上記従来構成は、例えば図11に示すように、畦から圃場に進入する場合等のように、平坦地から傾斜地に進入するとき等に発生する次のようなトラブルを回避できるようにしたものである。
つまり、平坦地から傾斜地に進入するときに、機体本体Vの重心Gが傾斜地の始端部よりも進行方向前方側に移動して急激に機体本体Vが前下がり傾斜姿勢になり(図11の(b)参照)、走行装置の後部側が地面から浮き上がるような状態になったときに、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が目標傾斜角から前傾斜側に外れるから目標傾斜角になるように姿勢変更操作手段を作動させることになる。そのとき、機体本体Vにおける前部を上昇させる方向に前部側の駆動手段を駆動操作させると、機体本体Vの重心Gが傾斜地の始端部よりも進行方向後方側に移動して走行装置の後部側が地面に接地して走行装置の前部側が地面から浮き上がり、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が目標傾斜角から後傾斜側に外れる状態になることがある(図11の(c)参照)。そうすると、逆方向に前記ピッチング制御を実行することにより、再度、機体本体の重心が傾斜地の始端部を乗り越えて機体前方側に移動して機体本体が前下がり傾斜姿勢になることがある。しかも、このとき、走行速度は低速に設定されており、上記したような傾斜地への進入時に姿勢の変化があると、運転者は安全性を考慮して走行を停止させる場合が多いから、走行停止状態において上記したようなピッチング制御を実行すると、機体本体Vの重心Gが傾斜地の始端部に対して前後に移動することにより、機体本体Vの前後傾斜角が目標傾斜角から後傾斜側に外れる状態(図11(c)参照)と、機体本体Vの前後傾斜角が目標傾斜角から前傾斜側に外れる状態(図11(d)参照)との間での急激な姿勢変化が繰り返し行われることがある。
そこで、このような重心の移動に伴う急激な姿勢変化が生じないように、従来では、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が目標傾斜角から前傾斜側に外れたことが検出されると、そのときから機体本体が前進側に設定距離走行するまでの間は、機体本体における前部を上昇させる方向に前部側駆動手段を駆動操作させないようにして、上記したような重心の移動に伴う急激な姿勢変化を回避するようにしている。
しかしながら、上記従来構成では、図11(b)に示すように、平坦地から傾斜地に進入するときに急激に機体本体が前下がり傾斜姿勢になることがあっても、そのときは、機体本体の前後傾斜角を後傾側に姿勢変更させることが行われないので、前下がり傾斜姿勢のまま走行を継続することになる。そうすると、上記したような傾斜地の進行方向に沿う幅が短いものであり、少しだけ前進走行すると機体本体がその後すぐに平坦な圃場面に進入するような状況であれば、前下がり傾斜姿勢になっても前下がり傾斜姿勢のまま走行を継続していると、機体本体の先端部が圃場面に接触する等のおそれがある。又、平坦地から傾斜地に進入するときに機体本体が前下がり傾斜姿勢になっているにもかかわらず、機体本体の前後傾斜角を後傾側に姿勢変更させないから搭乗している運転者は姿勢が不安定になり、運転操作が行い難いものになる等の不利な面もあった。
本発明の目的は、平坦地から傾斜地に進入するとき等において、重心の移動に伴い後傾側に姿勢変更されることと前傾側に姿勢変更されることとを繰り返す等のトラブルの発生を回避することが可能なものでありながら、機体本体の先端部が地面に接触したり、運転操作が行い難いものになる等の不利を回避することが可能な作業機の姿勢制御装置を提供する点にある。
本発明に係る作業機の姿勢制御装置は、走行装置の接地部に対する機体本体の前後傾斜角を前傾側及び後傾側に変更操作自在な姿勢変更操作手段と、前記機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、この前後傾斜角検出手段の検出情報に基づいて前記機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が目標傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御するピッチング制御を実行する姿勢制御手段とが備えられているものであって、
その第1特徴構成は、機体本体の走行距離を検出する走行距離検出手段が設けられ、
前記姿勢制御手段が、前記ピッチング制御において、前記機体本体の前後傾斜角を前傾側又は後傾側に変更するように前記姿勢変更操作手段を作動させる姿勢修正作動を実行したときには、その後、前記走行距離検出手段の検出情報に基づいて前記機体本体が設定距離走行したことを判別するまでは、前記機体本体の傾斜角を前記姿勢修正作動による変更方向とは反対の方向へ変更しないように構成されている点にある。
