衝突する際における金属粒子の進行方向を、Z方向(樹脂基材7の平面方向)から見た図である。ここで、Z方向から見た金属粒子Mの進行方向を平面視衝突方向Saと定義する。平面視衝突方向Saは図4に示すようにY方向に平行である。よって、平面視衝突方向Saは、Y方向に平行であるフィラーFの配向方向(矢印A方向)にも平行である。また、図4において、フィラーFの配向方向(矢印A方向)に平行であり且つ樹脂基材7の表面に直交する面を第2面P2と定義する。X方向は第2面に垂直な方向である。図4からわかるように、平面視衝突方向Saは、第2面P2に平行である。
図5は、ターゲットから放出された金属粒子が樹脂基材7の表面に衝突する際における金属粒子の進行方向を、X方向から見た図である。ここで、図5に示すように、X方向(第2面P2に垂直な方向)から見た金属粒子Mの進行方向を側面視衝突方向Sbと定義する。側面視衝突方向Sbは、Y方向、すなわち樹脂基材7内のフィラーの配向方向(矢印A方向)に交差する方向である。
図6は、ターゲット5から放出された金属粒子が樹脂基材7の表面に堆積して金属薄膜を形成していく様子をX方向から示す模式図である。図6に示すように、金属粒子Mが樹脂基材7の表面に斜め上方から衝突すると、樹脂基材7の表面上で金属粒子Mが壁状に成長して金属層9aが形成される。また、壁状の金属層9aに遮られて金属粒子Mが入射し難い隙間部分9bが樹脂基材7の表面に形成される。金属層9aと隙間部分9bは、樹脂基材7の表面に射影された金属粒子Mの衝突方向、すなわち平面視衝突方向Saに沿って、交互に形成される。上記したように平面視衝突方向Saは樹脂基材7のフィラーFの配向方向に平行であるので、フィラーFの配向方向に沿って交互に金属層9aと隙間部分9bが形成されることになる。
図7は、ターゲット5から放出された金属粒子が樹脂基材7の表面に堆積して金属薄膜9を形成していく様子をZ方向(樹脂基材7の平面方向)から示す模式図である。図7において、黒っぽい領域が金属層9aを表し、白っぽい領域が隙間部分9bを表す。図7に示すように、隙間部分9bは、図7の紙面に垂直な方向から見た金属粒子Mの基材7への入射方向(平面視衝突方向Sa)に垂直な方向に沿って細長く基材7の表面上に形成される。図7に示すように、金属層9aと隙間部分9bがフィラーの配向方向(矢印A方向)に沿って交互に形成されるため、金属層9a及び隙間部分9bは、それぞれフィラーの配向方向に直交する方向に沿って延びる。
成膜工程後のクラック形成工程にて金属薄膜9にクラックが形成される。クラック形成工程では、金属薄膜9を樹脂基材7とともに加熱する。例えば、金属薄膜9が形成された樹脂基材7を恒温槽に入れ、所定の温度で所定時間恒温槽内に保持する。金属薄膜9を樹脂基材7とともに加熱することにより、金属薄膜9の線膨張係数と樹脂基材7を構成する樹脂の線膨張係数との差に起因する熱応力(引張応力)が金属薄膜9に作用する。こうして金属薄膜9に熱応力を加えることにより、金属薄膜9が分断されてクラックが形成される。このように、成膜工程及びクラック形成工程を経て、本実施形態に係る金属調皮膜が製造される。
図8は、成膜工程及びクラック形成工程を経て製造された金属調皮膜10の断面概略図である。図8に示すように、樹脂基材7の表面に形成された平滑層11上に、金属調皮膜10が形成される。この金属調皮膜10は、成膜工程にて成膜された金属薄膜9を、クラック形成工程にて形成されたクラックCにより分断することにより製造される。クラックCが形成されることにより、金属調皮膜10の電波透過性及び電気絶縁性が向上する。
