本発明によるガスセンサ及びガスセンサの制御方法について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
本実施形態に係るガスセンサ10は、図1に示すように、センサ素子12を備える。センサ素子12は長尺な直方体形状をしており、このセンサ素子12の長手方向(図2の左右方向)を前後方向とし、センサ素子12の厚み方向(図2の上下方向)を上下方向とする。また、センサ素子12の幅方向(前後方向及び上下方向に垂直な方向)を左右方向とする。
図1に示すように、ガスセンサ10は、センサ素子12と、センサ素子12の前端側を保護する保護カバー14と、センサ素子12と導通するコネクタ16を含むセンサ組立体18とを備えている。このガスセンサ10は、図示するように、例えば車両の排ガス管等の配管20に取り付けられて、被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO2等の特定ガスの濃度を測定するために用いられる。本実施形態のガスセンサ10は、特定ガス濃度としてNOx濃度を測定するものとした。
保護カバー14は、センサ素子12の前端を覆う有底筒状の内側保護カバー14aと、この内側保護カバー14aを覆う有底筒状の外側保護カバー14bとを備えている。内側保護カバー14a及び外側保護カバー14bには、被測定ガスを保護カバー14内に流通させるための複数の孔が形成されている。内側保護カバー14aで囲まれた空間としてセンサ素子室22が形成されており、センサ素子12の前端はこのセンサ素子室22内に配置されている。
センサ組立体18は、センサ素子12を封入固定する素子封止体30と、素子封止体30に取り付けられたナット32と、外筒34と、センサ素子12の後端の表面(上下面)に形成された図示しない電極に接触してこれらと電気的に接続されたコネクタ16と、を備えている。
素子封止体30は、筒状の主体金具40と、主体金具40と同軸に溶接固定された筒状の内筒42と、主体金具40及び内筒42の内側の貫通孔内に封入されたセラミックスサポータ44a~44c、圧粉体46a、46b、メタルリング48と、を備えている。センサ素子12は素子封止体30の中心軸上に位置しており、素子封止体30を前後方向に貫通している。内筒42には、圧粉体46bを内筒42の中心軸方向に押圧するための縮径部42aと、メタルリング48を介してセラミックスサポータ44a~44c、圧粉体46a、46bを前方に押圧するための縮径部42bとが形成されている。縮径部42a、42bからの押圧力により、圧粉体46a、46bが主体金具40及び内筒42とセンサ素子12との間で圧縮されることで、圧粉体46a、46bが保護カバー14内のセンサ素子室22と外筒34内の空間50との間を封止すると共に、センサ素子12を固定している。
ナット32は、主体金具40と同軸に固定されており、外周面に雄ネジ部が形成されている。ナット32の雄ネジ部は、配管20に溶接され内周面に雌ネジ部が設けられた固定用部材52内に挿入されている。これにより、ガスセンサ10のうちセンサ素子12の前端や保護カバー14の部分が配管20内に突出した状態で、ガスセンサ10が配管20に固定されている。
外筒34は、内筒42、センサ素子12、コネクタ16の周囲を覆っており、コネクタ16に接続された複数のリード線54が後端から外部に引き出されている。このリード線54は、コネクタ16を介してセンサ素子12の各電極(後述)と導通している。外筒34とリード線54との隙間はゴム栓56によって封止されている。外筒34内の空間50は基準ガス(本実施形態では大気)で満たされている。センサ素子12の後端はこの空間50内に配置されている。
センサ素子12は、図2に示すように、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層60と、第2基板層62と、第3基板層64と、第1固体電解質層66と、スペーサ層68と、第2固体電解質層70の6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された積層体を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。センサ素子12は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工及び回路パターンの印刷等を行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子12の一端(図2の左側)であって、第2固体電解質層70の下面と第1固体電解質層66の上面との間には、ガス導入口80と、第1拡散律速部82と、緩衝空間84と、第2拡散律速部86と、第1内部空所88と、第3拡散律速部90と、第2内部空所92と、第4拡散律速部94と、第3内部空所96とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口80と、緩衝空間84と、第1内部空所88と、第2内部空所92と、第3内部空所96とは、スペーサ層68をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層70の下面で、下部を第1固体電解質層66の上面で、側部をスペーサ層68の側面で区画されたセンサ素子12内部の空間である。
第1拡散律速部82と、第2拡散律速部86と、第3拡散律速部90とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。また、第4拡散律速部94は、第2固体電解質層70の下面との隙間として形成された1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口80から第3内部空所96に至る部位を被測定ガス流通部とも称する。
また、被測定ガス流通部よりも一端側から遠い位置には、第3基板層64の上面と、スペーサ層68の下面との間であって、側部を第1固体電解質層66の側面で区画される位置に基準ガス導入空間98が設けられている。基準ガス導入空間98には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気(図1の空間50内の雰囲気)が導入される。
