JP4095224B2 - コンバインにおける補助刈刃装置の姿勢制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、稲、麦、大豆等を走行機体における前方の全幅にわたって刈取りしたのち脱穀できる汎用コンバインや自走自脱式コンバインにおける補助刈刃装置の姿勢制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の汎用コンバインは、その走行機体の前面に、刈取前処理装置を昇降調節可能に装着しており、当該刈取前処理装置にて圃場に植立した穀稈の穂先部を刈取りながら取込むように構成されている。前記穂先部を刈取った後には、圃場に植立した状態で刈残った穀稈(以後、残稈と称する)があるため、この種のコンバインでは、前記走行機体の前面と前記刈取前処理装置との間に設けた補助刈刃装置にて、前記残稈を短く刈取るようにしている。
【0003】
前記補助刈刃装置は、従来から、姿勢切換え用アクチュエータにて前記残稈を刈取る刈取り姿勢と前記穀稈に接触しない収納姿勢とに切換え自在となるように昇降制御されていた。具体的には、前記刈取前処理装置を比較的高い位置に上昇させれば、前記補助刈刃装置が、それに連動して上昇し、畦、圃場面又はその他の周囲物と接触しない収納姿勢に保持されるというものであった。(特公平5−61887号公報等参照)。
【0004】
前記先行技術におけるコンバインでは、圃場の畦近傍で刈取り作業の向きを変更する等のため、刈取り・脱穀作業を一旦中断するに際しては(以後、刈終りと称する)、刈取前処理装置が畦等の周囲物と接触しないように、当該刈取前処理装置を圃場面から離すように比較的高い位置に上昇させるが、前記刈取前処理装置を上昇させた直後には、圃場のうち前記刈取前処理装置の直下の箇所に残稈が残っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記先行技術の構成では、刈取前処理装置を比較的高い位置に上昇させれば、前記残稈を刈取ることができないという問題があった。
【0006】
そこで、前記刈取前処理装置を上昇させた後、所定時間だけ遅らせて前記補助刈刃装置を上昇させるようにすれば、この所定時間中に走行機体を前進させて前記残稈を刈取ることができると考えられる。
【0007】
このように、補助刈刃装置を上昇させるタイミングを一定の時間で制御すると、刈終り時に前記走行機体が高速走行していれば、前記補助刈刃装置が刈取り姿勢に保持されているにも拘らず、走行機体が畦際に近づいて、前記補助刈刃装置が畦等の周囲物に衝突するおそれがあるという問題があった。また、刈終り時に前記走行機体が低速走行していれば、前記補助刈刃装置が全ての残稈を刈取るよりも早く上昇して収納姿勢に保持され、結局、残稈を刈残してしまうことがあるという問題もあった。
【0008】
また、例えば、作業者が刈取り作業中に補助刈刃装置を手動操作した後、作業者が失念して、前記補助刈刃装置を刈取り姿勢に保持したまま路上走行や畦越え等の非農作業状態に移行した場合等のように、刈取り作業中以外で、前記補助刈刃装置が下降して刈取り姿勢に保持される事態があり得る。この場合には、前記補助刈刃装置が畦等の周囲物に衝突する危険性が高いのであった。
【0009】
本発明は、前記した諸問題を解消することを技術的課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、脱穀部を備えた走行機体の前面に、植立した穀稈の穂先部を刈取りながら取込むための刈取前処理装置を昇降調節可能に装着し、前記走行機体の前面と前記刈取前処理装置との間に、前記刈取前処理装置における刈刃で刈残した穀稈を刈取るための補助刈刃装置を、姿勢切換え用アクチュエータにて前記刈残した穀稈を刈取る刈取り姿勢と前記穀稈に接触しない収納姿勢とに切換え自在となるように設け、前記姿勢切換え用アクチュエータを制御する制御手段を備えて成るコンバインにおいて、前記刈取前処理装置における刈刃を刈取り姿勢の前記補助刈刃装置における補助刈刃より第1の所定距離だけ前記走行機体の前方に配置させ、前記刈取前処理装置による刈高さ検出センサを備え、前記制御手段は、前記刈高さ検出センサの検出結果により、前記刈高さ検出センサの検出値が予め設定された刈高さよりも高いと判断された場合には、前記走行機体が前記第1の所定距離だけ走行すると、前記刈取姿勢の前記補助刈刃装置を前記収納姿勢に切換えするように制御する一方、前記刈高さ検出センサの検出値が予め設定された刈高さよりも低いと判断された場合には、前記走行機体が前記第1の所定距離よりも長い第2の所定距離だけ走行すると、前記収納姿勢の前記補助刈刃装置を前記刈取姿勢に切換えするように制御することを特徴とするものである。