ところで、成膜工程にて樹脂基材7の表面に成膜された金属薄膜9には、上述したように、金属層9aと隙間部分9bが交互に形成される。樹脂基材7の表面に細長い隙間部分9bが形成されると、引張強度が引張方向によって異なるように金属薄膜が生成される。具体的には、隙間部分9bの長手方向に金属層9が長く繋がっているため、隙間部分9bの長手方向への引張強度は高い。一方、隙間部分9bの長手方向に垂直な方向には金属層9aが分断されているので、この方向への引張強度は低い。このように金属薄膜の引張強度が異方性を持つ場合、成膜工程後のクラック形成工程にて金属薄膜に熱応力を加えると、強度の低い方向に分断されるように金属薄膜が割れる。その結果、クラック形成工程における熱処理により、金属薄膜9は、隙間部分9bが延在する方向に直交する方向に優先的に分断される。
また、フィラーが含有された樹脂基材7は、フィラーの配向方向に伸び難く、フィラーの配向方向に直交する方向に伸び易い。つまり、フィラーの配向方向における線膨張率が小さく、フィラーの配向方向に直交する方向における線膨張率が大きい。従って、金属薄膜9が樹脂基材7とともに加熱された場合、樹脂基材7の表面の金属薄膜9は、フィラーの配向方向に直交する方向に大きく伸ばされる(引っ張られる)。このため、クラック形成工程における熱処理により、金属薄膜9は、フィラーの配向方向に直交する方向にも優先的に分断される。
以上のことから、金属薄膜9は、クラック形成工程において、隙間部分9bの延在方向に直交する方向と、樹脂基材7内のフィラーの配向方向に直交する方向に、それぞれ分断される。ここで、上記したように、隙間部分9bは、フィラーの配向方向に直交する方向に延びている。つまり、隙間部分9bの延在方向に直交する方向は、フィラーの配向方向である。従って、クラック形成工程においては、金属薄膜9は、フィラーの配向方向と、フィラーの配向方向に直交する方向に、それぞれ分断される。このように、クラック形成工程にて金属薄膜9が直交する2方向に沿って分断される結果、金属薄膜9に網目状のクラックが一様に形成される。このような網目状のクラックにより金属薄膜9が微細な海島状の塊に分断される。従って、金属調皮膜10の表面に特定の方向に延びたスジのようなクラックが形成される可能性が低く、故に、金属調皮膜10の外観の意匠性が向上する。さらに、クラックが網目状に形成されているため、金属調皮膜の電気絶縁性及び電波透過性はいずれも良好である。
(平面視衝突方向とクラックの形成状態との関係の調査)
非導電性の樹脂基材として、フィラーが含有されたPC樹脂とPBT樹脂のアロイ樹脂からなる平板状のテストパネル(TP1〜TP6)を6個作製した。このとき、各テストパネルTP1〜TP6内のフィラーが配向性を持たないように、各テストパネルTP1〜TP6を作製した。作製した6個のテストパネルTP1〜TP6の表面に、アクリル樹脂からなる膜厚20μmの平滑層を形成した。次いで、平滑層が形成された6個のテストパネルTP1〜TP6を、図1に示すスパッタリング装置1のテーブル4上の特定の位置にそれぞれ載置した。図9は、テーブル4上に載置された各テストパネルTP1〜TP6の平面方向(図1のZ方向)から見た各テストパネルTP1〜TP6とターゲット5との位置関係を示す図である。
非導電性の樹脂基材として、フィラーが含有されたPC樹脂とPBT樹脂のアロイ樹脂からなる平板状のテストパネル(TP1〜TP6)を6個作製した。このとき、各テストパネルTP1〜TP6内のフィラーが配向性を持たないように、各テストパネルTP1〜TP6を作製した。作製した6個のテストパネルTP1〜TP6の表面に、アクリル樹脂からなる膜厚20μmの平滑層を形成した。次いで、平滑層が形成された6個のテストパネルTP1〜TP6を、図1に示すスパッタリング装置1のテーブル4上の特定の位置にそれぞれ載置した。図9は、テーブル4上に載置された各テストパネルTP1〜TP6の平面方向(図1のZ方向)から見た各テストパネルTP1〜TP6とターゲット5との位置関係を示す図である。