大気導入層100は、多孔質アルミナ等のセラミックスからなり、基準ガス導入空間98に露出している層である。この大気導入層100には基準ガス導入空間98を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層100は、基準電極102を被覆するように形成されている。この大気導入層100は、基準ガス導入空間98内の基準ガスに対して所定の拡散抵抗を付与しつつ、これを基準電極102に導入する。なお、大気導入層100は、基準電極102よりもセンサ素子12の後端側(図2の右側)でのみ基準ガス導入空間98に露出するように形成されている。換言すると、基準ガス導入空間98は、基準電極102の直上までは形成されていない。但し、基準電極102が基準ガス導入空間98の図2における真下に形成されていてもよい。
なお、図5の第1変形例に係るガスセンサ10Aのように、基準ガス導入空間98をなくして、大気導入層100をセンサ素子12の後端まで延ばしてもよい。この場合、基準ガスが、直接、大気導入層100を介して基準電極102に導入される。
基準電極102は、第3基板層64の上面と第1固体電解質層66とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間98につながる大気導入層100が設けられている。なお、基準電極102は、第3基板層64の上面に直に形成されており、第3基板層64の上面に接する部分以外が大気導入層100に覆われている。また、後述するように、基準電極102を用いて第1内部空所88内、第2内部空所92内、第3内部空所96内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。基準電極102は、多孔質サーメット電極(例えば、PtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。
被測定ガス流通部において、ガス導入口80は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口を通じて外部空間からセンサ素子12内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部82は、ガス導入口80から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間84は、第1拡散律速部82より導入された被測定ガスを第2拡散律速部86へと導くために設けられた空間である。第2拡散律速部86は、緩衝空間84から第1内部空所88に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、センサ素子12の外部から第1内部空所88内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口80からセンサ素子12内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所88へ導入されるのではなく、第1拡散律速部82、緩衝空間84、第2拡散律速部86を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所88へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所88へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所88は、第2拡散律速部86を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、後述する主ポンプセル110が作動することによって調整される。
主ポンプセル110は、第1内部空所88の内面に設けられた内側ポンプ電極112と、第2固体電解質層70の上面のうち、内側ポンプ電極112と対応する領域に外部空間(図1のセンサ素子室22)に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極114と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層70とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極112は、第1内部空所88を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層70及び第1固体電解質層66)、及び、側壁を与えるスペーサ層68にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所88の天井面を与える第2固体電解質層70の下面には内側ポンプ電極112の天井電極部112aが形成され、また、第1内部空所88の底面を与える第1固体電解質層66の上面には底部電極部112bが直に形成され、そして、これら天井電極部112aと底部電極部112bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所88の両側壁部を構成するスペーサ層68の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造として配設されている。
内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極112は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
主ポンプセル110においては、内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所88内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所88に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所88における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極112と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、基準電極102によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120における起電力V0を測定することで、第1内部空所88内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるように可変電源122のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所内88内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部90は、第1内部空所88で主ポンプセル110の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所92に導く部位である。
