次に発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図である。図2はコンバインの平面図である。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、コンバインの前方に向かって左側及び右側を意味するものとする。
図1に示すように、本実施形態のコンバイン(作業機)10は、稲、麦等の株元を刈り取るための刈取部(作業部)12を機体前部に備える。また、コンバイン10は、機体を走行させるためのクローラ走行部(走行部)11を機体下部に備える。図2に示すように、コンバイン10の左側の上部には、刈り取った穀稈を脱穀するための脱穀機14が備えられる。また、この脱穀機14と並設するように、グレンタンク15がコンバイン10の上部右側に備えられている。
グレンタンク15の前方には、コンバイン10を操作するための運転部17が備えられる。この運転部17には操作部52及び運転座席53等が設けられている。前記運転部17の下方には、コンバイン10の駆動源としてのエンジン18が配置されている。
前記操作部52は、コンバイン10を旋回させるための旋回ハンドル、刈取部12を駆動させるための刈取クラッチ等、各種の操作具を備えている。操作部52が備える各種の操作具は、コンバイン10の各部に機械的に連結され、又は電気的に接続されている。
図1に示すように、クローラ走行部11はコンバイン10の左右両側に配置されている。左右のクローラ走行部11は、走行ミッション装置61にそれぞれ連結されている。この走行ミッション装置61は、クローラ走行部11の駆動の向き及び速度を左右それぞれで変更できるように構成されている。
また、走行ミッション装置61には、操作部52が備える主変速レバー等の操作具がワイヤ、リンク機構等の機械的要素を介して連結されている。オペレータは、操作部52が備える操作具(旋回ハンドル、主変速レバー54等)を操作することで、コンバイン10の前後進、旋回及び速度の調節等を行う。
機体前部に配置された刈取部12は、前処理部25と、刈刃部13と、掻込装置47と、図略の搬送部と、を備えている。
前処理部25は、コンバイン10の機体の前方下部に配置されている。また、この前処理部25は、分草板45と、引起し装置46と、を備えている。引起し装置46はタインを備えており、倒伏した作物を拾い上げたり、穂先を一定の幅に収束させたりする引起し作業を行う。分草板45は、刈取部12によって作物を刈り取るべき幅を規定するためのものであり、また、倒伏した状態の稲等を当該分草板45がすくい上げることによって、引起し装置46による前記引起し作業を容易にする。
刈刃部13は刈刃と受刃とを備えており、両者が左右に駆動されることによって作物の株元を切り取る。また、掻込装置47は刈刃部13の上方に配置されており、この掻込装置47は、刈刃部13によって切断された穀稈を掻き込み、図略の搬送部に受け渡す。この搬送部は搬送チェーン及び縦搬送チェーン等を備えており、後述の脱穀機14のフィードチェーン16に作物の株元を搬送するよう構成されている。
前記刈取部12は刈取部フレーム65に支持されており、この刈取部フレーム65は、回動可能に刈取部支持軸62に取り付けられる。そして、この刈取部フレーム65には刈取部昇降シリンダ63が接続されている。この刈取部昇降シリンダ63が伸縮することによって、刈取部フレーム65が刈取部支持軸62を中心として回動し、刈取部12の位置が上下に変位する。
また、刈取部12の高さを検出するための刈取部高さ検出センサ64が刈取部支持軸62に配置される。この刈取部高さ検出センサ64は、刈取部フレーム65の回動角を検出するための角度検出器、例えばポテンショメータ又はエンコーダ等で構成されている。
脱穀機14はフィードチェーン16を備え、このフィードチェーン16によって穀稈を挟持しながら搬送して脱穀するように構成されている。穀稈の脱穀後、図略の選別装置によって穀粒が藁屑より選別分離されて、精粒は一番物として前記グレンタンク15に貯留される。藁屑は、コンバイン10後部に備えられる排藁カッタ48によって適宜の長さに切り刻まれ、機外へ排出される。
また、コンバイン10が備えるエンジン18の動力は、エンジン18の出力軸から、クローラ走行部11を駆動させる走行ミッション装置61、脱穀機14の各部、排出オーガ51及び刈取部12等にそれぞれ分岐して伝達される。
次に図3及び図4を参照してクローラ走行部11の構成について説明する。図3はクローラ走行部11を示した側面図である。図4は機体の昇降のための構成の要部を示す平面図である。