例えば、機体本体が前進走行しながら平坦地から傾斜地に進入する等により機体本体の重心が傾斜地の始端部を乗り越えて機体前方側に移動して機体本体が前傾姿勢になったような場合であれば、前後傾斜角検出手段にて機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が目標傾斜角から外れたことが検出されるから、前記姿勢制御手段が、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が目標傾斜角に維持されるように機体本体の前後傾斜角を後傾側に変更するように前記姿勢変更操作手段を作動させる姿勢修正作動を実行することになる。そして、そのように姿勢修正作動を実行した後、機体本体が設定距離走行したことが判別されるまでは、機体本体の傾斜角を姿勢修正作動による変更方向とは反対の方向、つまり、前傾側への姿勢修整作動を変更しないのである。
その結果、例えば、上述したような傾斜地の機体進行方向に沿う幅が短いものであり、機体本体が平坦地から傾斜地に進入したのちにすぐに平坦な圃場面に進入するような状況であれば、機体本体が前下がり傾斜姿勢になると前記姿勢修正作動を実行することから、機体本体の進行方向の先端部が地面に接触する等の不利を回避でき、しかも、搭乗している運転者は機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が目標傾斜角から外れている傾斜状態が継続することはなく運転操作が行い易いものになる。
又、前記姿勢修正作動を実行してから機体本体が設定距離走行するまでは、機体本体の傾斜角を姿勢修正作動による変更方向とは反対の方向へ変更しないので、機体本体の重心が傾斜地の始端部に対して前後に移動して機体本体の急激な姿勢変化が繰り返し行われることを回避できる。そして、前記姿勢修正作動を実行してから機体本体が設定距離走行したのちは、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が目標傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段を作動させても、機体本体の重心が傾斜地の始端部に対して前後に移動するおそれは少なく、機体本体の前後方向での急激な姿勢変化が繰り返し行われることはない。
従って、第1特徴構成によれば、平坦地から傾斜地に進入するとき等において、重心の移動に伴い後傾側に姿勢変更されることと前傾側に姿勢変更されることとを繰り返す等のトラブルの発生を回避することが可能なものでありながら、機体本体の先端部が地面に接触したり、運転操作が行い難いものになる等の不利を回避することが可能な作業機の姿勢制御装置を提供できるに至った。
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記姿勢変更操作手段が、機体本体における前部の走行装置の接地部に対する高さを変更調節自在な前部側駆動手段と、機体本体における後部の走行装置の接地部に対する高さを変更調節自在な後部側駆動手段とを備えて構成され、前記姿勢制御手段が、前記ピッチング制御において、前記前部側駆動手段と前記後部側駆動手段のうちのいずれか一方を駆動停止させた状態で他方を駆動操作するように構成されている点にある。
すなわち、前記ピッチング制御を実行するときは、前記前部側駆動手段と前記後部側駆動手段のうちのいずれか一方を駆動停止させた状態で他方を駆動操作することにより機体本体の前後傾斜角を修正することになる。そして、後部側駆動手段を後部の走行装置の接地部に対する高さを最も下降させた最下端位置に操作し、且つ、前部側駆動手段を前部の走行装置の接地部に対する高さを最も上昇させた最上昇位置に操作すると、機体本体の前後傾斜角を最も前傾斜側に操作することができる。一方、後部側駆動手段を後部の走行装置の接地部に対する高さを最も上昇させた最上昇位置に操作し、且つ、前部側駆動手段を前部の走行装置の接地部に対する高さを最も下降させた最下降位置に操作すると、機体本体の前後傾斜角を最も後傾斜側に操作することができる。
従って、第2特徴構成によれば、前部側駆動手段及び後部側駆動手段として操作ストロークの短い小型のものを使用するようにしても、機体本体の前後傾斜角の修正可能範囲を大きくすることが可能であり、小型の駆動手段を用いて低コスト化を図りながらも姿勢変更操作を良好に行うことが可能な作業機の姿勢制御装置を提供できるに至った。
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、
前記走行距離検出手段が、前記機体本体が前進走行するときの走行距離及び前記機体本体が後進走行するときの走行距離を夫々検出可能に構成され、
前記姿勢制御手段が、前記ピッチング制御において、
