JPH11183431A - ガス成分濃度測定装置 - Google Patents

ガス成分濃度測定装置

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JPH11183431A
JPH11183431A JP9358524A JP35852497A JPH11183431A JP H11183431 A JPH11183431 A JP H11183431A JP 9358524 A JP9358524 A JP 9358524A JP 35852497 A JP35852497 A JP 35852497A JP H11183431 A JPH11183431 A JP H11183431A
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朝道 溝口
Masayuki Takami
雅之 高見
Jun Hasegawa
純 長谷川
Yukihiro Yamashita
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Abstract

(57)【要約】 【課題】センサの昇温特性を良好に維持し、且つ素子割
れなどの不具合を抑制する。 【解決手段】A/Fセンサ30のセンサ素子部60は、
固体電解質とヒータ64とを積層し、それらを一体化し
て構成される。A/Fセンサ30は、電圧の印加に伴い
排ガス中の酸素濃度に比例したリニアなA/F検出信号
を出力する。マイコン20は、ヒータ制御回路25を介
してヒータ64を加熱させ、それによりセンサ素子部6
0(固体電解質)を所定の活性温度に保持する。この場
合、マイコン20は、センサ素子部60への印加電圧と
それに伴って流れるセンサ電流とに基づいて素子抵抗を
検出すると共に、その素子抵抗を素子温に換算する。そ
して、A/Fセンサ30の昇温時において、素子温変化
速度(センサ素子部60の昇温率)に応じてヒータ通電
量をデューティ制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス成分濃度測定
装置に係り、例えばエンジンから排出される排ガスな
ど、被測定ガス中の酸素濃度を検出するためのガス成分
濃度測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車用エンジンにおいては、一
般に酸素濃度センサによる酸素濃度(空燃比)の検出結
果に基づき空燃比制御が実施される。かかる酸素濃度セ
ンサはジルコニア製の固体電解質を有し、この固体電解
質により酸素濃度(空燃比)を精度良く検出するにはセ
ンサ素子(固体電解質)の温度を所定の活性温度に維持
する必要がある。通常は同センサにヒータを付設しヒー
タの通電量を制御している。こうしたヒータ制御の手法
として、例えばヒータへの供給電力を制御したり、セン
サ素子の温度を所定の活性温度にフィードバック制御し
たりするものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来既
存の技術では、例えばエンジンの低温始動時においてセ
ンサ素子(固体電解質)を冷間状態から昇温させる際に
おいて、いち早く昇温させることが望まれるものの、そ
の反面、センサ素子を急速に昇温させると、素子割れ、
ヒータ割れ、素子とヒータとの接合面の剥離などの不具
合を生じるおそれがあった。
【0004】本発明は、上記問題に着目してなされたも
のであって、その目的とするところは、センサの昇温特
性を良好に維持し、且つ素子割れなどの不具合を抑制す
ることができるガス成分濃度測定装置を提供することで
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載の発明は、固体電解質を用いたセン
サ素子を有し、被測定ガスの特定成分濃度を測定するセ
ンサと、電源電圧の通電により発熱し、前記センサ素子
を所定の活性温度に加熱するためのヒータと、前記セン
サ素子の昇温率に応じて前記ヒータへの通電量を制御す
るヒータ制御手段とを備える。
【0006】上記構成によれば、センサ素子の昇温率を
監視しつつヒータ通電量を制御することにより、センサ
素子の過剰な昇温動作が抑制できる。また、昇温率を監
視することでセンサの迅速なる活性化が実現できる。そ
の結果、センサの昇温特性を良好に維持し、且つ素子割
れなどの不具合を抑制することができる。
【0007】特に本発明は、固体電解質を有するセンサ
素子にヒータを積層して配置し、固体電解質とヒータと
を一体化してなる積層型センサ(請求項12)におい
て、顕著な効果を奏する。つまり、こうした積層型のセ
ンサでは、固体電解質とヒータとが近接して設けられる
ため、素子割れやヒータ割れなどの問題が生じやすい
が、上記構成によれば当該問題が確実に抑制できる。
【0008】ここで、「センサ素子の昇温率」とは、固
体電解質やヒータの温度上昇の速度を意味する。センサ
素子の昇温率を制御するための具体的な方法としては、 ・請求項2に記載したように、素子温又は素子抵抗の変
化速度に応じてヒータ通電量を制御する。 ・請求項3に記載したように、素子温とヒータ温との差
に応じてヒータ通電量を制御する。 ・請求項5に記載したように、ヒータ温又はヒータ抵抗
の変化速度に応じてヒータ通電量を制御する。といった
構成を採用する。
【0009】なお、素子温と素子抵抗とは例えば図17
に示すように互いに対応関係にある。従って、これら何
れをパラメータとしてセンサ素子の昇温率を制御したと
しても略同様の作用効果が得られる。また、ヒータ温と
ヒータ抵抗とは例えば図28に示すように互いに対応関
係にある。従って、これら何れをパラメータとしてセン
サ素子の昇温率を制御したとしても略同様の作用効果が
得られる。
【0010】また、前記センサ素子が冷間状態から昇温
される際には、その当初において素子抵抗が大きくその
値が検出できない。そこで、上記請求項2,3の発明で
は、請求項4に記載したように、素子抵抗が検出可能に
なるまでの期間において、素子温又は素子抵抗の変化速
度をオープン制御する。かかる構成によれば、センサ活
性化までの期間で確実に素子割れなどの不具合が抑制で
きる。
【0011】請求項6に記載の発明では、前記センサの
昇温時であるか又は昇温後の定常時であるかを判別し、
昇温後の定常時であれば、素子温を目標温度に一致させ
るようフィードバック制御を実施する。つまり、センサ
が一旦活性化されると、それ以降は昇温時のような急激
な温度変化を生ずる可能性は少ないと考えられる。その
ため、センサの活性化以降については、昇温率に応じた
ヒータ制御に代えて、既存の素子温フィードバック制御
を実施する。かかる場合、昇温時は勿論のこと、昇温時
以外においても適切なヒータ制御が実施できる。
【0012】請求項7に記載の発明では、前記センサ素
子の昇温率が所定の許容レベルを超えると、ヒータ通電
量を制限する。この場合、過剰な素子の加熱がより一層
確実に防止できる。
【0013】一方、例えばセンサが劣化すると、劣化前
と劣化後とでは、同一のヒータ通電量であっても素子温
(固体電解質の温度)が変動する。そこで、上記ヒータ
制御においては、以下の請求項8〜請求項10の補正を
実施する。それにより、センサの個体差や経時変化を反
映したヒータの通電制御が可能となる。
【0014】請求項8に記載の発明では、前記センサの
冷間状態から活性化までの所要時間に応じて前記ヒータ
の通電量を補正する。つまり、例えばセンサが劣化した
場合、劣化前と比較して活性化までの所要時間が増大す
ると考えられる。よって、適正で且つ迅速なる活性化を
図るには、通電量を適宜補正するとよい。かかる場合、
センサ活性化までの所要時間に応じてヒータ通電量を補
正することで、センサ劣化等の経時変化や個体差による
ヒータ制御への影響が排除できる。
【0015】請求項9に記載の発明では、エンジンへの
燃料カット時において、センサの抵抗支配領域に電圧を
印加してその時のセンサ電流値から内部抵抗を検出し、
該検出した内部抵抗に基づき前記ヒータの通電量を補正
する。より具体的には、燃料カット時に検出したセンサ
内部抵抗と、センサ活性後に検出した素子抵抗とを比較
し、それらの値のズレ量に応じてヒータ通電量を補正す
る。本構成においても、センサ個体差や経時変化による
ヒータ制御への影響が排除できる。
【0016】請求項10に記載の発明では、エンジンの
定常運転時におけるヒータ通電量と、予め設定されてい
るヒータ通電量の標準値との差に応じて前記ヒータの通
電量を補正する。本構成においても、センサ個体差や経
時変化によるヒータ制御による影響が排除できる。
【0017】請求項11に記載の発明では、前記補正に
関する値を学習値としてバックアップメモリに随時記憶
し、前記ヒータ制御手段はバックアップメモリに記憶さ
れた学習値を読み出してヒータ制御に使用する。要する
に、上記請求項8〜10で求められる補正情報は、例え