図3及び図4に示すように、クローラ走行部11はトラックフレーム82を備え、このトラックフレーム82に、前後方向に並べて配置される複数の転輪80及びフレキシブルローラ81が支持されている。
このトラックフレーム82の前方には駆動スプロケット83が配置されている。また、前記走行ミッション装置61から出力軸60が左右両側に突出しており、それぞれの出力軸60の先端が、対応する前記クローラ走行部11の駆動スプロケット83に固定されている。また、トラックフレーム82の後方には支持部材68が配置されており、この支持部材68の端部にテンションスプロケット84が回転可能に支持されている。
そして、上記の転輪80、フレキシブルローラ81、駆動スプロケット83、及びテンションスプロケット84にクローラ79が巻き掛けられており、駆動スプロケット83が前記走行ミッション装置61からの駆動力を受けることによってクローラ79が回転する。また、走行ミッション装置61の内部には走行速度を検出するための回転センサ30(図4において省略)が配置されている。
コンバイン10は、機体昇降シリンダ(機体昇降部)93、前スイングアーム85及び後スイングアーム89を左右それぞれのクローラ走行部11に備えている。図3及び図4に示すように、トラックフレーム82の内側において前スイングアーム85は前方寄りの位置に配置され、後スイングアーム89は後方寄りの位置に配置される。そして、前スイングアーム85と後スイングアーム89とは、前後方向に配置される連結ロッド94を介して連結されている。
図3及び図4に示すように、前スイングアーム85は、機体に枢支される枢支軸75と、この枢支軸75から上方へ延びる上アーム86と、前記枢支軸75から後方へ延びる下アーム87と、を備える。図3に示すように、前スイングアーム85は側面視において略L字状(ベルクランク状)となるように構成されている。前記上アーム86の先端部は連結ロッド94を介して機体昇降シリンダ93に連結され、前記下アーム87の先端部は、トラックフレーム82内側の前スイングアーム回動軸95に回転可能に連結されている。
後スイングアーム89は前スイングアーム85と同様に、側面視で略L字状(ベルクランク状)に構成されている。この後スイングアーム89は、機体に枢支される枢支軸76と、この枢支軸76から上方へ延びる上アーム90と、前記枢支軸76から後方へ延びる下アーム91と、を備える。前記上アーム90の先端部は機体昇降シリンダ93にシリンダ連結部72を介して連結されている。一方、下アーム91の先端部は、トラックフレーム82内側の後スイングアーム回動軸96に回転可能に連結されている。
この構成で、機体昇降シリンダ93が伸長動作すると、前スイングアーム85の上アーム86及び後スイングアーム89の上アーム90に対し、後方への力が作用する。従って、前スイングアーム85は、引き起こされるようにして前スイングアーム回動軸95を中心に回動する。また、後スイングアーム89についても、引き起こされるように後スイングアーム回動軸96を中心に回動する。この結果、前記枢支軸75,76の高さ(機体が支持される高さ)が上昇するので、コンバイン10の機体の高さはトラックフレーム82に対して(言い換えれば、クローラ走行部11の接地面に対して)相対的に上昇する。
この昇降機構によって、例えばコンバインが自重によって沈下し易い足場の悪い場所では機体を上昇させることで、機体の下部が地面に突っ込んだり擦れたりすることを防止できる。また、左右の機体昇降シリンダ93を個別に伸縮駆動することで、機体の左右傾斜姿勢を制御することもできる。
また、前記テンションスプロケット84を支持する支持部材68は、前記トラックフレーム82に対し適宜のリンク機構を介して連結されており、機体の昇降と連動してテンションスプロケット84の位置が変位するよう構成されている。具体的には、機体を上昇させたときはテンションスプロケット84が下降し、この結果、クローラ79の後部が地面に接触するように変形する。この構成により、湿田での作業のために機体を上昇させるのに応じてクローラ79の接地長を増大させることができ、低接地圧を実現して湿田での走行性能を向上させることができる。
また、左右のクローラ走行部11のそれぞれには、図3に示すように、機体昇降シリンダ93のシリンダロッドの位置を検出するためのストロークセンサ97が備えられている。本実施形態において、前記ストロークセンサ97は、機体下部であって前記機体昇降シリンダ93の近傍位置に配置されたポテンショメータにより構成されている。ポテンショメータの検出軸にはセンシングアーム98が固定され、このセンシングアーム98の先端が、機体昇降シリンダ93のシリンダロッドの先端と後スイングアーム89との連結部に接続される。この構成で、センシングアーム98の角度をポテンショメータで検出することにより、機体昇降シリンダ93のシリンダロッドの位置(ひいては、機体の支持高さ)を取得することができる。