前記機体本体が前進走行中に前記機体本体の前後傾斜角を後傾側に変更するように前記姿勢変更操作手段を作動させる姿勢修正作動を実行したときには、その後、前記走行距離検出手段の検出情報に基づいて前記機体本体が設定距離走行したことを判別するまでは、前記機体本体の傾斜角を前傾側に変更しないように構成され、且つ、
前記機体本体が後進走行中に前記機体本体の前後傾斜角を前傾側に変更するように前記姿勢変更操作手段を作動させる姿勢修正作動を実行したときには、その後、前記走行距離検出手段の検出情報に基づいて前記機体本体が設定距離走行したことを判別するまでは、前記機体本体の傾斜角を後傾側に変更しないように構成されている点にある。
すなわち、姿勢制御手段は、機体本体が前進走行中に前下がり傾斜姿勢になると機体本体の前後傾斜角を後傾側へ変更すべく姿勢修正作動を実行するが、その姿勢修正作動を実行した後、設定距離走行するまでは機体本体の前後傾斜角は前傾側へ変更しないので、例えば前進走行しながら平坦地から進行方向に沿う幅が短い傾斜地を通過して圃場に進入するような場合であっても、機体本体の先端部が地面に接触したり、運転操作が行い難いものになる等の不利を回避でき、又、平坦地から傾斜地への進入時に重心の移動に伴い後傾側に姿勢変更されることと前傾側に姿勢変更されることとを繰り返す等のトラブルの発生を回避することが可能となる。
一方、姿勢制御手段は、機体本体が後進走行中に後下がり傾斜姿勢になると機体本体の前後傾斜角を前傾側へ変更すべく姿勢修正作動を実行するが、その姿勢修正作動を実行した後、設定距離走行するまでは機体本体の前後傾斜角は後傾側へ変更しないので、例えば後進走行しながら平坦地から進行方向に沿う幅が短い傾斜地を通過して圃場に進入するような場合であっても、機体本体の先端部が地面に接触したり、運転操作が行い難いものになる等の不利を回避でき、又、平坦地から傾斜地への進入時に重心の移動に伴い前傾側に姿勢変更されることと後傾側に姿勢変更されることとを繰り返す等のトラブルの発生を回避することが可能となる。
従って、第3特徴構成によれば、機体本体が前進走行する場合及び後進走行する場合の夫々において、重心の移動に伴い後傾側に姿勢変更されることと後傾側に姿勢変更されることとを繰り返す等のトラブルの発生を回避することが可能なものでありながら、機体本体の先端部が地面に接触したり、運転操作が行い難いものになる等の不利を回避することが可能な作業機の姿勢制御装置を提供できるに至った。
以下、本発明の実施形態を作業機の一例としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1L,1R、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置3、脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンク4、搭乗運転部2等を備えた機体本体Vに対して、稲や麦等の植立穀稈を刈り取って脱穀装置3に供給する刈取部10を機体前部に昇降自在に備えて構成されている。
刈取部10は、先端部に設けた分草具6、分草具6にて分草された植立穀稈を引き起こす引き起こし装置5、引き起こされた穀稈の株元側を切断するバリカン型の刈刃7、刈取穀稈を徐々に横倒れ姿勢に変更しながら後方側に搬送する縦搬送装置8等にて構成され、機体本体Vの前部に横軸芯P1周りに昇降駆動手段の一例としての刈取昇降用の油圧シリンダ(以下、刈取シリンダという)C1によって揺動昇降自在に設けられている。つまり、この刈取部10は、地面に近接するような刈取作業用の低位置と、地面から大きく離間するように大きく上昇する上昇退避位置とにわたり揺動昇降自在に構成されている。
上記分草具6の後方側箇所に、刈取部10の地面に対する高さを検出する対地高さ検出手段としての接地式の刈高さセンサ9が設けられている。詳述はしないが、この刈高さセンサ9は、横軸芯周りで揺動自在で且つ下方側に付勢される接地片9Aの地面との接当による揺動角度に基づいて刈取部10の地面に対する高さを検出するように構成されている。
次に、動力伝達系を図6に示す。機体本体Vに搭載されたエンジンEから出力された動力は、脱穀クラッチ45を介して脱穀装置3に伝達されるとともに、走行クラッチ46及び走行変速装置としての無段変速装置47を介して左右の走行装置1L,1Rのミッション部48に伝達され、ミッション部48に伝達された動力は、走行装置1L,1Rに伝達される一方、刈取クラッチ49を介して刈取部10に伝達される。又、詳述はしないが、前記ミッション部48に伝達された動力を左右の走行装置1L,1Rにおける駆動速度に差をつけて旋回操作するための旋回用伝動機構55が備えられており、搭乗運転部2に備えられた左右方向並びに前後方向の夫々に十字揺動操作自在な操作レバー28の左右方向の揺動操作に基づいて旋回用伝動機構55を切り換えて機体本体Vを旋回走行させることができるようになっている。
