JP4095746B2 - 半導体受光装置および製造方法 - Google Patents

半導体受光装置および製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化合物半導体を用いて、暗電流が低く、高信頼性、等を有する半導体受光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信等で使用する半導体受光装置は安価で高信頼性、低暗電流が不可欠である。半導体受光装置はプレーナ型とメサ型に大別できる。メサ型は製造工程は簡単であるが信頼性が低く、暗電流が高い欠点があった。この理由は、メサ側面に現れるpn接合が電界強度の高い状態である上に、元来、接合の周辺部(エッジ)には電界が集中しやすいこと、露出面に形成された準位や欠陥によってミクロな電流パスができやすいことによる。
【0003】
他方、プレーナ型は、接合の高電界強度領域が結晶内部に形成され、表面に現れる部分は低電界強度となる様に工夫されているため、高信頼性、低暗電流の点で優れている。しかし、製造工程は複雑であり、装置によっては適用できない欠点があった。
【0004】
メサ型半導体受光装置における上記欠点を軽減する方法として、例えば、特開平5−16662号があり、その趣旨を図3で説明する。基板30にpn接合を含む多層(層31〜37)の結晶にメサ形成した後、メサの側面38および外周面39に高抵抗半導体の埋め込み層40を成長する。メサ側面38に露出したpn接合(後述する様に、本図では層33と34の境界)の周辺部は埋め込み層40で覆われるため、埋め込み層40が無い場合に比べて表面順位や表面欠陥が減少し、暗電流の減少や信頼性が向上する。しかし、上記構造では接合周辺の電界強度が高いままのため、実用に供するに十分な低暗電流、高信頼性を得ることができなかった。
【0005】
特にアバランシェホトダイオード(APD)の様に高電界強度の装置では、接合周辺部での降伏(エッジ降伏)が起き、増倍率が低い、均一性が悪い等の欠点も生じる。
【0006】
成長層にAlを含む結晶系を用いる装置では、除去が極めて困難なAl酸化膜が形成され、埋め込み層は多結晶となる。接合に近接する多結晶層は電流のリークパスとして作用するため、埋め込み層を用いるとかえって暗電流の増加や、信頼性が悪くなる欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来困難であった低暗電流で高信頼性のメサ型構造の半導体受光装置およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記を達成するため、本発明においてはpn接合を含まない高さに形成した第一のメサと、上記第一のメサの下側に位置して面積が大きく、pn接合を含む第二のメサから成る少なくとも二段の構造とし、少なくとも第一のメサの側面と外周面の少なくとも一部を適当な半導体で埋め込む(以下、左記半導体層を埋め込み層と称する)構造とする。適当な印加電圧において第一のメサ直下のpn接合の電界強度をEc、第一メサの外周部直下のpn接合の電界強度をEoとする時、埋め込み層の第一メサの外周面上の厚さとキャリア濃度は、EcよりEoが低くなる様に選ばれる。すなわち、空乏層幅に含まれる層のキャリア濃度をN、厚さをLとする時、メサ外周部の空乏層内の各層に付いてのL/Nの和が、メサ中央部の空乏層内の各層に付いてのL/Nの和よりも大きくなる様にする。
【0009】
上記原理を本発明の一構造例を示す図2で説明する。結晶層はpn接合を含む多層である。この例では基板10上に層11から層17の多層を形成したものであり、10はInP基板(n型、1E19cm−3)、11はInAlAsのバッファ層(n型、1E18cm−3、0.5μm)、12はInAlAs/InGaAs超格子の増倍層(n型、1E14cm−3、0.3μm)、13はInAlAsの電界調整層(p型、5E17cm−3、0.04μm)、14はInGaAsの障壁緩和層(p型、5E17cm−3、0.01μm)、15はInGaAsの光吸収層(p型、1E15cm−3、0.9μm)、16はInGaAsのキャップ層(p型、1E18cm−3、1μm)、17はInGaAsのコンタクト層(p型、5E18cm−3、0.1μm)である。上記結晶表面より、pn接合(層12と層13の界面)に至らない深さの第一のメサ19を形成する。第一メサ19の形状は目的によって、円、楕円、矩形、ストライプ、分岐状など自由であるが、ここでは円形である。