第2内部空所92は、予め第1内部空所88において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部90を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル124による酸素分圧の調整を行うための空間として設けられている。これにより、第2内部空所92内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、このガスセンサ10においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
上記補助ポンプセル124は、第2内部空所92の内面に設けられた補助ポンプ電極126と、外側ポンプ電極114(外側ポンプ電極114に限られるものではなく、センサ素子12の外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層70とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
この補助ポンプ電極126は、上記第1内部空所88内に設けられた内側ポンプ電極112と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所92内に配設されている。つまり、第2内部空所92の天井面を与える第2固体電解質層70に対して天井電極部126aが形成され、また、第2内部空所92の底面を与える第1固体電解質層66の上面には、底部電極部126bが直に形成され、そして、それらの天井電極部126aと底部電極部126bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所92の側壁を与えるスペーサ層68の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極126についても、内側ポンプ電極112と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル124においては、補助ポンプ電極126と外側ポンプ電極114との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所92内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所92内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所92内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極126と、基準電極102と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル130が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル130にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源132にて、補助ポンプセル124がポンピングを行う。これにより第2内部空所92内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これと共に、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120の起電力V0の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部90から第2内部空所92内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル110と補助ポンプセル124との働きによって、第2内部空所92内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
第4拡散律速部94は、第2内部空所92で補助ポンプセル124の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所96に導く部位である。第4拡散律速部94は、第3内部空所96に流入するNOxの量を制限する役割を担う。
第3内部空所96は、予め第2内部空所92において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第4拡散律速部94を通じて導入された被測定ガスに対して、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、第3内部空所96において、測定用ポンプセル140の動作により行われる。
測定用ポンプセル140は、第3内部空所96内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル140は、第3内部空所96に面する第1固体電解質層66の上面に直に設けられた測定電極134と、外側ポンプ電極114と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66とによって構成された電気化学的ポンプセルである。測定電極134は、多孔質サーメット電極である。測定電極134は、第3内部空所96内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
測定用ポンプセル140においては、測定電極134の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極134の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層66と、測定電極134と、基準電極102とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142にて検出された起電力V2に基づいて可変電源144が制御される。
