JP4102082B2 - プラスチック染色用基材およびそれを用いたプラスチック染色方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、曲面や凹凸のあるプラスチックに対し、簡単かつ鮮明に染色を行うことができるプラスチック染色用基材、および該プラスチック染色用基材を用いたプラスチックの染色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックの染色方法としては、浸漬染色方法(以下「浸染法」という)が多く用いられている(特開昭58−5716号公報、特開平6−313801号公報等)。この浸染法は、分散染料の赤、青、黄の三原色を混合して水中に分散させた染色液を調合し、この染色液を90℃程度に加熱し、その中にプラスチックを浸漬して染色を行うものである。
【0003】
しかし、分散染料の取扱いが難しいことから、浸染法による染色においては、色相のばらつきやムラが発生しやすいという問題があった。また、浸染法では単色の染色は可能であるものの、色に濃度差を設けたり、絵柄を転写することはできなかった。
【0004】
かかる問題を解決する手段として、昇華性染料をプラスチックに転写する手段が考えられる。具体的には、記録材料に昇華性熱転写プリンタで絵柄等を形成した後、記録材料に形成した絵柄をさらにプラスチックに転写する方法が考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記方法は、記録材料への記録時と、記録材料からプラスチックへの転写時と昇華性染料を2度に渡って転写するものである。したがって、最終的に転写される絵柄の再現性が悪いなどの問題があるとともに、記録材料は昇華性熱転写プリンタの昇華性染料を保持するバインダー樹脂より昇華性染料に染色されやすく、かつ転写するプラスチックより昇華性染料に染色されにくい材料である必要があり、記録材料の材料選択の幅が非常に狭いという問題があった。
【0006】
このような問題は、特開2001−215306号公報に記載されている染色方法であれば発生することはない。この染色方法は、印刷用紙に昇華性インクを用いたインクジェットプリンタで記録を行い、印刷用紙の記録面をプラスチックレンズに接触・加熱することによりプラスチックレンズを染色するというものである。即ち、この方法によれば、印刷用紙への記録はインク溶媒の吸収によって行われ、昇華性染料の転写は印刷用紙からプラスチックへの1回のみであるから、上記問題を発生することもない。
【0007】
しかしながら、上記公報にて提案されている手段を用いても、曲面や凹凸のあるプラスチックの全面に鮮明な染色を行うことはできず、プラスチックの一部に染色されない部分が発生してしまう。これはプラスチックの曲面や凹凸に対し、印刷用紙の形状追従性が十分でないことが原因と考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、昇華性インクを用いたインクジェットプリンタでの記録が可能であって、かつ曲面や凹凸のあるプラスチックに対し、簡単かつ鮮明に染色することができるプラスチック染色用基材、および該プラスチック染色用基材を用いたプラスチックの染色方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のプラスチック染色基材は、支持体上に昇華性インク受容層を有するものであって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有し、前記多価アルコールは分子量100以下であることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明のプラスチック染色基材は、支持体上に昇華性インク受容層を有するプラスチック染色用基材であって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有し、前記多価アルコールはグリセリンであることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のプラスチック染色基材は、支持体上に昇華性インク受容層を有するプラスチック染色用基材であって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有し、前記親水性樹脂がけん化度が90%未満のポリビニルアルコールであることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明のプラスチック染色基材は、支持体上に昇華性インク受容層を有するプラスチック染色用基材であって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有し、前記多価アルコールの含有量は、昇華性インク受容層の樹脂100重量部に対し、5〜20重量部であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のプラスチック染色方法は、上記プラスチック染色用基材に昇華性インクを用いたインクジェットプリンタで記録を行い、記昇華性インク受容層を前記支持体から剥離した後、前記昇華性インク受容層の記録面、又は記録面とは反対側の面をプラスチックに対向させ、前記昇華性インク受容層を加熱することにより前記プラスチックを染色することを特徴とするものである。