ばエンジン運転条件に関係なくヒータ制御時に常に必要
な要素となりうる。従って、学習値をバックアップメモ
リに随時記憶すると共に、その値を必要に応じて更新す
ることで、学習値の演算が必要時だけで済み、効率的で
且つ適切なヒータ制御が実施できる。
【0018】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、この
発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明
する。本実施の形態における空燃比検出装置は、自動車
に搭載される電子制御ガソリン噴射エンジンに適用され
るものであって、同エンジンの空燃比制御システムにお
いては空燃比検出装置による検出結果を基にエンジンへ
の燃料噴射量を所望の空燃比に制御する。以下の記載で
は、空燃比センサを用いた空燃比(A/F)の検出手
順、並びに同センサに付設されたヒータの通電制御手順
を詳細に説明する。
【0019】図1は、本実施の形態における空燃比制御
システムの概要を示す構成図である。図1において、空
燃比検出装置15は、その内部演算の中枢をなすマイク
ロコンピュータ(以下、マイコンという)20を備え、
マイコン20は燃料噴射制御や点火制御等を実現するた
めのエンジン制御ECU16に対して相互に通信可能に
接続されている。限界電流式空燃比センサ(以下、A/
Fセンサという)30は、エンジン10のエンジン本体
11から延びる排気管12に取り付けられており、マイ
コン20から指令される電圧の印加に伴い、排ガス中の
酸素濃度に比例したリニアな空燃比検出信号(センサ電
流信号)を出力する。
【0020】マイコン20は、各種演算処理を実行する
ための周知のCPU,ROM,RAM等により構成さ
れ、所定の制御プログラムに従い後述するバイアス制御
回路40やヒータ制御回路25を制御する。マイコン2
0は、バッテリ電源+Bの給電を受けて起動するもので
あるが、その内部には電源の遮断時(IG=OFF時)
にも記憶内容を保持するバックアップメモリ20aが設
けられている。
【0021】A/Fセンサ30は、積層型のセンサ素子
部(セル)60を有するものであって、その構成を図2
〜図4を用いて説明する。ここで、図2は、A/Fセン
サ30の全体構成を示す断面図、図3は、A/Fセンサ
30を構成するセンサ素子部60の断面図、図4は、セ
ンサ素子部60の詳細な構成を示す分解斜視図である。
【0022】図2に示すように、A/Fセンサ30は、
排気管壁に螺着される筒状の金属製ハウジング31を有
し、そのハウジング31の下側開口部には素子カバー3
2が取り付けられている。素子カバー32内には、長板
状のセンサ素子部60の先端(下端)が配設されてい
る。素子カバー32は有底二重構造をなし、排ガスをカ
バー内部に取り込むための複数の排気口32aを有す
る。
【0023】センサ素子部60は、ハウジング31内に
配設された絶縁部材33を貫通するように図の上方に延
び、その上端部には一対のリード線34が接続されてい
る。ハウジング31の上端には本体カバー35がカシメ
着されている。また、本体カバー35の上方にはダスト
カバー36が取り付けられ、これら本体カバー35及び
ダストカバー36の二重構造によりセンサ上部が保護さ
れている。各カバー35,36には、カバー内部に大気
を取り込むための複数の大気口35a,36aが設けら
れている。
【0024】次に、センサ素子部60の構成を図3及び
図4を用いて説明する。センサ素子部60は大別して、
固体電解質61、ガス拡散抵抗層62、大気導入ダクト
63及びヒータ64からなり、これら各部材を積層して
構成されている。また、各部材の周囲には保護層65が
設けられている。
【0025】長方形板状の固体電解質61は部分安定化
ジルコニア製のシートであり、その上面(ガス拡散抵抗
層62側)には白金等からなる多孔質の計測電極66が
スクリーン印刷法等により形成されると共に、下面(大
気導入ダクト63側)には同じく白金等からなる多孔質
の大気側電極67がスクリーン印刷法等により形成され
ている。計測電極66及び大気側電極67には、リード
線66a,67aが接続されている。
【0026】ガス拡散抵抗層62は、計測電極66へ排
ガスを導入するための多孔質シートからなるガス透過層
62aと、排ガスの透過を抑制するための緻密層からな
るガス遮蔽層62bとを有する。ガス透過層62a及び
ガス遮蔽層62bは何れも、アルミナ、スピネル、ジル
コニア等のセラミックスをシート成形法等により成形し
たものであるが、ポロシティの平均孔径及び気孔率の違
いによりガス透過率が相違するものとなっている。
【0027】大気導入ダクト63はアルミナ等の高熱伝
導性セラミックスからなり、同ダクト63により大気室
68が形成されている。この大気導入ダクト63は大気
室68内の大気側電極67に大気を導入する役割をな
す。因みに、大気室68は、前記図2に示すカバー3
5,36の大気口35a,36aに連通している。
【0028】大気導入ダクト63の下面にはヒータ64
が取り付けられている。ヒータ64は、バッテリ電源+
Bからの通電により発熱する発熱体64aと、それを覆
う絶縁シート64bとからなり、発熱体64aの両端に
はリード線64cが接続されている。但し、図3の構成
以外に、発熱体64aを固体電解質61に埋設したり、
発熱体64aをガス拡散抵抗層62に埋設したりする構
成も可能である。
【0029】なお上記センサ素子部60において、計測
電極66に達する排ガスは、ガス透過層62aの鉛直方
向(図の上下方向)からは侵入せず、ガス透過層62a
の側方から侵入する。すなわち、ガス透過層62aの表
面はガス遮蔽層62bに被われているため、排ガスは鉛
直方向からは侵入できず、その方向と直交する側面方向
から該透過層62aの内部に侵入する。かかる場合、ガ
ス透過層62aのガス拡散量は、同透過層62aの左右
方向の寸法(実際には、ガス透過層62aの側面と計測
電極66との距離)に依存するが、この寸法が容易に且
つ自在に設定できることから、ガス透過層62aの孔径
がばらついても均一で安定したセンサ出力が得られるよ
うになる。
【0030】上記構成のA/Fセンサ30において、セ
ンサ素子部60は理論空燃比点よりリーン領域では酸素
濃度に応じた限界電流を発生する。この場合、センサ素
子部60(固体電解質61)は酸素濃度を直線的特性に
て検出し得るものであるが、センサ素子部60を活性化
するには約600℃以上の高温が必要とされ、且つ同セ
ンサ素子部60の活性温度範囲が狭いため、エンジン1
0の排ガスのみによる加熱では活性状態を維持できな
い。そのため、本実施の形態では、ヒータ64(発熱体
64a)の加熱制御によりセンサ素子部60を活性温度
域で保持する。なお、理論空燃比よりもリッチ側の領域
では、未燃ガスである一酸化炭素(CO)等の濃度が空
燃比に対してほぼリニアに変化し、センサ素子部60は
CO等の濃度に応じた限界電流を発生する。
【0031】A/Fセンサ30の電圧−電流特性につい
て図5を用いて説明する。図5によれば、センサ素子部
60の固体電解質61への流入電流と、同固体電解質6
1への印加電圧とがリニアな特性を有することが分か
る。かかる場合、電圧軸(横軸)に平行な直線部分がセ
ンサ素子部60の限界電流を特定するものであって、こ
の限界電流(センサ電流)の増減はA/Fの増減(すな
わち、リーン・リッチの程度)に対応している。つま
り、A/Fがリーン側になるほど限界電流は増大し、A
/Fがリッチ側になるほど限界電流は減少する。
【0032】この電圧−電流特性において電圧軸に平行
な直線部分よりも小さい電圧域は抵抗支配領域となって
おり、その抵抗支配領域における一次直線部分の傾き
は、センサ素子部60における固体電解質61の内部抵
抗(これを素子抵抗という)により特定される。この素
子抵抗は温度変化に伴い変化し、例えばセンサ素子部6
0の温度が低下すると素子抵抗の増大により上記傾きが
小さくなる。
【0033】図6は、限界電流値を横軸に、その限界電
流値に対応するA/Fを縦軸にして、両者の関係を示す
グラフである。また一例として、A/Fセンサ30の耐
熱特性の具体的数値を示せば、 ・素子耐熱温度=900〜950℃、 ・ヒータ耐熱温度=1000〜1100℃、 ・素子温変化速度の最大値=150〜200℃/s、 ・ヒータ温変化速度の最大値=200℃/s、 ・素子−ヒータの温度差の最大値=200℃、 となっている。
【0034】一方、前記図1において、A/Fセンサ3
0(センサ素子部60)に電圧を印加するためのバイア
ス指令信号(デジタル信号)Vrはマイコン20からD
/A変換器21に入力され、同D/A変換器21にてア
ナログ信号Vbに変換された後、LPF(ローパスフィ
ルタ)22に入力される。そして、LPF22にてアナ
ログ信号Vbの高周波成分が除去された出力電圧Vc
は、A/F検出用又は素子抵抗検出用の電圧をA/Fセ
ンサ30に印加するためのバイアス制御回路40に入力