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の効果】
請求項1のように構成すると、路上走行や畦越え等の非農作業状態におけるコンバインの走行時において、畦等の周囲物に刈取前処理装置が接触しないように、当該刈取前処理装置を比較的高い位置に上昇させる場合であっても、前記補助刈刃装置が不用意に刈取り姿勢に保持されることがなくなる。これにより、前記補助刈刃装置が畦等の周囲物に衝突することがなくなり、前記補助刈刃装置を保護できるという効果を奏する。
【0015】
そして、前記刈取前処理装置における刈刃を刈取り姿勢の前記補助刈刃装置における補助刈刃より第1の所定距離だけ前記走行機体の前方に配置させ、前記刈取前処理装置による刈高さ検出センサを備え、前記制御手段は、前記刈高さ検出センサの検出結果により、 前記刈高さ検出センサの検出値が予め設定された刈高さよりも高いと判断された場合には、前記走行機体が前記第1の所定距離だけ走行すると、前記刈取姿勢の前記補助刈刃装置を前記収納姿勢に切換えするように制御するので、刈終り時には、前記刈取前処理装置を所定の刈高さ(穀稈の穂先部を刈取るときの高さ、以下同じ)よりも上昇させた場合には、前記走行機体が第1の所定距離、即ち、少なくとも圃場のうち前記刈取前処理装置の直下の箇所に残る残稈を全て刈取ることができる距離を前進することによって、前記走行機体の走行速度に関係なく、前記残稈を全て確実に刈取ることができるという効果を奏する。その後迅速に上昇させて収納姿勢にすることができるから、前記走行機体が畦際に近づいて、前記補助刈刃装置が畦等の周囲物に衝突することもなくなり、前記補助刈刃装置を保護できるという効果を奏する。
【0016】
他方、前記刈高さ検出センサの検出値が予め設定された刈高さよりも低いと判断された場合には、前記走行機体が前記第1の所定距離よりも長い第2の所定距離だけ走行すると、前記収納姿勢の前記補助刈刃装置を前記刈取姿勢に切換えするように制御するので、前記走行機体が圃場内で刈取り作業を実行するに際して(以後、刈始めと称する)、前記刈取前処理装置を所定の刈高さに設定した場合には、前記走行機体の走行速度に関係なく、発生した残稈に対して前記走行機体ができるだけ近づいたうえで、前記補助刈刃装置を下降させて刈取り姿勢にするから、刈始め時に発生した残稈であっても確実に刈取ることができるという効果を奏する。さらには、前記補助刈刃装置を刈取り姿勢に保持することをできるだけ遅らせるようにしているから、前記補助刈刃装置が畦等の周囲物に衝突することが少なくなり、前記補助刈刃装置を保護できるという効果を奏するのである。
【0017】
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面(図1〜図10)に基づいて説明する。
【0019】
これらの図において、符号1は、汎用コンバイン1を示している。この汎用コンバイン1は、左右一対の走行クローラ2,2にて支持された走行機体3の上面に、座席付きの操縦部4と脱穀部5とを搭載するとともに、前記走行機体3の前面に、圃場に植立した穀稈の穂先部を刈取りながら取込んだのち前記脱穀部5に送るようにした刈取前処理装置6を備えるように構成されている。
【0020】
前記操縦部4には、走行機体3における操向操作を実行するための操向ハンドル装置36を設け(図7参照)、当該操向ハンドル装置36に、その丸ハンドル37(ステアリングホイール)における回動角度が所定の角度を超えたか否かを検出する旋回検出スイッチ27を設けている。前記旋回検出スイッチ27による検出情報は、後述する電子式制御装置25へ入力される(図4参照)。
【0021】