【0014】
なお、本発明でいう「親水性樹脂」とは、水に親和性を示して膨潤する樹脂のみならず、水に溶解する樹脂も含むものとする。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のプラスチック染色用基材から説明する。本発明のプラスチック染色用基材は、支持体上に昇華性インク受容層を有するものであって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有することを特徴とするものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明のプラスチック染色用基材の実施の形態を示す図で、このプラスチック染色用基材3は、支持体1、昇華性インク受容層2からなる。
【0017】
支持体は、紙、繊維布帛、合成紙、プラスチックフィルムなど特に制限されることなく使用することができるが、昇華性インク受容層との剥離性を考慮し、プラスチックフィルムが好適に使用される。プラスチックフィルムとしては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどがあげられる。支持体の厚みは特に限定されるものではないが、インクジェットプリンタへの搬送性などの点から、5〜300μmのものが好適に使用される。
【0018】
昇華性インク受容層は支持体から剥離可能なものである。したがって、染色時には昇華性インク受容層のみをプラスチックに対向させることができ、これによりプラスチックの曲面や凹凸に対する形状追従性が向上し、曲面や凹凸のあるプラスチックの全面に鮮明な染色を行うことができるようになる。これに対し、昇華性インク受容層が支持体から剥離できず、支持体を残したまま曲面や凹凸のあるプラスチックに染色を行うと、プラスチックの形状にうまく追従することができず、プラスチックの一部に染色されない部分が発生して染色不良となってしまう。
【0019】
昇華性インク受容層を支持体から剥離可能とするには、支持体をシリコーンなどで離型処理する他、昇華性インク受容層を構成する樹脂として、支持体との接着性に劣る樹脂を選択する方法があげられる。
【0020】
また、昇華性インク受容層は、親水性樹脂および多価アルコールを含むものである。
【0021】
親水性樹脂は、昇華性インクのインク溶媒である水に膨潤あるいは溶解し、昇華性インクを用いたインクジェットプリンタでの記録を可能とする役割を有するものである。このような親水性樹脂としては、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、アラビヤゴム、アルギン酸ソーダなどの天然樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリフェニルアセトアセタール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、メラミン樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリル酸ソーダ、(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの合成樹脂があげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。これら親水性樹脂の中でも、昇華性インクを用いたインクジェットプリンタでの記録特性に優れつつ、昇華性染料に染色されにくいためプラスチックを染色しやすい特性を有する、ポリビニルアルコールが好適に使用される。また、ポリビニルアルコールの中でも、けん化度90%未満のものが特に好適に使用される。
【0022】
なお、昇華性インク受容層に親水性樹脂以外の樹脂を含有させることは何ら差し支えない。このような樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などをエマルジョン化したものなどがあげられる。これら親水性樹脂以外の樹脂は、主として、インク溶媒の吸収性や支持体との剥離性を調整する目的で添加される。
【0023】
昇華性インク受容層を構成する樹脂は、融点が160℃以上、あるいは融点の存在しない熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であることが好ましい。このような樹脂を使用することにより、プラスチックを染色する際に昇華性インク受容層がプラスチックに融着することを防止することができる。
【0024】