前記無段変速装置47は、搭乗運転部2に設けた変速レバー51によって中立位置から前進操作領域F及び後進操作領域R夫々に無段階に変速操作されるように構成されており、この変速レバー51の操作位置を検出するポテンショメータ式の変速レバーセンサ37が設けられている。又、ミッション部48における走行装置1L,1Rへの走行駆動系に、走行出力軸の回転速度を検出する回転速度センサ41が備えられている(図7参照)。
そして、このコンバインでは、走行装置1L,1Rの接地部に対する機体本体Vの前後傾斜角及び左右傾斜角を変更操作自在な姿勢変更操作手段100が設けられている。以下、その構成について説明する。
先ず、左右の走行装置1L,1Rの機体本体Vへの取付構造を説明する。尚、左右の走行装置1L,1Rは夫々同一構成であるから、そのうち左側の走行装置1Lについて以下に説明し、右側の走行装置1Rについてはその説明を省略する。
図2に示すように、機体本体Vを構成する前後向き姿勢の主フレーム11に対して固定される支持フレーム12の前端側には駆動スプロケット13が回転自在に支持されるとともに、複数個の遊転輪体14を前後方向に並べた状態で枢支し、且つ、後端部にテンション輪体15を支持したトラックフレーム16が前記支持フレーム12に対して上下動可能に装着されている。そして、前記駆動スプロケット13とテンション輪体15及び各遊転輪体14にわたり無端回動体であるクローラベルトBが巻回されている。
前記支持フレーム12の前部側には水平軸芯P2周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される前ベルクランク17aが枢支され、支持フレーム12の後部側には水平軸芯P3周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される後ベルクランク17bが枢支されている。前ベルクランク17aの下方側端部がトラックフレーム16の前部側箇所に枢支連結され、後ベルクランク17bの下方側端部は、ストローク吸収用の補助リンク17b1を介して、トラックフレーム16の後部側箇所に枢支連結されている。
一方、前後ベルクランク17a,17bの夫々の上方側端部には、夫々、油圧シリンダC2,C3のシリンダロッドが連動連結されている。前記各油圧シリンダC2,C3のシリンダ本体側は主フレーム11における横フレーム部分に枢支連結されており、前記各油圧シリンダC2,C3は夫々複動型の油圧シリンダにて構成されている。
前ベルクランク17aに対応する油圧シリンダC2(以下、左前シリンダという)を最も伸張させるとともに、後ベルクランク17bに対応する油圧シリンダC3(以下、左後シリンダという)を最も短縮させると、図2に示すように、トラックフレーム16が支持フレーム12に受け止め支持され、トラックフレーム16が主フレーム11に最も近づいてほぼ平行状態となる。
そして、図2に示す状態から、左後シリンダC3をそのままの状態に維持しながら左前シリンダC2を短縮作動させると、図3に示すように、機体本体Vの前部側を接地部に対して離間する方向に姿勢変更することになる。
図2に示す状態から、左前シリンダC2をそのままの状態に維持しながら左後シリンダC3を伸長作動させると、図4に示すように、機体本体Vの後部側を接地部に対して離間する方向に姿勢変更することになる。
又、図2に示す状態から、左前シリンダC2を短縮作動させ、且つ、左後シリンダC3を伸長作動させると、図5に示すように、機体本体Vが接地部に対して平行姿勢のまま離間する方向に姿勢変更することになる。
右側の走行装置1Rにおいても左側の走行装置1Lと同様に、機体前部側に位置する右前シリンダC4と、機体後部側に位置する右後シリンダC5とが夫々備えられ、左側の走行装置1Lと同様な動作を行う。尚、左右両側の走行装置1L,1Rが夫々図2に示す状態になっていると、走行装置1L,1Rの接地部に対する機体本体Vの前後傾斜角及び左右傾斜角が夫々零又は略零となる基準状態としての下限基準姿勢となる。
このように前記姿勢変更操作手段100が、機体本体Vにおける左側前部、左側後部、右側前部、及び、右側後部の夫々において左右の走行装置1L,1Rの接地部に対する高さを各別に変更調節自在な4個の機体姿勢変更用の油圧シリンダC2〜C5を備えて構成されている。