そして、ターゲット5としてクロムのバルク金属を用い、成膜条件を以下のように設定してスパッタリング装置1を作動させることにより、各テストパネルTP1〜TP6の表面にクロム薄膜を成膜した。
・成膜速度:3.0nm/sec.(出力5kW)
・膜厚:30nm
・成膜圧力:0.3Pa
・Ar流量:35sccm
・成膜速度:3.0nm/sec.(出力5kW)
・膜厚:30nm
・成膜圧力:0.3Pa
・Ar流量:35sccm
成膜後、各テストパネルTP1〜TP6を恒温槽に入れ、80℃の温度雰囲気中で30分間保持することにより各テストパネルTP1〜TP6を加熱し、テストパネルの材質とクロム薄膜との線膨張係数の差に起因した熱応力をクロム薄膜に加えてクロム薄膜にクラックを形成した。このようにして、非導電性の各テストパネルTP1〜TP6の表面に形成される金属調皮膜を製造した。
図10は、各テストパネルTP1〜TP6の表面に形成された金属調皮膜の各顕微鏡写真を、それぞれのテストパネルTP1〜TP6のテーブル4上での配置と同じように並べて示した図である。図10に示すように、TP1及びTP3の表面に形成された金属調皮膜には図10の水平方向に伸びるスジ状クラックが、TP2及びTP6の表面に形成された金属調皮膜には図10の上下方向に伸びるスジ状クラックが、TP4及びTP5の表面に形成された金属調皮膜には図に10の斜め方向に伸びるスジ状クラックが、それぞれ形成されている。スジ状クラックの延在方向は、ターゲット5に対する各テストパネルTP1〜TP6のテーブル4上での位置に関連する。具体的には、図10に示す方向(各テストパネルの平面方向)から見てターゲット5から各テストパネルTP1〜TP6に向かう方向に垂直な方向に沿って、各テストパネルTP1〜TP6の表面の金属調皮膜にスジ状クラックが形成される。図10に示す方向から見たターゲット5から各テストパネルに向かう方向は、平面視衝突方向Saである。従って、図10に示す各金属調皮膜に形成されたスジ状クラックは、平面視衝突方向Saに直交する方向に延びていることがわかる。すなわち、金属調皮膜が平面視衝突方向Saに沿って分断されることがわかる。
(フィラーの配向方向とクラックの形成状態との関係の調査)
非導電性の樹脂基材として、フィラーが含有されたPC樹脂とPBT樹脂のアロイ樹脂からなる平板状のテストパネルTP7を作製した。このとき、テストパネルTP7内のフィラーが配向性を持つように、テストパネルTP7を作製した。図11は、テストパネルTP7のX線CT画像である。図11において、テストパネルTP7内のフィラーが白い部分により表される。図11に示すように、テストパネルTP7内のフィラーは、図11の矢印Aで示すように左右方向に配向している。
非導電性の樹脂基材として、フィラーが含有されたPC樹脂とPBT樹脂のアロイ樹脂からなる平板状のテストパネルTP7を作製した。このとき、テストパネルTP7内のフィラーが配向性を持つように、テストパネルTP7を作製した。図11は、テストパネルTP7のX線CT画像である。図11において、テストパネルTP7内のフィラーが白い部分により表される。図11に示すように、テストパネルTP7内のフィラーは、図11の矢印Aで示すように左右方向に配向している。
また、テストパネルTP7の表面に、アクリル樹脂からなる膜厚20μmの平滑層を形成した。次いで、平滑層が形成されたテストパネルTP7を、図1に示すスパッタリング装置1のテーブル4上に載置した。図12は、テーブル4に載置されたテストパネルTP7とターゲット5との位置関係を示す図であり、図12(a)が、テストパネルTP7の平面方向(図1のZ方向)から見たテストパネルTP7とターゲット5との位置関係を表し、図12(b)が、テストパネルTP7の側面方向(図1のX方向)から見たテストパネルTP7とターゲット5との位置関係を表す。図12に示すように、テストパネルTP7は、ターゲット5の直下に配置される。つまり、Z方向から見たテストパネルTP7の位置とターゲット5の位置がほぼ一致する。このようにテストパネルTP7をターゲット5の直下に配置することにより、平面視衝突方向Saがクラックの形成に及ぼす影響が除外される。