第2内部空所92内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部94を通じて第3内部空所96の測定電極134に到達することとなる。測定電極134の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル140によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142にて検出された起電力V2が一定となるように可変電源144の電圧Vp2が制御される。測定電極134の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル140におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、第3基板層64と、外側ポンプ電極114と、基準電極102とから電気化学的なセンサセル146が構成されており、このセンサセル146によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
さらに、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、第3基板層64と、外側ポンプ電極114と、基準電極102とから電気化学的な基準ガス調整ポンプセル150が構成されている。この基準ガス調整ポンプセル150は、外側ポンプ電極114と基準電極102との間に接続された可変電源152が印加する電圧Vp3により制御電流Ip3が流れることで、ポンピングを行う。これにより、基準ガス調整ポンプセル150は、外側ポンプ電極114の周囲の空間(図1のセンサ素子室22)から基準電極102の周囲の空間(大気導入層100)に酸素の汲み入れを行う。可変電源152の電圧Vp3は、制御電流Ip3が所定の値(一定値の直流電流)となるような直流電圧として、予め定められている。
また、基準ガス調整ポンプセル150では、制御電流Ip3が流れた際の基準電極102の平均電流密度が0μA/mm2超過400μA/mm2未満となるように、基準電極102の面積、制御電流Ip3、可変電源152の電圧Vp3等が予め定められている。ここで、平均電流密度は、制御電流Ip3の平均値を、基準電極102の面積Sで除して得られる電流密度を意味する。基準電極102の面積Sは、基準電極102のうち大気導入層100に面する部分の面積であり、本実施形態では基準電極102の上面の面積(前後方向長さ×左右方向幅)である。なお、基準電極102の前後方向長さや左右方向幅に対して、基準電極102の上下方向厚さは非常に小さいため、基準電極102の側面(前後左右の面)の面積は無視できる。制御電流Ip3の平均値は、制御電流Ip3の瞬間的な変化を無視できるような十分長い所定期間について時間平均した値とする。平均電流密度は、200μA/mm2以下とすることが好ましく、170μA/mm2以下とすることがより好ましく、160μA/mm2以下とすることがさらに好ましい。基準電極102の面積Sは、5mm2以下とすることが好ましい。特に限定するものではないが、基準電極102の前後方向長さは例えば0.2~2mmであり、左右方向幅は例えば0.2~2.5mmである。制御電流Ip3の平均値は、例えば1~100μAである。制御電流Ip3の平均値は1μA超過であることが好ましく、4μA以上であることがより好ましく、5μA以上であることがさらに好ましく、8μA以上であることがさらに好ましい。
このような構成を有するガスセンサ10においては、主ポンプセル110と補助ポンプセル124とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル140に与えられる。従って、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル140より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
さらに、センサ素子12は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子12を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部160を備えている。ヒータ部160は、ヒータコネクタ電極162と、ヒータ164と、スルーホール166と、ヒータ絶縁層168と、圧力放散孔170と、リード線172とを備えている。
ヒータコネクタ電極162は、第1基板層60の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータコネクタ電極162を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部160へ給電することができるようになっている。
ヒータ164は、第2基板層62と第3基板層64とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ164は、リード線172及びスルーホール166を介してヒータコネクタ電極162と接続されており、該ヒータコネクタ電極162を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子12を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒータ164は、第1内部空所88から第3内部空所96の全域に渡って埋設されており、センサ素子12全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
ヒータ絶縁層168は、ヒータ164の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成された多孔質アルミナからなる絶縁層である。ヒータ絶縁層168は、第2基板層62とヒータ164との間の電気的絶縁性、及び、第3基板層64とヒータ164との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔170は、第3基板層64を貫通し、基準ガス導入空間98に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層168内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
なお、図2に示した可変電源122、144、132、152等は、実際にはセンサ素子12内に形成された図示しないリード線や図1のコネクタ16及びリード線54を介して、各電極と接続されている。
