JP4098944B2 - ガスセンサの制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関から排出される排ガス中の特定成分の検出等に用いられるガスセンサの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のガスセンサの一つとして、図17に示すように、酸素イオン伝導性のある固体電解質層に多孔質電極を形成することにより形成された第1酸素ポンプセル11,酸素濃度測定セル12,第2酸素ポンプセル13を絶縁層14,15を介して積層した構造を有するセンサ本体10a、及びセンサ本体10aを加熱するヒータ10bからなるガスセンサ10が知られている。
【0003】
即ち、センサ本体10aは、第1拡散経路16を介して被測定ガス空間(排気管内)に連通する第1測定室S1、及び第2拡散経路17を介して第1測定室S1に連通する第2測定室S2を有し、第1酸素ポンプセル11及び第2酸素ポンプセル13により、第1測定室S1及び第2測定室S2内の酸素のポンピング(汲み出し,汲み入れ)をそれぞれ可能とし、酸素濃度測定セル12により、酸素濃度を一定に制御された酸素基準室18と第1測定室S1との酸素濃度差、つまり第1測定室S1内の酸素濃度の測定を可能とするように構成されている。
【0004】
そして、このガスセンサ10を駆動する駆動回路20は、ヒータ10bにてセンサ本体10aを活性温度(例えば750℃)まで加熱し、この状態で、酸素濃度測定セル12の両端電圧Vsが予め設定された一定電圧(例えば425mV)となるように第1ポンプ電流Ip1を制御すると共に、第2酸素ポンプセル13に、第2測定室S2から酸素を汲み出す方向に一定の第2ポンプ電圧V2p(例えば450mV)を印加し、この時、第2酸素ポンプセル13に流れる第2ポンプ電流Ip2の検出を行う。
【0005】
なお、検出すべき特定成分が酸化物(例えば、窒素酸化物,亜硫酸ガス,二酸化炭素,水など)である場合には、第1測定室S1内の酸素濃度を低酸素濃度(≒0%)に保持し、且つ第2ポンプ電圧Vp2を所定の電圧に保持すると、第2測定室S2では、第2酸素ポンプセル13を構成する多孔質電極の触媒作用によって、酸化物が分解し、その分解により得られた酸素が第2測定室S2から抜き取られることにより第2ポンプ電流Ip2が流れる。従って、第2ポンプ電流Ip2は、特定成分の濃度に対応した大きさとなる。
【0006】
一方、特定成分が還元性物質(例えば、一酸化炭素,炭化水素,アルコールなど)である場合には、第2測定室S2内にて特定成分と酸素とが反応し、その反応後の残存酸素が第2測定室S2から抜き取られることにより第2ポンプ電流Ip2が流れる。この時、第2測定室S2内を、特定成分が検出される最大量と同程度(通常は、ppmオーダ)の一定酸素濃度に制御することにより、特定成分の濃度が高いほど残存酸素の濃度が低くなることから、この残存酸素の濃度に応じた大きさとなる第2ポンプ電流Ip2に基づいて、特定成分の濃度を求めることが可能となる。
【0007】
つまり、いずれの場合でも、特定成分の濃度を正確に検出するには、第2測定室S2の雰囲気を、一定の低酸素濃度となるように制御する必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、このようなガスセンサ10を用いて、例えば、内燃機関の排ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度を検出する場合を考えると、ガスセンサ10の起動時に第2測定室S2を満たしているガスは、前回の運転を停止してから、即ち排ガスの供給が途絶えてから今回の起動までの時間が長くなるほど、大気雰囲気に近いリーン雰囲気となる。
【0009】
従って、起動直後の第2酸素ポンプセル13は、起動前に第2測定室S2を満たしているガスに含まれた酸素ガスやその他の含酸素ガスをポンピングすることになるため、本来測定すべき排ガス中の特定成分(NOx)濃度に関わらず、過大な第2ポンプ電流Ip2が流れることになる。
【0010】
この過大な第2ポンプ電流Ip2は、第2酸素ポンプセル13による酸素の汲出しにより、第2測定室S2内の雰囲気が所定の低酸素濃度状態となるまで継続する。但し、一定の第2ポンプ電圧Vp2が印加された第2酸素ポンプセル13により第2測定室S2から汲み出すことのできる酸素量は、極めて限られたものであり、従って、所定の低酸素濃度状態に達するまでには、非常に長い時間(例えば大気雰囲気から開始した場合には5分以上)を要することになる。
【0011】
つまり、ガスセンサ10の起動後、被測定ガス中の特定成分濃度を正確に測定できるようになるまでには、十分に長い待ち時間を設定する必要があり、使い勝手が悪いという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するために、ガスセンサの起動後、短い待ち時間にて正確な測定値を得ることが可能なガスセンサの制御方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための発明である請求項1記載のガスセンサの制御方法は、被測定ガス空間に連通した第1測定室と、該第1測定室に連通した第2測定室と、一対の多孔質電極の一つが前記第1測定室に配置されると共に、前記第1測定室内の酸素をポンピングする第1酸素ポンプセルと、一対の多孔質電極の一つが前記第2測定室に配置されると共に、前記第2測定室内の酸素をポンピングする第2酸素ポンプセルと、を有するセンサ本体と、前記センサ本体を加熱するヒータと、を有し、前記第2酸素ポンプセルを流れる第2ポンプ電流が、被測定ガス中に含まれる特定物質の濃度に対応した出力として用いられるガスセンサに適用される。
そして、ガスセンサの起動時には、ヒータへの通電を開始する一方、通常の駆動制御を開始する前に、第2酸素ポンプセルに印加する第2ポンプ電圧を通常の駆動制御時よりも高い値に設定し、且つ、第1酸素ポンプセルに印加する第1ポンプ電圧を通常の駆動制御時よりも高い値に設定する予備制御を行って、第2測定室内の酸素濃度を低下させることを特徴とする。