多価アルコールは、昇華性インク受容層の柔軟性を向上させ、曲面や凹凸のあるプラスチックに対する形状追従性を向上させる役割を有する。このような多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール、グリセリンなどがあげられる。多価アルコールの分子量は特に制限されるものではないが、通常は、低分子量である分子量100以下のものが使用される。
【0025】
多価アルコールの含有量は、昇華性インク受容層の樹脂100重量部に対し、5〜100重量部であることが好ましい。5重量部以上とすることにより、昇華性インク受容層の柔軟性を十分に向上させることができ、100重量部以下とすることにより、ブロッキングの発生を防止することができるとともに、昇華性インクの印字適性や支持体からの剥離特性の低下を防止することができる。
【0026】
昇華性インク受容層の厚みは5〜50μmであることが好ましい。5μm以上とすることにより、適正な昇華性インク吸収性を得ることができ、50μm以下とすることにより、転写効率の低下を防止することができる。
【0027】
昇華性インク受容層中には、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、キレート剤、帯電防止剤、マット剤などの添加剤を添加してもよい。
【0028】
なお、昇華性インク受容層上、もしくは支持体と昇華性インク受容層との間に、昇華性インク受容層より昇華性染料に染色されにくく、支持体から剥離可能であるブロック層を設けても良い。このようなブロック層を設けることにより、プラスチックの染色時に、昇華性インク受容層に受容された昇華性染料はプラスチック側にのみ移行することが可能となり、転写された画像の画像濃度を良好なものとすることができる(ブロック層を設けた場合もブロック層を設けない場合と同様に、プラスチックの染色は、昇華性インク受容層をプラスチックに対向させて行う)。
【0029】
ブロック層は主として樹脂から構成される。このような樹脂は、昇華性インク受容層を構成する樹脂として例示したものと同様の樹脂など従来公知の樹脂を使用することができるが、昇華性インク受容層を構成する樹脂より昇華性染料に染色されにくい樹脂であることが必要である。また、ブロック層を昇華性インク受容層上に設ける場合には、昇華性インクを透過可能な樹脂である親水性樹脂を含む必要がある。
【0030】
昇華性インク受容層およびブロック層を形成する方法としては、各層の構成成分を適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法などの方法により支持体上に塗布、乾燥させる方法があげられる。
【0031】
以上のように、本発明のプラスチック染色用基材は、昇華性インク受容層が支持体から剥離可能であり、かつ、昇華性インク受容層が親水性樹脂および多価アルコールを含む構成を採用するものである。したがって、昇華性インクを用いたインクジェットプリンタでの記録が可能であって、かつ曲面や凹凸のあるプラスチックに対し、染色不良を起こすことなく、簡単かつ鮮明に染色することができる。
【0032】
次に、本発明のプラスチック染色方法の実施の形態について説明する。
【0033】
第一の方法は、まず、上述したプラスチック染色用基材に昇華性インクを用いたインクジェットプリンタで記録を行う。記録する情報は、文字、絵柄、ベタ画像など特に制限されるものではないが、文字や絵柄を記録する場合には、鏡像で記録を行う。
【0034】
次いで、昇華性インク受容層を支持体から剥離する。
【0035】
次いで、昇華性インク受容層の記録面をプラスチックに対向させ(図2)、昇華性インク受容層を加熱する。この加熱により昇華性染料が昇華し、プラスチックが染色される。加熱手段は特に制限されることなく、オーブンなどの開放系でプラスチックごと加熱したり、熱プレス機などを使用することができる。加熱条件は、昇華性インク受容層や染色されるプラスチックを構成する樹脂により一概には言えないが、通常100〜180℃で1〜60分程度である。なお、加熱時には、昇華性インク受容層とプラスチックを固定しておくことが好ましい。固定手段は特に制限されることなく、テープ、粘着剤などを使用することができる。
【0036】
第一の方法では、以上の工程によりプラスチックが染色される。なお、染色完了後は、昇華性インク受容層をプラスチックから除去する。
【0037】
第二の方法は、まず、上述したプラスチック染色用基材に昇華性インクを用いたインクジェットプリンタで記録を行う。記録する情報は、文字、絵柄、ベタ画像など特に制限されるものではないが、文字や絵柄を記録する場合には、正像で記録を行う。なお、第二の方法に使用するプラスチック染色用基材の支持体は、支持体表面の平滑性に優れるものを採用することが好ましい。平滑性に優れる支持体としては、ポリエステルフィルムなどがあげられる。
【0038】
次いで、昇華性インク受容層を支持体から剥離する。
【0039】