【0010】
図において、20、21は第一メサ19の側面および外周面であり、外周面21は層15に形成されている。22は埋め込み層であり、第一メサ19の側面20、外周面21に形成される。埋め込み層22のキャリア濃度は層15と同程度以下が望ましく、本例ではp型の1E14cm−3、厚さは第一メサの外周面21において層15より高い位置を持つことが望ましく、本例では層17に達する値を持つ。
【0011】
第二メサは、第一メサの外側に適当な幅の埋め込み層22を残し、pn接合に達する深さに形成する。図において、24と25は第二メサの側面と外周面である。
【0012】
第二メサの形状は目的によって、円、楕円、矩形、ストライプ、分岐状等、自由であるが、第一メサを包含する大きさを持つ。図の例は、第二メサは円形であり、第一メサと同心円である。pn接合(図では層12、13の境界)は第二メサの側面24に現れる。第二メサの外周面25はpn接合より深い位置にあれば良く、図の例は基板10に達する。また、第二メサの側面24、埋め込み層22の表面に適当な保護膜26を被着し、層17の表面に電極28、第二メサの底面25に電極28、基板10の裏側には反射防止膜29を設けてあるが、保護膜と反射防止膜の有無と種類等、電極の種類と位置等は必要によって自由である。
【0013】
電極27、28から逆方向電圧を印加するとpn接合から空乏層が広がるが、空乏層幅は第一メサ内とその直下の両領域(以下、メサ中央領域と称す)に比較して、埋め込み層22のある第一メサ外周の埋め込み層22とその直下の両領域(以下、メサ外周領域と称す)の方が広い。すなわち、メサ中央領域の空乏層幅は層12、13、14、15の合計の厚さ(図において記号L1)である。他方、メサ外周領域では層12、13、14に加えて、第一メサ19の形成における層15の残留部、埋め込み層22が空乏層(図においてL2)となる。前記した様に結晶層のキャリア濃度をN、厚さをLとする時、空乏層となる各層のL/Nの和は、本例の場合、メサ中央領域は3.9E−19cm−4、メサ外周領域は1.85E−18cm−4であり、後者が大きい。この結果、両者の電界強度分布は、以下に説明する違いが生じる。
【0014】
図4は降伏電圧における電界強度分布を示す。電界強度はpn接合で最大となり、pn接合から離れるに従って低下するが、低下の度合い(傾き)はキャリア濃度が高いほど大きい。印加電圧は電界強度と厚さの積分(図において面積)で与えられる。メサ中央領域およびメサ外周領域への印加電圧は同じであるから、空乏層幅が大きいメサ外周領域のpn接合の電界強度はメサ中央領域のpn接合の電界強度より低くなる。降伏はpn接合の電界強度の高いメサ中央領域で起き、メサ外周領域では降伏しない、いわゆるガードリング作用を現す。
【0015】
半導体受光装置の暗電流は電界強度に対して指数的に増加する。特にpn接合の周辺部を流れる暗電流はミクロな集中が起きやすく、寿命劣化を招きやすいが、本構造では接合の周辺の電界強度を低くできるため、暗電流を低くし、信頼性を高められる。アバランシェホトでは、エッジ降伏を防止でき、大きく均一な増倍特性が得られる利点がある。
【0016】
本例の埋め込み層の厚さは第一メサの深さと同じであり、キャリア濃度は他より低い場合を例としているが、先に延べた条件を満足できれば、厚さとキャリア濃度は自由である事は言うまでも無い。なお、メサは2段に限らず、より多段にしても良い。また、埋め込み層は組成やキャリア濃度の異なる多層であっても良い。さらに、メサが多段の場合、埋め込み層は他の段のメサ側面と外周面に形成しても良い。