前記操縦部4の後方には、図示しないエンジン及び穀粒蓄積用のタンク8を備え、前記脱穀部5には、その扱室内の扱胴9を、この扱胴9の軸線が走行機体3の前進方向に沿うように配設し、前記脱穀部5の下方には、受け網とシーブ等による搖動選別装置10と、唐箕ファン11の風による風選別装置とを備えている。符号12は、前記タンク8内の穀粒を外部に排出するための排出筒である(図1及び図2参照)。
【0022】
前記刈取前処理装置6は、昇降用アクチュエータとしての昇降用油圧シリンダ13を介して昇降調節可能に装着された角筒状のフィーダハウス14と、当該フィーダハウス14の前端に連設した左右長手のバケット状のプラットホーム15と、当該プラットホーム15内に配設した左右長手の掻き込みオーガ16と、当該掻き込みオーガ16の前寄り上部に設けたタインバー付きリール17と、前記プラットホーム15の下面側に左右長手に配設したバリカン状の刈刃18とにより構成されている。
【0023】
前記走行機体3の前部と前記フィーダハウス14の側面後部寄り部位との間には、前記刈取前処理装置6における走行機体3の基準高さ位置に対する相対高さを検出するための刈高さ検出センサ28が配置されている。この刈高さ検出センサ28によって検出される情報も、前記旋回検出スイッチ27と同様に、後述する電子式制御装置25へ入力される。尚、符号19は、前記刈取前処理装置6の左右両端から前方に突出する分草体である(図3参照)。
【0024】
符号7は、前記刈取前処理装置6にて穀稈の穂先部を刈取ったのちに残る根元部等のその他の穀稈部分(残稈)を刈取るための補助刈刃装置を示している。この補助刈刃装置7は、その下端の左右長手の補助刈刃22が、走行機体3の前方にあって、プラットホームより後方に位置するように配置されている。そして、前記プラットホーム15の左右両側面における支軸21を中心として上下回動可能に配設された左右一対のフレーム20, 20と、該両フレーム20の下端部間に取付けたバリカン状の補助刈刃22と、前記支軸21に取付けたアーム23と、当該アーム23を駆動操作する姿勢切換え用アクチュエータとしての姿勢切換え用油圧シリンダ24とにより構成されている。
【0025】
前記補助刈刃装置7は、前記アーム23を前記姿勢切換え用油圧シリンダ24にて駆動操作することにより、前記刈取前処理装置6の下方に突出して前記残稈を刈取る刈取り姿勢(図3の一点鎖線状態参照)と前記穀稈に接触しないように上方側に退避した収納姿勢(図3の実線状態参照)とに切換え自在となるように構成されている。
【0026】
前記支軸21の近傍には、その支軸21周りを上下回動する前記フレーム20の回動角を検出する補助刈刃装置センサ29が設けられている。この補助刈刃装置センサ29によって検出される情報についても、前記旋回検出スイッチ27や前記刈高さ検出センサ28と同様に、後述する電子式制御装置25へ入力されるようになっている。
【0027】
符号40は、補助刈刃装置7の対地高さ(圃場面39に対する補助刈刃22の高さ)を検出するための対地高さセンサを示している。当該対地高さセンサ40は、図3及び図8に示すように、補助刈刃装置7におけるフレーム20の側方に配置されていて、圃場面39に接触可能な橇状の感知体41の基部を、枢軸42を介して前記フレーム20の外側面に装着し、感知体41の第一ブラケット43とその上方に位置する枢軸44を中心として回動可能な第二ブラケット45とを、ばね付き連結杆46にて連結している。
【0028】
第二ブラケット45に設けた円弧状のばね板から成る連動杆47は、ポテンショメータ48の作動アーム49を押圧しており、感知体41の自由端側が図8にて実線状態から二点鎖線状態に回動するとき(対地高さが小さくなるとき)、第一ブラケット43、連結杆46、第二ブラケット45及び連動杆47を介して、作動アーム49を回動させる。尚、この作動アーム49は常時連動杆47を押圧する方向にばね付勢されている。また、連動杆47をばね板にて円弧状に形成することにより、感知体41が衝撃的に上方へ突き上げられても、連動杆47から作動アーム49へその衝撃力が伝達しないように配慮されている。
【0029】