される。A/F検出時には、前記図5の特性線L1を用
いてその時のA/Fに対応した印加電圧Vpが設定され
るのに対し、素子抵抗検出時には、所定周波数信号より
なる単発的で且つ所定の時定数を持った電圧が印加され
る。
【0035】バイアス制御回路40内の電流検出回路5
0は、A/Fセンサ30への電圧の印加に伴い流れる電
流値を検出する。当該電流検出回路50にて検出された
電流値のアナログ信号は、A/D変換器23を介してマ
イコン20に入力される。A/Fセンサ30に付設され
たヒータ64(発熱体64a)は、ヒータ制御回路25
によりその動作が制御される。つまり、ヒータ制御回路
25は、A/Fセンサ30の素子温やヒータ温に応じて
ヒータ64への通電量をデューティ制御し、ヒータ64
の加熱制御を行う。
【0036】また、エンジン排気管12には、排ガス温
度を検出するための排気温センサ13が取り付けられて
おり、同センサ13の出力がA/D変換器24を介して
マイコン20に入力される。
【0037】次に、バイアス制御回路40の構成を図7
の電気回路図を用いて説明する。図7において、バイア
ス制御回路40は大別して、基準電圧回路44と、第1
の電圧供給回路45と、第2の電圧供給回路47と、電
流検出回路50とを有する。基準電圧回路44は、定電
圧Vccを分圧抵抗44a,44bにより分圧して一定
の基準電圧Vaを生成する。
【0038】第1の電圧供給回路45は電圧フォロア回
路にて構成され、基準電圧回路44の基準電圧Vaと同
じ電圧Vaをセンサ素子部60の一方の端子42(前記
図3の大気側電極67に接続される端子)に供給する。
より具体的には、第1の電圧供給回路45は、正側入力
端子が各分圧抵抗44a,44bの分圧点に接続される
と共に負側入力端子がセンサ素子部60の一方の端子4
2に接続された演算増幅器45aと、演算増幅器45a
の出力端子に一端が接続された抵抗45bと、この抵抗
45bの他端にそれぞれベースが接続されたNPNトラ
ンジスタ45c及びPNPトランジスタ45dとを有す
る。NPNトランジスタ45cのコレクタは定電圧Vc
cに接続され、エミッタは電流検出回路50を構成する
電流検出抵抗50aを介してセンサ素子部60の一方の
端子42に接続されている。また、PNPトランジスタ
45dのエミッタはNPNトランジスタ45cのエミッ
タに接続され、コレクタはアースされている。
【0039】第2の電圧供給回路47も同様に電圧フォ
ロア回路にて構成され、前記LPF22の出力電圧Vc
と同じ電圧Vcをセンサ素子部60の他方の端子41
(前記図3の計測電極66に接続される端子)に供給す
る。より具体的には、第2の電圧供給回路47は、正側
入力端子が前記LPF22の出力に接続されると共に負
側入力端子がセンサ素子部60の他方の端子41に接続
された演算増幅器47aと、演算増幅器47aの出力端
子に一端が接続された抵抗47bと、この抵抗47bの
他端にそれぞれベースが接続されたNPNトランジスタ
47c及びPNPトランジスタ47dとを有する。NP
Nトランジスタ47cのコレクタは定電圧Vccに接続
され、エミッタは抵抗47eを介してセンサ素子部60
の他方の端子41に接続されている。また、PNPトラ
ンジスタ47dのエミッタはNPNトランジスタ47c
のエミッタに接続され、コレクタはアースされている。
【0040】上記構成により、センサ素子部60の一方
の端子42には常時一定電圧Vaが供給される。そし
て、LPF22を経由してセンサ素子部60の他方の端
子41に一定電圧Vaよりも低い電圧Vcが供給される
と、当該センサ素子部60が正バイアスされる。また、
LPF22を経由してセンサ素子部60の他方の端子4
1に一定電圧Vaよりも高い電圧Vcが供給されると、
当該センサ素子部60が負バイアスされる。
【0041】図8は、ヒータ制御回路25の構成を示す
回路図である。図8において、ヒータ64(発熱体64
a)の一端はバッテリ電源+Bに接続され、他端はスイ
ッチング素子を構成するトランジスタ25aのコレクタ
に接続されている。同トランジスタ25aのエミッタは
ヒータ電流検出用抵抗25bを介して接地されている。
ヒータ電圧Vhはヒータ64の両端電位差により検出さ
れ、その検出結果はオペアンプ25c並びにA/D変換
器26を介してマイコン20に入力される。また、ヒー
タ電流Ihはヒータ電流検出用抵抗25bの両端電位差
により検出され、その検出結果はオペアンプ25d並び
にA/D変換器27を介してマイコン20に入力され
る。
【0042】次に、上記の如く構成される空燃比検出装
置15の作用を説明する。先ずは図9のタイムチャート
を用いて本装置の動作の概要を説明する。図9では、エ
ンジン10の低温始動時において、A/Fセンサ30が
冷間状態から昇温される過程を表している。なお、ヒー
タ通電の開始初期(エンジン始動当初)の素子抵抗ZA
Cは非常に高い値にあり、その値を検出することはでき
ない。
【0043】時刻t11でイグニッションキー(IGキ
ー)がONされると、素子温変化速度ΔTsのオープン
制御が開始される。素子温変化速度ΔTsは、単位時間
毎(本実施の形態では、128ms毎)の温度変化量と
して与えられる。このとき、予め設定されているマップ
を用い、素子温変化速度ΔTsが略一定になるように通
電デューティが決定される。つまり、ヒータ64の通電
デューティが時間の経過に伴い少しずつ上昇し、これに
伴い素子温Ts(固体電解質の温度)が次第に上昇す
る。
【0044】素子抵抗ZACが昇温途中の所定値(本実
施の形態では、3kΩ)を下回る時刻t12では、ヒー
タ制御がそれまでの素子温変化速度ΔTsのオープン制
御から素子温変化速度ΔTsのフィードバック制御に切
り換えられる。すなわち、時刻t12〜t13では、素
子温変化速度ΔTsを目標値にフィードバック制御する
ことによりヒータ通電量(通電デューティ)が決定され
る。
【0045】その後、素子抵抗ZACが活性完了の判定
値(本実施の形態では、120Ω)にまで低下する時刻
t13では、素子温変化速度ΔTsの一連の制御が終了
され、これに代えて、素子温一定のフィードバック制御
が開始される。すなわち、時刻t13以降においては、
素子温Tsを所定の目標温度(700℃)にフィードバ
ック制御することによりヒータ通電量(通電デューテ
ィ)が決定される。但し、「素子温一定」のフィードバ
ック制御と「素子抵抗一定」のフィードバック制御とは
実質上、略同意であることから、本実施の形態では、素
子抵抗一定のフィードバック制御を実施することとして
いる(素子抵抗ZACを目標値にフィードバックさせ
る)。
【0046】図10は、マイコン20によるメインルー
チンの概要を示すフローチャートであり、同ルーチンは
マイコン20への電源投入に伴い起動される。図10に
おいて、マイコン20は、先ずステップ100で前回の
A/F検出時から所定時間Taが経過したか否かを判別
する。所定時間Taは、A/Fの検出周期に相当する時
間であって、例えばTa=4ms程度に設定される。前
回のA/F検出時から所定時間Taが経過していれば
(ステップ100がYES)、マイコン20はステップ
110に進み、後述する図11に従い、A/F(空燃
比)の検出処理を実施する。ステップ100がNOであ
れば、マイコン20はそのまま本ルーチンを一旦終了す
る。
【0047】ここで、図11のA/F検出ルーチンを説
明すれば、マイコン20は、先ずステップ111でA/
Fセンサ30のセンサ素子部60に電圧Vpを印加す
る。印加電圧Vpは、その時々の空燃比(限界電流値I
p)に応じて例えば図5の特性線L1上の値として設定
される。
【0048】その後、マイコン20は、ステップ112
で電圧Vpの印加時にセンサ素子部60に流れる電流
値、すなわち電流検出回路50により検出された限界電
流値(センサ電流)Ipを読み込む。さらに、マイコン
20は、ステップ113で図6に示す限界電流値−A/
Fマップを用いてその時々の限界電流値IpをA/Fに
変換する。また、マイコン20は、続くステップ114
で上記の如く得られたA/Fをエンジン制御ECU16
に出力した後、元の図10のルーチンに戻る。
【0049】A/Fの検出後、マイコン20は、図10
のステップ120で前回の素子抵抗検出時から所定時間
Tbが経過したか否かを判別する。所定時間Tbは、素
子抵抗ZACの検出周期に相当する時間であって、例え
ばエンジン運転状態に応じて選択的に設定される。本実
施の形態では、A/Fの変化が比較的小さい通常時(エ
ンジン10の定常運転時)にはTb=2s(秒)に、A
/Fの急変時(エンジン10の始動時や過渡運転時)に
はTb=128ms(ミリ秒)に、というように所定時
間Tbが可変に設定されるようになっている。
【0050】ステップ120がYESであれば、マイコ
ン20は、ステップ130で素子抵抗ZACを検出する
と共に、続くステップ140でヒータ64の通電制御を
実施する。上記ステップ130,140の処理はそれぞ