【0017】
本発明の他の利点を以下に説明する。上記例の様に、結晶がAlを含む場合、Alは容易に酸化され、しかも、実用的に除去する事が不可能である。このため、Alを含む結晶層上に成長した埋め込み層は多結晶になる。電界強度が高いpn接合とその周辺にAlを含む層がある場合、多結晶層を介する著しい暗電流の増加や寿命劣化の原因となる。光通信用で使用する受光装置では光吸収層はAlを含まないInGaAsが使われ、かつ、接合から離れている場合が多い。本発明の方法では、第一メサの外周面をInGaAs層に形成すれば、同部分の埋め込み層の結晶性は失われない。InGaAs層以外のAl含有層では埋め込み層は多結晶化するがpn接合から離れているため電界強度は低く、暗電流の増加や信頼性の低下は起きない。従って、本発明はAlを含む結晶で成る装置を製造することができるため、極めて有効である。
【0018】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
アバランシェホトダイオード(APD)を作成した。これを図1、2で説明する。
【0019】
図1(a)は使用した多層結晶の断面図であり、10はInP基板(n型、1×E19cm−3)、11はInAlAsのバッファ層(n型、1E18cm−3、0.5μm)、12はInAlAs/InGaAs超格子の増倍層(n型、1E14cm−3、0.3μm)、13はInAlAsの電界調整層(p型、5E17cm−3、0.04μm)、14はInGaAsの障壁緩和層(p型、5E17cm−3、0.01μm)、15はInGaAsの光吸収層(p型、1E15cm−3、0.9μm)、16はInAlAsのキャップ層(p型、1E18cm−3、1μm)、17はInGaAsのコンタクト層(p型、5E18cm−3、0.1μm)である。層11から17はMBE(分子線エピタキシ)法で成長した。層17の表面に直径35μmのSiO2マスク18を形成した。
【0020】
上記をBr系溶液にて光吸収層15の厚さが0.5μmになるまでエッチング後、マスク18を除去、図(b)の状態とした。ここで19は第一メサであり、20は側面、21は外周面である。側面20は約80度の角度を持つ斜面を成し、外周面21は層15のエッチング面が現れている。
【0021】
次に、上記にInAlAs(p型、1×E14cm−3、1.5μm)を埋め込み層としてMBE法で成長し、図(c)の様にした。ここで、22は埋め込み層であり、メサ外周面21、側面20、上面を覆い、厚さはメサの外周面21で1.5μm成長した。次に、図(d)の様に、メサ上面部に成長した埋め込み層の部分をメカニカルケミカル研磨法で除去してコンタクト層19を露出、マスク23を形成した。マスク23はSiO2であり、直径は45μm、位置は図(a)のマスク18と同心である。
【0022】
上記をBr系溶液にて基板10に至るまでメサエッチングし、マスク23を除去して図(e)の様にした。図中、24は形成された第二メサの側面であり、25は外周面である。側面24にはpn接合(層12、13の境界)が現われている。次に図2に示す様に、コンタクト層17から第二メサの外周面25に掛けて保護膜(SiN/SiO2、厚さ0.1μm/0.3μm)26を被着した。また、コンタクト層17および第二メサの外周面(基板の露出面)25に被着した保護膜26を部分的に除去し、電極(TiPtAu、厚さ1.5μm)27と28を形成、基板裏面(メサを形成した反対側の面)には反射防止膜(SiN、厚さ0.12μm)29を被着してチップとした。次に、電極27、28を配線基板(図には省略)の各対応する電極にAuSnはんだでボンディングした。
【0023】
配線基板の電極を通し、チップに逆バイアスを印加したところ、降伏電圧(Vb)は24V、0.9Vbにおける暗電流は50nAであった。高温逆バイアス通電試験(200℃、100μA一定)では、1000時間後の電圧変動は1V以下、室温における降伏電圧、暗電流も試験前と変化が無く、良好であった。また、光信号の増倍率は最大50であり、メサ中央領域で均一であった。