また、図1に示すように、機体の傾斜角を検出するための傾斜角センサ(傾斜角検出部)70がコンバイン10の機体下部に備えられている。機体を制御するための後述の制御部99は、傾斜角センサ70の検出値を用いて、機体が水平になるようにそれぞれの機体昇降シリンダ93を適宜伸縮制御する。この水平制御により、凹凸が多い地面においてもコンバイン10の機体姿勢を水平に保つことができる。
次に図5を参照して、コンバイン10の刈取高さ、機体の高さ及び姿勢等を制御する制御部99について説明する。図5はコンバイン10の制御のための電気的構成の要部を示したブロック図である。
コンバイン10は、各部の制御を行うためのマイクロコンピュータ式の制御部99を備える。制御部99には、各種センサ(傾斜角センサ70、刈取部高さ検出センサ64、回転センサ30、ストロークセンサ97等)からの検出信号が入力されている。また、制御部99には、当該制御部99によって制御される対象である電磁弁66、刈取部昇降シリンダ63及びブザー92が電気的に接続されている。また、制御部99には、操作部52(主変速レバー54等の操作具)の操作内容が電気信号に変換されて入力されている。制御部99は、各種センサ及び操作部52から入力される信号に基づいて電磁弁66及びブザー92の動作を制御する。
電磁弁66は、圧油の供給を切り替えて機体昇降シリンダ93の伸縮を調節するためのものであり、機体の左右に配置される機体昇降シリンダ93(クローラ走行部11)のそれぞれに設けられている。制御部99は、左右の電磁弁66をそれぞれ独立して制御することで機体昇降シリンダ93を個別に伸縮させ、機体の姿勢及び高さを調節できるようになっている。
ブザー92は、複数の種類の報知音を切り替えて出力できるように構成されている。複数の種類の報知音は、音色、音程、音を出力する間隔等がそれぞれ調節されており、オペレータが報知音を聞いたときに、各報知音の区別ができるようになっている。制御部99は、機体の動作状況に応じて、複数の報知音の中から選択した1つをブザー92に出力させることができる。
図5に示すように、本実施形態の操作部52は、主変速レバー54と、刈取部昇降スイッチ69と、手動設定レバー71と、を備えている。
主変速レバー(前後進操作部)54は、機体の前後進操作を行うためのものである。上述したように、主変速レバー54は、走行ミッション装置61に機械的に連結されており、オペレータが主変速レバー54を操作することで、機体が前進又は後進する。本実施形態の操作部52は、この主変速レバー54の位置を検出するための図略のセンサを備えており、このセンサの検出信号は制御部99に送信されている。制御部99は、主変速レバーの位置に基づいてコンバイン10の走行方向(例えば、前進しているか後進しているか等)を判定できるようになっている。なお、機体が前進又は後進しているか否かの判定は、主変速レバー54の位置を検出する方法に限定される訳ではない。例えば、回転センサ30の検出信号から制御部99が機体の前後進を判定する構成とすることもできる。
刈取部昇降スイッチ(作業部昇降操作部)69は、オペレータが刈取部12の高さを変位させるためのものである。この刈取部昇降スイッチ69を上昇側に入れると、制御部99は前記刈取部昇降シリンダ63を制御して刈取部12を上昇させる。一方、刈取部昇降スイッチ69を下降側に入れると、制御部99は前記刈取部昇降シリンダ63を制御して刈取部12を下降させる。このように、オペレータは、刈取部昇降スイッチ69を上昇側又は下降側に操作することで刈取部12を所望の位置に移動させることが可能になっている。なお、以下の説明において、オペレータが刈取部昇降スイッチ69を上昇側に操作することを刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作と称することがある。また、オペレータが刈取部昇降スイッチ69を下降側に操作することを刈取部昇降スイッチ69の下降側操作と称することがある。
手動設定レバー(手動設定操作具)71は、機体の高さをオペレータが手動で調節するためのものである。オペレータは、この手動設定レバー71を操作することで、左右の機体昇降シリンダ93を制御して機体を所望の位置に移動させることができる。なお、機体の高さを手動で設定するための手動設定操作具は、レバー式以外にも、スイッチ式、ボタン式又はツマミ式等の適宜の方式を採用することができる。