【0013】
このように本発明では、予備制御を実施することにより、第2測定室内の酸素濃度を速やかに必要な濃度まで低下させることができるため、通常の駆動制御に切替後には直ちに正確な測定値を得ることができる。
つまり、本発明によれば、ガスセンサの起動後、正常な測定結果が得られるまでに必要な待ち時間が大幅に短縮されるため、ガスセンサの使い勝手が向上し、ガスセンサでの測定結果を、より有効に利用することができる。
【0014】
また、請求項2記載のガスセンサの制御方法は、センサ本体が、第1酸素ポンプセル、第2酸素ポンプセルに加えて、一対の多孔質電極の一つが前記第1測定室に配置されると共に、前記第1測定室内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定セルを備えたガスセンサに適用される。
そして、本発明では、予備制御にて、第2ポンプ電圧を通常の駆動制御時よりも高い値に設定すると共に、第1ポンプ電圧を、酸素濃度測定セルの出力電圧が目標電圧よりも高い値となるように第1酸素ポンプセルに印加することを特徴とする。
従って、本発明によれば、請求項1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0015】
つまり、第2ポンプ電圧を高く設定すること(請求項1,2)により、第2酸素ポンプセルが第2測定室から汲み出す酸素量が増大するため、第2測定室内の酸素濃度を、駆動制御時より速やかに低下させることができる。
また、第1ポンプ電圧を高く設定すること(請求項1)、及び第1測定室の酸素濃度の目標値を低く設定すること(請求項2)により、いずれも第1測定室内の酸素濃度が速やかに低下し、その結果、第1測定室から第2測定室に漏出する酸素量が急速に低下するため、第2測定室内の酸素濃度を速やかに低下させることができる。
【0016】
但し、予備制御時に印加される第1及び第2ポンプ電圧の設定値は、第1及び第2酸素ポンプセルが破壊されない範囲にて設定する必要があり、また、第1測定室の酸素濃度の目標値は、酸素濃度測定セルの出力電圧範囲内に設定する必要がある。
【0017】
また、これら第1及び第2ポンプ電圧の設定値や第1測定室の酸素濃度の目標値は、第1及び第2測定室の酸素濃度を、少なくとも駆動制御時の2/3以下に制御するような値に設定することが望ましい。
そして、上述の予備制御を行った場合、駆動制御への切替タイミングは、一定時間(例えば1〜100秒程度)が経過したか否かによって判断してもよいが、例えば、請求項4記載のように、第2酸素ポンプセルに流れる第2ポンプ電流が予め設定された判定値に達したか否かにより判断してもよい。
【0018】
即ち、第2測定室の酸素濃度の低下に応じて第2ポンプ電流も低下するため、この第2ポンプ電流から第2測定室の状態を判定することができるのである。
そして、この場合、第2測定室の酸素濃度が、所望の状態となったことを確認してから通常の駆動制御に制御が切り替わることになるため、ガスセンサから正常な測定結果が得られるようになるタイミングを正確に知ることができる。その結果、第1又は第2測定室からの酸素の汲み出しが必要以上に過剰となること、即ち、通常の駆動制御に戻した時に第1又は第2ポンプセルに逆電流が流れることを防止することができる。
【0019】
なお、本発明のガスセンサの制御方法では、請求項3記載のように、ガスセンサの起動時に、酸素濃度測定セルの内部抵抗が予め設定されたしきい値に達すると、予備制御を開始させるようにしてもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明が適用された自動車用エンジン制御システムの全体構成図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のエンジン制御システムは、内燃機関(ガソリン直噴エンジン)M1の排気管M3に設けられ、排ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度,酸素(O2 )濃度の検出が可能なガスセンサ10と、ガスセンサ10を駆動する駆動回路20と、内燃機関M1の運転状態を検出する各種センサ(図示せず)の出力、及び駆動回路20を介して取り込まれるガスセンサ10の出力に基づき、内燃機関M1の吸気管M2に設けられたスロットルバルブM4やインジェクタM5を駆動して、内燃機関M1の運転状態を制御するする電子制御装置(ECU)6とを備えている。
【0028】
このうち、ECU6は、CPU,ROM,RAMを中心に構成されたマイクロコンピュータからなり、内燃機関M1の運転開始時にガスセンサ10を起動する起動処理、及びガスセンサ10を含む各種センサ(図示せず)からの検出結果に基づき、スロットルバルブM4,インジェクタM5を制御する運転制御処理等を実行する。
【0029】
なお、ガスセンサ10は、先の[課題を解決するための手段]にて説明したもの(図17参照)と全く同じものであるため、ここでは説明を省略する。
次に、駆動回路20は、図2に示すように、第1酸素ポンプセル(以下「P1セル」という)11に第1ポンプ電流Ip1を供給する第1ポンプ電流供給回路21と、Vsセル12の両端電圧Vsが一定値(本実施形態では350mV)となるように、第1ポンプ電流供給回路21が供給する第1ポンプ電流Ip1をPID(比例・積分・微分)制御するPID回路22とを備えている。
【0030】
このうち、第1ポンプ電流供給回路21は、非反転入力端子に所定の第1基準電圧Vf1(本実施形態では2.5V)、反転入力端子に電流検出抵抗Rp1を介してPID回路22の出力が印加され、出力端子と反転入力端子との間にP1セル11が接続されたオペアンプOP1からなる。
【0031】