そして、左右の後シリンダC3,C5を作動停止させた状態において、左前シリンダC2と右前シリンダC4を短縮作動させると機体本体Vの前部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して離間する方向に姿勢変更する(以下、この作動を前上昇作動という場合がある)。左右の後シリンダC3,C5を作動停止させた状態において、左前シリンダC2と右前シリンダC4を伸長作動させると機体本体Vの前部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して近接する方向に姿勢変更する(以下、この作動を前下降作動という場合がある)。左右の前シリンダC2,C4を作動停止させた状態において、左後シリンダC3及び左後シリンダC5を伸長作動させると機体本体Vの後部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して離間する方向に姿勢変更する(以下、この作動を後上昇作動という場合がある)。左右の前シリンダC2,C4を作動停止させた状態において、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を短縮作動させると機体本体Vの後部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して近接する方向に姿勢変更する(以下、この作動を後下降作動という場合がある)。
従って、左前シリンダC2及び右前シリンダC4が前部側駆動手段に対応しており、左後シリンダC3及び右後シリンダC5が後部側駆動手段に対応している。
前記4個の油圧シリンダC2,C3,C4,C5の夫々に対応させて、左右走行装置1L,1Rにおける前記各ベルクランク17a,17bの回動支点部に対応する箇所に、その回動量に基づいて前記各油圧シリンダC2,C3,C4,C5の操作量(即ち、伸縮作動したストローク量)を検出するポテンショメータ形のストロークセンサ18,19,20,21が設けられている(図7参照)。
そして、重力の作用によって機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を検出する重力式の前後傾斜角センサ24と、重力の作用によって機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角を検出する重力式の左右傾斜角センサ23とが備えられている。又、図7に示すように、マイクロコンピュータ利用の制御装置22が設けられ、この制御装置22に、前記各ストロークセンサ18〜21、刈高さセンサ9、左右傾斜角センサ23、前後傾斜角センサ24、変速レバーセンサ37、回転速度センサ41の各検出情報が入力されている。
又、搭乗運転部2の操作パネルには、左右方向での姿勢変更を行う後述するようなローリング制御の入切を指令する左右自動スイッチ26、前後方向での姿勢変更を行う後述するようなピッチング制御の入切を指令する前後自動スイッチ27、刈取部10の地面に対する目標刈高さを設定する手動操作式の目標対地高さ設定手段としてのポテンショメータ式の刈高設定器36、刈取部上昇を指令する上昇スイッチSW1、刈取部下降を指令する下降スイッチSW2等が備えられ、これらの情報も制御装置22に入力されている。
前記上昇スイッチSW1及び前記下降スイッチSW2は、搭乗運転部2の操作パネルに備えられた十字揺動自在な操作レバー28の前後揺動操作にて入り切り操作される構成となっている。つまり、操作レバー28を後方側に設定量以上揺動すると上昇スイッチSW1がオンし、操作レバー28を前方側に設定量以上揺動すると下降スイッチSW2がオンする構成となっている。又、図示はしないが、機体本体Vの傾斜姿勢を手動操作にて変更調整自在な複数の手動操作式の姿勢変更指令スイッチも備えられている。
そして、制御装置22は、回転速度センサ41の検出情報と時間経過情報とから機体本体Vの走行距離を演算にて求めるように構成されている。つまり、制御装置22を利用して回転速度センサ41の検出情報に基づいて機体本体Vの走行距離を演算する距離演算手段300が構成されている。又、制御装置22は変速レバーセンサ37の検出情報に基づいて、機体本体Vが前進走行しているのか後進走行しているのかを判別するように構成されている。つまり、制御装置22は、変速レバーセンサ37にて変速レバー51が前進走行領域Fにあることが検出されると機体本体Vが前進走行していると判別し、変速レバーセンサ37にて変速レバー51が後進走行領域Rにあることが検出されると機体本体Vが後進走行していると判別する。
従って、変速レバーセンサ37、回転速度センサ41、及び、距離演算手段300により、機体本体Vの走行距離を検出する走行距離検出手段SKが構成され、この走行距離検出手段SKは、機体本体Vが前進走行するときの走行距離及び機体本体Vが後進走行するときの走行距離を夫々検出可能に構成されている。
又、制御装置22を利用して、左右傾斜角センサ23の検出情報に基づいて、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が目標左右傾斜角に維持されるように姿勢変更操作手段100の作動を制御するローリング制御、及び、前後傾斜角センサ24の検出情報に基づいて、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が目標前後傾斜角(目標傾斜角の一例)に維持されるように姿勢変更操作手段100の作動を制御するピッチング制御を実行する姿勢制御手段200が構成されている。