圃場面39から補助刈刃22の先端までの高さH1は(図3及び図8参照)、前記対地高さセンサ40におけるポテンショメータ48によって検出され、その検出情報についても、後述する電子式制御装置25へ入力される。
【0030】
次に、前記補助刈刃装置7の高さ位置を制御するための構成について説明する。図4は、本発明の補助刈刃装置7を前記姿勢切換え用油圧シリンダ24にて昇降制御するための電子式(マイクロコンピュータ式)制御装置25における機能ブロック図で、制御プログラムを実行する中央処理装置(CPU)と、制御プログラムを記憶させた読み出し専用メモリ(ROM)と、各種データを記憶させた随時読み書き可能メモリ(RAM)と、入出力インターフェイス26とにより構成されている。
【0031】
前記入出力インターフェイス26の入力部には、前記旋回検出スイッチ27と、前記刈高さ検出センサ28の入力信号と、前記補助刈刃装置センサ29の入力信号と、前記対地高さセンサ40におけるポテンショメータ48の入力信号と、前記刈取前処理装置6における掻き込みオーガ16等に動力を伝達する刈取りクラッチのON・OFF状態を設定するための刈取りスイッチ30と、前記補助刈刃装置7における自動操作のON・OFF状態を設定するための補助刈刃装置自動スイッチ31と、前記各走行クローラ2,2の駆動輪に関連させて設けた車速センサ32の入力信号と、同じく各走行クローラ2,2の駆動輪に関連させて走行機体3が後退動しているか否かを認識するための後退動スイッチ38と、前記刈取前処理装置6の高さ位置を所定の刈高さ(穀稈の穂先部を刈取る高さ)に設定するための可変抵抗器等から成る設定器33とを各々接続している。尚、前記補助刈刃装置自動スイッチ31及び前記設定器33は、前記操縦部4における操作パネル(図示せず)に配置される。
【0032】
また、前記入出力インターフェイス26の出力部には、姿勢切換え用油圧シリンダ24を作動させて前記補助刈刃装置7を収納姿勢(補助刈刃22がプラットホーム15の下端よりも上方に上昇した姿勢、以下同じ)にするための電磁油圧切換え弁における上昇側電磁ソレノイド34と、同じく刈取り姿勢(補助刈刃22がプラットホーム15の下端より下方まで下降した姿勢、以下同じ)にするための下降側電磁ソレノイド35とを各々接続している。
【0033】
この構成において、作業者が走行機体3の操縦部4に搭乗して、汎用コンバイン1の電源をON作動させると、操縦部4の後方にあるエンジン(図示せず)を作動させる前に、補助刈刃装置7が収納姿勢であるか否かについて、この補助刈刃装置7の支軸21近傍に設けられた補助刈刃装置センサ29の検出情報に基づいて判断する。このとき、前記補助刈刃装置7が刈取り姿勢に保持されていれば、上昇側電磁ソレノイド34がON作動して前記補助刈刃装置7を収納姿勢にする制御が実行されるようになっている。これにより、汎用コンバイン1の始動時、即ち、電源投入時に、前記補助刈刃装置7が刈取り姿勢に保持されていても、補助刈刃装置7がプラットホーム15の下端より上方に上昇した位置になるので、作業者が補助刈刃装置7の姿勢状態を意識せずに走行したとしても、補助刈刃装置7の端部等が畦等の周囲物に衝突することがなくなり、この補助刈刃装置7を保護できるのである。
【0034】
また、作業者が走行機体3を後退動させたときには、その事実を前記後退動スイッチ38が検出し、当該検出情報が前記電子式制御装置25に入力される。この場合も、補助刈刃装置7が収納姿勢であるか否かについて、前記補助刈刃装置センサ29の検出情報に基づいて判断し、前記補助刈刃装置7が刈取り姿勢に保持されていれば、上昇側電磁ソレノイド34がON作動して前記補助刈刃装置7を収納姿勢にする制御が実行される。これにより、作業者が走行機体3を後退動させたときでも、補助刈刃装置7がプラットホーム15の下端より上方に上昇した位置になるので、作業者からは視認しづらい走行機体3の後方側における畦等の周囲物に、補助刈刃装置7が衝突することがなくなり、この補助刈刃装置7を保護できるのである。
【0035】
さらに、路上走行や畦越え等の非農作業状態においてコンバインが走行するに際しては、前記刈取クラッチは動力遮断状態にされている。この場合には、畦等の周囲物に刈取前処理装置が接触しないように、当該刈取前処理装置を比較的高い位置に上昇させる。