そして、ターゲット5としてクロムのバルク金属を用い、成膜条件を以下のように設定してスパッタリング装置1を作動させることにより、テストパネルTP7の表面にクロム薄膜を成膜した。
・成膜速度:3.0nm/sec.(出力5kW)
・膜厚:30nm
・成膜圧力:0.3Pa
・Ar流量:35sccm
・成膜速度:3.0nm/sec.(出力5kW)
・膜厚:30nm
・成膜圧力:0.3Pa
・Ar流量:35sccm
成膜後、テストパネルTP7を恒温槽に入れ、80℃の温度雰囲気中で30分間保持することによりテストパネルTP7を加熱し、テストパネルTP7の材質とクロム薄膜との線膨張係数の差に起因した熱応力をクロム薄膜に加えてクロム薄膜にクラックを形成した。このようにして、非導電性のテストパネルTP7の表面に形成される金属調皮膜を製造した。
図13は、テストパネルTP7の表面のうち図11に示す部分に形成された金属調皮膜の顕微鏡写真である。図13に示すように、金属調皮膜に、テストパネルTP7内のフィラーの配向方向(矢印A方向)とほぼ同じ方向に延びたクラックが形成されている。このことから、金属調皮膜は、テストパネルTP7内のフィラーの配向方向(矢印A方向)に直交する方向に沿って分断されることがわかる。
(実施例)
非導電性の樹脂基材として、フィラーが含有されたPC樹脂とPBT樹脂のアロイ樹脂からなる平板状のテストパネル(TP8)を作製した。このとき、テストパネルTP8内のフィラーが配向性を持つように、テストパネルTP8を作製した。図14に、テストパネルTP8のX線CT画像を示す。図14において、テストパネルTP8内のフィラーが白い部分により表される。図14に示すように、テストパネルTP8内のフィラーは、図14の矢印Aで示すように左右方向に配向している。なお、このようなX線CT画像は、島津製作所製のサブミクロンフォーカスX線CTシステム(型式:SMX−160CTS)により撮像した。
非導電性の樹脂基材として、フィラーが含有されたPC樹脂とPBT樹脂のアロイ樹脂からなる平板状のテストパネル(TP8)を作製した。このとき、テストパネルTP8内のフィラーが配向性を持つように、テストパネルTP8を作製した。図14に、テストパネルTP8のX線CT画像を示す。図14において、テストパネルTP8内のフィラーが白い部分により表される。図14に示すように、テストパネルTP8内のフィラーは、図14の矢印Aで示すように左右方向に配向している。なお、このようなX線CT画像は、島津製作所製のサブミクロンフォーカスX線CTシステム(型式:SMX−160CTS)により撮像した。
また、テストパネルTP8の表面に、アクリル樹脂からなる膜厚20μmの平滑層を形成した。次いで、平滑層が形成されたテストパネルTP8を、図1に示すスパッタリング装置1のテーブル4上に載置した。図15は、テーブル4に載置されたテストパネルTP8とターゲット5との位置関係を示す図であり、図15(a)が、テストパネルTP8の平面方向(図1のZ方向)から見たテストパネルTP8とターゲット5との位置関係を表し、図15(b)が、テストパネルTP8の側面方向(図1のX方向)から見たテストパネルTP8とターゲット5との位置関係を表す。図15に示すように、平面方向(Z方向)及び側面方向(X方向)から見て、ターゲット5とテストパネルTP8とはY方向に離間してそれぞれ配置される。