また、本実施形態の制御部99は、手動設定レバー71を用いてオペレータが手動で設定した機体の位置を手動設定位置として記憶するためのメモリを備えている。更に、前記手動設定レバー71には、機体の高さを前記メモリに記憶させるための操作手段が配置されている。オペレータは、この操作手段によって機体の位置を手動設定位置として前記メモリに記憶させることが可能になっている。
また、本実施形態の制御部99は、前進時において所定条件を満たした場合は、刈取部昇降スイッチ69からの操作信号に基づいて機体を上昇させる機体上昇制御を行うように構成されている。より具体的には、制御部99は、刈取部高さ検出センサ64の検出信号に基づいて刈取部12が最上端位置にあるか否かを判定する。そして、制御部99は、刈取部12が最上端位置にある状態で、刈取部昇降スイッチ69の上昇操作が一定時間(例えば3秒)以上検出されると、所定条件が満たされたと判定して機体上昇制御を行う。
上述したように、刈取部昇降スイッチ69は刈取部12を昇降させるためのものであり、通常時は刈取部昇降スイッチ69を上昇側に入れた場合、刈取部12を上昇させる制御が制御部99によって行われる。一方、機体上昇制御時では、刈取部昇降スイッチ69を上昇側に入れた場合、刈取部12を上昇させる制御ではなく、機体を上昇させる制御が制御部99によって行われることになる。なお、本実施形態においては、刈取部12が最上端位置に到達していることが機体上昇制御への移行条件として設定されているので、機体上昇制御時では、刈取部昇降スイッチ69を上昇側に入れたとしても、刈取部12が移動することはない。
また、制御部99は、上記機体上昇制御によって機体が上昇した状態で、刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出された場合は、機体を手動設定位置まで下降させる機体下降制御を開始するように構成されている。機体下降制御が開始されると、制御部99は、前記メモリを参照し、前記手動設定位置まで機体を移動させるのに必要な移動量を算出する。そして、制御部99は、算出した移動量に基づいて左右の電磁弁66をそれぞれ制御し、機体を前記手動設定位置まで移動させる。
また、本実施形態の制御部99は、主変速レバー54の前進操作が検出されている場合において、刈取部12の上昇動作、機体の上昇動作及び機体の下降動作に応じた報知音をブザー92に出力させるように構成されている。
本実施形態では、ブザー92に電子音を一定の音程で出力させるとともに、その発音のパターンを異ならせることで、互いに異なる3種類の報知音を実現している。具体的にいうと、制御部99は、例えば、刈取部上昇用報知音は「ピピッ、ピピッ、ピピッ」と出力し、機体上昇用報知音は「ピッ、ピッ、ピッ」と出力し、機体下降用報知音は「ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ」と出力するように、ブザー92から出力される報知音を制御する。制御部99は、刈取部12及び機体の動作状況が切り替わったタイミングで報知音を切り替える。なお、上記で例示した以外にも報知音は様々な音とすることが可能であり、例えば3種類の異なるメロディーをスピーカから出力するように構成することもできる。
次に、図6を参照して、前進時の機体上昇制御について説明する。図6は、コンバイン10の前進時の制御を示したフローチャートである。なお、図6のフローは、コンバイン10を圃場に進入させる状況を想定している。また、オペレータによって刈取作業時の機体の位置が手動設定位置として制御部99のメモリに予め設定されているものとする。
オペレータが前進操作を行い、制御部99が主変速レバー54の前進操作を検出すると、図6のフローが開始される。フローが開始されると、制御部99は、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が行われているか否かを判定する(S101)。刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が検出された場合は、制御部99は、刈取部12の位置が最上端位置にあるか否かを刈取部高さ検出センサ64からの検出信号に基づいて調べる(S102)。
刈取部12が最上端位置にない場合は、制御部99は、刈取部昇降シリンダ63を制御して刈取部12を上昇させる(S103)。それとともに、制御部99は、刈取部上昇用報知音をブザー92に出力させる(S104)。