れ、後述する図12,図13に従い実施される。上記ス
テップ120がNOであれば、マイコン20はそのまま
本ルーチンを一旦終了する。
【0051】次に、前記図10のステップ130におけ
る素子抵抗ZACの検出手順を図12を用いて説明す
る。なお本実施の形態では、素子抵抗の検出に際し、掃
引法を用いて「交流素子抵抗」を求めることとしてい
る。
【0052】図12において、マイコン20は、先ずス
テップ131でバイアス指令信号Vrを操作し、それま
での印加電圧Vp(A/F検出用電圧)に対して電圧を
正側に単発的に変化させる。素子抵抗検出用の電圧印加
時間は数10〜100μs程度とする。その後、マイコ
ン20は、ステップ132でその時の電圧変化量ΔVと
電流検出回路50により検出されたセンサ電流の変化量
ΔIとを読み取る。また、マイコン20は、続くステッ
プ133で前記ΔV,ΔIから素子抵抗ZACを算出し
(ZAC=ΔV/ΔI)、その後元の図10のルーチン
に戻る。
【0053】上記の処理によれば、前記図1のLPF2
2並びにバイアス制御回路40を介し、所定の時定数を
持たせた電圧が単発的にA/Fセンサ30に印加され
る。その結果、図16に示すように、当該電圧の印加か
らt時間経過後にピーク電流ΔI(電流変化量)が検出
され、その時の電圧変化量ΔVとピーク電流ΔIとから
素子抵抗ZACが検出される(ZAC=ΔV/ΔI)。
かかる場合、LPF22を介して単発的な電圧をA/F
センサ30に印加することにより、過度なピーク電流の
発生が抑制され、素子抵抗ZACの検出精度が向上す
る。
【0054】上記の如く求められる素子抵抗ZACは、
素子温Tsに対して図17に示す関係を有する。すなわ
ち、素子温Tsが低いほど、素子抵抗ZACは飛躍的に
大きくなる。因みにA/Fセンサ30の活性温度(約7
00℃)は、素子抵抗ZAC≒90Ωに相応する。
【0055】次に、前記図10のステップ140におけ
るヒータ通電の制御手順を図13を用いて説明する。マ
イコン20は、先ずステップ141で今現在、センサ素
子部60が昇温途中であるか否かを判別する。例えばエ
ンジン10の低温始動時など、センサ素子部60の昇温
時であれば(ステップ141がYES)、マイコン20
は、ステップ142で前記検出した素子抵抗ZACが昇
温途中の所定値(本実施の形態では、3kΩ)に達した
か否かを判別する。エンジン10の低温始動当初におい
ては、素子抵抗ZACがかなり大きな値となっており、
マイコン20は、ZAC>3kΩである旨を判別してス
テップ143に進む。
【0056】ステップ143では、マイコン20は、素
子温変化速度ΔTsをオープン制御する。具体的には、
マイコン20内の不揮発性メモリに予め設定されている
マップを用い、エンジン始動時からの経過時間に応じて
素子温Tsが所定のプロフィールで変化するよう、ヒー
タ通電のためのデューティ比DUTYを決定する。例え
ば前記図9の時刻t11〜t12では、ステップ143
による素子温変化速度ΔTsのオープン制御が実施され
る。
【0057】また、ZAC≦3kΩであれば、マイコン
20はステップ150に進み、後述する図14の手順に
従い、素子温変化速度ΔTsを所定値にフィードバック
制御する。すなわち、その時々の素子温変化速度ΔTs
と同速度の目標値ΔTsrefとが一致するようPID
制御手法などを用いてヒータ通電のためのデューティ比
DUTYを決定する。例えば前記図9の時刻t12〜t
13では、ステップ150による素子温変化速度ΔTs
のフィードバック制御が実施される。
【0058】前記ステップ143又は150でのDUT
Y決定の後、マイコン20はステップ144に進み、前
記決定したデューティ比DUTYを補正して最終デュー
ティ比Dfnを算出する。具体的には、バッテリ電源+
Bの電圧や排気温等に応じた補正値FKと、センサ個体
差や経時変化に応じた学習値FLRNとを用い、 Dfn=DUTY+FK+FLRN として最終デューティ比Dfnを算出する。また、マイ
コン20は、続くステップ145で素子温Ts又はその
変化速度ΔTsを最大許容値でガードする。そしてその
後、ヒータ通電のためのデューティ比信号を前記図1の
ヒータ制御回路25に出力する。
【0059】なお、上記ステップ145では、前記算出
した最終デューティ比Dfnにてヒータ通電を行った場
合に、素子温Tsが最大許容値の「900℃」、又は素
子温変化速度ΔTsの最大許容値の「150℃/s」を
越えるかどうかを判断する。そして、これら最大許容値
を越えると想定される場合には、通電デューティを
「0」若しくは素子温が確実に下がる値(約0.1〜1
%程度)で規制する。但し、このデューティ比はA/D
変換器の変換速度に応じて設定されるとよい。
【0060】ここで、補正値FKについて説明すれば、
同補正値FKは、例えば図18(a)〜(d)の関係に
基づく各種補正値FK1〜FK4を加算して求められ
る。 FK=FK1+FK2+FK3+FK4 図18(a)によれば、バッテリ電源+Bの電圧値に応
じた補正値FK1が求められる。バッテリ電圧≦A(例
えば定格電圧12ボルト)の場合には正の補正値FK1
がセットされ、バッテリ電圧>Aの場合には負の補正値
FK1がセットされる。
【0061】図18(b)によれば、排気温センサ13
により検出される排気温に応じた補正値FK2が求めら
れる。排気温≦Bの場合には正の補正値FK2がセット
され、排気温>Bの場合には負の補正値FK2がセット
される。
【0062】図18(c)によれば、エンジン始動時の
初期ヒータ抵抗に応じた補正値FK3が求められる。初
期ヒータ抵抗≦Cの場合には正の補正値FK3がセット
され、初期ヒータ抵抗>Cの場合には負の補正値FK3
がセットされる。この場合、初期ヒータ抵抗はエンジン
始動時におけるA/Fセンサ30の冷間状態を反映する
ものであって、補正値FK3は昇温期間にのみ適用され
るとよい。
【0063】図18(d)によれば、バッテリ電源+B
〜ヒータ64〜GND間(前記図8参照)のハーネス抵
抗に応じた補正値FK4が求められる。ハーネス抵抗≦
Dの場合には負の補正値FK4がセットされ、ハーネス
抵抗>Dの場合には正の補正値FK4がセットされる。
【0064】但し、上記図18(a)〜(d)におい
て、各々のしきい値A〜D近傍には補正値を「0」とす
る領域(不感帯)を設けてもよい。なお本実施の形態で
は、FK1〜FK4の総和として補正値FKを設定する
が、FK1〜FK4のうち少なくとも1つを含む値とし
て補正値FKを設定してもよい。
【0065】また、学習値FLRNは、ヒータONから
センサ活性までの所要時間に基づく第1学習値FLRN
1と、燃料カット時に検出される素子抵抗ズレに基づく
第2学習値FLRN2と、定常運転時におけるDUTY
ズレ量に基づく第3学習値FLRN3とを加算して求め
られる。
【0066】 FLRN=FLRN1+FLRN2+FLRN3 上記の学習値FLRN1〜FLRN3は、マイコン20
内のバックアップメモリ20aに格納され逐次更新され
るデータであり、その算出手順については後述する。
【0067】一方、図13のステップ141がNOであ
れば(センサ素子部60の昇温中でない場合)、マイコ
ン20はステップ160に進み、後述する図15の手順
に従い、素子抵抗ZACを所定値に保持するようフィー
ドバック制御を実施する。すなわち、その時々の素子抵
抗ZACとその目標値ZACrefとが一致するようP
ID制御手法などを用いてヒータ通電のためのデューテ
ィ比DUTYを決定する。例えば前記図9の時刻t13
以降では、ステップ160による素子抵抗一定(素子温
一定)のフィードバック制御が実施される。
【0068】その後、マイコン20はステップ146に
進み、前記決定したデューティ比DUTYに、補正値F
Kと学習値FLRNとを加算して最終デューティ比Df
nを算出する(Dfn=DUTY+FK+FLRN)。
また、マイコン20は、ステップ145で素子温Ts又
はその変化速度ΔTsを最大許容値でガードする。そし
てその後、デューティ比信号を前記図1のヒータ制御回
路25に出力する。
【0069】次に、図14のルーチン(前記図13のス
テップ150の処理)を説明すれば、マイコン20は、
ステップ151で前回処理時の素子温Tsを前回値「T
s0」、同じく前回処理時の素子温変化速度ΔTsを前
回値「ΔTs0」とする。また、マイコン20は、続く
ステップ152で前記検出した素子抵抗ZAC(図12
による検出値)を読み出すと共に、例えば図17の関係
に従い、素子抵抗ZACから素子温Tsの今回値を求め
る。さらに、マイコン20は、ステップ153で素子温
の今回値Tsから前回値Ts0を減算して素子温変化速
度の今回値ΔTsを算出する(ΔTs=Ts−Ts
0)。
【0070】その後、マイコン20は、ステップ154
で下記の数式により比例項Gp,積分項Gi,微分項G
dを算出する。 Gp=Kp・(ΔTsref−ΔTs) Gi=Gi+Ki・(ΔTsref−ΔTs) Gd=Kd・(ΔTs0−ΔTs) 但し、上記各式において、「Kp」は比例定数、「K