前記姿勢制御手段200は、ピッチング制御において、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち、左側前部及び右側前部に位置する2個の油圧シリンダ(左前シリンダC2と右前シリンダC4)(前部側駆動手段)と、左側後部及び右側後部に位置する2個の油圧シリンダ(左後シリンダC3と右後シリンダC5)(後部側駆動手段)のいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で、他方の2個の油圧シリンダを駆動操作するように構成され、且つ、左右姿勢制御において、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち、左側前部及び左側後部に位置する2個の油圧シリンダ(左前シリンダC2と左後シリンダC3)と、右側前部及び右側後部に位置する2個の油圧シリンダ(右前シリンダC4と右後シリンダC5)のいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で、他方の2個の油圧シリンダを駆動操作するように構成されている。
そして、前記姿勢制御手段200が、前記ピッチング制御において、機体本体Vの前後傾斜角を前傾側又は後傾側に変更するように姿勢変更操作手段100を作動させる姿勢修正作動を実行したときには、その後、前記走行距離検出手段SKの検出情報に基づいて機体本体が設定距離走行したことを判別するまでは、機体本体Vの傾斜角を前記姿勢修正作動による変更方向とは反対の方向へ変更しないように構成されている。
又、姿勢制御手段200が、前記ピッチング制御において、機体本体Vが前進走行中に機体本体Vの前後傾斜角を前傾側に変更するように姿勢変更操作手段100を作動させる姿勢修正作動を実行したときには、その後、走行距離検出手段SKの検出情報に基づいて機体本体Vが設定距離走行したことを判別するまでは、機体本体Vの傾斜角を後傾側に変更しないように構成され、且つ、機体本体Vが後進走行中に機体本体Vの前後傾斜角を後傾側に変更するように姿勢変更操作手段100を作動させる姿勢修正作動を実行したときには、その後、走行距離検出手段SKの検出情報に基づいて機体本体Vが設定距離走行したことを判別するまでは、機体本体Vの傾斜角を前傾側に変更しないように構成されている。
又、前記設定距離として約20cmを設定している。説明を加えると、図11(a)、(b)に示すように、走行装置1L,1Rの前端側が傾斜地に入って接地するように機体本体Vが前傾斜して、機体本体Vの前部に作用する左右のシリンダC2,C4が機体前部の上昇側に駆動操作するピッチング制御が実行された場合(図11(c)参照)、このピッチング制御による機体本体Vの重心Gの移動とのために機体本体Vが傾斜地の開始点を支点にして前後に繰り返して揺動するような事態にならないように、傾斜地に入って前記ピッチング制御が実行された位置から前進走行する距離を設定している。
但し、前記設定距離としては、上述したような重心の移動による機体本体が前後揺動するような不利が回避できる程度の走行距離であって、且つ、その後の姿勢制御に悪影響を与えない程度の距離であればよく、20cmに限定されるものではない。
つまり、走行装置1L,1Rの前部側が傾斜地に入って接地してピッチング制御が実行されて機体本体Vの重心Gが傾斜地の始端部よりも走行方向上手側に戻ることがあっても、前進方向に設定距離(約20cm)走行すると、そのときは、機体本体Vを前傾斜側に姿勢変更させるべくピッチング制御が実行されて重心Gが後方側に移動しても重心Gが傾斜地の始端部を越えて移動することはなく、図11(c)のように走行装置1L,1Rの前部側が傾斜地から浮き上がるように機体本体Vの姿勢が大きく変化することはない。
制御装置22からは、刈取シリンダC1及び4個の機体姿勢変更用の油圧シリンダC2〜C5を油圧制御するための油圧制御用の電磁弁29〜33に対する駆動信号が夫々出力されている。尚、前記制御装置22は、詳述はしないが、刈取作業中において、刈高さセンサ9の検出値が刈高設定器36にて設定された設定刈高さに維持されるように刈取シリンダC1を作動させる刈高さ制御を実行する。
次に、姿勢制御手段200による姿勢変更の制御動作について、図8〜図10のフローチャートに基づいて説明する。尚、図示は省略しているが、この制御は、脱穀クラッチ45の入り切りを検出する脱穀クラッチスイッチ(図示せず)がオンになっている状態において実行される構成となっている。
図8に示すように、手動操作式の姿勢変更指令スイッチ(図示せず)による手動による姿勢変更指令があれば、その指令に対応した姿勢変更操作を実行する(ステップ1,2)。左右自動スイッチ26と前後自動スイッチ27の状態を調べ、前後自動スイッチ27だけがオンしている場合はピッチング制御だけを実行し、左右自動スイッチ26だけがオンしている場合はローリング制御だけを実行する(ステップ3,4,5)。左右自動スイッチ26と前後自動スイッチ27とが共にオンしている場合はローリング制御とピッチング制御とを実行する(ステップ6,7)。