【0036】
この事実は、前記刈高さ検出センサ28にて検出され、当該検出情報が前記電子式制御装置25に入力される。もちろん、ここでも、補助刈刃装置7が収納姿勢であるか否かを、前記補助刈刃装置センサ29の検出情報に基づいて判断し、前記補助刈刃装置7が刈取り姿勢に保持されていれば、上昇側電磁ソレノイド34がON作動して前記補助刈刃装置7を収納姿勢にする制御が実行される。これにより、前記補助刈刃装置7が不用意に前記補助刈刃装置7がプラットホーム15の下端より突出した状態になることがなくなるから、前記補助刈刃装置が畦等の周囲物に衝突することがなくなって、前記補助刈刃装置を保護できるという効果を奏する。
【0037】
前記電子式制御装置25による制御態様について図5及び図6のフローチャートを参照して説明する。図5において、まず、スタートに続き、刈取りスイッチ30がON状態か否かを判別する(S1)。刈取りスイッチ30がON状態のときには(S1:YES)、刈取前処理装置6への動力伝達がなされており、刈取り作業の実行中又は準備完了状態であるから、次いで、補助刈刃装置自動スイッチ31がON状態か否かを判別する(S2)。補助刈刃装置自動スイッチ31がON状態のときには(S2:YES)、後述する補助刈刃装置の昇降制御を実行する(S4)。
【0038】
刈取りスイッチ30がOFF状態のとき(S1:NO)、又は、補助刈刃装置自動スイッチ31がOFF状態のときには(S2:NO)、刈取り作業を実行していないか、又は、補助刈刃装置7を手動操作する場合であるから、このときに補助刈刃装置7が刈取り姿勢に保持されていれば、上昇側電磁ソレノイド34がON作動して前記補助刈刃装置7が収納姿勢となり(S3)、その後リターンする。これにより、前記補助刈刃装置7が刈取り姿勢であるときに前記刈取りスイッチ30をOFF作動させるか、あるいは、補助刈刃装置自動スイッチ31をOFF作動させれば、補助刈刃装置7がプラットホーム15の下端より上方に上昇した位置になるので、当該補助刈刃装置7の端部等が畦等の周囲物に衝突することがなくなり、前記補助刈刃装置7を保護できるのである。
【0039】
ここで、補助刈刃装置7が収納姿勢であるか否かについては、前記したように、補助刈刃装置7の支軸21近傍に設けられた補助刈刃装置センサ29の検出情報に基づいて判断される。以後、補助刈刃装置7の姿勢変更に際して(後述するステップS9、S12及びT2が該当する)は、同様の判断がなされる。
【0040】
前記補助刈刃装置7の昇降制御について、図6のサブルーチンフローチャートを参照して説明する。ここでは、スタートに続き、刈高さ検出センサ28の検出値Hのデータを入力する(S5)。これに先立って、前記設定器33によって前記刈取前処理装置6における刈高さH0の設定を実行しておく。
【0041】
次いで、前記検出値Hが前記設定した刈高さH0よりも大きいか否かを判別しする(S6)。前記検出値Hが前記刈高さH0以下であると判断されたとき(S6:NO)とは、刈取前処理装置6を刈高さH0に設定して刈取り作業を実行する場合(刈始め)である。この場合には、補助刈刃装置7が収納姿勢であれば、走行機体3が所定距離L1だけ前進したのち刈取り姿勢となるように制御されている。
【0042】
具体的には、車速センサ32の検出値を所定時間毎に入力して、走行機体3の前記ステップS6判断時からの走行距離LSを演算し(S7)、この走行距離LSが所定距離L1よりも大きいか否かを判別する(S8)。ここで、所定距離L1(請求項にいう第2の所定距離、以下同じ)は、図3に示すように、最長でも刈取前処理装置6の分草体19から刈取り姿勢時の補助刈刃装置における補助刈刃22までの距離と略同じであればよい。前記走行距離LSが前記所定距離L1よりも大きいと判断されたときには(S8:YES)、補助刈刃装置7が収納姿勢に保持されていると、下降側電磁ソレノイド35がON作動して前記補助刈刃装置7が刈取り姿勢となり(S9)、その後リターンする。前記走行距離LSが所定距離L1以下であると判断されたときには(S8:NO)、ステップS7へ戻る。
【0043】