i」は積分定数、「Kd」は微分定数を表す。
【0071】そして、マイコン20は、ステップ155
で上記比例項Gp,積分項Gi,微分項Gdを加算して
デューティ比DUTYを算出し(DUTY=Gp+Gi
+Gd)、その後元の図13のルーチンに戻る。
【0072】また、図15のルーチン(前記図13のス
テップ160の処理)を説明すれば、マイコン20は、
ステップ161で前回処理時の素子抵抗ZACを前回値
「ZAC0」とし、続くステップ162で前記検出した
素子抵抗ZAC(図12による検出値)を読み出す。ま
たマイコン20は、ステップ163で下記の数式により
比例項Gp,積分項Gi,微分項Gdを算出する。
【0073】Gp=Kp・(ZAC−ZACref) Gi=Gi+Ki・(ZAC−ZACref) Gd=Kd・(ZAC−ZAC0) そして、マイコン20は、ステップ164で上記比例項
Gp,積分項Gi,微分項Gdを加算してデューティ比
DUTYを算出し(DUTY=Gp+Gi+Gd)、そ
の後元の図13のルーチンに戻る。
【0074】次に、第1〜第3学習値FLRN1〜FL
RN3の算出手順を図19〜図21のフローチャートを
用いて説明する。ここで、図19は、第1学習値FLR
N1を算出するための第1の学習ルーチンを、図20
は、第2学習値FLRN2を算出するための第2の学習
ルーチンを、図21は、第3学習値FLRN3を算出す
るための第3の学習ルーチンをそれぞれ示し、これら各
ルーチンはマイコン20により例えば128ms周期で
実行される。但し、図19〜図21による学習値の更新
は、例えばIGオン後に1回のみ実施されればよい。従
って、学習が完了すると、その旨を表すフラグがセット
され、それ以降は同じ処理が実施されないようになって
いる。
【0075】最初に図19を説明すると、マイコン20
は、先ずステップ201でエンジン10の再始動判定を
行う。この再始動判定では、 ・エンジン水温が所定温度(例えば35℃)以下である
こと、 ・吸気温が所定温度(例えば20℃)以下であること、 ・素子抵抗が所定値(例えば3kΩ)以上であること、 ・ヒータ抵抗が所定値(例えば3Ω)以下であること、 といった各種条件を判定する。そして、上記の各種条件
が全て成立すれば、エンジン再始動時でないと判断し、
上記いずれかの条件が一つでも不成立であれば、エンジ
ン再始動時であると判断する。
【0076】エンジン再始動時でないことを条件に(ス
テップ202がYES)、マイコン20はステップ20
3に進み、A/Fセンサ30の活性化までの所要時間を
計測する。この所要時間の計測に際しては、IG=ON
に伴いカウントアップされるカウンタを用い、例えば図
23に示すように、 ・センサ電流の変化量が所定の判定値以上となった時、 ・センサ電流の積算値が所定の判定値以上となった時、 ・素子抵抗が所定の判定値(例えば1kΩ)以下となっ
た時、 ・ヒータ抵抗が所定の判定値(例えば4Ω)以上となっ
た時、 ・素子温が所定の判定値(例えば600℃)以上となっ
た時、 ・ヒータ温が所定の判定値(例えば650℃)以上とな
った時、 といった何れかの場合に、センサ活性の旨を判定する。
そして、活性化までの所要時間をカウンタ値から検知す
る。ここで言う活性判定とは、前記図13のヒータ制御
での活性判定(図9の時刻t13)とは必ずしも同意で
はなく、活性判定の目安となるものであればよい。
【0077】その後、マイコン20は、ステップ204
で例えば図22(a)の関係に従い、活性化までの所要
時間に応じて第1学習値FLRN1を設定した後、本ル
ーチンを終了する。前記設定したFLRN1値はマイコ
ン20内のバックアップメモリ20aに随時記憶され
る。図22(a)によれば、活性化までの所要時間が所
定値A1以上になると、正の学習値FLRN1が設定さ
れる。例えばA/Fセンサ30が劣化したりすると活性
時間が増大し、上記学習値FLRN1に「0」以上の値
がセットされる。
【0078】次に、図20を説明すると、マイコン20
は、先ずステップ301でA/Fセンサ30の活性が完
了しているか否かを判別する。また、マイコン20は、
ステップ302で今現在、燃料カット(F/C)中であ
るか否かを判別する。そして、ステップ301,302
が共にYESであることを条件に、マイコン20はステ
ップ303に進み、F/C時におけるセンサ内部抵抗R
iを検出する。
【0079】つまり、F/C時であればA/Fが極リー
ンの状態下にあり、例えば図24に示す特性線L1’を
用いて抵抗支配領域の電圧Vfを印加してその時のセン
サ電流Ifを検出する。そして、 Ri=Vf/If としてセンサ内部抵抗Riを検出する。
【0080】その後、ステップ304では、マイコン2
0は、前記掃引法にて検出した素子抵抗ZAC(前記図
12による検出値)とF/C時に検出したセンサ内部抵
抗Riとの差(ZAC−Ri)を算出する。
【0081】また、マイコン20は、続くステップ30
5で例えば図22(b)の関係に従い、(ZAC−R
i)に応じて第2学習値FLRN2を設定した後、本ル
ーチンを終了する。前記設定したFLRN2値はマイコ
ン20内のバックアップメモリ20aに随時記憶され
る。図22(b)によれば、(ZAC−Ri)の値が
「0」付近の「B1〜B2」にある場合、FLRN2=
0が設定される。また、(ZAC−Ri)<B1の場
合、正の学習値FLRN2が設定され、(ZAC−R
i)>B2の場合、負の学習値FLRN2が設定され
る。
【0082】次に、図21を説明すると、マイコン20
は、先ずステップ401で今現在、素子温一定(素子抵
抗一定)のフィードバック制御が実施されているか否か
を判別する。前記図9の時刻t13以降においては、同
ステップ401が肯定判別される。また、マイコン20
は、ステップ402で今現在、エンジン10が定常運転
されているか否かを判別する。さらに、マイコン20
は、前記ステップ401,402が共にYESとなる状
態が所定時間(例えば5秒間)継続したか否かを判別す
る(ステップ403)。
【0083】ステップ403がYESになると、マイコ
ン20はステップ404に進み、所定時間内(5秒間)
のヒータ64への通電DUTYから平均DUTYを算出
する。さらに、マイコン20は、ステップ405で前記
算出した平均DUTYから予め設定されている基準DU
TYを減算してDUTYズレ量を算出する(DUTYズ
レ量=平均DUTY−基準DUTY)。なおここで、基
準DUTYとは、素子温一定制御での定常運転時におい
て、素子温Tsを所定温度に保持するために必要な標準
的な通電量に相当する。
【0084】また、マイコン20は、続くステップ40
6で例えば図22(c)の関係に従い、DUTYズレ量
に応じて第3学習値FLRN3を設定した後、本ルーチ
ンを終了する。前記設定したFLRN3値はマイコン2
0内のバックアップメモリ20aに随時記憶される。図
22(c)によれば、DUTYズレ量が「0」付近の
「C1〜C2」にある場合、FLRN3=0が設定され
る。また、DUTYズレ量<C1の場合、負の学習値F
LRN3が設定され、DUTYズレ量>C2の場合、正
の学習値FLRN3が設定される。
【0085】上記の如く算出された学習値FLRN1〜
FLRN3は、既述の図13のステップ144,146
において、最終デューティ比Dfnの算出(DUTY補
正)に適宜採用される。
【0086】以上詳述した本実施の形態によれば、以下
に示す効果が得られる。 (a)本実施の形態では、素子温変化速度ΔTs(セン
サ素子部60の昇温率)に応じてヒータ通電量をデュー
ティ制御するようにした。上記構成によれば、例えばA
/Fセンサ30の冷間状態からの昇温時において、過剰
なるセンサ素子部60の昇温が抑制できると共に、セン
サ素子部60の迅速なる活性化が実現できる。その結
果、A/Fセンサ30の昇温特性を良好に維持し、且つ
素子割れ、ヒータ割れ、ヒータ接合面の剥離などの不具
合が抑制できる。
【0087】特に固体電解質61にヒータ64を積層し
て一体化した、いわゆる積層型センサの場合、固体電解
質61とヒータ64とが近接して設けられるため、素子
割れやヒータ割れなどの問題が生じやすいが、上記構成
によれば当該問題が確実に抑制できる。
【0088】(b)センサ冷間状態からの昇温時には、
その当初において素子温変化速度ΔTsをオープン制御
することとした。これにより、素子抵抗ZACが検出可
能になるまでの始動直後の期間においても、素子温変化
速度ΔTsが適切に制御できる。
【0089】(c)A/Fセンサ30の昇温時であるか
又は昇温後の定常時であるかを判別し、昇温後の定常時
であれば、素子温一定のフィードバック制御を実施する
ようにした。つまり、A/Fセンサ30が一旦活性化さ
れると、それ以降は昇温時のような急激な温度変化がな
いものとして、素子温変化速度ΔTsに応じたヒータ制
御に代えて、既存の素子温フィードバック制御を実施す