図9に示すように、ローリング制御においては次のような処理を実行する。すなわち、左右傾斜角センサ23の検出値と目標左右傾斜角に対応する信号値との偏差がローリング制御用の不感帯を機体本体Vの左傾斜側に外れていれば(ステップ11,12)、機体本体Vの左右傾斜姿勢を右下げ方向に姿勢変更させる右傾斜処理を実行する。すなわち、機体右側に位置する前後のストロークセンサ20,21の検出情報に基づいて、右前シリンダ4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC4,C5がいずれも下限位置に操作されていなければ、いずれかが下限位置に達するまで、右前シリンダ4を伸長作動させ且つ右後シリンダC5を短縮作動させる(ステップ13,14)。右前シリンダ4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されれば、次に、機体左側に位置する前後のストロークセンサ18,19の検出情報に基づいて、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが上限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC2,C3がいずれも下限位置に操作されていなければ、いずれかが上限位置に達するまで、左前シリンダC2を短縮作動させ且つ左後シリンダC3を伸長作動させる(ステップ15,16)。
前記左右傾斜角センサ23の検出値と前記目標左右傾斜角との偏差がローリング制御の不感帯を機体本体Vの右傾斜側に外れていれば、機体本体Vの左右傾斜姿勢を左下げ方向に姿勢変更させる左傾斜処理を実行する。すなわち、機体左側に位置する前後のストロークセンサ18,20の検出情報に基づいて、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC2,C3がいずれも下限位置に操作されていなければ、いずれかが下限位置に達するまで、左前シリンダC2を伸長作動させ且つ左後シリンダC3を短縮作動させる(ステップ17,18)。左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが下限位置に操作されれば、次に、機体右側に位置する前後のストロークセンサ19,21の検出情報に基づいて、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC4,C5がいずれも上限位置に操作されていなければ、いずれかが上限位置に達するまで、右前シリンダC4を短縮作動させ且つ右後シリンダC5を伸長作動させる(ステップ19,20)。前記左右傾斜角センサ23の検出値と前記目標左右傾斜角との偏差がローリング制御の不感帯内にあればシリンダの作動を停止する(ステップ21)。
図10に示すように、ピッチング制御では、前後傾斜角センサ24の検出値と水平状態に対応する信号値との偏差がピッチング制御用の不感帯を機体本体Vの前傾斜側に外れていれば(ステップ31,32)、前回に、機体本体Vの前後傾斜角を前傾側に変更するように姿勢変更操作手段100を作動させる姿勢修正作動、すなわち、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を操作して機体本体Vの後部を上昇させる後上昇作動、あるいは、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を操作して機体本体Vの前部を下降させる前下降作動の少なくともいずれか一方を実行してから機体本体Vが設定距離(20cm)走行したか否かを判別する(ステップ33)。
そして、ステップ33にて前記姿勢修正作動を実行してから設定距離走行していれば次のステップ34に移行し、機体本体Vの前後傾斜姿勢を後傾側に姿勢変更させるべく後下降作動及び前上昇作動を実行する。すなわち、機体後部に位置する左右のストロークセンサ19、21の検出情報に基づいて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC3,C5がいずれも下限位置に操作されていなければ、その両シリンダC3,C5のいずれかが下限位置に達するまで、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を短縮作動させる(後下降作動)(ステップ34,35)。左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されれば、左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが上限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を短縮作動させる(前上昇作動)(ステップ36,37)。