次に、こうしたガスセンサ10の製造方法の一例を以下に説明する。先ず、ジルコニア等の酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含む6枚の未焼成のセラミックスグリーンシートを用意する。このグリーンシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いるシート穴や必要なスルーホール等を予め複数形成しておく。また、スペーサ層68となるグリーンシートには被測定ガス流通部となる空間を予め打ち抜き処理等によって設けておく。そして、第1基板層60と、第2基板層62と、第3基板層64と、第1固体電解質層66と、スペーサ層68と、第2固体電解質層70のそれぞれに対応して、各セラミックスグリーンシートに種々のパターンを形成するパターン印刷処理・乾燥処理を行う。形成するパターンは、具体的には、例えば上述した各電極や各電極に接続されるリード線172、大気導入層100,ヒータ部160等のパターンである。パターン印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してグリーンシート上に塗布することにより行う。乾燥処理についても、公知の乾燥手段を用いて行う。パターン印刷・乾燥が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う。そして、接着用ペーストを形成したグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ所定の順序に積層して、所定の温度・圧力条件を加えることで圧着させ、一つの積層体とする圧着処理を行う。こうして得られた積層体は、複数個のセンサ素子12を包含したものである。その積層体を切断してセンサ素子12の大きさに切り分ける。そして、切り分けた積層体を所定の焼成温度で焼成し、センサ素子12を得る。
このようにしてセンサ素子12を得ると、センサ素子12を組み込んだセンサ組立体18(図1参照)を製造し、保護カバー14やゴム栓56等を取り付けることで、ガスセンサ10が得られる。なお、このようなガスセンサの製造方法は公知であり、例えば国際公開第2013/005491号に記載されている。
ここで、基準ガス調整ポンプセル150の果たす役割について、詳細に説明する。センサ素子12のうちガス導入口80等の被測定ガス流通部には、図1に示したセンサ素子室22から被測定ガスが導入される。一方、センサ素子12のうち基準ガス導入空間98には、図1に示した空間50内の基準ガス(大気)が導入される。そして、このセンサ素子室22と空間50とは、センサ組立体18(特に、圧粉体46a、46b)によって区画され、互いにガスが流通しないように封止されている。しかし、被測定ガス側の圧力が一時的に増大したときなどには、例えば圧粉体46a,46bとセンサ素子12や主体金具40との隙間等から、被測定ガスがわずかに空間50内に侵入してしまう場合がある。これにより、基準電極102の周囲の酸素濃度が一時的に低下してしまうと、基準電極102の電位である基準電位が変化してしまう。これにより、例えば測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142の起電力V2等、基準電極102を基準とした起電力が変化してしまい、被測定ガス中のNOx濃度の検出精度が低下してしまう。基準ガス調整ポンプセル150は、このような検出精度の低下を抑制する役割を果たしている。基準ガス調整ポンプセル150は、制御電流Ip3が流れることで、センサ素子室22から空間50へ、一定量の酸素の汲み入れを行っている。これにより、上述したように被測定ガスが基準電極102の周囲の酸素濃度を一時的に低下させた場合に、減少した酸素を補うことができ、NOx濃度の検出精度の低下を抑制しているのである。制御電流Ip3の値(例えば平均値)は、被測定ガスの圧力が想定される最大値の時に基準電極102の周囲の酸素濃度がどの程度低下するか(どの程度の酸素を基準電極102の周囲に汲み入れる必要があるか)に基づいて、予め実験等により定めておくことができる。
なお、本実施形態では、被測定ガスがわずかに空間50内に侵入したか否かにかかわらず、ガスセンサ10がNOx濃度の検出を行う際には常に制御電流Ip3を流すものとした。この場合、被測定ガスの圧力が比較的低く空間50内に侵入していないとき等、基準電極102の周囲の基準ガスの酸素濃度が低下していないときであっても、基準ガス調整ポンプセル150は基準電極102の周囲に酸素を汲み入れることになる。但し、そのような余剰の酸素は大気導入層100を通じて基準ガス導入空間98や空間50内にすみやかに拡散する。そのため、基準電極102の周囲の酸素濃度が増大しすぎてNOx濃度の検出精度が低下するようなことはないようになっている。
また、上述したセンサセル146によって起電力Vrefを得て(測定して)センサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出する際には可変電源152が制御電流Ip3を流さないように、センサセル146と基準ガス調整ポンプセル150との動作タイミングは予め調整されている。これにより、基準ガス調整ポンプセル150による酸素の汲み入れ動作がセンサセル146の動作を妨げないようになっている。
そして、本実施形態に係るガスセンサ10は、図3に示すように、基準ガス調整部190を有する。
基準ガス調整部190は、基準電極102と被測定ガス側電極(例えば外側ポンプ電極114)との間に制御電流Ipを流して、基準電極102の周囲に酸素の汲み入れを行う。
基準ガス調整部190は、さらに、被測定ガスの温度Taを測定する温度測定部192と、被測定ガスの温度Taと予め設定された閾温度Tthとの高低に応じて制御電流Ipの値を調整する制御電流調整部194とを有する。
温度測定部192は、例えば被測定ガス中に設置された温度計であってもよい。もちろん、温度計に代えて熱電対でもよい。また、温度測定部192は、エンジン回転数から被測定ガスの温度Taを推測してもよい。
温度測定部192は、ヒータ部160を構成するヒータ164の抵抗値に基づいて、被測定ガスの温度を測定してもよい。また、温度測定部192は、ヒータ部160を構成するヒータ164に投入される電力に基づいて、被測定ガスの温度Taを測定してもよい。