【0024】
比較のため、従来の構造のAPDと比較した。図3において、30はInP基板、31はInAlAsのバッファ層、32は超格子の増倍層、33はInAlAsの電界調整層、34はInGaAsの障壁緩和層、35はInGaAsの光吸収層、36はInGaAsのキャップ層、37はInGaAsのコンタクト層である。層30〜37の各厚さ、キャリア濃度等は前記の層10〜17と全く同じであり、省略する。
【0025】
作成方法は上記結晶の層37の表面に直径45μmのSiO2マスク(前記、第二メサ形成時のマスクと同じ)を形成し、Br系溶液にて基板30に至るまでエッチング、次にマスクを除去した後、InAlAsの埋め込み層(n型、1E14cm−3、1.5μm)39を成長した。メサ上面に成長した埋め込み層を除去、また、前記マスクと同心円の直径60μmのマスクを形成し、埋め込み層をエッチングして基板30を露出させた。電極(TiPtAu、厚さ1.5μm)41および42をコンタクト層37と基板30の露出面に形成した。また、基板30の裏面には反射防止膜(SiN、厚さ0.12μm)43を被着した。電極41、42を配線基板(図には省略)の各対応する電極とAuSnはんだでボンディング゛した。配線基板の電極から逆バイアスを印加したところ、降伏電圧(Vb)は22V、0.9Vbにおける暗電流は500nAであった。高温逆バイアス通電試験(200℃、100μA一定)では、50時間において電圧は5V低下し、劣化した。最大増倍率は20であり、接合周辺で高く、中央で低くなる分布であった。上記分布は、電界が接合周辺(エッジ)に集中し、エッジ降伏(接合周辺での降伏)であることを示している。降伏電圧が本発明の装置より低いのはエッジ降伏による。
【0026】
本発明が従来の方法に比べて暗電流、信頼性が良好である理由は以下の通りである。本発明の装置の降伏電圧における空乏層の幅は、図2に示す様に、メサ中央領域では0.95μm(L1:層13〜15の合計)であるのに対し、メサ外周領域では2.0μm(L2:層13、14、15の半分と層22の合計)である。図4は本発明の装置の降伏電圧24Vにおける電界強度の分布である。空乏層幅の違いにより、メサ中央領域とメサ周辺領域の電界強度分布は異なる。印加電圧は電界強度と厚さの積であるため、メサ外周領域では埋め込み層22による空乏層幅の増加によって、全体的に電界強度が低下する。例えば、pn接合の電界強度はメサ中央領域において673kV/cmであるが、メサ外周領域は624kV/cmと低くなっており、pn接合周囲でのエッジ降伏を防止するガードリング効果が現れている。これに対し、図3の従来装置では、埋め込み層40でメサを覆っているが、pn接合周辺部の電界強度を低下させる効果は無く、pn接合周辺部の電界強度は中央部と同値(本発明の装置のメサ中央領域とほぼ同じ)であり、エッジ降伏となる。
【0027】
また、本実施例はAlを含む層11、12、13、16、および、層31、32、33、36があるため、埋め込み層22、40の上記の部分は多結晶となる。したがって、従来の方法はpn接合を成す層32、33が多結晶で覆われており、接合特性が悪くなって暗電流増大の原因ともなっている。他方、本発明の構造では、pn接合周辺には多結晶は存在しない。層16では多結晶となるが、電界強度の低い部位であり、暗電流が低く保持されている。
【0028】
(実施例2)
図6に断面で示すアバランシェホトダイオード(APD)を作成した。本構造の作成手順を図5で説明する。有機金属気相成長法で図(a)に示す結晶を成長した。
【0029】