また、オペアンプOP1の反転入力端子側に接続されたP1セル11の電極は、酸素濃度測定セル(以下「Vsセル」という)12,第2酸素ポンプセル(以下「P2セル」という)13を構成する各一対の電極のうち一方の電極と共通に接続されている。従って、各セル11〜13の共通接続側電極の電位は、いずれもオペアンプOP1の非反転入力端子と同電位、即ち第1基準電圧Vf1に保持される。
【0032】
また駆動回路20は、P2セル13に一定の第2ポンプ電圧Vp2を印加するための第2ポンプ電圧印加回路23と、切替信号Schに従って第2ポンプ電圧Vp2の大きさを切り替える電圧切替回路24とを備えている。
このうち、第2ポンプ電圧印加回路23は、出力端子が電流検出抵抗Rp2を介してP2セル13に接続されると共に、反転入力端子に電流検出抵抗Rp2のP2セル13側端が接続され、非反転入力端子への印加電圧(第2基準電圧Vf2)をP2セル13に印加する周知のバッファ回路として構成されたオペアンプOP2からなる。
【0033】
一方、電圧切替回路24は、切替信号Schに従って、駆動制御電圧Vf21 (本実施形態ではVf21=450mV+Vf1 )或いはこれより高く設定された予備制御電圧Vf22 (本実施形態ではVf22=2000mV+Vf1 )のいずれかを第2基準電圧Vf2として出力するようにされている。
【0034】
つまり、この第2ポンプ電圧印加回路23により、P2セル13には、一定の第2ポンプ電圧Vp2(=Vf2−Vf1)が印加され、しかも切替信号Schによって、第2ポンプ電圧Vp2の大きさを450mV又は2000mVの2段階に切り替えることができるようにされている。また、電流検出抵抗Rp2の両端電圧は、P2セル13に供給される第2ポンプ電流Ip2の大きさに応じたものとなる。
【0035】
なお、ここでは、予備制御電圧Vf22 を用いた時の第2ポンプ電圧Vp2が2.0Vとなるように設定されているが、この値は、450mVより大きくP2セル13の耐圧の上限までの範囲内で適宜設定すればよい。P2セル13の耐圧は、材質により決まり、例えばジルコニアの場合、3000mV程度である。また、ジルコニアの場合、濃度差が10倍変化する毎に、約50mVの出力が得られるため、第2ポンプ電圧Vp2の大きさは駆動制御時の電圧より10mV以上大きいこと、即ち、酸素分圧が駆動制御時の2/3以下になるように設定することが望ましい。
【0036】
更に、駆動回路20は、センサ本体10a各部(ここでは特にオペアンプOP1,OP2、PID回路22)及びヒータ10bへの通電を行う通電回路25と、Vsセル12の内部抵抗Rpvs を測定することによりセンサ本体10aの活性状態を判定し、通電回路25を介して各部への通電を制御する活性判定通電制御回路26と、活性判定通電制御回路26からの指令にて起動し、タイムアウトするまでの一定時間(本実施形態では15sec)の間、予備制御電圧Vf22 を選択し、タイムアウトすると駆動制御電圧Vf21 を選択するような切替信号Schを電圧切替回路24に供給するタイマー回路27とを備えている。
【0037】
また、図示しないが、第1及び第2ポンプ電流Ip1,Ip2の検出値として電流検出抵抗Rp1,Rp2の両端電圧を、ECU6に対して出力するよう構成されている。なお、以下では、PID回路22,活性判定通電制御回路26,タイマー回路27を総称して制御ブロックB1ともいう。
【0038】
ここで、ECU6が実行するNOxセンサ起動処理、及びこのNOxセンサ起動処理の実行時に制御ブロックB1が行う起動制御を図3に示すフローチャートに沿って説明する。
まず、ECU6が実行するNOxセンサ起動処理は、内燃機関M1の運転開始時に起動される。本処理が起動されると、図3(a)に示すように、まず駆動回路20に対して起動指令を出力する(S120)。
【0039】
そして、駆動回路20が通常の駆動制御を開始したことを表す起動通知が駆動回路20から入力されるまで待機し(S150−NO)、起動通知が入力されると(S150−YES)、ガスセンサ10の出力、即ち第1及び第2ポンプ電流Ip1,Ip2の検出値(電流検出抵抗Rp1,Rp2の両端電圧)が正常な値を示すものであるとして、運転制御処理でのガスセンサ10の出力の使用を許可して(S160)、本処理を終了する。
【0040】
一方、制御ブロックB1では、起動制御の開始前には、活性判定通電制御回路26のみが電源供給を受けて動作可能にされ、起動指令の入力待ち状態とされている。そして、ECU6から起動指令が入力されると、起動制御が開始され、図3(b)に示すように、起動指令を受けた活性判定通電制御回路26は、まず、通電回路25を介してヒータ10bへの通電を開始する(S210)。この時、通電回路25は、ヒータ10bに一定電圧(本実施形態では12V)を印加する。
【0041】
これと共に、活性判定通電制御回路26は、Vsセル12への電流供給(本実施形態では約200kΩの抵抗を介して5Vを印加)を行うことにより、酸素基準室18への酸素の汲み込みを開始する(S220)。センサ本体10aが加熱され、Vsセル12の内部抵抗が低下するに従って、電流供給に基づいたVsセル12の両端電圧Vsは徐々に低下する。
【0042】
そして、Vsセル12の両端電圧Vsを監視し、両端電圧Vsが所定値Vth(本実施形態では1.5V)に以下になると(S230−YES)、Vsセル抵抗の検出制御、及び通電回路25を介したヒータ電圧のPID制御を開始する(S240)。
【0043】
このうち、Vsセル抵抗の検出制御は、所定時間TO(例えば1sec)毎に実行され、まず、Vsセル12の両端電圧Vsを読み込んで、これを基本検出電圧Vs1として設定する。続けてVsセル12に対してパルス電圧を印加して、所定時間T1(例えば60μsec)経過後におけるVsセル12の両端電圧Vsを読み込んで、これを抵抗検出電圧Vs2として設定する。そして、両検出電圧の偏差ΔVs(=Vs1−Vs2)に基づいて、予め用意されたテーブルを参照する等してVsセル12の内部抵抗Rpvs を求める。
【0044】