る。これにより、昇温時は勿論のこと、昇温時以外にお
いても適切なヒータ制御が実施できる。
【0090】(d)素子温Ts又はその変化速度ΔTs
を所定の最大許容値でガードすることとした。これによ
り、センサ素子部60の過剰な加熱がより一層確実に防
止できる。
【0091】(e)一方、第1〜第3学習値FLRN1
〜FLRN3を求め、当該学習値によりヒータ通電量を
補正することとした。すなわち、 ・A/Fセンサ30の冷間状態から活性化までの所要時
間に応じた第1学習値FLRN1と、 ・燃料カット時に検出したセンサ内部抵抗Riと、掃引
法により検出した素子抵抗ZACとを比較し、それらの
値のズレ量(ZAC−Ri)に応じた第2学習値FLR
N2と、 ・エンジンの定常運転時における通電DUTYと、予め
設定されている通電DUTYの標準値との差に応じた第
3学習値FLRN3と、 によりヒータ通電量を補正するようにした。従って、例
えばA/Fセンサ30が劣化しても、素子温Tsが不用
意に変動するなどの不具合が抑制できる。つまり、セン
サ個体差や経時変化によるヒータ制御への影響が排除で
きる。
【0092】(f)上記学習値FLRN1〜FLRN3
をバックアップメモリ20aに随時記憶すると共に、そ
の値を必要に応じて更新するようにした。これにより、
学習値FLRN1〜FLRN3の演算が必要時だけで済
み、効率的で且つ適切なヒータ制御が実施できる。
【0093】(g)また、補正値FK1〜FK4を求
め、当該補正値によりヒータ通電量を補正することとし
た。すなわち、 ・バッテリ電源+Bの電圧値に応じた補正値FK1と、 ・排気温に応じた補正値FK2と、 ・エンジン始動時の初期ヒータ抵抗に応じた補正値FK
3と、 ・+B〜ヒータ64〜GND間のハーネス抵抗に応じた
補正値FK4と、 によりヒータ通電量を補正するようにした。これによ
り、エンジン10の運転条件が逐次変化する場合にも、
そのエンジン運転条件に応じた適切なヒータ制御が継続
できる。結果として、ヒータ通電の制御精度がより一層
向上する。
【0094】上記実施の形態では、ヒータ通電の制御時
において(前記図13のルーチン)、素子抵抗ZACを
素子温Tsに変換し、この素子温Tsを用いて「素子温
変化速度ΔTs」を制御したが、素子抵抗ZACを素子
温Tsに変換せずに「素子抵抗変化速度」を制御する構
成としてもよい。
【0095】次に、本発明における第2,第3の実施の
形態を説明する。但し、以下の実施の形態の構成におい
て、上述した第1の実施の形態と同等であるものについ
ては図面に同一の記号を付すと共にその説明を簡略化す
る。そして、以下には第1の実施の形態との相違点を中
心に説明する。
【0096】(第2の実施の形態)図25〜図28を用
いて第2の実施の形態における空燃比検出装置を説明す
る。本実施の形態の装置では、A/Fセンサ30の昇温
時において、素子温Tsとヒータ温Thとの差(温度差
ΔThs)に応じてヒータ64の通電制御を実施するこ
とを特徴としている。
【0097】先ずは図25のタイムチャートを用いて動
作の概要を説明する。図25では、エンジン10の低温
始動時において、A/Fセンサ30が冷間状態から昇温
される過程を表している。
【0098】時刻t21でイグニッションキー(IGキ
ー)がONされると、マップを用いた素子温変化速度Δ
Tsのオープン制御が開始される。つまり、ヒータ64
の通電デューティが時間の経過に伴い少しずつ上昇し、
これに伴い素子温Ts(固体電解質の温度)とヒータ温
Thが次第に上昇する。
【0099】素子抵抗ZACが昇温途中の所定値(本実
施の形態では、3kΩ)を下回る時刻t22では、ヒー
タ制御がそれまでの素子温変化速度ΔTsのオープン制
御から、素子温Tsとヒータ温Thとの差(温度差ΔT
hs)のフィードバック制御に切り換えられる。すなわ
ち、時刻t22〜t23では、素子温Tsとヒータ温T
hとの差(温度差ΔThs)を目標値にフィードバック
制御させつつ通電デューティが決定される。
【0100】その後、素子抵抗ZACが活性完了の判定
値(本実施の形態では、120Ω)にまで低下する時刻
t23では、それまでの温度差ΔThsのフィードバッ
ク制御が終了され、これに代えて、素子温一定(素子抵
抗一定)のフィードバック制御が開始される。すなわ
ち、時刻t23以降においては、素子温Tsを所定の目
標温度(700℃)にフィードバック制御することによ
り通電デューティが決定される。
【0101】図26は、本実施の形態におけるヒータ通
電制御ルーチンであり、同ルーチンは前記図13に代え
てマイコン20により実施される。図13と図26との
相違点として、図26では、図13のステップ150に
代えてステップ500の処理を実施する。
【0102】つまり、センサ昇温中であって且つ、ZA
C≦3kΩの場合(ステップ141,142が共にYE
Sの場合)、マイコン20はステップ500に進み、後
述する図27の手順に従い、素子温Tsとヒータ温Th
との差(温度差ΔThs)を所定値にフィードバック制
御する。すなわち、その時々の温度差ΔThsと所定の
目標値ΔThsrefとが一致するようPID制御手法
などを用いてヒータ通電のためのデューティ比DUTY
を決定する。例えば前記図25の時刻t22〜t23で
は、ステップ500による温度差ΔThsのフィードバ
ック制御が実施される。
【0103】なおこの場合には、素子温Tsとヒータ温
Thとの温度差ΔThsを、同温度差ΔThsの最大許
容値(200℃程度)でガードし、この最大許容値を越
える場合には通電DUTYを「0」若しくは素子温が確
実に下がる値(約0.1〜1%程度)で規制するとよ
い。
【0104】図27のルーチンを説明すれば、マイコン
20は、先ずステップ501で前回処理時の温度差ΔT
hs(ヒータ温Thと素子温Tsとの差)を前回値「Δ
Ths0」とし、続くステップ502でヒータ抵抗Rh
を検出する。このとき、ヒータ64の両端電圧Vhとヒ
ータ電流Ihとをヒータ制御回路25から取り込み、こ
の取り込んだVh,Ihからヒータ抵抗Rhを検出する
(Rh=Vh/Ih)。
【0105】その後、マイコン20は、ステップ503
で図28の関係に従い、ヒータ抵抗Rhをヒータ温Th
に換算する。また、マイコン20は、ステップ504で
前記図17の関係に従い、素子抵抗ZACを素子温Ts
に換算する。
【0106】さらに、マイコン20は、ステップ505
で素子(固体電解質)とヒータとの温度差ΔThsを求
め(ΔThs=Th−Ts)、続くステップ506で下
記の数式により比例項Gp,積分項Gi,微分項Gdを
算出する。
【0107】 Gp=Kp・(ΔThsref−ΔThs) Gi=Gi+Ki・(ΔThsref−ΔThs) Gd=Kd・(ΔThs0−ΔThs) そして、マイコン20は、ステップ507で上記比例項
Gp,積分項Gi,微分項Gdを加算してデューティ比
DUTYを算出し(DUTY=Gp+Gi+Gd)、そ
の後元の図26のルーチンに戻る。
【0108】以上第2の実施の形態では、素子温Tsと
ヒータ温Thとの差(温度差ΔThs)に応じてヒータ
通電量を制御することとした。これにより、上記第1の
実施の形態と同様に、A/Fセンサ30の昇温特性を良
好に維持し、且つ素子割れなどの不具合が抑制できる。
すなわち、素子温Tsに対してヒータ温Thが過大にな
ると、固体電解質61の急激な温度上昇を引き起こすお
それがあるが、上記構成によればこうした不具合が解消
される。
【0109】(第3の実施の形態)次いで、図29〜図
31を用いて第3の実施の形態における空燃比検出装置
を説明する。本実施の形態の装置では、A/Fセンサ3
0の昇温時において、ヒータ抵抗Rh(ヒータ温Thで
も可)の変化速度に応じてヒータ64の通電制御を実施
することを特徴としている。
【0110】先ずは図29のタイムチャートを用いて動
作の概要を説明する。図29では、エンジン10の低温
始動時において、A/Fセンサ30が冷間状態から昇温
される過程を表している。
【0111】時刻t31でイグニッションキー(IGキ
ー)がONされると、その当初からヒータ抵抗Rh(或
いは、ヒータ温Th)が検出される。そして、ヒータ抵
抗の変化速度ΔRh(或いは、ヒータ温の変化速度ΔT
h)が所定の目標値になるようフィードバック制御が実
施され、それにより通電デューティが決定される。この
ヒータ抵抗変化速度ΔRhのフィードバック制御は、活
性完了とみなされるまで、すなわちヒータ抵抗Rh=4
Ωとなるまで継続される。
【0112】Rh=4Ωとなる時刻t32では、ヒータ
抵抗変化速度ΔRhのフィードバック制御が終了され、
これに代えて、ヒータ温一定(ヒータ抵抗一定)のフィ
ードバック制御が開始される。すなわち、時刻t32以
降においては、ヒータ温Thを所定の目標温度(700
℃)にフィードバック制御することにより通電デューテ
ィが決定される。但し、「ヒータ温一定」のフィードバ
ック制御と「ヒータ抵抗一定」のフィードバック制御と