一方、制御電流調整部194は、例えば被測定ガスの温度Taが閾温度Tth以下の場合に、予め設定された電流値の制御電流Ipを流し、被測定ガスの温度Taが閾温度Tthを超えた場合に、制御電流Ipの電流値を調整する。例えば制御電流Ipの電流値を大きくする。
なお、制御電流調整部194は、例えば1つ又は複数のCPU(中央処理ユニット)と記憶装置等を有する1以上の電子回路にて構成される。電子回路は、例えば記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することにより、所定の機能が実現されるソフトウェア機能部でもある。もちろん、複数の電子回路を機能に合わせて接続したFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路で構成してもよい。
ここで、本実施形態に係るガスセンサ10の制御方法を図4のフローチャートを参照しながら説明する。
先ず、図4のステップS1において、制御電流調整部194は、基準電極102と被測定ガス側電極(外側ポンプ電極114)との間に制御電流Ipを流して、基準電極102の周囲に酸素の汲み入れを行う。
ステップS2において、温度測定部192は、被測定ガスの温度Taを測定する。例えば保護カバー14内のセンサ素子室22と外筒34内の空間50における被測定ガスの温度Taを測定する。
ステップS3において、制御電流調整部194は、被測定ガスの温度Taが予め設定された閾温度Tthを超えているか否かを判別する。被測定ガスの温度Taが閾温度Tthを超えていれば(ステップS3:YES)、ステップS4に進み、制御電流調整部194は、制御電流Ipの電流値を調整する。例えば制御電流Ipの電流値を大きくする。閾温度Tthは、ゴム栓56から不活性ガスが発生する温度より1~5℃程度低い温度等が挙げられる。
上記ステップS4での処理が終了した場合、あるいはステップS3において被測定ガスの温度Taが閾温度Tth以下であると判別された場合(ステップS3:NO)は、所定時間経過後にステップS1以降の処理を繰り返す。
[本実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
[1] 本実施形態は、酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数積層してなり、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部と、被測定ガス中の特定ガス濃度の検出の基準となる基準ガスを導入する基準ガス導入空間98と、が内部に設けられた積層体と、前記積層体の内部に形成され、基準ガス導入空間98を介して基準ガスが導入される基準電極102と、被測定ガス流通部の内周面上に配設された測定電極134と、積層体のうち、被測定ガスに晒される部分に配設された被測定ガス側電極(外側ポンプ電極114)と、を有するセンサ素子12と、センサ素子12を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部160と、基準電極102と測定電極134との間に生じる起電力V2に基づいて、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出する検出手段(測定用ポンプセル140)と、基準電極102と被測定ガス側電極との間に制御電流Ipを流して、基準電極102の周囲に酸素の汲み入れを行う基準ガス調整部190と、を備え、基準ガス調整部190は、被測定ガスの温度Taを測定する温度測定部192と、被測定ガスの温度Taと予め設定された閾温度Tthとの高低に応じて制御電流Ipの値を調整する制御電流調整部194とを有する。
従来は、基準電極への酸素汲み入れ制御により、電圧降下分がセンサセル間の電位差に含まれてしまい、結果として、センサセル間の酸素差が減少することにより、ガス濃度の検出精度の低下を招くおそれがあった。
しかし、本実施形態では、被測定ガスの温度Taを測定し、被測定ガスの温度Taと予め設定された閾温度Tthとの高低に応じて制御電流Ipを調整したので、被測定ガスの高温によって例えばゴム栓56から発生する不活性ガスによる基準電極102への酸素濃度低下を抑えることができ、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度を向上させることができる。
[2] 本実施形態において、制御電流調整部194は、被測定ガスの温度Taが閾温度Tth以下の場合に、予め設定された電流値の制御電流Ipを流し、被測定ガスの温度Taが閾温度Tthを超えた場合に、制御電流Ipの電流値を調整する。被測定ガスの温度Taが高温となって、例えばゴム栓56から不活性ガスが発生した場合は、基準ガスが不活性ガスに変化することから、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度が低下する。そこで、被測定ガスの温度Taが閾温度Tthを超えた場合に、制御電流Ipの電流値を調整することで、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度の低下を抑制することができる。
[3] 本実施形態において、制御電流調整部194は、被測定ガスの温度Taが閾温度Tthを超えた場合に、制御電流Ipの電流値を大きくすることが好ましい。これにより、基準ガスの酸素濃度を高めることができ、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度の低下を抑制することができる。
[4] 本実施形態において、温度測定部192は、被測定ガス中に設置された温度計であってもよい。ガスセンサ10に温度計を設置できるスペースがあれば、温度計を使って、被測定ガスの温度Taを容易に測定することができる。温度計として熱電対を使用してもよい。
[5] 本実施形態において、温度測定部192は、ヒータ部160を構成するヒータ164の抵抗値に基づいて、被測定ガスの温度Taを測定する。ヒータ164が例えば白金等で構成されていれば、被測定ガスの温度Taの上昇に従って、ヒータ164の電気抵抗が高くなる。そこで、ヒータ164の抵抗値に基づいて、被測定ガスの温度Taを測定することができる。
[6] 本実施形態において、温度測定部192は、ヒータ部160を構成するヒータ164に投入される電力に基づいて、被測定ガスの温度Taを測定する。例えばガスセンサ10が温度の高い被測定ガスに晒されると、ヒータ164に投入するパワー(電力)が減る。そこで、ヒータ164への電力に基づいて、被測定ガスの温度Taを測定することができる。