次いで、昇華性インク受容層の記録面とは反対側の面をプラスチックに対向させ(図3)、昇華性インク受容層を加熱する。この加熱により昇華性染料が昇華し、プラスチックが染色される。加熱手段は特に制限されることなく、オーブンなどの開放系でプラスチックごと加熱したり、熱プレス機などを使用することができる。加熱条件は、昇華性インク受容層や染色されるプラスチックを構成する樹脂により一概には言えないが、通常100〜180℃で1〜60分程度である。なお、加熱時には、昇華性インク受容層とプラスチックを固定しておくことが好ましい。固定手段は特に制限されることなく、テープ、粘着剤などを使用することができる。
【0040】
第二の方法では、以上の工程によりプラスチックが染色される。なお、染色完了後は、昇華性インク受容層をプラスチックから除去する。
【0041】
以上のように、本発明のプラスチックの染色方法は、第一の方法および第二の方法ともに、昇華性インク受容層を支持体から剥離した後にプラスチックへの染色を行うものである。したがって、曲面や凹凸のあるプラスチックに対し、染色不良を起こすことなく、簡単かつ鮮明に染色を行うことができる。また、第一の方法は、昇華性インク受容層の記録面側をプラスチックに対向させて染色を行うものであるから、転写される絵柄等の画像濃度に優れるものである。また、第二の方法は、昇華性インク受容層の記録面とは反対側の面をプラスチックに対向させて染色を行うものである。昇華性インク受容層の記録面とは反対側の面は、記録面側の面に比べて平滑性に優れることから、昇華性インク受容層とプラスチックとの密着性が向上し、第二の方法ではムラのない染色を行うことができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0043】
[実施例1、2]
厚み100μmのポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、下記の組成からなる昇華性インク受容層塗布液を乾燥後の厚みが15μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥してプラスチック染色用基材を得た。
【0044】
<昇華性インク受容層塗布液>
・ポリビニルアルコール(固形分100%) 1部
(PVA-217:クラレ社、けん化度88%)
・水 9部
・グリセリン 0.2部
【0045】
[実施例3、4]
実施例1、2の昇華性インク受容層塗布液を下記の処方に変更した以外は実施例1、2と同様にしてプラスチック染色用基材を得た。
【0046】
<昇華性インク受容層塗布液>
・ポリビニルアルコール(固形分100%) 1部
(PVA-117:クラレ社、けん化度98%)
・水 9部
・グリセリン 0.2部
【0047】
[実施例5、6]
実施例1、2の昇華性インク受容層塗布液を下記の処方に変更した以外は実施例1、2と同様にしてプラスチック染色用基材を得た。
【0048】
<昇華性インク受容層塗布液>
・ポリビニルピロリドン(固形分100%) 1部
(K−90:ISP社)
・水 9部
・エチレングリコール 0.1部
【0049】
[比較例1]
比較例1のプラスチック染色用基材として、昇華性インク受容可能な市販の印刷用紙(QPペーパー フォト光沢:コニカ社)を用意した。
【0050】
[比較例2、3]
実施例1、2の昇華性インク受容層塗布液を下記の処方に変更した以外は実施例1、2と同様にしてプラスチック染色用基材を得た。
【0051】
<昇華性インク受容層塗布液>
・ポリビニルアルコール(固形分100%) 1部
(PVA-217:クラレ社、けん化度88%)
・水 9部
【0052】
実施例1〜6および比較例1〜3のプラスチック染色用基材につき、昇華性インクを用いたインクジェットプリンタ(PM−900C:セイコーエプソン社)でベタ画像の記録を行った。その後、実施例1〜6、比較例2、3のプラスチック染色用基材については、支持体から昇華性インク受容層を剥離した後に、比較例1のプラスチック染色用基材はそのままで、プラスチック(形状:凸球面、材質:アクリル樹脂)に重ね合わせ、160℃で20分加熱し、プラスチックを染色した。なお、実施例1、3、5、比較例1、2については昇華性インク受容層の記録面をプラスチックに対向させ、実施例2、4、6、比較例3については昇華性インク受容層の記録面とは反対側の面をプラスチックに対向させて加熱を行った。
【0053】
染色されたプラスチックから昇華性インク受容層等を除去した後、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(1)染色不良
プラスチックの全面が染色されているものを「○」、一部でも染色されていないものを「×」とした。
【0055】
(2)画像濃度
染色されたプラスチックの透過の画像濃度を濃度計(TD−904:グレタグマクベス社)で測定した。なお、測定はオルソーフィルタを使用した。
【0056】
(3)染色ムラ