は実質上、略同意であることから、本実施の形態では、
ヒータ抵抗一定のフィードバック制御を実施することと
している(ヒータ抵抗Rhを目標値にフィードバックさ
せる)。
【0113】図30は、本実施の形態におけるヒータ通
電制御ルーチンであり、同ルーチンは前記図13に代え
てマイコン20により実施される。図13と図30との
相違点として、図30では、図13のステップ142,
143,150に代えてステップ600の処理を実施す
ると共に、図13のステップ160に代えてステップ7
00の処理を実施する。
【0114】つまり、センサ昇温中の場合(ステップ1
41がYESの場合)、マイコン20はステップ600
に進み、後述する図31の手順に従い、ヒータ抵抗変化
速度ΔRhを所定値にフィードバック制御する。すなわ
ち、その時々のヒータ抵抗変化速度ΔRhと所定の目標
値ΔRhrefとが一致するようPID制御手法などを
用いてヒータ通電のためのデューティ比DUTYを決定
する。例えば前記図29の時刻t31〜t32では、ス
テップ600によるΔRhのフィードバック制御が実施
される。
【0115】また、センサ昇温中でない場合(ステップ
141がNOの場合)、マイコン20はステップ700
に進み、後述する図32の手順に従い、ヒータ抵抗Rh
を所定値にフィードバック制御する。すなわち、その時
々のヒータ抵抗Rhと所定の目標値Rhrefとが一致
するようPID制御手法などを用いてヒータ通電のため
のデューティ比DUTYを決定する。例えば前記図29
の時刻t32以降では、ステップ700によるヒータ抵
抗一定(ヒータ温一定)のフィードバック制御が実施さ
れる。
【0116】なお図30の処理では、ヒータ抵抗変化速
度ΔRhをその最大許容値(200℃/s程度)でガー
ドすると共に、ヒータ温Thをその最大許容値(100
0〜1100℃程度)でガードし、この最大許容値を越
える場合には通電DUTYを「0」若しくはヒータ温が
確実に下がる値(約0.1〜1%程度)で規制するとよ
い。
【0117】図31のルーチンを説明すれば、マイコン
20は、先ずステップ601で前回処理時のヒータ抵抗
Rhを前回値「Rh0」、同じく前回処理時のヒータ抵
抗変化速度ΔRhを前回値「ΔRh0」とし、続くステ
ップ602でヒータ抵抗Rhの今回値を検出する(Rh
=Vh/Ih)。
【0118】その後、マイコン20は、ステップ603
でヒータ抵抗変化速度ΔRhを求め(ΔRh=Rh−R
h0)、続くステップ604で下記の数式により比例項
Gp,積分項Gi,微分項Gdを算出する。
【0119】Gp=Kp・(ΔRhref−ΔRh) Gi=Gi+Ki・(ΔRhref−ΔRh) Gd=Kd・(ΔRh0−ΔRh) そして、マイコン20は、ステップ605で上記比例項
Gp,積分項Gi,微分項Gdを加算してデューティ比
DUTYを算出し(DUTY=Gp+Gi+Gd)、そ
の後元の図30のルーチンに戻る。
【0120】また図32の処理を説明すれば、マイコン
20は、先ずステップ701で前回処理時のヒータ抵抗
Rhを前回値「Rh0」とし、続くステップ702でヒ
ータ抵抗Rhの今回値を検出する(Rh=Vh/I
h)。その後、マイコン20は、ステップ703で下記
の数式により比例項Gp,積分項Gi,微分項Gdを算
出する。
【0121】Gp=Kp・(Rhref−Rh) Gi=Gi+Ki・(Rhref−Rh) Gd=Kd・(Rh0−Rh) そして、マイコン20は、ステップ704で上記比例項
Gp,積分項Gi,微分項Gdを加算してデューティ比
DUTYを算出し(DUTY=Gp+Gi+Gd)、そ
の後元の図30のルーチンに戻る。
【0122】以上第3の実施の形態では、ヒータ抵抗変
化速度ΔRhに応じてヒータ通電量を制御することとし
た。これにより、上記第1,第2の実施の形態と同様
に、A/Fセンサ30の昇温特性を良好に維持し、且つ
素子割れなどの不具合が抑制できる。
【0123】なお、本発明の実施の形態は、上記以外に
次の形態にて実現できる。 (別の形態1)上記第1の実施の形態における図14
(ΔTsのフィードバック制御ルーチン)において、素
子温変化速度ΔTsの目標値ΔTsrefを可変に設定
する。例えば図33(a),(b)に示すように、素子
温Tsに応じてΔTsref値を設定する。この場合、
比較的大きな温度上昇率が許容される素子温Tsの高温
域では、ΔTsref値が大きくなり、比較的大きな通
電DUTYが設定される。その結果、A/Fセンサ30
の早期活性が実現できる。またIGオンからの時間の経
過に応じて目標値を徐々に大きくしていく構成としても
よい。
【0124】第2,第3の実施の形態においても同様
に、フィードバック制御時の目標値(図27のΔThs
ref,図31のΔRhref)を例えば素子温Tsや
経過時間に応じて可変に設定するようにしてもよい。
【0125】(別の形態2)上記第1の実施の形態で
は、エンジン10の低温始動に伴うセンサ昇温時におい
て、素子温変化速度ΔTsのオープン制御、並びにフィ
ードバック制御を実施したが(前記図9のt11〜t1
2,t12〜t13、図13参照)、これを以下のよう
に変更する。
【0126】前記図9のt11〜t12の期間におい
て、予め設定されているマップを用いて素子抵抗ZAC
(又は素子温Ts)をオープン制御する。また、同図の
t12〜t13の期間において、素子抵抗ZAC(又は
素子温Ts)を目標値ZACrefにフィードバック制
御する。素子抵抗ZACのフィードバック手順は前記図
15の処理に準ずる。このとき、素子抵抗ZAC変化速
度(センサ素子部60の昇温率に相当)が所定の最大値
を越えないようにガードしておくとよい。かかる構成に
おいても、センサの昇温特性を良好に維持し、且つ素子
割れなどの不具合が抑制できるようになる。
【0127】(別の形態3)上記第3の実施の形態で
は、エンジン10の低温始動に伴うセンサ昇温時におい
て、ヒータ抵抗変化速度ΔTsのフィードバック制御を
実施したが(前記図29のt31〜t32、図30参
照)、これを以下のように変更する。
【0128】前記図29のt31〜t32の期間におい
て、ヒータ抵抗Rh(又はヒータ温Th)を目標値Rh
refにフィードバック制御する。ヒータ抵抗Rhのフ
ィードバック手順は前記図32の処理に準ずる。このと
き、ヒータ抵抗Rhの変化速度(センサ素子部60の昇
温率に相当)が所定の最大値を越えないようにガードし
ておくとよい。
【0129】或いは、同じく前記図29のt31〜t3
2の期間において、ヒータ電力Whを目標値Whref
にフィードバック制御する。ヒータ電力Whのフィード
バック手順を図34を用いて簡単に説明すれば、 ・先ず、ヒータ電力Whを前回値「Wh0」とし(ステ
ップ801)、 ・ヒータ電力Whの今回値を検出し(ステップ80
2)、 ・比例項Gp,積分項Gi,微分項Gdを、 Gp=Kp・(Whref−Wh) Gi=Gi+Ki・(Whref−Wh) Gd=Kd・(Wh0−Wh) として求め(ステップ803)、 ・比例項Gp,積分項Gi,微分項Gdを加算してデュ
ーティ比DUTYを算出する(ステップ804)。この
とき、ヒータ電力Whの変化速度(センサ素子部60の
昇温率に相当)が所定の最大値を越えないようにガード
しておくとよい。
【0130】但しこの場合、ヒータ電力Whはヒータ電
圧Vhとヒータ電流Ihとの積で求められる。ヒータ電
力Whに代えて、IGオン時からのヒータ電力積算値を
用いることも可能である。上記構成においても、センサ
の昇温特性を良好に維持し、且つ素子割れなどの不具合
が抑制できるようになる。
【0131】(別の形態4)上記第1〜第3の実施の形
態では、センサ活性後においてそれまでのセンサ素子の
昇温率(昇温速度)に応じたヒータ制御に代えて素子温
一定(素子抵抗一定)のフィードバック制御を実施して
いたが、これを変更する。例えばセンサ活性後において
も、センサ素子の昇温率に応じたヒータ制御を継続して
実施するようにしてもよい。
【0132】(別の形態5)A/Fセンサ30の素子抵
抗検出に際し、上記各実施の形態では「交流素子抵抗Z
AC」を検出したが、これを変更し、「直流素子抵抗R
i」を検出する。具体的には、前記図12(図10のス
テップ130)に代えて、図35のRi検出ルーチンを
実行する。すなわち図35において、マイコン20は、
先ずステップ901でセンサ素子部60に負の電圧Vn
を印加する。この電圧Vnの値は限界電流発生域にかか
らない抵抗支配域の電圧であり、具体的にはVn=−
0.3〜−1〔ボルト〕程度とする。また、マイコン2
0は、電圧切り換え直後のピーク電流が完全に収束する
時間t1(数10ms〜数100ms)だけ待った後
(ステップ902)、ステップ903で電流値Inを検
出する。
【0133】その後、マイコン20は、ステップ904
で印加電圧を負の電圧Vnから元の正の電圧Vpに戻
す。また、マイコン20は、電圧切り換え直後のピーク
電流が完全に収束する時間t2(数10ms〜数100