また、平面方向から見て、ターゲット5からテストパネルTP8に向かう方向がテストパネルTP8内のフィラーFの配向方向(矢印A方向)に一致するように、テストパネルTP8がターゲット5に対して配設される。この場合、テストパネルTP8は、ターゲット5からテストパネルTP8に向かう方向が、フィラーFの配向方向(矢印A方向)に直交する第1面P1に交差し、且つ、フィラーFの配向方向(矢印A方向)に平行な面であってテストパネルTP8の表面に直交する第2面P2に平行であるように、ターゲット5に対して配置されていることになる。
そして、ターゲット5としてクロムのバルク金属(固体金属)を用い、成膜条件を以下のように設定してスパッタリング装置1を作動させることにより、テストパネルTP8の表面にクロム薄膜を成膜した(成膜工程)。
・成膜速度:3.0nm/sec.(出力5kW)
・膜厚:30nm
・成膜圧力:0.3Pa
・Ar(アルゴン)流量:35sccm
・成膜速度:3.0nm/sec.(出力5kW)
・膜厚:30nm
・成膜圧力:0.3Pa
・Ar(アルゴン)流量:35sccm
成膜工程においてターゲット5から放出された金属粒子(クロム粒子)がテストパネルTP8に衝突する際における衝突方向Sは、テストパネルTP8内のフィラーFの配向方向に直交する第1面P1に交差する。また、衝突方向Sは、フィラーFの配向方向に平行な面であってテストパネルTP8の表面に直交する第2面P2に平行である。すなわち、図15(a)に示すように、平面視衝突方向SaがフィラーFの配向方向(矢印A方向)に平行である。
成膜後、テストパネルTP8を恒温槽に入れ、80℃の温度雰囲気中で30分間保持することによりテストパネルTP8を加熱し、テストパネルTP8とクロム薄膜との線膨張係数の差に起因した熱応力をクロム薄膜に加えてクロム薄膜にクラックを形成した(クラック形成工程)。このようにして、成膜工程とクラック形成工程とを経て非導電性のテストパネルTP8の表面に形成される金属調皮膜を製造した。
(比較例)
非導電性の樹脂基材として、フィラーが含有されたPC樹脂とPBT樹脂のアロイ樹脂からなる平板状のテストパネル(TP9)を作製した。このとき、テストパネルTP9内のフィラーが配向性を持つように、テストパネルTP9を作製した。図16に、テストパネルTP9のX線CT画像を示す。図16において、テストパネルTP9内のフィラーが白い部分により表される。図16に示すように、テストパネルTP9内のフィラーは、図16の矢印Aで示すように上下方向に配向している。
非導電性の樹脂基材として、フィラーが含有されたPC樹脂とPBT樹脂のアロイ樹脂からなる平板状のテストパネル(TP9)を作製した。このとき、テストパネルTP9内のフィラーが配向性を持つように、テストパネルTP9を作製した。図16に、テストパネルTP9のX線CT画像を示す。図16において、テストパネルTP9内のフィラーが白い部分により表される。図16に示すように、テストパネルTP9内のフィラーは、図16の矢印Aで示すように上下方向に配向している。
また、テストパネルTP9の表面に、アクリル樹脂からなる膜厚20μmの平滑層を形成した。次いで、平滑層が形成されたテストパネルTP9を、図1に示すスパッタリング装置1のテーブル4上に載置した。図17は、テーブル4に載置されたテストパネルTP9とターゲット5との位置関係を示す図であり、図17(a)が、テストパネルTP9の平面方向(図1のZ方向)から見たテストパネルTP9とターゲット5との位置関係を表し、図17(b)が、テストパネルTP9の側面方向(図1のX方向)から見たテストパネルTP9とターゲット5との位置関係を表す。図17に示すように、平面方向(Z方向)及び側面方向(X方向)から見て、ターゲット5とテストパネルTP9とはY方向に離間してそれぞれ配置される。また、平面方向から見てターゲット5からテストパネルTP9に向かう方向がテストパネルTP9内のフィラーFの配向方向(矢印A方向)に直交する方向に一致するように、テストパネルTP9がターゲット5に対して配設される。