刈取部12が最上端位置にある場合は、制御部99は、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が一定時間以上継続して検出されるか否かを調べる(S105)。刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が一定時間以上継続して検出された場合は、制御部99は機体上昇制御に移行する(後述する図7のフロー参照)。
S105の処理で、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が一定時間以上継続して検出されなかった場合は、制御部99は、主変速レバー54の前進操作が検出されているか否かを調べる(S106)。主変速レバー54の前進操作が検出された場合は、S101の処理に戻り、前進操作が検出されなくなるまでS101からS106の処理を繰り返す。S106の処理で主変速レバー54の前進操作が検出されなかった場合にこのフローは終了する。
次に、図7を参照して、機体上昇制御について説明する。図7は、前進時の機体上昇制御を示したフローチャートである。
機体上昇制御が開始されると、制御部99は、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が継続して検出されているか否かを調べる(S201)。刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が継続されている場合は、制御部99は、上述の水平制御を行いながら機体を所定量上昇させる(S202)とともに、機体上昇用報知音をブザー92に出力させる(S203)。
次に、制御部99は、刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出されているか否かを調べる(S204)。刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出された場合は、制御部99は、予め設定されていた手動設定位置まで機体を下降させる(S205)とともに、機体下降用報知音をブザー92に出力させる(S206)。S204の処理で、刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出されなかった場合は、S201の処理に戻る。そして、制御部99は、刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出されるまでS201からS204までの処理を繰り返す。
なお、S201の処理で、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が検出されなかった場合は、S202及びS203の処理を行うことなくS204の処理に進む。従って、オペレータが刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作を継続している間のみ機体が上昇し、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が検出されなくなると、機体の上昇は停止することになる。
以上の処理に示したように、オペレータは、刈取部昇降スイッチ69の操作だけで、機体の上昇動作及び機体の下降動作をコンバイン10に行わせることができる。また、制御部99は、機体上昇制御時に刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出されると、その直後に機体を手動設定位置まで移動させるように機体昇降シリンダ93を制御する。このように、刈取部昇降スイッチ69の下降側操作によって、機体の下降が即座に開始されるので、オペレータは、刈取作業が行うことができる状態にコンバイン10をスムーズかつ迅速に移行させることが可能になっている。
なお、本実施形態の機体上昇制御においては、水平制御を行いながら機体を上昇させることができる限界の高さ(設定機体高さ)が、左右の機体昇降シリンダ93のそれぞれについて予め設定されている。そして、制御部99は、ストロークセンサ97からの信号に基づいて、左右何れかの機体昇降シリンダ93が設定機体高さに達したと判定した場合は、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が行われても機体の上昇はそれ以上行われないようになっている。