[7] 本実施形態に係るガスセンサ10の制御方法は、酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数積層してなり、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部と、被測定ガス中の特定ガス濃度の検出の基準となる基準ガスを導入する基準ガス導入空間98と、が内部に設けられた積層体と、前記積層体の内部に形成され、基準ガス導入空間98を介して基準ガスが導入される基準電極102と、被測定ガス流通部の内周面上に配設された測定電極134と、積層体のうち、被測定ガスに晒される部分に配設された被測定ガス側電極(外側ポンプ電極114)と、を有するセンサ素子12と、センサ素子12を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部160と、基準電極102と測定電極134との間に生じる起電力V2に基づいて、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出する検出手段(測定用ポンプセル140)と、を有するガスセンサ10の制御方法において、被測定ガスの温度Taを測定するステップと、基準電極102と被測定ガス側電極との間に制御電流Ipを流して、基準電極102の周囲に酸素の汲み入れを行うステップと、被測定ガスの温度Taと予め設定された閾温度Tthとの高低に応じて制御電流Ipの値を調整する制御電流調整ステップと、を有する。
従来は、基準電極102への酸素汲み入れ制御により、電圧降下分がセンサセル間の電位差に含まれてしまい、結果として、センサセル間の酸素差が減少することにより、ガス濃度の検出精度の低下を招くおそれがあった。
しかし、本実施形態では、被測定ガスの温度Taを測定し、被測定ガスの温度Taと予め設定された閾温度Tthとの高低に応じて制御電流Ipを調整したので、被測定ガスの高温によって例えばゴム栓56から発生する不活性ガスによる基準電極102への酸素濃度低下を抑えることができ、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度を向上させることができる。
[8] 本実施形態において、制御電流調整ステップは、被測定ガスの温度Taが閾温度Tth以下の場合に、予め設定された電流値の制御電流Ipを流し、被測定ガスの温度Taが閾温度Tthを超えた場合に、制御電流Ipの電流値を調整する。被測定ガスの温度Taが高温となって、例えばゴム栓56から不活性ガスが発生した場合は、基準ガスが不活性ガスに変化することから、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度が低下する。そこで、被測定ガスの温度Taが閾温度Tthを超えた場合に、制御電流Ipの電流値を調整することで、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度の低下を抑制することができる。
[9] 本実施形態において、制御電流調整ステップは、被測定ガスの温度Taが閾温度Tthを超えた場合に、制御電流Ipの電流値を大きくすることが好ましい。これにより、基準ガスの酸素濃度を高めることができ、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度の低下を抑制することができる。
なお、本発明に係るガスセンサ及びガスセンサの制御方法は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
例えば上述した実施形態では、基準電極102を第3基板層64の上面に直に形成されているものとしたが、これに限られない。例えば、第1固体電解質層66の下面に直に形成してもよい。
上述した実施形態では、ガスセンサ10のセンサ素子12は、第1内部空所88、第2内部空所92、第3内部空所96を備えるものとしたが、これに限られない。例えば、第3内部空所96を備えないものとしてもよい。この場合の第2変形例に係るガスセンサ10Bのセンサ素子12の断面模式図を図6に示す。
図6に示すように、ガスセンサ10Bでは、第2固体電解質層70の下面と第1固体電解質層66の上面との間には、ガス導入口80と、第1拡散律速部82と、緩衝空間84と、第2拡散律速部86と、第1内部空所88と、第3拡散律速部90と、第2内部空所92とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
なお、ガスセンサ10Bの第3拡散律速部90は、図2の第4拡散律速部94と同様に、第2固体電解質層70の下面との隙間として形成された1本の横長のスリットとして設けられている。また、測定電極134は、第2内部空所92内の第1固体電解質層66の上面に配設されている。測定電極134は、第5拡散律速部202によって被覆されてなる。第5拡散律速部202は、アルミナ(Al2O3)等のセラミックス多孔体にて構成される膜である。第5拡散律速部202は、上述したガスセンサ10の第4拡散律速部94と同様に、測定電極134に流入するNOxの量を制限する役割を担う。また、第5拡散律速部202は、測定電極134の保護膜としても機能する。補助ポンプ電極126の天井電極部126aは、測定電極134の直上まで形成されている。
この第2変形例に係るガスセンサ10Bにおいても、図3に明示した基準ガス調整部190、温度測定部192及び制御電流調整部194を有する。
従って、被測定ガスの高温によって例えばゴム栓56から発生する不活性ガスによる基準電極102への酸素濃度低下を抑えることができ、被測定ガス中の所定成分(例えばNO)の検出精度を向上させることができる。
上述した実施形態及び変形例では、基準ガスを大気としたが、被測定ガス中の特定ガスの濃度の検出の基準となるガスであれば、これに限られない。例えば、予め所定の酸素濃度(>被測定ガスの酸素濃度)に調整したガスが基準ガスとして空間50(図1参照)に満たされていてもよい。
上述した実施形態では、センサ素子12は被測定ガス中のNOx濃度を検出するものとしたが、被測定ガス中の特定ガスの濃度を検出するものであれば、これに限られない。例えば、被測定ガス中の酸素濃度を検出するものとしてもよい。
なお、本発明の実施に当たっては、本発明の思想を損なわない範囲で自動車用部品としての信頼性向上のための諸手段が付加されてもよい。