ここで、50はInPの基板(半絶縁性)、51はInPのバッファ層(p型、1E18cm−3、3μm)、52はInPの増倍層(n型、1E17cm−3、0.3μm)、53はInGaAsPの障壁緩和層(n型、1E17cm−3、0.1μm)、54はInGaAsの光吸収層(n型、1E15cm−3、1.2μm)、55はInPの層キャップ層(n型、1E18cm−3、0.5μm)、56はInGaAsPのコンタクト層(n型、1E18cm−3、0.5μm)である。層56の表面にSiO2の第一マスク(直径35μm)57を形成した。次に、Br系溶液で層52の厚さが0.2μmになるまでエッチングして第一メサを形成後、マスク57を除去、図(b)の状態とした。ここで58は第一メサ、59は同メサの側面、60は同メサの外周面である。次に、図(c)の様に、上記にInAlAsの埋め込み層61(n型、1E14cm−3、2.4μm)をMBE法で成長し、第一メサ58の上面(層56の表面)、側面59、外周面60を覆った。次に、メサの上面に成長したInAlAs層をメカニカルケミカル研磨法でコンタクト層56が露出するまで除去、平坦化し、図(d)の様に、SiO2の第二マスク62を形成した。マスク62は直径45μm、第一マスク57と同心の位置にある。上記をBr系溶液で層51が露出するまでエッチングし、マスク62を除去して図(e)とした。ここで、63は形成された第二メサの側面であり、pn接合(InP層51と層52の境界)が露出している。第二メサの中央にはInAlAs層61で埋め込まれた第一メサ58がある。64は第二メサの外周面である。
【0030】
次に図6に示す様に、コンタクト層56から第二メサ側面63、第二メサ外周面64に掛けて保護膜(SiN/SiO2、厚さ0.1μm/0.3μm)65を被着した。また、第一メサ58の上面のコンタクト層56の表面および層51の露出面の保護膜を部分的に除去し、電極(TiPtAu、厚さ1.5μm)66と67を形成した。基板50の裏面に反射防止膜(SiN、厚さ0.12μm)68を被着した。電極66と67を配線基板(図には省略)の対応する電極とAuSnはんだでボンディングした。本APDの降伏電圧(Vb)は28V、0.9Vbにおける暗電流は5nA、最大増倍率は50、メサ中央領域で均一であった。高温逆バイアス通電試験(200℃、100μA一定)では1000時間において電圧変動は観察されず、試験後の室温の降伏電圧、暗電流とも試験前と変化が無かった。
【0031】
比較のため、図6(a)と同じ結晶を用いて、図7に示す従来方法のAPDを作成した。図7は作成したAPDの断面図であり、70は基板、71はバッファ層、72は増倍層、73は障壁緩和層、74は光吸収層、75はキャップ層、76はコンタクト層である。
【0032】
各々の仕様は図6における層50〜56と同じであり省略する。本構造の作成の概略は、まず、上記の結晶に図5(a)の第一マスク(直径35μmのSiO2)を用いて、層71が露出する一段のメサを形成した。図において、77はメサ側面、78はメサ外周面(層71の露出面)である。pn接合は層71と72の境界面である。次に、InAlAs層(n型、1E14cm−3)80でメサ全体を埋め込み、メサ上面に被着した部分を除去、平坦化(層76を露出)した。次に、図5(d)の第二マスク(直径45μmのSiO2)を用いて層71が露出するまでエッチングした。79は上記エッチングによる層71の露出面である。81は埋め込み層80のエッチングによる露出面である。
【0033】
次に、コンタクト層76の表面〜層71の露出面79に掛けて保護膜(SiN/SiO2、厚さ0.1μm/0.3μm)82を被着した。コンタクト層76およびバッファ層71の露出面79に被着した保護膜82の一部を除去し、各々に電極(TiPtAu、厚さ1.5μm)83と84を形成した。基板70の裏面に反射防止膜(SiN、厚さ0.12μm)85を被着しチップとした。次に、チップの電極を配線基板(図には省略)の対応する電極とをAuSnはんだでボンディングした。本APDの降伏電圧(Vb)は25V、0.9Vbでの暗電流は100nAであった。増倍率とその面内分布を測定したところ、最大増倍率はpn接合周辺で10、中央部で増倍率は5と小さくなる典型的なエッジ降伏による分布を示した。
【0034】
降伏電圧が本発明の構造に比べて低いのはエッジ降伏による。高温逆バイアス通電試験(200℃、100μA一定)では、50時間において電圧が5V低下し、劣化した。
【0035】