つまり、Vsセル12の内部抵抗Rpvs はVsセル12の素子温度に応じて変化するため、この内部抵抗Rpvs に基づいて、Vsセル12,ひいてはセンサ本体10aの素子温度を推定することができるのである。なお、内部抵抗Rpvs を求めるための具体的な回路構成や、内部抵抗Rpvs から素子温度を求める方法は、例えば、本願出願人の出願による特開平10−142194号公報に詳述されているので、ここでは説明を省略する。
【0045】
一方、ヒータ電圧のPID制御では、このVsセル抵抗の検出制御によって検出される内部抵抗Rpvs が目標値(例えば200Ω:750℃に相当)にて一定となるようにヒータ10bへの通電を制御する。但し、ここでは、ヒータ10bに印加する電圧の実効値は最大13Vとする。また、ヒータ電圧のPID制御を開始した時点の内部抵抗Rpvs は、通常、上述の目標値よりかなり大きな状態にある。
【0046】
その後、内部抵抗Rpvs が、上記目標値より少し大きく設定されたしきい値(例えば300Ω:650℃に相当)に達すると、センサ本体10aが十分に活性化されたものとして(S250−YES)、活性判定通電制御回路26は、予備制御設定にて、通電回路25にオペアンプOP1,OP2、及びPID回路22への電源供給を開始させる。これにより、第1及び第2酸素ポンプセル11,13による第1及び第2測定室S1,S2内の酸素のポンピング、及びPID回路22による第1ポンプ電流Ip1のPID制御が開始される(S260)。
【0047】
なお、予備制御設定とは、電圧切替回路24が、第2基準電圧Vf2として予備制御電圧Vf22 をオペアンプOP2に印加する設定のことであり、切替信号Schの初期状態が予備制御設定になっていれば、各部への通電を開始するだけでよい。
【0048】
これと共に、活性判定通電制御回路26は、タイマー回路27を起動する(S270)。そして、タイマー回路27が一定時間(例えば15sec)後にタイムアウトすると(S280−YES)、タイマー回路27は切替信号Schの設定を駆動制御設定(電圧切替回路24が第2基準電圧Vf2として駆動制御電圧Vf21 を出力する設定)に切り替えると共に、活性判定通電制御回路26は、通常の駆動制御を開始したことを表す起動通知をECU6に対して出力した後、本処理を終了する。なお、改めて起動通知を生成するのではなく、切替信号Schを起動通知として兼用してもよい。
【0049】
ここで、図4は、上述の起動制御の実行時にガスセンサ10を用いて行ったNOx濃度(第2ポンプ電流Ip2の検出値)の測定結果を示す。図中点線にて示すグラフは、予備制御を実行しない比較例についての測定結果である。
但し、起動制御開始時における第1及び第2測定室S1,S2の雰囲気を大気と等しい状態にして測定を行った。また、上述の起動制御では、本来、起動制御の開始時点から予備制御の開始時点までの間は、第2ポンプ電圧Vp2の印加を行わないのであるが、ここでは、この間の第2ポンプ電流Ip2も測定するために、この間も駆動制御設定にて第2ポンプ電圧Vp2の印加を行った。
【0050】
図4に示すように、ガスセンサ10が起動されると(時刻t1)、第2測定室S2に存在する多量の酸素により、過大な第2ポンプ電流Ip2が流れる。
センサ本体10aが活性温度まで加熱され、予備制御が開始されると(時刻t2)、通常より高い第2ポンプ電圧Vp2が印加されたP2セル13によって、第2測定室S2の酸素が急速に汲み出されることにより酸素が欠乏し、これに伴って第2ポンプ電流Ip2は急激に低下する。
【0051】
その後、タイマー回路27がタイムアウトして、予備制御から通常の駆動制御に切り替わると(時刻t3)、第1測定室S1に残存する酸素が第2測定室S2に流れ込むことにより、第2ポンプ電流Ip2が一時的に上昇するが、その後、NOx濃度のに対応した大きさ(0ppm近傍)に向けて収束する。
【0052】
この第2ポンプ電流Ip2が一時的に上昇したピーク時(時刻t4)の値(約130ppm)は、予備制御を行わない場合の検出値(約430ppm)と比較して、1/3程度の大きさとなる。また、この時点以降は、予備制御の有無に関わらずいずれの場合も駆動制御が行われるため、P2セル13により酸素の汲み出し能力はいずれの場合も同等となる。つまり、予備制御を行うことにより、第2測定室S2が速やかに低酸素濃度状態となり、ガスセンサ10が正確な測定結果を出力するようになるまでの時間が大幅に短縮されることがわかる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のエンジン制御システムでは、センサ本体10aが活性化すると、通常の駆動制御時より第2ポンプ電圧Vp2を高く設定した予備制御を一定期間だけ行った後、通常の駆動制御を開始するようにされているので、第2測定室S2内の酸素濃度を速やかに低下させることができる。
【0054】
その結果、ガスセンサ10の起動後、短い待ち時間にて、ガスセンサ10の出力を使用した制御が可能になるため、例えば内燃機関M1が短時間しか運転されない場合であっても、ガスセンサ10の出力を有効に利用することができる。
なお、本実施形態では、予備制御から駆動制御への切替タイミングを、タイマー回路27を用いて生成しているが、図5に示すように、タイマー回路27を省略し、代わりに、電流検出抵抗Rp2の両端電圧を検出する電流検出回路28と、その検出電圧を、例えば、NOx濃度が0ppmに相当する所定の第5基準電圧Vf5と比較するオペアンプOP3からなる比較回路29とを設け、このオペアンプOP3の出力を切替信号Schとしてもよい。この場合、検出電圧が第5基準電圧Vf5より低下すると、第2ポンプ電圧Vp2の設定が予備制御電圧Vf22 から駆動制御電圧Vf21 に切替わることになる。
【0055】