そして、ターゲット5としてクロムのバルク金属を用い、成膜条件を以下のように設定してスパッタリング装置1を作動させることにより、アクリル系樹脂からなる平滑層が形成された樹脂基材7の表面にクロム薄膜を成膜した。
・成膜速度:3.0nm/sec.(出力5kW)
・膜厚:30nm
・成膜圧力:0.3Pa
・Ar流量:35sccm
・成膜速度:3.0nm/sec.(出力5kW)
・膜厚:30nm
・成膜圧力:0.3Pa
・Ar流量:35sccm
成膜後、テストパネルTP9を恒温槽に入れ、80℃の温度雰囲気中で30分間保持することによりテストパネルTP9を加熱し、テストパネルTP9の材質とクロム薄膜との線膨張係数の差に起因した熱応力をクロム薄膜に加えてクロム薄膜にクラックを形成した。このようにして、非導電性のテストパネルTP9の表面に形成される金属調皮膜を製造した。
図18は、テストパネルTP8を用いた実施例に係る金属調皮膜の顕微鏡写真(図18(a))及び、テストパネルTP9を用いた比較例に係る金属調皮膜の顕微鏡写真(図18(b))である。図18(a)に示すように、実施例に係る金属調皮膜には網目状のクラックが一様に形成される。このような網目状のクラックにより金属薄膜が微細な海島状の塊に分断される。また、金属調皮膜の表面には、特定の方向に延びたスジのようなクラックがほとんど見られない。よって、金属調皮膜の外観の意匠性が向上する。一方、図18(b)に示すように、比較例に係る金属調皮膜には、特定の方向(図18(b)において上下方向)に延びたスジ状のクラックが形成されている。このため金属調皮膜に傷が付いているような印象を与え、意匠性が悪化する。
また、実施例に係る金属調皮膜及び比較例に係る金属調皮膜の表面抵抗を測定した。表面抵抗の測定には、シート抵抗測定装置を使用した。この場合、108Ω/□以上の抵抗値は三菱化学アナリテック製のハイレスタ UP MCP-HT450により測定し、108Ω/□未満の抵抗値は三菱化学アナリテック製のロレスタ GP MCP−T600により測定した。
さらに、実施例に係る金属調皮膜及び比較例に係る金属調皮膜について、外観評価、アンテナ機能評価、およびタッチセンサ機能評価を実施した。外観評価するにあたり、実施例に係る金属調皮膜及び比較例に係る金属調皮膜の表面を目視観察した。そして、表面にスジ状クラックが確認できない場合を○と評価し、確認できる場合を×と評価した。「アンテナ機能評価」は、実施例及び比較例に係る金属調皮膜が表面に形成されたハンドル本体を備えるスマートハンドルの内部にアンテナを配置し、このアンテナが、外部のスマートキーからの信号を正確に受信するか否かに基づく評価である。アンテナがスマートキーからの信号を正確に受信した場合を合格(○)と評価し、正確に受信しなかった場合を不合格(×)と評価した。アンテナ機能評価が合格(○)である場合、金属調皮膜は高い電波透過性を有すると判断できる。また、「タッチセンサ機能評価」は、実施例及び比較例に係る金属調皮膜が表面に形成されたハンドル本体を備えるスマートハンドルの所定の位置以外の位置に人の手が接触したときに車両ドアの開閉に関する誤作動を起こすか否かに基づく評価である。誤作動を起こさない場合を合格(○)と評価し、誤作動を起こす場合を不合格(×)と評価した。タッチセンサ機能評価が合格(○)である場合、金属調皮膜は高い電気絶縁性を有すると判断できる。