以上に示したように、本実施形態のコンバイン10は以下のように構成される。即ち、コンバイン10は、刈取部12と、刈取部昇降シリンダ63と、クローラ走行部11と、機体昇降シリンダ93と、刈取部昇降スイッチ69と、主変速レバー54と、制御部99と、を備える。刈取部昇降シリンダ63は、刈取部12を昇降させるためのものである。クローラ走行部11は、機体を走行させるためのものである。機体昇降シリンダ93は、クローラ走行部11の接地面に対して機体を昇降させるためのものである。刈取部昇降スイッチ69は、刈取部12の昇降操作を行うためのものである。主変速レバー54は、機体の前後進操作を行うためのものである。制御部99は、刈取部昇降シリンダ63の制御を行うためのものである。制御部99は、主変速レバー54の前進操作が検出されている場合において、刈取部12が最上端にある状態で、刈取部昇降スイッチ69の上昇操作が一定時間以上検出されると、機体昇降シリンダ93によって機体を上昇させる機体上昇制御を行う。また、制御部99は、機体上昇制御が行われた後に、刈取部昇降スイッチ69の下降操作が検出されると、その直後に、機体の高さを予め設定される手動設定位置まで下降させる機体下降制御を行う。
これにより、刈取部昇降スイッチ69を操作するだけで、前進時に、刈取部12と、クローラ走行部11の接地面と、の間の空間を大きく確保できる位置まで機体を上昇させることができる。例えば、畦道から圃場に入る(坂道を下る)場合に、刈取部昇降スイッチ69の操作によって機体を上昇させることで、刈取部12が接地面に接触する事態を確実かつ容易に防止することができる。そして、機体を上昇させる必要がなくなった後は、刈取部昇降スイッチ69の下降操作によって機体の高さを設定位置まで自動的に戻すことができるので、刈取部12を用いた刈取作業に速やかに移行することができる。
また、本実施形態のコンバイン10においては、以下のように構成される。即ち、コンバイン10は、機体の左右傾斜角を検出する傾斜角センサ70を備える。機体昇降シリンダ93は機体の左右にそれぞれ配置される。制御部99は、傾斜角センサ70の検出値に応じて機体昇降シリンダ93を制御することによって機体水平制御を行うことが可能に構成される。機体上昇制御は、機体水平制御を行いながら当該機体を上昇させるように行われる。
これにより、地面の状態に関係なく水平状態を保って機体を上昇させることができるので、安定した前進走行を行うことができる。
また、本実施形態のコンバイン10においては、以下のように構成される。即ち、コンバイン10は、複数の種類の報知音を出力することができるブザー92を備える。制御部99は、機体上昇制御時には、機体の上昇を報知する上昇用報知音をブザー92に出力させる。機体下降制御時には、機体の下降を報知する下降用報知音をブザー92に出力させる。
これにより、オペレータは、聴覚に訴える報知音により機体の動作状況を明確に把握しながら当該コンバイン10の前進操作を行うことができる。
また、機体上昇制御は、上記実施形態の構成に限定される訳ではなく、事情に応じて適宜変更することができる。次に、機体上昇制御の変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例において、機体上昇制御以外の処理及び構成は上記実施形態とほぼ同様であるので、その詳細な説明を省略する。
変形例のコンバイン10が備える制御部99は、左右の機体昇降シリンダ93をストロークエンドまで伸長させて機体を最上端まで上昇させる最上端上昇制御を行うことができるように構成されている。また、変形例のブザー92は、上記実施形態で述べた複数の種類の報知音(刈取部上昇用報知音、機体上昇用報知音及び機体下降用報知音)に加えて、最上端上昇用報知音を出力できるように構成されている。最上端上昇用報知音は、機体上昇制御が前記最上端上昇制御に移行した場合であって、機体を上昇させるときにブザー92から出力される報知音である。
次に、図8を参照して、機体上昇制御の詳細について説明する。図8は、変形例における前進時の機体上昇制御を示したフローチャートである。
図8に示すように、変形例の機体上昇制御が開始されると、制御部99は、上記実施形態と同様に、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作が継続して検出されているか否かを調べる(S301)。
次に、制御部99は、予め設定されている所定位置に機体が到達しているか否かを調べる。より具体的には、ストロークセンサ97の検出信号に基づいて、左右の機体昇降シリンダ93の何れかが設定機体高さまで達しているか否かを調べる(S302)。左右の機体昇降シリンダ93の何れもが設定機体高さまで到達していない場合は、水平制御を行いながら機体を上昇させる(S303)。そして、制御部99は、機体の上昇とともに機体上昇用報知音をブザー92に出力させる(S304)。