ステップ33にて機体本体Vの前後傾斜角を前傾側に変更するように姿勢変更操作手段100を作動させる姿勢修正作動を実行してから設定距離走行していないと判別すると、ステップ1にリターンするようになっており、前記姿勢修正作動による変更方向とは反対の方向への機体本体Vの前後傾斜角を変更させる操作、つまり、前記後下降作動及び前記前上昇作動のいずれも実行しないようになっている。
前後傾斜角センサ24の検出値と水平状態に対応する信号値との偏差がピッチング制御用の不感帯を機体本体Vの後傾斜側に外れていれば、前回に、機体本体Vの前後傾斜角を後傾側に変更するように姿勢変更操作手段100を作動させる姿勢修正作動、すなわち、後下降作動あるいは前上昇作動の少なくともいずれか一方を実行してから機体本体Vが設定距離(20cm)走行したか否かを判別する(ステップ38)。
そして、ステップ38にて前記姿勢修正作動を実行してから設定距離走行していれば次のステップ39に移行し、機体本体Vの前後傾斜角を前傾側に姿勢変更させるべく前下降作動及び後上昇作動を実行する。すなわち、機体前部に位置する左右のストロークセンサ18、20の検出情報に基づいて、左前シリンダC2と右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC2,C4がいずれも下限位置に操作されていなければ、その両シリンダC2,C4のいずれかが下限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を伸長作動させる(前下降作動)(ステップ39,40)。左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されれば、左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達するまで、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を伸長作動させる(後上昇作動)(ステップ41,42)。前後傾斜角センサ24の検出値と水平状態に対応する信号値との偏差がピッチング制御用の不感帯内にあれば、シリンダの作動を停止する(ステップ43)。
ステップ40にて機体本体Vの前後傾斜角を後傾側に変更するように姿勢変更操作手段100を作動させる姿勢修正作動を実行してから設定距離走行していないと判別すると、ステップ1にリターンするようになっており、前記姿勢修正作動による変更方向とは反対の方向への機体本体Vの前後傾斜角を変更させる操作、つまり、前記前下降作動及び前記後上昇作動のいずれも実行しないようになっている。
このように、前傾側に姿勢修正作動したとき及び後傾側に姿勢修正作動したときのいずれのときにも、設定距離走行するまでは反対方向への姿勢修正作動を行わないので、機体本体が前進走行中に機体本体の前後傾斜角を後傾側に変更する姿勢修正作動を実行したときには、その後、機体本体が設定距離走行したことを判別するまでは、機体本体の傾斜角を前傾側に変更しないのであり、機体本体が後進走行中に機体本体の前後傾斜角を前傾側に変更する姿勢修正作動を実行したときには、その後、機体本体が設定距離走行したことを判別するまでは、機体本体の傾斜角を後傾側に変更しないことになる。
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、機体本体Vが前進走行しているとき、及び、機体本体Vが後進走行しているときの夫々において、機体本体Vの前後傾斜角を変更するように姿勢変更操作手段を作動させる姿勢修正作動を実行したときには、その後、設定距離走行するまでは、機体本体Vの傾斜角を姿勢修正作動による変更方向とは反対の方向へ変更しないように構成したが、このような構成に代えて、機体本体Vが前進走行するときにのみ、上記したような処理を実行する構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、前記姿勢制御手段が、ローリング制御及びピッチング制御を実行するものを例示したが、ピッチング制御だけを実行する構成でもよい。
(3)上記実施形態では、走行装置として、左右一対のクローラ式の走行装置で構成したが、これに限るものではなく、例えば、単一の走行装置でもよく、又、クローラ式ではなく車輪式の走行装置でもよい。
(4)上記実施形態では、姿勢変更操作手段を、機体本体の前後左右の4箇所に位置した4個の油圧シリンダにて構成したが、油圧シリンダ以外に、電動モータとネジ送り機構等からなる他の駆動手段にて構成してもよい。
(5)上記実施形態では、作業機としてコンバインを例示したが、例えば農用トラクタ、田植え機等、コンバイン以外の作業機であってもよい。