また、上記実施形態では、制御ブロックB1をハードウェアにて実現しているが、図6(a)に示すように、これをCPU30に置き換えてソフトウェアにて実現してもよい。この場合、CPU30は、Vsセル12の両端電圧Vsを読み込むためのA/D変換器、及び第1ポンプ電流供給回路21への制御信号を出力するためのD/A変換器、電圧切替回路24へ切替信号Schを出力したり、通電回路25へ各種指令を出力するための出力ポート、ECU6との間で起動指令,起動通知を入出力するための入力及び出力ポート等を備える必要がある。
【0056】
そして、CPU30は、これらA/D変換器,D/A変換器,入出力ポートを介して入出力される各種信号に基づき、PID回路22と同等の制御を実現するPID制御処理の他、図3(b)にて示されたフローチャートと同等の制御を実現する起動制御処理、起動制御処理の中で起動されるVsセル抵抗の検出制御、ヒータ電圧のPID制御に相当する処理を並列に実行すればよい。
【0057】
更に、図6(b)に示すように、電圧切替回路24もCPU30に取り込み、CPU30には、切替信号Sch用の出力ポートの代わりに、第2基準電圧Vf2を発生させるためのD/A変換器を設けるように構成してもよい。
また、図6(a)(b)において、図5に示した場合と同様に、第2ポンプ電流を検出して、第2基準電圧Vf2(第2ポンプ電圧Vp2)の切替を行う場合には、CPU30に、電流検出回路(図示せず)での検出電圧を取り込むためのA/D変換器を追加する必要がある。
【0058】
この場合、図3に示したフローチャートのS270,S280も、図7に示すように変更する必要がある。即ち、S270では、第2ポンプ電流Ip2を検出し、続くS280では、検出した第2ポンプ電流Ip2とNOx濃度が0ppmに相当するしきい値Ithとを比較し、しきい値Ithより大きければS270に戻り、しきい値Ithより小さくなればS290に移行して、予備制御から駆動制御に切り替えるようにすればよい。
【0059】
また更に、図6(a)(b)において、制御ブロックB1中のPID回路22以外の部分のみをCPU30に置き換えてもよい。
また、上記実施形態では、第1ポンプ電流供給回路21を、オペアンプOP1を中心とした増幅回路により構成したが、図8に示すように、各セル11〜13の共通接続側電極に、第1基準電圧Vf1を直接印加し、PID回路22の出力を、電流検出抵抗Rp1を介するだけで、そのままP1セル11に印加するように構成してもよい。
【0060】
このような第1ポンプ電流供給回路21の置き換えは、図5,6に示した各変形例にも同様に適用でき、これを適用することにより、回路構成を簡易化できる。
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
【0061】
本実施形態では、駆動回路の構成が一部異なる以外は、第1実施形態と同様であるため、同一構成要素については同一符号を付して説明を省略し、構成の相異する部分を中心に説明する。
本実施形態において駆動回路20は、図9に示すように、電圧切替回路24が省略され、第2ポンプ電圧印加回路23を構成するオペアンプOP2の非反転入力端子には、第1実施例における駆動制御電圧Vf21 に等しい一定の第2基準電圧Vf2が印加されている。
【0062】
また、駆動回路20は、タイマー回路27が出力する切替信号Schに従って、駆動制御設定時には第1ポンプ電流供給回路21の出力、予備制御設定時には所定の第3基準電圧Vf3をP1セル11に供給する第1切替回路31と、同じく切替信号Schに従って、予備制御設定時にのみ、各セル11〜13の共通接続側電極に第4基準電圧Vf4(=Vf1)を印加する第2切替回路32とを備えている。
【0063】
つまり、駆動制御時には、PID制御された第1ポンプ電流Ip1をP1セル11に供給し、予備制御時には、一定の第1ポンプ電圧Vp1(=Vf3−Vf4、本実施形態では1000mV)をP1セル11に印加するようにされている。
但し、予備制御時に印加する一定の第1ポンプ電圧Vp1は、第1実施形態において予備制御時に印加する第2ポンプ電圧Vp2と同様に、駆動制御時の第1ポンプ電圧Vp1(例えば290mV)より大きく(望ましくは10mV以上大きいこと)、且つP1セル11の耐圧上限(例えば3000mV)までの範囲に設定する必要がある。
【0064】
そして、制御ブロックB1では、予備制御時(S260)に、第2ポンプ電圧Vp2ではなく、第1ポンプ電圧Vp1を通常の駆動制御時より高い一定電圧に設定する以外は、第1実施形態の場合と全く同様の起動制御(図3(b)参照)を実施する。
【0065】
そして、予備制御時に、駆動制御時より高い第1ポンプ電圧Vp1が設定されると、センサ本体10aでは、P1セル11が第1測定室S1から駆動制御時より多くの酸素を汲み出すため、第1測定室S1内の酸素濃度が急速に低下する。
その結果、第1測定室S1から第2測定室S2に、新たな酸素が流れ込むことが阻止されるだけでなく、逆に、第2測定室S2から第1測定室S1に向けて余分な酸素が漏出することになるため、第2測定室S2の酸素濃度も速やかに低下することになる。
【0066】
従って、本実施形態のエンジン制御システムによれば、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、第4基準電圧Vf4を第1基準電圧Vf1と等しくしたが、これを第1基準電圧より小さく(Vf4<Vf1)設定してもよい。この場合、予備制御時には、P2セル13に印加される第2ポンプ電圧Vp2(=Vf2−Vf4)も駆動時より大きくなるため、より効率よく第2測定室S2内の酸素濃度を低下させることができる。
【0067】
また、本実施形態でも、第1実施形態の各変形例(図5,6,8参照)と同様に、タイマー回路27の代わりに、図5に示された、電流検出回路28,比較回路29を設け、第2ポンプ電流Ip2の検出値に基づいて切替信号Schを生成したり、第1ポンプ電流供給回路21を、オペアンプOP1を省略したものに置き換えたり、制御ブロックB1の全部又は一部をCPU30に置き換えたりしてもよい。
【0068】