ストロークセンサ97の検出信号から、機体昇降シリンダの左右何れかの一側がストロークエンド(最上端、設定機体高さより上側)まで到達している場合は、他側の機体昇降シリンダ93をストロークエンドまで伸長させて機体を最上端まで上昇させる最上端上昇制御に移行する(S305)。制御部99は、機体上昇制御から最上端上昇制御に移行するとともに、ブザー92に出力させる報知音を、機体上昇用報知音から最上端上昇用報知音に切り替える(S306)。この結果、左右の機体昇降シリンダ93のそれぞれがストロークエンドまで到達し、機体が最大高さまで移動することになる。
S304又はS306の処理の後、制御部99は、刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出されているか否かを調べる(S307)。刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出されなかった場合は、S301の処理に戻る。そして、制御部99は、S307の処理で刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出されるまで、S301からS307までの処理を繰り返す。S307の処理で刈取部昇降スイッチ69の下降側操作が検出された場合は、制御部99は、手動設定位置まで機体を下降させる(S308)とともに、機体下降用報知音をブザー92に出力させ、このフローを終了する。このフロー終了後に、主変速レバー54の前進操作が検出されている場合(例えば、オペレータによって前進操作が継続されている場合)は、図6のフローが開始され(S101の処理に戻り)、上述した処理を繰り返す。
以上に示したように、変形例のコンバイン10においては、以下のように構成される。即ち、コンバイン10は、機体の左右傾斜角を検出する傾斜角センサ70を備える。機体昇降シリンダ93は機体の左右にそれぞれ配置される。制御部99は、傾斜角センサ70の検出値に応じて機体昇降シリンダ93を制御することによって機体水平制御を行うことが可能に構成される。機体上昇制御は、左右両側の機体昇降シリンダ93によって機体を最上端まで上昇させるように行われる。
これにより、通常時は機体水平制御によって安定した走行を実現できる。一方、機体及び刈取部12が接触するおそれがある障害物を前方に発見した場合は、刈取部昇降スイッチ69を操作するだけで、接地面と機体下面との空間を最大限確保できる位置まで機体を上昇させることができる。これによって、刈取部12及び機体が障害物の上方を通過するようにして当該障害物を回避できる。
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
上記実施形態の機体上昇制御は、水平制御を行いながら機体を上昇させているが、水平制御を行わずに機体を上昇させる構成に変更することができる。また、機体上昇制御に移行すると、刈取部昇降スイッチ69の上昇側操作に関係なく、制御部99が機体を最上端位置まで自動的に上昇させる構成にすることもできる。
上記実施形態では、刈取部12が最上端位置にある状態で刈取部昇降スイッチ69の上昇操作が一定時間以上継続して検出されることが機体上昇制御を行うための条件として設定されているが、この所定条件は事情に応じて適宜変更することができる。例えば、刈取部12が最上端位置ではなくても、予め設定されている設定位置よりも高い位置にあるときに、刈取部昇降スイッチ69の上昇操作が一定時間以上継続して検出されると、制御部99が機体上昇制御を行うように構成することができる。また、刈取部12が最上端にある状態で、刈取部昇降スイッチ69を上昇側に操作すると、制御部99が行う制御が、即座に機体上昇制御に移行する構成に変更することもできる。このように、前進時において、機体上昇制御に移行する所定の条件は、事情に応じて適宜変更することができる。
上記実施形態では、刈取部高さ検出センサ64の検出信号に基づいて刈取部12が最上端位置にあるか否かを判定しているが、この構成は適宜変更することができる。例えば、刈取部12が最上端位置にあるときにON状態になるリミットスイッチをコンバイン10が備えるように構成することもできる。この場合、制御部99は、リミットスイッチの検出信号に基づいて、刈取部12が最上端にあるか否かを判定する。
また、上記実施形態のコンバイン10の構成からブザー92及びブザー92に関連する処理を省略することもできる。
また、上記実施形態ではコンバイン10に本発明を適用しているが、本発明を適用できる作業機はコンバイン10に限定されない。例えば大根や人参等を収穫する自走式の根菜収穫機等の作業機に本発明を適用することができる。