表1に、実施例および比較例係る金属調皮膜の成膜条件、および、外観評価結果、表面抵抗の測定値、アンテナ機能評価結果、および、タッチセンサ機能評価結果を示す。
表1に示すように、実施例に係る金属調皮膜は、外観の意匠性も良好であり、表面抵抗も高く、アンテナ機能評価及びタッチセンサ機能評価も合格(○)である。これに対し、比較例に係る金属調皮膜は、外観の意匠性が悪く、表面抵抗も低く、タッチセンサ機能評価において誤作動を起こした。このことから、本実施形態に係る金属調皮膜は、外観上の意匠性も良く、且つ、電波透過性および電気絶縁性に優れており、極めて有用であることがわかる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、スパッタリングにより樹脂基材の表面に金属薄膜を成膜しているが、蒸着或いはCVDにより成膜してもよい。また、樹脂基材としてスマートハンドルのハンドル本体を例示したが、金属光沢を有し、且つ、優れた電波透過性および電気絶縁性が必要とされるものであれば、本発明を適用できる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。また、本発明では、フィラーが含有されている樹脂基材が用いられる。しかしながら、フィラーが含有されていない樹脂基材を用いた場合でも本発明と同等の作用効果を得ることができる場合がある。例えば、樹脂組成が配向性を有する樹脂基材を用いて本発明を実施した場合には、本発明と同等の作用効果を得ることができる。
1…スパッタリング装置、2…ケーシング、3…保持プレート、4…テーブル、5…ターゲット(発生源)、7…樹脂基材、8…圧力センサ、9…金属薄膜、9a…金属層、9b…隙間部分、10…金属調皮膜、C…クラック、M…金属粒子、P1…第1面、P2…第2面、S…衝突方向、Sa…平面視衝突方向
Claims (5)
- 非導電性であり且つフィラーが配向性を持って内部に含有されている樹脂基材の表面に形成される金属調皮膜の製造方法であって、
粒子状または気化された金属を、前記フィラーの配向方向に直交する第1面に交差する方向から前記樹脂基材の表面に衝突させることにより、前記樹脂基材の表面に金属薄膜を成膜する成膜工程と、
前記成膜工程にて成膜した前記金属薄膜を前記樹脂基材とともに加熱することにより、前記金属薄膜にクラックを形成するクラック形成工程と、
を含む、金属調皮膜の製造方法。 - 請求項1に記載の金属調皮膜の製造方法において、
前記成膜工程にて、前記粒子状または気化された金属を、前記フィラーの配向方向に平行であり且つ前記樹脂基材の表面に直交する第2面に平行な方向から前記樹脂基材の表面に衝突させる、金属調皮膜の製造方法。 - 請求項2に記載の金属調皮膜の製造方法において、
前記成膜工程において、前記粒子状または気化された金属の発生源から前記樹脂基材に向かう方向が、前記第1面に交差し且つ前記第2面に平行な方向に一致するように、前記発生源に対して前記樹脂基材が配置されている、金属調皮膜の製造方法。 - 非導電性であり且つフィラーが配向性を持って内部に含有されている樹脂基材の表面に形成される金属調皮膜であって、
粒子状または気化された金属を、前記フィラーの配向方向に直交する第1面に交差する方向から前記樹脂基材の表面に衝突させることにより、前記樹脂基材の表面に金属薄膜を成膜し、成膜した前記金属薄膜を前記樹脂基材とともに加熱することにより、製造された、金属調皮膜。 - 請求項4に記載の金属調皮膜において、
前記金属薄膜は、前記粒子状または気化された金属を、前記フィラーの配向方向に平行であり且つ前記樹脂基材の表面に直交する第2面に平行な方向から前記樹脂基材の表面に衝突させることにより、成膜される、金属調皮膜。
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