上記結果より、本発明によれば暗電流が低く、信頼性、増倍率など、良好な特性が得られることがわかる。この理由を以下に説明する。図8は本発明の装置の電界強度分布(降伏電圧28Vにおける)であるが、メサ中央領域のpn接合の電界強度が670kV/cmであるのに対し、メサ外周領域のpn接合の電界強度は387kV/cmと低くなっている。これはメサ外周領域はキャリア濃度の高い層53、52を除去または薄くし、低キャリア濃度の埋め込み層61を形成した事によるガードリング効果である。他方、従来構造の装置は、高抵抗層によってpn接合を覆われているがpn接合の周辺部の電界強度を低下させる効果が無く、高い電界強度が周辺部にかかってしまい、エッジ降伏が生じて暗電流や信頼性、増倍率が悪くなる。
【0036】
(実施例3)
図9(断面斜視図)に示す構造の受光装置を作成した。図において、90は基板(p型、InP、1E19cm−3)、91はバッファ層(p型、InP、1E18cm−3、1μm)、92はpコア層(p型、InGaAsP、1E17cm−3、1μm)、93は光吸収層(n型、InGaAs、1E15cm−3、1.2μm)、94はnコア層(n型、InGaAsP、1E17cm−3、1μm)、95はコンタクト層(n型、InGaAsP、5E18cm−3、0.5μm)である。pn接合はpコア層92と光吸収層93の境界である。図において、96は第一メサ、97は第一メサ96の側面(傾斜角80度)、98は第一メサの外周面である。第一メサはコンタクト層95の表面にSiO2製のマスク(幅50μm)を形成し、光吸収層93を厚さ0.2μm残してエッチングすることで形成した。99は埋め込み層(n型、InAlAs、5E14cm−3、2.5μm)であり、第一メサの側面97、外周面98に成長したものである。コンタクト層95、埋め込み層99の表面にSiO2製マスク(幅60μm)を形成(前記第一メサ作成時のマスクの中心軸と同位置)し、基板90が露出するまでエッチング、第二メサを形成した。
【0037】
図において、100は第二メサの上面、101は第二メサの側面(傾斜角80度)、102は第二メサの底面(基板90のエッチングによる露出面)である。103は保護膜(SiN/SiO2、厚さ0.1μm/0.3μm)であり、第二メサの上面100、側面101、外周面102にかけて被着してある。104は電極(TiPtAu、厚さ1.5μm、幅25μm)であり、コンタクト層95の上面に被着した保護膜を部分的に除去して形成したものである。105は電極(TiPtAu、厚さ1.5μm)であり、基板90の裏面に形成した。後、メサの長さ方向と直角に、300μm間隔でヘキカイし、その断面に保護膜を兼ねる反射防止膜としてSiN膜を被着(図では省略)、チップを完成した。配線基板(図では省略)に電極105をAuSnはんだで固定した後、電極104と配線基板をAu線で結線した。
【0038】
配線基板より、電極103、104から逆バイアスを印加し特性を調べた。その結果、電圧10Vの暗電流は1nA、高温通電試験(200℃、10V)では1000時間後も初期特性を保持していた。
【0039】
本発明に依らない単純なメサ型(コンタクト層95から基板90までを一段のメサにし、埋め込み層を設けた構造)では、電圧10Vの暗電流は10nAと大きく、高温通電試験(200℃、10V)の1000時間後の暗電流は50nAに増加した。
【0040】
図10は本発明の構造の10Vにおける電界強度分布である。メサ中央領域ではほぼ光吸収層のみに電界がかかる(空乏層が発生)分布であり、pn接合の電界強度は99kV/cmである。これに対し、メサ外周領域では、埋め込み層にも空乏層が広がるため、pn接合の電界強度は44kV/cmに低下している。
【0041】