特に、第1ポンプ電流供給回路21の置き換えを行った場合には、図10に示すように、第2切替回路32も省略することができる。
また、制御ブロックB1をCPU30に置き換えると共に、第1ポンプ電流供給回路21を、オペアンプOP1を省略したものに置き換えた場合には、図11(a)に示す構成となり、更に、第1切替回路31の機能をCPU30に取り込んで、図11(b)に示す構成としてもよい。
【0069】
この場合、CPU30は、予備制御時には、駆動制御時にPID制御された第1ポンプ電流Ip1を供給するためのD/A変換出力から、一定電圧を供給するような処理を行えばよい。
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。
【0070】
本実施形態では、駆動回路の構成が一部異なる以外は、第1実施形態と同様であるため、同一構成要素については同一符号を付して説明を省略し、構成の相異する部分を中心に説明する。
本実施形態において駆動回路20は、図12に示すように、電圧切替回路24が省略され、第2ポンプ電圧印加回路23を構成するオペアンプOP2の非反転入力端子には、駆動制御電圧Vf21 に設定された一定の第2基準電圧Vf2が印加されている。
【0071】
また、PID回路22が、第1ポンプ電流Ip1をPID制御する際に、Vsセル12の両端電圧Vsの目標電圧を外部から設定可能なように構成されている。更に、駆動回路20は、タイマー回路27が出力する切替信号Schに従って、駆動制御設定時には駆動制御目標電圧Vf61 (例えば425mV)、予備制御設定時には駆動制御目標電圧Vf61 より高い予備制御目標電圧Vf62 (例えば850mV)をPID回路22に供給する目標電圧切替回路33を備えている。
【0072】
なお、本実施形態では、この目標電圧切替回路33も制御ブロックB1に含まれるものとする。また、予備制御目標電圧Vf62 より大きく、Vsセル12の最大出力電圧(例えば1000mV程度)までの範囲内で適宜設定すればよい。
つまり、予備制御時には、第1測定室S1内の酸素濃度が駆動制御時より低くなるような目標電圧が設定され、より多くの第1ポンプ電流Ip1が第1測定室S1から酸素を汲み出す方向に流れるようにされている。
【0073】
また、制御ブロックB1では、予備制御開始時(S260)に、第2ポンプ電圧Vp2を駆動制御時より高い一定電圧に設定する代わりに、PID制御の目標電圧を駆動制御時より高い値(第1測定室S1の酸素濃度が低くなる値)に変更する以外は、第1実施形態の場合と同様の起動制御(図3(b)参照)を実施する。
【0074】
そして、予備制御時に、PID制御の目標電圧が変更されると、センサ本体10aでは、P1セル11が第1測定室S1から駆動制御時より多くの酸素を汲み出すため、第1測定室S1内の酸素濃度が急速に低下する。その結果、第2実施形態の場合と同様に、第1測定室S1から第2測定室S2に、新たな酸素が流れ込むことが阻止されるだけでなく、逆に、第2測定室S2から第1測定室S1に向けて余分な酸素が漏出することになるため、第2測定室S2の酸素濃度も速やかに低下することになる。
【0075】
従って、本実施形態のエンジン制御システムによれば、第1及び第2実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態でも、第1実施形態の各変形例(図5,6,8参照)と同様に、タイマー回路27の代わりに、図5に示された、電流検出回路28,比較回路29を設け、第2ポンプ電流Ip2の検出値に基づいて切替信号Schを生成したり、第1ポンプ電流供給回路21を、オペアンプOP1を省略したものに置き換えたり、目標電圧切替回路33を含む制御ブロックB1の全部又は一部をCPU30に置き換えたりしてもよい。
【0076】
そして、例えば、制御ブロックB1をCPU30に置き換えた場合には、図13に示す構成となり、更に、第1ポンプ電流供給回路21を、オペアンプOP1を省略したものに置き換えた場合には、先に図11(b)にて示したものと、同様の構成となる。
[第4実施形態]
次に第4実施形態について説明する。
【0077】
本実施形態では、駆動回路の構成が一部異なる以外は、第3実施形態と同様であるため、同一構成要素については同一符号を付して説明を省略し、構成の相異する部分を中心に説明する。
本実施形態において駆動回路20は、図14に示すように、第2ポンプ電圧印加回路23から第2ポンプセル13に至る線路中に該線路を開閉するスイッチ34が設けられ、また、タイマ回路27の代わりに、目標電圧切替回路33及びスイッチ34の切替を制御するための切替信号Schを生成する切替制御回路35が設けられている。
【0078】
スイッチ34は、切替信号Schにより駆動制御電圧Vf61 が選択されている時には閉成(駆動制御設定という)され、予備制御電圧Vf62 が選択されている時には開放(予備制御設定という)されるように構成されている。
つまり、予備制御時には、第1測定室S1内の酸素濃度が駆動制御時より低くなるような目標電圧が設定されることで、より多くの第1ポンプ電流Ip1が第1測定室S1から酸素を汲み出す方向に流れると共に、第2酸素ポンプセル13への第2ポンプ電圧Vp2の印加が禁止されることで、第2酸素ポンプセル13が酸素濃度測定セルとして動作することになる。
【0079】
そして、切替制御回路35は、活性判定通電制御回路26からの指令に従って起動されると、予備制御設定となる切替信号Schを出力後、第2酸素ポンプセル13の出力電圧を監視し、該出力電圧が所定の酸素濃度に対応したしきい値Vthに達すると、駆動制御設定となる切替信号Schを出力するように動作する。
【0080】
従って、この場合、制御ブロックB1が実行する起動制御は、図3(b)のS270,S280が、図7(b)に示すS265〜S285に変更したものとなる。