このような制御を実行すると、刈始め時には、走行機体3の走行速度に関係なく、発生した残稈に対して当該走行機体3ができるだけ近づいたうえで、前記補助刈刃装置7がプラットホーム15の下端より突出した状態になるから、刈始め時に発生した残稈であっても確実に刈取ることができるという効果を奏する。さらには、前記補助刈刃装置7がプラットホーム15の下端より突出した状態になることをできるだけ遅らせているから、前記補助刈刃装置7が畦等の周囲物に衝突することが少なくなり、前記補助刈刃装置7を保護できるという効果を奏するのである。
【0044】
一方、前記ステップS6において、前記検出値Hが前記刈高さH0より大きいと判断されたとき(S6:YES)、つまり、刈取前処理装置6を所定の刈高さよりも高くして刈取り作業を一旦中断した場合(刈終り)には、補助刈刃装置7が刈取り姿勢であれば、走行機体3が所定距離L2(請求項にいう第1の所定距離、以下同じ)だけ前進したのち収納姿勢となるように制御される。
【0045】
具体的には、車速センサ32の検出値を所定時間毎に入力して、走行機体3の前記ステップS6判断時からの走行距離LEを演算し(S10)、この走行距離LEが所定距離L2よりも大きいか否かを判別する(S11)。ここで、所定距離L2は、図3に示すように、少なくとも刈取前処理装置6の刈刃18から刈取り姿勢時の補助刈刃装置における補助刈刃22までの距離と略同じであればよい。これは、少なくとも圃場のうち前記刈取前処理装置の直下の箇所に残る残稈を全て刈取ることができる距離に相当する。
【0046】
前記走行距離LEが前記所定距離L2よりも大きいと判断されたとき(S11:YES)には、補助刈刃装置7が刈取り姿勢に保持されていると、上昇側電磁ソレノイド34がON作動して前記補助刈刃装置7が収納姿勢となり(S12)、その後リターンする。前記走行距離LEが所定距離L2以下であると判断されたときには(S11:NO)、ステップS10へ戻る。
【0047】
このように制御すると、刈終り時には、前記走行機体3が所定距離L2だけ前進することによって、前記走行機体3の走行速度に関係なく、前記残稈を全て確実に刈取ることができるという効果を奏する。その後迅速に上昇させて収納姿勢にすることができるから、補助刈刃装置7がプラットホーム15の下端より上方に上昇した位置になるので、前記走行機体が畦際に近づいて、前記補助刈刃装置が畦等の周囲物に衝突することもなくなり、前記補助刈刃装置を保護できるという効果を奏するのである。尚、前記した所定距離L1、L2については、ROMにこれら所定距離L1、L2に関するデータを記憶させることで予め設定しておく。
【0048】
ところで、図5及び図6を参照して説明したように、刈取りスイッチ30及び補助刈刃装置自動スイッチ31がON状態で、刈取前処理装置6を刈高さH0に設定すると、走行機体3が所定距離L1だけ前進したのち補助刈刃装置7が下降して刈取り姿勢となるように制御されるが、このとき、補助刈刃装置7の対地高さ制御が開始される。この制御中には、圃場面39から補助刈刃装置7における補助刈刃22の先端までの高さH1が、予め設定された高さ範囲Z±ΔZの範囲内に収まるように追従制御されるのである。
【0049】
具体的には、図9に示すサブルーチンフローチャートを実行する。即ち、スタートに続き、対地高さセンサ40におけるポテンショメータ48の検出値H1のデータを入力する(P1)。次いで、検出値H1を前記高さ範囲Z±ΔZの範囲内に収まるように追従制御し(P2)、その後リターンする。前記高さ範囲Z±ΔZは、ROMにそのデータを記憶させることで予め設定しておけばよい。
【0050】
ここで、刈取前処理装置6を所定の刈高さH0よりも高くすると、図6を参照して説明したように、走行機体3が所定距離L2だけ前進したのち補助刈刃装置7が上昇して収納姿勢となるように制御される。また、刈取りスイッチ30又は補助刈刃装置自動スイッチ31をOFF状態にしたり、走行機体3が後退動したりしても、直ちに補助刈刃装置7が上昇して収納姿勢となるように制御されるのである。
【0051】
また、刈取り・脱穀作業等の農作業時や路上走行等の非農作業時に拘らず、走行機体3が畦等の周囲物に近づいたときに、刈取り姿勢となっている補助刈刃装置7が前記周囲物に衝突したりするという事態があり得る。そこで、補助刈刃装置7の保護のため、走行機体3の旋回時における補助刈刃装置7の昇降制御について、図10に示すサブルーチンフローチャートを実行する。