従来の構造の電界強度は、上記メサ中央を通る電界強度と同じであり、pn接合の全周長(700μm)で99kV/cmである。本発明の構造では、メサの断面(反射防止膜の形成面)では電界強度は高いが本部分は全周長さ700μm中の約100μmであり、大部分は低い44kV/cmである。本発明の構造の暗電流が低く、信頼性が良いのは接合外周の大部分が低電界強度になっていることによる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、メサ側面に位置するpn接合の電界強度を低くできるため、従来のメサ型装置では不可能であった暗電流が低く、信頼性も高い半導体装置を製造することができる。メサ型半導体装置は製造工程が簡単であるため、本発明によって安価に提供できる効果があり、工業上重要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例である半導体受光装置の作製工程を示す図である。
【図2】本発明の第一の実施例である半導体受光装置の構造図である。
【図3】従来の第一の実施例である半導体受光装置の構造図である。
【図4】本発明の第一の実施例である半導体受光装置の電界強度分布を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施例である半導体受光装置の作製工程を説明する図である。
【図6】本発明の第二の実施例である半導体受光装置の構造図である。
【図7】従来の第二の実施例である半導体受光装置の構造図である。
【図8】本発明の第二の実施例である半導体受光装置の電界強度分布を示す図である。
【図9】本発明の第三の実施例である半導体受光装置の構造図である。
【図10】本発明の第三の実施例である半導体受光装置の電界強度分布を示す図である。
【符号の説明】
10・30・50・70・90…基板、22・61・80・99…埋め込み層、19・58・96…第一メサ、20・59・97…第一メサ側面、21・60・98…第一メサ外周面、24・63・101…第二メサ側面、25・64・102…第二メサ外周面。

Claims (2)

  1. 半導体基板上に、第1導電型半導体バッファ層と、半導体増倍層と、第2導電型半導体電界緩和層と、第2導電型半導体光吸収層と、第2導電型半導体キャップ層と、第2導電型半導体コンタクト層とが順次積層されたアバランシェフォトダイオードであって、
    前記第2導電型半導体コンタクト層と、前記第2導電型半導体キャップ層と、前記第2導電型半導体光吸収層の前記第2導電型半導体キャップ層側の一部がエッチング除去された層とからなる第1のメサ部と、
    前記第1のメサ部の外周に半導体を成長して形成した埋め込み層と、
    前記第1のメサ部と前記埋め込み層とを含み、前記第2導電型半導体光吸収層のエッチング除去された層以外の部分と、前記第2導電型半導体電界緩和層と、半導体増倍層と、前記第1導電型半導体バッファ層と、前記半導体基板の一部がエッチング除去された層とからなる第2のメサ部と、
    からなり、
    前記第2のメサ部は、前記半導体基板表面と平行な面の面積が前記第1のメサ部より大きいことを特徴とするアバランシェフォトダイオード。
  2. 半導体基板上に、第1導電型半導体バッファ層と、半導体増倍層と、第2導電型半導体電界緩和層と、第2導電型半導体光吸収層と、第2導電型半導体キャップ層と、第2導電型半導体コンタクト層とが順次積層されたアバランシェフォトダイオードであって、
    前記第2導電型半導体コンタクト層と、前記第2導電型半導体キャップ層と、前記第2導電型半導体光吸収層と、前記第2導電型半導体電界緩和層と、前記半導体増倍層の前記第2導電型半導体電界緩和層側の一部がエッチング除去された層とからなる第1のメサ部と、
    前記第1のメサ部の外周に半導体を成長して形成した埋め込み層と、
    前記第1のメサ部と前記埋め込み層とを含み、前記半導体増倍層のエッチング除去された層以外の部分と、前記第1導電型半導体バッファ層の一部がエッチング除去された層とからなる第2のメサ部と、
    からなり、
    前記第2のメサ部は、前記半導体基板表面と平行な面の面積が前記第1のメサ部より大きいことを特徴とするアバランシェフォトダイオード。
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