即ち、PID制御の目標電圧が予備制御電圧Vf62 に変更され予備制御が開始(S260)されると、スイッチ34を開放(S265)して、第2酸素ポンプセル13の出力電圧VOを検出(S270)する。その検出電圧VOがしきい値Vthより大きい(S280−NO)間は、S270に戻って第2酸素ポンプセル13の監視を続け、検出電圧VOがしきい値Vth以下(S280−YES)になると、第2測定室S2の酸素濃度は十分に低下したものとして、スイッチ34を閉成し(S285)、PID制御の目標電圧を駆動制御電圧Vf61 に切り替えることにより、予備制御を終了し通常の駆動制御を開始するように変更すればよい。
【0081】
このように、本実施形態では、予備制御の間、第2酸素ポンプセル13を酸素濃度測定セルとして使用し、第2測定室S2内の状態に応じて予備制御の終了タイミングを決めている。従って、本実施形態によれば、ガスセンサ10aから正常な測定結果が得られるタイミングを正確に知ることができるだけでなく、予備制御による酸素の汲み出しが過剰に行われてしまうことがないため、通常の駆動制御に戻した時に、第1又は第2酸素ポンプセルに逆電流が流れることを防止することができる。
【0082】
なお、本実施形態でも、他の実施形態と同様に、第1ポンプ電流供給回路21をオペアンプOP1を省略したものに置き換えたり、制御ブロックB1の全部又は一部をCPU30に置き換えてもよい。そして、例えば制御ブロックB1の全部をCPU30にて置き換えた場合には、図18に示す構成となり、第3実施形態の場合(図13)と比較して、CPU30には、スイッチ34に対する切替信号Schを出力するための出力ポート、及び第2酸素ポンプセル13の起電力を入力するためのA/D変換器を追加して備える必要がある。
【0083】
また、本実施形態の特徴的な構成、即ち、スイッチ回路34、及びタイマ回路27の代わりに切替制御回路35を設け、予備制御の間、第2酸素ポンプセル13を酸素濃度測定セルとして使用する構成は、第2実施形態に示した駆動回路に対しても同様に適用することができる。
[第5実施形態]
次に第5実施形態について説明する。
【0084】
本実施形態では、駆動回路の構成の一部、及びECU6が実行するNOxセンサ起動処理の内容が異なる以外は、第1〜第3実施形態と同様であるため、同一構成要素については同一符号を付して説明を省略し、構成の相異する部分を中心に説明する。
【0085】
即ち、本実施形態において駆動回路20を構成する活性判定通電制御回路26は、ヒータ10bの加熱によりセンサ本体10aが活性化されたと判断した時点(S250−YES:図3(b)参照)で、ECU6に対して、その旨を表す活性通知を出力するようにされている(図示せず)。
【0086】
そして、NOxセンサ起動処理では、図15に示すように、本処理が起動されると、まず、内燃機関M1の運転状態を制御する運転制御処理に対して、ストイキ或いはリッチ空燃比での運転要求を設定する(S110)。センサ本体内がストイキ或いはリッチの排ガスで満たされるまでタイマー制御し、その後、駆動回路20に対して起動指令を出力する(S120)。
【0087】
その後、駆動回路20から活性通知が入力されるまで待機し(S130−NO)、活性通知が入力されると(S130−YES)、運転制御処理に対するストイキ或いはリッチ空燃比での運転要求を解除し(S140)、今度は、駆動回路20から起動通知が入力されるまで待機する(S150−NO)。
【0088】
そして、駆動回路20から起動通知が入力されると(S150−YES)、運転制御処理等でのガスセンサ10の出力の使用を許可して(S160)、本処理を終了する。
このように、ストイキ或いはリッチ空燃比での運転を行うと、内燃機関M1からは、酸素が殆ど含まれていないか酸素の欠乏したガスが排出され、このガスにより、ガスセンサ10の第1及び第2測定室S1,S2内のガスが置換される。その結果、第1及び第2測定室S1,S2内の酸素濃度は大きく低下するため、ガスセンサ10はセンサ本体10aが活性化した後、速やかに正確な検出結果を出力するようになる。
【0089】
従って、本実施形態のエンジン制御システムによれば、第1〜第3実施形態の場合と同様に、ガスセンサ10の起動後、短い待ち時間にて、ガスセンサ10の出力を使用した各種制御が可能になり、例えば内燃機関M1が短時間しか運転されない場合であっても、ガスセンサ10の出力を有効に利用することができる。
【0090】
ここで図16は、ガスセンサ10を、リーン(大気),ストイキ(λ=1.00),リッチ(λ=0.90)の各雰囲気内に配置して、センサの活性化後に駆動制御を行った時に測定したNOx濃度(第2ポンプ電流Ip2の検出値)の測定結果を表すグラフである。なお、第2ポンプ電流Ip2の測定のため、第2ポンプ電圧Vp2の印加については、ヒータ10bの通電と同時に行った。
【0091】
図16に示すように、リッチ雰囲気の場合は、図中実線にて示すように、ガスセンサ10が起動された時点(時刻t11)で、第2測定室S2は酸素が欠乏した状態にあるため、通常とは反対に酸素を汲み入れる方向に電流が流れ、その後、駆動制御が開始されると(時刻t12)、その直後からNOx濃度の検出値は0ppmを示す。また、ストイキ雰囲気の場合では、図中一点鎖線にて示すように、駆動制御が開始されると、NOx濃度の検出値は、速やかに0ppmに収束しており、リーン雰囲気の場合では、図中点線にて示すように、300sec経過後であっても、まだ100ppmもの酸素が残存している。
【0092】
このように、第1〜第3実施形態に示した予備制御と組み合わせないで、ストイキ或いはリーン空燃比での運転のみを行った場合であっても、これを行わない場合と比較して、ガスセンサ10が正確な検出結果を出力するようになるまでの時間を大幅に短縮できることがわかる。
【0093】
なお、本実施形態では、ストイキ或いはリッチ空燃比での運転を、ガスセンサ10の起動後、センサ本体10aが活性化するまでの間だけ行っているが、ガスセンサ10の起動後、予め設定された一定期間だけ行うようにしてもよい。