【0052】
ここでは、スタートに続き、旋回検出スイッチ27がON状態か否か、つまり、走行機体3が所定の旋回かじ取り角よりも大きく旋回しているか否かを判別する(T1)。ここで、所定の旋回かじ取り角は、ROMに旋回かじ取り角に関するデータを記憶させることで予め設定しておく。旋回検出スイッチ27がON状態のときには(T1:YES)、補助刈刃装置7が刈取り姿勢に保持されていると、上昇側電磁ソレノイド34がON作動して前記補助刈刃装置7が収納姿勢となり(T2)、その後リターンする。旋回検出スイッチ27がOFF状態のときには(T1:NO)、リターンする。
【0053】
本発明は、前記した実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、補助刈刃装置7は、アーム等を介して走行機体3の前端部に対して昇降調節可能に装着してもよく、また、補助刈刃装置7の下降位置(刈取位置)と上昇位置(収納位置)とに昇降させる機構を、前記支軸周りのアームの回動だけでなく、平行リンク機構を介してほぼ平行状に昇降させるように構成してもよい。
【0054】
さらに、操向ハンドル装置36に配設した旋回検出スイッチ27に代えて、旋回かじ取り角センサを汎用コンバイン1の適宜箇所に取付け、この旋回かじ取り角センサにて走行機体3の旋回かじ取り角を検出し、その検出情報を後述する電子式制御装置25へ入力するようにしてもよいのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 汎用コンバインの側面図である。
【図2】 汎用コンバインの平面図である。
【図3】 刈取前処理装置及び補助刈刃装置の概略側面図である。
【図4】 電子式制御装置の機能ブロック図である。
【図5】 メインフローチャートである。
【図6】 補助刈刃装置における昇降制御のサブルーチンフローチャートである。
【図7】 操縦部の拡大概略平面図である。
【図8】 対地高さセンサの側面図である。
【図9】 補助刈刃装置における対地高さ制御のサブルーチンフローチャートである。
【図10】 走行機体の旋回時における補助刈刃装置の昇降制御についてのサブルーチンフローチャートである。
【符号の説明】
1 汎用コンバイン
3 走行機体
4 操縦部
5 脱穀部
6 刈取前処理装置
7 補助刈刃装置
24 姿勢切換え用アクチュエータとしての姿勢切換え用油圧シリンダ
25 電子式制御装置
28 刈高さ検出センサ
29 補助刈刃装置センサ
33 設定器
38 後退動スイッチ
40 対地高さセンサ
48 ポテンショメータ
Claims (1)
- 脱穀部を備えた走行機体の前面に、植立した穀稈の穂先部を刈取りながら取込むための刈取前処理装置を昇降調節可能に装着し、前記走行機体の前面と前記刈取前処理装置との間に、前記刈取前処理装置における刈刃で刈残した穀稈を刈取るための補助刈刃装置を、姿勢切換え用アクチュエータにて前記刈残した穀稈を刈取る刈取り姿勢と前記穀稈に接触しない収納姿勢とに切換え自在となるように設け、前記姿勢切換え用アクチュエータを制御する制御手段を備えて成るコンバインにおいて、
前記刈取前処理装置における刈刃を刈取り姿勢の前記補助刈刃装置における補助刈刃より第1の所定距離だけ前記走行機体の前方に配置させ、
前記刈取前処理装置による刈高さ検出センサを備え、
前記制御手段は、前記刈高さ検出センサの検出結果により、
前記刈高さ検出センサの検出値が予め設定された刈高さよりも高いと判断された場合には、前記走行機体が前記第1の所定距離だけ走行すると、前記刈取姿勢の前記補助刈刃装置を前記収納姿勢に切換えするように制御する一方、
前記刈高さ検出センサの検出値が予め設定された刈高さよりも低いと判断された場合には、前記走行機体が前記第1の所定距離よりも長い第2の所定距離だけ走行すると、前記収納姿勢の前記補助刈刃装置を前記刈取姿勢に切換えするように制御することを特徴とするコンバインにおける補助刈刃装置の姿勢制御装置。
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