プラスチックの染色状態を目視にて観察し、染色ムラが全く観察されないものを「◎」、ほとんど観察されないものを「○」とした。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1〜6のプラスチック染色用基材は、昇華性インク受容層が支持体から剥離可能であって、昇華性インク受容層に親水性樹脂および多価アルコールを含むものである。したがって、表1の結果からも分かるように、いずれのものも染色不良を起こすことなく、簡単かつ鮮明に染色することができるものであった。また、実施例1〜4のものは、昇華性インク受容層の樹脂としてポリビニルアルコールを使用していることから、実施例5、6のものに比べ昇華性インクの印字適性に優れるとともに、転写された画像の画像濃度に優れるものであった。特に、実施例1、2のポリビニルアルコールはけん化度が90%未満であることから、転写された画像の画像濃度に優れるものであった。
【0059】
また、実施例1、3、5のプラスチック染色方法は、昇華性インク受容層の記録面側をプラスチックに対向させて染色を行うものであるから、実施例2、4、6の方法に比べ、転写された画像の画像濃度に優れるものであった。一方、実施例2、4、6のプラスチック染色方法は、昇華性インク受容層の記録面とは反対側の面をプラスチックに対向させて染色を行うものであるから、実施例1、3、5の方法に比べ画像濃度は劣るものの、ムラの全くない染色を行うことができるものであった。
【0060】
比較例1のものは、昇華性インク受容層が支持体から剥離できないものである。したがって、プラスチックの一部に染色されない箇所が生じ、染色不良となってしまうものであった。
【0061】
比較例2、3のものは、昇華性インク受容層が支持体から剥離できるものの、昇華性インク受容層に多価アルコールを含まないものである。したがって、プラスチックの一部に染色されない箇所が生じ、染色不良となってしまうものであった。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明のプラスチック染色用基材は、昇華性インク受容層が支持体から剥離可能であり、かつ、昇華性インク受容層が親水性樹脂および多価アルコールを含む構成を採用するものである。したがって、昇華性インクを用いたインクジェットプリンタでの記録が可能であって、かつ曲面や凹凸のあるプラスチックに対し、染色不良を起こすことなく、簡単かつ鮮明に染色することができる。
【0063】
また、本発明のプラスチックの染色方法は、昇華性インク受容層を支持体から剥離した後にプラスチックへの染色を行うものである。したがって、曲面や凹凸のあるプラスチックに対し、染色不良を起こすことなく、簡単かつ鮮明に染色を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプラスチック染色用基材の一実施例を示す断面図
【図2】 本発明のプラスチック染色用基材の使用方法の一態様を示す図
【図3】 本発明のプラスチック染色用基材の使用方法の他の態様を示す図
【符号の説明】
1・・・支持体
2・・・昇華性インク受容層
3・・・プラスチック染色用基材
4・・・プラスチック
5・・・画像
Claims (5)
- 支持体上に昇華性インク受容層を有するプラスチック染色用基材であって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有し、前記多価アルコールは分子量100以下であることを特徴とするプラスチック染色用基材。
- 支持体上に昇華性インク受容層を有するプラスチック染色用基材であって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有し、前記多価アルコールはグリセリンであることを特徴とするプラスチック染色用基材。
- 支持体上に昇華性インク受容層を有するプラスチック染色用基材であって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有し、前記親水性樹脂がけん化度が90%未満のポリビニルアルコールであることを特徴とするプラスチック染色用基材。
- 支持体上に昇華性インク受容層を有するプラスチック染色用基材であって、前記昇華性インク受容層が前記支持体から剥離可能であり、かつ前記昇華性インク受容層が、親水性樹脂および多価アルコールを含有し、前記多価アルコールの含有量は、昇華性インク受容層の樹脂100重量部に対し、5〜20重量部であることを特徴とするプラスチック染色用基材。
- 請求項1ないし4記載のプラスチック染色用基材に昇華性インクを用いたインクジェットプリンタで記録を行い、前記昇華性インク受容層を前記支持体から剥離した後、前記昇華性インク受容層の記録面、又は記録面とは反対側の面をプラスチックに対向させ、前記昇華性インク受容層を加熱することにより前記プラスチックを染色することを特徴とするプラスチック染色方法。
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