以上本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、制御ブロックB1をCPU30に置き換えた場合、これをECU6とは別体に設けているが、CPU30の機能をECU6に含めるようにして、CPU30を省略するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 エンジン制御システムの全体構成を表す説明図である。
【図2】 第1実施形態における駆動回路の構成を表す回路図である。
【図3】 ECUが実行するNOxセンサ起動処理、及び処理ブロックが実行する起動制御の内容を表すフローチャートである。
【図4】 起動時に検出されるNOx濃度の変化を表すグラフである。
【図5】 第1実施形態における駆動回路の変形例の構成を表す回路図である。
【図6】 第1実施形態における駆動回路の変形例の構成を表す回路図である。
【図7】 起動制御の置換部分の内容を表すフローチャートである。
【図8】 第1実施形態における駆動回路の変形例の構成を表す回路図である。
【図9】 第2実施形態における駆動回路の構成を表す回路図である。
【図10】 第2実施形態における駆動回路の変形例の構成を表す回路図である。
【図11】 第2実施形態における駆動回路の変形例の構成を表す回路図である。
【図12】 第3実施形態における駆動回路の構成を表す回路図である。
【図13】 第3実施形態における駆動回路の変形例の構成を表す回路図である。
【図14】 第4実施形態における駆動回路の構成を表す回路図である。
【図15】 第5実施形態におけるNOxセンサ起動処理の内容を表すフローチャートである。
【図16】 測定室内の雰囲気を変化させた時に、起動時に検出されるNOx濃度の変化を表すグラフである。
【図17】 NOxセンサの構成を表す説明図である。
【図18】 第3実施形態における駆動回路の変形例の構成を表す回路図である。
【符号の説明】
6…電子制御装置(ECU)、10…ガスセンサ、10a…センサ本体、10b…ヒータ、11…第1酸素ポンプセル(P1セル)、12…酸素濃度測定セル(Vsセル)、13…第2酸素ポンプセル(P2セル)、14…絶縁層、16…第1拡散経路、17…第2拡散経路、18…酸素基準室、20…駆動回路、21…第1ポンプ電流供給回路、22…PID回路、23…第2ポンプ電圧印加回路、24…電圧切替回路、25…通電回路、26…活性判定通電制御回路、27…タイマー回路、28…電流検出回路、29…比較回路、30…CPU、31…第1切替回路、32…第2切替回路、33…目標電圧切替回路、34…スイッチ、35…切替制御回路、B1…制御ブロック、M1…内燃機関、M2…吸気管、M3…排気管、M4…スロットルバルブ、M5…インジェクタ、OP1〜3…オペアンプ、Rp1,Rp2…電流検出抵抗、S1…第1測定室、S2…第2測定室
Claims (4)
- 被測定ガス空間に連通した第1測定室と、該第1測定室に連通した第2測定室と、一対の多孔質電極の一つが前記第1測定室に配置されると共に、前記第1測定室内の酸素をポンピングする第1酸素ポンプセルと、一対の多孔質電極の一つが前記第2測定室に配置されると共に、前記第2測定室内の酸素をポンピングする第2酸素ポンプセルと、を有するセンサ本体と、
前記センサ本体を加熱するヒータと、
を有し、前記第2酸素ポンプセルを流れる第2ポンプ電流が、被測定ガス中に含まれる特定物質の濃度に対応した出力として用いられるガスセンサの制御方法であって、
前記ガスセンサの起動時には、前記ヒータへの通電を開始する一方、通常の駆動制御を開始する前に、前記第2酸素ポンプセルに印加する第2ポンプ電圧を通常の駆動制御時よりも高い値に設定し、且つ、前記第1酸素ポンプセルに印加する第1ポンプ電圧を通常の駆動制御時よりも高い値に設定する予備制御を行って、前記第2測定室内の酸素濃度を低下させることを特徴とするガスセンサの制御方法。 - 被測定ガス空間に連通した第1測定室と、該第1測定室に連通した第2測定室と、一対の多孔質電極の一つが前記第1測定室に配置されると共に、前記第1測定室内の酸素をポンピングする第1酸素ポンプセルと、一対の多孔質電極の一つが前記第2測定室に配置されると共に、前記第2測定室内の酸素をポンピングする第2酸素ポンプセルと、一対の多孔質電極の一つが前記第1測定室に配置されると共に、前記第1測定室内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定セルと、を有するセンサ本体と、
前記センサ本体を加熱するヒータと、
を有し、前記第2酸素ポンプセルを流れる第2ポンプ電流が、被測定ガス中に含まれる特定物質の濃度に対応した出力として用いられるガスセンサの制御方法であって、
通常の駆動制御には、前記酸素濃度測定セルの出力電圧が目標電圧と一致するように前記第1酸素ポンプセルに前記第1ポンプ電圧を印加し、
前記ガスセンサの起動時には、前記ヒータへの通電を開始する一方、通常の駆動制御を開始する前に、前記第2酸素ポンプセルに印加する第2ポンプ電圧を通常の駆動制御時よりも高い値に設定し、且つ、前記酸素濃度測定セルの出力電圧が前記目標電圧よりも高い値となるように前記第1酸素ポンプセルに前記第1ポンプ電圧を印加する予備制御を行って、前記第2測定室内の酸素濃度を低下させることを特徴とするガスセンサの制御方法。 - 前記ガスセンサの起動時に、前記酸素濃度測定セルの内部抵抗が予め設定されたしきい値に達すると、前記予備制御を開始させることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサの制御方法。
- 前記第2酸素ポンプセルに流れる第2ポンプ電流が予め設定された判定値に達すると、前記予備制御から通常の駆動制御への切替を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか記載のガスセンサの制御方法。
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