ms)だけ待った後(ステップ905)、ステップ90
6で前記負の電圧Vnと前記電流値In(負の電流値)
とからその時の直流素子抵抗Riを算出する(Ri=V
n/In)。
【0134】上記の如く直流素子抵抗を検出する場合、
所定の周波数域の単発的な交流電圧をセンサ素子部60
に印加するための構成が不要となり、前記図1のLPF
22が省略できる。
【0135】(別の形態6)A/Fセンサの構成を変更
する。上記実施の形態では、図3に説明したように、ガ
ス拡散抵抗層62をガス透過層62aとガス遮蔽層62
bとの二層で構成したが、このうちガス遮蔽層62bを
省略した構成としてもよい。また、上記実施の形態で
は、積層型A/Fセンサに具体化したが、コップ型A/
Fセンサに具体化してもよい。
【0136】(別の形態7)上記実施の形態では、酸素
濃度(空燃比)に応じたリニアな限界電流値を出力する
A/Fセンサに本発明を具体化したが、これを変更す
る。例えば空燃比がリッチかリーンかに応じて異なる電
圧信号を出力するO2 センサに具体化してもよい。ま
た、排ガス中のNOx 濃度を検出するNOx センサや、
NOx ,HC,O2 などの各種成分を検出する、いわゆ
る複合型センサに具体化してもよい。またさらに、排ガ
ス以外のガス成分濃度を測定する装置にも適用できる。
【0137】(別の形態8)上記各実施の形態では、デ
ューティ比DUTYに補正値FKや学習値FLRNで補
正する構成としたが(前記図13のステップ144,1
46)、この補正の処理を省略して具体化してもよい。
【0138】(別の形態9)上記各実施の形態では、各
種のフィードバック制御の実施に際し、PID制御を実
施したが、PI制御やP制御など他の制御に変更しても
よい。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態における空燃比制御システム
の概要を示す全体構成図。
【図2】A/Fセンサの全体構成を示す断面図。
【図3】センサ素子部の断面図。
【図4】センサ素子部を構成する各部材の分解斜視図。
【図5】A/Fセンサの電圧−電流特性図。
【図6】A/Fセンサの限界電流値と空燃比との関係を
示すグラフ。
【図7】バイアス制御回路の詳細な構成を示す電気回路
図。
【図8】ヒータ制御回路の詳細な構成を示す電気回路
図。
【図9】空燃比検出装置の動作説明のためのタイムチャ
ート。
【図10】空燃比検出装置内のマイコンによるメインル
ーチンを示すフローチャート。
【図11】A/Fの検出手順を示すフローチャート。
【図12】素子抵抗ZACの検出手順を示すフローチャ
ート。
【図13】ヒータ通電の制御手順を示すフローチャー
ト。
【図14】素子温変化速度ΔTsのフィードバック制御
手順を示すフローチャート。
【図15】素子抵抗ZACのフィードバック制御手順を
示すフローチャート。
【図16】素子抵抗ZACの検出時におけるセンサ電圧
とセンサ電流とを示す波形図。
【図17】素子抵抗と素子温との関係を示すグラフ。
【図18】補正値FK1〜FK4を求めるための図。
【図19】第1の学習ルーチンを示すフローチャート。
【図20】第2の学習ルーチンを示すフローチャート。
【図21】第3の学習ルーチンを示すフローチャート。
【図22】学習値FLRN1〜FLRN3を求めるため
の図。
【図23】活性判定の様子を示すタイムチャート。
【図24】F/C時の印加電圧Vfとセンサ電流Ifと
を示す図。
【図25】第2の実施の形態において、動作説明のため
のタイムチャート。
【図26】第2の実施の形態において、ヒータ通電の制
御手順を示すフローチャート。
【図27】第2の実施の形態において、温度差ΔThs
のフィードバック制御手順を示すフローチャート。
【図28】ヒータ抵抗とヒータ温との関係を示すグラ
フ。
【図29】第3の実施の形態において、動作説明のため
のタイムチャート。
【図30】第3の実施の形態において、ヒータ通電の制
御手順を示すフローチャート。
【図31】第3の実施の形態において、ヒータ抵抗変化
速度ΔRhのフィードバック制御手順を示すフローチャ
ート。
【図32】第3の実施の形態において、ヒータ抵抗Rh
のフィードバック制御手順を示すフローチャート。
【図33】素子温Tsに応じて素子温変化速度の目標値
ΔTsrefを設定するための図。
【図34】ヒータ電力Whのフィードバック制御手順を
示すフローチャート。
【図35】素子抵抗Riの検出手順を示すフローチャー
ト。
【符号の説明】
10…エンジン、15…空燃比検出装置、20…マイコ
ン(マイクロコンピュータ)、20a…バックアップメ
モリ、25…ヒータ制御回路、30…A/Fセンサ(限
界電流式空燃比センサ)、40…バイアス制御回路、5
0…電流検出回路、60…センサ素子部、61…固体電
解質、64…ヒータ、64a…発熱体、+B…バッテリ
電源。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山下 幸宏 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固体電解質を用いたセンサ素子を有し、被
    測定ガスの特定成分濃度を測定するセンサと、 電源電圧の通電により発熱し、前記センサ素子を所定の
    活性温度に加熱するためのヒータと、 前記センサ素子の昇温率に応じて前記ヒータへの通電量
    を制御するヒータ制御手段とを備えることを特徴とする
    ガス成分濃度測定装置。
  2. 【請求項2】前記センサ素子の素子温又は素子抵抗を検
    出すると共に、その変化速度を算出する手段を備え、 前記ヒータ制御手段は、前記算出した素子温又は素子抵
    抗の変化速度に応じてヒータ通電量を制御する請求項1
    に記載のガス成分濃度測定装置。
  3. 【請求項3】前記センサ素子の温度と前記ヒータの温度
    とを検出すると共に、これら素子温とヒータ温との差を
    算出する手段を備え、 前記ヒータ制御手段は、前記算出した素子温とヒータ温
    との差に応じてヒータ通電量を制御する請求項1に記載
    のガス成分濃度測定装置。
  4. 【請求項4】前記センサ素子が冷間状態から昇温される
    際に素子抵抗が検出可能になるまでの期間において、前
    記ヒータ制御手段は、素子温又は素子抵抗の変化速度を
    オープン制御する請求項2又は請求項3に記載のガス成
    分濃度測定装置。
  5. 【請求項5】前記ヒータの温度又はヒータ抵抗を検出す
    ると共に、そのヒータ温又はヒータ抵抗の変化速度を算
    出する手段を備え、 前記ヒータ制御手段は、前記算出したヒータ温又はヒー
    タ抵抗の変化速度に応じてヒータ通電量を制御する請求
    項1に記載のガス成分濃度測定装置。
  6. 【請求項6】前記センサの昇温時であるか又は昇温後の
    定常時であるかを判別し、昇温後の定常時であれば、素
    子温を目標温度に一致させるようフィードバック制御を
    実施する請求項1〜請求項5のいずれかに記載のガス成
    分濃度測定装置。
  7. 【請求項7】前記センサ素子の昇温率が所定の許容レベ
    ルを超えると、ヒータ通電量を制限する請求項1〜請求
    項6のいずれかに記載のガス成分濃度測定装置。
  8. 【請求項8】前記センサの冷間状態から活性化までの所
    要時間に応じて前記ヒータの通電量を補正する請求項1
    〜請求項7のいずれかに記載のガス成分濃度測定装置。
  9. 【請求項9】エンジンの空燃比制御装置に適用されるも
    のであって、 前記エンジンへの燃料カット時において、センサの抵抗
    支配領域に電圧を印加してその時のセンサ電流値から内
    部抵抗を検出し、該検出した内部抵抗に基づき前記ヒー
    タの通電量を補正する請求項1〜請求項8のいずれかに
    記載のガス成分濃度測定装置。
  10. 【請求項10】エンジンの空燃比制御装置に適用される
    ものであって、前記エンジンの定常運転時におけるヒー
    タ通電量と、予め設定されているヒータ通電量の標準値
    との差に応じて前記ヒータの通電量を補正する請求項1
    〜請求項9のいずれかに記載のガス成分濃度測定装置。
  11. 【請求項11】請求項8〜請求項10のいずれかに記載
    のガス成分濃度測定装置において、 前記補正に関する値を学習値としてバックアップメモリ
    に随時記憶し、前記ヒータ制御手段はバックアップメモ
    リに記憶された学習値を読み出してヒータ制御に使用す
    るガス成分濃度測定装置。
  12. 【請求項12】前記センサは、固体電解質を有するセン
    サ素子にヒータを積層して配置し、固体電解質とヒータ
    とを一体化してなる請求項1〜請求項11のいずれかに
    記載のガス成分濃度測定装置。
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